説明

即席めんの製造方法及び麺線切出し装置

【課題】即席めんにおいて、調理感の優れた麺質を得ることができる方法を提供する。
【解決手段】
麺線を切り出す際に次のような麺線切出し装置を用いる。すなわち、第一切刃ロール21及び第二切刃ロール22のそれぞれに対して2枚のカスリが配置され、第一切刃ロール外カスリ32の嵌入する外位置と第一切刃ロール内カスリ31の嵌入する内位置の水平方向の間隔、第一切刃ロールの内カスリ31の内位置と第二切刃ロール内カスリ33の外位置の水平方向の間隔、第二切刃ロール内カスリ33の内位置と第二切刃ロール外カスリ34の外位置の水平方向の間隔がいずれも10mm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席めんの製造方法及びこれに用いる麺線切出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
即席めんは、小麦粉及び水等の原料の混練、麺帯の圧延、切刃ロールによる切出し、α化、乾燥の各ステップを含む工程により製造される。即席めんの製造は工場内で大量生産するものであるため、生産効率の向上のために短時間により品質の優れた麺線を製造することが必要になる。
【0003】
最終製品の麺質を評価する指標の一つとして、調理感やコシ、ツルミなどの指標が挙げられるが、これらをより少しでも向上させることは即席めんを製造するメーカーにとっては日々追及すべき課題である。
【0004】
この点において、例えば、特許文献1には調理感を改善するための方法として水溶性ヘミセルロースを利用する方法が開示されている。しかし、本方法では従来までの製造のための原料に加えて水溶性ヘミセルロースという新たな資材を必要とするため、コストアップにつながってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―314163
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは従来までの即席めんの製造方法を見直し、新たな資材や設備等を必要とすることなく、より調理感の優れた麺質を得ることができる方法を見出すことを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的に鑑み、即席めんの製造工程の各ステップについて再度検討を繰り返し、鋭意研究を行った。
【0008】
その結果、麺帯から麺線を切り出す際におけるそれぞれの切刃ロールに装着されるカスリが2枚の場合であって、該カスリ同士に間隔が所定の条件を満足させることで、その後、α化→乾燥の工程を経て得られる即席めんについて、調理感に優れた麺質を得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本願第一の発明は、請求項1に記載の
「小麦粉及び水等の原料の混練、麺帯の圧延、切刃ロールによる切出し、α化、乾燥の各ステップを含む即席めんの製造方法において、
前記切刃ロールによる切出しが、
複数の環状溝部を有し、麺線搬送用のコンベアの進行方向に向かって順に第一、第二となるように並設されている製麺用の一対の切刃ロールと、
該一対の切刃ロールの前記溝部に押し込まれた麺線を掃き出すために、前記切刃ロールの噛み合い位置から切刃ロールの回転方向に進行した位置において前記溝部に嵌入するように配置された麺線履き出し用のカスリ、を有する麺線切出し装置により行われるものであり、
前記カスリがそれぞれの切刃ロールに二枚づつ装備されており、該切刃ロールの溝部への嵌入位置が前記噛み合い位置から切刃ロールの回転方向に沿って、回転角度の小さい方から順に内位置、外位置の2箇所の溝部に嵌入されるように配置されているものであり、
前記第一切刃ロールの外位置と内位置、前記第一切刃ロールの内位置と前記第二切刃ロールの内位置、及び前記第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔が、いずれも10mm以上であることを特徴とする、
即席めんの製造方法。」、
である。
【0010】
また、さらに前記カスリ同士の水平方向の間隔については18mm以上であればより調理感に優れることを見出した。
【0011】
すなわち、本願第二の発明は、
「前記第一切刃ロールの外位置と内位置、前記第一切刃ロールの内位置と前記第二切刃ロールの内位置、及び前記第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔が、18mm以上である請求項1に記載の即席めんの製造方法。」、
である。
【0012】
また、本出願人は、前記即席めんの製造工程に用いられる麺線切出し装置についても意図している。
すなわち、本願第三の発明は、
「即席めんの製造に用いる切刃ロール及びカスリを含む麺線切出し装置であって、
該切出し装置が、
複数の環状溝部を有し、麺線搬送用のコンベアの進行方向に向かって順に第一、第二となるように並設されている製麺用の一対の切刃ロールと、
該一対の切刃ロールの前記溝部に押し込まれた麺線を掃き出すために、前記切刃ロールの噛み合い位置から切刃ロールの回転方向に進行した位置において前記溝部に嵌入するように配置された麺線履き出し用のカスリ、を有する麺線切出し装置であって、
前記カスリがそれぞれの切刃ロールに二枚づつ装備されており、該切刃ロールの溝部への嵌入位置が前記噛み合い位置から切刃ロールの回転方向に沿って、回転角度の小さい方から順に内位置、外位置の2箇所の溝部に嵌入されるように配置されているものであり、
前記第一切刃ロールの外位置と内位置、前記第一切刃ロールの内位置と前記第二切刃ロールの内位置、及び前記第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔が、いずれも10mm以上であることを特徴とする、
麺線切出し装置」。
である。
【0013】
さらに、前述のように水平方向の間隔が18mm以上のものが好ましい。
すなわち、本願第四の発明は、
「前記第一切刃ロールの外位置と内位置、前記第一切刃ロールの内位置と前記第二切刃ロールの内位置、及び前記第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔が、18mm以上である請求項3に記載の麺線切出し装置」、
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の即席めんの製造方法により製造される即席めんは、調理後において従来よりも調理感が向上した麺質を有する。また、本発明の即席めんの麺線切出し装置を用いることで調理感が向上した麺線を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施態様の麺線切出し装置の正面斜視図写真である。
【図2】切刃ロールの断面方向の模式図である。
【図3】麺線切出し装置垂直上部からみた角歯の場合の切刃ロール同士の噛み合い部の部分図である。
【図4】カスリの斜視模式図である。
【図5】各切刃ロールの外位置及び内位置の間隔を示した切刃ロールの断面方向の模式図である。
【図6】カスリの取り付け角度(切刃ロールにおける内位置及び外位置の角度)を示した切刃ロールの断面方向の模式図である。
【図7】各切刃ロールの外位置及び内位置の間隔を示した切刃ロールの断面方向の模式図である。
【図8】各切刃ロールの外位置及び内位置の間隔を示した切刃ロールの断面方向の模式図である。
【図9】斜めに麺線切出し装置を設置した場合の各切刃ロールの外位置及び内位置の間隔を示した切刃ロールの断面方向の模式図である。
【図10】実施例1の各切刃ロールの外位置及び内位置の間隔を示した切刃ロールの断面方向の模式図である。
【図11】比較例1の切刃ロールの断面方向の模式図である。
【図12】比較例2の各切刃ロールの外位置及び内位置の間隔を示した切刃ロールの断面方向の模式図である。
【図13】試験例3で使用した麺線切出し装置の角度を変えた場合の各切刃ロールの外位置及び内位置の間隔を示した切刃ロールの断面方向の模式図である。
【符号の説明】
【0016】
1 筐体
21 第一切刃ロール
22 第二切刃ロール
31 第一切刃ロール内カスリ
32 第一切刃ロール外カスリ
33 第二切刃ロール内カスリ
34 第二切刃ロール外カスリ
4 コンベア
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0018】
─即席めん─
本発明にいう即席めんとは、熱湯を注加するだけで喫食できるカップ麺や鍋で加熱しながら調理することで喫食可能となる袋麺を含み、特に乾燥するタイプのカップ麺又は袋麺をいう。
【0019】
─即席めんの製造工程─
即席めん(乾燥タイプ)は一般に、小麦粉及び水等の原料混練→麺帯の圧延→切刃ロールによる麺線の切出し→蒸煮又は茹で→乾燥の一連の工程を経て製造される。本発明はこれらのステップのうち、特に切刃ロールによる麺線の切出し段階に特徴を有する。
【0020】
以下、具体的に本発明の構成について説明する。図1は、本発明の製造方法に用いる麺線切出し装置の構成例である。但し、本発明は本構成に限定されないことはいうまでもない。
【0021】
─全体の構成─
図1に示すように本発明の麺線切出し装置は、筐体1と、相互に対向し、噛み合うように並設されている一対の麺線切出し用の切刃ロール(21及び22)及び切刃ロールの溝部に嵌入するように設置されたカスリ(31〜34)を備える。 次に、本麺線切出し装置の断面の模式図を図2に示す。
【0022】
─切刃ロールの構成─
図1及び図2に示すように一対の麺線切出し用の切刃ロール(21及び22)は、それぞれコンベアの進行方向に向かって順に第一、第二となるように並設されている。第一の切刃ロール21と第二の切刃ロール22は一対となり相互に対向している。それぞれの切刃ロールには、複数の環状溝部(211及び221)が形成されている。これらの第一及び第二の切刃ロール(21及び22)によって噛み合い位置の上部より挿入された偏平状の麺帯を連続的に噛み合い位置で切断されると同時に各切刃ロールの溝部(211及び221)に押し込まれ、切刃ロール(21及び22)の回転とともに運ばれる。
【0023】
尚、角歯の場合、第一及び第二の切刃ロールの回転中心を結んだ線より垂直上方より見た場合に、図3に示すように溝部同士が互い違いになるように配置され、噛み合い部を形成している。
【0024】
但し、本発明においては角歯タイプに限定されず、丸歯タイプ切刃やその他のいずれのタイプであってもよいことはもちろんである。
【0025】
これらの第一及び第二の切刃ロール(21及び22)は筐体1に固定されており、図2の矢印方向に回転するように第一、第二の切刃ロール(21及び22)のいずれかの回転軸がモータ等に接続される。
【0026】
─カスリの構成及び水平方向の間隔─
本発明においては、前記カスリ(31〜34)は、第一の切刃ロール21及び第二の切刃ロール22のそれぞれに、二枚づつ配置されている。ここでカスリとは図4に示すように本体部と先端部からなる。
【0027】
本体部はボルト等によって筐体1に固定される。また、該カスリの先端部分は切刃の溝部に嵌入し、切刃ロールの噛み合い位置で溝部に押し込まれた麺線を掃き出す役割を有する。
【0028】
また、前記カスリは、前記噛み合い位置から切刃ロール(21及び22)の回転方向に沿って、回転角度の小さい方から順に内位置、外位置の2箇所の溝部に嵌入されるように配置されている。
【0029】
─水平方向の間隔─
本発明においては、図5に示すように、第一切刃ロール21の外カスリ32の嵌入する外位置と内カスリ31の嵌入する内位置の水平方向の間隔、また、第一切刃ロール21の内カスリ31の嵌入する内位置と第二切刃ロール22の内カスリ33の嵌入する内位置の水平方向の間隔、さらに、第二切刃ロール22の内カスリ33が嵌入する内位置と外カスリ34の嵌入する外位置の水平方向の間隔のそれぞれが、10mm以上に保持されることが必要である。また、好ましくは、それぞれが18mm以上である。
【0030】
このように、水平方向の間隔が重要となるのは、以下に述べるようにコンベア4上への麺線の落下位置との関係によるものと想定される。
【0031】
すなわち、切刃ロールの溝部(211及び221)に押し込まれた麺線は、カスリ(31〜34)の位置で溝部より剥離され落下してコンベア4上に積層される。コンベア4上での麺線の動きは螺旋を描いたり又は蛇行したり条件により異なるが、前記カスリ間の間隔が大きいとコンベア4上に落下する麺線の落下位置の間隔も大きくなる傾向になる。また、一方、カスリ間の間隔が小さいと、コンベア4上に落下する麺線の落下位置の間隔も小さくなり麺線同士が同調する傾向が強くなっていくことが見られた。
【0032】
これらの間隔が、切出し後、α化→乾燥を経て製造される即席めんの喫食時の調理感に影響する理由は明確ではないが、後述する[試験例2]に示された結果から、この間隔が大きい方が蒸し後の本麺線の麺線強度が他の場合と比べて大きいことが判明している。
【0033】
以上より、蒸し工程における効率性等が影響している可能性が高いと考えられる。さらに、蒸煮後の実施例1に示された麺線の積層状態を比較例2の積層状態と比較した結果、実施例1の蒸煮後麺線の積層状態はそれぞれの剥離位置で掃き出された麺線群が層を形成しており、これらの層がほぼ4層に形成されていた。このようなことから、麺線を切出し時の麺線群の積層状態が後の蒸煮の工程と関係しており、これらがα化→乾燥後の即席めんの食感に影響していることが予想される。
【0034】
─内位置と外位置の水平方向の間隔を保つための方法─
本発明においては、この水平方向の間隔が必要となる。この間隔が10mm以上であると最終的な即席めんにおいて調理感に優れた麺線を得ることができる。また、好ましくは、18mm以上である。
【0035】
このように、水平方向の間隔を変えるための方法としては、カスリ(31〜34)の取り付け位置を調整方法が有効である。すなわち、切刃ロール(21及び22)の直径のサイズによっても影響はするが、一般には、30mm〜最大でも95mm程度の直径であり、カスリの位置を変更することで対応することができる。特に外カスリ(32及び34)同士を遠く離して設置することが有効であるため、図5及び6に示すように従来まで見られなかった外カスリ(32及び34)の下向きの設置を行うことが有効である
具体的なカスリの配置例としては、種々考えられるが、噛み合い位置から第一切刃ロール内カスリ31の嵌入する内位置までの回転角をα1、第一切刃ロール外カスリ32の嵌入する外位置までの回転角をβ1、噛み合い位置から第二切刃ロール内カスリ33の嵌入する内位置までの回転角をα2、第二切刃ロール外カスリ34の嵌入する外位置までの回転角をβ2とすると、図6に示すように、α1又はα2 = 20〜80°、β1又はβ2=120〜190°付近が挙げられる。
【0036】
尚、前述したように切刃ロール1及び2(21及び22)の外カスリ(32及び34)の外位置の水平方向の間隔は大きい方が好ましいため、ほぼβ1又はβ2 =170〜180°が好ましい。切刃の回転スピードにもよるが、本範囲であれば、外カスリ(32及び34)より切り出された麺線同士の間隔をほぼ最大に離すことができる。
【0037】
尚、実際の間隔は切刃ロール(21及び22)の直径の大きさによって変わってくるが、α1 = α2 =70°、β1 = β2 =180°の場合で切刃ロールの直径が36mmのタイプであると、以下の図7に示すような間隔になる。
【0038】
さらに、発明者らの知見から、カスリ間の同士の間隔を最大且つ均等にするのがさらに好ましい。この場合、概ねα1 = α2 =70.5°、β1 = β2 =180°となる。
【0039】
その他の例として、例えば、α1 = α2 =70°、β1 = β2 =120°の場合で切刃の直径36mmのタイプであると、以下の図8に示すような間隔になる。
【0040】
─切出し装置(切刃ロール)の取り付けが斜めの場合─
切出し装置の即席めんの製造ラインにおける設置状態については、設置空間の制約又は他の理由から、図9に示すように水平方向に対して30°〜40°程度の傾きを維持する必要がある場合がある。
【0041】
切刃装置を傾けて設置すると水平方向のカスリ位置同士の間隔が小さくなってしまうことになるが、このような場合においても、上述のように、10mm以上、好ましくは18mm以上の間隔を保つことで調理感に優れた食感の即席めんを製造することができる。
【0042】
このように傾いて切刃装置を設置する場合のカスリの取り付け例を図9に示す。
すなわち、直径80mmの切刃ロール(21及び22)を用いた場合において、切出し装置の傾斜角:30°、切刃ロール直径:80mm、第一切刃ロール内カスリ31の内位置の角度(α1):55°、第一切刃ロール外カスリ32の外位置の角度(β1):125°、第二切刃ロール内カスリ33の内位置の角度(α2):30°、第二切刃ロール外カスリ34の外位置の角度(β2):120°の場合、前記の間隔は図8に示したように、すべて10mm以上とすることができる。
【0043】
─切刃ロールとコンベアの位置関係─
切刃ロール(21及び22)からコンベア4の距離は特に限定されない。また、上述の切出し装置の傾き等によっても変わるが、一般的には切刃ロール(21及び22)の直径の5倍程度までである。
【0044】
─α化の工程─
切り出された後の麺線はα化される。α化する方法としては特に限定されないが、蒸煮又は茹で法が用いられることが多い。但し、これに限定されず過熱蒸気を利用してもよい。また、蒸煮と過熱蒸気及び茹で処理をいずれか組み合わせて併用してもよい。
【0045】
─乾燥の工程─
乾燥の手段についても特に限定されないが、通常、フライオイルによる油熱乾燥や熱風乾燥が挙げられる。また、これらに限られず凍結乾燥等の手段でもよい。
【実施例】
【0046】
[試験例1]
【0047】
従来までの製造方法と本方法を対比する目的から以下のように切出し方法を変えて試験を行った。
【0048】
すなわち、実施例1として図10に示すように、直径36mmの切刃ロールをもつ麺線切出し装置を用いて、その内カスリ及び外カスリの設置位置を噛み合い位置からそれぞれ
第一切刃ロール内カスリの内位置:67°、第一切刃ロール外カスリの外位置:172°、第二切刃ロール内カスリの内位置:72°、第二切刃ロール外カスリの外位置:168°、に調整した麺線切出し装置を準備した。
【0049】
また、この場合の第一切刃ロールの外位置と内位置の水平方向の間隔(以下、Aとする)、前記第一切刃ロールの内位置と前記第二切刃ロールの内位置の間隔(以下、Bとする)、及び前記第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔(以下、Cとする)についてはそれぞれA=24.8mm、B=23.4mm、C=24.8mmであった。尚、使用した切刃ロールは18番、丸歯であった。
【0050】
次に、比較例1として基本的な即席めんの麺線の切出し方法として知られている図11に示すようなボックス付きの麺線切出し装置を用いた。すなわち、当該装置には、カスリがそれぞれの切刃ロールに対して一枚づつあり、かつウエーブを付与するためのボックスが装着されており、概ね斜め45°に設置され麺線が切り出される。また、使用した切刃ロールは18番、丸歯であった。
【0051】
次に、比較例2として、ボックスが装着されておらず、かつ、切刃ロールごとに2枚のカスリを装着し、かつ、内カスリ及び外カスリの設置位置を噛み合い位置からそれぞれ
第一切刃ロール内カスリの内位置:59°、第一切刃ロール外カスリの外位置:101°、第二切刃ロール内カスリの内位置:65°、第二切刃ロール外カスリの外位置:95°、に調整した麺線切出し装置を準備した。
【0052】
図12に示す。尚、当該装置は、内カスリの本体部の一部がくり抜かれて窓となっており、当該窓部を介して外カスリの先端部が切刃ロールに接触する構造を採っている。また、使用した切刃ロールは18番、丸歯であった。
【0053】
尚、この場合のA、B、CについてはそれぞれA=12.7mm、B=19.1mm、C=9.2mmであった。
【0054】
これらの切出し装置を用いて以下の方法により麺線を製造するとともに当該麺線をα化、乾燥処理を施し即席めんを製造した。
【0055】
具体的には、小麦粉930gと澱粉70gと食塩・かんすいを溶解した練水350mlを添加して、混練し、麺帯を形成させ、圧延(1.6mm厚)し、上述の切出し装置により切り出した。
【0056】
切出し後の麺線を98℃で40、60、80、100、120秒間でそれぞれ蒸した後、蒸煮麺360gに着味を行い、125gづつリテーナに入れて140℃のフライ油で100秒間油熱乾燥し乾燥麺塊を完成させた(89g)。そして、当該麺塊を500mlのお湯で4分間鍋炊き調理し、喫食し官能評価を行った。
【0057】
尚、官能評価は熟練の技術者5名で行い、評価項目として喫食時の調理感(コシ、ツルミ感)を5段階で評価した。官能評価の基準は以下のようによった。1:調理感(コシ、ツルミ)低い ⇔ 5:調理感(コシ、ツルミ)高い、とする。尚、“+”同じ5段階の評価でもより高いと判断されたものを示す。
【0058】
【表1】

【0059】

従来までのウエーブ方式の場合である比較例1又はカスリ間の水平方向の間隔が10mm以下の8.8mmの場合を含む比較例2の場合に比べて、すべてのカスリ間の水平方向の間隔が10mm以上ある実施例1の場合、いずれの蒸し時間の場合においてもその後、油熱乾燥処理した麺線の喫食時の調理感が優れていることが判明した。

[試験例2]
上述の実施例1、比較例1及び2について乾燥処理前の蒸煮直後の蒸し麺の麺線強度(せん断試験)を調べた。尚、麺線強度の測定は以下の方法によった。
【0060】
測定機器は、島津小型卓上試験機EZ−S 100Nを用いた。また、上部治具として歯型押し棒特型先端R、下部治具を圧盤とし、試験速度0.5mm/minで測定を行った。
結果を表2に示す。尚、測定は、せん断試験最大試験力(N) N=3平均値で行った。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例1の麺線強度が大きいことが判明した。本発明により切り出した麺線の積層状態が麺線強度の向上の寄与していることが判明した。
【0063】
〔試験例3〕
カスリ間の水平方向の間隔を狭めていった場合における、コンベア上において麺線の好ましい積層状態を保持できるそれぞれの切刃ロールにおける外位置及び内位置の距離を検討した。図10の実施例1で使用した麺線切出し装置を0°,20°,40°に傾斜させて検討した。実験に使用したカスリの傾斜状態を以下の図13に示す。
【0064】
図13のように麺線切出し装置の傾きを0→20→40°に変化させてそれぞれ麺線を切出し、コンベア上の麺線の積層状態を比較したところ、20°では積層状態は良好で麺線同士の同調もみられなかった。この場合のカスリ間の水平方向の最小の間隔は17.5mmであった。18mm以上であれば良好な積層状態を得ることができることがわかった。
【0065】
一方、40°まで傾斜させると、麺線同士の同調する部分が微妙に見られ始めた。この場合、第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔が9.2mmであった。この結果より、カスリ間の水平方向の間隔が10mm以上必要であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉及び水等の原料の混練、麺帯の圧延、切刃ロールによる切出し、α化、乾燥の各ステップを含む即席めんの製造方法において、
前記切刃ロールによる切出しが、
複数の環状溝部を有し、麺線搬送用のコンベアの進行方向に向かって順に第一、第二となるように並設されている製麺用の一対の切刃ロールと、
該一対の切刃ロールの前記溝部に押し込まれた麺線を掃き出すために、前記切刃ロールの噛み合い位置から切刃ロールの回転方向に進行した位置において前記溝部に嵌入するように配置された麺線履き出し用のカスリを有する麺線切出し装置により行われるものであり、
前記カスリがそれぞれの切刃ロールに二枚づつ装備されており、該切刃ロールの溝部への嵌入位置が前記噛み合い位置から切刃ロールの回転方向に沿って、回転角度の小さい方から順に内位置、外位置の2箇所の溝部に嵌入されるように配置されているものであり、
前記第一切刃ロールの外位置と内位置、前記第一切刃ロールの内位置と前記第二切刃ロールの内位置、及び前記第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔が、いずれも10mm以上であることを特徴とする、
即席めんの製造方法。


【請求項2】
前記第一切刃ロールの外位置と内位置、前記第一切刃ロールの内位置と前記第二切刃ロールの内位置、及び前記第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔が、いずれも18mm以上である請求項1に記載の即席めんの製造方法。
【請求項3】
即席めんの製造に用いる切刃ロール及びカスリを含む麺線切出し装置であって、
該切出し装置が、
複数の環状溝部を有し、麺線搬送用のコンベアの進行方向に向かって順に第一、第二となるように並設されている製麺用の一対の切刃ロールと、
該一対の切刃ロールの前記溝部に押し込まれた麺線を掃き出すために、前記切刃ロールの噛み合い位置から切刃ロールの回転方向に進行した位置において前記溝部に嵌入するように配置された麺線履き出し用のカスリを有する麺線切出し装置であって、
前記カスリがそれぞれの切刃ロールに二枚づつ装備されており、該切刃ロールの溝部への嵌入位置が前記噛み合い位置から切刃ロールの回転方向に沿って、回転角度の小さい方から順に内位置、外位置の2箇所の溝部に嵌入されるように配置されているものであり、
前記第一切刃ロールの外位置と内位置、前記第一切刃ロールの内位置と前記第二切刃ロールの内位置、及び前記第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔が、いずれも10mm以上であることを特徴とする、
麺線切出し装置
【請求項4】
前記第一切刃ロールの外位置と内位置、前記第一切刃ロールの内位置と前記第二切刃ロールの内位置、及び前記第二切刃ロールの内位置と外位置の水平方向の間隔が、いずれも18mm以上である請求項3に記載の麺線切出し装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−50388(P2012−50388A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196262(P2010−196262)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】