説明

卵パック

【課題】パルプモールドよりなる卵パックにおいて、多数枚を積層した卵パックを一枚ずつ確実に分離させて取り出すことを可能にする。
【解決手段】パルプモールドからなる卵パック1aは、積み重ねた際に空間ができるように積み重ね方向に凸状に突出したスタッキング部20を有し、スタッキング部は2つの卵パック間で対称となり、長手方向に長いリブと側壁との間に設けられ、卵を仕切るための凸状部分である。また、卵パックは葦からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプモールドで成形された意匠性の高い卵パックに関する。
【背景技術】
【0002】
卵パックは、A−PET(非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂)製のもののほかパルプ素材を用いて成形されたパルプモールドよりなるものがある。パルプモールド製の卵パックは、A−PET製に比べ意匠性に優れ、高級感があるため、例えば高価な卵の包装などに好んで使用される。しかしながら、葦製で作られた卵パックなどは、A−PET製のものに比べて非常に剛性が低く、輸送時の振動により卵が割れやすいのが問題である。
【0003】
そして、樹脂製の卵パックについては特許文献1、特許文献2や特許文献3に掲載されており、また、卵パックを比較的強度と弾性を有する紙製などとすることも前掲の特許文献3に掲載されている。
【0004】
また、特許文献4には、輸送の都合で多数枚重ね合わせられた未使用の卵パックを、使用時に一パックずつ取り出す際に、容器同士が密着結合して複数枚が結合したまま取り出されてしまうという課題を解決するための技術が記載されている。この技術は、基本的に、卵パックと卵パックの間にエアーを吹き込んで卵パック同士を分離させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−240593号公報
【特許文献2】実開平5−7679号公報
【特許文献3】登録実用新案第3057179号公報
【特許文献4】特開2007−145357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、鶏卵の卵パックへの機械充填の際に、積み重ねた卵パックを一つずつ掴み取る作業に失敗する可能性があった。それは、特許文献4に記載の課題と同じく、多数枚重ね合わせられた未使用の卵パックを、使用時に一パックずつ取り出す際に、容器同士が密着結合して複数枚が結合したまま取り出されてしまうことが起こりうるためである。
【0007】
とりわけ、卵パックの素材として、滑り性が比較的高いA−PETを使用する場合に比べて、成形されたパルプモールドを使用する場合は、多数枚を積層した状態から一枚ずつを分離させるとき、A−PETよりもさらにくっつきが生じる可能性が高い。パルプモールド製の卵パックの滑り性が低いためである。
また、パルプモールドの中でも葦等のリード素材のものは上述のように剛性の低さも課題である。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、パルプモールドよりなる卵パックにおいて、多数枚を積層した卵パックを機械充填の際に一枚ずつ確実に分離させて取り出すことが可能な卵パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、第1の態様として、パルプモールドからなる卵パックであって、積み重ねた際に空間ができるように積み重ね方向に凸状に突出したスタッキング部を有することを特徴とする卵パックを提供するものである。
【0010】
上記第1の態様において、前記スタッキング部は、2つの卵パック間で対称となるように設けられることを特徴とすることが好ましい。また、前記スタッキング部は、リブと側壁との間に設けられることを特徴とすることが好ましい。また、上記卵パックは、葦からなることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パルプモールドよりなる卵パックにおいて、多数枚を積層した卵パックを機械充填の際に一枚ずつ確実に分離させて取り出すことが可能な卵パックを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態であって卵パックを展開して示す斜視図である。
【図2】図1の卵パックに鶏卵を入れ込んだ態様を示す斜視図である。
【図3】図2の態様からパックを閉じた態様を示す斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】図1の卵パックの他の構造例を示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施の形態の卵パックの正面図(その1)である。
【図8】本発明の一実施の形態の卵パックの正面図(その2)である。
【図9】図7のC−C断面とD−D断面とE−E断面及び図8のF−F断面とG−G断面とH−H断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(卵パックの概略構造)
図1ないし図5に、卵パック1を示す。この卵パック1は、パルプモールドにより製作されたものである。卵パック1は、中央に薄肉のヒンジ2を有し、そのヒンジ2で折り曲げることで前記ヒンジ2を介した本体部3と蓋体部4とが合わさって箱状となるものであって、前記蓋体部4には少なくとも1つ以上のリブを有しているものである。
【0014】
卵パック1を構成するパルプモールドのパルプ素材は、アシ(葦)その他の草木類(竹、エスパルト、雑草等)、繊維作物(ケナフ、コットンリンター、アカバ、サイザル、ジュート、亜麻、こうぞ、みつまた等)、農産副産物(サトウキビ殻、麦わら、稲わら、パーム椰子殻、バナナ茎葉等)等である。
【0015】
卵パック1は、非木材パルプ素材又は木材パルプ素材、あるいは、これらの混合パルプ素材を漉き加工して得られるパルプ素材を、吸引、圧縮して脱水後、加圧及び加熱によって乾燥することで形状を固定し、その容器素材にさらに高度の加圧及び加熱を施してパルプ素材のセルロース分を熱硬化させることで、成形される。なお、卵パック1を構成する好適なパルプ素材として、アシを用いて上記製法にて成形することが望ましい。これにより、表面が滑らかで意匠性に優れた卵パックを得ることができる。
【0016】
卵パック1の蓋体部4の中央付近にはヒンジ2と平行に一端の略卵半個分の位置からもう一端の略卵半個分の位置まで直線上に前記本体部3側に向けて突出した第1のリブ5を有しており、本体部3には、箱状にした際に蓋体部4の第1のリブ5の先端同士がぶつかるように蓋体部4側に向けて突出した凸リブ6を有している。そして前記第1のリブ5は、突出した先端が略卵1個分毎の距離で等間隔に凹んでいる。前記凹みは、第1のリブ5の凸の高さに対して略半分程度の凹みであり、第1のリブ5の高さと同等の凹みとするよりも第1のリブ5の剛性を大幅に増加させている。なお、前記凹みは必ず設ける必要はない。好ましくは、凸リブ6と同等の数を備えることで、卵の割れを防ぐのに十分な高い剛性を得ることができる。蓋体部4の側壁にはヒンジ2と略直交する方向に直線上に凹んだ第2のリブ7を有している。第2のリブ7は少なくとも1つ以上であることが好ましく、ヒンジ側に設けられる第2のリブ7は、凸リブ6の短手方向の平行線上に設けることが好ましい。また、ヒンジ側と対面する側壁には、必ずしもリブ7を設ける必要はないが1つ以上設けることが好ましい。これにより、箱状にした際に第1のリブ5と、凸リブ6と、が勘合したときのそれぞれの剛性を向上させることができる。本体部3は、卵収容凹部8とラッチ9を有する。蓋体部4は、ラッチ受け部10を有する。
【0017】
卵パック1に鶏卵aを収容するには、図2に示すように本体部3を下にして蓋体部4を上向きに開いて展開状とし、本体部3の卵収容凹部7に卵aを入れ込んだうえ、蓋体部4を閉じて卵パック1を箱状にとする。このように箱状とされた卵パック1に収容された鶏卵aは、図4および図5に示すように本体部3と蓋体部4によって形成される凹部に収まって略不動状態に保護される。なお、この実施の形態の卵パック1は鶏卵10個詰めのものを例示している。
【0018】
(卵パックの他の構造)
図6に示す他の実施の形態の卵パック1は、蓋体部4に本体部3側に突出する1つのリブ11を設けた構成で、鶏卵4個詰めのものを例示している。なお、その他の構成は基本的に前記一実施の形態と同様であるから同符号を付してその説明を省略する。
【0019】
(積み重ねる際の構成)
概略、図1の構造を備える卵パック1は、細部において、図7と図8に示す構成に特徴がある。図7は開いた状態の卵パック1aの正面図、図8は開いた状態の卵パック1bの正面図である。なお、卵パック1a、1bは、それぞれを1セットとして積み重ねの際に交互に積み重ねられるものである。
【0020】
卵パック1aは、蓋体部4に第1のスタッキング部20を備える。第1のスタッキング部20は、卵パックを閉じた状態での内側方向に凸状に飛び出す凸部を二つ有する。他方で、卵パック1bは、蓋体部4に第1のスタッキング部21を備える。第1のスタッキング部21も、卵パックを閉じた状態での内側方向に凸状に飛び出す凸部を二つ有する。ここで、第1のスタッキング部20の凸部が配設される位置と、第1のスタッキング部21の凸部が配設される位置は、卵パック1aと卵パック1bを重ね合わせた場合に異なることが特徴である。本実施形態では、一例として、卵パック1aと卵パック1bとが、いわゆる鏡対称となるように凸部の位置を構成した。なお、凸部の数を二つとしたのも一例であってこの数に限定しない。
【0021】
このように、卵パック1aと卵パック1bとは蓋体部4に、第1のスタッキング部20,21を備えるため、交互に積層された際に、凸部によってそれぞれの蓋体部4が浮き上がり、各パックの剥離が良好になる。
また、卵パック1aと卵パック1bとが、いわゆる鏡対称となるように凸部の位置を構成したため、生産性が良好になる。
また、第1のスタッキング部20を長手方向に蓋体全体の長さより短く、両端が側壁から約卵半個分あくように備えられたリブ5と側壁との間に設けることで、蓋体部の剛性を大きく向上させることができ、蓋体が潰れるのを防止することができる。
【0022】
また、卵パック1aと卵パック1bは、それぞれ、第2のスタッキング部を備える。第2のスタッキング部は、卵の敷居として側壁とリブ6とを繋ぐように底面より高い直線上の凸部(区画部22a,22b,23a,23b)であり、縦横で高さがことなるように構成される。以下、図7中のC−C断面とD−D断面とE−E断面又は図8中のF−F断面とG−G断面とH−H断面を参照して説明する。図9に、各断面図を示す。
【0023】
図9に示すように、卵の敷居として卵パックの短手方向に備えられる直線上のリブ(区画部22a,22b)、及び/又は長手方向に備えられる直線上のリブ(区画部23a,23b)との高さを卵パック1aと1bとで異ならせている。すなわち、卵パック1aのC−C断面で表される短手方向のブリッジ状の部分(区画部22a)の底面からの高さhaは、卵パック1aのD−D断面で表される長手方向のブリッジ状の部分(区画部23a)の底面からの高さhbより高くなっている。一方、F−F断面で表される卵パック1bの短手方向のブリッジ状の部分(区画部22b)の底面からの高さはhbであり、G−G断面で表される長手方向のブリッジ状の部分(区画部23b)の底面からの高さはhaとなっている。このとき、短手方向、長手方向に備えられる直線上のリブをそれぞれ方向によって全て同一にしなくとも、それぞれ異なる高さとしても良い。
【0024】
このように、第2のスタッキング部を備えることで、卵パック1aと1bとを交互に積み重ねた際にそれぞれを密着させることなく、浮かせることができ、機械充填を行う際にも1枚ずつ卵パックを確実に分離させることができる。
【0025】
また、上述のように、卵パック1は、アシ(葦)等のリード素材をパルプモールド製法により作製することで、手触りが滑らかで意匠性に優れた卵パックを得ることができる。
【0026】
なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、例えば第1のスタッキング部20,21の位置や第2のスタッキング部の高さなどを変えても良いし、また、3つ以上の卵パックを1セットとして、それぞれ異なるスタッキング部を設けても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 卵パック
2 ヒンジ
3 本体部
4 蓋体部
5 第1のリブ
6 凸リブ
7 第2のリブ
8 卵収容凹部
9 ラッチ
10 ラッチ受け部
11 1つのリブ
a 鶏卵
1a、1b 卵パック
20,21 第1のスタッキング部
22a,22b (短手方向の)区画部
23a,23b (長手方向の)区画部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールドからなる卵パックであって、
積み重ねた際に空間ができるように積み重ね方向に凸状に突出したスタッキング部を有することを特徴とする卵パック。
【請求項2】
前記スタッキング部は、2つの卵パック間で対称となるように設けられることを特徴とする請求項1記載の卵パック。
【請求項3】
前記スタッキング部は、長手方向に長いリブと側壁との間に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の卵パック。
【請求項4】
前記スタッキング部は、卵を仕切るための凸状部分であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の卵パック。
【請求項5】
葦からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の卵パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−158371(P2012−158371A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19969(P2011−19969)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】