説明

卵含有組成物及びその製造方法

【課題】良好な外観や食感が保たれた卵料理を容易かつ確実に提供することが可能な卵含有組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ゲル状塊体の擬似卵白と、ゲル状塊体の擬似卵黄と、液体状の液卵とを含み、前記擬似卵白及び前記擬似卵黄はそれぞれ独立して、寒天と、ゲル化剤(ただし寒天を除く。)と、糖と、着色剤と、増粘剤と、を含む組成物であり、前記擬似卵白に含まれる着色剤が油脂加工品であり、前記擬似卵黄に含まれる着色剤がカロチンであり、前記増粘剤の含有量が、前記組成物の全量に対してそれぞれ独立して、0.85質量%以上であることを特徴とする、卵含有組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵含有組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭やレストラン、屋台等で提供されるカツ丼や親子丼、オムレツ等の卵料理は、卵の卵白部分や卵黄部分が完全に凝固されずに半熟感を呈することで、需要者の食欲がよりそそられるものとなる。また、卵の半熟感を呈する料理は、そのような料理を食する際の食感にも優れ、手作り感を十分に味わうことができる。このような半熟感を呈する卵料理の調理に際しては、鍋等で食材を加熱するときに卵を加熱し過ぎず、適度な加熱に留めることが特に重要である。
【0003】
一方で近年、家庭等で手軽に卵料理を食することができるように、熱湯等によって加熱するだけで食することができる、所謂レトルト食品が広く流通している。卵料理に用いられるレトルト食品においては、予め加熱殺菌された液卵が袋に充填され、市場に提供されている。従って、例えばカツ丼を需要者に提供する場合、通常は、袋に充填された液卵を鍋等に入れ、当該液卵とカツとを鍋で約70℃程度で加熱して調理し、需要者に提供することになる。
【0004】
このように調理することで手軽にカツ丼等を需要者に提供することができるが、加熱時の温度は調理者によって異なることがあり、調理時の温度によっては調理時に半熟感を残すことができず、加熱温度が高すぎると完全に卵が固化してしまうことがある。そのため、調理者によっては、調理された料理の外観や食感が損なわれることがある。
【0005】
そこで、加熱されても半熟感が損なわれにくい卵加工品として、例えば特許文献1には、有機酸モノグリセライド、HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB8以上のショ糖脂肪酸エステルから選ばれた1種以上の乳化剤を含有する卵加工品が記載されている。また、例えば特許文献2には、凝固性卵加工品と卵蛋白変性温度に加熱しても凝固しない卵加工品を含有する卵加工食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−6616号公報
【特許文献2】特開2003−38127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記文献に記載の技術においても、加熱温度が高温(例えば100℃程度以上)になったり、加熱時間が過度に長くなったりすると、やはり液卵が固化することがある。即ち、従来の技術によっても、前記の調理者による料理の外観や食感の相異の可能性を解消することができない。
【0008】
本発明は前記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な外観や食感が保たれた卵料理を容易かつ確実に提供することが可能な卵含有組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、少なくとも液卵とゲル状塊体の擬似卵白及び擬似卵黄とを混合して卵含有組成物とすることにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な外観や食感が保たれた卵料理を容易かつ確実に提供することが可能な卵含有組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(本実施形態)を説明するが、本実施形態は以下の内容に制限されず、本発明の要旨を損なわない範囲内で任意に変更して実施可能である。
【0012】
[1.卵含有組成物]
本実施形態に係る卵含有組成物は、ゲル状塊体の擬似卵白と、ゲル状塊体の擬似卵黄と、液体状の液卵とを含む。そして、前記擬似卵白及び前記擬似卵黄はそれぞれ独立して、寒天と、ゲル化剤(ただし寒天を除く。)と、糖(ただし寒天及び澱粉を除く。)と、着色剤と、増粘剤と、を含む組成物であり、前記擬似卵白に含まれる着色剤が油脂加工品であり、前記擬似卵黄に含まれる着色剤がカロチンである。さらに、前記増粘剤の含有量が、前記組成物の全量に対してそれぞれ独立して、0.85質量%以上であるものである。本実施形態に係る卵含有組成物はこのような構成を有することにより、加熱前の殺菌時には擬似卵白及び擬似卵黄はゲル状である一方で卵は液体状態であり、加熱後には擬似卵白及び擬似卵黄が融解する一方で液卵は固化し、卵の半熟感を呈する卵料理を提供することができる。
【0013】
[1−1.擬似卵白]
本実施形態に係る卵含有組成物に含まれる擬似卵白(以下、適宜「本実施形態に係る擬似卵白」と言う。)は、ゲル状の塊体として含まれる。また、本実施形態に係る擬似卵白は、前記のように、寒天と、ゲル化剤(ただし寒天を除く。)と、糖(ただし寒天及び澱粉を除く。)と、着色剤としての油脂加工品と、増粘剤と、を含む。この時、含まれる増粘剤の濃度は、擬似卵白(組成物)の全量に対して、0.85質量%以上である。
【0014】
(形態)
本実施形態に係る擬似卵白の形態は、前記のようにゲル状の塊体であるが、このようなゲルの物性は任意である。ただし、本実施形態に係る卵含有組成物の殺菌時には融解せず、加熱時に融解することにより良好な外観や食感(具体的には、擬似卵白と擬似卵黄とが融解することにより奏する半熟感)を保つことができるという観点から、ゲルの融点(即ち擬似卵白の融点)としては、70℃以上であることが好ましい。
【0015】
また、塊体の大きさも特に制限されないが、擬似卵白の量が少なすぎると加熱時に融解した擬似卵白量が少なくなりすぎ良好な外観にならないことがある。また、擬似卵白の量が多すぎると相対的に液卵(後記する。)の量が少なくなりすぎるため、卵の風味が低下する可能性がある。従って、これらの観点に基づいて塊体の大きさを適宜設定すればよく、例えばメッシュ孔5mm〜30mmの篩に供して得られる塊体を用いることができる。
【0016】
また、ゲル状の擬似卵白の粘度も特に制限されない。ただし、粘度が小さすぎる場合、加熱前に液卵と擬似卵白とが一様になり、加熱調理後の外観が損なわれる可能性がある。また、粘度が大きすぎる場合、擬似卵白を融解させるために時間がかかりすぎ、加熱時の時間が過剰なものとなる可能性がある。
【0017】
(寒天)
本実施形態に係る擬似卵白は寒天(所謂アガロース、アガー)を含む。擬似卵白に含まれる寒天の含有量としては特に制限されないが、擬似卵白の全体に対して、0.1質量%以上0.6質量%以下であることが好ましい。含まれる寒天の量が少なすぎる場合、擬似卵白の前記形態を維持することが困難になる可能性があり、多すぎる場合、卵含有組成物の加熱時に擬似卵白が融解するまでに時間がかかりすぎる可能性がある。
【0018】
擬似卵白に含まれる寒天の種類にも特に制限は無い。従って、市販の寒天を所望の濃度及び形態となるように適宜用いればよい。
【0019】
(ゲル化剤)
本実施形態に係る擬似卵白はゲル化剤を含む。なお一般的には、寒天はゲル化剤の一種として分類されるが、本実施形態に係る擬似卵白においては、前記の寒天とさらに寒天以外のゲル化剤とを含むものとする。
【0020】
擬似卵白に含まれるゲル化剤の含有量に特に制限は無い。ただし、ゲル化剤の含有量が少なすぎる場合、擬似卵白の前記形態を維持することが困難になる可能性があり、多すぎる場合、卵含有組成物の加熱時に擬似卵白が融解するまでに時間がかかりすぎる可能性がある。従って、ゲル化剤の含有量としては、擬似卵白の全体に対して、0.2質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
【0021】
また、ゲル化剤の具体的な種類も特に制限されないが、例えばキサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム等が挙げられ、中でもこれらを用いることが好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0022】
(糖)
また、本実施形態に係る擬似卵白は糖を含む。糖の含有量は特に制限されないが、好ましくは擬似卵白の全体に対して2質量%以上5質量%以下である。糖の含有量が少なすぎる場合、加熱後に形態を維持することが困難となる可能性がある。また、糖の含有量が多すぎる場合、加熱後の卵含有組成物を食した際の甘みが過度に強くなる可能性がある。
【0023】
糖の具体的な種類としては、寒天及び澱粉以外であれば特に制限されないが、例えば単糖、二糖、オリゴ糖、多糖等が挙げられ、中でも二糖類が好ましい。より具体的には、例えばトレハロース、スクロース、マルトース等が挙げられ、中でもトレハロースが好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0024】
(着色剤)
本実施形態に係る擬似卵白は、着色剤として油脂加工品を含む。油脂加工品の含有量は特に制限されないが、擬似卵白の全体に対して3質量%以上5質量%以下であることが好ましい。油脂加工品の含有量が少なすぎる場合、卵含有組成物を加熱後に、半熟感を呈する白色の擬似卵白部分を形成することが困難になる可能性があり、多すぎる場合、擬似卵白の色合いが過度に強くなり、加熱後の卵料理の外観を損なう可能性がある。
【0025】
油脂加工品の具体的な種類に特に制限は無く、例えば商品名として、SCC100(カネカ社製)、スジャータ(名古屋製酪社製)等が挙げられ、中でもSCC100が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0026】
(増粘剤)
本実施形態に係る擬似卵白は増粘剤を含み、その濃度は、擬似卵白の全体に対して0.85質量%以上である。ただし、増粘剤の含有量は、擬似卵白の全体に対して、好ましくは0.9質量%以上、より好ましくは0.95質量%以上である。増粘剤の含有量が少なすぎる場合、加熱後の擬似卵白の外観が損なわれる可能性がある。
【0027】
増粘剤の種類は特に制限されないが、具体的には例えば、タマリンドガム、ガラギーナン等が挙げられ、中でもこれらが好ましい。なお、増粘剤は1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
【0028】
(その他の添加剤)
本実施形態に係る擬似卵白は前記のものの他にも、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の添加剤を含んでもよい。このような添加剤の具体的な種類としては、例えばグリシン、メチルセルロース、乳酸カルシウム、酢酸(具体的には、例えば食酢等)、澱粉等が挙げられる。添加剤は1種が単独で含まれてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれてもよい。また、その他の添加剤の含有量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、適宜設定すればよい。
【0029】
(離水率)
また、本実施形態に係る擬似卵白は、−20℃での冷凍後に解凍した場合、離水率に優れるという利点がある。離水率とは、下記式(1)によって計算される値である。
【数1】

【0030】
本実施形態に係る擬似卵白において、前記式(1)により計算される離水率は、通常10%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは1%以下である。離水率が大きすぎる場合、解凍後の擬似卵白から水が過剰に卵含有組成物に混入し、加熱後の卵含有組成物の外観や食感が良好なものとならない可能性がある。
【0031】
[1−2.擬似卵黄]
本実施形態に係る卵含有組成物に含まれる擬似卵黄(以下、適宜「本実施形態に係る擬似卵黄」と言う。)は、ゲル状の塊体として含まれる。また、本実施形態に係る擬似卵黄は、前記のように、寒天と、ゲル化剤(ただし寒天を除く。)と、糖(ただし寒天及び澱粉を除く。)と、着色剤としてのカロチンと、増粘剤と、を含むものである。擬似卵黄の形態、並びに、寒天、ゲル化剤、糖、増粘剤及びその他の添加剤の具体的な種類及び含有量については、[1−1.擬似卵白]において説明した内容と同様であるため、その説明を省略する。
【0032】
(着色剤)
本実施形態に係る擬似卵黄は、着色剤としてカロチンを含む。カロチンの含有量は特に制限されないが、擬似卵黄の全体に対して、0.01質量%以上0.04質量%以下であることが好ましい。着色剤としてのカロチンを前記の含有量で含むことにより、擬似卵黄と周囲の液卵との間に、適度な色調の差を生じさせることができる。そのため、このような擬似卵黄を含む卵含有組成物によれば、よりいっそうの半熟感を視覚に訴えることができる。
【0033】
(離水率)
また、前記擬似卵白の離水率と同様にして計算される擬似卵黄の離水率は、通常10%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは1%以下である。離水率が大きすぎる場合、解凍後の擬似卵黄から水が過剰に卵含有組成物に混入し、加熱後の卵含有組成物の外観や食感が良好なものとならない可能性がある。
【0034】
[1−3.液卵]
本実施形態に係る卵含有組成物に含まれる液卵の具体的な種類に特に制限は無いが、通常は鶏卵を混合して得られる全卵が用いられる。また、液卵の形状にも特に制限は無く、冷凍された液卵を、本実施形態に係る卵含有組成物に含まれる液卵として用いてもよい。
【0035】
[1−4.含有割合]
前記のように、本実施形態に係る卵含有組成物は、擬似卵白と擬似卵黄と液卵とを含むものである。これらの含有割合に特に制限は無いが、卵含有組成物の全体に対して、擬似卵白の含有量は10質量%以上22質量%以下、また、擬似卵黄の含有量は10質量%以上22質量%以下とし、残部を液卵とすることが好ましい。このような比率にすることで、加熱後の外観を特に優れたものとすることができる。
【0036】
[2.卵含有組成物の製造方法]
本実施形態に係る卵含有組成物の製造方法は特に制限されず、任意の方法によって本実施形態に係る卵含有組成物を製造することができる。ただし、(1)擬似卵白及び擬似卵黄をそれぞれ粉砕して塊状とした後、該塊状の前記擬似卵白及び前記擬似卵黄を前記液卵に混合する工程(粉砕混合工程)、と、(2)前記擬似卵白と前記擬似卵黄と前記液卵との混合物に対して、58℃以上64℃以下の温度で熱処理を行う工程(熱処理工程)、とを少なくとも有することが好ましい。以下、これらの工程について説明する。
【0037】
(粉砕混合工程)
[1.卵含有組成物]において説明した成分を有する「擬似卵白」及び「擬似卵黄」を任意の方法で調製した後、液卵とともに本工程に供する。なお、擬似卵白及び擬似卵黄の調製方法の具体例については後記する。調製された擬似卵白及び擬似卵黄は、通常は、各成分が収容された容器の形状(例えば板状、円柱状等)となっている。従って、このような形状を有する擬似卵白及び擬似卵黄を、それぞれ粉砕することになる。
【0038】
具体的な粉砕の方法は特に制限されず、所望の形状となるようにそれぞれ粉砕できれば任意の方法により行うことができる。例えば、5mm〜30mmのメッシュ孔を有する篩に擬似卵白及び擬似卵黄をそれぞれ供することにより、好適な大きさを有するゲル状塊体を得ることができる。
【0039】
そして、このようにして得られたゲル状塊体の擬似卵白及び擬似卵黄と、予め十分に攪拌した全卵(液卵)とをそれぞれ所望の含有割合となるように混合することにより、液卵中にゲル状塊体の擬似卵白及び擬似卵黄が混合された混合物を得ることができる。
【0040】
(熱処理工程)
本工程においては、前記粉砕混合を経て得られた混合物に対して、58℃以上64℃以下の温度で熱処理を行って殺菌を行う。ただし、好ましくは60℃程度の温度での加熱を行う。加熱時間は特に制限されないが、通常は前記の温度で10分〜30分間程度行われる。加熱時の温度が低すぎる場合、混合物の殺菌が不十分になる可能性があり、高すぎる場合、液卵が固化したり、擬似卵白や擬似卵黄が融解したりする可能性がある。
【0041】
また、熱処理工程は、連続式で行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。前記混合物に対して連続式で熱処理を行う場合、前記の時間よりも短い時間で殺菌処理を行うことができる。
【0042】
(その他の工程)
前記の粉砕混合工程及び熱処理工程の他にも、任意の工程を行うことができる。具体的には、例えば前記熱処理工程前に前記混合物を袋等に充填する工程を設け、袋等に充填された混合物に対して熱処理(即ち殺菌処理)を施すことができる。また、熱処理工程後の混合物が袋等に充填されたまま冷却及び冷凍する工程等を設けたりすることもできる。熱処理工程後の混合物をそのまま冷凍することにより、長期保存することができる。なお、冷凍時の温度は特に制限されず、通常は−20℃程度である。
【0043】
このようにして冷凍保存された卵含有組成物は、加熱時に擬似卵白及び擬似卵黄部分は融解して粘性を有するようになり、液卵部分は固化することになる。従って、加熱された卵含有組成物は卵の半熟感を呈し、外観及び食感に優れた卵含有食品として需要者に提供することができる。
【0044】
なお、前記したように、擬似卵白及び擬似卵黄の具体的な調製方法は特に制限されず、例えば各成分を水に懸濁後、加熱攪拌して各成分を溶解させ、得られた溶液を冷却することにより調製することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(擬似卵白の調製)
寒天、ゲル化剤、糖、着色剤、増粘剤及びその他の添加剤として以下のものを用い、擬似卵白を調製した。

・寒天(いずれも寒天を含む製剤)
寒天製剤A(伊那食品工業社製 イナゲルN−41S)
寒天製剤B(伊那食品工業社製 ル・カンテンウルトラ)

・ゲル化剤
ゲル化剤A(三栄源エフエフアイ社製 ゲルアップSA−3)
ゲル化剤B(三栄源エフエフアイ社製 ゲルアップMIT(D))
ゲル化剤C(三栄源エフエフアイ製 ゲルアップK−S(F))
ゲル化剤D(伊那食品工業社製 PG−228S)
キサンタンガム(太陽化学社製 ネオソフトXC)

・糖
トレハロース(林原社製 トレハ)

・着色剤
着色剤A 油脂加工品(カネカ社製 SCC100)
着色剤B 脱脂粉乳(森永乳業社製 森永脱脂粉乳)

・増粘剤
増粘剤A(大日本住友製薬社製 グリロイド3S)
増粘剤B(三菱商事フードテック社製 NEWGELIN AG−234)

・その他の添加剤
グリシン(昭和電工社製 グリシン)
メチルセルロース(信越化学工業社製 メトローズMCE−25)
【0047】
以上の材料を表1〜表3に示す割合で混合して加熱し一様に溶解させた後、冷却することにより、ゲル状の板状擬似卵白を調製した。得られた擬似卵白を20mmのメッシュ孔径を有する篩に供して粉砕し、ゲル状塊体の擬似卵白を調製した。その後、ゲル状塊体の擬似卵白を、その濃度が30質量%となるように鶏由来液卵と混合し、擬似卵白と液卵との混合物を調製した。そして、得られた混合物中の擬似卵白の状態を観察した。
【0048】
次いで、前記混合物を60℃で30分間の熱処理に供し、熱処理後の混合物中の擬似卵白の状態を観察した。
【0049】
熱処理後の混合物を再度冷却した後−20℃で冷凍し、完全に凍結した後解凍した。そして、解凍後の混合物中の一部を量り取って液卵を含む液体を除去した後、前記式(1)に基づいて離水率を計算した。
【0050】
さらに、前記混合物の残部について、解凍後の混合物に対してスチームオーブン(日立製作所社製 過熱水蒸気オーブンレンジ MRO−FV200)を用いて180℃6分間加熱を行い、加熱後の混合物中の擬似卵白の状態を観察した。
【0051】
以上の結果を表1〜表3に示す。なお、表1〜表3において特に示さない限り、数値の単位は「g(グラム)」である。さらに、「%」は「質量%」を表す。また、スチームオーブンでの加熱を行っていない擬似卵白についても、参考例として併せて記載している(参考例1〜参考例20)。
【0052】
なお、表1〜表3において、「冷蔵後の状態」における「○」はゲル化したものを表し、「×」はゲル化しなかったものを表す。
さらに「熱処理後の状態」における「○」は液卵に擬似卵白が分散しておらず、擬似卵白がゲル状態を維持している状態、「△」は擬似卵白の形状が維持されているものの、その一部が液卵に分散若しくは溶解している状態、「×」はゲルの形状を留めておらず、バラバラに分散している状態を表す。
そして、「加熱後の状態」における「○」は外観が良好なものを表す。さらに、各項目において「−」は測定していないものを表し、空欄は「含有していない」ことを表す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
表1〜表3に示すように、寒天と、ゲル化剤と、糖と、油脂加工品と、増粘剤と、を含み、増粘剤の濃度が0.85質量%以上のもの(実施例1〜実施例6)が概ね良好な結果を示した。一方で、油脂加工品の代わりに脱脂粉乳を用いたもの(比較例1及び比較例2)は、加熱後の状態が良くなかった。また、増粘剤の含有量が少なすぎるもの(比較例3〜比較例5)は、加熱後の状態が良くなく、さらに解凍後の離水率が良くないものもあった。
【0057】
(擬似卵黄の調製)
次に、寒天、ゲル化剤、糖、増粘剤及びその他の添加剤として、前記(擬似卵白の調製)にて記載したものを用い、擬似卵黄を調製した。なお、着色剤としては、油脂加工品及び脱脂粉乳の代わりにカロチン製剤(神戸化成社製 KCオレンジ YE−3;カロチン含有割合として7質量%)を用い、その他の添加剤としては、さらに乳酸カルシウム(武蔵野化学研究所製 乳酸カルシウム)、食酢(オタフクソース社製 穀物酢(宝印))を用いた。
【0058】
得られた擬似卵黄について、前記擬似卵白に対して行った操作と同様の操作を行い、擬似卵黄と液卵との混合物を調製した。そして、得られた混合物について、前記擬似卵白について行った観察と同様の観察を行い、解凍後の離水率を同様にして算出した。その結果を表4〜表6に示す。
【0059】
なお、表4〜表6において特に示さない限り、数値の単位は「g(グラム)」であり、「%」は「質量%」を表す。また、スチームオーブンでの加熱を行っていない擬似卵黄についても、参考例として併せて記載している(参考例1〜24)。そして、表4〜表6中の各符号(「○」、「△」、「×」及び「−」)は、表1〜表3の場合と同様の意味であり、表4〜表6中の空欄についても、表1〜表3と同様である。
【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

※ 表6中の「※」は、キサンタンガムを単独で0.6g含むことを表している。
【0063】
表4〜表6に示すように、擬似卵白の場合と同様、寒天と、ゲル化剤と、糖と、カロチンと、増粘剤と、を含み、増粘剤の濃度が0.85質量%以上のものが良好な結果を示した。また、増粘剤を含まないものは、解凍後の離水率が大きかったり(比較例1及び比較例2)、加熱後の状態が良くなかったりした(比較例2及び比較例3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル状塊体の擬似卵白と、ゲル状塊体の擬似卵黄と、液体状の液卵とを含み、
前記擬似卵白及び前記擬似卵黄はそれぞれ独立して、寒天と、ゲル化剤(ただし寒天を除く。)と、糖(ただし寒天及び澱粉を除く。)と、着色剤と、増粘剤と、を含む組成物であり、
前記擬似卵白に含まれる着色剤が油脂加工品であり、
前記擬似卵黄に含まれる着色剤がカロチンであり、
前記増粘剤の含有量が、前記組成物の全量に対してそれぞれ独立して、0.85質量%以上である
ことを特徴とする、卵含有組成物。
【請求項2】
前記寒天の含有量はそれぞれ独立して、前記組成物の全体に対して、0.1質量%以上0.6質量%以下であり、
前記ゲル化剤の含有量はそれぞれ独立して、前記組成物の全体に対して、0.2質量%以上1質量%以下であり、
前記糖の含有量はそれぞれ独立して、前記組成物の全体に対して、2質量%以上5質量%以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の卵含有組成物。
【請求項3】
前記ゲル化剤は、キサンタンガム、ローカストビーンガム及びジェランガムからなる群より選ばれる1種以上である
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の卵含有組成物。
【請求項4】
前記糖は、トレハロースである
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の卵含有組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の卵含有組成物を製造する方法であって、
前記擬似卵白と前記擬似卵黄と前記液卵との混合物に対して、58℃以上64℃以下の温度で熱処理を行う工程を有する
ことを特徴とする、卵含有組成物の製造方法。
【請求項6】
擬似卵白及び擬似卵黄をそれぞれ粉砕して塊状とした後、該塊状の前記擬似卵白及び前記擬似卵黄を前記液卵に混合する工程を有する
ことを特徴とする、請求項5に記載の卵含有組成物の製造方法。