説明

厚さプロファイル測定装置

【課題】 高速度で移動する板状の被測定物の中心部の厚さと幅方向の厚さ分布とを測定する検出部の被測定物の移動方向寸法を最小にした厚さプロファイル測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 被測定物3に連続して放射線を照射する放射線源容器11乃至13と、これらの放射線源容器と被測定物を挟んで対向配置され、放射線源容器から照射された放射X線束が被測定物を透過した透過放射線を検出する多チャンネル検出器21乃至23と、多チャンネル検出器23の後部に設けられ、被測定物及び多チャンネル検出器23または被測定物を透過した透過放射線を検出する単チャンネル検出器24と、多チャンネル検出器21乃至23で検出した透過放射線の強度から被測定物の厚さプロファイルを求め、単チャンネル検出器で検出した透過放射線の強度から被測定物の中心部の厚さを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速で移動する板状の被測定物に放射線を照射して、被測定物を透過した透過放射線の強度から被測定物の中心部の厚さと幅方向の厚さの分布を測定する厚さプロファイル測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延機の圧延ロールによって圧延される板状の金属板(以下、被測定物と称する)の厚さの制御(以下、AGC制御と称する。)と圧延方向と直交する板幅方向の断面形状の制御(以下、プロファイル制御と称する。)は、被測定物の厚さ品質を保証する上で重要な制御である。
【0003】
このAGC制御とプロファイル制御とを行うためには、圧延される被測定物の中心部の厚さ及び被測定物の板幅方向の厚さ分布(以下、厚さプロファイルと称する)を連続して、高速で測定する厚さプロファイル測定装置が必要である。
【0004】
一般に、金属の場合、圧延機で圧延された被測定物の厚さプロファイルは、圧延ロールが剛体でないことから圧延荷重を受けたときにたわみが生じることによって被測定物の板幅の中央部が厚く、端部に行くに従って緩やかに薄く変化するクラウン形状となっている。
【0005】
この厚さプロファイルの品質保証は、公称厚さに対する上下限の許容差が定められており、被測定物の幅方向、長さ方向の全長においてその許容差を保証することが求められている。
【0006】
実際には、圧延された被測定物のプロファイルの変化量は軽量であることから、中央部の最も厚い部分の厚さを高速で連続測定し、幅方向には厚さの薄くなる端部の厚さを幅方向に細かく、被測定物の移動方向には低速度で測定することで対応するようにしている。
【0007】
近年、その保証精度は板材の用途からさらに厳格な保証が求められるようになり、従来の厚さプロファイル測定装置には、さらに高精度、高分解能が要求されるようになっている。
【0008】
従来、このようなAGC制御及びプロファイル制御のための厚さプロファイル測定装置として、図5に示すような構成の厚さプロファイル測定装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
図5(a)は全体の構成図で、図5(b)はその平面図、また、図5(c)は後述する放射線源容器から被測定物3に照射された放射X線束(以下、所定の形状にコリメートされたものを、束と称する。)の形状を図示したものである。
【0010】
この厚さプロファイル測定装置の構成は、検出部11と、検出部11からの検出信号をデジタル化するADC151と、デジタル化された信号から、被測定物3の中央部の厚さ及び厚さプロファイルを求める厚さ演算部152と、検出部11の後述する放射線源容器から照射される放射X線束を予め設定制御するX線制御部153とから構成される。
【0011】
そして、厚さ演算部152で求めた厚さデータと厚さプロファルデータは、被測定物3の厚さを制御するAGC制御手段に送信され、図示しない厚さ制御機構部で制御される。
【0012】
このとき、放射線源容器111乃至放射線源容器113を板幅方向に、夫々の放射X線束がラップして幅方向にもれなく照射されるようにC型フレーム131の上部腕部に、また、被測定物3を透過した夫々の透過放射線を、板幅方向に直線状に対向して並べた多チャンネル検出器121乃至多チャンネル検出123を、被測定物3を挟むように対向してC型フレーム131の下部腕部に設定配置している。
【0013】
また、被測定物3の幅方向の中央部には、単チャンネル検出器124が、放射線源容器113からの透過X線を多チャンネル検出器123の上流近傍で検出するように設定配置されている。
【0014】
ところで、この多チャンネル検出器111乃至113としては、医療用に開発されたCTスキャナーに使用されるXeガスを封入した多数の電離箱が、円弧状に一体成型された多チャンネル検出器や、シンチレータとホトダイオードアレイとを組み合わせた半導体多チャンネル検出器が使用されていた。
【0015】
このような多チャンネル検出器は、小型であるので幅方向の空間分解能は確保できるものの、小型であるため高速で移動する金属の厚さ測定用としては、いずれも検出感度が不十分で必要な測定精度が得られないため種々の改良がなされてきた。
【0016】
例えば、このような目的ための多チャンネル検出器として、一つの測定チャンネルの電離箱の感度と分解能とを最適化するため、円筒状の電離箱が開発され、この円筒形状の電離箱を、円筒軸方向を被測定物3の移動方向に対して所定の角度を回転し、幅方向に複数並べた多チャンネル検出器が開発されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0017】
一方、単チャンネル検出器としては、応答速度が早く、かつ、温度変化にも安定した感度を確保できる、比較的大型の形状の円筒形状の電離箱が要求を満足するものとして使用されている。
【0018】
しかしながら、特許文献1に開示された厚さプロファイルメータは、中央部の多チャンネル検出器123と単チャンネル検出器124とを被測定物3の移動方向に並置し、同じ放射線源容器113からの放射X線束を使用して測定する構造であるため、検出部11の移動方向の寸法Wを小さくできない問題がある。
【0019】
また、放射X線束の光軸から離れた位置におかれるため、単チャンネル検出器の放射X線束の強度が弱くなり単チャンネル検出器124からの検出信号のS/Nが低下する欠点もある。
【0020】
また、検出部11の被測定物3の移動方向の寸法Wが大きくなると、この厚さプロファイル測定装置を設置する場合の搬送ロール4の間の空間距離を大きくする必要がある。
【0021】
この空間距離が大きくなると、被測定物3の圧延作業時のミスでこの空間に被測定物3が突入する可能性が高くなるため、被測定物3やこの周囲の圧延設備、また、この厚さプロファイル装置自信を破損させたりする可能性がある。
【0022】
次に、図6を参照して被測定物3の移動方向の寸法Wの詳細について説明する。図6(a)は、検出部11を被測定物3の移動方向正面、図5(b)に示すx−x方向から見た部分断面図で、図6(b)は被測定物3の移動方向側面、図5(b)に示すy−y方向から見た断面図である。
【0023】
この検出部11の寸法Wは、図6(b)に示すように、被測定物3の移動方向の多チャンネル検出器121の寸法をh1、被測定物3の移動方向の単チャンネル検出器124の寸法をD1、また、これらの収納するための必要な構造物を固定するために必要な余裕寸法をα1とすると、
W≧h1×2+D1+α1
となる。
【0024】
ここで、多チャンネル検出器121乃至多チャンネル検出器122及び単チャンネル検出器124個々の検出器の移動方向の寸法h1と寸法D1とを、移動方向で重なるように配置し、検出部寸11の移動方向寸法Wを短縮することが考えられる。
【0025】
しかしながら、夫々の多チャンネル検出器121乃至多チャンネル検出器122及び単チャンネル検出器124には、図示しない厚さ校正のための基準厚さサンプル移動機構を透過X線が入射する受光窓前面に備えることが必要で、これらの付随する構造物相互の機械的干渉を避ける構造とするために、夫々の寸法h1と寸法D1とが移動方向で重なるように配置することが困難である。
【0026】
このような検出部11の移動方向の寸法Wを短縮できない問題点を解決するために、単チャンネル検出器124に替えて、多チャンネル検出器123の中心部の複数の個々のチャンネル検出器123aを用いる方法が考えられる。
【0027】
図6(d)はその構成を示すもので、多チャンネル検出器123aからの複数の検出信号を加算器125で加算し、被測定物3の移動方向の寸法Wを大きくしないで、感度、応答速度を改善しようとするものである。
【0028】
しかしながら、この方法では、以下に述べる理由から、単チャンネル検出器124に要求される性能を得ることができない。
【0029】
一般に、電離箱の検出性能の向上手段としては、電離箱では受光窓から入手した透過X線から、電離箱内に封入されたガスの体積に比例した電離電流が得られることから電離箱の体積を大きくして検出電流を増やし、この検出電流とX線光子からの相対統計ノイズとの比、すなわちS/N比を向上させる方法が用いられる。
【0030】
この電離箱で検出される相対統計ノイズvと検出電流iとの関係は、電離箱からの増幅回路の時定数をτと、
∝(i×τ)−1/2
の関係があり、例えば、同じ相対統計ノイズvで、時定数τを1/10とするためには、検出電流iを10倍に増やす必要がある。すなわち、同じX線を受光して、検出電流を10倍にするためには、電離箱の体積を10倍にする必要がある。
【0031】
例えば、従来、図7(c)に示す単チャンネル検出器の電離箱としては、τ=10msec、相対統計ノイズ0.1%とした場合の形状としては、D1=100mmΦ、H1=150mm、封入ガス圧は10気圧、程度の大きさの検出器が使用されている。
【0032】
そこで、例えば、多チャンネル検出器123の一つのチャンネルの形状は、要求される空間分解能とその光学的条件からd1=10mmΦ、h1=100mm、そして封入ガス圧は15気圧が可能であるため、この多チャンネル検出器124で単チャンネル検出器123と同じ封入ガス体積を確保するには、100チャンネル分が必要となる。
【0033】
このような多チャンネル検出器123の複数のチャンネルから単チャンネル検出器124並みの性能を確保することは、形状が更に大きくなり、実質的に不可能である。
【特許文献1】米国特許第4633420号明細書(第4ページ、図2)
【特許文献2】特開2002−328016号公報(第2ページ、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
上述したように特許文献1に開示され厚さプロファイル測定装置は、一体成型された多チャンネル検出器123と単チャンネル検出器124とを被測定物3の移動方向に並置し、同じ放射線源容器113からの放射X線束を使用して測定する構造であるため、検出部11の移動方向の寸法Wを小さくできない。
【0035】
また、特許文献2に開示された多点厚み計は、多チャンネル検出器の個々の検出器とその間の検出感度ムラを軽減することはできるものの、中心部の厚さ、と同時に幅方向の厚さプロファイルを測定するための技術は開示されていない。
【0036】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、高速度で移動する板状の被測定物の板幅中心部の厚さと板幅全体の厚さプロファイルを同時に測定する厚さプロファイル測定装置において、厚さプロファイル測定装置の検出部の被測定物の移動方向寸法を最小にし、且つ、中心部の厚さと厚さプロファイルの測定精度と分解能を確保できるようにした厚さプロファイル測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1による厚さプロファイル測定装置は、高速で移動する板状の被測定物に放射線を照射して、被測定物を透過した透過放射線の強度から被測定物の板幅中心部の厚さと板幅方向の厚さの分布を測定する厚さプロファイル測定装置であって、前記被測定物に連続して放射線束を照射する放射線源容器と、前記放射線源容器と、前記被測定物を挟んで対向配置され、前記放射線源容器から照射された放射線束が前記被測定物を透過した透過放射線を検出する多チャンネル検出器と、前記透過放射線の透過方向の前記多チャンネル検出器の後方に設けられ、前記被測定物または、前記被測定物と前記多チャンネル検出器を透過した透過放射線を検出する単チャンネル検出器と、前記多チャンネル検出器で検出した透過放射線の強度から前記被測定物の厚さプロファイルを求め、前記単チャンネル検出器で検出した透過放射線の強度から前記被測定物の中心部の厚さを求める厚さ演算装置とを備えたことを特徴とする。
【0038】
このように構成されたものにおいては、同じ放射線束から被測定物を透過した透過放射線を単チャンネル検出器と多チャンネル検出器で、同時に同じ位置で検出出来るので、被測定物が移動する方向の寸法を最小にした厚さプロファイル測定装置を提供することが出来る。
【0039】
さらに、放射線束の照射エリアを小さくすることから、放射線管理区域のエリアも最小にすることが出来る効果がある。
【0040】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項2による厚さプロファイル測定装置は、前記請求項1において、前記放射線束は、前記被測定物の移動方向に対し直角方向で、前記被測定物の板幅全体を照射できるように設定配置し、前記多チャンネル検出器は、前記多チャンネル検出器個々の検出器の板幅方向の間隔を、中央部に比較して両端部で小さく、且つ、板幅方向に直線状に設定配置し、前記単チャンネル検出器の透過放射線の受光面積は、前記多チャンネル検出器の検出器の受光面積よりも大きくしたことを特徴とする。
【0041】
このように構成されたものにおいては、多チャンネル検出器の個々の検出器を異なる間隔で任意に設定することが可能となるので、板幅方向での測定分解能の要求に応じて、中央部に比較して両端部を細かく設定することができる。
【0042】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項3による厚さプロファイル測定装置は、請求項1において、前記放射線源容器は前記被測定物の板幅中央部及び両端部の3台で構成され、前記両端部の放射線源容器は前記被測定物の板幅の両端部で、夫々の放射線束が直線状に照射されるように設定配置し、前記多チャンネル検出器は、前記被測定物を挟んで前記両端部の放射線源容器及び前記中央部の放射線源容器から照射された夫々の放射線束が、前記被測定物を透過した透過放射線を夫々独立に受光するように、前記被測定物を挟んで対向する位置で3台を設定配置し、前記単チャンネル検出器は、前記中央部の放射線源容器から照射された放射線束が前記被測定物を透過した透過放射線、または前記被測定物及び前記中央部の放射線源容器を透過した透過放射線を受光するように、前記中央部の多チャンネル検出器の個々の検出器板幅方向の間間隔を前記両端部の多チャンネル検出器に比較して大きく空けて、前記透過放射線の透過方向の前記多チャンネル検出器の後方に設定配置したことを特徴とする。
【0043】
このように構成されたものにおいては、放射線源容器と多チャンネル検出器とを複数対組み合わせて板幅方向に配置したので、被測定物の板幅が広くなっても、板幅全体をカバーするような、製造上困難な長い多チャンネル検出器が不要で、幅方向の測定分解能の要求に応じて任意に設定することが可能になる。
【0044】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項4による厚さプロファイル測定装置は、請求項1乃至請求項3において、前記多チャンネル検出器は、円筒形状の電離箱を複数並べて配置し、この電離箱の円筒の軸を前記被測定物の移動方向に対し傾斜した角度で設け、前記単チャンネル検出器の受光窓面積は、前記多チャンネル検出器の一つの検出器の受光窓面積よりも大きな形状の円筒形状の電離箱で構成したことを特徴とする。
【0045】
このように構成されたものにおいては、電離箱の制作が容易で、板幅中央部の厚さ、及び板幅方向の厚さプロファイルの測定精度を同時に満足する厚さプロファイル測定装置を提供することが出来る。
【0046】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項5による厚さプロファイル測定装置は、請求項1乃至請求項3において、前記多チャンネル検出器は、直方体形状の電離箱を複数並べて配置し、この電離箱の長軸を前記被測定物の移動方向に対し平行、または傾斜した角度で設け、前記単チャンネル検出器の受光窓面積は、前記多チャンネル検出器の一つの検出器の受光窓面積よりも大きな形状の直方体形状の電離箱で構成したことを特徴とする。
【0047】
このように構成したものにおいては、電離箱を一体成形したり、幅方向に任意の検出感度と測定分解能を設定したりすることが可能な厚さプロファイル測定装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0048】
以上述べた様に、本発明によれば、多チャンネル検出器の後方に個々のチャンネル検出器よりも受光面積を大きくした単チャンネル検出器を配置するように構成したので、多チャンネル検出器と単チャンネル検出器と並置する場合に比べて、検出部の被測定物が移動する方向の寸法を最小とする構成が可能となり、且つ、単チャンネル検出器の感度と応答速度とを低下させることのない、厚さプロファイル測定装置を提供することが出来る。
【0049】
また、厚さプロファイル測定装置の設置寸法を最小とすることが可能となることで、被測定物の突入する恐れの少ない、より安全な厚さプロファイル測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1(a)は、本発明による厚さプロファイル測定装置の構成図である。同図(b)は、検出部1の平面図、そして、同図(c)は、被測定物3上に照射された3つの放射X線束の形状11B、形状12B、形状13Bを示す。
【0051】
図1(a)において、この厚さプロファイル測定装置の構成は、検出部1と、検出部1からの検出信号をデジタル化するADC51と、デジタル化された信号から、被測定物3の中央部の厚さ及び厚さプロファイルを求める厚さ演算部52と、検出部1の詳細を後述する放射線源容器11乃至放射線源容器13から照射される放射X線束を予め設定制御するX線制御部53とから構成される。
【0052】
そして、厚さ演算部52で求めた厚さデータと厚さプロファルデータは、被測定物3の厚さを制御する厚さプロファイル制御手段に送信され、図示しない厚さ制御機構部及び厚さプロファイル制御装置で制御される。
【0053】
詳細には、検出部11は、被測定物3の幅方向全域のプロファイルを測定するための放射線源容器11及び放射線源容器12からの照射された放射X線束が、被測定物3の上部から、被測定物3の両端部を被測定物3と直角方向(被測定物3の板幅方向)に直線状に照射されるように、さらに、放射線源容器13からの放射X線束が被測定物3の中央部を、被測定物3の移動方向下流において放射線源容器11及び放射線源容器12からのX線放射束の照射位置と平行に所定の距離を置いて照射されるように設定配置される。
【0054】
このとき、放射線源容器11乃至放射線源容器13を板幅方向に、夫々の放射X線束がラップして幅方向にもれなく照射されるようにC型フレーム31の上部腕部に、また、被測定物3を透過した夫々の透過放射線を、板幅方向に直線状に対向して並べた多チャンネル検出器21乃至多チャンネル検出23を、被測定物3を挟むように対向してC型フレーム31の下部腕部に設定配置している。
【0055】
また、被測定物3の板幅方向の中央部には、単チャンネル検出器24が、放射線源容器13からの透過X線を多チャンネル検出器123の透過X線の透過方向後部で検出するように設定配置されている。
【0056】
夫々の放射線源容器11乃至放射線源容器13からの放射X線束の被測定物3上での形状11B乃至13Bは、予め図示しない夫々の放射線源容器11乃至放射線源容器13内に設けられるコリメータで機械的に、また、この時の放射X線束の強度は、被測定物3の公称厚さから、予め、最適な値が厚さ演算部52から指定され、X線制御部53を介して夫々の放射線源容器11乃至放射線源容器13に設定される。
【0057】
このように構成された厚さプロファイル測定装置の検出部1の分解斜視図を図2に示す。図2に示すように、単チャンネル検出器24の検出信号からは板幅中央部での厚さが高精度、かつ、移動方向の分解能が細かく速い応答速度で測定できるように受光面積の大きい円筒形状のものが、また、多チャンネル検出器11乃至多チャンネル検出器13からの検出信号からは幅方向に細かな分解能のプロファイルが測定できるように、円筒形状のチャンネル検出器23aの円筒軸方向を被測定物3の移動方向と角度θ回転させて、多数を並べて構成されている。
【0058】
この時、単チャンネル検出器24の上部にある検出器23aは隣り合う検出器23aと間を空けて間隔dcで配置し、それ以外の周辺部は密に隣り合うように間隔deで配置しておく。
【0059】
次に、この単チャンネル検出器24と多チャンネル検出器23の詳細設定について、図3を参照して説明する。図3(a)は、被測定物3の移動方向正面図1(b)に示すx-x方向から見た部分断面図で、図3図(b)は移動方向側面図1(b)に示すy-y方向から見た断面図である。
【0060】
また、同図(c)は同図(a)のB部の拡大図で、同じく同図(d)は、検出器23aの斜視図である。
【0061】
例えば、被測定物3は、厚さ1乃至10mmの鉄板であるとする。そしてその移動速度が600m/分であるとする。この時、X線管球を使用しX線を照射するとし、そのX線の強度を管球の管電圧100keV、管電流5mA程度に設定する。
【0062】
すると、この時、被測定物を透過するX線から要求される応答速度=10msecで所定の検出電流を得るための単チャンネル検出器24の形状は、受光面となる方の径D=100mm、その円筒長さH=150mm、Xeガスの封入圧を10気圧程度の電離箱が必要であることが実証されている。
【0063】
また、この時多チャンネル検出器23の一つの検出器23aの形状は、板幅方向の分解能と、検出器23aの感度、応答速度から、円筒の径d=10mm、円筒の長さh=100mm、Xeガスの封入圧15気圧程度の電離箱が必要となる。
【0064】
この検出器23aの受光面積はd×hとなるが、板幅方向の要求分解能2乃至5mmは、この検出器23aの検出信号を内挿法で直線補間する等の方法によって得られる。
【0065】
また、検出電流は、単チャンネル検出器24に比べて1/100に低下するが、この検出器23aの移動方向の応答速度を単チャンネル検出24の応答時間τ=10msecの100倍、すなわち1秒程度にすることが可能なので、検出器23aとして必要な感度を得ることが可能である。
【0066】
このような検出器23aと単チャンネル検出器24を使用して、板幅中央部での設定を説明する。図3(c)に示すように、この部分では隣り合う検出器23aの空間gを設ける。
【0067】
例えば、この空間gを10mmとすると、検出器23aの後部に受光面(面積はπD/4)を持つ単チャンネル検出器24で吸受光される透過X線は、重なる検出器23aの受光面積部分で100%吸収されるとしても、空間gを透過した透過X線が受光できるので、重なる部分がない場合の50%の透過X線は受光できる。
【0068】
通常、検出部11の垂直方向の寸法は圧延設備の変更を与えることなく大きくできるので、この条件で透過X線の受光量が不足する場合には単チャンネル検出器24の垂直方向の円筒長さHを長くし、電離箱の空間体積を大きくすることによって、移動方向寸法Wを大きくすることなく、所定の検出電流が得られるように調整できる。
【0069】
また、一般の圧延機で圧延された板材の中央部の厚さ分布は比較的安定した形状であることが多く、この部分の厚さプロファイルが荒いピッチで測定することが許される場合には、多チャンネル検出器23の中央部には検出器23aを置かないように構成することも出来る。
【0070】
この場合、検出器23a、即ち、電離箱の形状を長方体形状とすると、図4(a)に示すように単チャンネル検出器24と多チャンネル検出器23を一体で成型する製造方法も可能となる。
【0071】
また、同図(b)に示すように、夫々の検出器を独立した直方体形状とすることで、中央部の多チャンネル検出器23の検出器23aを異なる間隔で並べたり、中央部の単チャンネル検出器24の空間分解能を独自に設定することも可能である。
【0072】
このように構成された厚さプロファイル測定の移動方向の寸法Wは、多チャンネル検出器23及び単チャンネル検出器24を固定収納するための必要空間をαとすると、D>hの場合は、W=D+h+αとなり、D<hの場合は、
W=2h+αとなる。
【0073】
これは、従来の幅方向の寸法W=h1×2+D1+α1と比べると、
h1=h、D1=D、α1>αとした場合でも、被測定物3の移動方向の検出部1の寸法Wを、少なくともh1+α1-α、またはD1+α1-α分短縮することが可能である。
【0074】
このように構成された被測定物3の移動方向の寸法Wの短縮は、この厚さプロファイル測定装置を設置する場において、被測定物3の搬送ロール4の撤去を最小の1本のみに押さえたり、搬送ロール間の空間を最小寸法にしたりすることが可能となるだけでなく、圧延設備の改造費用も最小に抑える効果がある。
【0075】
また、放射X線の照射範囲を最小にすることから、放射線の管理区域を最小する効果もある。
【0076】
また、このように設定された多チャンネル検出器21乃至23、単チャンネル検出器24からの検出信号は、中央部の厚さ測定に要求さえる応答速度と検出感度、また板幅方向の厚さプロファイルに要求される板幅方向分解能を満足し、被測定物3が高速で移動しても検出性能を満足することが可能である。
【0077】
本発明は、上述したような各実施例に何ら限定されるものではなく、使用する放射線としては、X線以外には放射性同位元素を使用したγ線でも良く、また、単チャン検出器、多チャネル検出器の形状は製造しやすい任意の形状としても良く、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明による厚さプロファイル測定装置の構成図。
【図2】本発明による厚さプロファイル測定装置の検出部の分解斜視図。
【図3】本発明による検出部の詳細構造図。
【図4】本発明による単チャンネル検出器と多チャンネル検出器の電離箱の形状を直方体とした場合の構造例。
【図5】従来の厚さプロファイル測定装置の構成図。
【図6】従来の検出部の詳細構造図。
【符号の説明】
【0079】
1、11 検出部
3 被測定物
11、12、13、111、112、113 放射線源容器
21、22、23、121、122、123 多チャンネル検出器
24、124 単チャンネ検出器
23a 検出器
31、131 Cフレーム
51、151 ADC
52、152 厚さ演算部
53、153 X線制御部
54 厚さプロファイル制御部
154 AGC制御部
11B、12B、13B、 放射X線束の被測定物上での形状(軌跡)
111B、112B、123B 放射X線束の被測定物上での形状(軌跡)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速で移動する板状の被測定物に放射線を照射して、被測定物を透過した透過放射線の強度から被測定物の板幅中心部の厚さと板幅方向の厚さの分布を測定する厚さプロファイル測定装置であって、
前記被測定物に放射線束を照射する放射線源容器と、
前記放射線源容器と、前記被測定物を挟んで対向配置され、前記放射線源容器から照射された放射線束が前記被測定物を透過した透過放射線を検出する多チャンネル検出器と、
前記透過放射線の透過方向の前記多チャンネル検出器の後方に設けられ、前記被測定物または、前記被測定物と前記多チャンネル検出器を透過した透過放射線を検出する単チャンネル検出器と、
前記多チャンネル検出器で検出した透過放射線の強度から前記被測定物の厚さプロファイルを求め、前記単チャンネル検出器で検出した透過放射線の強度から前記被測定物の中心部の厚さを求める厚さ演算装置とを
備えたことを特徴とする厚さプロファイル測定装置。
【請求項2】
前記放射線束は、前記被測定物の移動方向に対し直角方向で、前記被測定物の板幅全体を照射できるように設定配置し、
前記多チャンネル検出器は、前記多チャンネル検出器個々の検出器の板幅方向の間隔を、中央部に比較して両端部で小さく、且つ、板幅方向に設定配置し、
前記単チャンネル検出器の透過放射線の受光面積は、前記多チャンネル検出器の検出器の受光面積よりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の厚さプロファイル測定装置。
【請求項3】
前記放射線源容器は、前記被測定物の板幅中央部及び両端部の3台で構成され、前記両端部の放射線源容器は前記被測定物の板幅の両端部で、夫々の放射線束が直線状に照射されるように設定配置し、前記中央部の放射線源容器は、前記被測定物の中央部に設定配置され、且つ、前記被測定物の移動方向において前記両端部の放射線源容器と異なる位置に配置し、
前記多チャンネル検出器は、前記被測定物を挟んで前記両端部の放射線源容器及び前記中央部の放射線源容器から照射された夫々の放射線束が、前記被測定物を透過した透過放射線を夫々独立に受光するように、前記被測定物を挟んで対向する位置で3台を設定配置し、
前記単チャンネル検出器は、前記中央部の放射線源容器から照射された放射線束が前記被測定物を透過した透過放射線、または前記被測定物及び前記中央部の放射線源容器を透過した透過放射線を受光するように、前記中央部の多チャンネル検出器の個々の検出器の板幅方向の間隔を前記両端部の多チャンネル検出器に比較して大きく空けて、前記透過放射線の透過方向の前記多チャンネル検出器の後方に設定配置したことを特徴とする請求項1に記載の厚さプロファイル測定装置。
【請求項4】
前記多チャンネル検出器は、円筒形状の電離箱を複数並べて配置し、この電離箱の円筒の軸を前記被測定物の移動方向に対し傾斜した角度で設け、
前記単チャンネル検出器の受光窓面積は、前記多チャンネル検出器の一つの検出器の受光窓面積よりも大きな形状の円筒形状の電離箱で構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の厚さプロファイル測定装置。
【請求項5】
前記多チャンネル検出器は、直方体形状の電離箱を複数並べて配置し、この電離箱の長軸を前記被測定物の移動方向に対し平行、または傾斜した角度で設け、
前記単チャンネル検出器の受光窓面積は、前記多チャンネル検出器の一つの検出器の受光窓面積よりも大きな形状の直方体形状の電離箱で構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の厚さプロファイル測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−170883(P2006−170883A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365786(P2004−365786)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】