説明

原子力設備および原子力設備の圧力逃し法

圧力逃し管(6)が接続された格納要素(2)を備え、該圧力逃し管(6)に、洗浄液(W)が充填された容器(14)内に配置されたベンチュリ洗浄器(12)および絞り装置(24)が直列接続された原子力設備(1)において、圧力逃し時、超微粒の空気担持放射能又はエーロゾルも特に高い確実性でベンチュリ洗浄器(12)に捕捉可能とし、もって大気への放散を特に高い確実性で防止可能とする。そのため本発明に基づき、ベンチュリ洗浄器(12)と絞り装置(24)を、圧力逃し管(6)内を流れる空気・蒸気混合物のベンチュリ洗浄器(12)における絞り装置(24)での臨界膨張時、150m/秒以上の空気・蒸気混合物の流速が生ずるように寸法づける。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力逃し管が接続された格納要素を備える原子力設備に関する。本発明はまたこの種原子力設備の圧力逃し法に関する。
【0002】
原子力設備の事故或いは故障時、各事故状態や、場合により導入された例えばコンテインメント雰囲気の不活性化等の対抗処置に関係し、格納容器の内部に顕著な圧力上昇が生ずることを予期せねばならない。その結果予測される格納容器やコンテインメント自体又は内部に配置された系統構成要素の構造的損傷を防止すべく、原子力設備は、コンテインメント雰囲気の放出(ガス抜き)による必要に応じたコンテインメントの圧力逃しに対し設計される。そのため、通常、原子力設備の格納容器に圧力逃し管が接続されている。
【0003】
しかし、通常コンテインメント雰囲気は、例えば希ガス、沃素又はエーロゾル等の放射性物質を含んでいる。該物質はガス抜き時に原子力設備の周囲に達し得る。特に炉心溶融が発生するような重大事故時、コンテインメント内部で空気担持放射能(エーロゾル)が特に高濃度になり、この結果大きな漏れや許容できない過圧状態が生じた際、エーロゾルや放射能が多量に原子力設備の周囲に流出してしまう。そのような空気担持放射能は、一緒に運び出される、特に例えば沃素やセシウムの同位元素のような半減期の長い成分のために、長期にわたる地表汚染を引き起こす。これを防止すべく、コンテインメント雰囲気のガス抜きに利用される圧力逃し系統は、通常、コンテインメント雰囲気に運び込まれた空気担持放射能の大気への放散を阻止するフィルタ装置や捕捉装置を備える。
【0004】
この目的のため、例えば欧州特許第0285845号明細書で、原子力設備の格納要素に接続された圧力逃し管に、空気担持放射能を捕捉するためのフィルタとして用いるベンチュリ洗浄器と絞り装置を直列接続した、原子力設備の圧力逃しの方法が公知である。ベンチュリ洗浄器は、容器内に充填した洗浄液内に配置された多数のベンチュリ管を有し、該ベンチュリ管に、圧力逃し管内を流れるガス流が供給される。
【0005】
ベンチュリ管はノズル状に形成された狭隘個所を有し、貫流するガス流は該狭隘個所で特に大きな流速に加速される。狭隘個所の範囲に洗浄液の入口開口が設けられ、流入する洗浄液は貫流ガス流によって一緒に運ばれる。当該個所での非常に高い流速のため、洗浄液が細分化され、ガス流内を一緒に運ばれてきた空気担持放射能やエーロゾルは、それによって生じた液滴内に封じ込まれる。従って、続くガス流からの液滴分離によって、一緒に運ばれてきたエーロゾルや空気担持放射能の大部分を除去できる。
【0006】
欧州特許第0285845号明細書に記載された系統では、ベンチュリ洗浄器に直列接続された絞り装置を、所謂臨界膨張運転用に設計している。臨界膨張中、配管系統内に圧力比、即ち、特に絞り装置により、配管内を流れる媒体が絞り装置を音速で貫流するような圧力降下が生ずる。その作用は、欧州特許第0285845号明細書での系統の場合、応答時、即ちコンテインメントの圧力逃し時に、圧力逃し管内にある時間にわたり一様な体積流量を生じさせるべく利用されている。
【0007】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の原子力設備を、圧力逃し時に超微粒の空気担持放射能或いはエーロゾルもベンチュリ洗浄器によって特に高い確実性で捕捉し、大気への放散を特に高い確実性で防止できるよう改良することにある。またそのような原子力設備の圧力逃し法を提供することにある。
【0008】
原子力設備についてのこの課題は、本発明に基づき、ベンチュリ洗浄器および絞り装置を、圧力逃し管内を流れる空気・蒸気混合物のベンチュリ洗浄器における絞り装置での臨界膨張時に150m/秒以上、好適には200m/秒以上の空気・蒸気混合物の流速が生ずるよう寸法づけることで解決される。
【0009】
その際の寸法づけは、高い流速が主に分離装置の運転過圧範囲全体にわたり、例えば2〜10×105Paの各運転圧力と無関係に生ずるように行う。洗浄装置の高い運転圧力時に高密度ガスの相応した加速を発生するために生ずる、例えば運転圧力105Pa時の0.5×105Pa以上および例えば運転圧力5×105Pa以上時の2×105Pa以上のベンチュリ圧力損失は、ベンチュリ洗浄器と絞り装置との組合せにより運転範囲全体にわたり受動的に調整される。
【0010】
本発明は、空気担持放射能やエーロゾルを、ベンチュリ洗浄器又はベンチュリ管においてその管内に水を供給することでそこに生ずる流れ状態に基づいて分離すべく、非常に細かい液滴霧を発生し、分離すべき空気担持放射能やエーロゾルをこの液滴内に封じ込め、もって液滴と共にガス流から除去するという考えから出発する。特に超微粒エーロゾルに対する高い分離作用も、エーロゾルが特に相応した多量の洗浄液供給によって支援されて適当な水滴に衝突し、その中に封じ込まれる確率が特に高くなることで達成できる。
【0011】
狭隘個所での負圧による管内部への洗浄液の供給、従って外部作業媒体を必要としない受動様式による洗浄液供給を保証するベンチュリ管で、液滴霧における超微粒エーロゾルの衝突と封じ込めの確率がかなり過剰比例的に増大し、この結果ベンチュリ管内のガス流の非常に高い流速で、約1μmの粒子径の混合エーロゾルに対し99.9%以上、0.5μm以下の粒子径の非常に細かいエーロゾルに対しても98%の分離率が得られることが新たに解った。従って、原子力設備の圧力逃し・放射能捕捉系統は、圧力逃し時におけるかかる高い流速の維持に対し設計すべきである。
【0012】
その場合、事故シナリオにおける事故の全経過中にわたる各段階で、例えば設備圧力のような大きく変動するパラメータに関してかかる高い分離率を保証すべく、従って事故の各段階において大気への汚染成分の放散をできる限り防止すべく、原子力設備の圧力逃し・放射能捕捉系統は、原子力設備の格納容器内にかかる系統圧力に殆ど無関係にそのような高い分離率を示さねばならない。その際、所謂臨界膨張で作動する絞り装置が、流れ媒体で入口圧力と無関係にその音速で貫流されるという認識を的確に利用する。
【0013】
従って、臨界膨張状態において、絞り装置を通る体積流量は入口圧力と無関係に一定している。ベンチュリ洗浄器と絞り装置および場合によってはエーロゾル後置金属精密フィルタとの適当な組合せで、臨界膨張時に絞り装置を介して、ベンチュリ洗浄器および場合によってはエーロゾル後置精密フィルタを経て流れる媒体の体積流量が、絞り装置の入口側に与えられる格納容器内の系統圧力と無関係にほぼ一定に維持される。従って、絞り装置とベンチュリ洗浄器との組合せで、事故シナリオのほぼ全体にわたり、即ち生じている圧力状態に基づき絞り装置による臨界膨張が生じている間にわたり、ベンチュリ洗浄器および場合によってはエーロゾル後置精密フィルタでの一様な高い分離率を保証できる。
【0014】
この目的のため、ベンチュリ洗浄器と絞り装置は、絞り装置における臨界膨張時にベンチュリ洗浄器における特に高い流速の所望の流れ状態および場合によってはエーロゾル後置精密フィルタで最良の速度が生ずるよう、相互調和の形で適切に寸法づけられる。所望の高い分離率のために必要なベンチュリ洗浄器での流れ媒体の最低流速は、流れ媒体の精密な組成に左右され、組成の変化時、例えばH2含有量が高いとき、高い値に変移する。
【0015】
しかし、原子力設備の格納容器の圧力逃し時に流出する流れ媒体に対し、ベンチュリ洗浄器と絞り装置の組合せが、圧力逃し管内を流れる空気・蒸気混合物の場合に、絞り装置に生ずる臨界膨張時、ベンチュリ洗浄器に150m/秒以上、好適には200m/秒以上の空気・蒸気混合物の流速が生ずるように設計し、寸法づけることで、十分高い分離率が得られることが解った。流れ媒体の流速は、特に各狭隘個所の範囲で定まる。
【0016】
ベンチュリ洗浄器と絞り装置との組合せで生ずる高い速度は、ガス組成の変化時、例えばH2含有量が上昇した際、高い音速のために一層高い値に変移する。更に混合ガスと洗浄液とから成る二相混合物の場合、ベンチュリ洗浄器で約270〜300m/秒の臨界最高速度が生ずることを確認した。特に高いベンチュリ設計速度を、約300m/秒の最高二相混合物速度の約2/3に相当する例えば200m/秒に選定することで、音速の高い混合物が存在する場合も、固有の安全流量限界が可能となり、続く捕捉装置を確実に過負荷から保護できる。
【0017】
ベンチュリ洗浄器は多数のベンチュリ管を有するとよい。該ベンチュリ管を、所謂短ベンチュリ管として形成し、その出口を洗浄液の予め定められた設定水位の下側に配置し、もってベンチュリ管をほぼ完全に洗浄液内に浸ける。この際、高い位置の分離器・フィルタ部分をオーバーフロー防護体で水の侵入から防護すると特に好ましい。従ってこの実施態様では、構成要素高さを低くなし得る。この実施態様では、特に高い総分離率に対し、後置接続した金属繊維フィルタとの組合せが有効である。
【0018】
洗浄液の上で初めて吹き出すベンチュリノズル管によって、構成要素寸法を決定づけるオーバーフロー防護体が最小となり、更にベンチュリ洗浄装置内にかなり大きな空洞速度が得られる。その結果、ベンチュリ洗浄器直径がかなり小さくなり、構成要素高さが低くなり、洗浄液の消費量が減少する。この結果可能になるコンパクトな構造により、特に既存の水槽と組み合わせて、原子力設備の例えば原子炉建屋等の特別防護建屋部分の中に装置を容易に組み込め、遮蔽費用が減少する。
【0019】
従って大部分のベンチュリ管を所謂長ベンチュリ管として形成し、該管の出口を洗浄液の設定水位の上側に配置するとよい。また保守点検の必要な容器の範囲での堆積を防ぐべく、ベンチュリ洗浄器を、他の実施態様では、運転中の洗浄液の比較的強い旋回と循環を起すように設計する。そのため少量のベンチュリ管、好適には10%迄のベンチュリ管を、吹き出し方向を下向きにして容器内部に、洗浄液の設定水位の下側に配置する。
【0020】
高い分離率を保証すべく、ベンチュリ洗浄器において、例えばガス1m3毎に5リットル、特に10リットル以上の比較的多量の水供給が好ましい。これを保証すべく、ベンチュリ管は、他の有利な実施態様では、ノズル円周にわたり延びる開口角20〜85°、好適には30〜45°の環状スリット入口を備える。かかる多量の水供給に対し、ベンチュリ洗浄器のベンチュリ管を、洗浄液の入口面積と喉横断面積との比率が10:1以下、好適には約3:1になるよう形成するとよい。前記喉横断面積は、各ベンチュリ管の内部の狭隘個所で流れ媒体が自由に貫流できる横断面積である。
【0021】
特に有利な実施態様では、ベンチュリ洗浄器のベンチュリ管を、貫流する媒体により発生した負圧に基づき、ベンチュリ管の内部における核流範囲迄の洗浄液の受動的な吸込みと分配を保証すべく設計する。そのためベンチュリ洗浄器のベンチュリ管を、喉径が約80mm以下、好適には約40mm以下の円形ベンチュリ管として形成し、又は喉幅が約100mm以下の平形ベンチュリ管として形成する。それに加えて又は代えて、ベンチュリ洗浄器のベンチュリ管を、喉径と高さとの比率を5以上、好適には10以上にする。
【0022】
製造組立費用が低く且つ防護された設備範囲への収納を容易にした、原子力設備に付設される圧力逃し・放射能捕捉系統に対する特に小形の構造は、ベンチュリ洗浄器を装備する容器を洗浄液側で洗浄液タンクに接続することで得られる。この結果、容器自体に充填すべき洗浄液量が比較的少なくなり、必要に応じ、特に洗浄液の消費時、洗浄液タンクから補給される。この意味で、特に多量の未使用洗浄液を別個の貯蔵容器に貯え、特に蒸発した洗浄液の補充に用いる。容器内の充填水位は、洗浄液タンクの配置にて測地学的に同じ高さにし又は充填水位・フロート制御方式で受動的に調整する。洗浄液タンクとして、特に例えば廃水容器、脱イオン水貯蔵槽等の元々存在する水槽も利用できる。その場合、容器への洗浄液の必要に応じた補給は、落差又は圧縮空気で運転される膜ポンプにより起こり得る停電と無関係に行える。
【0023】
特に有効な放射能捕捉は、原子力設備に付設された圧力逃し・放射能捕捉系統を、洗浄液内での分離された空気担持放射能又はエーロゾルのコンテインメントへの必要に応じた再循環用に設計することで得られる。そのため、ベンチュリ洗浄器を装備した容器を、特に有利な実施態様では、洗浄液側で、帰還管を介して原子力設備の格納容器の内室に接続する。この実施態様により、容器内に存在しガス流から分離された放射能又はエーロゾルで負荷された洗浄液を、必要に応じ、即ち特に定常的或いは周期的に完全に又は部分的に格納容器に移し、この結果、処理を必要とする放射能全部がコンテインメント内に留められる。帰還により達せられた洗浄液内の放射能の減少により、再懸濁化を抑制できる。この再懸濁化は、後置接続されたフィルタ装置への放射能排出を生じさせ得る。
【0024】
容器への洗浄液の補給は、特に洗浄液タンクから行う。かかる放射能の再循環又は帰還により、全体として洗浄液内に含まれる放射能量と放射能濃度を特に低く抑え、この結果例えば後置接続したフィルタ装置への放射能排出を生じさせる再懸濁液化も特に僅かにできる。この結果、高いベンチュリ分離率と組み合わせて、フィルタ負荷の低減、従って必要なフィルタ面積の縮小が可能となる。また数日間にわたる非常に長いガス抜き中、特に沃素およびエーロゾルに対する放射能捕捉の顕著な改善が達成できる。
【0025】
更に、ベンチュリ洗浄器で分離された放射能の帰還や再循環により、エーロゾル又は空気担持放射能を介して生ずる崩壊熱を容器から遠ざけ、コンテインメント内に戻し、この結果、例えば液体蒸発によって起こり得る容器の負荷を特に低く抑え、もって後続の金属繊維フィルタが、再懸濁エーロゾルおよび沃素吸収フィルタにおける沃素分離が沃素再懸濁液によって過負荷されることなく、数日間および数週間にわたる非常に長いガス抜き運転が可能となる。長期にわたるガス抜き運転によるそのような設計要件は、従って新しい原子力設備に対しても、(例えば膜ポンプ等による独立した洗浄液補給およびコンテインメントへの流量制限絞りを介しての放射能帰還と組み合わせて)重大事故を防止するための厳しい要件を確実に、特に安価に満たし得る。
【0026】
それによって達成される洗浄液の蒸発防止により、全体として、即ち容器への洗浄液の考え得る補給を考慮に入れても、洗浄液の必要量が全体として減少する。
【0027】
原子力設備の格納容器を貫通する厳しい安全要求で設計したブッシングの数を特に少なくすべく、帰還管を、圧力逃し管を経て格納容器の内室に接続するとよい。該再循環又は帰還は、圧力逃し管の中央部への噴射供給で行え、この結果、圧力逃しガス流に対する対向流で、放射能で負荷された洗浄液のコンテインメントへの移送が行える。
【0028】
ベンチュリ部分に、液滴帰還路付きの二重形重力除滴器を後置接続するとよい。液滴を分離すべく、10m/秒以上の高速で運転される遠心分離機を採用し、該分離機を同時に絞り効果を基に加熱のために利用する。従って、必要な場合に後置接続された金属フィルタ段で液滴は生ぜず、この結果ユニットを低い又は同じ高さに配置でき、所要空間および空間高さを減少できる。
【0029】
一層の除湿と前濾のため、前進空気流内に50μm以下の繊維を備えた繊維分離器と、20μm以下の繊維、好適には繊維太さが低下する前置フィルタ装置とを組み合わせるとよい。精密濾過は好適には5μm迄の繊維で行い、この結果、浸透する少量の0.5μm以下の微粒エーロゾルも十分に捕捉できる。フィルタ要素は特殊鋼繊維で作るとよい。精密濾過は、気孔直径2μm以下の焼結繊維フィルタでも行える。
【0030】
効果的な有機沃素分離のため、絞り後に、例えば硝酸銀や他の銀化合物等で被覆した分子篩(モレキュラーシーブ)を、捕捉系統の長期運転用に利用するとよい。分子篩に流入する前のガス流の加熱は、初めに最大運転圧力に対しなお有用な、例えば2×105Pa以上の圧力勾配を少なくとも50%だけ絞ることで行うとよい。この結果、沃素吸収フィルタでのガス流の受動的で単純な加熱が可能となる。
【0031】
捕捉装置、即ちベンチュリ洗浄器と金属繊維フィルタは、容器の内部に高さ的にも段階づけて収納される。高い位置のフィルタは入口防護体が設けられ、この結果、特に低い構造高さが生ずる。
【0032】
外部の能動的構成要素に頼ることのない完全受動系統の様式での帰還を可能とすべく、他の有利な実施態様では、測地学的に格納容器からの圧力逃し管の出口個所より少なくとも約5m、好適には少なくとも10m高い位置に容器を配置する。この結果、放射能で負荷された洗浄液の圧力逃し管を経てのコンテインメントへの帰還は、圧力逃し管と容器との間の水柱の測地学的圧力だけで可能であり、この結果、他の能動的補助手段なしにガス流と対向流で噴流帰還が行える。
【0033】
洗浄液は、特に沃素又は沃素含有化合物の効果的捕捉のために調製するとよい。そのため、容器内にpH値が少なくとも9の洗浄液を充填し、該pH値を、例えばNaOH等のアルカリ液および/又は硫酸ナトリウムの添加により調整する。洗浄液へのこの化学物質の添加は、洗浄液内の濃度が0.5〜5重量%となるよう、別個の化学物質容器から、真水流内に存在するジェットポンプによる吸引で行うのが望ましい。
【0034】
他の実施態様では、絞り装置を容器に組み入れることで、特に小形化が図れる。
【0035】
例えば消防用ポンプや他の系統等の、既存の系統による単純な緊急非常処置として、捕捉装置を経て完全に又は部分的に原子炉圧力容器範囲に冷水をガス抜きガスと対向流の形で補助的に直接供給することで、同時に、放射能再循環およびエネルギ吸収による原子炉の炉心冷却が行える。特に事故の早い段階で、多量の供給量にてコンテインメント内の充填水位を高めることで、吸い出すべき蒸気・ガス混合物の一層の減少が可能となり、これに伴い、同時に捕捉装置又は吸出し装置の寸法の縮小を達成できる利点がある。
【0036】
冒頭に述べた形式の原子力設備の圧力逃し法に関する課題は、ベンチュリ洗浄器に、圧力逃し管内を導かれる媒体を150m/秒以上、好適には200m/秒以上の流速で供給することで解決される。
【0037】
本発明による利点は、特に絞り装置とベンチュリ洗浄器の相互に調和した寸法付けの的確な組合せにより、ほぼ事故の全経過中にわたり、ベンチュリ洗浄器の圧力逃しガス流による特に高い流速での貫流を保証できることにある。この結果、どんな場合でも、既に洗浄液内における一緒に運ばれてきた空気担持放射能又はエーロゾル、特に0.5μm以下の粒子径の微粒エーロゾルに対し98%以上の特に高い分離率を保証し、もって放射能の大気への放散を特に確実に防止できる。
【0038】
ベンチュリ洗浄器、後置接続された絞り装置および場合によっては金属繊維フィルタで形成された圧力逃し・放射能捕捉系統は、受動作動系統の様式で独自に、事故のほぼ全段階にわたり、格納容器における系統圧力と無関係にベンチュリ洗浄器を経てのほぼ一定した流量を保証し、この結果、この系統は、特に所謂圧力変動運転、即ち他の絞り装置を前置接続する必要なしに格納容器における系統圧力の直接供給に対し適用できる。圧力逃し管内を導かれる流れ媒体に関係し、絞り装置による臨界膨張時にベンチュリ洗浄器を通るほぼ一定した流量を保証できる。絞り装置により、該装置での媒体の流速は、系統圧力と無関係にほぼ音速となり、この結果、それに伴いベンチュリ洗浄器を通る体積流量も圧力と殆ど無関係に一定となる。また圧力逃し管内を流れるガス混合物の場合、150〜200m/秒の非常に高いノズル速度を維持する際、例えばH2含有量が高いときには300m/秒以下に限定されて、既にベンチュリ洗浄器で発生した圧力損失に基づくベンチュリ洗浄器における混合物と無関係な受動的流量制限を保証できる。
【0039】
帰還路付きの高速・ベンチュリ洗浄器と後置接続された金属繊維フィルタとの組合せによって、長期運転でもコンテインメント内でのエーロゾル濃度と無関係に、99.99〜99.999%以上の総分離率を保証できる。
【0040】
以下図を参照し、本発明の実施例を詳細に説明する。なお各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0041】
図1の原子力設備1は、コンテインメントとも呼ばれる格納容器2を備える。この器2内に、発電用の原子核設備構成要素と他の系統構成要素が収納されている。格納容器2の内部で進行する過程のために格納容器2の内部に激しい圧力上昇が生ずることが予期される重大事故時でも、格納容器2の構造的損傷や不安定化を確実に防止すべく、原子力設備1は格納容器2に接続された圧力逃し・放射能捕捉系統4を備えている。該圧力逃し・放射能捕捉系統4は、ガス抜きとも呼ばれる、格納容器2から必要に応じ大気へのコンテインメント雰囲気の的確な制御放出を可能にしている。
【0042】
圧力逃し・放射能捕捉系統4は格納容器2に接続された圧力逃し管6を有し、該管6は出口側が放出煙突8に接続されている。ガス抜き又はコンテインメント雰囲気放出時の原子力設備の周囲(大気)の汚染を防止すべく、圧力逃し・放射能捕捉系統4は、コンテインメント雰囲気内に含まれる空気担持放射能やエーロゾルの確実な捕捉を可能とする。そのため、圧力逃し・放射能捕捉系統4は、空気担持放射能又はエーロゾルに対するフィルタ装置として利用される湿式洗浄器10を有している。
【0043】
該洗浄器10は圧力逃し管6に接続されたベンチュリ洗浄器12を有し、該洗浄器12は洗浄液Wが充填された容器14内に配置されている。ベンチュリ洗浄器12は多数のベンチュリ管16を有し、該管16の出口18は容器14内で、洗浄液Wの設定水位20上に存在するガス空間22に開口している。ガス空間22、従って容器14内に、絞り装置24が組み入れられ、絞り装置24はガス流側でベンチュリ洗浄器12に直列接続されている。絞り装置24は、出口側でフィルタ装置26を介して放出煙突8に接続された圧力逃し管6の管部分に接続されている。フィルタ装置26は金属繊維フィルタ28、中間絞り30およびそれに続く分子篩32を有する。金属繊維フィルタ28は、繊維直径が40μmから約1μm迄細くなる繊維フィルタマットを備えた精密フィルタとして形成され、この結果特に0.5μm以下の粒子径を持つ浸透性微粒エーロゾルも効果的に捕捉可能である。それに加えて或いは代えて、ベンチュリ洗浄器12に、液滴帰還路付きの、好適には二重に形成した重力除滴器も後置接続できる。
【0044】
原子力設備1の圧力逃し・放射能捕捉系統4は、特に確実な放射能捕捉と、特に粒子径0.5μm以下の微粒エーロゾルに対しても98%又はそれ以上の洗浄装置の分離率とを保証するよう設計されている。この目的のため、ベンチュリ洗浄器12と絞り装置24はその寸法づけに関して相互に的確に調和されている。設計目標として、応答時にベンチュリ洗浄器12を、圧力逃しガス流で150m/秒以上、特に200m/秒以上の特に高い流速で貫流することを基礎としている。即ち、かかる高い流速の場合に分離率の飛躍的な増大が達成され、その際、特に微粒エーロゾルおよび超微粒エーロゾルも洗浄液滴に封じ込まれ、従って分離される。
【0045】
特に流れ断面積の適切な選択によって、事故シナリオの殆ど全ての段階において、そのような高い流速がベンチュリ洗浄器12にかかることを保証できる。そのため、一方では絞り装置24が、主に応答時に、即ち限界圧より高い系統圧力において臨界減圧範囲内で作動すべく設計している。この結果、絞り装置24を貫流するガス流内に、格納容器2内の系統圧力と無関係に、流れ媒体にとって重要な音速が生ずる。格納容器2内の系統圧力と無関係な絞り装置24での流速に基づき、絞り装置24を通る体積流量は、格納容器2内の系統圧力とほぼ無関係に一定となり、その結果前置接続されたベンチュリ洗浄器12を通る体積流量も一定に保てる。
【0046】
かくして所謂圧力変動運転を可能にすべく、即ち格納容器2内の系統圧力を直接供給すべく、圧力逃し・放射能捕捉系統4を、ベンチュリ洗浄器12が格納容器2内の系統圧力と殆ど無関係に相応して高く選択した流速で一様に貫流されるように設計している。これはコンテインメントからの流入管における大きな圧力損失が、ゼータ値1以下、好適には0.5以下の低圧力損失の偏心蝶形弁の採用で最小にすることによっても達成される。
【0047】
図2の拡大図から解るように、ベンチュリ洗浄器12は多数のベンチュリ管16を備える。これら管16に、圧力逃し管6に入口側が接続された共通の供給系統40からガス流が供給される。大部分のベンチュリ管16は所謂長ベンチュリ管として形成され、該管は出口18が洗浄液Wの設定水位20の上側に配置され、従って「自由吹き出し」配置の形でガス空間22に直接開口している。しかし、少量のベンチュリ管16、即ち10%以下のベンチュリ管16を斜め下向きにすることで、付着又は堆積によるベンチュリ洗浄器12の汚染や運転性能の悪化を防止することも考慮している。ベンチュリ旋回流により、容器14の内部での洗浄液Wの強い循環を起し、この結果堆積を確実に防止できる。
【0048】
特に長ベンチュリ管として形成したベンチュリ管16は、処理の必要なガスに対しガス1m3当たり5リットル以上、特に10リットル以上の比較的多量の洗浄液Wを供給すべく設計されている。そのため、ベンチュリ管16の、洗浄液Wの入口範囲42に、ノズル円周にわたり開口角30〜45°の環状スリット入口を設けている。その寸法づけは、各ベンチュリ管16の環状スリット入口に定められた洗浄液Wの入口面積と、狭隘個所又は所謂喉に定められた喉横断面積との比率が約3:1になるように行っている。ちなみに狭隘個所44は、貫流するガス流が最大流速を示す個所でもあり、従って該狭隘個所44でベンチュリ洗浄器12と絞り装置24の設計と調和に対し考慮した流速が決まる。
【0049】
この実施例で、ベンチュリ管16は、喉径40mm以下の円形長ベンチュリ管として形成され、この結果、貫流する媒体により生ずる負圧に基づく洗浄液の受動的吸込みと分配時に、各ベンチュリ管16の内部における核流範囲迄の洗浄液Wの供給が保証される。更に、ベンチュリ管16の喉径と高さとの比率は10以上にされている。
【0050】
更に図2の拡大図から解るように、絞り装置24に液滴を分離すべく、降水管46を設けている。この管46は出口側で洗浄液Wに開口している。絞り装置24は出口側で圧力逃し管6に接続されている。
【0051】
更に図1から解るように、容器14を特にコンパクトな構造にすべく、洗浄液Wの複合貯蔵槽を設けている。一方では容器14内に洗浄液Wが充填され、該洗浄液W中にベンチュリ洗浄器12を配置している。それに加えておよび補足して、容器14は洗浄液側で供給管48を経て洗浄液タンク50に接続されている。このタンク50は、その目的で設計された固有の小容器であり、容器14への洗浄液Wの確実な補給のため測地学的に適当な高さに置かれ、容器14での洗浄液Wの設定水位20は、洗浄液タンク50内に貯蔵した洗浄液Wに設定高さで調整できる。或いは洗浄液タンク50として、例えば廃水容器、脱イオン水貯蔵槽等の元来設けてある水槽も利用できる。その際、容器14への洗浄液Wの補給は、適当に選定された落差や、例えば膜ポンプ又は圧縮空気により行う。
【0052】
更に容器14の洗浄液側は、帰還管52を経て格納容器2の内室に接続されている。この結果、空気担持放射能やエーロゾルで負荷された洗浄液Wの容器14から格納容器2への帰還が、再循環或いは帰還の形で可能となる。これに伴い、放射能負荷された洗浄液Wの定常的又は周期的再循環により、放射能はその全部が特に確実にコンテインメントや格納容器2の内部に保持できる。従って、大気への排出の危険を抑制できる。ちなみに、そのような洗浄液Wの再循環により、捕捉された放射能で搬入された崩壊熱も、徹底して容器14から格納容器2に戻し、もって、容器14内での洗浄液Wの蒸発を特に低く抑えられる。格納容器2の内室への洗浄液Wの再循環と、洗浄液タンク50からの洗浄液Wの補給とにも係らず、蒸発量の減少のために、洗浄液Wの全消費量は特に僅かになる。
【0053】
破線54で示すように、帰還管52は圧力逃し管6を経て格納容器2の内室に接続できる。図3の部分拡大図で示す如く、再循環は、格納容器2から流出するガス流に対し対向流で受動形態の形で生じ、格納容器2を貫通する補助的なブッシングは不要となる。帰還すべき洗浄液Wに十分な供給圧力を保証すべく、この実施例で、洗浄液Wを貯える容器14は、十分な測地学的高さ、即ち圧力逃し管6の格納容器2からの出口個所56の約10m上に配置される。帰還管52内の水柱の測地学的圧力だけで、受動系統の形式で、コンテインメント又は格納容器2への洗浄液Wの十分な帰還圧力が保証される。
【0054】
或いはコンテインメントにおける過圧時の流出弁の閉鎖による周期的帰還の利用又はポンプ、例えば圧縮空気膜ポンプや回転ポンプから供給される別個の未臨界小断面積を持つ小配管の利用も考えられる。そのために必要な構成要素、例えば圧縮空気槽58を図1に概略的に示す。
【0055】
確実な沃素捕捉のため、容器14内の洗浄液WのpH値をアルカリ性の値、特に9より大きなpH値に調整する。そのため、必要に応じたNaOH、他のアルカリ液および/又は硫酸ナトリウムの添加を、真水流内に存在するジェットポンプによる吸込みで行う。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】圧力逃し・放射能捕捉系統が付設された原子力設備の概略図。
【図2】ベンチュリ洗浄器付き容器の概略断面図。
【図3】図1の格納容器からの圧力逃し管の出口個所の断面図。
【符号の説明】
【0057】
1 原子力設備、2 格納容器、4 圧力逃し・放射能捕捉系統、6 圧力逃し管、8 放出煙突、10 湿式洗浄器、12 ベンチュリ洗浄器、14 容器、16 ベンチュリ管、
18 出口、20 設定水位、22 ガス空間、24 絞り装置、26 フィルタ装置、28 金属繊維フィルタ、30 中間絞り、32 分子篩、40 供給系統、42 入口範囲、44 狭隘個所、46 降水管、48 供給管、50 洗浄液タンク、52 帰還管、56 出口個所、58 圧縮空気槽、W 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力逃し管(6)が接続された格納要素(2)を備え、前記圧力逃し管(6)に、洗浄液(W)が充填された容器(14)内に配置されたベンチュリ洗浄器(12)並びに絞り装置(24)が直列接続された原子力設備(1)において、ベンチュリ洗浄器(12)および絞り装置(24)が、圧力逃し管(6)内を流れる空気・蒸気混合物のベンチュリ洗浄器(12)における絞り装置(24)での臨界膨張時に150m/秒以上の空気・蒸気混合物の流速が生ずるように寸法づけられたことを特徴とする原子力設備。
【請求項2】
ベンチュリ洗浄器(12)と絞り装置(24)が、空気・蒸気混合物の流速が二相混合物の最高速度の1/3であるように寸法づけられたことを特徴とする請求項1記載の原子力設備。
【請求項3】
ベンチュリ洗浄器(12)が多数のベンチュリ管(16)を有し、大部分のベンチュリ管(16)の出口(18)が、洗浄液(W)の設定水位(20)の上側に配置され、少量のベンチュリ管(16)が、吹き出し方向を下向きにして配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載の原子力設備。
【請求項4】
ベンチュリ洗浄器(12)のベンチュリ管(16)が、各々洗浄液(W)の流入面積と喉横断面積との比率を10:1以下にされたことを特徴とする請求項1から3の1つに記載の原子力設備。
【請求項5】
ベンチュリ洗浄器(12)のベンチュリ管(16)が、喉径80mm以下の円形ベンチュリ管として又は喉幅100mm以下の平形ベンチュリ管として形成されたことを特徴とする請求項1から4の1つに記載の原子力設備。
【請求項6】
ベンチュリ洗浄器(12)のベンチュリ管(16)が、喉径と高さの比率を5以上にされたことを特徴とする請求項1から5の1つに記載の原子力設備。
【請求項7】
容器(14)が、洗浄液(W)側で洗浄液タンク(50)に接続されたことを特徴とする請求項1から6の1つに記載の原子力設備。
【請求項8】
容器(14)が、洗浄液(W)側で帰還管(52)を介して格納容器(2)の内室に接続されたことを特徴とする請求項1から7の1つに記載の原子力設備。
【請求項9】
帰還管(52)が、圧力逃し管(16)を介して格納容器(2)の内室に接続されたことを特徴とする請求項8記載の原子力設備。
【請求項10】
容器(14)が、測地学的に格納容器(2)からの圧力逃し管(16)の出口個所(56)より少なくとも5m高い位置に配置されたことを特徴とする請求項9記載の原子力設備。
【請求項11】
容器(14)内に、pH値が少なくとも9の洗浄液(W)が充填されたことを特徴とする請求項1から10の1つに記載の原子力設備。
【請求項12】
ベンチュリ洗浄器(12)に、液滴帰還路付きの二段階式重力除滴器および/又は繊維太さが50μm以下の繊維分離器として形成された金属繊維フィルタ(28)が後置接続されたことを特徴とする請求項1から111つに記載の原子力設備。
【請求項13】
金属繊維フィルタ(28)が、繊維太さ5μm迄の繊維を備えたフィルタとして、或いは気孔直径又は繊維直径5μm以下の焼結繊維フィルタとして形成されたことを特徴とする請求項12記載の原子力設備。
【請求項14】
ベンチュリ洗浄器(12)に、銀化合物で被覆された分子篩(32)が後置接続されたことを特徴とする請求項1から13の1つに記載の原子力設備。
【請求項15】
絞り装置(24)が容器(14)内に組み入れられたことを特徴とする請求項1から141つに記載の原子力設備。
【請求項16】
ベンチュリ管(12)に、圧力逃し管(6)内を流れる媒体を150m/秒以上の流速で供給することを特徴とする請求項1から15の1つに記載の原子力設備の圧力逃し法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−513926(P2009−513926A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516044(P2006−516044)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006837
【国際公開番号】WO2004/114322
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(501315289)アレヴァ エンペー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (61)
【Fターム(参考)】