説明

原子力設備の解体工法

【課題】本発明は、原子力施設からタービン建屋に解体物を移送する際の汚染の拡大を防止するとともに、解体物の再汚染を防止することができる原子力設備の解体工法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、まず、解体前の原子炉格納容器1の内壁面の放射性物質及び塗膜を除去手段によって除去する。次に、放射性物質及び塗膜が除去された原子炉格納容器1を溶断装置によって所定の大きさに解体する。次に、解体された解体物を運搬用容器に収納し、原子力施設100からタービン建屋9に運搬する。そして、タービン建屋9において、前記運搬用容器に収納された解体物を溶断装置によって所定の大きさに細断する。次に、細断された解体物を除染手段によって電解除染、化学除染した後、容器に収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子力設備の解体工法に係り、特に原子力施設内で解体された原子力設備の解体物を保管施設であるタービン建屋に汚染を拡散することなく移送するための原子力設備の解体工法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8には、沸騰水(Boiling Water Reactor)型原子力発電所設備の概略構造図が示されている。沸騰水型の原子炉格納容器1は、原子炉圧力容器2、主蒸気系配管3、給水系配管4及びサプレッションプール5等の関連設備を格納する気密性の高い容器である。この原子炉格納容器1は、原子炉冷却材喪失事故等に起因して原子炉内の燃料から放射性物質の放散が生じた場合、環境に対する圧力障壁及び放射性物質の放散に対する障壁の役目を果たし、発電所周辺の一般公衆及び発電所従業員の安全を確保する。同設備において、符号6は主蒸気系配管3からの蒸気によって回転されるタービン、符号7はタービン6とともに回転するロータを備えた発電機、符号8は復水器であり、この復水器8によって気液処理された水が給水系配管4を介して原子炉圧力容器2に戻される。タービン6、発電機7、及び復水器8はタービン建屋9に格納されており、このタービン建屋9も原子炉格納容器1と同様に気密性の高い建屋である。また、主蒸気系配管3、及び給水系配管4は、原子力施設100とタービン建屋9とを接続する気密性の高いメインスチームトンネル10に配設されている。
【0003】
沸騰水型の原子炉格納容器1の形式としては、Mark−I型とMark−II型及びこれらの改良型があるが、いずれも流出した原子炉冷却水を原子炉格納容器1内のサプレッションプール5に流出させて凝縮させる圧力抑制方式が採用されている。また、Mark−II型の改良型原子炉格納容器1は、原子炉圧力容器2及び給水系配管4を取り込む鋼製のドライウェル11と圧力抑制室12とがダイヤフラムフロア13を介して区画構成されている。また、圧力抑制室12はサプレッションプール5とドライウェル11とを連結する多数本のベント管14から構成される。図8の原子炉格納容器1は模式的に示したものであり、実際のMark−II型の改良型原子炉格納容器とは構造が若干異なる。
【0004】
ところで、原子力発電所の原子力設備は、運転の使命を終了すると廃止措置がとられる。この廃止措置は安全貯蔵、解体撤去の順で行われる。安全貯蔵では、設備の放射線レベルが所定の値に減衰するまで(約5年〜10年)貯蔵され、この後、配管や機器類を解体するとともに、重量物である原子炉圧力容器を解体して原子力施設から撤去する解体撤去作業が行われる。
【0005】
詳述すると、原子力施設内で解体された解体物を養生して、これをタービン建屋に移送し、そして、タービン建屋で解体物を所定のサイズに細断する。この後、細断物に電解除染、化学除染を施し、これらを放射線遮蔽容器に収容して、船舶により所定の場所(六ヶ所村)に運搬し、地中に埋設処理する。
【0006】
また、特許文献1に開示された原子炉撤去工法は、まず、原子炉圧力容器を複数の部分に分割し、各分割体に遮蔽密閉処理を施した後、天井クレーン等の揚重装置を用いて各分割体を原子力施設外に順次搬出する工法である。
【0007】
なお、原子力設備の放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物、低レベル放射性廃棄物、クリアランスレベル以下の廃棄物に大別される。高レベル放射性廃棄物とは、再処理施設において使用済燃料からウラン・プルトニウムを回収した後に残る核分裂生成物を主成分とする廃棄物であり、低レベル放射性廃棄物はそれ以外の廃棄物である。また、クリアランスレベルとは、放射性物質と放射性物質として扱う必要がないものを区分するレベル(0.01mSv/年)であり、原子力発電所解体廃棄物の大部分がクリアランスレベル以下の廃棄物に相当する。
【0008】
高レベル放射性廃棄物はガラス固化体として処理され、低レベル放射性廃棄物は、前述の如く解体、細断、除染(塗膜や錆びの剥離、電解除染、化学除染)の各工程を経て放射線遮蔽容器に収容される。また、クリアランスレベル以下の廃棄物は、一般廃棄物(有価物)として再処理されてリサイクル使用されるが、その前に放射線レベルが測定される。すなわち、クリアランスレベル以下の廃棄物は、汚染の偏在が無いことを確認測定するために例えば、廃棄物を細断して1mの測定箱に収納し、測定箱の6面側から放射線レベルを測定し、汚染の偏在が認められなかった場合に、一般廃棄物として再利用される。ちなみに低レベル廃棄物のレベル1の廃棄物の処理は、サイトバンカ建屋で行われてタービン建屋で放射線遮蔽容器の輸送容器に収容される。また、レベル2の廃棄物は細断されて5mの放射線遮蔽容器に収納され、更に、レベル3の廃棄物は細断されて1mの放射線遮蔽容器に収容される。レベル3の廃棄物を収容した放射線遮蔽容器は、放射線レベルが低いため、核処理施設に埋設されず自地(発電所)の地下に埋設される場合もある。
【特許文献1】特開2004−77148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の原子力設備の解体工法は、原子力施設で解体した廃棄物をタービン建屋に搬送し、ここで放射性汚染や塗膜を剥離する除染作業を行うため、原子力施設からタービン建屋に廃棄物を搬送する最に汚染が拡散するという問題があった。
【0010】
また、従来の原子力設備の解体工法は、放射性汚染や塗膜の除染作業前に原子力設備を溶断して解体するため、その表面に含まれていた汚染物質が溶断面に混入してしまい、解体物が再汚染されるという問題もあった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、原子力施設からタービン建屋に解体物を移送する際の汚染の拡大を防止するとともに、解体物の再汚染を防止することができる原子力設備の解体工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の原子力設備の解体工法は、前記目的を達成するために、原子力施設に設置された原子力設備の解体工法において、前記原子力設備の内壁面の放射性物質及び塗膜を除去手段によって除去する工程と、前記放射性物質及び塗膜が除去された原子力設備を所定の大きさの解体物に解体手段によって解体する工程と、前記解体された解体物を運搬用容器に収納して、前記原子力施設から該原子力施設に隣接するタービン建屋に運搬する工程と、前記タービン建屋において、前記運搬用容器に収納された前記解体物を細断手段によって所定の大きさに細断する工程と、細断された解体物を除染手段によって除染した後、容器に収納する工程と、を有することを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、まず、解体前の原子力設備の内壁面の放射性物質及び塗膜を除去手段によって除去する。次に、放射性物質及び塗膜が除去された原子力設備を解体手段によって所定の大きさに解体する。次に、解体された解体物を運搬用容器に収納し、原子力施設からタービン建屋に運搬する。そして、タービン建屋において、前記運搬用容器に収納された解体物を細断手段によって所定の大きさに細断する。次に、細断された解体物を除染手段によって電解除染、化学除染した後、容器に収容する。ここで、低レベル放射性廃棄物は、容器に収容した状態で埋設処理される。一方で、クリアランスレベル近傍の放射性廃棄物は、箱に入れられて放射線レベルが測定された後、クリアランスレベルを下回ったものが再利用される。
【0014】
すなわち、本発明は、原子力設備の解体前に放射性物質及び塗膜を除去手段によって除去するので、原子力施設からタービン建屋に解体物を移送する際の汚染の拡大を防止するとともに、解体物の再汚染を防止することができる。
【0015】
本発明によれば、前記除去手段は、高圧水を噴射するノズルと、前記ノズルから噴射され前記原子力設備の内壁面に投射された前記高圧水を吸引する吸引口と、前記ノズルと前記吸引口とを収容し、前記原子力設備の内壁面に密着されることにより該内壁面との間で前記ノズルと前記吸引口とを包囲する密閉空間を形成するカバーと、からなるクローズドシステムであることが好ましい。
【0016】
本発明のクローズドシステムによれば、ノズルから噴射される高圧水によって原子力設備の塗膜及び放射性廃棄物が除去され、この除去された塗膜及び放射性廃棄物は、原子力設備の内壁面とカバーとによって包囲された密閉空間内に漂うのでカバーから漏出しない。そして、この塗膜及び放射性廃棄物は、前記密閉空間内に配置された吸引口によって、前記高圧水とともに吸引され外部に廃棄される。よって、本発明によれば、原子力設備から剥離した塗膜や放射性廃棄物をカバー内に封じ込めることができるので、除染時による汚染の拡大を阻止することができる。
【0017】
本発明によれば、前記除去手段は、ブラスト媒体を噴射するノズルと、前記ノズルから噴射され前記原子力設備の内壁面に投射された前記ブラスト媒体を吸引する吸引口と、前記ノズルと前記吸引口とを収容し、前記原子力設備の内壁面に密着されることにより該内壁面との間で前記ノズルと前記吸引口とを包囲する密閉空間を形成するカバーと、からなるクローズドシステムであることが好ましい。
【0018】
本発明のクローズドシステムによれば、ノズルから噴射されるブラスト媒体によって原子力設備の塗膜及び放射性廃棄物が除去され、この除去された塗膜及び放射性廃棄物は、原子力設備の内壁面とカバーとによって包囲された密閉空間内に漂うのでカバーから漏出しない。そして、この塗膜及び放射性廃棄物は、前記密閉空間内に配置された吸引口によって、前記ブラスト媒体とともに吸引され外部に廃棄される。よって、本発明によれば、原子力設備から剥離した塗膜や放射性廃棄物をカバー内に封じ込めることができるので、除染時による汚染の拡大を阻止することができる。
【0019】
本発明によれば、前記原子力施設と前記タービン建屋とを直結するトンネルを、前記解体物が収納された前記運搬用容器の搬出用通路として利用することが好ましい。本発明によれば、解体物を外気に晒すことなく原子力施設からタービン建屋に搬送することができる。
【0020】
本発明によれば、前記トンネルは、前記原子炉圧力容器と前記タービン建屋のタービンとに接続された主蒸気系配管及び給水系配管が配設されるメインスチームトンネルであることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、メインスチームトンネルは既存のトンネルであり、原子力施設、タービン建屋と同様に気密性の高い建造物であるので、原子炉の解体物搬出用トンネルとして好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る原子力設備の解体工法によれば、原子力設備の解体前に放射性物質及び塗膜を除去手段によって除去するので、原子力施設からタービン建屋に解体物を移送する際の汚染の拡大を防止するとともに、解体物の再汚染を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下添付図面に従って、本発明に係る原子力設備の解体工法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0024】
図1は、沸騰水型原子力発電所設備の要部拡大断面図、図2は図1に示した沸騰水型原子力発電所設備の平面図であり、図8に示した図と同一又は類似の部材については同一の符号を付して説明する。
【0025】
図1の如く、原子力発電所設備に建設された原子力施設100とタービン建屋9とは、既存のメインスチームトンネル(トンネル)10によって直結されている。本発明では、このメインスチームトンネル10を、原子力施設100に格納された原子炉格納容器(原子力設備)1の内壁面の解体時の解体物搬出用通路として利用し、メインスチームトンネル10を介して解体物をタービン建屋9に移送して保管する。このように、既存のメインスチームトンネル10を解体物の搬出用通路として利用することにより、原子力施設100からタービン建屋9に解体物を効率よく移送(図2の矢印A方向)し保管することができる。
【0026】
メインスチームトンネル10は、原子力施設100内の原子炉格納容器1とタービン建屋9のタービンとに接続された主蒸気系配管3及び給水系配管4が配設される既存のトンネルであり、このメインスチームトンネル10は、原子力施設100、タービン建屋9と同様に気密性の高い建造物であるので、原子炉の解体物搬出用トンネルとして好適である。
【0027】
一方で、メインスチームトンネル10を解体物搬出用のトンネルとして使用する場合には、まず、メインスチームトンネル10内において、主蒸気系配管3及び給水系配管4が配設される開口部30、32が形成された隔壁34を撤去して、メインスチームトンネル10を搬出用として十分な広さ、長さに拡張し、その床に搬出用台車を移動させるためのレール(不図示)を敷設することが好ましい。このレールは、原子力施設100内からメインスチームトンネル10を介してタービン建屋9内の保管場所まで配設されており、レール上で搬出用台車を走行させることにより、解体物を収容した遮蔽容器を搬出用台車によって効率よくタービン建屋9の保管場所まで移送することができる。
【0028】
前述した実施の形態では、解体物搬出用通路として既存のメインスチームトンネル10を利用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、図2の二点鎖線で示すように、原子力施設100とタービン建屋9とをトンネル50で直結し、このトンネル50を解体物の搬出用通路して使用してもよい。このトンネル50は、メインスチームトンネル10以外のトンネルであり、既存のものでもよく、また、新たに建設したトンネルでもよい。更に、メインスチームトンネル10に接続される新たなトンネルBを図2の如く建設してもよい。更にまた、保管施設としては、タービン建屋9以外の例えば放射線管理建屋であってもよいので、原子力施設100と放射線管理建屋とをトンネル50によって直結し、放射線管理建屋を解体物の保管用施設として利用してもよい。
【0029】
また、実施の形態では、沸騰水型原子力発電所設備について説明したが、加圧水型原子力発電所設備においても同様であり、この設備においてもメインスチームトンネルを解体物搬出用のトンネルとして利用すればよい。
【0030】
次に、具体的な原子炉格納容器1(原子力設備)の内壁面の解体工法について説明する。
【0031】
この解体工法は大別して原子炉格納容器1の内壁面の放射性物質を除去手段によって除去する工程と、放射性物質が除去された原子炉格納容器1を所定の大きさの解体物に溶断装置(解体手段)によって解体する工程と、解体された解体物を運搬用容器に収納して、原子力施設100からタービン建屋9にメインスチームトンネル10を介して搬出する工程と、タービン建屋9において、運搬用容器に収納された前記解体物を運搬用容器から取り出し、溶断装置によって所定の大きさに細断する工程と、細断された解体物を除染手段によって電解除染、化学除染した後、容器に収納する工程と、を有する。
【0032】
すなわち、まず、解体前の原子炉格納容器1の内壁面の放射性物質を除去手段によって除去する。次に、放射性物質が除去された原子炉格納容器1を溶断装置によって所定の大きさに解体する。次に、解体された解体物を運搬用容器に収納し、原子力施設100からタービン建屋9に運搬する。そして、タービン建屋9において、前記運搬用容器に収納された解体物を溶断装置によって所定の大きさに細断する。次に、細断された解体物を除染手段によって電解除染、化学除染した後、容器に収容する。
【0033】
ここで、低レベル放射性廃棄物は、放射線遮蔽容器に収容した状態で処理される。一方で、クリアランスレベル近傍の放射性廃棄物は、検査用箱に入れられて放射線レベルが測定された後、クリアランスレベルを下回ったものが再利用される。
【0034】
すなわち、実施の形態の原子炉格納容器1の解体工法は、原子炉格納容器1の解体前に原子炉格納容器1の内壁面の放射性物質(表面汚染)を除去手段によって除去するので、原子力施設100からタービン建屋9に解体物を移送する際の汚染の拡大を防止するとともに、解体物の再汚染、及び減容が必要な場合は、減容に用いる装置への汚染の付着を防止することができる。
【0035】
図3は、第1のクローズドシステム(除去手段)60によって原子炉格納容器1の内壁面の放射性物質及び塗膜を除去している状態を示した原子炉格納容器1の縦断面図である。
【0036】
このクローズドシステム60は図4に示すように、本体部61、本体部61を支持するシャーシ62、及びシャーシ62の両側に設けられた走行部63、63から構成される。
【0037】
本体部61の外表部を構成するカバー64は略円筒状に形成され、その内側には図5の如く高圧水を噴射するノズル65、65…と吸引口66とが収容されている。
【0038】
ノズル65、65…は吸引口66を中心に放射状に配置されるとともに、図3、図4の如く給水管67に接続されている。この給水管67を介して不図示の給水ポンプから供給される高圧水がノズル65、65…から噴射される。また、吸引口66は吸引管68を介して不図示のバキューム装置に接続されている。したがって、カバー64の前部開口部69を原子炉格納容器1の内壁面に当接させるとともに、吸引口66からエアを吸引し、かつ、ノズル65、65…から高圧水を噴射することにより、原子炉格納容器1の内壁面に投射された高圧水が吸引口66で吸引され、かつ、吸引口66による負圧によりカバー64が原子炉格納容器1の内壁面に密着される。これにより、原子炉格納容器1の内壁面とカバー64との間の密閉空間内で原子炉格納容器1の内壁面の放射性物質及び塗膜が除去される。
【0039】
第1のクローズドシステム60の各走行部63は、マグネットによって構成された一対のローラ69、69を備えている。このローラ69、69は原子炉格納容器1の鉄製の内壁面に磁力により取り付けられるとともに、遠隔操作されるモータ(不図示)の駆動力により回転駆動される。よって、第1のクローズドシステム60によれば、自走しながら原子炉格納容器1の内壁面の放射性物質及び塗膜を除去することができる。
【0040】
すなわち、第1のクローズドシステム60によれば、ノズル65、65…から噴射される高圧水によって原子炉格納容器1の内壁面の塗膜及び放射性廃棄物を除去することができ、除去された塗膜及び放射性廃棄物は、原子炉格納容器1の内壁面とカバー64とによって包囲された密閉空間内に漂うのでカバー64から漏出しない。そして、この塗膜及び放射性廃棄物は、密閉空間内に配置された吸引口66によって、前記高圧水とともに吸引され外部に廃棄される。よって、第1のクローズドシステム60によれば、原子炉格納容器1から剥離した塗膜や放射性廃棄物をカバー64内に封じ込めることができるので、原子炉格納容器1の内部であっても除染時による汚染の拡大を阻止することができる。
【0041】
図6は、第2のクローズドシステム(除去手段)70によって原子炉格納容器1の内壁面の放射性物質及び塗膜を除去している状態を示した原子炉格納容器1の縦断面図である。
【0042】
このクローズドシステム70は図7に示すように、ブラスト媒体Bを噴射するノズル71と、ノズル71から噴射され原子炉格納容器1の内壁面に投射されたブラスト媒体Bを吸引する吸引口72と、ノズル71と吸引口72とを収容し、原子炉格納容器1の内壁面に密着されることにより該内壁面との間でノズル71と吸引口72とを包囲する密閉空間を形成するカバー73とから構成される。
【0043】
また、カバー73内には、放射線防護服を着用した作業者74が入っており、作業者74がノズル71を保持してブラスト媒体Bの投射作業(除去作業)を行う。カバー73内に漂う放射性物質及び塗膜は吸引口72からホース75を介して原子炉格納容器1の外部にブラスト媒体Bとともに排出される。また、吸引口72によって吸引されないブラスト媒体B、塗膜、放射性物質は、原子炉格納容器1の足場76に取り付けられたグレーチング板77を介して、カバー73の下部ホッパ部78に落下し、下部ホッパ部78に連結されたホース79を介して原子炉格納容器1の外部に排出される。
【0044】
第2のクローズドシステム70によれば、ノズル71から噴射されるブラスト媒体Bによって原子炉格納容器1の内壁面の塗膜及び放射性廃棄物を除去でき、この除去した塗膜及び放射性廃棄物は、原子炉格納容器1の内壁面とカバー73とによって包囲された密閉空間内に漂うのでカバー73から漏出しない。そして、この塗膜及び放射性廃棄物は、前記密閉空間内に配置された吸引口72等によって、ブラスト媒体Bとともに吸引され外部に廃棄される。よって、第2のクローズドシステム70によれば、原子炉格納容器1の内壁面から剥離した塗膜や放射性廃棄物をカバー73内に封じ込めることができるので、除染時による汚染の拡大を阻止することができる。
【0045】
なお、ブラスト媒体としては、砂、研削材や研掃材をスポンジ等の弾性体片に含ませたものを例示でき、原子炉格納容器1の内壁面の放射性物質及び塗膜を除去可能なものであれば、その形態は問わない。
【0046】
また、原子炉格納容器1の狭隘な場所は第2のクローズドシステム70による除染作業を実施し、それ以外の場所は第1のクローズドシステム60による自走除染作業を実施することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】沸騰水型原子力発電所設備の構造を示した要部拡大断面図
【図2】図1に示した沸騰水型原子力発電所設備の平断面図
【図3】第1のクローズドシステムによって塗膜及び放射性廃棄物を除去している説明図
【図4】図3に示した第1のクローズドシステムの拡大斜視図
【図5】図3に示した第1のクローズドシステムのノズルと吸引口とを示した要部平面図
【図6】第2のクローズドシステムによって塗膜及び放射性廃棄物を除去している説明図
【図7】図6に示した第1のクローズドシステムの要部拡大図
【図8】原原子力施設を模式的に示した説明図
【符号の説明】
【0048】
1…沸騰水型の原子炉格納容器、2…原子炉圧力容器、3…主蒸気系配管、4…給水系配管、5…サプレッションプール、6…タービン、7…発電機、8…復水器、9…タービン建屋、10…メインスチームトンネル、11…ドライウェル、12…圧力抑制室、13…ダイヤフラムフロア、14…ベント管、30、32…開口部、34…隔壁、50…トンネル、60…第1のクローズドシステム、61…本体部、62…シャーシ、63…走行部、64…カバー、65…ノズル、66…吸引口、67…給水管、68…吸引管、69…前部開口部、70…第2のクローズドシステム、71…ノズル、72…吸引口、73…カバー、74…作業者、75…ホース、76…足場、77…グレーチング板、78…下部ホッパ部、79…ホース、100…原子力施設、B…ブラスト媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力施設に設置された原子力設備の解体工法において、
前記原子力設備の内壁面の放射性物質及び塗膜を除去手段によって除去する工程と、
前記放射性物質及び塗膜が除去された原子力設備を所定の大きさの解体物に解体手段によって解体する工程と、
前記解体された解体物を運搬用容器に収納して、前記原子力施設から該原子力施設に隣接するタービン建屋に運搬する工程と、
前記タービン建屋において、前記運搬用容器に収納された前記解体物を細断手段によって所定の大きさに細断する工程と、
細断された解体物を除染手段によって除染した後、容器に収納する工程と、
を有することを特徴とする原子力設備の解体工法。
【請求項2】
前記除去手段は、
高圧水を噴射するノズルと、
前記ノズルから噴射され前記原子力設備の内壁面に投射された前記高圧水を吸引する吸引口と、
前記ノズルと前記吸引口とを収容し、前記原子力設備の内壁面に密着されることにより該内壁面との間で前記ノズルと前記吸引口とを包囲する密閉空間を形成するカバーと、
からなるクローズドシステムである請求項1に記載の原子力設備の解体工法。
【請求項3】
前記除去手段は、
ブラスト媒体を噴射するノズルと、
前記ノズルから噴射され前記原子力設備の内壁面に投射された前記ブラスト媒体を吸引する吸引口と、
前記ノズルと前記吸引口とを収容し、前記原子力設備の内壁面に密着されることにより該内壁面との間で前記ノズルと前記吸引口とを包囲する密閉空間を形成するカバーと、
からなるクローズドシステムである請求項1に記載の原子力設備の解体工法。
【請求項4】
前記原子力施設と前記タービン建屋とを直結するトンネルを、前記解体物が収納された前記運搬用容器の搬出用通路として利用する請求項1、2又は3のいずれかに記載の原子力設備の解体工法。
【請求項5】
前記トンネルは、前記原子炉圧力容器と前記タービン建屋のタービンとに接続された主蒸気系配管及び給水系配管が配設されるメインスチームトンネルである請求項4に記載の原子力設備の解体工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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