説明

原子炉内機器の昇降装置

【課題】本発明は、原子炉ウェルが満水の状態でも蒸気乾燥器及び気水分離器などの機器を安全に吊り移動できる原子炉内機器の昇降装置を提供する。
【解決手段】本発明は、天井クレーンと、この天井より垂下するクレーンフック5と、このクレーンフック5に吊られる巻上機とを有する原子炉内機器の昇降装置において、巻上機は、前記クレーンフック5に吊られる上ブロック8と、この上ブロック8に吊られる下ブロック26と、前記上ブロック8に設けた複数の巻上用モータ22と、前記複数の巻上用モータ22で駆動される巻ドラム21と、前記上ブロック8に設けた複数の上滑車と、前記下ブロック26に設けた複数の下滑車と、前記下滑車と前記上滑車に掛け渡され、端側が前記巻ドラム21に巻かれる吊索とを有し、前記複数の巻上用モータ22の回転を検知するエンコーダ23を有し、前記エンコータ23の検知値を計測して前記巻上機の制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器内の炉内構造物を原子力圧力容器から取り出したり組み付けたりする原子炉内機器の昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の原子炉建屋の中には、原子炉圧力容器が格納されている。その原子力圧力容器内には、炉内構造物として炉心の上方に炉心に近い位置から気水分離器、そして蒸気乾燥器が装備される。
【0003】
炉心で加熱された冷却水が気液二相となって気水分離器内に流入し、ここで気液分離を受けて蒸気が蒸気乾燥器内に流入し、乾燥蒸気とされて原子炉建屋外の蒸気タービン発電機へ送られて電気エネルギーに変換される。
【0004】
この原子力発電所の定期点検において、原子炉圧力容器内の炉心を構成している燃料を交換したり、炉心を点検する場合には、炉心の上方に存在する蒸気乾燥器や気水分離器を取り外す必要がある。
【0005】
従来は、蒸気乾燥器及び気水分離器の吊上げ移動は天井クレーンのクレーンフックに吊りワイヤと十字型ビーム構造の吊り具だけで行われており、天井クレーンのクレーンフックが水に浸らないように、天井クレーンのクレーンフック上下動作にあわせて原子炉ウェルの水位も上下しながら行っていた。
【0006】
これは、クレ−ンフックの炉水による汚染を防止するためである。こうした点を改善すべく、近年は原子炉ウェル満水でも使える装置は作られているが、原子炉ウェル満水状態では水の流れの影響をうけやすく、気水分離器や蒸気乾燥器を吊上げ中に揺れが生じ、作業員が目視確認しながら吊上げ作業を停止しなければならなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平9−304578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
天井クレーンのクレーンフックを水に浸らない位置で停止したまま、吊り具とクレーンフック間に設けたチェーンブロックで蒸気乾燥器および気水分離器の吊上げ移動の作業が行なわれる。
【0009】
この場合、常時作業員が目視確認無しなければならないことや、吊上げ中の異常状態を作業者が認知し、吊上げを停止しなければならないため、作業者への負担が大きく、ヒューマンエラーを招きやすい。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みて、原子炉ウェルが満水の状態でも蒸気乾燥器及び気水分離器などの機器を安全に吊り移動できる原子炉内機器の昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、天井クレーンと、この天井より垂下するクレーンフックと、このクレーンフックに吊られる巻上機とを有する原子炉内機器の昇降装置において、前記巻上機は、複数の巻上用モータを有し、前記複数の巻上用モータの回転を検知するエンコーダを有し、前記エンコータの検知値を計測して前記巻上機の運転を止めたり継続したりする制御手段を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、天井クレーンと、この天井より垂下するクレーンフックと、このクレーンフックに吊られる巻上機とを有する原子炉内機器の昇降装置において、前記巻上機は、複数の巻上用モータと、各巻上用モータに駆動される巻ドラムに巻かれるワイヤや鎖などの吊索とを有し、前記複数の巻上用モータは、巻ドラムへの吊索の巻き取りが均衡を保って巻かれるように回転が制御され、相互の巻き取りの均衡が崩れたら前記巻上機の運転を止めるリミットスイッチを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機器の上げ下げ移動に際し、複数の巻上用モータの回転をエンコーダで検知して運転を止めたり、吊索の巻き取りの均衡がくずれたらリミットスイッチが作動して運転を止めたりするので安全である。
【0014】
これにより、天井クレーンのフックを水に浸すことなく、かつ原子炉ウェルの水位調整しないで蒸気乾燥器や気水分離器を移動するとともに、作業員に負担を掛けることなく作業できる。
【0015】
このような安全対策が構築されているので、ヒューマンエラー防止を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施例について、図面を引用して説明する。
【0017】
原子力発電所内の原子炉建屋内には、図1に示したとおりの水路Aで連結されている原子炉ウェルDとドライヤ,セパレータ−プールBとが配備されている。
【0018】
水路Aの底には堰Fが設けられている。
【0019】
原子炉建屋の作業床E上方には、原子炉ウェルDとドライヤ,セパレータ−プールB間を移動自在な天井クレーン4が設置され、この天井クレーン4のクレーンフック5は原子炉ウェルDの下方までアクセスできる。
【0020】
原子炉圧力容器Cは原子炉ウェルDの下方に位置する。
【0021】
原子炉圧力容器C内には上方から蒸気乾燥器1と気水分離器2が配置されている。
【0022】
図2は蒸気乾燥器1の構造を示しており、蒸気乾燥器1の外周には90°ごとの位置上方に吊り金具3が取付けられ、この吊り金具3には径方向に穴3aが開けられている。
【0023】
この吊り金具3の穴3aは蒸気乾燥器1自体の吊上げに使用されるものである。
【0024】
図3は気水分離器2の構造を示しており、気水分離器の外周には90°ごとの位置上方に吊り金具6が取付けられ、この吊り金具6には径方向に穴6aが開けられている。
【0025】
この吊り金具6の穴6aは気水分離器2自体の吊上げに使用されるものである。
【0026】
原子炉内機器の昇降装置は図4に示すとおり、クレーンフック5と取り合う巻上機7の上ブロック8と、この上ブロック8とクレーンフック間を連結するためのフックピン9が一番上に配置されている。
【0027】
上ブロック8にはチェーン(吊索)20の巻き取り/巻き送りを行う巻ドラム21と、4台の巻ドラム21を回転駆動させる4台の巻上用モータ22と、各巻上用モータ22の回転を検知するエンコーダ23が直結して取付けられている。チェーン(吊索)20は上シーブ24(上滑車)と下シーブ25(下滑車)を通して左右の巻ドラム21で巻き取られる方式となっている。
【0028】
言い直すと、チェーン(吊索)20は複数の上シーブ24(上滑車)と複数の下シーブ25(下滑車)に掛け渡され、両端側が左右の巻ドラム21に巻かれるようになっているのである。
【0029】
複数(3つ)の上シーブ24(上滑車)は上ブロック8の下側に取付けられており、複数(4つ)の下シーブ25(下滑車)は下ブロック26に取付けられている。チェーン(吊索)20の巻き取り/巻き送りに連動し、上シーブ24(上滑車)と下シーブ25(下滑車)が回転すると同時に下ブロック26も上下する仕組みとなっている。
【0030】
このチェーン(吊索)20の巻き上げ/巻き下げの状態を図5、図7に示す。
【0031】
上ブロック8の中心にある上シーブ24を通る左右のチェーン(吊索)20にはチェーンよりも太いストライカ(打撃体)27が取付けられている。このストライカ(打撃体)27は上ブロック8の下端に取付けられたリミットスイッチ28を叩くことができる構造となっている。
【0032】
下ブロック26の下には上部天秤40が設けられており、これらは連結ピン41により結合され、連結ピン41を抜き取ることで、上部天秤40との切り離しができる。
【0033】
上部天秤40は十字型ビームの構造となっている。上部天秤40の各ビーム先端には吊りワイヤ42が取付けられ、吊りワイヤ42の下端には上部天秤40よりも大きい十字型ビーム構造の吊り基体43が連結されている。
【0034】
吊りワイヤ42と上部天秤40及び吊りワイヤ42と吊り基体43の接続は、ワイヤピンによりなされている。
【0035】
吊り基体43の四方にのびたビーム44にはエアシリンダ45とエアシリンダ45で駆動操作されるピン46が取付けられ、ピン46の駆動をサポートするピンボックス47が取付けられている。ピン46は、ピンボックス47に摺動自在に支持されているので、エアシリンダ45により円滑に駆動操作される。
【0036】
前述のように蒸気乾燥器1の外周には90°ごとの位置上方に吊り金具3が取付けられ、この吊り金具3には径方向に穴3aが開けられている。
【0037】
この吊り金具3の穴3aは蒸気乾燥器1自体の吊上げに使用されるものである。
【0038】
図3は気水分離器2の構造を示しており、気水分離器の外周には90°ごとの位置上方に吊り金具6が取付けられ、この吊り金具6には径方向に穴6aが開けられている。
【0039】
この吊り金具6の穴6aは気水分離器2自体の吊上げに使用されるものである。
【0040】
このピン46は図2に示す蒸気乾燥器1の吊り金具3や図3に示す気水分離器2の吊り金具6の穴径より小さく、両方の穴3a,6aにピン46の挿入や引抜きができる構造となっている。
【0041】
ピンボックス47は、ピン46の太さ径に合わせた穴が開けられており、ピン46にかかる鉛直方向の荷重を受けることができるようにボックス型の構造となっている。
【0042】
ピン46の駆動を行うエアシリンダ45は図6に示すような空気操作装置の系統から構成され、操作箱48の切替弁49を操作することで、ピン46の挿入(a)と引抜き(b)が行われる。
【0043】
操作箱48とエアシリンダ45の間はホース60と接続継手61を使って接続され、エアシリンダ45への空気供給が遠隔でも可能となっている。
【0044】
昇降装置の構成は上述の通りであるが、昇降装置は原子炉を満水にした状態で動かす場合、水の影響を受けやすく、チェーン(吊索)20を巻き取り/巻き送りしている最中に装置自体の大きな揺れのために、チェーン(吊索)20の巻き取り/巻き送りがうまくいかないことが生じてしまう。
【0045】
なお、原子炉ウェルDやドライヤ,セパレータ−プールB内の水は、ポンプにより常に循環している。この水の循環もチェーン(吊索)20を巻き取り/巻き送りに影響を与える。
【0046】
こうした状況は気水分離器や蒸気乾燥器を吊っている場合に生じた場合、大きな事故につながる可能性がある。従いチェーン(吊索)20の巻き取り/巻き送りが正常になされているかを常に監視するとともに、正常でない場合は装置を停止する必要がある。
【0047】
このために、本装置では4つのエンコーダ23により巻上用モータ22の回転数を検出し、この検出値から巻き取り/巻き送り量を算出し、この算出値が常に同じ値となっているかを監視している。
【0048】
例えば、4つの算出値の最大値と最小値の差が規定値よりも大きくなった場合には、チェーン(吊索)20の巻き取り/巻き送りを停止するものである。なお、ここで述べる最大値と最小値の差を判定値に用いる以外にも、4つの算出値のバラツキを判定に用いることもできる。
【0049】
エンコーダ23の検知値のデータに基づく演算、制御手段を巻上用モータ22の運転停止や継続、速度調整をする制御手段が備えられている。
【0050】
さらに、エンコーダ23が故障した場合や、巻ドラム21でのチェーン(吊索)20の巻き取り/巻き送りに乱巻きが生じた場合には、エンコーダ62による監視だけでは不十分なため、さらなる安全対策のバックアップ機能として、上ブロック8の中心にある上シーブ24(上滑車)を通る左右チェーン(吊索)20のストライカ(打撃体)27と、上ブロック8下端に取付けられたリミットスイッチ28を用いる。
【0051】
このストライカ(打撃体)27は、チェーン(吊索)20の巻き取り/巻き送りが正常な場合には、一定の高さにある。つまり、正常なときには、チェーン(吊索)20の巻き取り/巻き送りは均衡が保たれる。このため、中心にある上シーブ24(上滑車)は、停止状態にある。
【0052】
しかし、チェーン(吊索)20の巻き取り/巻き送りに異常が起きて均衡が崩れてきた場合には、中心にある上シーブ24(上滑車)が何れか一方向に回転する。つまり、図7に示すように左右のチェーンの巻き取り/巻き送りの速さにムラが生じ、ストライカ(打撃体)27の高さに違いが生じてしまう。
【0053】
この時、一方のストライカ(打撃体)27が上に移動し、リミットスイッチ28を叩き、チェーン(打撃体)27の巻き取り/巻き出しを停止させる仕組みとなっている。
【0054】
これらエンコーダ23とリミットスイッチ28を使った昇降装置の運転ロジックのフローを図8に示す。
【0055】
上述の運転ロジックを持つ昇降装置を使った蒸気乾燥器1及び気水分離器2の取外しおよび取付け方法を説明する。
【0056】
図9を引用して昇降装置による蒸気乾燥器1の取外し手順を示す。
【0057】
図9のステップ1に示すように、原子炉ウェルD内の水は満水状態にあるとともに、ドライヤ,セパレータープールBと水路Aも原子炉ウェルD内と同じ水位にある。
【0058】
昇降装置の上ブロック8から下ブロック26までは既に組立てられた状態で、作業床E上の架台7に仮置きされている。また、吊りワイヤ42と吊り基体43は作業床E上に仮置きされている。
【0059】
次に図9のステップ2に示すように、クレーンフック5と上ブロック8を連結後、クレーンフック5を上昇させ、下ブロック26に上部天秤40を吊る。さらに、上部天秤40の下に吊りワイヤ42と吊り基体43を取付け、さらに図6に示す昇降装置の空気操作装置を構成することで、図4に示す昇降装置の組立てが完了となる。
【0060】
次に図9のステップ3に示すように、クレーンフック5を原子炉ウェルD内まで移動し、原子炉圧力容器Cの中心上方位置で停止する。
【0061】
次に図9のステップ4に示すように、この位置からクレーンフック5を下降させることで、下ブロック26を含む下の部分が原子炉ウェルD内の水に浸り、クレーンフック5の下端が水面から約2〜3mの位置になったところで、クレーンフック5の下降を停止する。
【0062】
この状態では、上ブロック8とクレーンフック5は空気中にある。つまり原子炉ウェルDの水には浸っていない状態である。
【0063】
クレーンフック5をこの位置で停止したまま、吊り基体43のピンボックス47が蒸気乾燥器1の吊り金具3と取り合うレベル、つまり吊り基体43が吊り金具3上に着座するレベルまでチェーン(吊索)20の巻き下げを行う。
【0064】
着座後は、図5に示す空気操作装置を使い、遠隔操作で蒸気乾燥器1の把持を行う。
【0065】
クレーンフック5の下降を停止してから、蒸気乾燥器1を把持するまでの間、原子炉ウェルDが満水状態を保ったまま原子炉ウェルD内の水位調整を行うことがないうえ、クレーンフック5を汚染された水に浸すことはない。
【0066】
次に図9のステップ5で示すように、チェーン(吊索)20を巻き上げて蒸気乾燥器1を引き上げる。この巻き上げ中には、水の流れによる影響を考慮し、常時エンコーダ23やリミットスイッチ28を使った監視や非常停止の機能を働かせておく。
【0067】
次に図9のステップ6で示すように、蒸気乾燥器1の最下端が水路Aの堰Fより高くなり、且つ蒸気乾燥器1の上部が原子炉ウェルDの水面下にある位置までチェーン(吊索)20を巻上げる。
【0068】
この高さまで引き上げられた蒸気乾燥器1は原子炉ウェルDが満水状態にあるため、水に十分浸っており、蒸気乾燥器1の放射線は水で遮蔽された状態が保たれている。
【0069】
なお、図9のステップ5では巻上機7(チェーンブロック)の巻上げを行ったあと、ステップ6でクレーンフック5を上昇する手順としているが、先にクレーンフック5を上昇させ、次に巻上機7(チェーンブロック)を巻き上げる手順となってもよい。
【0070】
次に図9のステップ7に示すように、クレーンフック5をドライヤ,セパレータープールBの保管位置まで平行移動する。
【0071】
最後に図9のステップ8で示すように、巻上機7(チェーンブロック)により蒸気乾燥器1がドライヤ,セパレータ−プールBの床に着座するまで蒸気乾燥器1を吊り下ろす。
【0072】
着座後は、図5に示す空気操作装置を使い昇降装置を蒸気乾燥器1から切り離す。
【0073】
空荷状態となった昇降装置は次に気水分離器2の取外しに使われる。
【0074】
図10を引用して昇降装置による気水分離器2の取外し手順を示す。
【0075】
図10のステップに示すように、クレーンフック5を原子炉ウェルD内まで移動し、原子炉圧力容器Cの中心上方位置で停止する。
【0076】
次に図10のステップ2で示すように、クレーンフック5を下降させることで、下ブロック26より下が原子炉ウェルD内の水に浸り、クレーンフック5の下端が水面から約2〜3mの位置になったところで、クレーンフック5の下降を停止する。
【0077】
この状態では、クレーンフック5と上ブロック8は空気中にあり、つまり原子炉ウェルDの水には浸っていない。
【0078】
クレーンフック5をこの位置で停止したまま、吊り基体43のピンボックス47が気水分離器2の吊り金具6と取り合う位置、つまり吊り基体43が吊り金具6上に着座する位置まで巻上機7(チェーンブロック)の同時巻き下げを行う。
【0079】
着座後は、図5に示す空気操作装置を使い、遠隔操作で気水分離器2の把持を行う。
【0080】
クレーンフック5の下降を停止してから、気水分離器2を把持するまでの間、原子炉ウェルDが満水状態を保ったまま原子炉ウェルD内の水位調整を行うことないうえ、クレーンフック5を汚染された水に浸すことはない。
【0081】
図10のステップ3で示すように、チェーン(吊索)20の巻上げを行い、気水分離器2を吊上げる。この巻き上げ中には、水の流れによる影響を考慮し、常時エンコーダ62やリミットスイッチ63を使った監視や非常停止の機能を働かせておく。
【0082】
図10のステップ4で示すように、気水分離器2の最下端が水路Aの堰Fより高くなり、且つ蒸気乾燥器2の上部が原子炉ウェルDの水面下にある位置までクレーンフック5を上昇させる。
【0083】
この高さまで引き上げられた気水分離器2は原子炉ウェルDが満水状態にあるため、水に十分浸っており、気水分離器2の放射線は水で遮蔽された状態を保たれている。
【0084】
なお、図10のステップでは巻上機7(チェーンブロック)の巻上げを行ったあと、ステップでクレーンフック5を上昇する手順となっているが、先にクレーンフック5を上昇させ、次に巻上機7(チェーンブロック)を巻き上げる手順となってもよい。
【0085】
次に図10のステップ5で示すように、クレーンフック5をドライヤ,セパレータープールBの保管位置まで平行移動する。
【0086】
次に図10のステップ6で示すように、気水分離器2がドライヤ,セパレータ−プールの床に着座するまで気水分離器2を吊り下ろす。
【0087】
尚、クレーンフック5を下降させて着座してもよい。
【0088】
吊り下ろし完了後は、図5に示す空気操作装置を使い、昇降装置を気水分離器2から切り離し、チェーン(吊索)20の巻上げを行う。
【0089】
次に図10のステップ7に示すように、気水分離器2の取外しが完了した後は、クレーンフック5を上昇させ、吊り基体43を作業床E上に引き上げる。
【0090】
最後に図10のステップ8に示すように、作業床E上で水中移動装置から吊りワイヤや吊り具を取外し、水中移動装置の残り部分を作業床E上の架台の仮置し、クレーンフック5と上ブロック8を結ぶフックピン9を抜き取り、クレーンフック5と昇降装置の切り離しを行う。
【0091】
蒸気乾燥器1と気水分離器2をドライヤ,セパレータ−プールBから原子炉圧力容器Cへ移動し、原子炉圧力容器C内へ取付けを行う場合も、同様に原子炉ウェルBを満水にした状態で図9と図10の逆手順で作業が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は原子力発電所における蒸気乾燥器/気水分離器の取扱いにおいて適用ものであるが、水中における吊り込み作業が必要な他の産業分野においても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、原子炉建屋の平面図(a)及び断面図(b)である。
【図2】本発明の実施例に係わるもので、蒸気乾燥器の平面図(a)及び断面図(b)である。
【図3】本発明の実施例に係わるもので、気水分離器の平面図(a)及び側面図(b)である。
【図4】本発明の実施例に係わるもので、昇降装置の上面図(a)、正面図(b)、側面図(c)及び平面図(d)である。
【図5】本発明の実施例に係わるもので、巻上機の吊上時のチェーン駆動状態を示す図(a)、及び巻上機の吊下時のチェーン駆動状態を示す図(b)である。
【図6】本発明の実施例に係わるもので、昇降装置の空気操作装置の系統図である。
【図7】本発明の実施例に係わるもので、巻上機のリミットスイッチの動作を説明する図である。
【図8】本発明の実施例に係わるもので、エンコーダやリミットスイッチの動作フローを示す図である。
【図9】本発明の実施例に係わるもので、蒸気乾燥器の取り外しステップを示す図である。
【図10】本発明の実施例に係わるもので、気水分離器の取り外しステップを示す図である。
【符号の説明】
【0094】
4…天井クレーン、5…クレーンフック、7…巻上機、8…上ブロック、26…下ブロック、22…巻上用モータ、21…巻ドラム、24…上滑車、25…下滑車、20…吊索、23…エンコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井クレーンと、この天井より垂下するクレーンフックと、このクレーンフックに吊られる巻上機とを有する原子炉内機器の昇降装置において、
前記巻上機は、複数の巻上用モータを有し、
前記複数の巻上用モータの回転を検知するエンコーダを有し、
前記エンコーダの検知値を計測して前記巻上機の運転を止めたり継続したりする制御手段を有することを特徴とする原子炉内機器の昇降装置。
【請求項2】
天井クレーンと、この天井より垂下するクレーンフックと、このクレーンフックに吊られる巻上機とを有する原子炉内機器の昇降装置において、
前記巻上機は、複数の巻上用モータと、各巻上用モータに駆動される巻ドラムに巻かれるワイヤや鎖などの吊索とを有し、
前記複数の巻上用モータは、巻ドラムへの吊索の巻き取りが均衡を保って巻かれるように回転が制御され、相互の巻き取りの均衡が崩れたら前記巻上機の運転を止めるリミットスイッチを有することを特徴とする原子炉内機器の昇降装置。
【請求項3】
天井クレーンと、この天井より垂下するクレーンフックと、このクレーンフックに吊られる巻上機とを有する原子炉内機器の昇降装置において、
前記巻上機は、前記クレーンフックに吊られる上ブロックと、この上ブロックに吊られる下ブロックと、前記上ブロックに設けた複数の巻上用モータと、前記複数の巻上用モータで駆動される巻ドラムと、前記上ブロックに設けた複数の上滑車と、前記下ブロックに設けた複数の下滑車と、前記下滑車と前記上滑車に掛け渡され、端側が前記巻ドラムに巻かれる吊索とを有し、
前記複数の巻上用モータの回転を検知するエンコーダを有し、
前記エンコーダの検知値を計測して前記巻上機の運転を止めたり継続したりする制御手段を有することを特徴とする原子炉内機器の昇降装置。
【請求項4】
天井クレーンと、この天井より垂下するクレーンフックと、このクレーンフックに吊られる巻上機とを有する原子炉内機器の昇降装置において、
前記巻上機は、前記クレーンフックに吊られる上ブロックと、この上ブロックに吊られる下ブロックと、前記上ブロックに設けた少なくとも二つの巻上用モータと、前記二つの巻上用モータで駆動される巻ドラムと、前記上ブロックに設けた複数の上滑車と、前記下ブロックに設けた複数の下滑車と、前記下滑車と前記上滑車に掛け渡され、端側が前記巻ドラムに巻かれる吊索とを有し、
前記上ブロックは、前記二つの巻上用モータに巻かれる相互の巻き取りの均衡が崩れたら前記巻上機の運転を止めるリミットスイッチを有することを特徴とする原子炉内機器の昇降装置。
【請求項5】
天井クレーンと、この天井より垂下するクレーンフックと、このクレーンフックに吊られる巻上機とを有する原子炉内機器の昇降装置において、
前記巻上機は、前記クレーンフックに吊られる上ブロックと、この上ブロックに吊られる下ブロックと、前記上ブロックに設けた少なくとも二つの巻上用モータと、前記二つの巻上用モータで駆動される巻ドラムと、前記上ブロックに設けた複数の上滑車と、前記下ブロックに設けた複数の下滑車と、前記下滑車と前記上滑車に掛け渡され、端側が前記巻ドラムに巻かれる吊索とを有し、
前記複数の巻上用モータの回転を検知するエンコーダを有し、
前記エンコーダの検知値を計測して前記巻上機の運転を止めたり継続したりする制御手段を有し、
前記上ブロックは、前記二つの巻上用モータに巻かれる相互の巻き取りの均衡が崩れたら前記巻上機の運転を止めるリミットスイッチを有することを特徴とする原子炉内機器の昇降装置。
【請求項6】
請求項3から5の何れかに記載された原子炉内機器の昇降装置において、
前記下ブロックに吊られる上部天秤と、この上部天秤に吊りワイヤを介して吊られる吊り基体と、この吊り基体に設けられたエアシリンダと、前記吊り基体に設けられたピンボックス、このピンボックスに摺動自在に支持され、前記エアシリンダの操作により、原子炉内の機器を把持したり、離したりするピンを有することを特徴とする原子炉内機器の昇降装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載された原子炉内機器の昇降装置において、
蒸気乾燥器ないし気水分離器を含む機器の吊上げ移動では、原子炉ウェルが満水状態でも天井クレーンのクレーンフックを水面よりも上に保ち、前記巻上機の上げ下げ操作を行なうことを特徴とする原子炉内機器の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−285846(P2007−285846A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113055(P2006−113055)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】