説明

原子炉圧力容器の解体方法及び解体装置

【課題】原子炉遮へい壁を撤去することなく気中で安全に解体作業を実施することができるとともに、工期の短縮化を図る。
【解決手段】上蓋10aを有する円筒状遮へい体10を原子炉遮へい壁4の上端面4aに設置する工程と、前記上蓋10aに設けられた昇降装置に12より切断装置14を原子炉圧力容器3内に吊り下げ固定し、原子炉圧力容器3を切断する工程と、前記上蓋10aに設けられた切断片昇降装置11により切断片を前記円筒状遮へい体10内部に吊り込む工程と、前記切断片が前記円筒状遮へい体10内部に吊り込まれた状態で円筒状遮へい体10を所定箇所に移動し切断片を搬出する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器の解体方法及び解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の原子炉は、図5に示すように、内部に炉心を収納する原子炉圧力容器3の周囲を原子炉遮へい壁4が取り囲み、さらにその周囲を生体遮へい壁5が取り囲む構成となっている。通常、原子炉の寿命は数十年といわれており、寿命となった原子炉圧力容器は解体撤去される。従来の解体工法として、原子炉遮へい壁4を撤去し、その後、生体遮へい壁5と原子炉圧力容器3の間の間隙を水で満たし、その状態で原子炉圧力容器を切断装置により切断、撤去する工法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−118597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の解体工法の場合、原子炉遮へい壁を先行撤去し、その後、生体遮へい壁と原子炉圧力容器の間の間隙を水で満たし、その状態で原子炉圧力容器を切断装置により切断し搬出するが、原子炉遮へい壁の撤去、貫通孔等の密封処理、水の注入・排出、等、解体作業の工程数が多く、解体期間が長期化し、解体コストも高くなるという課題があった。
また、各構造物の設置状況や残留放射線強度によっては原子炉遮へい壁を先行撤去できない可能性があり、上記工法を採用することができない場合もあった。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、原子炉遮へい壁を撤去することなく気中で安全に解体作業を実施することができるとともに、解体作業の工期の短縮化及び低コスト化を図ることができる原子炉圧力容器の解体方法及び解体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の原子炉圧力容器の解体方法は、上蓋を有する円筒状遮へい体を原子炉遮へい壁の上端面に設置する工程と、前記上蓋に設けられた昇降装置により切断装置を原子炉圧力容器内に吊り下げ固定し、原子炉圧力容器を切断する工程と、前記上蓋に設けられた切断片昇降装置により切断片を前記円筒状遮へい体内部に吊り込む工程と、前記切断片が前記円筒状遮へい体内部に吊り込まれた状態で円筒状遮へい体を所定箇所に移動し切断片を搬出する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の原子炉圧力容器の解体装置は、原子炉遮へい壁の上端面に設置される上蓋を有する円筒状遮へい体と、前記上蓋に設置され、切断装置を係合可能に把持し原子炉圧力容器内に昇降可能に吊り下げる昇降装置及び原子炉圧力容器の上端を係合可能に把持し昇降可能に吊り下げる切断片昇降装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原子炉遮へい壁を撤去することなく気中で安全に解体作業を実施することができるとともに、解体作業の工期の短縮化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る解体装置の全体構成図。
【図2】第1の実施形態に係る解体装置の詳細図。
【図3】第2の実施形態に係る解体装置の全体構成図。
【図4】第2の実施形態に係る解体装置の詳細図。
【図5】原子炉圧力容器の配置構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る原子炉圧力容器の解体方法及び解体装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を図1、図2を用いて説明する。
(構成)
本第1の実施形態に係る解体装置2は、原子炉遮へい壁4の上部に設置される上蓋10aを有する円筒状遮へい体10と、切断装置14の昇降装置12と、切断片昇降装置11と、気中浮遊物回収装置9とから構成される。
【0012】
切断装置14は切断装置14を原子炉内に固定する固定ビーム24と、切断具22を搭載し周方向に回動可能な回転ビーム23と、切断装置14の把持具25とから構成され、上蓋10aに設置された昇降装置12により上下動移動可能に吊り下げられる。
【0013】
切断片昇降装置11は上蓋10aに設置され、切断片把持具13により切断した後の原子炉圧力容器の切断片を吊り上げる。気中浮遊物回収装置9は上蓋10aに接続された可撓姓のダクト6と、フィルタ7及び排風機8から構成される。
【0014】
(作用)
このように構成された解体装置の解体作業手順について説明する。
まず、天井クレーン1により、内部に切断装置14を吊り下げた状態で円筒状遮へい体10を原子炉圧力容器3の直上に移動し、その状態で円筒状遮へい体10を吊り下げ、原子炉遮へい壁4の上端面4a上に設置する。
【0015】
次に、切断装置14を昇降装置12により原子炉圧力容器3内に吊り下げ、切断装置14を固定ビーム24により切断位置で原子炉圧力容器3の内壁に固定した後、回転ビーム24に搭載された切断具22により圧力容器3を切断する。
その際、切断片昇降装置11は切断片把持具13を吊り下ろし、切断片把持具13は原子炉圧力容器3の上端を把持した状態とする。
【0016】
切断作業の終了後、円筒状に切断された原子炉圧力容器の切断片は、切断片昇降装置11によって吊り上げられることで円筒状遮へい体10の内部に吊り込まれ、その状態で円筒状遮へい体10を天井クレーン1によって所定箇所(オペレーションフロアのプール内等)に搬送し、切断片のみが外部へ搬出される。
その際、切断装置14は把持具25の係合が解除され、原子炉圧力容器3の内壁に固定された状態となっている。
【0017】
一方、切断作業中、上蓋10aに設けられた気中浮遊物回収装置9は、切断時に発生した気中浮遊物を、ダクト6を介してフィルタ7に捕集する。
切断片が搬出された後、天井クレーン1は円筒状遮へい体10を再び原子炉圧力容器3の直上に移動した後、吊り下げ、再度、原子炉圧力容器3の上部に設置し、上記作業を繰り返す。
【0018】
なお、円筒状遮へい体10の下面又は遮へい壁4の上端面4aに弾性体等からなるシール部材を設けることにより(図示せず)、円筒状遮へい体10内部の気密性を高めることができる。
【0019】
(効果)
このように本実施形態に係る解体装置では、上蓋10aを有する円筒状遮へい体10を原子炉遮へい壁4の上端面4a上に設置した状態で切断作業をおこなうことにより、放射線が作業空間に漏洩するのを防止し、また、切断時に発生した気中浮遊物を気中浮遊物回収装置9によってオペフロ20に放出することなく回収するために、オペフロにおける雰囲気線量を大幅に低減させることができるので、原子炉ウエル上に別途汚染拡大防止用のハウス等を設置する必要がなく、オペフロ上の作業環境及びアクセス性を大幅に改善することができる。
【0020】
また、切断片の搬出時においても、円筒状遮へい体10をそのまま活用し、既設の天井クレーン1によって搬出するので、特別の搬送装置又は遮へい装置を用いることなく、効率的かつ安全に切断片を搬出することが可能となる。
【0021】
さらに、この一連の解体作業は気中でおこなわれるので、従来の解体作業における原子炉遮へい壁の撤去、水の注入・排出等の作業を省略可能となり、それにより解体作業に要する工程数、期間及びコストを大幅に削減することができる。
【0022】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、原子炉遮へい壁を撤去することなく気中で安全に解体作業を実施することができるとともに、解体作業の工期の短縮化及び低コスト化を図ることができる。
なお、上記実施形態において、上蓋10aと円筒状遮へい体10は別個に製造してもよいが、一体化成型で製造してもよい。
【0023】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る解体装置の第2の実施形態について図3、図4を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
本第2の実施形態では、オペフロ20上に円筒状遮へい体10を昇降可能に吊り下げる円筒状遮へい体昇降装置15を設置している。
これにより、原子炉圧力容器の切断作業時及び気中浮遊物回収時に、天井クレーンを他の作業に使用することが可能となり、原子炉圧力容器の解体作業の効率化及び短縮化を図ることができる。
【符号の説明】
【0025】
1…天井クレーン、2…解体装置、3…圧力容器、4…遮へい壁、4a…上端面、5…生体遮へい壁、6…ダクト、7…フィルタ、8…排風機、9…気中浮遊物回収装置、10…円筒状遮へい体、10a…上蓋、11…切断片昇降装置、12…切断装置昇降装置、13、25…把持具、14…切断装置、15…解体装置昇降装置、20…オペフロ、22…切断具、23…回転ビーム、24…固定ビーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上蓋を有する円筒状遮へい体を原子炉遮へい壁の上端面に設置する工程と、
前記上蓋に設けられた昇降装置により切断装置を原子炉圧力容器内に吊り下げ固定し、原子炉圧力容器を切断する工程と、
前記上蓋に設けられた切断片昇降装置により切断片を前記円筒状遮へい体内部に吊り込む工程と、
前記切断片が前記円筒状遮へい体内部に吊り込まれた状態で円筒状遮へい体を所定箇所に移動し切断片を搬出する工程と、
を有することを特徴とする原子炉圧力容器の解体方法。
【請求項2】
切断片が搬出された円筒状遮へい体を前記原子炉遮へい壁の上端面に再度設置する工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の原子炉圧力容器の解体方法。
【請求項3】
前記原子炉圧力容器を切断する工程の間、前記上蓋に設けられた気中浮遊物回収装置により前記円筒状遮へい体内の気中浮遊物を回収する工程をさらに有することを特徴とする請求項1又は2記載の原子炉圧力容器の解体方法。
【請求項4】
原子炉遮へい壁の上端面に設置される上蓋を有する円筒状遮へい体と、前記上蓋に設置され、切断装置を係合可能に把持し原子炉圧力容器内に昇降可能に吊り下げる昇降装置及び原子炉圧力容器の上端を係合可能に把持し昇降可能に吊り下げる切断片昇降装置を有することを特徴とする原子炉圧力容器の解体装置。
【請求項5】
前記上蓋に前記円筒状遮へい体内の気中浮遊物を回収する気中浮遊物回収装置を設けたことを特徴とする請求項4記載の原子炉圧力容器の解体装置。
【請求項6】
前記円筒状遮へい体をオペフロ上に設けた円筒状遮へい体昇降装置によって吊り下げることを特徴とする請求項4又は5記載の原子炉圧力容器の解体装置。
【請求項7】
前記円筒状遮へい体の下面又は前記原子炉遮へい壁の上端面に気密保持部材を設けたことを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の原子炉圧力容器の解体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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