説明

原子炉格納容器の冷却装置

【課題】原子炉及び原子炉格納容器の減圧・除熱能力を長期にわたって維持できる受動的な原子炉格納容器の冷却装置を提供する。
【解決手段】原子炉格納容器2を内包する建屋3と、前記建屋3の外部に設置され静的格納容器冷却装置11と熱交換器12を収容する熱交換器室10と、前記熱交換器室10の下部に設けられ前記熱交換器12からのドレン水を貯留するドレン室13及びポンプ室14と、前記原子炉格納容器2の内部と前記熱交換器12とを接続する蒸気逃し管7と、を有する原子炉格納容器2の冷却装置であって、前記熱交換器室10は前記建屋3の外部の地表面に設置されるとともに、前記ドレン水は前記ポンプ室14内のポンプ15により圧力容器に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器の冷却装置に関し、特に、静的格納容器冷却装置を備えた原子炉格納容器の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントにおいて一次系配管の破断又は減圧弁の開放等により冷却材が原子炉格納容器内へ放出された場合、冷却材が減圧によって高温の蒸気となるため、原子炉格納容器内の圧力が上昇する。従来、圧力上昇を抑制し格納容器の健全性を確保するため、発生した蒸気を格納容器内の圧力抑制プールに誘導し凝縮させる方法や、格納容器上部から格納容器スプレイにより内部に散水し、蒸気を凝縮させる方法が知られている。これらの方法では、圧力抑制プールやスプレイ水へ蓄積された熱はポンプ等の動的機器により、熱交換器を介して最終的に外部へ放出されている。
【0003】
近年、安全系の信頼性向上を図るために、格納容器内の圧力抑制方法についても、従来のような動的機器ではなく、格納容器の内部又は外部にアイソレーションコンデンサ(IC)や静的格納容器冷却系(PCCS)を設け、重力などの自然に存在する受動的な力を駆動力として格納容器の除熱を行う方法が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−201559号公報
【特許文献2】特開2009−74980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の受動的な駆動力を利用した冷却装置において、アイソレーションコンデンサプールやPCCS冷却水プールは、満水状態で通常3日間程度の除熱能力を有する水量が確保されている。しかしながら、地震等による亀裂によってプール水が漏洩したり、除熱期間が長期化する場合、追加の給水が必要となるが、その際、電源喪失等による給水設備の故障や、高放射線環境によるアクセス制限によって追加の給水が困難となる可能性がある。
その場合、格納容器内の除熱・減圧が困難になり格納容器内雰囲気の外部放出を余儀なくされたり(格納容器ベント)、原子炉内の残留熱の除去機能が失われる恐れがある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、事故時に原子炉及び原子炉格納容器の減圧・除熱を長期にわたって行うことができる受動的な原子炉格納容器の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置は、原子炉格納容器を内包する建屋と、前記建屋の外部に設置され静的格納容器冷却装置と熱交換器を収容する熱交換器室と、前記熱交換器室の下部に設けられ前記熱交換器からのドレン水を貯留するドレン室及びポンプ室と、前記原子炉格納容器の内部と前記熱交換器とを接続する蒸気逃し管と、を有する原子炉格納容器の冷却装置であって、前記熱交換器室は前記建屋の外部の地表面に設置されるとともに、前記ドレン水は前記ポンプ室内のポンプにより圧力容器に供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、静的格納容器冷却装置が収容される熱交換器室を建屋外部の地表面に設置することにより、静的格納容器冷却装置の冷却水の水位が低下した場合でも追加給水を容易に実施することできるとともに、ドレン室内に貯留されたドレン水を圧力容器の冷却のために有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る原子炉格納容器の冷却装置の全体構成図。
【図2】第2の実施形態に係る原子炉格納容器の冷却装置の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
本第1の実施形態に係る原子炉格納容器の冷却装置を図1により説明する。
(構成)
第1の実施形態に係る原子炉格納容器の冷却装置は、図1に示すように、圧力容器1と、圧力容器1の周囲に設けられた原子炉格納容器2と、原子炉格納容器2を内包する建屋3と、圧力抑制水が満たされた圧力抑制室4と、圧力容器1で発生した蒸気をタービン(図示せず)に導く主蒸気管5と、主蒸気管5等に設けられた減圧弁9と、給水管6と、給水管6に接続された高圧注水タンク8と、建屋3の外部の地表面に設置され内部に熱交換器12と静的格納容器冷却装置11を収容する熱交換器室10と、熱交換器室10下方の地下に設けられたドレン室13及びポンプ室14と、から構成される。
【0012】
原子炉格納容器2の内部と熱交換器12は蒸気逃し管7により接続され、ドレン室13はポンプ15及び逆止弁を介して例えば給水管6に接続され、緊急時にドレン室13のドレン水を圧力容器1に給水できるように構成されている。また、ドレン室13内の非凝縮ガスは配管19を通して圧力抑制室4に排出される。
【0013】
静的格納容器冷却装置11には静的格納容器冷却装置11内に冷却水を補給するための給水口22と、放射性物質を捕捉するフィルタ21を介して静的格納容器冷却装置11内の蒸気を外部へ排出する排出管20が設置されている。また、静的格納容器冷却装置11の下部には熱交換機12の伝熱管18が複数本配置され、蒸気逃し管7を介して導入された蒸気を凝縮し、凝縮されたドレン水はドレン室13に導かれる。
また、熱交換器室10、ドレン室13及びポンプ室14はいずれも気密の放射線遮蔽体から構成されている。
【0014】
なお、図1に示す例では熱交換器室10は地表面に設置されているが半地下構造としてもよく、また、ポンプ室14は建屋3の内部に設置してもよい。
【0015】
(作用)
このように構成された原子炉格納容器の冷却装置において、事故時に減圧弁9や開放弁(図示せず)等を介して原子炉格納容器2内に冷却材が放出され圧力が上昇した場合、原子炉格納容器2内の蒸気は圧力抑制室4に導かれ凝縮する。やがて圧力抑制室4の水温が飽和温度に達すると圧力抑制機能を喪失し、代わって静的格納容器冷却装置11が機能しはじめ、原子炉格納容器2内の蒸気を蒸気逃し管7を介して熱交換器12、伝熱管18に導き蒸気を凝縮する。
これにより原子炉格納容器2内を減圧・除熱し、蒸気が直接外部に放出する事態(格納容器ベント)を防止する。
【0016】
静的格納容器冷却装置11には通常冷却水が満たされているが、亀裂等によって冷却水が漏洩したり、除熱期間が長期化する場合には冷却水の水位が低下する。その場合は、冷却水の水位低下に応じて図示しない給水設備(給水車又は給水タンク等)から追加の冷却水を給水口22から静的格納容器冷却装置11に補充する。
【0017】
一方、ドレンタンク13に貯留されたドレン水はポンプ室14内のポンプ15によって給水管6等を介して圧力容器1内に注入され原子炉の残留熱を除去する。ポンプ15はポンプ室14内又は外部に設置された非常用電源(図示せず)によって駆動される。
なお、圧力容器1には畜圧注水タンク8からも冷却材が先行して注入される。また、ドレン水は給水管6に限らず、高圧又は低圧炉心注水系等の配管に接続してもよい。
【0018】
静的格納容器冷却装置11内の冷却材は熱交換により高温になり蒸気が発生するが、蒸気は放射性物質を捕捉するフィルタ21を介して排出管20から熱交換器室10の外部へ放出される。また、排出管20の先端は外部から雨水や異物が混入しないように例えば逆U字構造または両端開放管の側部を排出管20の先端と接続しているシュノーケル形としている。
【0019】
(効果)
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、静的格納容器冷却装置11が収容される熱交換器室10を建屋外部の地表面に設置したので、静的格納容器冷却装置11の冷却水の水位が低下した場合でも給水口22を通して追加給水を容易に実施することできるとともに、ドレンタンク13内に貯留されたドレン水を圧力容器1の冷却水として継続的に供給することが可能となる。
【0020】
さらに、本実施形態の冷却装置は新設のみならず既設の原子力プラントにも大規模な工事を必要とせずに付設することが可能であり、原子力プラントの安全性、信頼性を高めることができる。
【0021】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る原子炉格納容器の冷却装置を図2により説明する。なお、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本第2の実施形態では、ポンプ15の駆動源として静的格納容器冷却装置11から放出される蒸気により発電する小型の蒸気タービンを用いることを特徴としている。
【0022】
本実施形態に係る冷却装置は、熱交換器室10に隣接して小型の蒸気タービン31を収容するタービン室30を設置し、静的格納容器冷却装置11から放出される蒸気を排出管32を介して蒸気タービン31に導き、この蒸気タービン31の回転軸に連結された発電機(図示せず)によって発生した電力をケーブル34を介してポンプ15に供給してポンプ15を駆動する。
【0023】
また、蒸気タービン31で凝縮した水は配管33を介して静的格納容器冷却装置11に戻されるとともに、非凝縮ガスはフィルタ21、排出管35を介して外部に排出される。
なお、本実施形態ではタービン室30は熱交換器室10の上部に設置されているが、これに限定されず側面に設置してもよい。
【0024】
本第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加え、静的格納容器冷却装置からの放出蒸気を利用することにより、外部電源を用いずにドレン水を圧力容器に注入し圧力容器の除熱を長期にわたって継続することができる。
【0025】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組合せ、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1…圧力容器、2…原子炉格納容器、3…建屋、4…圧力抑制室、5…主蒸気管、6….給水管、7…蒸気逃し管、8…高圧注水タンク、9…減圧弁、10…熱交換器室、11…静的格納容器冷却装置、12….熱交換器、13…ドレンタンク、14…ポンプ室、15…ポンプ、18…伝熱管、19…配管、20…排出管、21…フィルタ、22…給水口、30…タービン室、31…蒸気タービン、32…排出管、33…配管、34…ケーブル、35…排出管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器を内包する建屋と、前記建屋の外部に設置され静的格納容器冷却装置と熱交換器を収容する熱交換器室と、前記熱交換器室の下部に設けられ前記熱交換器からのドレン水を貯留するドレン室及びポンプ室と、前記原子炉格納容器の内部と前記熱交換器とを接続する蒸気逃し管と、を有する原子炉格納容器の冷却装置であって、
前記熱交換器室は前記建屋の外部の地表面に設置されるとともに、前記ドレン水は前記ポンプ室内のポンプにより圧力容器に供給されることを特徴とする原子炉格納容器の冷却装置。
【請求項2】
前記ポンプを非常用電源によって駆動することを特徴とする請求項1記載の原子炉格納容器の冷却装置。
【請求項3】
前記熱交換器室に隣接してタービンを収容するタービン室を設け、前記静的格納容器冷却装置から放出される蒸気によって前記タービンを駆動し、当該タービンによって生成した電力により前記ポンプを駆動することを特徴とする請求項1記載の原子炉格納容器の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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