説明

原子炉格納容器の減圧装置及び減圧方法

【課題】任意の圧力レベルで、原子炉格納容器内の気体をベントすることができるとともに、全交流電源喪失、空気作動弁の駆動源である空気圧の喪失が発生した際にも、原子炉格納容器内の気体をベントすることのできる原子炉格納容器の減圧装置等を提供する。
【解決手段】原子炉格納容器内の気体を排気塔に移送して放出する排気管と、排気管内の気体圧力を駆動源として開動作し排気管を介した気体の移送を許容する自力開閉式第1隔離弁と、排気管の気体を自力開閉式第1隔離弁の駆動部に導入するための導圧配管と直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第1隔離弁駆動用ラインと、排気管の自力開閉式第1隔離弁より下流側に配設され、排気管内の気体圧力を駆動源として開動作する自力開閉式第2隔離弁と、排気管の気体を自力開閉式第2隔離弁の駆動部に導入するための導圧配管と直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第2隔離弁駆動用ラインとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉に係り、特に、緊急に原子炉圧力容器および原子炉格納容器への代替注水が必要になった場合に、圧力が高くなった原子炉格納容器内を任意の圧力レベルに減圧して、吐出圧の低いポンプによる注水も可能にした原子炉格納容器の減圧装置及び減圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から沸騰水型原子炉(BWR)では、排気管に、電動弁と、設定破裂圧力に達すると破裂するラプチャーディスクとを直列に配設し、原子炉格納容器内の圧力が異常に上昇した際に、原子炉格納容器内の気体を大気中にベントするための機構が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図4に、このような沸騰水型原子炉(BWR)の一例として、Mark−I型BWRの概略構成を示す。図4に示すように、原子炉圧力容器1が鋼鉄製の原子炉格納容器2の中に内蔵されている。
【0004】
Mark−I型BWRの原子炉格納容器2は、原子炉圧力容器1及び再循環系(図示せず)を取り囲むフラスコ型のドライウェル3、その下に同心的に配置されたドーナツ型のサプレッションチャンバー4、ドライウェル3とサプレッションチャンバー4を放射状に連結する複数のベント管5、サプレッションチャンバー4の内部空間でベント管5の先端に連結されたドーナツ型のベントヘッダ6、ベントヘッダ6に接続された複数のダウンカマーパイプ7等の圧力抑制系から構成されている。
【0005】
サプレッションチャンバー4にはプール水が張られており、ダウンカマーパイプ7の先端部分がこの水面下に没している。
【0006】
主蒸気系配管8に取り付けられた主蒸気逃がし安全弁9から延びる主蒸気逃がし管10の先端もサプレッションチャンバー4の水面下まで導かれている。
【0007】
そして、原子炉圧力容器1内の圧力が過度に上昇した場合には、この主蒸気逃がし安全弁9を作動させて原子炉圧力容器1からの蒸気の一部をサプレッションチャンバー4のプール水中に放出して原子炉圧力容器1内の圧力上昇が抑制される。
【0008】
サプレッションチャンバー4のプール水は、残留熱除去系(RHR)により冷却されて循環しているが、この残留熱除去系が正常に機能しない、主蒸気逃がし安全弁が一旦開いた後機器の故障により閉弁しない、などの事故が重なった場合には、原子炉格納容器2内の圧力、温度が急激に上昇し、最終的には、原子炉格納容器2の設計限界を超える危険性が発生する。
【0009】
原子炉格納容器2内に放出された放射性物質を含む気体等を安全に処理する設備として非常用ガス処理系(SGTS)14が設けられている。非常用ガス処理系14は、図示を省略した湿分除去装置、高性能粒子フィルタ、ヨウ素用チャコールフィルタ、排気ファン等から構成されている。
【0010】
原子炉格納容器2のサプレッションチャンバー4には、サプレッションチャンバー4と排気塔15との間を連通する排気管12が配設されている。この排気管12は原子炉格納容器2内の気体を排気塔15に移送して大気に放出するためのものである。この排気管12には、上流側から順に、空気圧駆動弁からなるサプレッションチャンバー側第1隔離弁11、電動弁(MO)16、ラプチャーディスク17がこの順で配設されている。
【0011】
また、排気管12の、サプレッションチャンバー側第1隔離弁11と電動弁16との間から分岐してドライウェル3に接続された分岐排気管12aが配設されており、この分岐排気管12aには、ドライウェル側第1隔離弁11aが配設されている。排気管12と分岐排気管12aは耐圧配管とされている。
【0012】
さらに、上記排気管12のサプレッションチャンバー側第1隔離弁11と、電動弁(MO)16との間から分岐し、非常用ガス処理系14を介して排気塔15に接続されたパージ配管18が配設されており、パージ配管18には、空気圧駆動とされた第2隔離弁13が配設されている。このパージ配管18は、耐圧配管に比べて耐圧性の低い通常配管から構成されている。
【0013】
原子炉格納容器2内の圧力が正常であり、原子炉格納容器2内を窒素ガスでパージするような場合、サプレッションチャンバー側第1隔離弁11と第2隔離弁13が遠隔操作で開かれ、サプレッションチャンバー4内の気体が、非常用ガス処理系14で処理され、放射性物質等が除去された後、排気塔15から高所放出される。
【0014】
一方、原子炉格納容器2の圧力、温度が急激に上昇して原子炉格納容器2が損傷する可能性が考えられる場合には、サプレッションチャンバー側第1隔離弁11又はドライウェル側第1隔離弁11aと、電動弁16とが遠隔操作で開放される。これによって、排気管12内の気体の圧力が予め設定したラプチャーディスク17の設定破裂圧力に達するとラプチャーディスク17が破裂して高圧の気体が急速に放出され、過圧による原子炉格納容器2の損傷が防止される。
【0015】
ところで、このような従来のラプチャーディスク17の破裂により原子炉格納容器2の損傷に至る過圧を防ぐようにした原子炉では、ラプチャーディスク17の破裂設定圧力が原子炉格納容器2の最高使用圧力以上の圧力に設定されているため、この圧力以下での原子炉格納容器2内の気体をベントすることはできない。
【0016】
したがって、原子炉冷却材喪失事故(LOCA)時のように、緊急に炉心への代替注水が必要になった場合には、原子炉格納容器の最大使用圧力以上の吐出圧力を持つポンプしか使うことができず、ポンプの調達範囲が制約されるという課題があった。
【0017】
また、電動弁16は、交流電源で駆動され、サプレッションチャンバー側第1隔離弁11及びドライウェル側第1隔離弁11aは、空気圧で駆動され制御電源(直流電源)によって制御される。このため、外部電源喪失及び非常用電源喪失が重なる全交流電源喪失(SBO)、又は空気作動弁の駆動源である空気圧の喪失、或いは弁制御のための制御電源(直流電源)の喪失のいずれかが発生した場合には、原子炉格納容器2内の気体のベントが行えなくなる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平3−235093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来のラプチャーディスクの破裂により原子炉格納容器の過圧による損傷を防ぐ技術では、ラプチャーディスクの破裂設定圧力が原子炉格納容器の最高使用圧力以上の圧力に設定されるため、原子炉格納容器への緊急の代替注水が必要になった場合に、原子炉格納容器の最大使用圧力以上の吐出圧力を持つポンプしか使うことができず、ポンプの調達範囲が制約されるという課題があった。
【0020】
また、全交流電源喪失(SBO)、又は空気作動弁の駆動源である空気圧の喪失、或いは弁制御のための制御電源(直流電源)の喪失のいずれかが発生した場合には、原子炉格納容器2内の気体のベントを行えなくなる可能性があった。
【0021】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたもので、任意の圧力レベルで、原子炉格納容器内の気体をベントすることができるとともに、全交流電源喪失、空気作動弁の駆動源である空気圧の喪失が発生した際にも、原子炉格納容器内の気体をベントすることのできる原子炉格納容器の減圧装置及び減圧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の原子炉格納容器の減圧装置の一態様は、 原子炉圧力容器を収容する原子炉格納容器のサプレッションチャンバーに接続され、当該原子炉格納容器内の気体を排気塔に移送して大気に放出する排気管と、前記排気管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作し当該排気管を介した気体の移送を許容する自力開閉式第1隔離弁と、前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁より上流側の気体を前記自力開閉式第1隔離弁の駆動部に導入するための第1導圧配管と当該第1導圧配管に介挿された第1直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第1隔離弁駆動用ラインと、前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁より下流側に配設され、当該排気管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作する自力開閉式第2隔離弁と、前記排気管の前記自力開閉式第2隔離弁より上流側の気体を前記自力開閉式第2隔離弁の駆動部に導入するための第2導圧配管と当該第2導圧配管に介挿された第2直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第2隔離弁駆動用ラインと、を有することを特徴とする。
【0023】
本発明の原子炉格納容器の減圧方法の一態様は、原子炉圧力容器を収容する原子炉格納容器のサプレッションチャンバーに接続され、当該原子炉格納容器内の気体を排気塔に移送して大気に放出する排気管と、前記排気管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作し当該排気管を介した気体の移送を許容する自力開閉式第1隔離弁と、前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁より上流側の気体を前記自力開閉式第1隔離弁の駆動部に導入するための第1導圧配管と当該第1導圧配管に介挿された第1直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第1隔離弁駆動用ラインと、前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁より下流側に配設され、当該排気管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作する自力開閉式第2隔離弁と、前記排気管の前記自力開閉式第2隔離弁より上流側の気体を前記自力開閉式第2隔離弁の駆動部に導入するための第2導圧配管と当該第2導圧配管に介挿された第2直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第2隔離弁駆動用ラインと、を配設し、前記第1直流電源駆動弁と、前記第2直流電源駆動弁に通電して開弁することによって、前記原子炉圧力容器内の気体を前記排気管を通じて大気に放出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、任意の圧力レベルで、原子炉格納容器内の気体をベントすることができるとともに、全交流電源喪失、空気作動弁の駆動源である空気圧の喪失が発生した際にも、原子炉格納容器内の気体をベントすることのできる原子炉の減圧装置及び減圧方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態の要部構成を模式的に示す図。
【図2】本発明の第2実施形態の要部構成を模式的に示す図。
【図3】隔離弁の構成を模式的に示す図。
【図4】従来の原子炉の要部構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明を、Mark−I型沸騰水型原子炉に適用した実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態に係る原子炉の要部概略構成を示す系統図である。なお、図1において、図4に示した従来の原子炉格納容器の減圧装置と対応する部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
図1に示す原子炉は、いわゆるMark−I型BWRであって、ドライウェル3と、サプレッションチャンバー4、ベント管5、ベントヘッダ6、ダウンカマーパイプ7等の圧力抑制系から主要部分が構成されている。
【0029】
原子炉格納容器2には、サプレッションチャンバー4を貫通して内部空間に開口する排気管12と、排気管12から分岐しドライウェル3を貫通して内部空間に開口する分岐排気管12aが配設されている。排気管12には、通常の空気圧駆動弁からなるサプレッションチャンバー側第1隔離弁11が配設されている。また、このサプレッションチャンバー側第1隔離弁11をバイパスするように並列に、通常の空気圧駆動弁からなるパージ弁20と、自力開閉式空気作動弁からなる自力開閉式第1隔離弁21が配設されている。パージ弁20は、サプレッションチャンバー側第1隔離弁11及び自力開閉式第1隔離弁21に比べて容量の少ない弁であり、通常時に原子炉格納容器2内を窒素ガスでパージする際等に開かれる。
【0030】
上記自力開閉式第1隔離弁21は、排気管12内の原子炉格納容器2側の気体圧力を駆動源として開動作し排気管12を介した気体の移送を許容する。この自力開閉式第1隔離弁21には、排気管12の自力開閉式第1隔離弁21より上流側の気体を自力開閉式第1隔離弁21の駆動部に導入するための導圧配管22aと導圧配管22aに介挿され直流電源によって駆動される直流電源駆動弁22bとを有する自力開閉式第1隔離弁駆動用ライン22が配設されている。
【0031】
また、排気管12の自力開閉式第1隔離弁21より下流側には、自力開閉式空気作動弁からなる自力開閉式第2隔離弁31が配設されている。自力開閉式第2隔離弁31は、排気管12内の原子炉格納容器2側の気体圧力を駆動源として開動作し排気管12を介した気体の移送を許容する。この自力開閉式第2隔離弁31には、排気管12の自力開閉式第2隔離弁31より上流側の気体を自力開閉式第2隔離弁31の駆動部に導入するための導圧配管32aと導圧配管32aに介挿され直流電源によって駆動される直流電源駆動弁32bとを有する自力開閉式第2隔離弁駆動用ライン32が配設されている。
【0032】
また、排気管12から分岐してドライウェル3の内部空間に開口する分岐排気管12aには、ドライウェル3側の分岐排気管12a内の気体圧力を駆動源として開動作し、分岐排気管12a及び排気管12を介した気体の移送を許容するドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23が配設されている。このドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23には、分岐排気管12aのドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23より上流側の気体をドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23の駆動部に導入するための導圧配管24aとこの導圧配管24aに介挿された直流電源駆動弁24bとを有するドライウェル側自力開閉式第1隔離弁駆動用ライン24が配設されている。
【0033】
さらに、排気管12から分岐し、非常用ガス処理系14を介して排気塔15に接続されたパージ配管18には、自力開閉式空気作動弁からなるパージ側自力開閉式第2隔離弁33が配設されている。このパージ側自力開閉式第2隔離弁33には、パージ配管18のパージ側自力開閉式第2隔離弁33より上流側の気体をパージ側自力開閉式第2隔離弁33の駆動部に導入するための導圧配管34aと導圧配管34aに介挿され直流電源によって駆動される直流電源駆動弁34bとを有するパージ側自力開閉式第2隔離弁駆動用ライン34が配設されている。
【0034】
パージ配管18のパージ側自力開閉式第2隔離弁33の下流側には、自力開閉式空気作動弁からなり、パージ配管18のパージ側自力開閉式第2隔離弁33側の気体圧力を駆動源として閉動作するパージ配管閉塞弁37が配設されている。このパージ配管閉塞弁37には、パージ配管18のパージ配管閉塞弁37より上流側の気体をパージ配管閉塞弁37の駆動部に導入するための導圧配管を有するパージ配管閉塞弁駆動用ライン38が配設されている。
【0035】
パージ配管閉塞弁37は、常時開とされており、パージ側自力開閉式第2隔離弁33が開かれている時に、パージ配管18内の圧力が上昇してパージ配管18の耐圧を超えるような圧力となった場合に、この気体の圧力によって自動的に閉塞する構成となっている。
【0036】
また、パージ配管18には、非常用ガス処理系14をバイパスして排気塔15に接続されたバイパス配管18aが配設されている。このバイパス配管18aには、自力開閉式空気作動弁からなるバイパス側自力開閉式第2隔離弁35が配設されている。このバイパス側自力開閉式第2隔離弁35には、バイパス配管18aのバイパス側自力開閉式第2隔離弁35より上流側の気体をバイパス側自力開閉式第2隔離弁35の駆動部に導入するための導圧配管36aと導圧配管36aに介挿され直流電源によって駆動される直流電源駆動弁36bとを有するバイパス側自力開閉式第2隔離弁駆動用ライン36が配設されている。
【0037】
バイパス配管18aのバイパス側自力開閉式第2隔離弁35の下流側には、自力開閉式空気作動弁からなり、バイパス配管18aのバイパス側自力開閉式第2隔離弁35側の気体圧力を駆動源として閉動作するバイパス配管閉塞弁39が配設されている。このバイパス配管閉塞弁39には、バイパス配管18aのバイパス配管閉塞弁39より上流側の気体をバイパス配管閉塞弁39の駆動部に導入するための導圧配管を有するバイパス配管閉塞弁駆動用ライン40が配設されている。
【0038】
バイパス配管閉塞弁39は、常時開とされており、バイパス側自力開閉式第2隔離弁35が開かれている時に、パージ配管18内の圧力が上昇してパージ配管18の耐圧を超えるような圧力となった場合に、この気体の圧力によって自動的に閉塞する構成となっている。
【0039】
上記構成の第1実施形態において、自力開閉式空気弁からなる、自力開閉式第1隔離弁21、ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23、自力開閉式第2隔離弁31、パージ側自力開閉式第2隔離弁33、バイパス側自力開閉式第2隔離弁35は、その駆動力として原子炉格納容器2内の気体の圧力を用いている。また、これらの自力開閉式空気弁に設けられた直流電源駆動弁22b,24b,32b,34b,36bは、制御用電源である直流電源を駆動源としており、直流電源が喪失した場合は、バッテリー(蓄電池、乾電池)から供給される直流電源で駆動できる構成となっている。
【0040】
したがって、非常時に、全交流電源喪失(SBO)、空気作動弁の駆動源である空気圧の喪失、弁制御のための制御電源(直流電源)の喪失が全て発生した場合においても、直流電源駆動弁22b,24b,32b,34b,36bへ供給する直流電源を、乾電池等の電池からの直流電源に切り替えることによって、上記の各自力開閉式第1隔離弁21、ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23、自力開閉式第2隔離弁31、パージ側自力開閉式第2隔離弁33、バイパス側自力開閉式第2隔離弁35を動作させることができ、原子炉格納容器2内の気体のベントを行えるようになっている。
【0041】
非常時に、原子炉格納容器2内からの気体のベントをする必要が生じた場合、先ず、サプレッションチャンバー4側からプール水を通過することによってある程度放射性物質が除去された気体をベントする。この場合、原子炉格納容器2内の圧力が高くなっていない状態では、自力開閉式第1隔離弁21及びパージ側自力開閉式第2隔離弁33を開き、非常用ガス処理系14を介した気体のベントを行う。この場合、非常用ガス処理系14で処理されて放射性物質の除去された気体が排気塔15へ送られて高所放出される。
【0042】
一方、既に原子炉格納容器2内の圧力が高くなっており、耐圧の関係で非常用ガス処理系14を使用することができない場合は、自力開閉式第1隔離弁21及び自力開閉式第2隔離弁31を開くことによって、原子炉格納容器2内の気体のベントを行う。さらに、サプレッションチャンバー4内の水位が一定以上に上昇している場合は、自力開閉式第1隔離弁21ではなく、ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23及び自力開閉式第2隔離弁31を開くことによって、原子炉格納容器2内の気体のベントを行う。
【0043】
上記のように原子炉格納容器2内の気体のベントを行い、原子炉格納容器2内の圧力を低下させることによって、高圧なポンプを使用することなく、原子炉圧力容器1内への注水を行うことが可能となる。したがって、原子炉冷却材喪失事故(LOCA)時のように、原子炉圧力容器1内への代替注水を緊急かつ大量に行う必要があるのに、吐出圧力が原子炉格納容器2の圧力よりも高いポンプだけでは十分な注水が行えない場合には、従来のようにラプチャーディスクの破裂耐圧に制限されることなく、任意の圧力下において原子炉格納容器2内の気体をベントすることができ、吐出圧の低いポンプによる注水も可能にすることができる。
【0044】
なお、上記の説明において、サプレッションチャンバー側第1隔離弁11及びパージ弁20を開くための空気圧が確保されている場合は、自力開閉式第1隔離弁21ではなく、サプレッションチャンバー側第1隔離弁11又はパージ弁20を開いてもよい。
【0045】
ところで、上記したとおり、直流電源駆動弁22b,24b,32b,34b,36bは、バッテリー(蓄電池、乾電池)から供給される直流電源で駆動できる構成となっているが、自力開閉式第1隔離弁21、ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23、自力開閉式第2隔離弁31、パージ側自力開閉式第2隔離弁33、バイパス側自力開閉式第2隔離弁35を開状態に維持するためには、直流電源駆動弁22b,24b,32b,34b,36bに対する直流電源の供給を続ける必要がある。
【0046】
一方、自立開閉式空気弁は、例えば図3に示されるように、弁体(図示せず。)を収容するバルブケーシング101、先端部に弁体が設けられた弁棒102、弁棒102を付勢するバネ103、駆動用空気が導入されるダイヤフラム104等からその主要部が構成されている。したがって、弁棒102が移動して、弁体が開状態となった際に、バルブケーシング101と弁棒102のフランジ部105等の位置を機械的に一定に維持する係止部材(所謂ギャグ等)110が挿入されるようにして、直流電源駆動弁22b,24b,32b,34b,36bに対する直流電源の供給が停止された際にも、自力開閉式第1隔離弁21、ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23、自力開閉式第2隔離弁31、パージ側自力開閉式第2隔離弁33、バイパス側自力開閉式第2隔離弁35を開状態に維持できるようにすることができる。
【0047】
さらには、上記係止部材110を電気的に駆動して、挿入、引き抜き可能とすれば、係止部材110を引き抜くことによって自力開閉式第1隔離弁21、ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23、自力開閉式第2隔離弁31、パージ側自力開閉式第2隔離弁33、バイパス側自力開閉式第2隔離弁35を閉じることもできる。
【0048】
図2は、第2実施形態に係る原子炉の要部概略構成を示す系統図である。なお、図2において、図1に示した第1実施形態の原子炉と対応する部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0049】
図2に示すように、第2実施形態では、第1実施形態における空気駆動弁からなるサプレッションチャンバー側第1隔離弁11を省略するとともに、パージ配管閉塞弁38及びバイパス配管閉塞弁39を省略したものである。このような構成としても、第1実施形態の場合と同様に、全交流電源喪失(SBO)、空気作動弁の駆動源である空気圧の喪失、弁制御のための制御電源(直流電源)の喪失が全て発生した場合においても、各自力開閉式第1隔離弁21、ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁23、自力開閉式第2隔離弁31、パージ側自力開閉式第2隔離弁33、バイパス側自力開閉式第2隔離弁35を動作させることができ、原子炉格納容器2内の気体のベントを行うことができる。
【0050】
なお、以上の実施形態は、Mark−I型BWRに本発明を適用した場合について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるべきものではなく、Mark−II型BWRあるいはABWRの原子炉格納容器の減圧装置についても同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1……原子炉圧力容器、2……原子炉格納容器、3……ドライウェル、4……サプレッションチャンバー、5……ベント管、6……ベントヘッダ、7……ダウンカマーパイプ、8……主蒸気系配管、9……主蒸気逃がし安全弁、10……主蒸気逃がし管、11……サプレッションチャンバー側第1隔離弁、11a……ドライウェル側第1隔離弁、12……排気管、12a……分岐排気管、13……第2隔離弁、14……非常用ガス処理系(SGTS)、12a,12b……第1隔離弁、15……排気塔、16……電動弁、17……ラプチャーディスク、18……パージ配管、18a……バイパス配管、20……パージ弁、21……自力開閉式第1隔離弁、22a,24a,32a,34a,36a……導圧配管、22b,24b,32b,34b,36b……直流電源駆動弁、22……自力開閉式第1隔離弁駆動用ライン、24……ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁駆動用ライン、31……自力開閉式第2隔離弁、32……自力開閉式第2隔離弁駆動用ライン、33……パージ側自力開閉式第2隔離弁、34……パージ側自力開閉式第2隔離弁駆動用ライン、35……バイパス側自力開閉式第2隔離弁、36……バイパス側自力開閉式第2隔離弁駆動用ライン、37……パージ配管閉塞弁、38……パージ配管閉塞弁駆動用ライン、39……バイパス配管閉塞弁、40……バイパス配管閉塞弁駆動用ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器を収容する原子炉格納容器のサプレッションチャンバーに接続され、当該原子炉格納容器内の気体を排気塔に移送して大気に放出する排気管と、
前記排気管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作し当該排気管を介した気体の移送を許容する自力開閉式第1隔離弁と、
前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁より上流側の気体を前記自力開閉式第1隔離弁の駆動部に導入するための第1導圧配管と当該第1導圧配管に介挿された第1直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第1隔離弁駆動用ラインと、
前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁より下流側に配設され、当該排気管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作する自力開閉式第2隔離弁と、
前記排気管の前記自力開閉式第2隔離弁より上流側の気体を前記自力開閉式第2隔離弁の駆動部に導入するための第2導圧配管と当該第2導圧配管に介挿された第2直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第2隔離弁駆動用ラインと、
を有することを特徴とする原子炉格納容器の減圧装置。
【請求項2】
前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁と前記自力開閉式第2隔離弁との間から分岐し、前記原子炉格納容器のドライウェルに接続された分岐排気管と、
前記分岐排気管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作し当該分岐排気管を介した気体の移送を許容するドライウェル側自力開閉式第1隔離弁と、
前記分岐排気管の前記ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁より上流側の気体を前記ドライウェル側自力開閉式第1隔離弁の駆動部に導入するための第3導圧配管と当該第3導圧配管に介挿された第3直流電源駆動弁とを有するドライウェル側自力開閉式第1隔離弁駆動用ラインと、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の原子炉格納容器の減圧装置。
【請求項3】
前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁と前記自力開閉式第2隔離弁との間から分岐し、非常用ガス処理系に接続されたパージ配管と、
前記パージ配管に介挿され当該パージ配管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作するパージ側自力開閉式第2隔離弁と、
前記パージ配管の前記パージ側自力開閉式第2隔離弁より上流側の気体を前記パージ側自力開閉式第2隔離弁の駆動部に導入するための第4導圧配管と当該第4導圧配管に介挿された第4直流電源駆動弁とを有するパージ側自力開閉式第2隔離弁駆動用ラインと、
前記自力開閉式第1隔離弁をバイパスする配管に介挿され外部からの空気圧で駆動されるパージ弁と
を具備したことを特徴とする請求項1又は2記載の原子炉格納容器の減圧装置。
【請求項4】
前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁が配設された部位には、前記自力開閉式第1隔離弁及び前記パージ弁と並列して、外部からの空気圧で駆動される第1隔離弁がさらに配設されている
ことを特徴とする請求項3記載の原子炉格納容器の減圧装置。
【請求項5】
前記パージ配管から分岐して前記非常用ガス処理系をバイパスするバイパス配管と、
前記バイパス配管に介挿され当該バイパス配管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作するバイパス側自力開閉式第2隔離弁と、
前記バイパス配管の前記バイパス側自力開閉式第2隔離弁より上流側の気体を前記バイパス側自力開閉式第2隔離弁の駆動部に導入するための第5導圧配管と当該第5導圧配管に介挿された第5直流電源駆動弁とを有するバイパス側自力開閉式第2隔離弁駆動用ラインと、
を具備したことを特徴とする請求項3又は4記載の原子炉格納容器の減圧装置。
【請求項6】
前記パージ配管の前記パージ側自力開閉式第2隔離弁より下流側に設けられ、前記パージ配管の前記パージ側自力開閉式第2隔離弁側の気体圧力を駆動源として閉動作するパージ配管閉塞弁と、
前記パージ配管の前記パージ配管閉塞弁より上流側の気体を前記パージ配管閉塞弁の駆動部に導入するための第6導圧配管を有するパージ配管閉塞弁駆動用ラインと、
前記バイパス配管のバイパス側自力開閉式第2隔離弁より下流側に設けられ、前記バイパス配管の前記バイパス側自力開閉式第2隔離弁側の気体圧力を駆動源として閉動作するバイパス配管閉塞弁と、
前記バイパス配管の前記バイパス配管閉塞弁より上流側の気体を前記バイパス配管閉塞弁の駆動部に導入するための第7導圧配管を有するバイパス配管閉塞弁駆動用ラインと、
を具備したことを特徴とする請求項5記載の原子炉格納容器の減圧装置。
【請求項7】
前記第1〜5直流電源駆動弁が、電池からの直流電源で駆動可能とされている
ことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の原子炉格納容器の減圧装置。
【請求項8】
少なくとも前記自力開閉式第1隔離弁と前記自力開閉式第2隔離弁は、開状態で弁棒の移動を機械的に制限し開状態を維持する機構を具備している
ことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の原子炉格納容器の減圧装置。
【請求項9】
原子炉圧力容器を収容する原子炉格納容器のサプレッションチャンバーに接続され、当該原子炉格納容器内の気体を排気塔に移送して大気に放出する排気管と、
前記排気管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作し当該排気管を介した気体の移送を許容する自力開閉式第1隔離弁と、
前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁より上流側の気体を前記自力開閉式第1隔離弁の駆動部に導入するための第1導圧配管と当該第1導圧配管に介挿された第1直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第1隔離弁駆動用ラインと、
前記排気管の前記自力開閉式第1隔離弁より下流側に配設され、当該排気管内の前記原子炉格納容器側の気体圧力を駆動源として開動作する自力開閉式第2隔離弁と、
前記排気管の前記自力開閉式第2隔離弁より上流側の気体を前記自力開閉式第2隔離弁の駆動部に導入するための第2導圧配管と当該第2導圧配管に介挿された第2直流電源駆動弁とを有する自力開閉式第2隔離弁駆動用ラインと、
を配設し、前記第1直流電源駆動弁と、前記第2直流電源駆動弁に通電して開弁することによって、前記原子炉圧力容器内の気体を前記排気管を通じて大気に放出することを特徴とする原子炉格納容器の減圧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−230057(P2012−230057A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99644(P2011−99644)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】