原稿読取装置
【課題】キャリッジを副走査方向に移動させて原稿を読み取る方式において、読み取りが一時停止した場合に、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させる原稿読取装置を提供する。
【解決手段】読取制御部60は移動制御部30及び撮像素子制御部40を制御することにより、以下の動作を実行する。原稿の読み取り中にバッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合、原稿の読み取りを一時停止させ、かつキャリッジ201を副走査方向に移動することを停止させる。原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる。原稿の読み取りに用いる水平同期信号HoSはパルス信号PuSと同期させて生成される。パルス信号PuSはキャリッジ201を副走査方向に移動させる動力を生成するモーター10の回転角度を制御する信号である。
【解決手段】読取制御部60は移動制御部30及び撮像素子制御部40を制御することにより、以下の動作を実行する。原稿の読み取り中にバッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合、原稿の読み取りを一時停止させ、かつキャリッジ201を副走査方向に移動することを停止させる。原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる。原稿の読み取りに用いる水平同期信号HoSはパルス信号PuSと同期させて生成される。パルス信号PuSはキャリッジ201を副走査方向に移動させる動力を生成するモーター10の回転角度を制御する信号である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ネットワークスキャンを実行する機能を有する原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を副走査方向に相対的に移動させながら、リニアイメージセンサーのような撮像素子によって原稿をライン単位で読み取る原稿読取装置として、フラットベッド式の原稿読取装置とADF(Auto Document Feeder)式の原稿読取装置とがある。フラットベッド式では、キャリッジを副走査方向に移動させて原稿を読み取る。ADF式では、原稿を副走査方向に移動させて原稿を読み取る。
【0003】
原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像データをネットワーク経由でサーバー等の目的地に転送するネットワークスキャンでは、画像データのネットワーク上での転送速度が、ネットワークのトラフィックに依存する。このため、ネットワークのトラフィックが多ければ、原稿読取装置が原稿を読み取る速度に比べて、画像データのネットワーク上での転送速度が遅くなる現象が生じる。
【0004】
原稿読取装置は画像データを一時蓄積するバッファーメモリーを備えている。しかし、上記現象が発生すると、バッファーメモリーに蓄積すべき画像データの量がバッファの容量を超える可能性が生じる。原稿の読み取り中に、バッファーメモリーに蓄積すべき画像データの量がバッファーメモリーの容量を超えれば、その原稿の読み取りは失敗する。
【0005】
そこで、以下の二つのタイプの原稿読取装置が提案されている。第1のタイプは、1ページ分の原稿の画像データを蓄積できるバッファーメモリーを備える。このタイプでは、バッファーメモリーの容量が大きくなるので、原稿読取装置のコストが上昇する。
【0006】
第2のタイプは、バッファーメモリーに蓄積すべき画像データが、原稿の読み取り中にバッファーメモリーの容量を超える場合、原稿の読み取りを一時停止し、バッファーメモリーに蓄積された画像データがネットワークに送られてバッファーメモリーが空になると、原稿の読み取りを再開する。
【0007】
第2のタイプによれば、バッファーメモリーの容量を小さくできるので、原稿読取装置のコストを下げることができる。しかし、原稿の読み取り中にその原稿の読み取りを一時停止させ、そして読み取りを再開するので、画像のつなぎ目が生じる。読み取りの停止位置でのラインは読み取られていないので、停止位置から読み取りが再開される。画像のつなぎ目がずれないように、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させる必要がある。
【0008】
読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることにより、画像のつなぎ目がずれるのを防止した原稿読取装置として、例えば、以下の3つの原稿読取装置が提案されている。
【0009】
一つ目は、原稿の副走査方向の画像読み取り位置を計測する距離計測手段と、基準クロック信号の分周信号から水平同期信号を生成する手段と、この水平同期信号を再同期化する手段と、を備えた原稿読取装置である(例えば、特許文献1参照)。この原稿読取装置では、バッファーオーバーラン発生等により読み取り動作を中断する場合、中断時の副走査読み取り位置をバッファーメモリーに記憶し、再読み取り動作時にキャリッジが再読み取り開始位置を通過するタイミングで水平同期信号を再同期化することにより、つなぎ目の位置ずれをなくしている。
【0010】
二つ目は、読取った画像を一時的に格納するバッファーメモリーの空き容量を検出する空き容量検出部と、空き容量検出部が空き容量不足を検出するときに画像の読取りを停止し、空き容量が確保されたことを検出するときに画像の読取りを再開する読取り制御部と、空き容量検出部が空き容量不足を検出するときにモーターを停止し、空き容量が確保されたことを検出するときに、あらかじめ設定された読取りモード毎のセトリング時間でモーターをセトリングし、モーターを加速、最速、減速して、読取り速度で駆動させるモーター制御部と、を備えた原稿読取装置である(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
三つ目は、主走査同期信号を基に主走査方向の画像読み取りを行う撮像手段と、その主走査同期信号とは非同期の駆動制御信号を基に撮像手段を副走査方向に移動させる駆動手段と、撮像手段による画像読み取りを間欠的に行うための停止指示および再開指示を発生させる間欠指示手段と、停止指示の発生があると主走査同期信号と駆動制御信号との位相差を認識して保持し、再開指示の発生があると認識保持された位相差に基づいて主走査同期信号と駆動制御信号との位相差を補正する位相制御手段と、を備えた原稿読取装置である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−228267号公報
【特許文献2】特開2001−217996号公報
【特許文献3】特開2000−270162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
フラットベッド式において、原稿の読み取り中に読み取りを一時停止させ、読み取りを再開させる制御は、次のように実行される。バッファーメモリーに蓄積すべき画像データが、原稿の読み取り中に所定量を超える場合(例えば、バッファーメモリーが満杯になった場合)、キャリッジの副走査方向の移動を一時停止させ、原稿の読み取りを一時停止させる。バッファーメモリーに蓄積された画像データがネットワークに送られてバッファーメモリーが空になると、キャリッジを副走査方向に停止位置から後退させた後、前進させ、読み取り停止位置でキャリッジの移動速度を目標速度に到達させて、読み取り停止位置から原稿の読み取りを再開させる。
【0014】
キャリッジを副走査方向に移動させる動力を、ステッピングモーターで生成する場合、ステッピングモーターのスローアップ及びスローダウンを考慮しながら、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる。ステッピングモーターでは、モーターの回転角度を制御するパルス信号の数と、キャリッジの副走査方向の移動量とが、一対一で対応するので、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に比較的高い精度で合わせることができる。
【0015】
しかし、モーターの回転角度を制御するパルス信号を生成する原クロックと原稿を読み取る際の水平同期信号を生成する原クロックとが異なれば、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度が低下する原因となる。その結果、画像のつなぎ目が副走査方向でずれることが発生する。
【0016】
本発明は、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、読み取りが一時停止した場合に、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることができる原稿読取装置を提供することを目的とする。
【0017】
本発明は、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、読み取りが一時停止した場合に、読み取りの一時停止から読み取りの再開までの時間を短縮することができる原稿読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成する本発明の一局面に係る原稿読取装置は、原稿を主走査方向に沿ったライン単位で読み取る撮像素子と、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる動力を生成するモーターと、前記モーターの回転角度を制御するパルス信号を用いて、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる制御をする移動制御部と、水平同期信号を前記パルス信号と同期させて生成する第1の水平同期信号生成部を含み、前記撮像素子の動作を制御する撮像素子制御部と、前記撮像素子が前記原稿を読み取ることにより、前記撮像素子から出力された画像データを一時蓄積する記憶部と、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させながら、前記第1の水平同期信号生成部で生成された前記水平同期信号を用いて前記撮像素子に前記原稿を読み取らせる動作、前記原稿の読み取り中に前記記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合、前記原稿の読み取りを一時停止させ、かつ前記原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させる動作、及び、前記原稿の読み取りを再開する場合、前記原稿を副走査方向に相対的に後退させた後、前進させることにより、前記原稿の読み取りの停止位置から前記原稿の読み取りを再開させる動作を、前記移動制御部及び前記撮像素子制御部を制御することにより実行する読取制御部と、を備える。
【0019】
本発明の一局面に係る原稿読取装置では、原稿の読み取りに用いられる水平同期信号をパルス信号と同期させて生成する。パルス信号は、原稿を副走査方向に相対的に移動させる動力を生成するモーターの回転角度を制御する信号である。このように、本発明の一局面によれば、水平同期信号をモーターの回転角度を制御するパルス信号と同期させて生成している。従って、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることができるので、画像のつなぎ目がずれないようにすることができる。
【0020】
モーターの回転角度を制御するパルス信号とは、ステッピングモーターの場合、ステッピングモーターの駆動に用いるパルス信号である。DCモーターでは、DCモーターの回転をエンコーダーによって検出して、DCモーターの回転がフィードバック制御される。このためDCモーターの場合、エンコーダーから出力されるパルス信号が、モーターの回転角度を制御するパルス信号となる。
【0021】
水平同期信号が、モーターの回転角度を制御するパルス信号と同期していなければ、モーターの回転速度が変動すると、撮像素子により読み取った1ラインの幅が変動する。本発明の一局面に係る原稿読取装置のように、水平同期信号が、モーターの回転角度を制御するパルス信号と同期していれば、モーターの回転速度が変動しても、各ラインを読み取る位置は変動しないので、1ラインの幅を一定にできる。従って、原稿の先端から後端まで、1ラインの幅が伸び縮みすることなく、原稿を読み取ることができる。
【0022】
上記構成において、前記原稿に光を照射する光源と、前記光源の点灯を制御する光源制御部と、を備え、前記光源制御部は、前記光源の点灯可能期間を規定し、前記点灯可能期間が前記水平同期信号の周期より短いイネーブル信号を、前記パルス信号と同期させて生成するイネーブル信号生成部を含む。
【0023】
この構成によれば、光源の点灯可能期間を規定するイネーブル信号をパルス信号と同期させて生成するので、イネーブル信号を水平同期信号と同期させて生成することができる。このため、水平同期信号の生成前に、光源が点灯することを防止できる。
【0024】
上記構成において、前記モーターはDCモーターである。
【0025】
DCモーターでは、エンコーダーから出力されるパルス信号(モーターの回転角度を制御するパルス信号)を用いたフィードバック制御で回転速度が制御される。エンコーダーから出力されるパルス信号の周波数は変化するので、本発明の一局面においてDCモーターを適用した場合、水平同期信号の間隔に多少のずれが生じる。この構成によれば、イネーブル信号が規定する点灯可能期間が、水平同期信号の周期より短く、かつ、イネーブル信号が水平同期信号と同期して生成される。このため、水平同期信号の間隔に多少のずれが生じても、ある水平同期信号に同期して生成されたイネーブル信号が次の水平同期信号の期間にまたがることを防止することができる。従って、各ラインの読み取りにおいて、光源の点灯時間を一定にすることができる。よって、各ラインの読み取りで撮像素子に蓄積される光量を一定に保つことができるので、読み取った原稿の画像の画質を向上させることができる。
【0026】
上記構成において、前記撮像素子制御部は、クロック信号を生成するクロック生成部と、前記水平同期信号を前記クロック信号と同期させて生成する第2の水平同期信号生成部と、を含み、前記撮像素子制御部は、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させないで、前記撮像素子に画像データの補正に用いる基準データを取得させる場合、前記第2の水平同期信号生成部で生成された前記水平同期信号を用いて前記撮像素子に前記基準データを取得させる。
【0027】
白基準データや黒基準データのような基準データは、原稿を副走査方向に相対的に移動させないで、撮像素子により取得される。この構成によれば、基準データの取得に用いる水平同期信号は、撮像素子制御部に含まれるクロック生成部で生成されるクロック信号と同期させて生成している。従って、原稿を副走査方向に相対的に移動させていなくても(パルス信号を生成していなくても)、水平同期信号を生成することができる。
【0028】
上記構成において、前記撮像素子により読み取られた前記原稿の画像データを目的地へ転送するネットワークに接続可能なインターフェイスを備える。
【0029】
本発明の他の局面に係る原稿読取装置は、原稿に光を照射する光源と、前記光源によって光が照射された前記原稿を、主走査方向に沿ったライン単位で読み取る撮像素子と、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる制御をする移動制御部と、水平同期信号を生成する水平同期信号生成部を含み、前記撮像素子の動作を制御する撮像素子制御部と、前記水平同期信号の発生から次の前記水平同期信号の発生までの期間の一部を前記光源の点灯時間とし、前記原稿が副走査方向に相対的に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、前記点灯時間を同じにする制御をする光源制御部と、前記撮像素子が前記原稿を読み取ることにより、前記撮像素子から出力された画像データを一時蓄積する記憶部と、(a)前記原稿を副走査方向に相対的に等速移動させながら、前記撮像素子に前記原稿を読み取らせる動作、(b)前記原稿の読み取り中に前記記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合、前記原稿を副走査方向に相対的に減速移動させながら、前記撮像素子に原稿を読み取らせる動作、(c)前記減速移動後、前記原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させて、前記原稿の読み取りを一時停止させる動作、及び、(d)前記原稿の読み取りを再開する場合、前記原稿を副走査方向に相対的に後退させないで、前記原稿の相対的移動が停止された位置から前記原稿を副走査方向に相対的に加速移動させながら、前記原稿の相対的移動が停止された位置から前記原稿の読み取りを再開させる動作を、前記移動制御部、前記撮像素子制御部及び前記光源制御部を制御することにより実行する読取制御部と、を備える。
【0030】
本発明の他の局面に係る原稿読取装置では、原稿の読み取り中に記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えることにより、原稿の読み取りを一時停止する場合、以下の動作がされる。まず、原稿を副走査方向に相対的に減速移動させながら、撮像素子に原稿を読み取らせる動作を実行させて、原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させる。そして、原稿の読み取りを再開する場合、原稿を副走査方向に相対的に後退させないで、原稿の相対的移動が停止された位置から原稿を副走査方向に相対的に加速移動させながら、原稿の相対的移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開させる。
【0031】
原稿を副走査方向に相対的に減速移動及び加速移動させているときにも、撮像素子に原稿を読み取らせる動作が実行される。本発明の他の局面では、水平同期信号の発生から次の水平同期信号の発生までの期間の一部を光源の点灯時間とし、原稿が副走査方向に相対的に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、点灯時間を同じにする制御をしている。これにより、各ラインの読み取りにおいて、撮像素子に蓄積される光量を一定に保つ(光量を同じにする)ことができる。従って、原稿を副走査方向に相対的に減速移動及び加速移動しているときに読み取られたラインの画質を、等速移動しているときに読み取られたラインの画質と同じにすることができる。
【0032】
以上述べたように、本発明の他の局面によれば、原稿の読み取りを再開する場合、原稿を副走査方向に相対的に後退させないで、原稿の相対的移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開する。従って、原稿の読み取りを再開する場合に、原稿を副走査方向に相対的に後退させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる方式に比べて、読み取りの一時停止から読み取りの再開までの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一局面によれば、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、読み取りが一時停止した場合に、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることができる。
【0034】
本発明の他の局面によれば、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、読み取りが一時停止した場合に、読み取りの一時停止から読み取りの再開までの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る原稿読取装置を適用できる画像形成装置の内部構造の概略を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る原稿読取装置の主要部を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態において、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作を示すタイムチャートである。
【図5】第1実施形態において、カラー読み取りモードでの読み取り動作の前半部を示すタイムチャートである。
【図6】第1実施形態において、カラー読み取りモードでの読み取り動作の後半部を示すタイムチャートである。
【図7】第1実施形態に係る原稿読取装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】第2実施形態において、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作の前半部を示すタイムチャートである。
【図9】第2実施形態において、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作の後半部を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る原稿読取装置を適用できる画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1は装置本体100、装置本体100の上に配置された原稿読取部200、原稿読取部200の上に配置された原稿給送部300及び装置本体100の上部前面に配置された操作部400を備える。
【0037】
原稿給送部300は自動原稿送り装置として機能し、原稿載置部301に置かれた複数枚の原稿を連続的に原稿読取部200に送ることができる。
【0038】
原稿読取部200は光源及び撮像素子等を搭載したキャリッジ201、ガラス等の透明部材により構成された原稿台203、及び、原稿読取スリット205を備える。原稿台203に載置された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿台203の長手方向に移動させながら撮像素子により原稿を読み取る。これに対して、原稿給送部300から給送された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿読取スリット205と対向する位置に移動させて、原稿給送部300から送られてきた原稿を、原稿読取スリット205を通して撮像素子により読み取る。撮像素子は読み取った原稿を画像データとして出力する。
【0039】
装置本体100は用紙貯留部101、画像形成部103及び定着部105を備える。用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる用紙トレイ107を備える。用紙トレイ107に貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラ109の駆動により、用紙搬送路111へ向けて送出される。用紙は用紙搬送路111を通って、画像形成部103へ搬送される。
【0040】
画像形成部103は搬送されてきた用紙にトナー画像を形成する。画像形成部103は感光体ドラム113、露光部115、現像部117及び転写部119を備える。露光部115は画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)に対応して変調された光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム113の周面に照射する。これにより、感光体ドラム113の周面には画像データに対応する静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム113の周面に現像部117からトナーを供給することにより、周面には画像データに対応するトナー画像が形成される。このトナー画像は転写部119によって先ほど説明した用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写される。
【0041】
トナー画像が転写された用紙は、定着部105に送られる。定着部105において、トナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、トナー画像は用紙に定着される。用紙はスタックトレイ121又は排紙トレイ123に排紙される。
【0042】
操作部400は操作キー部401と表示部403を備える。表示部403はタッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。ユーザは画面を見ながらソフトキーを操作することによって、コピー等の機能の実行に必要な設定等をする。
【0043】
操作キー部401にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー405、テンキー407、ストップキー409、リセットキー411、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーを切り換えるための機能切換キー413等が設けられている。
【0044】
スタートキー405はコピー、ファクシミリー送信等の動作を開始させるキーである。テンキー407はコピー部数、ファクシミリー番号等の数字を入力するキーである。ストップキー409はコピー動作等を途中で中止させるキーである。リセットキー411は設定された内容を初期設定状態に戻すキーである。
【0045】
機能切換キー413はコピーキー及び送信キー等を備えており、コピー機能、送信機能等を相互に切り替えるキーである。コピーキーを操作すれば、コピーの初期画面が表示部403に表示される。送信キーを操作すれば、ファクシミリー送信及びメール送信の初期画面が表示部403に表示される。
【0046】
図2は、図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300、操作部400、制御部500及び通信部600が、バスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300及び操作部400に関しては既に説明したので、説明を省略する。
【0047】
制御部500はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリー等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、画像形成装置1を構成する上記ハードウェアに対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリーは画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
【0048】
通信部600はファクシミリー通信部601及びネットワークI/F部603を備える。ファクシミリー通信部601は相手先ファクシミリーとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリー通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリー通信部601は電話回線605に接続される。
【0049】
ネットワークI/F部603はLAN(Local Area Network)607に接続される。ネットワークI/F部603はLAN607に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
【0050】
図3は、本発明の第1実施形態に係る原稿読取装置2の主要部を示すブロック図である。図2に示す原稿読取部200及びネットワークI/F部603が、原稿読取装置2として機能する。原稿読取装置2はキャリッジ201、モーター10、移動制御部30、撮像素子制御部40、光源制御部50、読取制御部60、画像処理部70、記憶部の一例であるバッファーメモリー80及びネットワークI/F部603を備える。
【0051】
キャリッジ201は撮像素子21及び光源23等を収容する。撮像素子21は主走査方向に沿ったライン単位で原稿を読み取るリニアイメージセンサーである(例えば、CCDリニアイメージセンサー、CIS(Contact Image Sensor))。本実施形態ではCISを例に説明する。光源23は原稿台203(図1)に置かれた原稿に光を照射する。光源23は赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bにより構成される。赤色光源23Rは例えば、赤色LEDであり、緑色光源23Gは例えば、緑色LEDであり、青色光源23Bは例えば、青色LEDである。
【0052】
モーター10はキャリッジ201を副走査方向に移動(言い換えれば、原稿を副走査方向に相対的に移動)させる動力を生成する。以下、キャリッジ201の副走査方向の移動は、原稿の副走査方向の相対的移動を意味する。本実施形態ではフラットベッド方式で原稿を読み取る場合を説明するが、ADF方式で原稿を読み取る場合にも、本発明を適用することができる。ADF方式で原稿を読み取るときは、キャリッジ201を固定し、原稿を副走査方向に移動させる。
【0053】
本実施形態ではモーター10としてステッピングモーターを例に説明するが、DCモーターなどの他のモーターを用いることもできる。
【0054】
移動制御部30はモーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSを用いて、キャリッジ201を副走査方向に移動させる制御をする。移動制御部30は電源31、パルス信号生成部33及びステップアップ信号生成部35を備える。
【0055】
電源31はモーター10に電力を供給する。パルス信号生成部33はモーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSを生成する。ステッピングモーターの場合、ステッピングモーターの駆動に用いるパルス信号が、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSである。DCモーターではDCモーターの回転をエンコーダーによって検出して、DCモーターの回転速度や回転量がフィードバック制御される。このためDCモーターの場合、エンコーダーから出力されるパルス信号が、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSとなる。
【0056】
ステップアップ信号生成部35はステップアップ(STEPUP)信号StSを生成する。ステップアップ信号StSはキャリッジ201が副走査方向に1画素分移動したことを示す信号(言い換えれば、キャリッジ201が、次に読み取られるライン上に移動したことを示す信号)である。本実施形態ではステップアップ信号StSの1周期が、副走査方向に1画素分移動したことを示している。しかし、これに限定されず、例えば、ステップアップ信号StSの4周期が、副走査方向に1画素分移動したことを示してもよい。
【0057】
ステップアップ信号StSはモーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSと同期して生成される。キャリッジ201の副走査方向の1画素分の移動量は、原稿の読み取りの解像度(例えば、600dpi、300dpi)に応じて異なる。さらに、ステッピングモーターの場合、励磁方法(例えば、1−2相励磁、2相励磁)に応じて、キャリッジ201の副走査方向の1画素分の移動量が異なる。よって、ステップアップ信号StSは、原稿の読み取りの解像度(ステッピングモーターの場合、さらに、励磁方法)を考慮して設定される。
【0058】
撮像素子制御部40は撮像素子21の動作を制御するドライバーである。撮像素子制御部40はクロック生成部41、第1の水平同期信号生成部43、第2の水平同期信号生成部45、電源47、ADコンバーター49を備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成される。撮像素子制御部40は垂直同期信号生成部等をさらに備えるが、これらは本実施形態の説明に特に関連しないので、説明を省略する。
【0059】
クロック生成部41は垂直同期信号や第2の水平同期信号生成部45で生成される水平同期信号HoSの基準となるクロック信号を生成する。電源47は撮像素子21に電力を供給する。
【0060】
第1の水平同期信号生成部43はステップアップ信号StSと同期させて、水平同期信号HoSを生成する。この水平同期信号HoSは撮像素子21に送られて、原稿の読み取りに使用される。ステップアップ信号StSはパルス信号PuSと同期して生成されるので、第1の水平同期信号生成部43で生成される水平同期信号HoSは、パルス信号PuSと同期して生成されることになる。
【0061】
第2の水平同期信号生成部45はクロック生成部41で生成されるクロック信号と同期させて、水平同期信号HoSを生成する。この水平同期信号HoSは撮像素子21に送られて、白基準や黒基準の読み取りに使用される。
【0062】
ADコンバーター49は撮像素子21が原稿を読み取って出力したアナログの画像データImDをデジタルの画像データに変換する。このデジタルの画像データは画像処理部70で所定の処理(例えば、シェーディング補正)がされる。この所定の処理がされたデジタルの画像データは、バッファーメモリー80に一時蓄積されてから、ネットワークI/F部603によってネットワークを経由してサーバー等の目的地に転送される。
【0063】
バッファーメモリー80は撮像素子21が原稿を読み取ることにより、撮像素子21から出力された画像データImDを一時蓄積する記憶部の一例である。ネットワークI/F部603は撮像素子21により読み取られた原稿の画像データImDを目的地へ転送するネットワークに接続可能なインターフェイスの一例である。
【0064】
光源制御部50は電源51及びイネーブル信号生成部53を備え、光源23の点灯を制御する。電源51は赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bに電力を供給する。イネーブル信号生成部53は赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bのそれぞれの点灯可能期間を規定するイネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)を、ステップアップ信号StSと同期させて生成し、赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bのそれぞれに送る。イネーブル信号の期間(すなわち、点灯可能期間)は、水平同期信号HoSの周期より短い。本実施形態では、水平同期信号HoSの発生から次の水平同期信号HoSの発生までの期間の一部を、光源23の点灯時間にする場合で説明している。しかしながら、原稿の読み取りの全期間にわたって光源23を点灯する方式にも、本発明は適用することができる。
【0065】
読取制御部60は移動制御部30、撮像素子制御部40及び光源制御部50を制御し、CPU、RAM及びROM等により実現される。パルス信号生成部33は読取制御部60のCPUのクロックを原クロックとして、パルス信号PuSを生成する。ステップアップ信号StSはパルス信号PuSと同期して生成される。第1の水平同期信号生成部43はステップアップ信号StSと同期させて水平同期信号HoSを生成する。従って、第1の水平同期信号HoSで生成される水平同期信号HoSとパルス信号生成部33で生成されるパルス信号PuSとは、同期している。
【0066】
読取制御部60は移動制御部30、撮像素子制御部40及び光源制御部50を制御することによって、以下の動作(1)〜(3)を実行する。
【0067】
動作(1)は、キャリッジ201を副走査方向に移動させながら、第1の水平同期信号生成部43で生成された水平同期信号HoSを用いて撮像素子21に原稿を読み取らせる動作である。
【0068】
動作(2)は、原稿の読み取り中にバッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合、原稿の読み取りを一時停止させ、かつキャリッジ201を副走査方向に移動することを停止させる動作である。バッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合は、バッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合の一例である。バッファーメモリー80に一時蓄積された画像データがニアフルになった場合でもよい。
【0069】
動作(3)は、原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退(言い換えれば、原稿を副走査方向に相対的に後退)させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる動作である。
【0070】
次に、原稿の読み取り中に、バッファーメモリー80の蓄積された画像データが満杯になった場合の読み取り動作について説明する。図4は、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作を示すタイムチャートである。図5及び図6は、カラー読み取りモードでの読み取り動作を示すタイムチャートである。まず、モノクロ読み取りモードの場合を、図3及び図4を用いて説明する。
【0071】
モノクロ読み取りモードでは緑色光源23Gが使用され、赤色光源23R及び青色光源23Bは使用されない。ステップアップ信号生成部35はパルス信号生成部33で生成された、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSを基にして、ステップアップ信号StSを生成する。第1の水平同期信号生成部43はステップアップ信号StSの立ち上がりと同期させて、水平同期信号HoSを生成する。また、イネーブル信号生成部53はステップアップ信号StSの立ち上がりと同期させて、緑色光源23Gのイネーブル信号EnS(G)を生成する。撮像素子21は水平同期信号HoSと同期して、1ライン単位で原稿を読み取り、読み取ったラインの画像データImDを出力する。
【0072】
撮像素子21が位置するラインより、一つ前のラインの画像データImDが出力される。すなわち、撮像素子21がn番目のラインに位置するとき、n−1番目のラインの画像データImDが出力される。従って、撮像素子21が最初のラインに位置するときに出力された画像データImDは破棄される。
【0073】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データが満杯になったと判断したとき、原稿の読み取りを一時停止する。図4では、n番目のラインを読み取った後、読み取りを一時停止したことを示している。読み取りが一時停止しているときは、モーター10を停止するので、パルス信号PuSは生成されない。このため、ステップアップ信号StSは生成されない。但し、n番目のラインの画像データImDを出力するために、水平同期信号HoS及びイネーブル信号EnS(G)がそれぞれ一つ生成される。それ以降は、水平同期信号HoS及びイネーブル信号EnS(G)は生成されない。
【0074】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データが空になった判断したとき、移動制御部30、撮像素子制御部40及び光源制御部50を制御して、読み取りを再開する制御を実行する。以下、この制御を詳しく説明する。
【0075】
移動制御部30はモーター10を逆回転させるパルス信号PuSを、パルス信号生成部33に生成させて、モーター10を逆回転させることにより、キャリッジ201を副走査方向に後退させる。ステップアップ信号生成部35はモーター10を逆回転させるパルス信号PuSの場合、ステップアップ信号StSを生成しない。このため、キャリッジ201が副走査方向に後退している期間は、水平同期信号HoS及びイネーブル信号EnS(G)が生成されない。
【0076】
移動制御部30はキャリッジ201を所定距離だけ後退させると、モーター10を停止させて、キャリッジ201の副走査方向の後退を停止させる。そして、移動制御部30はモーター10を正回転させるパルス信号PuSを、パルス信号生成部33に生成させてモーター10を正回転させることにより、キャリッジ201を副走査方向に前進させる。ステップアップ信号生成部35ではステップアップ信号StSが生成されるので、ステップアップ信号StSの立ち上がりと同期して、第1の水平同期信号生成部43は水平同期信号HoSを生成し、かつイネーブル信号生成部53はイネーブル信号EnS(G)を生成する。
【0077】
読取制御部60は原稿の読み取りの停止位置のラインの画像データから、画像データを有効とする処理をすることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる。図4では、n+1番目のラインから原稿の読み取りが再開されたことを示している。撮像素子21がn+2番目のラインに位置するとき、n+1番目のラインの画像データImDが出力される。従って、撮像素子21がn+1番目のラインに位置するときに出力された画像データImDは破棄される。
【0078】
次に、カラー読み取りモードの場合を、図3、図5及び図6を用いて説明する。撮像素子21としてCISを用いているので、カラー読み取りモードでは、1ラインの読み取りにおいて、赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bが順番に点灯される。従って、1ラインの読み取りにおいて、赤色の読み取り用の水平同期信号HoS(R)、緑色の読み取り用の水平同期信号HoS(G)及び青色の読み取り用の水平同期信号HoS(B)の三つが生成される。
【0079】
第1の水平同期信号生成部43は、ステップアップ信号StSの立ち上がりと同期させて、最初に読み取る色に対応する水平同期信号HoS(ここでは、水平同期信号HoS(R))を生成し、最初に読み取る色に対応する水平同期信号HoSから、予め定められた間隔を設けて、次に読み取る色に対応する水平同期信号HoS(ここでは、水平同期信号HoS(G))、最後に読み取る色に対応する水平同期信号HoS(ここでは、水平同期信号HoS(B))を生成する。
【0080】
イネーブル信号生成部53は水平同期信号HoS(R)と同期(言い換えれば、ステップアップ信号StSの立ち上がりと同期)させて、赤色光源23Rのイネーブル信号EnS(R)を生成し、水平同期信号HoS(G)と同期させて緑色光源23Gのイネーブル信号EnS(G)を生成し、水平同期信号HoS(B)と同期させて青色光源23Bのイネーブル信号EnS(B)を生成する。
【0081】
撮像素子21は1ラインの読み取りにおいて、水平同期信号HoS(R)と同期させて読み取られた画像データImD(R)、水平同期信号HoS(G)と同期させて読み取られた画像データImD(G)、及び、水平同期信号HoS(B)と同期させて読み取られた画像データImD(B)を、それぞれ出力する。
【0082】
撮像素子21が位置するラインより、一つ前のラインの画像データが出力される。すなわち、撮像素子21がn番目のラインに位置するとき、n−1番目のラインの画像データImD(R),ImD(G),ImD(B)が出力される。従って、撮像素子21が最初のラインに位置するときに出力された画像データは破棄される。
【0083】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データが満杯になったと判断した場合、モノクロ読み取りモードと同様に、原稿の読み取りを一時停止する。図5では、n番目のラインを読み取った後、読み取りを一時停止したことを示している。原稿の読み取りが一時停止されると、ステップアップ信号StSは生成されない。但し、n番目のラインの画像データImD(R),ImD(G),ImD(B)を出力するために、水平同期信号HoS(R)、HoS(G)、HoS(B)及びイネーブル信号EnS(R)、EnS(G)、EnS(B)がそれぞれ一つ生成される。それ以降は、水平同期信号及びイネーブル信号は生成されない。
【0084】
読取制御部60は、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データが空になり、読み取りを再開する場合、モノクロ読み取りモードと同様に、キャリッジ201を副走査方向に後退させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開する。図6では、n+1番目のラインから原稿の読み取りが再開されたことを示している。撮像素子21がn+2番目のラインに位置するとき、n+1番目のラインの画像データImD(R),ImD(G),ImD(B)が出力される。従って、撮像素子21がn+1番目のラインに位置するときに出力された画像データは破棄される。
【0085】
第1実施形態に係る原稿読取装置2aの動作を、図3及び図7を用いて説明する。図7は、この動作を説明するフローチャートである。
【0086】
操作者が、図1に示す原稿台203に原稿をセットし、スタートキー405を操作すると、読取制御部60はフラットベッドモードで原稿の読み取りを開始する(ステップS1)。撮像素子21はライン単位で原稿を読み取り、アナログの画像データImDを出力する。アナログの画像データImDはADコンバーター49により、デジタルの画像データImDに変換され、デジタルの画像データImDは画像処理部70により、所定の処理がされた後、バッファーメモリー80に一時蓄積される。
【0087】
読取制御部60は、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが満杯になったか否かを判断する(ステップS2)。読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが満杯になったと判断しない場合(ステップS2でNo)、撮像素子21に原稿の読み取りを続行させる(ステップS3)。そして、ステップS2に戻る。
【0088】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが満杯になったと判断した場合(ステップS2でYes)、原稿の読み取りを一時停止する(ステップS4)。
【0089】
読取制御部60は、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが空になったか否かを判断する(ステップS5)。読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが空になったと判断しない場合(ステップS5でNo)、ステップS4へ戻る。
【0090】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが空になったと判断した場合(ステップS5でYes)、原稿の読み取りを再開する(ステップS6)。
【0091】
読取制御部60は、原稿の読み取りが終了したか否かを判断する(ステップS7)。読取制御部60が、原稿の読み取りが終了したと判断しない場合(ステップS7でNo)、ステップS3へ戻る。読取制御部60が、原稿の読み取りが終了したと判断した場合(ステップS7でYes)、原稿の読み取りが終了する。
【0092】
第1実施形態の主な効果を説明する。第1実施形態ではパルス信号PuSと同期してステップアップ信号StSが生成され、ステップアップ信号StSと同期して水平同期信号HoSが生成される。従って、原稿の読み取りに用いられる水平同期信号HoSは、パルス信号PuSと同期して生成される。パルス信号PuSは、キャリッジ201を副走査方向に移動させる動力を生成するモーター10の回転角度を制御する信号である。このように、第1実施形態によれば、原稿の読み取りに用いられる水平同期信号HoSを、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSと同期させて生成している。従って、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることができるので、画像のつなぎ目がずれないようにすることができる。
【0093】
水平同期信号HoSが、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSと同期していなければ、モーター10の回転速度が変動すると、撮像素子21により読み取った1ラインの幅が変動する。第1実施形態のように、水平同期信号HoSが、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSと同期していれば、モーター10の回転速度が変動しても、各ラインを読み取る位置は変動しないので、1ラインの幅を一定できる。従って、原稿の先端から後端まで、1ラインの幅が伸び縮みすることなく、原稿を読み取ることができる。
【0094】
また、第1実施形態ではパルス信号PuSと同期してステップアップ信号StSが生成される。モノクロ読み取りでは、図4に示すように、ステップアップ信号StSと同期して緑色光源23Gの点灯可能期間を規定するイネーブル信号EnS(G)が生成される。カラー読み取りでは、図5及び図6に示すように、ステップアップ信号StSと同期して赤色光源23Rの点灯可能期間を規定するイネーブル信号EnS(R)が生成される。このように、イネーブル信号EnS(G),EnS(R)をパルス信号PuSと同期させて生成するので、イネーブル信号EnS(G) ,EnS(R)を水平同期信号HoSと同期させて生成することができる。また、カラー読み取りでは、緑色光源23Gのイネーブル信号EnS(G)が、水平同期信号HoS(G)と同期して生成され、青色光源23Bのイネーブル信号EnS(B)が、水平同期信号HoS(B)と同期して生成される。従って、モノクロ読み取り及びカラー読み取りにおいて、水平同期信号HoSの生成前に、光源23が点灯することを防止できる。
【0095】
モーター10としてDCモーターを用いた場合、次の効果が生じる。DCモーターでは、エンコーダーから出力されるパルス信号(モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuS)を用いたフィードバック制御で回転速度が制御される。このためエンコーダーから出力されるパルス信号の周波数は変化するので、第1実施形態においてDCモーターを適用した場合、水平同期信号HoSの間隔に多少のずれが生じる。第1実施形態によれば、イネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)が規定する点灯可能期間が、水平同期信号HoSの周期より短く、かつ、イネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)が水平同期信号HoSと同期して生成される。このため、水平同期信号HoSの間隔に多少のずれが生じても、ある水平同期信号HoSに同期して生成されたイネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)が次の水平同期信号HoSの期間にまたがることを防止することができる。従って、各ラインの読み取りにおいて、光源23の点灯時間を一定にすることができる。よって、各ラインの読み取りで撮像素子21に蓄積される光量を一定に保つことができるので、読み取った原稿の画像の画質を向上させることができる。
【0096】
第1実施形態において、画像データの補正に用いる基準データ(例えば、白基準や黒基準データ)を、撮像素子21により取得する場合、キャリッジ201は副走査方向に移動されずに、固定される。このため、モーター10は駆動されないので、パルス信号生成部33はパルス信号PuSを生成しない。従って、第1の水平同期信号生成部43は、水平同期信号HoSを生成することができない。
【0097】
そこで、撮像素子制御部40はキャリッジ201を副走査方向に移動させないで、撮像素子21に画像データの補正に用いる基準データを取得させる場合、図3に示す第2の水平同期信号生成部45で生成された水平同期信号HoSを用いて撮像素子21に基準データを取得させる。第2の水平同期信号生成部45はクロック生成部41で生成されたクロックを原クロックとして、水平同期信号HoSを生成する。また、イネーブル信号生成部53は第2の水平同期信号生成部45で生成された水平同期信号HoSと同期させて、イネーブル信号を生成する。以上により、白基準や黒基準データの取得を実現する。
【0098】
本発明の第2実施形態について、第1実施形態の相違を中心に説明する。第2実施形態に係る原稿読取装置が、図3に示す第1実施形態に係る原稿読取装置2と異なるのは、光源制御部50及び読取制御部60の機能である。
【0099】
第2実施形態において、キャリッジ201が副走査方向に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、光源制御部50はイネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)の発生期間を同じにする制御をする。言い換えれば、光源制御部50は水平同期信号HoSの発生から次の水平同期信号HoSの発生までの期間の一部を光源23の点灯時間とし、キャリッジ201が副走査方向に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、点灯時間を同じにする制御をする。
【0100】
第2実施形態において、読取制御部60は移動制御部30、撮像素子制御部40及び光源制御部50を制御することによって、以下の動作(a)〜(d)を実行する。
【0101】
動作(a)は、キャリッジ201を副走査方向に等速移動させながら、撮像素子21に原稿を読み取らせる動作である。
【0102】
動作(b)は、原稿の読み取り中にバッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合、キャリッジ201を副走査方向に減速移動させながら、撮像素子21に原稿を読み取らせる動作である。
【0103】
動作(c)は、減速移動後、キャリッジ201を副走査方向に移動することを停止させて、原稿の読み取りを一時停止させる動作である。
【0104】
動作(d)は、原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退させないで、キャリッジ201の移動が停止された位置からキャリッジ201を副走査方向に加速移動させながら、キャリッジ201の移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開させる動作である。
【0105】
第2実施形態において、原稿の読み取り中に、バッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合の読み取り動作について説明する。図8は、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作の前半部を示すタイムチャートである。図9は、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作の後半部を示すタイムチャートである。
【0106】
原稿の読み取り中に、図3に示すバッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になることにより、読み取りを一時停止する場合、モーター10をスローダウンさせてキャリッジ201を等速移動から減速移動に切り替えてキャリッジ201を停止させる。そして、読み取りを再開する場合、モーター10をスローアップさせてキャリッジ201を加速移動させ、キャリッジ201が目標速度に到達すれば、キャリッジ201を加速移動から等速移動に切り替える。キャリッジ201の減速移動及び加速移動の制御は、モーター10がステッピングモーターのとき、脱調を防止するために、重要な制御である。
【0107】
キャリッジ201の等速移動でのステップアップ信号StSの周波数を、例えば5.0kHzとすれば、1ラインを読み取る周期T1は200μsとなる。モーター10をスローダウンさせてキャリッジ201を例えば二段階で減速させて停止させる場合、キャリッジ201の減速移動でのステップアップ信号StSの周波数を、例えば2.5kHz、1.0kHzとすれば、1ラインの読み取り周期T2,T3はそれぞれ400μs、1000μsとなる。キャリッジ201の停止状態からモーター10をスローアップさせて、キャリッジ201を例えば二段階で加速させて等速に切り替える場合、キャリッジ201の加速移動でのステップアップ信号StSの周波数を、例えば2.5kHz、1.0kHzとすれば、1ラインの読み取り周期T2,T3はそれぞれ400μs、1000μsとなる。
【0108】
キャリッジ201の等速、減速及び加速移動時において、イネーブル信号EnS(G)の周期T0を一定(例えば、100μs)にしている。これは、水平同期信号HoSの発生から次の水平同期信号HoSの発生までの期間の一部を、光源23の点灯時間とし、キャリッジ201が副走査方向に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、点灯時間を同じにすることを意味する。これにより、各ラインの読み取りにおいて、撮像素子21に蓄積される光量を一定に保つ(光量を同じにする)ことができるので、減速移動及び加速移動しているときに読み取られたラインの画質を、等速移動しているときに読み取られたラインの画質と同じにすることができる。
【0109】
1ラインを読み取る周期が200μsの場合(周期T1の場合)、イネーブル信号EnS(G)のデューティが50%となる。1ラインを読み取る周期が400μsの場合(周期T2の場合)、イネーブル信号EnS(G)のデューティが25%となる。1ラインを読み取る周期が1000μsの場合(周期T3の場合)、イネーブル信号EnS(G)のデューティが10%となる。よって、1ラインを読み取る周期が長くなるにしたがって、イネーブル信号EnS(G)のデューティが低くなる。
【0110】
原稿は、キャリッジ201を副走査方向に等速移動させて、撮像素子21によって読み取られる。第2実施形態では、さらに、上記減速移動中及び加速移動中でも、撮像素子21によって原稿を読み取らせる。これにより、原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退させないで、キャリッジ201の移動が停止された位置からキャリッジ201を副走査方向に加速移動させながら、キャリッジ201の移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開させることができる。
【0111】
以上述べたように、第2実施形態によれば、原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退させないで、キャリッジ201の移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開する。従って、原稿の読み取りを再開する場合に、キャリッジ201を副走査方向に後退させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる方式に比べて、読み取りの一時停止から読み取りの再開までの時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 画像形成装置
2 原稿読取装置
10 モーター
21 撮像素子
23 光源
30 移動制御部
40 撮像素子制御部
41 クロック生成部
43 第1の水平同期信号生成部
45 第2の水平同期信号生成部
50 光源制御部
53 イネーブル信号生成部
60 読取制御部
80 バッファーメモリー
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ネットワークスキャンを実行する機能を有する原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を副走査方向に相対的に移動させながら、リニアイメージセンサーのような撮像素子によって原稿をライン単位で読み取る原稿読取装置として、フラットベッド式の原稿読取装置とADF(Auto Document Feeder)式の原稿読取装置とがある。フラットベッド式では、キャリッジを副走査方向に移動させて原稿を読み取る。ADF式では、原稿を副走査方向に移動させて原稿を読み取る。
【0003】
原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像データをネットワーク経由でサーバー等の目的地に転送するネットワークスキャンでは、画像データのネットワーク上での転送速度が、ネットワークのトラフィックに依存する。このため、ネットワークのトラフィックが多ければ、原稿読取装置が原稿を読み取る速度に比べて、画像データのネットワーク上での転送速度が遅くなる現象が生じる。
【0004】
原稿読取装置は画像データを一時蓄積するバッファーメモリーを備えている。しかし、上記現象が発生すると、バッファーメモリーに蓄積すべき画像データの量がバッファの容量を超える可能性が生じる。原稿の読み取り中に、バッファーメモリーに蓄積すべき画像データの量がバッファーメモリーの容量を超えれば、その原稿の読み取りは失敗する。
【0005】
そこで、以下の二つのタイプの原稿読取装置が提案されている。第1のタイプは、1ページ分の原稿の画像データを蓄積できるバッファーメモリーを備える。このタイプでは、バッファーメモリーの容量が大きくなるので、原稿読取装置のコストが上昇する。
【0006】
第2のタイプは、バッファーメモリーに蓄積すべき画像データが、原稿の読み取り中にバッファーメモリーの容量を超える場合、原稿の読み取りを一時停止し、バッファーメモリーに蓄積された画像データがネットワークに送られてバッファーメモリーが空になると、原稿の読み取りを再開する。
【0007】
第2のタイプによれば、バッファーメモリーの容量を小さくできるので、原稿読取装置のコストを下げることができる。しかし、原稿の読み取り中にその原稿の読み取りを一時停止させ、そして読み取りを再開するので、画像のつなぎ目が生じる。読み取りの停止位置でのラインは読み取られていないので、停止位置から読み取りが再開される。画像のつなぎ目がずれないように、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させる必要がある。
【0008】
読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることにより、画像のつなぎ目がずれるのを防止した原稿読取装置として、例えば、以下の3つの原稿読取装置が提案されている。
【0009】
一つ目は、原稿の副走査方向の画像読み取り位置を計測する距離計測手段と、基準クロック信号の分周信号から水平同期信号を生成する手段と、この水平同期信号を再同期化する手段と、を備えた原稿読取装置である(例えば、特許文献1参照)。この原稿読取装置では、バッファーオーバーラン発生等により読み取り動作を中断する場合、中断時の副走査読み取り位置をバッファーメモリーに記憶し、再読み取り動作時にキャリッジが再読み取り開始位置を通過するタイミングで水平同期信号を再同期化することにより、つなぎ目の位置ずれをなくしている。
【0010】
二つ目は、読取った画像を一時的に格納するバッファーメモリーの空き容量を検出する空き容量検出部と、空き容量検出部が空き容量不足を検出するときに画像の読取りを停止し、空き容量が確保されたことを検出するときに画像の読取りを再開する読取り制御部と、空き容量検出部が空き容量不足を検出するときにモーターを停止し、空き容量が確保されたことを検出するときに、あらかじめ設定された読取りモード毎のセトリング時間でモーターをセトリングし、モーターを加速、最速、減速して、読取り速度で駆動させるモーター制御部と、を備えた原稿読取装置である(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
三つ目は、主走査同期信号を基に主走査方向の画像読み取りを行う撮像手段と、その主走査同期信号とは非同期の駆動制御信号を基に撮像手段を副走査方向に移動させる駆動手段と、撮像手段による画像読み取りを間欠的に行うための停止指示および再開指示を発生させる間欠指示手段と、停止指示の発生があると主走査同期信号と駆動制御信号との位相差を認識して保持し、再開指示の発生があると認識保持された位相差に基づいて主走査同期信号と駆動制御信号との位相差を補正する位相制御手段と、を備えた原稿読取装置である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−228267号公報
【特許文献2】特開2001−217996号公報
【特許文献3】特開2000−270162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
フラットベッド式において、原稿の読み取り中に読み取りを一時停止させ、読み取りを再開させる制御は、次のように実行される。バッファーメモリーに蓄積すべき画像データが、原稿の読み取り中に所定量を超える場合(例えば、バッファーメモリーが満杯になった場合)、キャリッジの副走査方向の移動を一時停止させ、原稿の読み取りを一時停止させる。バッファーメモリーに蓄積された画像データがネットワークに送られてバッファーメモリーが空になると、キャリッジを副走査方向に停止位置から後退させた後、前進させ、読み取り停止位置でキャリッジの移動速度を目標速度に到達させて、読み取り停止位置から原稿の読み取りを再開させる。
【0014】
キャリッジを副走査方向に移動させる動力を、ステッピングモーターで生成する場合、ステッピングモーターのスローアップ及びスローダウンを考慮しながら、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる。ステッピングモーターでは、モーターの回転角度を制御するパルス信号の数と、キャリッジの副走査方向の移動量とが、一対一で対応するので、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に比較的高い精度で合わせることができる。
【0015】
しかし、モーターの回転角度を制御するパルス信号を生成する原クロックと原稿を読み取る際の水平同期信号を生成する原クロックとが異なれば、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度が低下する原因となる。その結果、画像のつなぎ目が副走査方向でずれることが発生する。
【0016】
本発明は、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、読み取りが一時停止した場合に、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることができる原稿読取装置を提供することを目的とする。
【0017】
本発明は、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、読み取りが一時停止した場合に、読み取りの一時停止から読み取りの再開までの時間を短縮することができる原稿読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成する本発明の一局面に係る原稿読取装置は、原稿を主走査方向に沿ったライン単位で読み取る撮像素子と、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる動力を生成するモーターと、前記モーターの回転角度を制御するパルス信号を用いて、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる制御をする移動制御部と、水平同期信号を前記パルス信号と同期させて生成する第1の水平同期信号生成部を含み、前記撮像素子の動作を制御する撮像素子制御部と、前記撮像素子が前記原稿を読み取ることにより、前記撮像素子から出力された画像データを一時蓄積する記憶部と、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させながら、前記第1の水平同期信号生成部で生成された前記水平同期信号を用いて前記撮像素子に前記原稿を読み取らせる動作、前記原稿の読み取り中に前記記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合、前記原稿の読み取りを一時停止させ、かつ前記原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させる動作、及び、前記原稿の読み取りを再開する場合、前記原稿を副走査方向に相対的に後退させた後、前進させることにより、前記原稿の読み取りの停止位置から前記原稿の読み取りを再開させる動作を、前記移動制御部及び前記撮像素子制御部を制御することにより実行する読取制御部と、を備える。
【0019】
本発明の一局面に係る原稿読取装置では、原稿の読み取りに用いられる水平同期信号をパルス信号と同期させて生成する。パルス信号は、原稿を副走査方向に相対的に移動させる動力を生成するモーターの回転角度を制御する信号である。このように、本発明の一局面によれば、水平同期信号をモーターの回転角度を制御するパルス信号と同期させて生成している。従って、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることができるので、画像のつなぎ目がずれないようにすることができる。
【0020】
モーターの回転角度を制御するパルス信号とは、ステッピングモーターの場合、ステッピングモーターの駆動に用いるパルス信号である。DCモーターでは、DCモーターの回転をエンコーダーによって検出して、DCモーターの回転がフィードバック制御される。このためDCモーターの場合、エンコーダーから出力されるパルス信号が、モーターの回転角度を制御するパルス信号となる。
【0021】
水平同期信号が、モーターの回転角度を制御するパルス信号と同期していなければ、モーターの回転速度が変動すると、撮像素子により読み取った1ラインの幅が変動する。本発明の一局面に係る原稿読取装置のように、水平同期信号が、モーターの回転角度を制御するパルス信号と同期していれば、モーターの回転速度が変動しても、各ラインを読み取る位置は変動しないので、1ラインの幅を一定にできる。従って、原稿の先端から後端まで、1ラインの幅が伸び縮みすることなく、原稿を読み取ることができる。
【0022】
上記構成において、前記原稿に光を照射する光源と、前記光源の点灯を制御する光源制御部と、を備え、前記光源制御部は、前記光源の点灯可能期間を規定し、前記点灯可能期間が前記水平同期信号の周期より短いイネーブル信号を、前記パルス信号と同期させて生成するイネーブル信号生成部を含む。
【0023】
この構成によれば、光源の点灯可能期間を規定するイネーブル信号をパルス信号と同期させて生成するので、イネーブル信号を水平同期信号と同期させて生成することができる。このため、水平同期信号の生成前に、光源が点灯することを防止できる。
【0024】
上記構成において、前記モーターはDCモーターである。
【0025】
DCモーターでは、エンコーダーから出力されるパルス信号(モーターの回転角度を制御するパルス信号)を用いたフィードバック制御で回転速度が制御される。エンコーダーから出力されるパルス信号の周波数は変化するので、本発明の一局面においてDCモーターを適用した場合、水平同期信号の間隔に多少のずれが生じる。この構成によれば、イネーブル信号が規定する点灯可能期間が、水平同期信号の周期より短く、かつ、イネーブル信号が水平同期信号と同期して生成される。このため、水平同期信号の間隔に多少のずれが生じても、ある水平同期信号に同期して生成されたイネーブル信号が次の水平同期信号の期間にまたがることを防止することができる。従って、各ラインの読み取りにおいて、光源の点灯時間を一定にすることができる。よって、各ラインの読み取りで撮像素子に蓄積される光量を一定に保つことができるので、読み取った原稿の画像の画質を向上させることができる。
【0026】
上記構成において、前記撮像素子制御部は、クロック信号を生成するクロック生成部と、前記水平同期信号を前記クロック信号と同期させて生成する第2の水平同期信号生成部と、を含み、前記撮像素子制御部は、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させないで、前記撮像素子に画像データの補正に用いる基準データを取得させる場合、前記第2の水平同期信号生成部で生成された前記水平同期信号を用いて前記撮像素子に前記基準データを取得させる。
【0027】
白基準データや黒基準データのような基準データは、原稿を副走査方向に相対的に移動させないで、撮像素子により取得される。この構成によれば、基準データの取得に用いる水平同期信号は、撮像素子制御部に含まれるクロック生成部で生成されるクロック信号と同期させて生成している。従って、原稿を副走査方向に相対的に移動させていなくても(パルス信号を生成していなくても)、水平同期信号を生成することができる。
【0028】
上記構成において、前記撮像素子により読み取られた前記原稿の画像データを目的地へ転送するネットワークに接続可能なインターフェイスを備える。
【0029】
本発明の他の局面に係る原稿読取装置は、原稿に光を照射する光源と、前記光源によって光が照射された前記原稿を、主走査方向に沿ったライン単位で読み取る撮像素子と、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる制御をする移動制御部と、水平同期信号を生成する水平同期信号生成部を含み、前記撮像素子の動作を制御する撮像素子制御部と、前記水平同期信号の発生から次の前記水平同期信号の発生までの期間の一部を前記光源の点灯時間とし、前記原稿が副走査方向に相対的に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、前記点灯時間を同じにする制御をする光源制御部と、前記撮像素子が前記原稿を読み取ることにより、前記撮像素子から出力された画像データを一時蓄積する記憶部と、(a)前記原稿を副走査方向に相対的に等速移動させながら、前記撮像素子に前記原稿を読み取らせる動作、(b)前記原稿の読み取り中に前記記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合、前記原稿を副走査方向に相対的に減速移動させながら、前記撮像素子に原稿を読み取らせる動作、(c)前記減速移動後、前記原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させて、前記原稿の読み取りを一時停止させる動作、及び、(d)前記原稿の読み取りを再開する場合、前記原稿を副走査方向に相対的に後退させないで、前記原稿の相対的移動が停止された位置から前記原稿を副走査方向に相対的に加速移動させながら、前記原稿の相対的移動が停止された位置から前記原稿の読み取りを再開させる動作を、前記移動制御部、前記撮像素子制御部及び前記光源制御部を制御することにより実行する読取制御部と、を備える。
【0030】
本発明の他の局面に係る原稿読取装置では、原稿の読み取り中に記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えることにより、原稿の読み取りを一時停止する場合、以下の動作がされる。まず、原稿を副走査方向に相対的に減速移動させながら、撮像素子に原稿を読み取らせる動作を実行させて、原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させる。そして、原稿の読み取りを再開する場合、原稿を副走査方向に相対的に後退させないで、原稿の相対的移動が停止された位置から原稿を副走査方向に相対的に加速移動させながら、原稿の相対的移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開させる。
【0031】
原稿を副走査方向に相対的に減速移動及び加速移動させているときにも、撮像素子に原稿を読み取らせる動作が実行される。本発明の他の局面では、水平同期信号の発生から次の水平同期信号の発生までの期間の一部を光源の点灯時間とし、原稿が副走査方向に相対的に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、点灯時間を同じにする制御をしている。これにより、各ラインの読み取りにおいて、撮像素子に蓄積される光量を一定に保つ(光量を同じにする)ことができる。従って、原稿を副走査方向に相対的に減速移動及び加速移動しているときに読み取られたラインの画質を、等速移動しているときに読み取られたラインの画質と同じにすることができる。
【0032】
以上述べたように、本発明の他の局面によれば、原稿の読み取りを再開する場合、原稿を副走査方向に相対的に後退させないで、原稿の相対的移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開する。従って、原稿の読み取りを再開する場合に、原稿を副走査方向に相対的に後退させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる方式に比べて、読み取りの一時停止から読み取りの再開までの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一局面によれば、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、読み取りが一時停止した場合に、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることができる。
【0034】
本発明の他の局面によれば、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、読み取りが一時停止した場合に、読み取りの一時停止から読み取りの再開までの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る原稿読取装置を適用できる画像形成装置の内部構造の概略を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る原稿読取装置の主要部を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態において、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作を示すタイムチャートである。
【図5】第1実施形態において、カラー読み取りモードでの読み取り動作の前半部を示すタイムチャートである。
【図6】第1実施形態において、カラー読み取りモードでの読み取り動作の後半部を示すタイムチャートである。
【図7】第1実施形態に係る原稿読取装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】第2実施形態において、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作の前半部を示すタイムチャートである。
【図9】第2実施形態において、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作の後半部を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る原稿読取装置を適用できる画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1は装置本体100、装置本体100の上に配置された原稿読取部200、原稿読取部200の上に配置された原稿給送部300及び装置本体100の上部前面に配置された操作部400を備える。
【0037】
原稿給送部300は自動原稿送り装置として機能し、原稿載置部301に置かれた複数枚の原稿を連続的に原稿読取部200に送ることができる。
【0038】
原稿読取部200は光源及び撮像素子等を搭載したキャリッジ201、ガラス等の透明部材により構成された原稿台203、及び、原稿読取スリット205を備える。原稿台203に載置された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿台203の長手方向に移動させながら撮像素子により原稿を読み取る。これに対して、原稿給送部300から給送された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿読取スリット205と対向する位置に移動させて、原稿給送部300から送られてきた原稿を、原稿読取スリット205を通して撮像素子により読み取る。撮像素子は読み取った原稿を画像データとして出力する。
【0039】
装置本体100は用紙貯留部101、画像形成部103及び定着部105を備える。用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる用紙トレイ107を備える。用紙トレイ107に貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラ109の駆動により、用紙搬送路111へ向けて送出される。用紙は用紙搬送路111を通って、画像形成部103へ搬送される。
【0040】
画像形成部103は搬送されてきた用紙にトナー画像を形成する。画像形成部103は感光体ドラム113、露光部115、現像部117及び転写部119を備える。露光部115は画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)に対応して変調された光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム113の周面に照射する。これにより、感光体ドラム113の周面には画像データに対応する静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム113の周面に現像部117からトナーを供給することにより、周面には画像データに対応するトナー画像が形成される。このトナー画像は転写部119によって先ほど説明した用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写される。
【0041】
トナー画像が転写された用紙は、定着部105に送られる。定着部105において、トナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、トナー画像は用紙に定着される。用紙はスタックトレイ121又は排紙トレイ123に排紙される。
【0042】
操作部400は操作キー部401と表示部403を備える。表示部403はタッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。ユーザは画面を見ながらソフトキーを操作することによって、コピー等の機能の実行に必要な設定等をする。
【0043】
操作キー部401にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー405、テンキー407、ストップキー409、リセットキー411、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーを切り換えるための機能切換キー413等が設けられている。
【0044】
スタートキー405はコピー、ファクシミリー送信等の動作を開始させるキーである。テンキー407はコピー部数、ファクシミリー番号等の数字を入力するキーである。ストップキー409はコピー動作等を途中で中止させるキーである。リセットキー411は設定された内容を初期設定状態に戻すキーである。
【0045】
機能切換キー413はコピーキー及び送信キー等を備えており、コピー機能、送信機能等を相互に切り替えるキーである。コピーキーを操作すれば、コピーの初期画面が表示部403に表示される。送信キーを操作すれば、ファクシミリー送信及びメール送信の初期画面が表示部403に表示される。
【0046】
図2は、図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300、操作部400、制御部500及び通信部600が、バスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300及び操作部400に関しては既に説明したので、説明を省略する。
【0047】
制御部500はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリー等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、画像形成装置1を構成する上記ハードウェアに対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリーは画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
【0048】
通信部600はファクシミリー通信部601及びネットワークI/F部603を備える。ファクシミリー通信部601は相手先ファクシミリーとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリー通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリー通信部601は電話回線605に接続される。
【0049】
ネットワークI/F部603はLAN(Local Area Network)607に接続される。ネットワークI/F部603はLAN607に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
【0050】
図3は、本発明の第1実施形態に係る原稿読取装置2の主要部を示すブロック図である。図2に示す原稿読取部200及びネットワークI/F部603が、原稿読取装置2として機能する。原稿読取装置2はキャリッジ201、モーター10、移動制御部30、撮像素子制御部40、光源制御部50、読取制御部60、画像処理部70、記憶部の一例であるバッファーメモリー80及びネットワークI/F部603を備える。
【0051】
キャリッジ201は撮像素子21及び光源23等を収容する。撮像素子21は主走査方向に沿ったライン単位で原稿を読み取るリニアイメージセンサーである(例えば、CCDリニアイメージセンサー、CIS(Contact Image Sensor))。本実施形態ではCISを例に説明する。光源23は原稿台203(図1)に置かれた原稿に光を照射する。光源23は赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bにより構成される。赤色光源23Rは例えば、赤色LEDであり、緑色光源23Gは例えば、緑色LEDであり、青色光源23Bは例えば、青色LEDである。
【0052】
モーター10はキャリッジ201を副走査方向に移動(言い換えれば、原稿を副走査方向に相対的に移動)させる動力を生成する。以下、キャリッジ201の副走査方向の移動は、原稿の副走査方向の相対的移動を意味する。本実施形態ではフラットベッド方式で原稿を読み取る場合を説明するが、ADF方式で原稿を読み取る場合にも、本発明を適用することができる。ADF方式で原稿を読み取るときは、キャリッジ201を固定し、原稿を副走査方向に移動させる。
【0053】
本実施形態ではモーター10としてステッピングモーターを例に説明するが、DCモーターなどの他のモーターを用いることもできる。
【0054】
移動制御部30はモーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSを用いて、キャリッジ201を副走査方向に移動させる制御をする。移動制御部30は電源31、パルス信号生成部33及びステップアップ信号生成部35を備える。
【0055】
電源31はモーター10に電力を供給する。パルス信号生成部33はモーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSを生成する。ステッピングモーターの場合、ステッピングモーターの駆動に用いるパルス信号が、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSである。DCモーターではDCモーターの回転をエンコーダーによって検出して、DCモーターの回転速度や回転量がフィードバック制御される。このためDCモーターの場合、エンコーダーから出力されるパルス信号が、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSとなる。
【0056】
ステップアップ信号生成部35はステップアップ(STEPUP)信号StSを生成する。ステップアップ信号StSはキャリッジ201が副走査方向に1画素分移動したことを示す信号(言い換えれば、キャリッジ201が、次に読み取られるライン上に移動したことを示す信号)である。本実施形態ではステップアップ信号StSの1周期が、副走査方向に1画素分移動したことを示している。しかし、これに限定されず、例えば、ステップアップ信号StSの4周期が、副走査方向に1画素分移動したことを示してもよい。
【0057】
ステップアップ信号StSはモーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSと同期して生成される。キャリッジ201の副走査方向の1画素分の移動量は、原稿の読み取りの解像度(例えば、600dpi、300dpi)に応じて異なる。さらに、ステッピングモーターの場合、励磁方法(例えば、1−2相励磁、2相励磁)に応じて、キャリッジ201の副走査方向の1画素分の移動量が異なる。よって、ステップアップ信号StSは、原稿の読み取りの解像度(ステッピングモーターの場合、さらに、励磁方法)を考慮して設定される。
【0058】
撮像素子制御部40は撮像素子21の動作を制御するドライバーである。撮像素子制御部40はクロック生成部41、第1の水平同期信号生成部43、第2の水平同期信号生成部45、電源47、ADコンバーター49を備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成される。撮像素子制御部40は垂直同期信号生成部等をさらに備えるが、これらは本実施形態の説明に特に関連しないので、説明を省略する。
【0059】
クロック生成部41は垂直同期信号や第2の水平同期信号生成部45で生成される水平同期信号HoSの基準となるクロック信号を生成する。電源47は撮像素子21に電力を供給する。
【0060】
第1の水平同期信号生成部43はステップアップ信号StSと同期させて、水平同期信号HoSを生成する。この水平同期信号HoSは撮像素子21に送られて、原稿の読み取りに使用される。ステップアップ信号StSはパルス信号PuSと同期して生成されるので、第1の水平同期信号生成部43で生成される水平同期信号HoSは、パルス信号PuSと同期して生成されることになる。
【0061】
第2の水平同期信号生成部45はクロック生成部41で生成されるクロック信号と同期させて、水平同期信号HoSを生成する。この水平同期信号HoSは撮像素子21に送られて、白基準や黒基準の読み取りに使用される。
【0062】
ADコンバーター49は撮像素子21が原稿を読み取って出力したアナログの画像データImDをデジタルの画像データに変換する。このデジタルの画像データは画像処理部70で所定の処理(例えば、シェーディング補正)がされる。この所定の処理がされたデジタルの画像データは、バッファーメモリー80に一時蓄積されてから、ネットワークI/F部603によってネットワークを経由してサーバー等の目的地に転送される。
【0063】
バッファーメモリー80は撮像素子21が原稿を読み取ることにより、撮像素子21から出力された画像データImDを一時蓄積する記憶部の一例である。ネットワークI/F部603は撮像素子21により読み取られた原稿の画像データImDを目的地へ転送するネットワークに接続可能なインターフェイスの一例である。
【0064】
光源制御部50は電源51及びイネーブル信号生成部53を備え、光源23の点灯を制御する。電源51は赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bに電力を供給する。イネーブル信号生成部53は赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bのそれぞれの点灯可能期間を規定するイネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)を、ステップアップ信号StSと同期させて生成し、赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bのそれぞれに送る。イネーブル信号の期間(すなわち、点灯可能期間)は、水平同期信号HoSの周期より短い。本実施形態では、水平同期信号HoSの発生から次の水平同期信号HoSの発生までの期間の一部を、光源23の点灯時間にする場合で説明している。しかしながら、原稿の読み取りの全期間にわたって光源23を点灯する方式にも、本発明は適用することができる。
【0065】
読取制御部60は移動制御部30、撮像素子制御部40及び光源制御部50を制御し、CPU、RAM及びROM等により実現される。パルス信号生成部33は読取制御部60のCPUのクロックを原クロックとして、パルス信号PuSを生成する。ステップアップ信号StSはパルス信号PuSと同期して生成される。第1の水平同期信号生成部43はステップアップ信号StSと同期させて水平同期信号HoSを生成する。従って、第1の水平同期信号HoSで生成される水平同期信号HoSとパルス信号生成部33で生成されるパルス信号PuSとは、同期している。
【0066】
読取制御部60は移動制御部30、撮像素子制御部40及び光源制御部50を制御することによって、以下の動作(1)〜(3)を実行する。
【0067】
動作(1)は、キャリッジ201を副走査方向に移動させながら、第1の水平同期信号生成部43で生成された水平同期信号HoSを用いて撮像素子21に原稿を読み取らせる動作である。
【0068】
動作(2)は、原稿の読み取り中にバッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合、原稿の読み取りを一時停止させ、かつキャリッジ201を副走査方向に移動することを停止させる動作である。バッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合は、バッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合の一例である。バッファーメモリー80に一時蓄積された画像データがニアフルになった場合でもよい。
【0069】
動作(3)は、原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退(言い換えれば、原稿を副走査方向に相対的に後退)させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる動作である。
【0070】
次に、原稿の読み取り中に、バッファーメモリー80の蓄積された画像データが満杯になった場合の読み取り動作について説明する。図4は、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作を示すタイムチャートである。図5及び図6は、カラー読み取りモードでの読み取り動作を示すタイムチャートである。まず、モノクロ読み取りモードの場合を、図3及び図4を用いて説明する。
【0071】
モノクロ読み取りモードでは緑色光源23Gが使用され、赤色光源23R及び青色光源23Bは使用されない。ステップアップ信号生成部35はパルス信号生成部33で生成された、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSを基にして、ステップアップ信号StSを生成する。第1の水平同期信号生成部43はステップアップ信号StSの立ち上がりと同期させて、水平同期信号HoSを生成する。また、イネーブル信号生成部53はステップアップ信号StSの立ち上がりと同期させて、緑色光源23Gのイネーブル信号EnS(G)を生成する。撮像素子21は水平同期信号HoSと同期して、1ライン単位で原稿を読み取り、読み取ったラインの画像データImDを出力する。
【0072】
撮像素子21が位置するラインより、一つ前のラインの画像データImDが出力される。すなわち、撮像素子21がn番目のラインに位置するとき、n−1番目のラインの画像データImDが出力される。従って、撮像素子21が最初のラインに位置するときに出力された画像データImDは破棄される。
【0073】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データが満杯になったと判断したとき、原稿の読み取りを一時停止する。図4では、n番目のラインを読み取った後、読み取りを一時停止したことを示している。読み取りが一時停止しているときは、モーター10を停止するので、パルス信号PuSは生成されない。このため、ステップアップ信号StSは生成されない。但し、n番目のラインの画像データImDを出力するために、水平同期信号HoS及びイネーブル信号EnS(G)がそれぞれ一つ生成される。それ以降は、水平同期信号HoS及びイネーブル信号EnS(G)は生成されない。
【0074】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データが空になった判断したとき、移動制御部30、撮像素子制御部40及び光源制御部50を制御して、読み取りを再開する制御を実行する。以下、この制御を詳しく説明する。
【0075】
移動制御部30はモーター10を逆回転させるパルス信号PuSを、パルス信号生成部33に生成させて、モーター10を逆回転させることにより、キャリッジ201を副走査方向に後退させる。ステップアップ信号生成部35はモーター10を逆回転させるパルス信号PuSの場合、ステップアップ信号StSを生成しない。このため、キャリッジ201が副走査方向に後退している期間は、水平同期信号HoS及びイネーブル信号EnS(G)が生成されない。
【0076】
移動制御部30はキャリッジ201を所定距離だけ後退させると、モーター10を停止させて、キャリッジ201の副走査方向の後退を停止させる。そして、移動制御部30はモーター10を正回転させるパルス信号PuSを、パルス信号生成部33に生成させてモーター10を正回転させることにより、キャリッジ201を副走査方向に前進させる。ステップアップ信号生成部35ではステップアップ信号StSが生成されるので、ステップアップ信号StSの立ち上がりと同期して、第1の水平同期信号生成部43は水平同期信号HoSを生成し、かつイネーブル信号生成部53はイネーブル信号EnS(G)を生成する。
【0077】
読取制御部60は原稿の読み取りの停止位置のラインの画像データから、画像データを有効とする処理をすることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる。図4では、n+1番目のラインから原稿の読み取りが再開されたことを示している。撮像素子21がn+2番目のラインに位置するとき、n+1番目のラインの画像データImDが出力される。従って、撮像素子21がn+1番目のラインに位置するときに出力された画像データImDは破棄される。
【0078】
次に、カラー読み取りモードの場合を、図3、図5及び図6を用いて説明する。撮像素子21としてCISを用いているので、カラー読み取りモードでは、1ラインの読み取りにおいて、赤色光源23R、緑色光源23G及び青色光源23Bが順番に点灯される。従って、1ラインの読み取りにおいて、赤色の読み取り用の水平同期信号HoS(R)、緑色の読み取り用の水平同期信号HoS(G)及び青色の読み取り用の水平同期信号HoS(B)の三つが生成される。
【0079】
第1の水平同期信号生成部43は、ステップアップ信号StSの立ち上がりと同期させて、最初に読み取る色に対応する水平同期信号HoS(ここでは、水平同期信号HoS(R))を生成し、最初に読み取る色に対応する水平同期信号HoSから、予め定められた間隔を設けて、次に読み取る色に対応する水平同期信号HoS(ここでは、水平同期信号HoS(G))、最後に読み取る色に対応する水平同期信号HoS(ここでは、水平同期信号HoS(B))を生成する。
【0080】
イネーブル信号生成部53は水平同期信号HoS(R)と同期(言い換えれば、ステップアップ信号StSの立ち上がりと同期)させて、赤色光源23Rのイネーブル信号EnS(R)を生成し、水平同期信号HoS(G)と同期させて緑色光源23Gのイネーブル信号EnS(G)を生成し、水平同期信号HoS(B)と同期させて青色光源23Bのイネーブル信号EnS(B)を生成する。
【0081】
撮像素子21は1ラインの読み取りにおいて、水平同期信号HoS(R)と同期させて読み取られた画像データImD(R)、水平同期信号HoS(G)と同期させて読み取られた画像データImD(G)、及び、水平同期信号HoS(B)と同期させて読み取られた画像データImD(B)を、それぞれ出力する。
【0082】
撮像素子21が位置するラインより、一つ前のラインの画像データが出力される。すなわち、撮像素子21がn番目のラインに位置するとき、n−1番目のラインの画像データImD(R),ImD(G),ImD(B)が出力される。従って、撮像素子21が最初のラインに位置するときに出力された画像データは破棄される。
【0083】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データが満杯になったと判断した場合、モノクロ読み取りモードと同様に、原稿の読み取りを一時停止する。図5では、n番目のラインを読み取った後、読み取りを一時停止したことを示している。原稿の読み取りが一時停止されると、ステップアップ信号StSは生成されない。但し、n番目のラインの画像データImD(R),ImD(G),ImD(B)を出力するために、水平同期信号HoS(R)、HoS(G)、HoS(B)及びイネーブル信号EnS(R)、EnS(G)、EnS(B)がそれぞれ一つ生成される。それ以降は、水平同期信号及びイネーブル信号は生成されない。
【0084】
読取制御部60は、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データが空になり、読み取りを再開する場合、モノクロ読み取りモードと同様に、キャリッジ201を副走査方向に後退させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開する。図6では、n+1番目のラインから原稿の読み取りが再開されたことを示している。撮像素子21がn+2番目のラインに位置するとき、n+1番目のラインの画像データImD(R),ImD(G),ImD(B)が出力される。従って、撮像素子21がn+1番目のラインに位置するときに出力された画像データは破棄される。
【0085】
第1実施形態に係る原稿読取装置2aの動作を、図3及び図7を用いて説明する。図7は、この動作を説明するフローチャートである。
【0086】
操作者が、図1に示す原稿台203に原稿をセットし、スタートキー405を操作すると、読取制御部60はフラットベッドモードで原稿の読み取りを開始する(ステップS1)。撮像素子21はライン単位で原稿を読み取り、アナログの画像データImDを出力する。アナログの画像データImDはADコンバーター49により、デジタルの画像データImDに変換され、デジタルの画像データImDは画像処理部70により、所定の処理がされた後、バッファーメモリー80に一時蓄積される。
【0087】
読取制御部60は、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが満杯になったか否かを判断する(ステップS2)。読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが満杯になったと判断しない場合(ステップS2でNo)、撮像素子21に原稿の読み取りを続行させる(ステップS3)。そして、ステップS2に戻る。
【0088】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが満杯になったと判断した場合(ステップS2でYes)、原稿の読み取りを一時停止する(ステップS4)。
【0089】
読取制御部60は、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが空になったか否かを判断する(ステップS5)。読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが空になったと判断しない場合(ステップS5でNo)、ステップS4へ戻る。
【0090】
読取制御部60が、バッファーメモリー80に一時蓄積されている画像データImDが空になったと判断した場合(ステップS5でYes)、原稿の読み取りを再開する(ステップS6)。
【0091】
読取制御部60は、原稿の読み取りが終了したか否かを判断する(ステップS7)。読取制御部60が、原稿の読み取りが終了したと判断しない場合(ステップS7でNo)、ステップS3へ戻る。読取制御部60が、原稿の読み取りが終了したと判断した場合(ステップS7でYes)、原稿の読み取りが終了する。
【0092】
第1実施形態の主な効果を説明する。第1実施形態ではパルス信号PuSと同期してステップアップ信号StSが生成され、ステップアップ信号StSと同期して水平同期信号HoSが生成される。従って、原稿の読み取りに用いられる水平同期信号HoSは、パルス信号PuSと同期して生成される。パルス信号PuSは、キャリッジ201を副走査方向に移動させる動力を生成するモーター10の回転角度を制御する信号である。このように、第1実施形態によれば、原稿の読み取りに用いられる水平同期信号HoSを、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSと同期させて生成している。従って、読み取りの再開位置を読み取りの停止位置に合わせる精度を向上させることができるので、画像のつなぎ目がずれないようにすることができる。
【0093】
水平同期信号HoSが、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSと同期していなければ、モーター10の回転速度が変動すると、撮像素子21により読み取った1ラインの幅が変動する。第1実施形態のように、水平同期信号HoSが、モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuSと同期していれば、モーター10の回転速度が変動しても、各ラインを読み取る位置は変動しないので、1ラインの幅を一定できる。従って、原稿の先端から後端まで、1ラインの幅が伸び縮みすることなく、原稿を読み取ることができる。
【0094】
また、第1実施形態ではパルス信号PuSと同期してステップアップ信号StSが生成される。モノクロ読み取りでは、図4に示すように、ステップアップ信号StSと同期して緑色光源23Gの点灯可能期間を規定するイネーブル信号EnS(G)が生成される。カラー読み取りでは、図5及び図6に示すように、ステップアップ信号StSと同期して赤色光源23Rの点灯可能期間を規定するイネーブル信号EnS(R)が生成される。このように、イネーブル信号EnS(G),EnS(R)をパルス信号PuSと同期させて生成するので、イネーブル信号EnS(G) ,EnS(R)を水平同期信号HoSと同期させて生成することができる。また、カラー読み取りでは、緑色光源23Gのイネーブル信号EnS(G)が、水平同期信号HoS(G)と同期して生成され、青色光源23Bのイネーブル信号EnS(B)が、水平同期信号HoS(B)と同期して生成される。従って、モノクロ読み取り及びカラー読み取りにおいて、水平同期信号HoSの生成前に、光源23が点灯することを防止できる。
【0095】
モーター10としてDCモーターを用いた場合、次の効果が生じる。DCモーターでは、エンコーダーから出力されるパルス信号(モーター10の回転角度を制御するパルス信号PuS)を用いたフィードバック制御で回転速度が制御される。このためエンコーダーから出力されるパルス信号の周波数は変化するので、第1実施形態においてDCモーターを適用した場合、水平同期信号HoSの間隔に多少のずれが生じる。第1実施形態によれば、イネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)が規定する点灯可能期間が、水平同期信号HoSの周期より短く、かつ、イネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)が水平同期信号HoSと同期して生成される。このため、水平同期信号HoSの間隔に多少のずれが生じても、ある水平同期信号HoSに同期して生成されたイネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)が次の水平同期信号HoSの期間にまたがることを防止することができる。従って、各ラインの読み取りにおいて、光源23の点灯時間を一定にすることができる。よって、各ラインの読み取りで撮像素子21に蓄積される光量を一定に保つことができるので、読み取った原稿の画像の画質を向上させることができる。
【0096】
第1実施形態において、画像データの補正に用いる基準データ(例えば、白基準や黒基準データ)を、撮像素子21により取得する場合、キャリッジ201は副走査方向に移動されずに、固定される。このため、モーター10は駆動されないので、パルス信号生成部33はパルス信号PuSを生成しない。従って、第1の水平同期信号生成部43は、水平同期信号HoSを生成することができない。
【0097】
そこで、撮像素子制御部40はキャリッジ201を副走査方向に移動させないで、撮像素子21に画像データの補正に用いる基準データを取得させる場合、図3に示す第2の水平同期信号生成部45で生成された水平同期信号HoSを用いて撮像素子21に基準データを取得させる。第2の水平同期信号生成部45はクロック生成部41で生成されたクロックを原クロックとして、水平同期信号HoSを生成する。また、イネーブル信号生成部53は第2の水平同期信号生成部45で生成された水平同期信号HoSと同期させて、イネーブル信号を生成する。以上により、白基準や黒基準データの取得を実現する。
【0098】
本発明の第2実施形態について、第1実施形態の相違を中心に説明する。第2実施形態に係る原稿読取装置が、図3に示す第1実施形態に係る原稿読取装置2と異なるのは、光源制御部50及び読取制御部60の機能である。
【0099】
第2実施形態において、キャリッジ201が副走査方向に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、光源制御部50はイネーブル信号EnS(R),EnS(G),EnS(B)の発生期間を同じにする制御をする。言い換えれば、光源制御部50は水平同期信号HoSの発生から次の水平同期信号HoSの発生までの期間の一部を光源23の点灯時間とし、キャリッジ201が副走査方向に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、点灯時間を同じにする制御をする。
【0100】
第2実施形態において、読取制御部60は移動制御部30、撮像素子制御部40及び光源制御部50を制御することによって、以下の動作(a)〜(d)を実行する。
【0101】
動作(a)は、キャリッジ201を副走査方向に等速移動させながら、撮像素子21に原稿を読み取らせる動作である。
【0102】
動作(b)は、原稿の読み取り中にバッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合、キャリッジ201を副走査方向に減速移動させながら、撮像素子21に原稿を読み取らせる動作である。
【0103】
動作(c)は、減速移動後、キャリッジ201を副走査方向に移動することを停止させて、原稿の読み取りを一時停止させる動作である。
【0104】
動作(d)は、原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退させないで、キャリッジ201の移動が停止された位置からキャリッジ201を副走査方向に加速移動させながら、キャリッジ201の移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開させる動作である。
【0105】
第2実施形態において、原稿の読み取り中に、バッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になった場合の読み取り動作について説明する。図8は、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作の前半部を示すタイムチャートである。図9は、モノクロ読み取りモードでの読み取り動作の後半部を示すタイムチャートである。
【0106】
原稿の読み取り中に、図3に示すバッファーメモリー80に一時蓄積された画像データが満杯になることにより、読み取りを一時停止する場合、モーター10をスローダウンさせてキャリッジ201を等速移動から減速移動に切り替えてキャリッジ201を停止させる。そして、読み取りを再開する場合、モーター10をスローアップさせてキャリッジ201を加速移動させ、キャリッジ201が目標速度に到達すれば、キャリッジ201を加速移動から等速移動に切り替える。キャリッジ201の減速移動及び加速移動の制御は、モーター10がステッピングモーターのとき、脱調を防止するために、重要な制御である。
【0107】
キャリッジ201の等速移動でのステップアップ信号StSの周波数を、例えば5.0kHzとすれば、1ラインを読み取る周期T1は200μsとなる。モーター10をスローダウンさせてキャリッジ201を例えば二段階で減速させて停止させる場合、キャリッジ201の減速移動でのステップアップ信号StSの周波数を、例えば2.5kHz、1.0kHzとすれば、1ラインの読み取り周期T2,T3はそれぞれ400μs、1000μsとなる。キャリッジ201の停止状態からモーター10をスローアップさせて、キャリッジ201を例えば二段階で加速させて等速に切り替える場合、キャリッジ201の加速移動でのステップアップ信号StSの周波数を、例えば2.5kHz、1.0kHzとすれば、1ラインの読み取り周期T2,T3はそれぞれ400μs、1000μsとなる。
【0108】
キャリッジ201の等速、減速及び加速移動時において、イネーブル信号EnS(G)の周期T0を一定(例えば、100μs)にしている。これは、水平同期信号HoSの発生から次の水平同期信号HoSの発生までの期間の一部を、光源23の点灯時間とし、キャリッジ201が副走査方向に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、点灯時間を同じにすることを意味する。これにより、各ラインの読み取りにおいて、撮像素子21に蓄積される光量を一定に保つ(光量を同じにする)ことができるので、減速移動及び加速移動しているときに読み取られたラインの画質を、等速移動しているときに読み取られたラインの画質と同じにすることができる。
【0109】
1ラインを読み取る周期が200μsの場合(周期T1の場合)、イネーブル信号EnS(G)のデューティが50%となる。1ラインを読み取る周期が400μsの場合(周期T2の場合)、イネーブル信号EnS(G)のデューティが25%となる。1ラインを読み取る周期が1000μsの場合(周期T3の場合)、イネーブル信号EnS(G)のデューティが10%となる。よって、1ラインを読み取る周期が長くなるにしたがって、イネーブル信号EnS(G)のデューティが低くなる。
【0110】
原稿は、キャリッジ201を副走査方向に等速移動させて、撮像素子21によって読み取られる。第2実施形態では、さらに、上記減速移動中及び加速移動中でも、撮像素子21によって原稿を読み取らせる。これにより、原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退させないで、キャリッジ201の移動が停止された位置からキャリッジ201を副走査方向に加速移動させながら、キャリッジ201の移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開させることができる。
【0111】
以上述べたように、第2実施形態によれば、原稿の読み取りを再開する場合、キャリッジ201を副走査方向に後退させないで、キャリッジ201の移動が停止された位置から原稿の読み取りを再開する。従って、原稿の読み取りを再開する場合に、キャリッジ201を副走査方向に後退させた後、前進させることにより、原稿の読み取りの停止位置から原稿の読み取りを再開させる方式に比べて、読み取りの一時停止から読み取りの再開までの時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 画像形成装置
2 原稿読取装置
10 モーター
21 撮像素子
23 光源
30 移動制御部
40 撮像素子制御部
41 クロック生成部
43 第1の水平同期信号生成部
45 第2の水平同期信号生成部
50 光源制御部
53 イネーブル信号生成部
60 読取制御部
80 バッファーメモリー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を主走査方向に沿ったライン単位で読み取る撮像素子と、
前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる動力を生成するモーターと、
前記モーターの回転角度を制御するパルス信号を用いて、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる制御をする移動制御部と、
水平同期信号を前記パルス信号と同期させて生成する第1の水平同期信号生成部を含み、前記撮像素子の動作を制御する撮像素子制御部と、
前記撮像素子が前記原稿を読み取ることにより、前記撮像素子から出力された画像データを一時蓄積する記憶部と、
前記原稿を副走査方向に相対的に移動させながら、前記第1の水平同期信号生成部で生成された前記水平同期信号を用いて前記撮像素子に前記原稿を読み取らせる動作、前記原稿の読み取り中に前記記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合、前記原稿の読み取りを一時停止させ、かつ前記原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させる動作、及び、前記原稿の読み取りを再開する場合、前記原稿を副走査方向に相対的に後退させた後、前進させることにより、前記原稿の読み取りの停止位置から前記原稿の読み取りを再開させる動作を、前記移動制御部及び前記撮像素子制御部を制御することにより実行する読取制御部と、を備える原稿読取装置。
【請求項2】
前記原稿に光を照射する光源と、
前記光源の点灯を制御する光源制御部と、を備え、
前記光源制御部は、前記光源の点灯可能期間を規定し、前記点灯可能期間が前記水平同期信号の周期より短いイネーブル信号を、前記パルス信号と同期させて生成するイネーブル信号生成部を含む請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
前記モーターはDCモーターである請求項2に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
前記撮像素子制御部は、クロック信号を生成するクロック生成部と、前記水平同期信号を前記クロック信号と同期させて生成する第2の水平同期信号生成部と、を含み、
前記撮像素子制御部は、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させないで、前記撮像素子に画像データの補正に用いる基準データを取得させる場合、前記第2の水平同期信号生成部で生成された前記水平同期信号を用いて前記撮像素子に前記基準データを取得させる請求項1〜3のいずれか一項に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
前記撮像素子により読み取られた前記原稿の画像データを目的地へ転送するネットワークに接続可能なインターフェイスを備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の原稿読取装置。
【請求項6】
原稿に光を照射する光源と、
前記光源によって光が照射された前記原稿を、主走査方向に沿ったライン単位で読み取る撮像素子と、
前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる制御をする移動制御部と、
水平同期信号を生成する水平同期信号生成部を含み、前記撮像素子の動作を制御する撮像素子制御部と、
前記水平同期信号の発生から次の前記水平同期信号の発生までの期間の一部を前記光源の点灯時間とし、前記原稿が副走査方向に相対的に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、前記点灯時間を同じにする制御をする光源制御部と、
前記撮像素子が前記原稿を読み取ることにより、前記撮像素子から出力された画像データを一時蓄積する記憶部と、
(a)前記原稿を副走査方向に相対的に等速移動させながら、前記撮像素子に前記原稿を読み取らせる動作、(b)前記原稿の読み取り中に前記記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合、前記原稿を副走査方向に相対的に減速移動させながら、前記撮像素子に原稿を読み取らせる動作、(c)前記減速移動後、前記原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させて、前記原稿の読み取りを一時停止させる動作、及び、(d)前記原稿の読み取りを再開する場合、前記原稿を副走査方向に相対的に後退させないで、前記原稿の相対的移動が停止された位置から前記原稿を副走査方向に相対的に加速移動させながら、前記原稿の相対的移動が停止された位置から前記原稿の読み取りを再開させる動作を、前記移動制御部、前記撮像素子制御部及び前記光源制御部を制御することにより実行する読取制御部と、を備える原稿読取装置。
【請求項1】
原稿を主走査方向に沿ったライン単位で読み取る撮像素子と、
前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる動力を生成するモーターと、
前記モーターの回転角度を制御するパルス信号を用いて、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる制御をする移動制御部と、
水平同期信号を前記パルス信号と同期させて生成する第1の水平同期信号生成部を含み、前記撮像素子の動作を制御する撮像素子制御部と、
前記撮像素子が前記原稿を読み取ることにより、前記撮像素子から出力された画像データを一時蓄積する記憶部と、
前記原稿を副走査方向に相対的に移動させながら、前記第1の水平同期信号生成部で生成された前記水平同期信号を用いて前記撮像素子に前記原稿を読み取らせる動作、前記原稿の読み取り中に前記記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合、前記原稿の読み取りを一時停止させ、かつ前記原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させる動作、及び、前記原稿の読み取りを再開する場合、前記原稿を副走査方向に相対的に後退させた後、前進させることにより、前記原稿の読み取りの停止位置から前記原稿の読み取りを再開させる動作を、前記移動制御部及び前記撮像素子制御部を制御することにより実行する読取制御部と、を備える原稿読取装置。
【請求項2】
前記原稿に光を照射する光源と、
前記光源の点灯を制御する光源制御部と、を備え、
前記光源制御部は、前記光源の点灯可能期間を規定し、前記点灯可能期間が前記水平同期信号の周期より短いイネーブル信号を、前記パルス信号と同期させて生成するイネーブル信号生成部を含む請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
前記モーターはDCモーターである請求項2に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
前記撮像素子制御部は、クロック信号を生成するクロック生成部と、前記水平同期信号を前記クロック信号と同期させて生成する第2の水平同期信号生成部と、を含み、
前記撮像素子制御部は、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させないで、前記撮像素子に画像データの補正に用いる基準データを取得させる場合、前記第2の水平同期信号生成部で生成された前記水平同期信号を用いて前記撮像素子に前記基準データを取得させる請求項1〜3のいずれか一項に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
前記撮像素子により読み取られた前記原稿の画像データを目的地へ転送するネットワークに接続可能なインターフェイスを備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の原稿読取装置。
【請求項6】
原稿に光を照射する光源と、
前記光源によって光が照射された前記原稿を、主走査方向に沿ったライン単位で読み取る撮像素子と、
前記原稿を副走査方向に相対的に移動させる制御をする移動制御部と、
水平同期信号を生成する水平同期信号生成部を含み、前記撮像素子の動作を制御する撮像素子制御部と、
前記水平同期信号の発生から次の前記水平同期信号の発生までの期間の一部を前記光源の点灯時間とし、前記原稿が副走査方向に相対的に等速移動する場合、減速移動する場合及び加速移動する場合において、前記点灯時間を同じにする制御をする光源制御部と、
前記撮像素子が前記原稿を読み取ることにより、前記撮像素子から出力された画像データを一時蓄積する記憶部と、
(a)前記原稿を副走査方向に相対的に等速移動させながら、前記撮像素子に前記原稿を読み取らせる動作、(b)前記原稿の読み取り中に前記記憶部に一時蓄積された画像データが所定量を超えた場合、前記原稿を副走査方向に相対的に減速移動させながら、前記撮像素子に原稿を読み取らせる動作、(c)前記減速移動後、前記原稿が副走査方向に相対的に移動することを停止させて、前記原稿の読み取りを一時停止させる動作、及び、(d)前記原稿の読み取りを再開する場合、前記原稿を副走査方向に相対的に後退させないで、前記原稿の相対的移動が停止された位置から前記原稿を副走査方向に相対的に加速移動させながら、前記原稿の相対的移動が停止された位置から前記原稿の読み取りを再開させる動作を、前記移動制御部、前記撮像素子制御部及び前記光源制御部を制御することにより実行する読取制御部と、を備える原稿読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
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【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−106287(P2013−106287A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250285(P2011−250285)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
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