説明

双管筒型炉中でデコーク排出物を焼却するための炉および方法

【課題】従来の設計の欠陥を有さずにデコーク排出物を燃焼室中に噴射することを可能にする改善された炉の配置。
【解決手段】炭化水素を分解するための炉および方法。該炉は、輻射燃焼室であって、該輻射燃焼室が、中心線を有する炉床を有する輻射燃焼室;該輻射燃焼室中に上向きにデコーク排出物を噴射するための、該中心線に沿ってまたはそれに近接してはめ込まれた複数のデコーク排出物噴射ノズル;バーナーの第一の列およびバーナーの第二の列を形成するように配置された複数のバーナーであって、バーナーのそれぞれの列が該複数のデコーク排出物噴射ノズルに関して相互に対向する側に置かれた複数のバーナー;輻射管コイルの第一の面であって、バーナーの第一の列と該炉床の該中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、該中心線に関して該バーナーの第一の列と同じ側に設けられた輻射管コイルの第一の面;および輻射管コイルの第二の面であって、バーナーの第二の列と該炉床の該中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、該中心線に関して該バーナーの第二の列と同じ側に設けられた輻射管コイルの第二の面;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されるのは、炉、たとえば炭化水素のスチームクラッキングに用いられる炉の改善である。より詳細には、本明細書に開示されるのは、炭化水素のスチームクラッキングの間に生成されたコークを焼却するための改善された方法および装置である。
【背景技術】
【0002】
今日用いられている大多数の石油精製プロセスでは、石油残油留分からコークが製造される。全世界にわたる環境規制は、排出物流中の同伴コーク粒子および揮発性成分が、これらの物質が環境中に放出されるのを防止するために、捕捉され処理されることを要求する。しばしば、かかる排出物は焼却炉中で上記混合物を燃焼することによって処理される。
【0003】
スチームクラッキングは、軽質オレフィン、とりわけエチレンおよびプロピレンを製造するための主要な工業プロセスである。軽質オレフィンは、高い温度および低い炭化水素分圧において短い滞留時間で炭化水素供給原料を熱分解することによって製造される。
【0004】
スチームクラッキングでは、炭化水素供給原料は、まず炉の対流区域において予熱され希釈スチームと混合される。対流区域を出て行く温度は、一般に有意の熱分解がちょうど開始する点であるように設計される。対流区域における予熱後、気体供給原料/希釈スチームの混合物は輻射区域で急速に加熱されて、所望の熱分解が達成される。所望の熱分解度が輻射区域で達成された後、間接熱交換器中においてか、あるいはクエンチオイル流の直接注入によって炉流出物は速やかに急冷される。
【0005】
分解プロセスの望ましくない副生成物はしばしば、通常「コーク」と呼ばれる炭素堆積物の、炉の輻射管の内表面上への堆積である。分解される供給原料によっては、コークは対流区域の一部の管中に、または炉のクエンチ系中に堆積することもある。普通、アスファルテン、残油またはピッチと呼ばれる非揮発性炭化水素を含有する供給原料が、炉において、たとえば以下のものに限定されることなく、対流区域が中間気液分離機を備えているようなプロセスにおいて処理される場合には、汚着物またはコーク堆積物はこの分離機の内表面上にも予測されることができる。
【0006】
炉内に堆積されそれでもなお通常範囲の炉の運転を可能にするコークの量には限界がある。最終的にはコーク堆積物は管を覆い始めまたは詰まらせ始めるので、最大輻射管金属温度(TMT)に達する、最大輻射管圧力損失に達する、最大対流区域圧力損失に達する、最大クエンチ系圧力損失に達するいずれかの前か、あるいは炉流出物がスチーム発生クエンチ熱交換器中で急冷される場合には最大クエンチ熱交換器出口温度に達する前に除かれなければならない。
【0007】
スチーム−エアデコーキングからの排出物は、スチーム、空気、CO、COおよび未燃焼コーク粒子を含む。歴史的に、スチーム−エアデコーキングからの排出物はデコークサイクロンまたはデコーク槽に送られ、そこでコーク粒子が除かれ、気体成分はデコーク排気筒を経て大気中に排出されていた。デコーク槽またはサイクロンの設計によっては、コーク粒子が該槽の壁面上に蓄積するのを防ぐために水洗流が用いられてもよい。コーク粒子はデコーク槽底から収集され、埋め立てによって、副製品としてまたは焼却によって処理されることができる。
【0008】
最近になって、スチーム−エアデコークからの排出物をデコーク槽にではなくて炉の燃焼室に戻す炉の設計が利用できるようになった。この方法では、デコーク排出物流中のCOはCOに転化されることになり、その意図はどのような未燃焼コーク粒子も焼却するというものである。
【0009】
かかる設計では、輻射燃焼室におけるコーク粒子の焼却のための滞留時間が最大になるように、デコーク排出物流は炉の床にある1以上のノズルを通して噴射される。デコーク排出物を単一管筒型燃焼室中に噴射するための典型的な配置が図1に示される。
【0010】
図1に示されたように、スチーム−エアデコーク排出物は、炉床にはめ込まれたノズル4を通して輻射燃焼室中に垂直に噴射される。噴射されたデコーク排出物の一方の側には、炉床にはめ込まれたバーナー5からの火炎がある。噴射されたデコーク排出物の他方の側には、デコーキングされている輻射管の面3がある。かかる設計では、デコーク排出物は、輻射燃焼室2中に、火炎を一方の側におよび比較的温度の低い輻射管3を他方の側にして、噴射される。
【0011】
図1に示されたタイプの炉の設計では、乱流デコーク排出物流が噴射ノズルを出た後に膨張するときに、磨耗性コーク粒子による輻射壁耐火物の侵食の可能性がある。その上、炉の輻射管は輻射燃焼室中に存在する最も温度の低い表面であり、コーク粒子の燃焼を遅らせるかもしれないので、デコーク排出物流を該管にごく接近して噴射することは望ましくないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、必要とされることは、従来の設計の欠陥を有さずにデコーク排出物を燃焼室中に噴射することを可能にする改善された炉の配置である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書に開示されるのは、1の側面では、炭化水素の分解に用いられるようなタイプの炉である。本発明の1の側面では、輻射燃焼室であって、該輻射燃焼室が、中心線を有する炉床を有する輻射燃焼室;該輻射燃焼室中に上向きにデコーク排出物を噴射するための、該中心線に沿ってまたはそれに近接してはめ込まれた複数のデコーク排出物噴射ノズル;バーナーの第一の列およびバーナーの第二の列を形成するように配置された複数のバーナーであって、バーナーのそれぞれの列が該複数のデコーク排出物噴射ノズルに関して相互に対向する側に置かれた複数のバーナー;輻射管コイルの第一の面であって、バーナーの第一の列と該炉床の該中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、該中心線に関し該バーナーの第一の列と同じ側に設けられた輻射管コイルの第一の面;および輻射管コイルの第二の面であって、バーナーの第二の列と該炉床の該中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、該中心線に関し該バーナーの第二の列と同じ側に設けられた輻射管コイルの第二の面;を含む、炉が提供される。
【0014】
1の形態では、第二の複数のバーナーが、少なくとも2の平行な列に沿って配置されてバーナーの第三の列およびバーナーの第四の列を形成し、バーナーのそれぞれの列は炉床の中心線から実質的に等しい間隔で、輻射管コイルの第一の面および輻射管コイルの第二の面のそれぞれと炉床の中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて設けられる。他の形態では、該複数のバーナーは段階的予混合エアバーナーを含む。
【0015】
さらに他の形態では、複数のバーナーの段階的予混合エアバーナーは、それぞれ、一次空気室;上流端、下流端および該上流端と下流端との中間に介在するベンチュリを有するバーナー管;炉の第一開口部に近接するバーナー管の下流端の上に設けられたバーナー先端であって、その配置の結果、燃料の燃焼がそのバーナー先端の下流で生じる、バーナー先端;および燃料をバーナー管中に導入するための、バーナー管の上流端に近接して置かれた燃料オリフィスを含む。またさらに他の形態では、バーナー管の上流端は燃料と、燃焼排ガス、空気またはこれらの混合物とを受け入れ、また各バーナーはさらに、燃焼排ガスを受け入れるための、炉の第二開口部にある第一の末端、およびバーナー管の上流端に近接する第二の末端を有する少なくとも1の通路を含む。
【発明の効果】
【0016】
他の側面では、提供されるのは、エチレンの生産のための炉のデコーク排出物流を焼却する方法であって、該炉が(i)炉床を有する輻射燃焼室であって、該炉床が中心線を有する輻射燃焼室、(ii)該輻射燃焼室中に上向きにデコーク排出物を噴射するための、該中心線に沿ってまたはそれに近接してはめ込まれた複数のデコーク排出物噴射ノズル、(iii)バーナーの第一の列およびバーナーの第二の列を形成するように配置された複数のバーナーであって、バーナーのそれぞれの列が該複数のデコーク排出物噴射ノズルに関して相互に対向する側に置かれた複数のバーナー、(iv)輻射管コイルの第一の面であって、バーナーの第一の列と炉床の中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、該中心線に関して該バーナーの第一の列と同じ側に設けられた輻射管コイルの第一の面、(v)輻射管コイルの第二の面であって、バーナーの第二の列と炉床の中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、該中心線に関して該バーナーの第二の列と同じ側に設けられた輻射管コイルの第二の面を含む、方法である。この方法は、炉床の中心線に沿って輻射燃焼室中に上向きにデコーク排出物を噴射する工程を含む。他の形態では、上記の特徴はバーナーの安定性の減少を伴うことなく提供される。これらのおよび他の特徴は、添付された図面を参照して解釈される発明の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
非限定的な実施例として様々な形態を例示する図面を参照して、以下の記載においてさらなる説明がされる。
【図1】デコーク排出物を単一管筒型炉燃焼室中に噴射するための、従来の炉の配置の概略図である。
【図2】デコーク排出物を双管筒型炉燃焼室中に噴射するための、本発明に従う炉の配置の概略図である。
【図3】輻射燃焼室中に上向きにデコーク排出物を噴射するための、中心線に沿ってはめ込まれた複数のデコーク排出物噴射ノズルを示す炉床の平面図である。
【図4】図3に示されたタイプのバーナーを部分的に断面で示す立面図である。
【図5】図4の5−5線から見た部分的に断面で示す立面図である。
【図6】図4の6−6線から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示された形態は炉またはエチレン生産用のような工業炉の内での使用の点から記載されているけれども、本明細書に示された事項は他のプロセス構成要素および方法、たとえば他の供給原料の熱分解またはクラッキング、石油精製、ボイラーにも適用されることは当業者には明らかであろう。したがって、本明細書の炉の語は、炉、ボイラーおよび他の適用可能な装置、プロセス構成要素ならびに方法を意味すると理解されなければならない。
【0019】
これから図2および3を参照して、炉10の非限定的な典型的実施態様が例示される。炉10はエチレンの生産に用いられるタイプの炉であるといえる。炉10は輻射燃焼室12を含み、輻射燃焼室12は中心線Lを持つ炉床14を有する。「中心線」の語の使用はその最も広い妥当な解釈を包含することが意図される。そのようなものとして「中心線」は炉床14のおおよそ中心を実質的に貫通する線のことをいうことが意図される。本開示発明の目的のためには、中心線Lは約1フィート(30.48cm)以下の幅の線であることができる。図3に示されたように、複数のバーナー100は2の平行な線DおよびDに沿って配置されてバーナーの第一の列16およびバーナーの第二の列18を形成し、バーナーのそれぞれの列は炉床14の中心線Lから実質的に等しい間隔を、中心線Lに関して相互に対向する側に設けられる。
【0020】
輻射管コイルの第一の面20は、炉床14の中心線Lを貫通しかつ炉床14と垂直な面Pと平行に配置される。図3に示されたように、輻射管コイルの第一の面20は、バーナーの第一の列16と炉床14の中心線Lとの間隔よりも大きい間隔を、中心線Lに関してバーナーの第一の列16と同じ側に設けられる。輻射管コイルの第二の面22は、炉床14の中心線Lを貫通しかつ炉床14と垂直な面Pと平行に配置される。輻射管コイルの第二の面22は、バーナーの第二の列18と炉床14の中心線Lとの間隔よりも大きい間隔を、中心線Lに関してバーナーの第二の列18と同じ側に設けられる。
【0021】
なおも図2および3を参照すると、複数のデコーク排出物噴射ノズル24が中心線Lに沿ってはめ込まれる。デコーク排出物噴射ノズル24は、デコーク排出物を輻射燃焼室12中に上向きに噴射するために設けられる。複数のデコーク排出物噴射ノズル24は、コークを該デコーク排出物噴射ノズル24の間に分配するための分配配管30を通してデコーク排出物を供給される。
【0022】
1の形態では、炉10は、バーナーの第三の列26およびバーナーの第四の列28を形成するように少なくとも2の平行な列DおよびDに沿って配置された第二の複数のバーナー100であって、バーナーのそれぞれの列が、輻射管コイルの第一の面20および輻射管コイルの第二の面22のそれぞれと炉床14の中心線Lとの間隔よりも大きい間隔を空けて設けられた第二の複数のバーナー100を含むこともできる。
【0023】
炉10の運転では、炭化水素供給原料はまず予熱され、そして液状供給原料の場合には通常、少なくとも部分的に蒸発され、そして炉10の対流区域32中で希釈スチームと混合される。対流区域32の出口温度は一般に、有意の熱分解が開始する点またはその近傍であるように設計される。典型的には、たとえばこの温度は、軽油供給原料について約1050°F(565℃)〜約1150°F(620℃)、ナフサ供給原料について約1150°F(620℃)〜約1250°F(675℃)およびエタン供給原料について約1250°F(675℃)〜約1350°F(730℃)である。対流区域32中で予熱された後、気体供給原料/希釈スチームの混合物は典型的には輻射区域34中で急速に加熱されて、所望レベルの熱分解が達成される。輻射区域34の管コイル出口温度(COT)は通常、軽油供給原料について1450°F(790℃)〜約1500°F(815℃)、ナフサ供給原料について約1500°F(815℃)〜約1600°F(870℃)およびエタン供給原料について約1550°F(845℃)〜約1650°F(900℃)の範囲であることができる。輻射区域34中で所望の熱分解度が達成された後、炉流出物は間接熱交換器36中においておよび/またはクエンチ流体流の直接注入(図示されていない。)によって速やかに急冷される。
【0024】
上述のように、分解される供給原料にかかわらず、時間の経過による望ましくはないが多分に避けられない分解過程の副生成物は、炉10の輻射管コイル20および22の内表面上への炭素堆積物(コーク)の付着である。分解される供給原料に応じて、コークは炉10の対流区域32の対流管コイル38中にまたはクエンチ系36中にも堆積することがある。普通、アスファルテン、残油またはピッチと呼ばれる非揮発性炭化水素を含有する供給原料が、炉中の対流区域が中間気液分離機を備えている炉において処理される場合には、コークの堆積はこの分離機の内表面上にも予測されることができる。
【0025】
正当に評価されるであろうように、本明細書に開示された炉の設計は、デコーク排出物流の未燃焼コーク粒子の焼却を可能にする。デコーク排出物流は、炉輻射区域燃焼室中に、炉10の床内の少なくとも近接した複数のバーナー100によって生成された火炎にごく接近して噴射される。かかる近接近は、コーク燃焼過程に最大の加熱および酸化を付与する。当業者によって正当に評価されるであろうように、デコーク排出物流を炉10の輻射管コイル20および22にごく接近して噴射することは望ましくない。というのは、輻射管コイル20および22は輻射燃焼室12中に存在する最も温度の低い表面を与え、かかる近接近はコーク粒子の焼却を遅らせることがあるからである。
【0026】
図1からわかるように、典型的な単一輻射管筒型燃焼室2では、デコーク排出物を輻射燃焼室2中に火炎を一方の側に、および比較的温度の低い輻射管コイルを他方の側にして噴射する以外の選択肢はない。輻射管コイル3を冷却する効果を最小限にしようとする目的で、デコーク排出物流を輻射燃焼室2の壁にあまりにも近接して噴射すると、デコーク排出物流は床噴射ノズル4から出た後に膨張するので、コーク粒子による輻射壁耐火物(図示されていない。)の侵食の可能性がある。
【0027】
有利であることに、本明細書に開示された炉および方法は、バーナーからの最大の加熱が達成されることができるように、輻射管コイルが被る冷却が最小限になることができるように、および輻射壁耐火物の侵食の可能性が本質的に排除されることができるように、デコーク排出物を燃焼室中に噴射することを可能にする。
【0028】
様々な典型的な実施態様では、炉10の複数のバーナー100は、生ガスバーナー、多段式燃料バーナー、多段式エアバーナー、段階的予混合エアバーナーまたはこれらの組み合わせを包含することができる。他の形態では、炉10の複数のバーナー100は、段階的予混合エアバーナーと、任意的に、たとえば上に列記されたバーナーとの組み合わせを含むことができる。段階的予混合エアバーナーの例は、米国特許第4,629,413号、5,092,761号および6,877,980号に見出されることができ、これらの内容はその全体が参照によって本明細書に取り込まれる。これらのタイプのバーナーを用いると、長い火炎が生成され、補助的な壁面設置バーナーの必要がないことが工業的操業経験によって確認されている。第三の列のバーナー26および第四の列のバーナー28は第一の列のバーナー16および第二の列のバーナー18と同じタイプのものであることができるけれども、平面火炎バーナーが第三の列のバーナー26および第四の列のバーナー28に用いられてもよい。当業者ならば直ちに理解するように、平面火炎バーナーは典型的には、少なくとも部分的に炉壁によって安定化されたバーナーである。
【0029】
本明細書に開示された炉および方法に有益な長い安定な火炎を生成する能力のある段階的予混合エアバーナー100の典型的な形態が、図4〜6に示される。バーナー100は、炉床14に、またはたとえば床14のバーナーウェル中に置かれた自立バーナー管112を含む。バーナー管112は上流端116、下流端118およびベンチュリ部分119を含む。バーナー先端120は下流端118のところに置かれ、環状タイル122によって囲まれている。燃料オリフィス111、これは燃料スパッド124内に入れられてもよいが、これはガス燃料ライザー165の先端に位置し、管112の上流端116のところに置かれ、バーナー管112中に燃料を導入する。新鮮なまたは環境の空気が可変ダンパー137bを通して一時空気室126中に導入され、バーナー管112の上流端116のところで燃料と混じり合い、そしてベンチュリ部分119内を上向きに移動する。燃料と新鮮な空気との燃焼はバーナー先端120の下流で生じる。
【0030】
複数のエアポート130(図5および6参照)は二次空気室132に始まり、炉床14を貫通し炉10中へと通じる。新鮮なまたは環境の空気が、可変ダンパー134を通って二次空気室132に入り、段階的エアポート130内を通って炉内に入って二次燃焼または段階的燃焼をもたらす。
【0031】
炉から一次空気室に燃焼排ガスを再循環するために、FGRダクト176が炉14の床にある開口部140から一次空気室126内に伸びている。燃焼排ガスは、バーナー管112のベンチュリ119を通る燃料の吸引効果によってFGRダクト176を通して引かれる。このようにして、一次空気および燃焼排ガスは一次空気室126内で混合され、これは燃焼の帯域に先行する。したがって、燃料に混合される不活性物質の量が上げられ、これによって火炎温度が下がり、その結果NO排出が低減される。ダンパー137bを完全にまたは部分的に閉じると、一次空気室126中に引かれることができる新鮮な空気の量が制限され、それによって炉床14から燃焼排ガスを引くのに必要な真空が与えられる。
【0032】
1の形態では、FGRダクト176内に突き出ている2以上の一次空気通路137および138を設けることによって、混合は促進されることができる。通路137および138は円錐の切断された一部、円筒状または四角柱状であり、各通路137および138の間に間隔が設けられて、FGRダクト176中に良好な燃焼排ガス/空気の混合が起きる乱流帯域を生成してもよい。
【0033】
FGRダクト176の内壁の下端にある平板部材183によって、混合はさらに高められることができる。平板部材183は一次空気室126内に伸びている。平板部材183はまたFGRダクト176を効果的により長くし、より長いFGRダクトはまたより良好な混合を促進する。
【0034】
ダンパー137bによって調節されるオリフィス137aおよび138aを含む第一の端ならびにFGRダクト176に通じているオリフィスを含む第二の端をそれぞれ有する傾斜通路137および138を通して、混ぜられていない低温度の環境空気(一次空気)が導入される。このように導入された環境空気は、FGRダクト176中で再循環された燃焼排ガスと直接混合される。燃料オリフィス、これは燃料スパッド124内に納められていてもよいが、これを通過する燃料の吸引効果によって、一次空気は通路137および138を通して引かれる。
【0035】
好ましくは、約20%〜約80%の燃焼排ガスと約20%〜約80%の環境空気との混合物がFGRダクト176を通して引かれなければならない。約50%の燃焼排ガスと約50%の環境空気との混合物が用いられることが特に好まれる。エアポートおよび抽気ダクトの形状および配置は、燃焼排ガスと環境空気との所望の割合を得るために変えられることができる。
【0036】
運転においては、燃料オリフィス111、これは燃料スパッド124内に入れられていてもよいが、これはバーナー管112中に燃料を送り出し、ここで燃料は一次空気、再循環燃焼排ガスまたはこれらの混合物と混じり合う。燃料、再循環燃焼排ガスおよび一次空気の混合物は、次にバーナー先端120から放出される。バーナー管112のベンチュリ部分119中の混合物は多燃料側の可燃限界未満に維持される。すなわち、ベンチュリ中には燃焼を支えるには不十分な空気が存在する。燃焼に必要な空気の残余を供給するために、二次空気が添加される。
【0037】
希釈剤として燃焼排ガスを用いることに加えて、より低い火炎温度を希釈によって達成する他の技術は、スチーム噴射の使用によるものである。スチームは一次空気または二次空気室に噴射されることができる。スチームは、図4に示された1以上のスチーム噴射管115を通して噴射されることができる。好ましくは、スチームはベンチュリの上流に噴射される。
【0038】
なおも図4〜6を参照すると、バーナー管112の下流端118上に取り付けられたバーナー先端120を取り囲む壁160が設けられて、バーナー先端120の下流の火炎の基部と、炉内のFGRダクト176および1以上のエアポート130の両方と、の間の障壁としてもよい。1の形態では、壁160に加えて部分的壁195が設けられて、バーナー先端120の下流の火炎の基部とFGRダクト176との間のさらなる障壁とされる。
【0039】
本明細書に開示された炉10の運転では、単一デコーク排出物ライン30から複数のデコーク排出物噴射ノズル24に、一連の対称型分割ラインに該排出物を通すことによって移行することが望ましい。このようにして、デコーク排出物流中に含まれているコークは、個々の噴射ノズル24の間に分配される。したがって、1の形態では、複数のデコーク排出物噴射ノズル24の間にコークをより均等に分配するように、デコーク排出物分配配管30が設けられる。
【0040】
本発明は、特定の手段、物質および形態を参照して記載されてきたけれども、開示された特定事項に限定されず、特許請求の範囲内の全ての均等物に及ぶことが理解されなければならない。
【符号の説明】
【0041】
1:単一管筒型炉、2:輻射燃焼室、3:輻射管コイル、4:床噴射ノズル、5:バーナー
10:双管筒型炉、12:輻射燃焼室、14:炉床、L:炉床14の中心線、P:炉床14の中心線Lを貫通しかつ炉床14と垂直な面、16:バーナーの第一の列、D:バーナーの第一の列、18:バーナーの第二の列、D:バーナーの第二の列、20:輻射管コイルの第一の面、22:輻射管コイルの第二の面、24:複数のデコーク排出物噴射ノズル、26:バーナーの第三の列、D:バーナーの第三の列、28:バーナーの第四の列、D:バーナーの第四の列、30:デコーク排出物分配配管、32:対流区域、34:輻射区域、36:クエンチ系、38:対流管コイル、
100:第二の複数のバーナー、111:燃料オリフィス、112:バーナー管、115:スチーム噴射管、116:バーナー管上流端、118:バーナー管下流端、119:バーナー管ベンチュリ部分、120:バーナー先端、 122:環状タイル、124:燃料スパッド、126:一次空気室、130:エアポート、132:二次空気室、 134:可変ダンパー、137:一次空気通路、137a:オリフィス、137b:可変ダンパー、138:一次空気通路、138a:オリフィス、140:炉床開口部、160:バーナー先端120を取り囲む壁、165:ガス燃料ライザー、176:FRGダクト、183:平板部材、195:バーナー先端120を取り囲む壁にさらに加えられた部分的壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素の分解のための炉であって、
(a)輻射燃焼室であって、当該輻射燃焼室が、中心線を有する炉床を含む輻射燃焼室、
(b)当該輻射燃焼室中に上向きにデコーク排出物を噴射するための、当該中心線に沿ってまたは近接してはめ込まれた複数のデコーク排出物噴射ノズル、
(c)バーナーの第一の列およびバーナーの第二の列を形成するように配置された複数のバーナーであって、バーナーのそれぞれの列が当該複数のデコーク排出物噴射ノズルに関して相互に対向する側に置かれた複数のバーナー、
(d)輻射管コイルの第一の面であって、当該バーナーの第一の列と当該炉床の当該中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、当該中心線に関して当該バーナーの第一の列と同じ側に設けられた輻射管コイルの第一の面、および
(e)輻射管コイルの第二の面であって、当該バーナーの第二の列と当該炉床の当該中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、中心線に関して当該バーナーの第二の列と当該同じ側に設けられた輻射管コイルの第二の面
を含んでいる、炉。
【請求項2】
当該複数のバーナーが、少なくとも2の平行な線に沿って配置されてバーナーの第一の列およびバーナーの第二の列を形成し、バーナーのそれぞれの列が当該炉床の当該中心線から実質的に等しい間隔を空けて、当該中心線に関して相互に対向する側に設けられている、請求項1に記載の炉。
【請求項3】
バーナーの第三の列およびバーナーの第四の列を形成するように、少なくとも2の平行な列に沿って配置された第二の複数のバーナーであって、バーナーのそれぞれの列が当該炉床の当該中心線から実質的に等しい間隔を、当該輻射管コイルの第一の面および当該輻射管コイルの第二の面のそれぞれと当該炉床の当該中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて設けられた第二の複数のバーナーをさらに含んでいる、請求項1に記載の炉。
【請求項4】
当該輻射管コイルの第一の面が、当該炉床の当該中心線を貫通しかつ当該炉床と垂直な面と平行に配置されている、請求項1に記載の炉。
【請求項5】
当該輻射管コイルの第二の面が、当該炉床の当該中心線を貫通しかつ当該炉床と垂直な面と平行に配置されている、請求項1に記載の炉。
【請求項6】
当該複数のバーナーが、生ガスバーナー、多段式燃料バーナー、多段式エアバーナー、段階的予混合エアバーナーまたはこれらの組み合わせを含んでいる、請求項1に記載の炉。
【請求項7】
当該複数のバーナーの当該段階的予混合エアバーナーが、それぞれ、
(a)一次空気室、
(b)上流端、下流端および該上流端と下流端との中間に介在するベンチュリを有するバーナー管、
(c)炉の第一開口部に近接するバーナー管の下流端の上に設けられたバーナー先端であって、当該配置の結果、燃料の燃焼が当該バーナー先端の下流で生じる、バーナー先端、および
(d)燃料を当該バーナー管中に導入するための、当該バーナー管の上流端に近接して置かれた燃料オリフィス
を含んでいる、請求項6に記載の炉。
【請求項8】
炉がスチームクラッキング炉である、請求項1に記載の炉。
【請求項9】
エチレンの生産のために炉のデコーク排出物流を焼却する方法に用いられる炉であって、該炉が、(i)炉床を有する輻射燃焼室であって、該炉床が中心線を有する輻射燃焼室、(ii)該輻射燃焼室中に上向きにデコーク排出物を噴射するための、該中心線に沿ってまたは近接して設けられた複数のデコーク排出物噴射ノズル、(iii)バーナーの第一の列およびバーナーの第二の列を形成するように配置された複数のバーナーであって、バーナーのそれぞれの列が該複数のデコーク排出物噴射ノズルに関して相互に対向する側に置かれた複数のバーナー、(iv)輻射管コイルの第一の面であって、バーナーの第一の列と炉床の中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、該中心線に関して該バーナーの第一の列と同じ側に設けられた輻射管コイルの第一の面、(v)輻射管コイルの第二の面であって、バーナーの第二の列と炉床の中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて、該中心線に関して該バーナーの第二の列と同じ側に設けられた輻射管コイルの第二の面を含み、該方法が、
(a)該炉床の中心線に沿って該輻射燃焼室中に上向きにデコーク排出物を噴射する工程
を含んでいる、請求項1に記載の炉。
【請求項10】
複数のバーナーが、少なくとも2の平行な線に沿って配置されてバーナーの第一の列およびバーナーの第二の列を形成し、バーナーのそれぞれの列が炉床の中心線から実質的に等しい間隔を空けて、該中心線に関して相互に対向する側に設けられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
炉床の中心線を貫通しかつ該炉床と垂直な面に実質的に沿って上向きにデコーク排出物を噴射する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
バーナーの第三の列およびバーナーの第四の列を形成するように、少なくとも2の平行な列に沿って配置された第二の複数のバーナーであって、バーナーのそれぞれの列が当該炉床の当該中心線から実質的に等しい間隔で、当該輻射管コイルの第一の面および当該輻射管コイルの第二の面のそれぞれと当該炉床の当該中心線との間隔よりも大きい間隔を空けて設けられた第二の複数のバーナーを配置する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
(b)複数のバーナーのそれぞれ内の燃料スパッドに近接した所定の場所で、燃料ガスと空気、燃焼排ガスまたはこれらの混合物とを一緒にする工程、
(c)該所定の場所の下流のバーナー先端であって、タイルによって周囲を取り囲まれたバーナー先端において、該燃料ガスと空気、燃焼排ガスまたはこれらの混合物とを放出する工程、
(d)該複数のバーナーのそれぞれについて、該燃料スパッドを出て行く未燃焼燃料ガスの吸引効果に応答して炉から燃焼排ガスの流れを引く工程、および
(e)該所定の場所の下流のバーナー先端の下流の燃料ガスを燃焼する工程
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
炉がスチームクラッキング炉である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
炉床の中心線を該中心線の第一の側で貫通しかつ炉床と垂直な面と平行な輻射管コイルの第一の面、および炉床の中心線を該中心線の第一の側と反対の側で貫通しかつ炉床と垂直な面と平行な輻射管コイルの第二の面を置く工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−500955(P2012−500955A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523839(P2011−523839)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/046988
【国際公開番号】WO2010/027541
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】