説明

反射スクリーン、映像表示システム

【課題】輝度の均一性が高く、輝度ムラが改善され、コントラストの高い良好な映像を表示できる反射スクリーン、及び、これを備える映像表示システムを提供する。
【解決手段】反射スクリーン10は、サーキュラーフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層11と、反射層12とを備え、反射スクリーン10をスクリーン面の法線方向から見たとき、スクリーン面に平行な平面M上において、映像源20の映像光の投射口を点A、反射スクリーン10の画面の幾何学的中心を点C、点A及び点Cを通る直線を直線T、画面の点A側の辺上に直線Tから下ろした垂線と直線Tとの交点を点Dとすると、この平面M上において、サーキュラーフレネルレンズ形状の光学的中心となる点Bは、直線T上に位置し、直線T上において、点C及び点D間の寸法S1、点C及び点B間の寸法S2、点C及び点A間の寸法S3は、S1<S2<S3という関係を満たすものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射スクリーン、及び、これを備える映像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
反射スクリーンに映像を投射する映像源として、至近距離から比較的大きな入射角度で映像光を投写して大画面表示を実現する短焦点型の映像投射装置(プロジェクタ)等が広く利用されている。このような短焦点型の映像投射装置は、反射スクリーンに対して、上方又は下方から従来の映像源よりも大きな入射角度で投射することができ、反射スクリーンを用いた映像表示システムの省スペース化等に寄与している。
このような短焦点型の映像投射装置によって投射された映像光を良好に表示するために、単位レンズが複数配列されて形成されたリニアフレネルレンズ形状やサーキュラーフレネルレンズ形状を有するレンズ層の表面に反射層を形成した反射スクリーン等が様々に開発されている(例えば、特許文献1,2)。
また、反射スクリーンを用いた映像表示システムとして、明室環境下でもコントラスト等が良好な映像を表示可能である映像表示システムへの需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−29875号公報
【特許文献2】特開2008−76523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなリニアフレネルレンズ形状を有する反射スクリーンでは、単位レンズの配列方向における光線制御作用しか有していないため、プロジェクタの短焦点化及び反射スクリーンの大画面化が進むにつれて、画面の輝度ムラが顕著になっている。例えば、短焦点型のプロジェクタを反射スクリーンの下方側に配置し、単位レンズが画面上下方向に配列されている場合、反射スクリーンの画面左右両端(特に、画面下側の左右両端部)が暗く観察される場合がある。
これを改善するために、サーキュラーフレネルレンズ形状を有するレンズ層を用いる反射スクリーンが考えられる。しかし、サーキュラーフレネルレンズ形状を有するレンズ層を単に用いただけでは、上述のような輝度ムラは十分に改善されていない。
【0005】
前述の特許文献1,2には、短焦点型のプロジェクタを使用する反射スクリーンや映像表示システムが記載されているが、上述のような輝度ムラの改善に関しては開示されていない。
また、明室環境下でも明るくコントラストの高い良好な映像を表示でき、画面の輝度の均一性が高い反射スクリーンとすることや、そのような反射スクリーンを安価に作成することは、常々求められることである。
【0006】
本発明の課題は、輝度の均一性が高く、輝度ムラが改善され、コントラストの高い良好な映像を表示できる反射スクリーン、及び、これを備える映像表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、映像源から投射された映像光を反射して観察可能に表示する反射スクリーンであって、レンズ面(111a)と非レンズ面(111b)とを有し、背面側に凸となる単位レンズ(111)が該反射スクリーンのスクリーン面に沿って複数配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層(11)と、少なくとも前記単位レンズの前記レンズ面に形成され、光を反射する反射層(12)と、を備え、この反射スクリーンをスクリーン面の法線方向から見たとき、スクリーン面に平行な平面(M)上において、前記映像源の映像光の投射口となる点が位置する点を点A、この反射スクリーンの画面の幾何学的中心となる点が位置する点を点C、前記点A及び前記点Cを通る直線を直線T、前記画面の前記点A側の辺上に前記直線Tから下ろした垂線と前記直線Tとの交点を点Dとすると、前記平面上において、前記サーキュラーフレネルレンズ形状の光学的中心となる点が位置する点Bは、前記直線T上に位置し、前記直線T上において、前記点C及び前記点D間の寸法S1、前記点C及び前記点B間の寸法S2、前記点C及び前記点A間の寸法S3は、S1<S2<S3という関係を満たすこと、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、前記単位レンズ(111)は、前記非レンズ面(111b)の少なくとも一部に光を吸収する光吸収層が形成されていること、を特徴とする反射スクリーンである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーン(10)と、前記反射スクリーンに対して映像光を投射する映像源(20)と、を備える映像表示システム(1)であって、前記映像源は、短焦点型プロジェクタであること、を特徴とする映像表示システムである。
請求項4の発明は、請求項3に記載の映像表示システムにおいて、前記反射スクリーン(10)は、前記映像源(20)から投影された映像光を、前記画面の幾何学的な中心となる点を通りスクリーン面に直交する直線上に位置する集光点(F)に向けて反射し、前記集光点は、前記反射スクリーンの映像源側表面から映像源側に2〜20mとなる位置にあること、を特徴とする映像表示システム(1)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)反射スクリーンは、サーキュラーフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層と、少なくとも単位レンズのレンズ面に形成され、光を反射する反射層とを備え、この反射スクリーンをスクリーン面の法線方向から見たとき、スクリーン面に平行な平面上において、映像源の映像光の投射口となる点が位置する点を点A、この反射スクリーンの画面の幾何学的中心となる点が位置する点を点C、点A及び点Cを通る直線を直線T、画面の点A側の辺上に直線Tから下ろした垂線と直線Tとの交点を点Dとすると、この平面上において、サーキュラーフレネルレンズ形状の光学的中心となる点が位置する点Bは、直線T上に位置し、直線T上において、点C及び点D間の寸法S1、点C及び点B間の寸法S2、点C及び点A間の寸法S3は、S1<S2<S3という関係を満たす。従って、輝度ムラが改善され、画面内の輝度の均一性が高く、明室環境下であってもコントラストの高い良好な映像を表示できる。
【0009】
(2)単位レンズは、非レンズ面の少なくとも一部に光を吸収する光吸収層が形成されているので、不要な外光や迷光を吸収でき、コントラスト向上効果を高めることができる。
【0010】
(3)映像表示システムは、反射スクリーンと、反射スクリーンに対して映像光を投射する映像源とを備えるので、輝度ムラが改善され、画面内の輝度の均一性が高く、明室環境下であってもコントラストの高い良好な映像を表示できる。
また、映像源は、短焦点型プロジェクタであるので、反射スクリーンの至近から大きな入射角度で映像光を投射することができ、映像表示システムの省スペース化を図ることができる。
【0011】
(4)反射スクリーンは、映像源から投影された映像光を、画面の幾何学的な中心となる点を通りスクリーン面に直交する直線上に位置する集光点に向けて反射し、集光点は、反射スクリーンの映像源側表面から映像源側に2〜20mとなる位置にあるので、集光点近傍に位置する観察者に対して、明るく、輝度ムラの低減された良好な映像を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の映像表示システム1を示す図である。
【図2】実施形態の反射スクリーン10の層構成を示す図である。
【図3】実施形態の反射スクリーン10及び映像表示システム1の各部の位置を説明する図である。
【図4】実施例1及び比較例1〜3の反射スクリーンの相対輝度について説明する図である。
【図5】実施例1及び比較例1〜3の反射スクリーンの画面下端における単位レンズ111の角度αの変化の様子を示している。
【図6】サーキュラーフレネルレンズ形状を形成する成形型の最大切削半径を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。従って、各光線の入射角度等に関して、実際の角度とは異なる場合がある。
また、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、シート、板、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、透明シートは、透明フィルムとしてもよいし、透明板としてもよい。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0014】
(実施形態)
図1は、本実施形態の映像表示システム1を示す図である。図1(a)は、映像表示システム1の斜視図であり、図1(b)は、映像表示システム1を側面から見た様子を示している。
映像表示システム1は、反射スクリーン10、映像源20等を有している。本実施形態では、反射スクリーン10が映像源20から投影された映像光Lを反射して、その画面上に映像を表示する一般的な映像表示システムを説明するが、これに限らず、映像表示システム1は、例えば、映像源20から投射された映像光を反射して反射スクリーン上に映像を表示するフロントプロジェクションテレビシステム等としてもよいし、反射スクリーン10と映像源20と反射スクリーン10の画面上の位置を検出する位置検出部やパーソナルコンピュータ等を備えたインタラクティブボードシステムとしてもよい。
【0015】
映像源20は、映像光Lを反射スクリーンへ投影する映像投射装置であり、短焦点型の汎用のプロジェクタ等である。
この映像源20は、使用状態において、反射スクリーン10の画面を法線方向から見た場合に、反射スクリーンの画面左右方向において中央であって、反射スクリーン10の画面よりも下方側に位置している。そして、映像源20は、反射スクリーン10の画面に平行な面から画面に直交する方向における距離が、従来の汎用プロジェクタに比べて大幅に近い位置から映像光Lを投影でき、従来の汎用プロジェクタに比べて反射スクリーンまでの投射距離が短く、その映像光の反射スクリーンに対する入射角度も大きい。
外光源Gは、室内の天井等に設けられた室内照明である。
【0016】
反射スクリーン10は、映像源20が投射した映像光Lを観察者O側へ向けて反射し、その画面に映像を表示する。使用状態において、この反射スクリーン10が映像を表示する画面(観察面)は平面状であり、観察者O側から見て、その観察面は、長辺方向が画面左右方向となる略矩形状である。なお、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向とは、特に断りが無い場合、この反射スクリーン10の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)であるとする。
反射スクリーン10は、図1に示すように、その背面側に、平板状の支持板50が、粘着材等からなる不図示の接合層を介して設けられており、この支持板50により、その平面性を維持している。本実施形態の支持板50は、光透過性を有していないが、これに限らず、例えば、半透明のもの等としてもよい。本実施形態の映像表示システム1では、この支持板50が所定の固定部材により壁面に取り付けられている。固定部材は、適宜選択できる。
【0017】
反射スクリーン10は、80インチや100インチ等の大きな画面(観察面)を有している。本実施形態の反射スクリーン10は、例えば、画面のサイズが対角80インチサイズ(1771×996mm)である。
また、反射スクリーン10は、図1(b)に示すように、映像を表示する画面の幾何学的な中心となる点10aを通り、反射スクリーン10のスクリーン面(観察面)に直交する直線Hの映像源側(観察者側)であって、反射スクリーン10の映像源側表面(観察面)から2〜20mの位置に位置する集光点Fに集光するように映像光Lを反射する。ここで、スクリーン面とは、この反射スクリーン10において、スクリーン全体として見たときの反射スクリーン10の平面方向となる面を示すものであり、本明細書中、及び、特許請求の範囲においても同一の定義として用いている。この反射スクリーン10のスクリーン面は、反射スクリーン10の画面(観察面)に平行である。
本実施形態の反射スクリーン10では、集光点Fは、直線Hの映像源20側であって反射スクリーン10の映像源側表面から3mの位置にある。本実施形態の反射スクリーン10は、この集光点F及びその近傍に、観察者Oが位置することを想定して作製されている。
なお、反射スクリーン10の映像源側表面から集光点Fまでの距離は、反射スクリーン10の映像源側表面から観察者Oが位置すると想定される位置までの距離(本実施形態では3m)よりも長くなる形態とする方が、画面左右方向において正面方向に対してやや斜め方向から観察した場合にも輝度分布の均一性が向上する。
【0018】
図2は、本実施形態の反射スクリーン10の層構成を示す図である。図2(a)では、反射スクリーン10のスクリーン面に直交し、使用状態における画面上下方向に平行な断面での断面の一部を拡大して示し、図2(b)は、図2(a)に示す断面の単位レンズ111をさらに拡大して示している。図2(c)は、反射スクリーン10のレンズ層11を裏面側から観察した様子を示している。なお、図2では、理解を容易にするために、支持板50等は適宜省略して示してある。
反射スクリーン10は、図2(a)に示すように、その映像源20側(観察面側)から順に、表面機能層14、基材層13、レンズ層11、反射層12等を備えている。
【0019】
基材層13は、この反射スクリーン10の基材となる透明又は半透明のシート状の部材である。基材層13の映像源側(観察面側)には、表面機能層14が一体に形成され、背面側(裏面側)には、レンズ層11が一体に形成されている。
この基材層13としては、例えば、厚さが100〜200μmであるPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂や、PC(ポリカーボネート)樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、アクリル系樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等の樹脂製のシート状部材を用いることができる。本実施形態の基材層13は、厚さ100μmのPET樹脂製のシート状の部材を用いている。
なお、基材層13は、所定の透過率とするためのグレー等の染料や顔料等を含有し、着色が施されている形態としてもよい。また、基材層13は、視野角を広げる観点等から、光拡散材等を含有していてもよい。さらに、基材層13は、光拡散材及び顔料等を含有する形態としてもよい。加えて、基材層13は、単層ではなく、2層又は3層等、複数の層が一体に積層された形態としてもよい。
【0020】
レンズ層11は、基材層13の背面側(裏面側)に設けられた光透過性を有する層であり、その背面側(基材層13とは反対側)の面には、サーキュラーフレネルレンズ形状が形成されている。
レンズ層11のサーキュラーフレネルレンズ形状は、反射スクリーン10外に位置する点11aを中心としてスクリーン面に沿って複数の単位レンズ111が同心円状に配列されている。即ち、レンズ層11のサーキュラーフレネルレンズ形状は、その点11aを光学的な中心(フレネルセンター)とする、所謂オフセット構造のサーキュラーフレネルレンズ形状である。そのため、図2(c)に示すように、レンズ層11をスクリーン面の法線方向背面側から見たときに、真円の一部形状(円弧)の単位レンズ111が複数配列されているように観察される。なお、これに限らず、例えば楕円に近い形状等の一部形状の単位レンズ111が複数配列されている形態としてもよい。
【0021】
本実施形態のレンズ層11は、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂により形成されている。このレンズ層11は、基材層13の他方の面を、紫外線硬化型樹脂が充填されたサーキュラーフレネルレンズ形状を賦形する成形型に押圧し、紫外線を照射して硬化させた後に成形型を離型する紫外線成形法等により作成される。レンズ層11(単位レンズ111)を紫外線成形法により形成することにより、よりピッチの細かく、かつ、形状精度の高い単位レンズ111を形成することができる。
なお、レンズ層11の形成方法は、適宜選択してよく、この限りではない。また、レンズ層11は、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0022】
単位レンズ111は、図2(a),(b)に示すように、スクリーン面に直交する方向(反射スクリーン10の厚み方向)に平行であって単位レンズ111の配列方向(本実施形態では、反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な断面における断面形状が、略三角形形状であり、頂点tと、フレネルレンズ形状のレンズ面であるレンズ面111aと、頂点tを挟んでレンズ面111aと対向する非レンズ面111bとを有している。レンズ面111aは、背面側に凸となる凸レンズのレンズ面の一部に相当する。
この単位レンズ111は、反射スクリーン10の使用状態において、レンズ面111aが頂点tを挟んで非レンズ面111bよりも鉛直方向上側に位置している。
【0023】
図2(b)に示すように、レンズ面111aがスクリーン面に平行な面となす角度は、角度αであり、非レンズ面111bがスクリーン面に平行な面となす角度は、角度β(β>α)である。また、単位レンズ111は、配列ピッチがP、レンズ高さ(反射スクリーン10の厚み方向における単位レンズ111間の谷底となる点vから頂点tまでの寸法)がhである。
本実施形態の単位レンズ111は、フレネルセンターとなる点11aからの位置に依らず配列ピッチPが等しく角度α及びレンズ高さhが配列方向に沿って変化する例を示したが、これに限らず、例えば、単位レンズ111の高さhが一定であり、配列ピッチPや角度αが変化する形態としてもよい。
【0024】
単位レンズ111の配列ピッチPや角度α等は、映像光Lを投射する映像源20(プロジェクタ)の画素(ピクセル)の大きさや、映像源20の映像光Lの投射角度(又は、スクリーン面に対する映像光の入射角度)や、単位レンズ111(レンズ層11)や基材層13の屈折率等に応じて、適宜変更可能である。
本実施形態では、一例として、配列ピッチPは100μmであり、角度αは、配列方向に沿って点11aから離れるにつれてしだいに大きくなっており(反射スクリーン10の画面左右方向の中央下端で約7°、画面左右方向の中央上端で約23°)、角度βは、90°である。また、本実施形態の単位レンズ111(レンズ層11)は、アクリル系紫外線硬化型樹脂製であり、その屈折率は、1.55である。
【0025】
反射層12は、光を反射する作用を有し、レンズ層11の背面側であって少なくともレンズ面111a上に形成される層である。本実施形態のレンズ面111a及び非レンズ面111bには、反射層12が形成されているので、レンズ面111a及び非レンズ面111bに入射する光は反射層12によって反射される。
この反射層12は、白色又は銀色系の塗料や、白色又は銀色系の顔料やビーズ等を含有する紫外線硬化型樹脂又は熱硬化性樹脂、銀やアルミニウム等の金属蒸着膜、金属箔等である。反射層12の形成方法は、塗料等を用いる場合にはスプレーコート等の各種塗布方法を選択でき、また、蒸着膜の場合は、蒸着法等により形成される。
反射層12は、明るい映像を表示するために、その反射率が40%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがさらに好ましい。
本実施形態の反射層12は、アルミニウム等の金属箔を含有した銀色系の塗料を、レンズ層11の単位レンズ111が形成されている面上にスプレー塗布することにより形成されている。
なお、本実施形態の反射層12は、レンズ面111a及び非レンズ面111bからなる単位レンズ111の凹凸形状に沿って所定の厚さで形成される例を示したが、これに限らず、例えば、単位レンズ111間の谷部を充填する形態としてもよいし、十分な反射性を有しているならばその膜厚が均一でなくともよい。
【0026】
表面機能層14は、基材層13の観察者O側(映像源側)に設けられる層である。
表面機能層14には、反射防止機能や防眩機能、紫外線吸収機能、防汚機能や帯電防止機能、ハードコート機能等、適宜必要な機能を1つ又は複数選択して設けることができる。
表面機能層14は、基材層13とは別層であって不図示の粘着材等により基材層13に接合される形態としてもよいし、基材層13のレンズ層11とは反対側の面に直接形成してもよい。
本実施形態の表面機能層14は、防眩機能及びハードコート機能(耐スクラッチ機能)を有しており、基材層13の観察者O側の表面に、ハードコート機能を有する電離放射線硬化型樹脂(例えば、ウレタンアクリレート等)を膜厚10〜100μm程度で塗布し、微細な凹凸形状(マット形状)をその樹脂膜表面に転写する等して硬化させ、表面に微細凹凸形状が賦形されて形成されている。
【0027】
ここで、本実施形態の反射スクリーン10へ入射する映像光及び外光の様子を説明する。
図2(a)に示すように、映像源20から投影された映像光L1は、反射スクリーン10の下方から入射し、表面機能層14及び基材層13を透過してレンズ層11の単位レンズ111へ入射する。
そして、図2(a)に示すように、映像光L1は、レンズ面111aへ入射して反射層12によって反射され、観察者O側の集光点Fへ向かって反射スクリーン10から出射する。なお、非レンズ面111bにも反射層12が形成されているが、角度βは、反射スクリーン10の画面上下方向の各点における映像光L1の入射角度よりも大きく(望ましくは90°)、かつ、映像光L1が反射スクリーン10の下方から投射されるため、映像光L1の反射には影響しない。
一方、照明光等の不要な外光G1は、主として反射スクリーン10の上方から入射し、表面機能層14及び基材層13を透過してレンズ層11の単位レンズ111へ入射する。そして、図2(a)に示すように、外光G1は、レンズ面111aで反射して、主として反射スクリーン10の下方側へ向かうので、観察者O側には直接届かず、また、届いた場合にもその光量は、映像光に比べて大幅に少ない。従って、反射スクリーン10では、外光による映像のコントラスト低下を低減できる。
【0028】
よって、本実施形態の反射スクリーン10によれば、映像光は、レンズ面111aに形成された反射層12によって効率よく観察者O側へ反射でき、かつ、外光は、観察者O側とは異なる方向へ反射されるので、明室環境下であっても、明るく、コントラストの高い良好な映像を表示できる。
【0029】
本実施形態のレンズ層11のサーキュラーフレネルレンズ形状について、以下に詳細に説明する。
図3は、本実施形態の反射スクリーン10及び映像表示システム1の各部の位置を説明する図である。図3(a)は、スクリーン面の法線方向から反射スクリーン10を観察した様子を示し、図3(b)は、反射スクリーン10の画面上下方向に平行かつスクリーン面に直交する断面での各部の位置を示している。なお、図3では、理解を容易にするために、反射スクリーン10及び映像表示システム1は、簡略化して示している。
図3(a)に示すように、反射スクリーン10をスクリーン面(観察面)の法線方向から観察した場合に、映像源20の映像光の投射口の位置する点20aと、この反射スクリーン10の画面の幾何学的中心となる点10aと、レンズ層11のサーキュラーフレネルレンズ形状の光学的中心となる点11aとは、一直線上に位置している。
【0030】
ここで、平面Mを想定する。この平面Mは、反射スクリーン10全体を見たときの平面となるスクリーン面と平行な平面であり、反射スクリーン10の画面に平行な面である。点10a,点20a,点11aから平面M上に下ろした垂線と平面Mとの交点を、それぞれ点C,点A,点Bとし、点C及び点Aを通る直線を直線Tとする。また、反射スクリーン10のスクリーン面の法線方向からみて、直線Tを反射スクリーン10の画面上に投影した直線と反射スクリーン10の画面の映像源20側の辺との交点を点10bとする。点10bは、反射スクリーン10の画面下端の画面左右方向中央に位置する。そして、この点10bから平面M上に下ろした垂線と平面Mとの交点を点Dとする。この点Dは、反射スクリーン10の画面の映像源20側(点A側)の辺上に、直線Tから下ろした垂線と直線Tとの交点である。
【0031】
このとき、点Bは、点C及び点Aを通る直線T上であって、点Dと点Aとの間に位置する。従って、直線T上における点C及び点D間の寸法をS1、点C及び点B間の寸法をS2、点C及び点A間の寸法をS3とするとき、この寸法S1〜S3は、S1<S2<S3という関係を満たしている。
本実施形態では、1.32×S1≦S3≦1.38×S1、S2=1.2×S1であり、寸法S1,S2,S3は、S1<S2<S3を満たしている。
【0032】
ここで、本実施形態の実施例や比較例に相当する4つの測定例(比較例1〜3及び実施例1)の反射スクリーンを用いて、反射スクリーンの画面内の輝度分布の均一性をシミュレーションにより評価した。
実施例1の反射スクリーンは、本実施形態の反射スクリーン10の実施例に相当する反射スクリーンであり、画面サイズが約80インチ(996mm×1771mm)である。
この実施例1の反射スクリーンでは、平面M上における点A,B,Dと点Cとの間の寸法S1〜S3は、S1<S2<S3であり、S2=1.2×S1、S3=1.32×S1である。
また、スクリーン面の法線方向からみて、画面上下方向における反射スクリーン10の画面の下端から映像源20の投射口となる点20aまでの距離S4(S4=S3−S1、図3(a)参照)が159.4mm、スクリーン面の法線方向における反射スクリーン10の観察面側表面から映像源20の投射口となる点20aまでの距離S5(図3(b)参照)が260mmとなる位置に映像源20を配置し、その映像源20から投射された映像光を、画面中心線上(画面上辺中点と画面下辺中点を結ぶ線上)に位置し反射スクリーン10の画面の幾何学的な中心となる点10aを通り、スクリーン面(平面M)に直交する直線Hの観察者O側に3mの位置にある集光点Fへ向けて反射することを想定している。
さらに、実施例1の反射スクリーン10では、単位レンズ111の配列ピッチPが100μm、角度βが90°、レンズ層11は、アクリル系紫外線硬化型樹脂製であり、その屈折率は、1.55であり、基材層13は、PET樹脂製であり、その厚さが100μmである。
【0033】
比較例2,3の反射スクリーンは、フレネルセンターとなる点11aの位置(即ち、平面M上の点Bの位置)が実施例1の反射スクリーンとはそれぞれ異なる点以外は、実施例1の反射スクリーンと略同様の形態である。
比較例2の反射スクリーンの寸法S1〜S3は、S1<S2=S3であり、S2=S3=1.32×S1である。
比較例3の反射スクリーンの寸法S1〜S3は、S1=S2<S3であり、S1=S2、S3=1.32×S1である。
比較例1の反射スクリーンは、フレネルセンターとなる点11aの位置(即ち、平面M上の点Bの位置)に加えて、サーキュラーフレネルレンズの集光点が無限遠である点(即ち、反射された映像光は画面上下方向及び画面左右方向においてスクリーン面の法線方向へ略平行光となって出射する点)が実施例1とは異なっている。比較例1の反射スクリーンにおいて、点A〜Cの位置関係は、寸法S1<S2=S3であり、S2=S3=1.32×S1である。
【0034】
(画面内の輝度分布の均一性)
まず、これらの実施例1及び比較例1〜3の反射スクリーンに対して、S3=1.32×S1を満たす位置に投射口となる点20aを有するように設けられた映像源20から映像光を投射し、集光点F(反射スクリーンのスクリーン面の法線方向であり、映像源側表面から3mの位置)から各反射スクリーンを観察した場合の画面内での輝度の分布を、シミュレーションにより調べた。
【0035】
図4は、実施例1及び比較例1〜3の反射スクリーンの相対輝度について説明する図である。
図4(a)は、反射スクリーン10の画面上の輝度の測定点(点E1〜E6)を示しており、反射スクリーン10のスクリーン面(画面)の法線方向から観察した様子を示している。この測定E1〜E3は、いずれも反射スクリーン10の画面の画面左右方向中央に位置し、画面上下方向においては、点E1は画面上端、点E2は画面中央、点E3は画面下端に位置している。点E2は、画面の幾何学的中心である点10aであり、点E3は点10bである。また、点E4〜E6は、いずれも観察者Oから見て、画面の画面左右方向左端に位置し、画面上下方向においては、点E4は画面上端、点E5は画面中央、点E6は画面下端に位置している。
図4(b)は、各測定点での輝度を示し、図4(b)の縦軸は、相対輝度であり、測定点E2(点10a)での輝度を基準(1.0)としている。
【0036】
図4(b)に示すように、実施例1及び比較例1〜3の反射スクリーンにおいて、測定点E1〜E3での輝度の上下する傾向は、略同様である。また、実施例1及び比較例1〜3の反射スクリーンは、いずれも、測定点E1〜E3の輝度に比べて、測定点E4〜E6での輝度が低下する傾向を有している。
比較例1,2の反射スクリーンでは、実施例1及び比較例3の反射スクリーンに比べて、測定点E4〜E6の輝度が大きく低下している。
比較例1の反射スクリーンでは、測定点E4〜E6(特に点E4)での輝度の低下が大きい。従って、比較例1の反射スクリーンでは、画面左右方向両端での輝度の低下が大きく、画面内での輝度分布の均一性が大きく低下しており、輝度ムラが著しい。これは、比較例1の反射スクリーンでは、反射した映像光の集光点が無限遠となるため、画面の周縁部で反射された光が観察者Oに届く光量が大幅に減るためであると考えられる。
【0037】
また、比較例2の反射スクリーンでは、比較例1の反射スクリーンに比べて測定点E4〜E6での輝度は改善されている。これは、比較例2の反射スクリーンは、反射した映像光の集光点Fを有し、この点Fの位置が測定時の観察者Oの位置に一致しているため、比較例1の反射スクリーンに比べて、画面の周縁部で反射された光が観察者Oに届く光量が増えるからであると考えられる。しかし、比較例1の反射スクリーンに比べて改善はされているが、測定点E6(画面下方左端)での輝度が低下している。従って、比較例2の反射スクリーンでは、画面左右方向両端での輝度の低下に加えて、さらに画面下方両端での輝度が低下しており、輝度分布の均一性が低く、輝度ムラが大きい。
【0038】
これに対して、実施例1及び比較例3の反射スクリーンでは、測定点E4〜E6での輝度は、いずれも相対輝度が0.6以上であり、画面左右方向両端部での輝度の低下は改善されている。また、測定点E4や測定点E6での輝度の低下も生じていない。従って、実施例1及び比較例3の反射スクリーンでは、画面の周縁部における輝度の低下が改善されおり、画面内の輝度分布の均一性が向上し、輝度ムラが低減されている。
従って、以上の結果から、画面内の輝度の均一性の向上の観点では、反射スクリーンは、観察者Oが位置すると想定される位置又は(観察者が最適視聴位置から移動することを考慮すると)その位置よりも反射スクリーンから離れた点に集光点Fを有することが好ましく、また、寸法S2,S3は、S2<S3であることが好ましい。本実施形態では、観察者Oが位置すると想定される点に集光点Fを有しており、また、S2<S3であるので、この好ましい条件を満たしている。
【0039】
(フレネルセンターによる輝度ムラ)
図5は、実施例1及び比較例1〜3の反射スクリーンの画面下端における単位レンズ111の角度αの変化の様子を示している。この図5の縦軸は、角度αであり、横軸は、画面下端において、画面左右方向中央となる点10bを0とし、その点10bからの距離xを示している。ここで、この距離xの負の方向は、観察者Oから見て左側であり、正の方向は、観察者Oから見て右側である。
図5に示すように実施例1及び比較例1〜3の反射スクリーンでは、いずれも画面下端において、画面左右方向両端部の角度αが大きく、画面左右方向中央の点10bに向かうにつれて角度αが小さくなる傾向を有している。
【0040】
実施例1及び比較例1,2の反射スクリーンでは、x=0(点10b)付近での角度αが滑らかな曲線を描いて変化しているが、比較例3の反射スクリーンでは、x=0(点10b)付近での角度αの変化が急峻となっており、x=0において不連続に変化している。これは、比較例3の反射スクリーンでは、S1=S2であり、平面M上で点Dと点Bとが一致している(スクリーン面の法線方向から見て、点10bとフレネルセンターとなる点11aが一致している)ことに起因している。このように、角度αが不連続に変化する場合、不連続な変化を生じる点(フレネルセンターとなる点11a)近傍では、局所的に暗い部分や明るい部分が発生するという局所的な輝度ムラが発生する。
【0041】
また、仮に、S1>S2であり、反射スクリーンの画面内にフレネルセンターとなる点が存在する場合、そのフレネルセンターとなる点よりも映像源20側(画面上下方向下側)に位置する単位レンズ111は、フレネルセンターとなる点よりも画面上下方向上側に位置する単位レンズ111とはレンズ面111aの傾きが逆になる。そのため、好ましい方向に映像光Lを反射することできず、局所的な輝度ムラが発生する。そのため、このような反射スクリーンでは、局所的な輝度ムラがより顕著になる。
従って、フレネルセンターとなる点近傍での上述のような局所的な輝度ムラを防止するという観点から、寸法S1,S2は、S1<S2であることが好ましい。本実施形態では、S1<S2であるので、この好ましい条件を満たしている。
実施例1及び比較例1,2の反射スクリーンは、フレネルセンターとなる点11aが、反射スクリーンの画面外に位置しており、図5に示すように、画面下端での角度αの変化は滑らかに連続的に変化しているので、上述のような局所的な輝度ムラ等の発生を防止でき、輝度ムラを大幅に向上できる。
【0042】
以上のことから、画面内の輝度分布の均一性を高め、局所的な輝度ムラを防止し、画面内の輝度ムラを大幅に低減するという観点から、寸法S1〜S3は、S1<S2<S3であることが好ましい。
実施例1の反射スクリーンでは、S2=1.2×S1かつS3=1.32×S1であり、S1<S2<S3という関係を満たしているので、上述の好ましい範囲を満たしている。従って、実施例の反射スクリーンは、画面内の輝度分布の均一性が高く、輝度ムラを大幅に改善できる。
【0043】
(最大切削半径)
図6は、サーキュラーフレネルレンズ形状を賦形する成形型の最大切削半径を説明する図である。
サーキュラーフレネルレンズ形状を賦形する成形型は、例えば、以下のような製造方法で作成される。まず、図6に示すような円盤状のテーブル100に、円盤状等の成形型の200を配置し、このテーブル100の中心100aと成形型200の中心200aを一致させて固定する。そして、中心100a及び中心200aを通る軸を回転軸として回転させながら、成形型200に所定の形状のバイトを当てて周方向に切削することにより1つの単位レンズ111を賦形する凹型が形成される。そして、このバイトを径方向に移動させながら切削を繰り返すことにより、円盤状の成形型200にサーキュラーフレネルレンズ形状を賦形する型形状が形成される。次に、この円盤状の成形型200を所定のスクリーンサイズに応じた大きさで矩形状に切断することにより、レンズ層11の賦形に使用される型が形成される。なお、この成形型200は、図6では円盤状である例を示したが、こに限らず、矩形状の略平板状の成形型を用いてもよい。
図6には、同一の成形型200から、実施例1のレンズ層11を賦形する型210A及び比較例2のレンズ層を賦形する型210Bを裁断する場合の型の裁断位置を示している。
【0044】
実施例1及び比較例2の反射スクリーンでは、画面サイズが対角80インチであり、画面サイズは共通しているが、寸法S2,S3に関して、実施例1の反射スクリーンは、S2<S3であり、比較例2の反射スクリーンは、S2=S3である。従って、実施例1の反射スクリーンの方が、比較例2の反射スクリーンに比べて、レンズ層11のサーキュラーフレネルレンズ形状のオフセット量(光学的中心(フレネルセンター)となる点11aからのずれ量)が小さい。
そのため、図6に示すように、実施例1の反射スクリーンのレンズ層11を賦形する型210Aの最大切削半径Raに比べて、比較例2の反射スクリーンのレンズ層を賦形する型210Bの最大切削半径Rbの方が大きく、Ra=1409mm、Rb=1456mmである。
また、サーキュラーフレネルレンズ形状の光学的な中心11aからのオフセット量が大きく、S2≧S3となるような反射スクリーンでは、その画面の大きさによっては、図6に示すように、反射スクリーンの画面上端の画面左右方向端部が成形型200の外部に位置する形となり、加工が困難となる場合がある。
従って、寸法S2,S3に関して、本実施形態のように、S2<S3を満たす反射スクリーンとすることにより、S2=S3となる一般的なオフセット構造の反射スクリーンに比べて、成形型の最大切削半径を小さくすることができる。これにより、成形型の加工時間及び作成コストを低減でき、反射スクリーンを安価に提供できる。また、大型の切削加工機の導入が不要となり、設備費用も低減できる。
【0045】
以上のことから、本実施形態によれば、寸法S1〜S3が、S1<S2<S3という関係を満たしており、上述の好ましい範囲を満たしているので、反射スクリーン10及び映像表示システム1は、画面内の輝度分布の均一性が高く、局所的な輝度ムラもない良好な映像を表示できる。
また、本実施形態によれば、映像光Lを観察者Oへ向けて効率よく反射することができ、照明光等の上方から入射する不要な外光が主として反射スクリーン10の下方へ反射されるので、明室環境下においても、外光によるコントラストの低下を大幅に低減し、かつ、明るい映像を表示することができる。
さらに、本実施形態によれば、レンズ層11のサーキュラーフレネルレンズ形状を賦形するための賦形型を作成する際に、単位レンズ111の形状を賦形する凹状の型を切削する最大切削半径を低減でき、安価にかつ容易に賦形型製造を行うことができ、反射スクリーンの精算コストを低減できる。
【0046】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態において、非レンズ面111bは、反射層12が形成される例を示したが、これに限らず、例えば、非レンズ面111b等に光を吸収する作用を有する黒色塗料等を塗布する等により、光吸収層を形成してもよい。このような光吸収層を形成することにより、反射スクリーン10の上方から主として入射する外光や反射スクリーン10内部で発生した迷光を光吸収層により吸収することができ、コントラストの向上効果を高めることができる。
なお、このような光吸収層は、非レンズ面111bに限らず、レンズ面111aの頂点t近傍等の映像光の反射に寄与しない領域等にも形成してもよい。
【0047】
(2)本実施形態において、反射スクリーン10は、基材層13、レンズ層11、反射層12、表面機能層14等を備える例を示したが、これに限らず、例えば、光を拡散させる拡散材を含有した光拡散層や、反射スクリーンの剛性を高め、平面性を維持するためのガラス製や樹脂製の基板層や、コントラストを向上させる着色層、紫外線吸収作用を有する紫外線吸収層、タッチパネル層等をさらに備えた形態としてもよい。また、反射スクリーンの厚み方向において、これらの層を設ける位置に関しては、適宜設定してよい。
【0048】
(3)本実施形態において、反射スクリーン10は、その背面側に設けられた支持板50に不図示の粘着材層等を介して接合されており、略平板状である例を示したが、これに限らず、例えば、支持板50を備えず、反射スクリーン10が粘着材層等を介して不図示の壁面等に接合される形態としてもよいし、支持板50を裏面に接合した状態で壁面に固定されたり、フック等の支持部材で壁面に吊り下げされる形態等としてもよい。
また、本実施形態において、反射スクリーン10は、使用時及び不使用時には略平板状である例を示したが、これに限らず、不使用時には巻き取って保管できる巻き取り可能な形態としてもよい。このような形態の場合には、支持板50等を設けず、反射スクリーン10の背面側を、光を透過しにくい布製又は樹脂製の遮光幕や耐傷性を向上させる保護層等で被覆する形態とすれば、コントラスト向上や、レンズ層や反射層の破損の防止を図ることができる。
【0049】
(4)本実施形態において、単位レンズ111は、図2(a)に示すように、単位レンズ111の配列方向に平行であってスクリーン面に直交する断面において、レンズ面111a及び非レンズ面111bが直線状となる例を示したが、これに限らず、上述の断面において、例えば、レンズ面111aや非レンズ面111bの一部が曲線状となっていてもよい。
また、本実施形態において、単位レンズ111のレンズ面111a及び非レンズ面111bは、いずれも1つの面である例を示したが、これに限らず、例えば、少なくとも一方の面が、複数の面から構成される形態としてもよい。
【0050】
(5)本実施形態において、レンズ層11が基材層13の片面に紫外線成形により一体に形成される例を示したが、これに限らず、例えば、押し出し成形や射出成形等によりレンズ層を形成してもよい。このとき、レンズ層11に十分な厚みがあれば、基材層13を備えない形態としてもよい。また、押し出し成形の場合には、レンズ層11と基材層13と一体に積層した状態で押し出し成形してもよい。このような形態とすることにより、大量生産がさらに容易になり、安価に提供できる。
【0051】
(6)本実施形態において、映像源20は、鉛直方向において反射スクリーン10より下方に位置し、映像光の主たる入射方向は、反射スクリーン10の下方からである例を示したが、これに限らず、例えば、映像源20が、鉛直方向において反射スクリーン10より上方に位置し映像光の主たる入射方向が画面上方側からとしてもよい。このとき、反射スクリーン10は、図2等に示すレンズ層11のサーキュラーフレネルレンズ形状を上下反転させた形態とすればよい。
【0052】
(7)本実施形態において、反射スクリーン10と映像源20とを備える一般的な映像表示システム1を示したが、これに限らず、例えば、さらに、パーソナルコンピュータ等の制御部や、使用者が触れた反射スクリーン10の画面上の位置を検出する位置検出装置を備え、位置検出装置及び映像源をパーソナルコンピュータ等の制御部と通信可能としたインタラクティブボードシステムとしてもよい。このような形態とすれば、例えば、使用者が反射スクリーン10の画面上にタッチペンや指等により描画した文字や図形等の情報を、投影画像と組み合わせ、図形や文字等が投影画像上に描かれたように表示したり、それらの情報を含む投影画像等をデータ化して保存したりすることができる。
また、反射スクリーン10は、一般的なホワイトボード等のように、マーカー等の所定の筆記具を用いてその表面(観察面)に手書きで文字や図形等の情報を描画したり、描画した文字等を消去したりすることができる形態としてもよい。
【0053】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0054】
1 映像表示システム
10 反射スクリーン
11 レンズ層
111 単位レンズ
111a レンズ面
111b 非レンズ面
12 反射層
13 基材層
14 表面機能層
20 映像源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投射された映像光を反射して観察可能に表示する反射スクリーンであって、
レンズ面と非レンズ面とを有し、背面側に凸となる単位レンズが該反射スクリーンのスクリーン面に沿って複数配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層と、
少なくとも前記単位レンズの前記レンズ面に形成され、光を反射する反射層と、
を備え、
この反射スクリーンをスクリーン面の法線方向から見たとき、
スクリーン面に平行な平面上において、前記映像源の映像光の投射口となる点が位置する点を点A、この反射スクリーンの画面の幾何学的中心となる点が位置する点を点C、前記点A及び前記点Cを通る直線を直線T、前記画面の前記点A側の辺上に前記直線Tから下ろした垂線と前記直線Tとの交点を点Dとすると、
前記平面上において、前記サーキュラーフレネルレンズ形状の光学的中心となる点が位置する点Bは、前記直線T上に位置し、
前記直線T上において、前記点C及び前記点D間の寸法S1、前記点C及び前記点B間の寸法S2、前記点C及び前記点A間の寸法S3は、
S1<S2<S3
という関係を満たすこと、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
前記単位レンズは、前記非レンズ面の少なくとも一部に光を吸収する光吸収層が形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンと、
前記反射スクリーンに対して映像光を投射する映像源と、
を備える映像表示システムであって、
前記映像源は、短焦点型プロジェクタであること、
を特徴とする映像表示システム。
【請求項4】
請求項3に記載の映像表示システムにおいて、
前記反射スクリーンは、前記映像源から投影された映像光を、前記画面の幾何学的な中心となる点を通りスクリーン面に直交する直線上に位置する集光点に向けて反射し、
前記集光点は、前記反射スクリーンの映像源側表面から映像源側に2〜20mとなる位置にあること、
を特徴とする映像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−252057(P2012−252057A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122572(P2011−122572)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】