反射スクリーン
【課題】外光の存在下にあってもコントラストの高い画像を映し出す反射スクリーンを提供する。
【解決手段】スクリーン基板10の観察面100aの法線に対して垂直方向にずれた方向から観察面100aに向けて斜めに投射された投影光Lpを、観察面100a側に反射する反射スクリーン100であって、スクリーン基板10の垂直方向および水平方向に複数の凹部11または凸部が形成され、凹部11または凸部は、投影光Lpを反射する投影光反射面12と、外光Loを吸収する外光吸収面13と、を備え、外光吸収面13の表面粗さより投影光反射面12の表面粗さが滑らかである。
【解決手段】スクリーン基板10の観察面100aの法線に対して垂直方向にずれた方向から観察面100aに向けて斜めに投射された投影光Lpを、観察面100a側に反射する反射スクリーン100であって、スクリーン基板10の垂直方向および水平方向に複数の凹部11または凸部が形成され、凹部11または凸部は、投影光Lpを反射する投影光反射面12と、外光Loを吸収する外光吸収面13と、を備え、外光吸収面13の表面粗さより投影光反射面12の表面粗さが滑らかである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光を入射させて用いる反射スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターなどから出射される投影光を受け、その投影光を反射させて拡大画像を映し出す反射スクリーンが知られている。その中で、近接型プロジェクター用の反射スクリーンとして、スクリーン基板の観察面に複数の凸部を形成し、凸部の単位形状部において投影光を反射させる反射面と、外光を吸収する光吸収層とを設けた反射スクリーンが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−215162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近接型プロジェクター用の反射スクリーンでは室内の照明などの外光が存在する中において使用されるため、外光の存在下にあっても、さらにコントラストの高い画像を映し出す反射スクリーンが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる反射スクリーンは、スクリーン基板の観察面の法線に対して垂直方向にずれた方向から前記観察面に向けて斜めに投射された投影光を、観察面側に反射する反射スクリーンであって、前記スクリーン基板の垂直方向および水平方向に複数の凹部または凸部が形成され、前記凹部または凸部は、投影光を反射する投影光反射面と、外光を吸収する外光吸収面と、を備え、前記外光吸収面の表面粗さより前記投影光反射面の表面粗さが滑らかであることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、反射スクリーンにおける外光吸収面の表面粗さより投影光反射面の表面粗さが滑らかである。換言すれば、投影光反射面の表面粗さより外光吸収面の表面粗さが粗く形成されている。
このようにすれば、投影光反射面の平滑面で投影光を反射し、外光吸収面の粗面で外光を充分に吸収でき、室内の照明などの外光が存在する中においても、コントラストの高い画像を映し出す反射スクリーンを得ることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる反射スクリーンにおいて、前記外光吸収面の表面粗さRaが、82nm以上、5000nm以下であることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、外光吸収面の表面粗さRaが、82nm以上、5000nm以下であることから、外光吸収面の表面が粗いため光を効率よく吸収することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる反射スクリーンにおいて、前記投影光反射面の表面粗さRaが、10nm以上、274nm以下であることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、投影光反射面の表面粗さRaが、10nm以上、274nm以下であることから、投影光反射面の表面が滑らかであり、効率よく投影光を反射することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる反射スクリーンにおいて、前記投影光反射面が曲面であることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、投影光反射面が曲面であることからプロジェクターなどの光源からの投影光を反射スクリーンの観察面側に効率よく反射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態にかかる反射スクリーンと光源との位置関係を示す断面図。
【図2】本実施形態における反射スクリーンの正面図。
【図3】本実施形態におけるスクリーン基板に形成された凹部の形状を示し、図2のA部拡大図。
【図4】本実施形態における反射スクリーンの垂直方向の断面を示す概略断面図。
【図5】ブラスト粒子と光の反射率との関係を示すグラフ。
【図6】サンドブラスト加工した表面にAl(アルミニウム)膜を成膜したときのブラスト粒子と光の反射率との関係を示すグラフ。
【図7】ブラスト粒子と加工された表面粗さとの関係を示す表。
【図8】本実施形態における反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【図9】本実施形態における反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【図10】本実施形態における他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【図11】本実施形態における他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【図12】本実施形態における他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。また、以下の説明においては直交座標系を設定して各部材の位置関係について説明する。鉛直面内における所定方向をX軸方向、鉛直面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向をZ軸方向とする。
(実施形態)
【0016】
<反射スクリーンの構成>
図1は本実施形態にかかる反射スクリーンと光源との位置関係を示す断面図である。また、図2は本実施形態における反射スクリーンの正面図である。
図1、図2に示すように、反射スクリーン100は、反射スクリーン100の観察面100aの中心点Cを通る法線NLに対して垂直方向(Y軸方向)にずれた位置に配置された光源Pから、観察面100aに向けて斜めに投射された投影光Lpを、反射スクリーン100の観察面側(Z軸正方向側)に反射するものである。そして、反射スクリーン100は、法線NLがZ軸と平行に配置されている。
スクリーン基板10は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂を用いて形成され可撓性を有している。また、スクリーン基板10は、例えば、染色等によって全体が黒色の光吸収材によって着色され、可視光を吸収可能に形成されている。
【0017】
また、反射スクリーン100はスクリーン基板10の観察面100a側に凹部が複数備えられている。
図3はスクリーン基板に形成された凹部の形状を示し、図2のA部拡大図である。図4は反射スクリーンの垂直方向の断面を示す断面図であり、図3のB−B断線に沿う概略断面図である。
【0018】
スクリーン基板10には凹部11が格子状にそれぞれが互いに接して配置されている。凹部11の半球の直径としては例えば20μm〜200μm程度に形成されている。
凹部11は、図3、図4に示すように、半球状に形成され投影光を反射する投影光反射面12と、外光を吸収する外光吸収面13を備えている。
この投影光反射面12には効率よく投影光を反射させるために、投影光反射面12の少なくとも一部にアルミニウム(Al)等の反射性を有する材料によって、反射膜16が形成されている。反射膜16はスパッタ法または蒸着法により膜厚が10nm〜5μmとなるように成膜されている。
【0019】
そして、凹部11の投影光反射面12を除き、照明光などの外光が入射する部分に外光吸収面13が形成されている。
この外光吸収面13は、スクリーン基板10の基材を黒色にすること、または凹部11の内壁面にブラックカーボン粉末などの光吸収性材料を塗布するなどの方法にて、光を吸収できるように構成されている。
【0020】
また、スクリーン基板10における外光吸収面13の表面粗さRaより投影光反射面12の表面粗さRaが滑らかである。換言すれば、投影光反射面12の表面粗さRaより外光吸収面13の表面粗さRaが粗く形成されている。
例えば、外光吸収面13の表面粗さRaは、82nm以上、5000nm以下に形成され、投影光反射面12の表面粗さRaは、10nm以上、274nm以下に形成されている。
なお、表面粗さRaは本願では中心線平均粗さのことをいう。
【0021】
さらに、図示しないが、スクリーン基板10の観察面上には、凹部11を充填するように保護層が形成されても良い。保護層は、例えば、樹脂などの可撓性を有する材料で形成することができる。
そして、保護層の上でスクリーン基板10の観察面側の最表面には、反射防止膜が形成されても良い。反射防止膜は、保護層と同様な材料で形成され、保護層の表面での投影光または外光などの反射を防止するように保護層との間で屈折率が調整されていることが好ましい。
【0022】
<表面粗さと光の反射率の関係>
次に、凹部の表面粗さと光の反射率の関係について考察する。
ここでは、ガラス基板に粒子径の異なる研磨材を用いてサンドブラスト加工を行い、その表面をスクリーン基板の材料であるポリ塩化ビニル(PVC)シートに転写して、その表面粗さと光の反射率との関係を調査した。
研磨材の種類としてはWA(白色アルミナ質研磨材)を用いた。ブラスト粒子としての研磨材の水準としては、WA#600、WA#800、WA#1000、WA#2000、WA#3000、WA#4000、の6種類の番手にて調査を行い、また、サンドブラスト加工なしの水準についても調査を行った。
【0023】
図5はブラスト粒子と光の反射率との関係を示すグラフである。図6はサンドブラスト加工した表面にAl(アルミニウム)膜を成膜したときのブラスト粒子と光の反射率との関係を示すグラフである。図7はブラスト粒子と加工された表面粗さとの関係を示す表である。
【0024】
図5に示すように、ブラスト粒子としてWA#600、WA#800、WA#1000、WA#2000、を用いて加工したものは光の反射率は0.5%以下であり、光の反射が小さいことがわかる。このときの、スクリーン基板の表面粗さRaは、図7より1148nm〜274nmである。
そして、ブラスト粒子がWA#3000、WA#4000、と研磨材の粒子が細かくなるに従い反射率は向上する。WA#3000を用いた加工面で反射率は約0.8%、表面粗さRaは82nmであり、WA#4000を用いた加工面で反射率は約2.5%、表面粗さRaは33nmである。
【0025】
また、サンドブラスト加工を行わないスクリーン基板の転写表面は、後述する反射スクリーンの製造方法における転写型の表面状態が転写されており、平滑な面が得られている。この面では光の反射率は約4.2%、表面粗さRaは36nmである。
このように、研磨材が粗くなるに従い加工面における光の反射率が低下していき、WA#2000の加工面である表面粗さRaが274nm以下で反射率は平衡状態となる。
【0026】
光の反射率の低い表面を外光吸収面として利用すれば、光の吸収が充分に行われる。例えば、光の反射率を1.0%以下とすれば、WA#3000より粗い研磨材を用いて表面を加工すればよい。表面粗さRaとしては82nm以上であり、すりガラスの表面粗さである5000nm以下が好ましい。
【0027】
次に、図6に示すように、サンドブラスト加工した転写表面にAl膜を成膜すると光の反射率は格段に向上する。
ブラスト粒子としてWA#600、WA#800、WA#1000、WA#2000、を用いて加工したものは光の反射率は10%以下であり、光の反射が小さいことがわかる。このときの、スクリーン基板の表面粗さRaは、図7より1148nm〜274nmである。
そして、ブラスト粒子がWA#3000、WA#4000、と研磨材の粒子が細かくなるに従い反射率は向上する。WA#3000を用いた加工面で反射率は約14%、表面粗さRaは82nmであり、WA#4000を用いた加工面で反射率は約32%、表面粗さRaは33nmである。
【0028】
また、サンドブラスト加工を行わないスクリーン基板の転写表面では光の反射率は約86%、表面粗さRaは36nmである。
このように、研磨材の粒子が細かくなるに従い加工面における光の反射率が向上していき、WA#2000(表面粗さRaは274nm)とWA#3000(表面粗さRaは82nm)の間に反射率を向上させる臨界点があると考えられる。
【0029】
光の反射率の高い表面を投影光反射面として利用すれば、光の反射が充分に行われる。例えば、投影光反射面としてWA#2000より細かい研磨材を用いて表面を加工すればよい。このときの表面粗さRaとしては274nm以下であり、ガラスのポリッシュ面の表面粗さである10nm以上が好ましい。
さらに好ましくは、WA#3000の加工面である表面粗さRaが82nm以下であり、ガラスのポリッシュ面の表面粗さである10nm以上が好ましい。
【0030】
<反射スクリーンの作用>
次に、反射スクリーンの作用について説明する。
図1で説明したように、反射スクリーン100の観察面100aの中心点Cを通る法線NLに対して垂直方向(Y軸方向)にずれた位置に配置されたプロジェクターなどの光源Pから、観察面100aに向けて斜めに投影光Lpが投射され、反射スクリーン100に映像が映しだされる。
【0031】
このような、観察面100aに対して斜めに入射した投影光Lpは、図4に示すように、凹部11内に形成された投影光反射面12に入射する。投影光反射面12の一部には反射膜16が形成されており、投影光Lpは反射スクリーン100の観察側に反射光Lrが反射される。なお、投影光Lpは凹部11の縁に遮られて、投影光反射面12の全面には投影光Lpは入射しない。
【0032】
一方、反射スクリーン100の観察面には、投影光Lpのほかに反射スクリーン100の上方から外光Loが入射する。観察面に入射した外光Loは、凹部11の外光吸収面13に入射する。そして、凹部11の外光吸収面13に到達した外光Loは外光吸収面13に吸収される。なお、外光は凹部11の縁に遮られて、投影光反射面12に入射することはない。
【0033】
本実施形態の反射スクリーン100は、凹部11における外光吸収面13の表面粗さより投影光反射面12の表面粗さが滑らかに形成されている。換言すれば、投影光反射面12の表面粗さより外光吸収面13の表面粗さが粗く形成されている。
このため、投影光反射面12の平滑面で投影光Lpを反射し、外光吸収面13の粗面で外光Loを充分に吸収でき、室内の照明などの外光Loが存在する中においても、コントラストの高い画像を映し出す反射スクリーン100を得ることができる。
【0034】
<反射スクリーンの製造方法1>
次に上記のような構成の反射スクリーンの製造方法の一例について説明する。
図8、図9は反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図である。
図8(a)に示すように、ソーダガラスなどのガラス基板20の上にマスク21を形成する。マスク21は、酸化クロム(CrO)膜を下地として、その上にクロム(Cr)膜をスパッタ法などにより成膜したものである。なお、マスク21を成膜する前に、ガラス基板20の表面をサンドブラスト加工し、ガラス基板20の表面を粗く形成してマスク21の密着力を向上させてもよい。
そして、マスク21に対して凹部を形成する位置に数μm程度の開口部22を形成する。開口部22はフォトエッチングまたはレーザー加工を用いて形成する。
【0035】
次に、図8(b)に示すように、マスク21に開口部22が形成されたガラス基板20をエッチング液に所定の時間だけ浸漬して、ガラス基板20に半球状の半球凹部23を形成する。エッチング液により開口部22を介してガラス基板20が等方にエッチングされ、断面形状がほぼ半球状にエッチングされる。
エッチング液としては、一水素二フッ化アンモニウム系のエッチング液が用いられる。
続いて、ガラス基板20からマスク21を剥離する。そして、図8(c)に示すように、ガラス基板20の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、半球凹部23の一部にAl膜などの保護膜24を成膜する。
【0036】
次に、図9(a)に示すように、サンドブラスト装置25を用いて、半球凹部23内をブラスト加工する。ブラスト粒子として、例えばWA#1000の研磨材が用いられる。半球凹部23内の一部には保護膜24形成されていることから、保護膜24が形成されていない部分がブラスト加工されて、表面が粗く加工される。
なお、蒸着やスパッタリングにより形成される保護膜24がサンドブラスト加工に対して耐えられない場合には、保護膜24の上にめっきを施して、保護膜24の厚みを増しても良い。
そして、ガラス基板20から保護膜24を剥離して、ガラス基板20は元転写型として完成する。
【0037】
次に、図9(b)に示すように、元転写型としてのガラス基板20を用いて、ニッケル(Ni)などの金属材料で電鋳型28を製作する。
続いて、図9(c)に示すように、電鋳型28の形状をポリ塩化ビニル(PVC)シートなどのスクリーン基板10に熱および圧力を加えて転写する。このようにして、スクリーン基板10に凹部11が形成され、凹部11には表面が粗く形成された外光吸収面13と表面が滑らかに形成された投影光反射面12とが備えられる。
ここではスクリーン基板10は光吸収材料を含む黒色のポリ塩化ビニル(PVC)シートが用いられる。
【0038】
そして、図9(d)に示すように、凹部11の投影光反射面12にアルミニウム(Al)膜などの反射膜16を形成する。反射膜16は、スクリーン基板10の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、凹部11の投影光反射面12に成膜することができる。なお、反射材料を凹部11にスプレーして反射膜を形成してもよい。
【0039】
このようにして、反射スクリーンが製作されるが、さらに、スクリーン基板10の凹部11を充填するように樹脂などの可撓性を有する材料で保護層を形成し、その上に反射防止膜を形成しても良い。
また、上記の反射スクリーンの製造方法では元転写型としてのガラス基板20を用いて電鋳型を形成したが、このガラス基板20を用いて樹脂転写によって樹脂型を形成し、この樹脂型から光硬化性樹脂を用いた2P転写法によりポリエチレンテレフタートシート(PETシート)またはポリ塩化ビニル(PVC)シートに形状を転写しても良い。
【0040】
<反射スクリーンの製造方法2>
本製造方法は、上記製造工程の図8で説明した工程以降が異なる。そのため、図8以降の工程について説明する。
図10は他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図である。
図8(c)で得られたガラス基板20には半球凹部23の一部にAl膜などの保護膜24が形成されている。なお、この保護膜24の上に、緻密なめっき層を設けても良い。
このガラス基板20を用いて、図10(a)に示すように、ニッケル(Ni)などの金属材料で電鋳型31を製作する。そして、図10(b)に示すように、ガラス基板20から電鋳型31を剥離する。この電鋳型31はポーラス(多孔質)状の電鋳にて製作することで、保護膜24を設けた部分を除き、電鋳型31の表面は凹凸を有することになる。
【0041】
続いて、図10(c)に示すように、電鋳型31の形状をポリ塩化ビニル(PVC)シートなどのスクリーン基板110に熱および圧力を加えて転写する。このようにして、スクリーン基板110に凹部111が形成され、凹部111には表面が粗く形成された外光吸収面113と表面が滑らかに形成された投影光反射面112とが備えられる。
ここではスクリーン基板110は光吸収材料を含む黒色のポリ塩化ビニル(PVC)シートが用いられる。
【0042】
そして、図10(d)に示すように、凹部111の投影光反射面112にアルミニウム(Al)膜などの反射膜116を形成する。反射膜116は、スクリーン基板110の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、凹部111の投影光反射面112に成膜することができる。なお、反射材料を凹部111にスプレーして反射膜を形成してもよい。
【0043】
このようにして、反射スクリーンが製作されるが、さらに、スクリーン基板110の凹部111を充填するように樹脂などの可撓性を有する材料で保護層を形成し、その上に反射防止膜を形成しても良い。
【0044】
<反射スクリーンの製造方法3>
上記の反射スクリーンの製造方法1および2は、成形型を粗面加工し、その型をスクリーン基板に転写する製造方法であるが、次に反射スクリーンを粗面加工する製造方法について説明する。
図11、図12は他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図である。
図11(a)に示すように、ガラス基板20の上にマスク21を形成する。そして、マスク21に対して凹部を形成する位置に数μm程度の開口部22を形成する。開口部22はフォトエッチングまたはレーザー加工を用いて形成する。
次に、図11(b)に示すように、マスク21に開口部22が形成されたガラス基板20をエッチング液に所定の時間だけ浸漬して、ガラス基板20に半球状の半球凹部23を形成する。エッチング液により開口部22を介してガラス基板20が等方にエッチングされ、断面形状がほぼ半球状にエッチングされる。
続いて、ガラス基板20からマスク21を剥離する。そして、図11(c)に示すように、ガラス基板20を元転写型としてニッケル(Ni)などの金属材料で電鋳型32を製作する。
続いて、図11(d)に示すように、電鋳型32の形状をポリ塩化ビニル(PVC)シートなどのスクリーン基板120に熱および圧力を加えて転写する。ここではスクリーン基板120は光吸収材料を含む黒色のポリ塩化ビニル(PVC)シートが用いられる。
【0045】
そして、図12(a)に示すように、スクリーン基板120の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、凹部121の一部にアルミニウム(Al)膜などの保護膜124を成膜する。
次に、図12(b)に示すように、サンドブラスト装置25を用いて、凹部121内をブラスト加工する。ブラスト粒子として、例えばWA#1000の研磨材が用いられる。凹部121内の一部には保護膜124形成されていることから、保護膜124が形成されていない部分がブラスト加工されて、表面が粗く加工される。
【0046】
そして、保護膜124を剥離し、図12(c)に示すように、凹部121の投影光反射面122にアルミニウム(Al)膜などの反射膜126を形成する。反射膜126は、スクリーン基板120の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、凹部121の投影光反射面122に成膜することができる。なお、反射材料を凹部121にスプレーして反射膜を形成してもよい。
このようにして、スクリーン基板120に凹部121が形成され、凹部121には表面が粗く形成された外光吸収面123と表面が滑らかに形成された投影光反射面122とが備えられる。
【0047】
また、他の製造方法として、図11(d)で示した、電鋳型32の形状を転写したスクリーン基板120を用いて、凹部121の一部にアクリル系などの塗料を塗布し、表面を滑らかにすることができる。この塗料を塗布した面に反射膜を形成して、投影光反射面としても良い。
【0048】
以上、上記の実施形態では、凹部内に投影光を反射する投影光反射面と、外光を吸収する外光吸収面を設けたが、凸部に投影光を反射する投影光反射面と、外光を吸収する外光吸収面を設ける構成としてもよい。また、上記の実施形態では外光吸収面を曲面で形成したが、曲面以外の平面などであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…スクリーン基板、11…凹部、12…投影光反射面、13…外光吸収面、16…反射膜、20…ガラス基板、21…マスク、22…開口部、23…半球凹部、24…保護膜、25…サンドブラスト装置、28…電鋳型、31,32…電鋳型、100…反射スクリーン、100a…観察面、110…スクリーン基板、111…凹部、112…投影光反射面、113…外光吸収面、116…反射膜、120…スクリーン基板、121…凹部、122…投影光反射面、123…外光吸収面、124…保護膜、126…反射膜、Lo…外光、Lp…投影光、Lr…反射光、P…光源。
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光を入射させて用いる反射スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターなどから出射される投影光を受け、その投影光を反射させて拡大画像を映し出す反射スクリーンが知られている。その中で、近接型プロジェクター用の反射スクリーンとして、スクリーン基板の観察面に複数の凸部を形成し、凸部の単位形状部において投影光を反射させる反射面と、外光を吸収する光吸収層とを設けた反射スクリーンが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−215162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近接型プロジェクター用の反射スクリーンでは室内の照明などの外光が存在する中において使用されるため、外光の存在下にあっても、さらにコントラストの高い画像を映し出す反射スクリーンが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる反射スクリーンは、スクリーン基板の観察面の法線に対して垂直方向にずれた方向から前記観察面に向けて斜めに投射された投影光を、観察面側に反射する反射スクリーンであって、前記スクリーン基板の垂直方向および水平方向に複数の凹部または凸部が形成され、前記凹部または凸部は、投影光を反射する投影光反射面と、外光を吸収する外光吸収面と、を備え、前記外光吸収面の表面粗さより前記投影光反射面の表面粗さが滑らかであることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、反射スクリーンにおける外光吸収面の表面粗さより投影光反射面の表面粗さが滑らかである。換言すれば、投影光反射面の表面粗さより外光吸収面の表面粗さが粗く形成されている。
このようにすれば、投影光反射面の平滑面で投影光を反射し、外光吸収面の粗面で外光を充分に吸収でき、室内の照明などの外光が存在する中においても、コントラストの高い画像を映し出す反射スクリーンを得ることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる反射スクリーンにおいて、前記外光吸収面の表面粗さRaが、82nm以上、5000nm以下であることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、外光吸収面の表面粗さRaが、82nm以上、5000nm以下であることから、外光吸収面の表面が粗いため光を効率よく吸収することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる反射スクリーンにおいて、前記投影光反射面の表面粗さRaが、10nm以上、274nm以下であることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、投影光反射面の表面粗さRaが、10nm以上、274nm以下であることから、投影光反射面の表面が滑らかであり、効率よく投影光を反射することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる反射スクリーンにおいて、前記投影光反射面が曲面であることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、投影光反射面が曲面であることからプロジェクターなどの光源からの投影光を反射スクリーンの観察面側に効率よく反射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態にかかる反射スクリーンと光源との位置関係を示す断面図。
【図2】本実施形態における反射スクリーンの正面図。
【図3】本実施形態におけるスクリーン基板に形成された凹部の形状を示し、図2のA部拡大図。
【図4】本実施形態における反射スクリーンの垂直方向の断面を示す概略断面図。
【図5】ブラスト粒子と光の反射率との関係を示すグラフ。
【図6】サンドブラスト加工した表面にAl(アルミニウム)膜を成膜したときのブラスト粒子と光の反射率との関係を示すグラフ。
【図7】ブラスト粒子と加工された表面粗さとの関係を示す表。
【図8】本実施形態における反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【図9】本実施形態における反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【図10】本実施形態における他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【図11】本実施形態における他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【図12】本実施形態における他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。また、以下の説明においては直交座標系を設定して各部材の位置関係について説明する。鉛直面内における所定方向をX軸方向、鉛直面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向をZ軸方向とする。
(実施形態)
【0016】
<反射スクリーンの構成>
図1は本実施形態にかかる反射スクリーンと光源との位置関係を示す断面図である。また、図2は本実施形態における反射スクリーンの正面図である。
図1、図2に示すように、反射スクリーン100は、反射スクリーン100の観察面100aの中心点Cを通る法線NLに対して垂直方向(Y軸方向)にずれた位置に配置された光源Pから、観察面100aに向けて斜めに投射された投影光Lpを、反射スクリーン100の観察面側(Z軸正方向側)に反射するものである。そして、反射スクリーン100は、法線NLがZ軸と平行に配置されている。
スクリーン基板10は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂を用いて形成され可撓性を有している。また、スクリーン基板10は、例えば、染色等によって全体が黒色の光吸収材によって着色され、可視光を吸収可能に形成されている。
【0017】
また、反射スクリーン100はスクリーン基板10の観察面100a側に凹部が複数備えられている。
図3はスクリーン基板に形成された凹部の形状を示し、図2のA部拡大図である。図4は反射スクリーンの垂直方向の断面を示す断面図であり、図3のB−B断線に沿う概略断面図である。
【0018】
スクリーン基板10には凹部11が格子状にそれぞれが互いに接して配置されている。凹部11の半球の直径としては例えば20μm〜200μm程度に形成されている。
凹部11は、図3、図4に示すように、半球状に形成され投影光を反射する投影光反射面12と、外光を吸収する外光吸収面13を備えている。
この投影光反射面12には効率よく投影光を反射させるために、投影光反射面12の少なくとも一部にアルミニウム(Al)等の反射性を有する材料によって、反射膜16が形成されている。反射膜16はスパッタ法または蒸着法により膜厚が10nm〜5μmとなるように成膜されている。
【0019】
そして、凹部11の投影光反射面12を除き、照明光などの外光が入射する部分に外光吸収面13が形成されている。
この外光吸収面13は、スクリーン基板10の基材を黒色にすること、または凹部11の内壁面にブラックカーボン粉末などの光吸収性材料を塗布するなどの方法にて、光を吸収できるように構成されている。
【0020】
また、スクリーン基板10における外光吸収面13の表面粗さRaより投影光反射面12の表面粗さRaが滑らかである。換言すれば、投影光反射面12の表面粗さRaより外光吸収面13の表面粗さRaが粗く形成されている。
例えば、外光吸収面13の表面粗さRaは、82nm以上、5000nm以下に形成され、投影光反射面12の表面粗さRaは、10nm以上、274nm以下に形成されている。
なお、表面粗さRaは本願では中心線平均粗さのことをいう。
【0021】
さらに、図示しないが、スクリーン基板10の観察面上には、凹部11を充填するように保護層が形成されても良い。保護層は、例えば、樹脂などの可撓性を有する材料で形成することができる。
そして、保護層の上でスクリーン基板10の観察面側の最表面には、反射防止膜が形成されても良い。反射防止膜は、保護層と同様な材料で形成され、保護層の表面での投影光または外光などの反射を防止するように保護層との間で屈折率が調整されていることが好ましい。
【0022】
<表面粗さと光の反射率の関係>
次に、凹部の表面粗さと光の反射率の関係について考察する。
ここでは、ガラス基板に粒子径の異なる研磨材を用いてサンドブラスト加工を行い、その表面をスクリーン基板の材料であるポリ塩化ビニル(PVC)シートに転写して、その表面粗さと光の反射率との関係を調査した。
研磨材の種類としてはWA(白色アルミナ質研磨材)を用いた。ブラスト粒子としての研磨材の水準としては、WA#600、WA#800、WA#1000、WA#2000、WA#3000、WA#4000、の6種類の番手にて調査を行い、また、サンドブラスト加工なしの水準についても調査を行った。
【0023】
図5はブラスト粒子と光の反射率との関係を示すグラフである。図6はサンドブラスト加工した表面にAl(アルミニウム)膜を成膜したときのブラスト粒子と光の反射率との関係を示すグラフである。図7はブラスト粒子と加工された表面粗さとの関係を示す表である。
【0024】
図5に示すように、ブラスト粒子としてWA#600、WA#800、WA#1000、WA#2000、を用いて加工したものは光の反射率は0.5%以下であり、光の反射が小さいことがわかる。このときの、スクリーン基板の表面粗さRaは、図7より1148nm〜274nmである。
そして、ブラスト粒子がWA#3000、WA#4000、と研磨材の粒子が細かくなるに従い反射率は向上する。WA#3000を用いた加工面で反射率は約0.8%、表面粗さRaは82nmであり、WA#4000を用いた加工面で反射率は約2.5%、表面粗さRaは33nmである。
【0025】
また、サンドブラスト加工を行わないスクリーン基板の転写表面は、後述する反射スクリーンの製造方法における転写型の表面状態が転写されており、平滑な面が得られている。この面では光の反射率は約4.2%、表面粗さRaは36nmである。
このように、研磨材が粗くなるに従い加工面における光の反射率が低下していき、WA#2000の加工面である表面粗さRaが274nm以下で反射率は平衡状態となる。
【0026】
光の反射率の低い表面を外光吸収面として利用すれば、光の吸収が充分に行われる。例えば、光の反射率を1.0%以下とすれば、WA#3000より粗い研磨材を用いて表面を加工すればよい。表面粗さRaとしては82nm以上であり、すりガラスの表面粗さである5000nm以下が好ましい。
【0027】
次に、図6に示すように、サンドブラスト加工した転写表面にAl膜を成膜すると光の反射率は格段に向上する。
ブラスト粒子としてWA#600、WA#800、WA#1000、WA#2000、を用いて加工したものは光の反射率は10%以下であり、光の反射が小さいことがわかる。このときの、スクリーン基板の表面粗さRaは、図7より1148nm〜274nmである。
そして、ブラスト粒子がWA#3000、WA#4000、と研磨材の粒子が細かくなるに従い反射率は向上する。WA#3000を用いた加工面で反射率は約14%、表面粗さRaは82nmであり、WA#4000を用いた加工面で反射率は約32%、表面粗さRaは33nmである。
【0028】
また、サンドブラスト加工を行わないスクリーン基板の転写表面では光の反射率は約86%、表面粗さRaは36nmである。
このように、研磨材の粒子が細かくなるに従い加工面における光の反射率が向上していき、WA#2000(表面粗さRaは274nm)とWA#3000(表面粗さRaは82nm)の間に反射率を向上させる臨界点があると考えられる。
【0029】
光の反射率の高い表面を投影光反射面として利用すれば、光の反射が充分に行われる。例えば、投影光反射面としてWA#2000より細かい研磨材を用いて表面を加工すればよい。このときの表面粗さRaとしては274nm以下であり、ガラスのポリッシュ面の表面粗さである10nm以上が好ましい。
さらに好ましくは、WA#3000の加工面である表面粗さRaが82nm以下であり、ガラスのポリッシュ面の表面粗さである10nm以上が好ましい。
【0030】
<反射スクリーンの作用>
次に、反射スクリーンの作用について説明する。
図1で説明したように、反射スクリーン100の観察面100aの中心点Cを通る法線NLに対して垂直方向(Y軸方向)にずれた位置に配置されたプロジェクターなどの光源Pから、観察面100aに向けて斜めに投影光Lpが投射され、反射スクリーン100に映像が映しだされる。
【0031】
このような、観察面100aに対して斜めに入射した投影光Lpは、図4に示すように、凹部11内に形成された投影光反射面12に入射する。投影光反射面12の一部には反射膜16が形成されており、投影光Lpは反射スクリーン100の観察側に反射光Lrが反射される。なお、投影光Lpは凹部11の縁に遮られて、投影光反射面12の全面には投影光Lpは入射しない。
【0032】
一方、反射スクリーン100の観察面には、投影光Lpのほかに反射スクリーン100の上方から外光Loが入射する。観察面に入射した外光Loは、凹部11の外光吸収面13に入射する。そして、凹部11の外光吸収面13に到達した外光Loは外光吸収面13に吸収される。なお、外光は凹部11の縁に遮られて、投影光反射面12に入射することはない。
【0033】
本実施形態の反射スクリーン100は、凹部11における外光吸収面13の表面粗さより投影光反射面12の表面粗さが滑らかに形成されている。換言すれば、投影光反射面12の表面粗さより外光吸収面13の表面粗さが粗く形成されている。
このため、投影光反射面12の平滑面で投影光Lpを反射し、外光吸収面13の粗面で外光Loを充分に吸収でき、室内の照明などの外光Loが存在する中においても、コントラストの高い画像を映し出す反射スクリーン100を得ることができる。
【0034】
<反射スクリーンの製造方法1>
次に上記のような構成の反射スクリーンの製造方法の一例について説明する。
図8、図9は反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図である。
図8(a)に示すように、ソーダガラスなどのガラス基板20の上にマスク21を形成する。マスク21は、酸化クロム(CrO)膜を下地として、その上にクロム(Cr)膜をスパッタ法などにより成膜したものである。なお、マスク21を成膜する前に、ガラス基板20の表面をサンドブラスト加工し、ガラス基板20の表面を粗く形成してマスク21の密着力を向上させてもよい。
そして、マスク21に対して凹部を形成する位置に数μm程度の開口部22を形成する。開口部22はフォトエッチングまたはレーザー加工を用いて形成する。
【0035】
次に、図8(b)に示すように、マスク21に開口部22が形成されたガラス基板20をエッチング液に所定の時間だけ浸漬して、ガラス基板20に半球状の半球凹部23を形成する。エッチング液により開口部22を介してガラス基板20が等方にエッチングされ、断面形状がほぼ半球状にエッチングされる。
エッチング液としては、一水素二フッ化アンモニウム系のエッチング液が用いられる。
続いて、ガラス基板20からマスク21を剥離する。そして、図8(c)に示すように、ガラス基板20の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、半球凹部23の一部にAl膜などの保護膜24を成膜する。
【0036】
次に、図9(a)に示すように、サンドブラスト装置25を用いて、半球凹部23内をブラスト加工する。ブラスト粒子として、例えばWA#1000の研磨材が用いられる。半球凹部23内の一部には保護膜24形成されていることから、保護膜24が形成されていない部分がブラスト加工されて、表面が粗く加工される。
なお、蒸着やスパッタリングにより形成される保護膜24がサンドブラスト加工に対して耐えられない場合には、保護膜24の上にめっきを施して、保護膜24の厚みを増しても良い。
そして、ガラス基板20から保護膜24を剥離して、ガラス基板20は元転写型として完成する。
【0037】
次に、図9(b)に示すように、元転写型としてのガラス基板20を用いて、ニッケル(Ni)などの金属材料で電鋳型28を製作する。
続いて、図9(c)に示すように、電鋳型28の形状をポリ塩化ビニル(PVC)シートなどのスクリーン基板10に熱および圧力を加えて転写する。このようにして、スクリーン基板10に凹部11が形成され、凹部11には表面が粗く形成された外光吸収面13と表面が滑らかに形成された投影光反射面12とが備えられる。
ここではスクリーン基板10は光吸収材料を含む黒色のポリ塩化ビニル(PVC)シートが用いられる。
【0038】
そして、図9(d)に示すように、凹部11の投影光反射面12にアルミニウム(Al)膜などの反射膜16を形成する。反射膜16は、スクリーン基板10の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、凹部11の投影光反射面12に成膜することができる。なお、反射材料を凹部11にスプレーして反射膜を形成してもよい。
【0039】
このようにして、反射スクリーンが製作されるが、さらに、スクリーン基板10の凹部11を充填するように樹脂などの可撓性を有する材料で保護層を形成し、その上に反射防止膜を形成しても良い。
また、上記の反射スクリーンの製造方法では元転写型としてのガラス基板20を用いて電鋳型を形成したが、このガラス基板20を用いて樹脂転写によって樹脂型を形成し、この樹脂型から光硬化性樹脂を用いた2P転写法によりポリエチレンテレフタートシート(PETシート)またはポリ塩化ビニル(PVC)シートに形状を転写しても良い。
【0040】
<反射スクリーンの製造方法2>
本製造方法は、上記製造工程の図8で説明した工程以降が異なる。そのため、図8以降の工程について説明する。
図10は他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図である。
図8(c)で得られたガラス基板20には半球凹部23の一部にAl膜などの保護膜24が形成されている。なお、この保護膜24の上に、緻密なめっき層を設けても良い。
このガラス基板20を用いて、図10(a)に示すように、ニッケル(Ni)などの金属材料で電鋳型31を製作する。そして、図10(b)に示すように、ガラス基板20から電鋳型31を剥離する。この電鋳型31はポーラス(多孔質)状の電鋳にて製作することで、保護膜24を設けた部分を除き、電鋳型31の表面は凹凸を有することになる。
【0041】
続いて、図10(c)に示すように、電鋳型31の形状をポリ塩化ビニル(PVC)シートなどのスクリーン基板110に熱および圧力を加えて転写する。このようにして、スクリーン基板110に凹部111が形成され、凹部111には表面が粗く形成された外光吸収面113と表面が滑らかに形成された投影光反射面112とが備えられる。
ここではスクリーン基板110は光吸収材料を含む黒色のポリ塩化ビニル(PVC)シートが用いられる。
【0042】
そして、図10(d)に示すように、凹部111の投影光反射面112にアルミニウム(Al)膜などの反射膜116を形成する。反射膜116は、スクリーン基板110の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、凹部111の投影光反射面112に成膜することができる。なお、反射材料を凹部111にスプレーして反射膜を形成してもよい。
【0043】
このようにして、反射スクリーンが製作されるが、さらに、スクリーン基板110の凹部111を充填するように樹脂などの可撓性を有する材料で保護層を形成し、その上に反射防止膜を形成しても良い。
【0044】
<反射スクリーンの製造方法3>
上記の反射スクリーンの製造方法1および2は、成形型を粗面加工し、その型をスクリーン基板に転写する製造方法であるが、次に反射スクリーンを粗面加工する製造方法について説明する。
図11、図12は他の反射スクリーンの製造方法を示す模式工程図である。
図11(a)に示すように、ガラス基板20の上にマスク21を形成する。そして、マスク21に対して凹部を形成する位置に数μm程度の開口部22を形成する。開口部22はフォトエッチングまたはレーザー加工を用いて形成する。
次に、図11(b)に示すように、マスク21に開口部22が形成されたガラス基板20をエッチング液に所定の時間だけ浸漬して、ガラス基板20に半球状の半球凹部23を形成する。エッチング液により開口部22を介してガラス基板20が等方にエッチングされ、断面形状がほぼ半球状にエッチングされる。
続いて、ガラス基板20からマスク21を剥離する。そして、図11(c)に示すように、ガラス基板20を元転写型としてニッケル(Ni)などの金属材料で電鋳型32を製作する。
続いて、図11(d)に示すように、電鋳型32の形状をポリ塩化ビニル(PVC)シートなどのスクリーン基板120に熱および圧力を加えて転写する。ここではスクリーン基板120は光吸収材料を含む黒色のポリ塩化ビニル(PVC)シートが用いられる。
【0045】
そして、図12(a)に示すように、スクリーン基板120の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、凹部121の一部にアルミニウム(Al)膜などの保護膜124を成膜する。
次に、図12(b)に示すように、サンドブラスト装置25を用いて、凹部121内をブラスト加工する。ブラスト粒子として、例えばWA#1000の研磨材が用いられる。凹部121内の一部には保護膜124形成されていることから、保護膜124が形成されていない部分がブラスト加工されて、表面が粗く加工される。
【0046】
そして、保護膜124を剥離し、図12(c)に示すように、凹部121の投影光反射面122にアルミニウム(Al)膜などの反射膜126を形成する。反射膜126は、スクリーン基板120の斜方から蒸着またはスパッタリングすることで、凹部121の投影光反射面122に成膜することができる。なお、反射材料を凹部121にスプレーして反射膜を形成してもよい。
このようにして、スクリーン基板120に凹部121が形成され、凹部121には表面が粗く形成された外光吸収面123と表面が滑らかに形成された投影光反射面122とが備えられる。
【0047】
また、他の製造方法として、図11(d)で示した、電鋳型32の形状を転写したスクリーン基板120を用いて、凹部121の一部にアクリル系などの塗料を塗布し、表面を滑らかにすることができる。この塗料を塗布した面に反射膜を形成して、投影光反射面としても良い。
【0048】
以上、上記の実施形態では、凹部内に投影光を反射する投影光反射面と、外光を吸収する外光吸収面を設けたが、凸部に投影光を反射する投影光反射面と、外光を吸収する外光吸収面を設ける構成としてもよい。また、上記の実施形態では外光吸収面を曲面で形成したが、曲面以外の平面などであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…スクリーン基板、11…凹部、12…投影光反射面、13…外光吸収面、16…反射膜、20…ガラス基板、21…マスク、22…開口部、23…半球凹部、24…保護膜、25…サンドブラスト装置、28…電鋳型、31,32…電鋳型、100…反射スクリーン、100a…観察面、110…スクリーン基板、111…凹部、112…投影光反射面、113…外光吸収面、116…反射膜、120…スクリーン基板、121…凹部、122…投影光反射面、123…外光吸収面、124…保護膜、126…反射膜、Lo…外光、Lp…投影光、Lr…反射光、P…光源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン基板の観察面の法線に対して垂直方向にずれた方向から前記観察面に向けて斜めに投射された投影光を、観察面側に反射する反射スクリーンであって、
前記スクリーン基板の垂直方向および水平方向に複数の凹部または凸部が形成され、
前記凹部または凸部は、投影光を反射する投影光反射面と、外光を吸収する外光吸収面と、を備え、
前記外光吸収面の表面粗さより前記投影光反射面の表面粗さが滑らかであることを特徴とする反射スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
前記外光吸収面の表面粗さRaが、82nm以上、5000nm以下であることを特徴とする反射スクリーン。
【請求項3】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
前記投影光反射面の表面粗さRaが、10nm以上、274nm以下であることを特徴とする反射スクリーン。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記投影光反射面が曲面であることを特徴とする反射スクリーン。
【請求項1】
スクリーン基板の観察面の法線に対して垂直方向にずれた方向から前記観察面に向けて斜めに投射された投影光を、観察面側に反射する反射スクリーンであって、
前記スクリーン基板の垂直方向および水平方向に複数の凹部または凸部が形成され、
前記凹部または凸部は、投影光を反射する投影光反射面と、外光を吸収する外光吸収面と、を備え、
前記外光吸収面の表面粗さより前記投影光反射面の表面粗さが滑らかであることを特徴とする反射スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
前記外光吸収面の表面粗さRaが、82nm以上、5000nm以下であることを特徴とする反射スクリーン。
【請求項3】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
前記投影光反射面の表面粗さRaが、10nm以上、274nm以下であることを特徴とする反射スクリーン。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記投影光反射面が曲面であることを特徴とする反射スクリーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−64851(P2011−64851A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214156(P2009−214156)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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