説明

反射フィルム

【課題】実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、紫外線による劣化、特に黄変が抑制され、熱による変形が少なく、かつ安定して製膜することができる車載用液晶表示装置の反射板として好適に用いることのできる、反射フィルムを提供する。
【解決手段】反射層と支持層とからなり、反射層はナフタレンジカルボン酸1〜20モル%およびテレフタル酸99〜80モル%をジカルボン酸成分としエチレングリコールをジオール成分としてなる共重合ポリエステルならびにボイド形成物質からなるとともにボイドを30〜80体積%含有することを特徴とする、車載用液晶表示装置の用いられる反射フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射フィルムに関し、詳しくは、車載用液晶表示装置に用いられ、高い反射率を備えかつ耐熱性および耐熱性に優れる反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイにおいて、従来、ディスプレイの背面からライトを当てるバックライト方式が採用されていたが、近年、特開昭63−62104号公報に示されるようにディスプレイの側面からライトを当てるサイドライト方式が、薄型で均一に照明できるメリットから、広く用いられるようになっている。このサイドライト方式では表示面から見て背面に反射板を設置する。この反射板には光の高い反射性および高い拡散性が要求される。
【0003】
近年、車載用表示装置においても液晶表示装置がますます用いられるようになってきているが。車載用表示装置は車内に取り付けられた状態で特に夏場にはかなりの高温になる。また、どのような外光においても表示画面を見やすい輝度に保つためにランプ自体を明るくすることが必要であり、ランプ(冷陰極管)から出る紫外線に対する高い耐久性が必要である。
【0004】
液晶表示装置の反射板としてプラスチックフィルムが用いられているが、従来技術においては反射を担う層は中間に配置された反射層であり、特に紫外線耐性を付与するためにフィルム表面に紫外線吸収剤をコートしたものが用いられてきた。しかし、この反射板では、高温下で紫外線吸収剤がブリードアウトしたり、サイドライト方式に用いられる導光板との貼り付きが高温下で顕著に生じる。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−62104号公報
【特許文献2】特公平8−16175号公報
【特許文献3】特開2004−50479号公報
【特許文献4】特開2004−330727号公報
【特許文献5】特開2005−125700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる従来技術の問題点を解決することを課題とし、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、紫外線による劣化、特に黄変が抑制され、熱による変形が少なく、かつ安定して製膜することができる車載用液晶表示装置の反射板として好適に用いることのできる、反射フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、反射層と支持層とからなり、反射層はナフタレンジカルボン酸1〜20モル%およびテレフタル酸99〜80モル%をジカルボン酸成分としエチレングリコールをジオール成分としてなる共重合ポリエステルならびにボイド形成物質からなるとともにボイドを30〜80体積%含有し、反射層が反射面として用いられることを特徴とする、車載用液晶表示装置に用いられる反射フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、紫外線による劣化、特に黄変が抑制され、熱による変形が少なく、かつ安定して製膜することができる車載用液晶表示装置の反射板として好適に用いることのできる、反射フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の白色の反射フィルムは反射層とこの層に接する支持層から構成される。
【0010】
[反射層]
反射層はポリエステルとボイド形成物質の組成物からなりボイドを含有する。このボイドは、ポリエステルとボイド形成物質との界面がフィルムの延伸に伴って剥離することによって形成される空隙である。
【0011】
[ポリエステル]
ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等公知のポリエステルを用いることができる。高い耐熱性を得る観点から、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルが好ましい。具体的には、ナフタレンジカルボン酸成分を例えば1〜20モル%、さらに好ましくは3〜18モル%、特に好ましくは5〜15モル%含有する共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましい。ナフタレンジカルボン酸成分が1モル%未満であると製膜性が確保できないことがあり好ましくなく、20モル%を超えると耐熱性や製膜性が劣る可能性が出てきて好ましくない。
【0012】
反射層のポリエステルは、好ましくはアンチモン元素を実質的に含有しない。実質的に含有しないとは、含有量が20ppm以下、好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下をいう。アンチモン元素を実質低に含有すると白色フィルムの場合、黒く筋状に見え、フィルム外観を著しく損なってしまい好ましくない。
【0013】
アンチモン元素を実質的に含有しないポリエステルを得るためには、ポリエステルをアンチモン化合物以外の触媒を用いて重合する。ポリエステルの重合に使用する触媒としては、マンガン(Mn)化合物、チタン(Ti)化合物、ゲルマニウム(Ge)化合物のいずれかを用いることが好ましい。
【0014】
チタン化合物としては、例えば、チタンテトラブトキシド、酢酸チタンを用いることができる。
ゲルマニウム化合物としては、例えば、無定形酸化ゲルマニウム、微細な結晶性酸化ゲルマニウム、酸化ゲルマニウムをアルカリ金属またはアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在化にグリコールに溶解した溶液、酸化ゲルマニウムを水に溶解した溶液を用いることができる。
【0015】
[ボイド形成物質]
反射層のボイドは、フィルムの延伸時にボイド形成物質とポリエステルとが界面剥離することによって生じる。本発明において反射層は反射層の体積100体積%あたり30〜80体積%のボイドを含有する。
【0016】
本発明において反射層のボイド体積率は30〜80%、好ましくは35〜75%、さらに好ましくは38〜70%である。30%未満であると必要とする反射率や紫外線に対する耐性を得ることができず、80%を超えると容易に破れ易いフィルムとなってしまう。このボイド体積率は、ポリエステルにボイド形成物質、例えば無機粒子、非相溶樹脂を配合して延伸し、ボイド形成物質とポリエステルとの界面に剥離を生じさせることによって達成することができる。
【0017】
[無機粒子]
反射層に用いるボイド形成物質としては、例えば無機粒子を用いることができる。無機粒子としては、高い反射性能を得る観点から白色顔料を用いることが好ましい。この白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素の粒子、好ましくは硫酸バリウム粒子を用いる。この硫酸バリウム粒子は、板状、球状いずれの形状をとる粒子であってもよい。硫酸バリウム粒子を用いることで特に良好な反射率を得ることができる。
【0018】
無機粒子として、酸化チタン粒子を用いる場合、好ましくはルチル型酸化チタンの粒子を用いる。ルチル型酸化チタンの粒子を用いると、アナターゼ型酸化チタンの粒子を用いた場合よりも、光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が少なく、色差の変化を抑制することができる。このルチル型酸化チタンの粒子は、例えばステアリン酸といった脂肪酸および/またはその誘導体を用いて表面処理してから用いると、分散性を向上させることができ、光沢度の特に高いフィルムを得ることができる。
【0019】
ボイド形成物質として無機粒子を用いる場合、無機粒子としては、平均粒径0.3〜3.0μm、好ましくは0.4〜2.5μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmの無機粒子を用いる。平均粒径が0.3μm未満であると分散性が極端に悪くなり、粒子の凝集が起こるため生産工程上のトラブルが発生し易く、フィルムに粗大突起を形成し、光沢の劣ったフィルムになったり、溶融押出し時に用いられるフィルターが粗大粒子により目詰まりを生じさせる可能性があり好ましくない。他方、平均粒径が3.0μmを超えるとフィルムの表面が粗くなり光沢が低下するばかりか、適切な範囲に光沢度をコントロールすることが困難となる。
【0020】
無機粒子は、反射層のポリエステル組成物100重量%あたり、例えば31〜60重量%、好ましくは35〜55重量%、さらに好ましくは37〜50重量%含有させる。31重量%未満であると反射率が低下したり、紫外線に因る劣化が激しくなったする。他方、60重量%を超えるとフィルムが破れやすくなる。なお、無機粒子は、分散性を向上させるべく、必要に応じて表面処理を行ってもよい。
【0021】
本発明では、製膜時のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き20〜50μmの不織布型フィルターを用い、溶融ポリマーを濾過することが好ましい。この濾過を行なうことにより、一般的には凝集して粗大凝集粒子となやすい粒子の凝集を抑えて、粗大異物の少ないフィルムを得ることができる。
【0022】
[非相溶樹脂]
反射層に用いるボイド形成物質としては、非相溶樹脂を用いてもよい。この非相溶樹脂は、ポリエステルに非相溶な樹脂であり、無機粒子を用いた場合と同様に、延伸時にポリエステルとの界面で剥離してボイドを生じる。
【0023】
非相溶樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、具体的には例えばポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル−t−ブタン、1,4−トランス−ポリ−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリフルオロスチレン、セルロースアセテートセルロースプロピオネート、ポリクロロトリフルオロエチレンを用いることができ、特に好ましくはポリプロピレン、ポリメチルペンテンを用いる。これらポリプロピレン、ポリメチルペンテンは樹脂自体が高透明であるため、光の吸収を抑えて反射率を向上させることができ最適である。
【0024】
非相溶樹脂は、反射層のポリエステル組成物100重量%あたり、例えば5〜30重量%、。好ましくは8〜25重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。反射層に30重量%を超えて配合するとフィルムが非常に破断し易くなり、5重量%未満であると十分なボイド形成が成されず、得られるフィルムが反射率の低いものとなったり、紫外線による耐性が劣ったものになってしまう。
【0025】
[支持層]
支持層にはポリエステルを用いる。このポリエステルには、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等公知のポリエステルを用いることができる。これは反射層と同じポリエステルであってもよい。
【0026】
支持層には、フィルムの滑り性を付与するため、無機粒子を配合してもよい。
配合する場合、支持層のポリエステル組成物100重量%あたり好ましくは1〜30重量%である。1重量%未満であると滑り性が確保できず好ましくなく、30重量%を超えると非常に破れやすいフィルムとなり好ましくない。
【0027】
[添加剤]
本発明の白色フィルムには蛍光増白剤を配合してもよい。蛍光増白剤を配合する場合、反射層のポリエステル組成物または支持層のポリエステルに対する濃度として、例えば0.005〜0.2重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%の範囲で配合するといよい。0.005重量%未満であると350nm付近の波長域の反射率が十分でないので添加する意味が乏しく、0.2重量%を越えると、蛍光増白剤の持つ特有の色が現れてしまうため好ましくない。
【0028】
蛍光増白剤としては、例えばOB−1(イーストマン社製)、Uvitex−MD(チバガイギー社製)、JP−Conc(日本化学工業所製)を用いることができる。
反射層の厚みは、白色反射フィルムの反射層および支持層の合計厚み100に対して、好ましくは40〜90、さらに好ましくは50〜85である。40未満であると反射率が劣る可能性があり好ましくなく、90を超えると延伸性の観点から好ましくない。
【0029】
本発明の白色反射フィルムには、その片面または両面に他の機能を付与するために、他の層をさらに積層した積層体としてもよい。ここでいう他の層としては、例えば透明なポリエステル樹脂層、金属薄膜やハードコート層、インク受容層を例示することができる。
【0030】
[製造方法]
以下、本発明の白色反射フィルムを製造する方法の一例として、反射層/支持層の構成をとるポリエステル積層フィルムの製造方法の一例を説明する。ダイから溶融したポリエステルをフィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸シートを製造する。すなわち反射層を構成するポリエステルの溶融物と支持層を構成するポリエステルの溶融物とを、フィードブロックを用いて反射層/支持層となるように積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。
【0031】
ダイより押出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。この未延伸状フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)以上の温度、さらにはTg〜70℃高い温度とするのが好ましい。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、縦方向、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)ともに、好ましくは2.2〜4.0倍、さらに好ましくは2.3〜3.9倍である。2.2倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。そしてTgより(5〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満であるとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
【0032】
横延伸後のフィルムは両端を把持したまま(Tm−20〜100)℃で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、熱処理温度が(Tm−80)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがある。また、熱固定後フィルム温度を常温に戻す過程で(Tm−20〜100)℃以下の領域の熱収縮量を調整するために、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることができる。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.5%、さらに好ましくは0.2〜1.2%、特に好ましくは0.3〜1.0%の速度ダウンを実施してフィルムを弛緩(この値を「弛緩率」という)して、弛緩率をコントロールすることによって縦方向の熱収縮率を調整する。また、フィルム横方向は両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
【0033】
ここでは、逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、本発明の積層フィルムは逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよい。
このようにして得られる本発明の反射フィルムは、85℃の熱収縮率が、直交する2方向ともに0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下、特に好ましくは0.3%以下とすることができる。
【0034】
二軸延伸後の積層フィルムの厚みは、好ましくは25〜250μm、さらに好ましくは40〜250μm、特に好ましくは50〜250μmである。25μm以下であると反射率が低下して好ましくなく、250μmを超えるとこれ以上厚くしても反射率の上昇が望めないことから好ましくない。
【0035】
このようにして得られる本発明の反射フィルムは、その少なくとも一方の表面の反射率が波長400〜700nmの平均反射率でみて90%以上、さらに好ましくは92%以上、特に好ましくは94%以上である。90%未満であると十分な画面の輝度を得ることができないので好ましくない。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点で厚みを測定して、それらの平均値をフィルムの厚みとした。
【0037】
(2)各層の厚み
フィルムサンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定して、各層の平均厚みを求めた。
【0038】
(3)反射率評価
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO白板を100%としたときのフィルムサンプルの反射率を400〜700nmの波長域にわたって測定し、得られた反射率チャートから2nm間隔で反射率を読み取った。なお、フィルムの構成が一方の面が反射層、他方の面が支持層の場合には、反射層側の反射率の測定を行った。上記の範囲内で平均値を求めた。次の基準で反射率の評価を行った。
○:平均反射率90%以上かつ全測定領域において反射率90%以上
△:平均反射率90%以上であるが反射率90%未満の波長域もある
×:平均反射率90%未満
【0039】
(4)延伸性評価
未延伸フィルムを延伸する際の製膜の状況を観察し、下記基準で評価した。
○:1時間以上安定して製膜できる
×:1時間以内に切断が発生し、安定した製膜ができない
【0040】
(5)85℃熱収縮率
85℃に設定されたオーブン中でフィルムサンプルを無緊張状態で30分間保持し、加熱処理前後の標点間距離を測定し、下記式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=((L0−L)/L0)×100
L0:熱処理前の標点間距離
L :熱処理後の標点間距離
【0041】
(6)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
示差走査熱量測定装置(TA Instruments 2100 DSC)を用い、昇温速度20m/分で測定を行った。
【0042】
(7)紫外線による劣化(耐光性評価)
フィルムサンプルにキセノンランプ照射(SUNTEST CPS+)にてパネル温度60℃、照射時間300時間の条件で光照射を行い、光照射前後での色変化をみた。なおフィルムの構成が一方の面が反射層、他方の面が支持層の場合、反射層側から光照射を行い測定を行った。
初期のフィルムサンプルの色相(L、a、b)と照射後のフィルムサンプルの色相(L、a、b)とを色差計(日本電飾製SZS−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)にて測定し、色変化dEを下記式で計算し、下記基準で評価した。
dE={(L−L+(a−a+(b*−b1/2
○: dE≦10
△:10<dE≦15
×:15<dE
【0043】
(8)熱による変形(たわみ評価)
フィルムサンプルをA4版に切り出し、フィルムの4辺を金枠で固定したまま、80℃に加熱したオーブンで30分間処理した後、変形(フィルムのたわみ状態)を目視にて観察し、下記基準で評価した。
○:たわんだ状態が観察されない
△:一部に軽微なたわみが観察される
×:たわんだ部分があり、たわみの凹凸が5mm以上の隆起として観察される
【0044】
(9)導光板との貼り付き
反射フィルムの上に株式会社きもとのアクリル導光板「パネビー」を重ね、105℃の温度下にて反射フィルム5cm□当たり300gの荷重が加わる様、おもりを載せて1時間放置した。その後、荷重解放後アクリル導光板側のみを持った際の状況を目視で観察した。
○;反射フィルムが落ちる場合を貼り付き無し
×:反射フィルムが落ちない場合を貼り付いているもの
【0045】
(10)ボイド体積率
反射層のみを単離後、アントンパール社製振動式デジタル密度計DMA4500にて密度を求めた後、フィルムを溶融して再度同様に密度を求め、下記式にて算出した。
ボイド体積率(%)=100−100×(溶融前の密度)/(溶融後の密度)
【0046】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル132重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル23重量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたり12モル%)、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03重量部、二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルのジエチレングリコール成分量は2.5wt%、ゲルマニウム元素量は50ppm、リチウム元素量は5ppmであった。このポリエステルを反射層および支持層のポリエステルに用い、表1に示す非相溶樹脂を添加して、表1に記載の反射層の組成物および支持層の組成物を得た。それぞれ285℃に加熱された2台の押出機に供給し、反射層/支持層となるように2層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを記載された温度にて加熱し長手方向(縦方向)に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に延伸した。その後テンター内で表2の温度で熱固定を行い、表2に示す条件にて縦方向の弛緩、横方向の幅入れを行い、室温まで冷やして、反射層/支持層の積層二軸延伸フィルムを得た。得られた積層フィルムの反射板基材としての物性を評価したところ表2に記載の通りであった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
[実施例2〜10]
反射層の組成物と支持層の組成物を表1に記載のとおりに変更し、表2に記載の製膜条件をとる他は実施例1と同様にして、反射層/支持層の2層積層フィルムを作製し、評価した。
【0050】
[実施例11および12]
反射層の組成物と支持層の組成物を表1に記載のとおりに変更し、表2に記載の製膜条件をとりフィードブロックに3層フィードブロックを用いる他は実施例1と同様にして、反射層/支持層/反射層の3層積層フィルムを作製し、評価した。
【0051】
[比較例1]
表1および2に示すように条件を変更した他は実施例1と同様にして、反射層/支持層の2層積層フィルムを作製し、フィルムの反射層側に日本触媒製の紫外線吸収剤「UV−G300」を乾燥後の膜厚みが5μmになるようにコーティングを行い評価を行った。
【0052】
[比較例2]
表1および2に示すように条件を変更した他は実施例1と同様にして、反射層/支持層の2層積層フィルム作製し、フィルムの反射層側に日本触媒製の紫外線吸収剤「UV−G714」を乾燥後の膜厚みが4μmになるようにコーティングを行い評価を行った。
【0053】
[比較例3]
表1および2に示すように条件を変更した他は実施例1と同様にして、反射層/支持層の2層積層フィルムを作製し、フィルムの反射層側に一方社油脂工業製の紫外線吸収剤「ULS−1383MA」を乾燥後の膜厚みが5μmになるようにコーティングを行い評価を行った。
【0054】
[比較例4および5]
表1および2に示すように条件を変更した他は実施例1と同様にして、反射層/支持層となる2層積層フィルムを製膜したが延伸性能が極めて低く、製膜時の切断が多発したため、フィルムサンプルが作製できなかった。
【0055】
[比較例6]
イソフタル酸共重合のポリマーを用い、表1および2に記載の条件でフィードブロックには3層フィードブロックを用いた他は実施例1と同様にして、反射層/支持層/反射層の3層積層フィルムを製膜し、評価した。
【0056】
[比較例7および参考例1]
表1および2に示すように条件を変更した他は実施例1と同様にして、2層積層フィルムを製膜し、評価を行った。
【0057】
[比較例8および9]
表1および2に示すように条件を変更した他は実施例1と同様にして、3層積層フィルムを製膜し、評価を行った。
【0058】
[比較例10]
表1および2に示すように条件を変更し、ボイド体積率の高い層を3層フィルムの支持層(芯層)にくるよう設定した他は実施例1と同様にして、3層積層フィルムを得た。表に示す通り耐光性に劣る結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の液晶表示装置の反射フィルムは、光線の反射率が高く、紫外線に対する劣化が抑えられ、各種の液晶反射板、中でも特に車載用液晶表示装置に最適に用いることができる。この反射フィルムとして用いる場合には、反射層を光源側に用いることが好ましい。
【0060】
また他の用途としては、紙代替、すなわちカード、ラベル、シール、宅配伝票、ビデオプリンタ用受像紙、インクジェット、バーコードプリンタ用受像紙、ポスター、地図、無塵紙、表示板、白板、感熱転写、オフセット印刷、テレフォンカード、ICカード、太陽電池のバックシートなどの各種印刷記録に用いられる受容シートの基材などとしても用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射層と支持層とからなり、反射層はナフタレンジカルボン酸1〜20モル%およびテレフタル酸99〜80モル%をジカルボン酸成分としエチレングリコールをジオール成分としてなる共重合ポリエステルならびにボイド形成物質からなるとともにボイドを30〜80体積%含有し、反射層が反射面として用いられることを特徴とする、車載用液晶表示装置に用いられる反射フィルム。
【請求項2】
ボイド形成物質が無機粒子である、請求項1記載の反射フィルム。
【請求項3】
ボイド形成物質が共重合ポリエステルと非相溶な樹脂である、請求項1記載の反射フィルム。
【請求項4】
反射層の厚みが反射フィルムの厚み100あたり30〜90である、請求項1記載の反射フィルム。

【公開番号】特開2007−322875(P2007−322875A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154678(P2006−154678)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】