説明

反射偏光子及びそれを用いた液晶表示装置

【課題】可視光を偏光し、かつ、透過されない偏光成分を反射して、可視光の利用効率を向上し、容易に製造可能な反射偏光子を提供する。
【解決手段】
反射偏光子30は、透光性を有する基材31と、基材31上に形成された偏光層32とを備える。偏光層32は、複数の磁性微粒子322と、複数の磁性微粒子322を含有する樹脂321とを含む。複数の磁性微粒子322は、各々が強磁性を有し、磁場配向により一方向に配向される。また、各々が長軸を有し、可視光のうち長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分を反射し、長軸方向と垂直な電場ベクトルを有する偏光成分を透過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射偏光子及びそれを用いた液晶表示装置に関し、さらに詳しくは、可視光を偏光及び反射する反射偏光子及びそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビやパソコンのディスプレイとして利用される液晶表示装置は、光の利用効率の向上を求められている。
【0003】
液晶表示装置の光の利用効率を向上するための部材として、反射偏光子が開示されている。代表的な反射偏光子としては、複屈折樹脂積層体からなる偏光子(以下、積層偏光子という)と、ワイヤグリッド型偏光子とがある。
【0004】
積層偏光子は、特開平4−268505号公報(特許文献1)、特表平9−507308号公報(特許文献2)及び特表平10−511322号公報(特許文献3)に開示される。この偏光子は、異なる屈折率を有する複数の樹脂層の積層体からなり、バックライトの正面に敷設される。積層偏光子は、バックライトからの光のうちのP偏光成分及びS偏光成分のいずれか一方を透過し、他方をバックライトに反射する。バックライトに戻った光は、バックライト内で散乱及び反射して、偏光状態が解消される。そして、偏光状態が解消された光が再度積層偏光子に入射される。そのため、再度入射された光の一部は積層偏光子を透過する。以上の動作を繰り返すことにより、積層偏光子はバックライトから出射された光の利用効率を向上する。
【0005】
一方、ワイヤグリッド型偏光子は、特開2005−195824号公報(特許文献4)、特表2003−502708号公報(特許文献5)及び特開平10−153706号公報(特許文献6)に開示されている。ワイヤグリッド型偏光子は、その表面に、複数の金属ワイヤが所定の間隔で並設された、いわゆるグリッド構造を有する。隣り合う金属ワイヤの間隔が入射光の波長よりも短い場合、ワイヤグリッド型偏光子は、入射光のうち金属ワイヤに垂直な電場ベクトルを有する偏光成分を透過し、金属ワイヤに平行な電場ベクトルを有する偏光成分を反射する。ワイヤグリッド型偏光子も、積層偏光子と同様に、バックライトの正面に敷設され、光の利用効率を向上する。
【0006】
しかしながら、積層偏光子は、上述のとおり屈折率の異なる樹脂層を数十層も積層しなければならない。そのため、製造工程が複雑である。さらに、複数の樹脂層を積層するため、偏光子が厚くなる。
【0007】
また、ワイヤグリッド型偏光子の製造工程も複雑である。ワイヤグリッド型偏光子は、真空蒸着法等により基板上に形成されたアルミニウム等の金属層にエッチング処理を施すことにより形成される。つまり、製品ごとにエッチング処理を行わなければならず、製造工程が複雑である。
【0008】
ところで、製造工程が簡潔な偏光子として、磁性材料を一方向に配向させた偏光子が特公平8−27409号公報(特許文献7)、特開平11−14829号公報(特許文献8)及び特開平11−6916号公報(特許文献9)に開示されている。これらの特許文献は、磁場を印加して複数の磁性微粒子を一方向に配向することにより偏光子を製造する。この製造方法によれば、屈折率の異なる複数の樹脂層を積層したり、エッチング処理を行うといった必要がなく、製造工程が簡潔である。
【0009】
しかしながら、特許文献7〜9に開示された偏光子は、透過した偏光成分以外の偏光成分を吸収する。そのため、光の利用効率の向上に寄与しない。
【特許文献1】特開平4−268505号公報
【特許文献2】特表平9−507308号公報
【特許文献3】特表平10−511322号公報
【特許文献4】特開2005−195824号公報
【特許文献5】特表2003−502708号公報
【特許文献6】特開平10−153706号公報
【特許文献7】特公平8−27409号公報
【特許文献8】特公平11−14829号公報
【特許文献9】特開平11−6916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、可視光を偏光し、かつ、透過されない偏光成分を反射して、可視光の利用効率を向上し、容易に製造可能な反射偏光子を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
本発明による反射偏光子は、基材と、偏光層とを備える。基材は透光性を有する。偏光層は基材上に形成される。偏光層は、複数の磁性微粒子と、樹脂とを含む。複数の磁性微粒子の各々は、強磁性を有し、磁場配向により一方向に配向される。各磁性微粒子はまた、長軸を有し、可視光のうち長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分を反射する。樹脂は、透光性を有し、一方向に配列された前記複数の磁性微粒子を含有する。なお、本明細書にいう一方向とは、複数の磁性微粒子全てが厳密に一方向に配列される場合のみを意味するものではなく、本発明の効果を奏する程度に、複数の磁性微粒子がほぼ1つの方向に配列される場合も含む。
【0012】
本発明による反射偏光子は、磁場配向により一方向に配向された複数の磁性微粒子を含む。この磁性微粒子により、可視光のうち、磁性微粒子の長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分を反射し、かつ、長軸方向と垂直な偏光成分を透過することができる。さらに、本発明による反射偏光子は、磁場配向により容易に製造できる。
【0013】
好ましくは、反射偏光子は、偏光成分に対して10%以上の反射率を有する。
【0014】
この場合、バックライトから出射される光の利用効率を向上できる。
【0015】
好ましくは、偏光層は、磁性微粒子100重量部に対して樹脂を7〜2000重量部含む。好ましくは、磁性微粒子の長軸長は、0.1μmよりも大きく10μm以下であり、磁性微粒子のアスペクト比は、2以上である。
【0016】
この場合、可視光の偏光度及び反射率を向上できる。
【0017】
好ましくは、磁性微粒子は、金属磁性粒子である。ここで、金属磁性粒子とは、強磁性を有する金属及び不純物で構成されるものであってもよいし、強磁性を有する金属及び不純物で構成され、その表面にアルミナ(Al)やイットリウム等の焼結防止剤が被覆されたものであってもよい。
【0018】
この場合、金属の自由電子の振動により、可視光の偏光成分を透過及び反射できる。
【0019】
好ましくは、磁性微粒子は、表面に形成される金属被膜を含む。金属被膜は、アルミニウム、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、鉄及びスズからなる群の1種又は2種以上からなる。ここで、表面被膜は、上述の金属の他に、不純物が含まれていてもよい。
【0020】
これらの金属は、いずれも可視光の反射率(可視光反射率)が高い。したがって、磁性微粒子の表面がこれらの金属被膜からなるとき、反射偏光子の可視光反射率を高めることができる。
【0021】
本発明による液晶表示装置は、液晶パネルと、バックライトと、反射偏光子とを備える。液晶パネルは、両面に吸収偏光子が敷設される。ここで、吸収偏光子とは、たとえば、ヨウ素系偏光子や、染料系偏光子である。バックライトは、光源と、光源から出射された光を反射する反射シートとを含む。ここで、反射シートとは、たとえば、板状又はフィルム状である。反射偏光子は、液晶パネルとバックライトとの間に敷設される。反射偏光子は、反射偏光子と対向する液晶パネルの吸収偏光子の透過軸と平行な透過軸を有する。反射偏光子はさらに、上述と同じ構成を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
[液晶表示装置の構成]
図1及び図2を参照して、液晶表示装置1は、バックライト10と、バックライト10の正面に敷設される反射偏光子30と、反射偏光子30上に敷設される液晶パネル20とを備える。
【0024】
液晶パネル20には、その両面に吸収偏光子21及び22が敷設される。吸収偏光子は、板状又はフィルム状であり、ある偏光成分を吸収することにより、特定の偏光成分を透過する。吸収偏光子は、たとえば、ヨウ素系偏光フィルムや染料系偏光フィルムである。液晶パネル20はさらに、その内部に、行列上に配列された複数の画素を備える。
【0025】
バックライト10はいわゆる直下型である。バックライト10は、ハウジング12と、光源である複数の蛍光管13と、光拡散板14と、輝度向上を目的とした光学シート15とを備える。
【0026】
ハウジング12は、正面に開口部120を有する筐体であり、内部に複数の蛍光管13を収納する。ハウジング12の内側表面は、反射シート121で覆われている。反射シート121は、板状又はフィルム状であり、蛍光管13から出射された光を散乱し、散乱された光を開口部120に導く。反射シート121は、たとえば東レ製ルミラー(登録商標)E60LやE60Vであり、拡散反射率が95%以上であるものが好ましい。
【0027】
光拡散板14は、開口部120に嵌め込まれ、ハウジング12の背面と並行に配設される。光拡散板14が開口部120に嵌め込まれると、ハウジング12の内部は密閉される。そのため、蛍光管13から出射された光が光拡散板14以外の箇所からハウジング12外へ漏れるのを防止でき、光の利用効率が向上する。
【0028】
光拡散板14は、蛍光管13からの光と反射シート121で反射された光とを、ほぼ均一に拡散して、正面に出射する。光拡散板14は、透明な基材と、基材内に分散された複数の粒子とで構成される。基材内に分散される粒子は、可視光に対する屈折率が基材と異なる。そのため、光拡散板14は入射した光を拡散し、拡散された光が光拡散板14を透過する。光拡散板14の基材は、たとえば、ガラスや、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン酸系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂等の樹脂からなる。
【0029】
光学シート15は、液晶表示装置1の正面輝度の向上及び視野角の拡大に寄与する。光学シート15は、たとえば、プリズムシートやレンチキュラレンズシートである。
【0030】
[反射偏光子]
本発明の実施の形態による反射偏光子30は、バックライト10上に敷設される。図3を参照して、反射偏光子30は、基材31と、基材上に形成される偏光層32とを備える。基材31の下面311は、バックライト10と対向する。また、偏光層32の表面は、吸収偏光子22と対向する。
【0031】
基材31は、フィルム状または板状であり、透光性を有する。基材31は、高分子フィルムであってもよく、ガラスであってもよい。基材31に用いられる高分子フィルムは、たとえば、トリアセチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等からなる。基材31に用いられるガラスは、たとえば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英等である。
【0032】
偏光層32は、バックライト10から入射された可視光のうち、特定の偏光成分を透過し、他の偏光成分を反射する。偏光層32は、層状の樹脂321と複数の磁性微粒子322とを備える。
【0033】
樹脂321は、複数の磁性微粒子322を含有して固定する。樹脂321は透光性を有する。樹脂321は、たとえば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体、ニトロセルロース、ポリウレタン樹脂からなる群の中から選ばれる1種又は2種以上からなる。好ましくは、樹脂321は、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体とポリウレタン樹脂とからなる。
【0034】
ポリウレタン樹脂は、たとえば、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネートポリウレタンなどである。好ましくは、ポリウレタン樹脂は、官能基として、COOH、SOM、OSOM、P=O(OM)、O−P=O(OM)[ここで、Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩である。]、OH、NR'R''、N+R'''R''''R'''''[ここで、R'、R''、R'''、R''''、R'''''は水素または炭化水素基である。]、エポキシ基等を有する高分子からなる。これらの成分で構成された樹脂321は、磁性微粒子322の分散性を向上する。
【0035】
なお、樹脂321を2種以上の上述の樹脂で構成する場合、各樹脂の官能基の極性は一致するのが好ましい。より好ましくは、樹脂321は、各々がSOM基を有する複数の樹脂で構成される。
【0036】
また、樹脂321は、活性エネルギ線硬化性樹脂で構成されてもよい。活性エネルギ線硬化性樹脂とは、紫外線や赤外線、可視光線、エックス線及び電子線等の活性エネルギ線で硬化する樹脂である。活性エネルギ線硬化性樹脂とは、たとえば、重合性を有するモノマーとオリゴマーとを主成分とする樹脂であり、より具体的には、アクリル系のモノマー及びオリゴマーを主成分とする樹脂である。
【0037】
磁性微粒子322は長軸を有し、図3に示すとおり、その縦断形状は楕円状である。磁性微粒子322は、強磁性を有する。そのため、複数の磁性微粒子322は、偏光層32の製造工程中、磁場配向により一方向に配向される。磁性微粒子322の好ましい保磁力は40〜320kA/mであり、さらに好ましくは100〜200kA/mである。また、好ましい飽和磁化量は20〜150A・m/kg(20〜150emu/g)であり、さらに好ましくは50〜100A・m/kg(50〜100emu/g)である。上記保磁力及び飽和磁化量の範囲であれば、強磁性を有する微粒子が磁場配向により一方向に配向されやすい。ここで、これらの磁気特性(保磁力及び飽和磁化量)は、試料振動形磁束形を用いて外部磁場1.28MA/m(16kOe)で測定される。
【0038】
磁性微粒子322は、たとえば、金属磁性粒子である。ここで、金属磁性粒子とは、強磁性を有する金属と不純物とからなる粒子である。具体的には、磁性微粒子322は、たとえば、鉄(Fe)、鉄基合金、ニッケル(Ni)、ニッケル基合金である。ここで、鉄基合金とは、質量%で50%以上の鉄を含有する合金であり、ニッケル基合金とは、質量%で50%以上のニッケルを含有する金属である。なお、金属磁性粒子の表面には、焼結防止剤が被覆されていてもよい。焼結防止剤は、たとえば、アルミナ(Al)やイットリウム等で構成される。
反射偏光子30は、略一方向に配向された上述の複数の磁性微粒子322を含むことにより、380nm〜780nmの範囲の波長を有する可視光のうち、磁性微粒子322の長軸と垂直な電場ベクトルを有する偏光成分を透過し、磁性微粒子322の長軸と平行な電場ベクトルを有する偏光成分を反射する。この原理は以下のとおりに推定される。反射偏光子30に入射した可視光の偏光成分のうち、電界の振動方向が磁性微粒子322の長軸方向と平行である偏光成分は、磁性微粒子322の表層を構成する金属の自由電子を振動する。そのため、電界の振動方向が長軸方向と平行な偏光成分は、磁性微粒子322により反射される。一方、電界の振動方向が長軸方向と垂直な偏光成分は、磁性微粒子322表層の金属の自由電子を振動しないため、磁性微粒子322の影響を受けず透過する。
【0039】
上述のとおり、磁性微粒子322は、表層の自由電子の振動により偏光成分を反射すると推定される。したがって、磁性微粒子322の母材を強磁性を有する素材で構成すれば、磁性微粒子322の表層を、強磁性を有しないが可視光反射率の高い金属で構成してもよい。この場合、磁性微粒子322は、可視光反射率の高い金属、具体的には、アルミニウム、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、鉄及びスズからなる群の1種又は2種以上から構成される金属被膜が表面に形成されてもよい。表面にこれら可視光反射率が高い金属被膜が形成される場合、磁性微粒子322の母材は、金属であっても、酸化金属であってもよい。ただし、金属被膜が非磁性である場合、母材は強磁性を有する素材とする。なお、金属被膜は、上述の金属の他に、不純物を含んでもよい。
金属被膜の好ましい厚さは、10nm〜200nmである。より好ましい厚さは、10nm〜150nmである。さらに好ましい厚さは、20nm〜100nmである。
【0040】
磁性微粒子322の長軸長は、好ましくは0.1μmよりも大きく10μm以下である。長軸長が0.1μm以下であれば、反射偏光子30が可視光を反射し難くなる。より具体的には、無偏光の光が入射した場合において、電場ベクトルが磁性微粒子322の長手方向と平行な偏光成分の可視光反射率が10%未満となる。一方、長軸長が10μmを超えると、配向性が低下するため、偏光度が低下する。好ましい長軸長は、0.2〜10μmである。
【0041】
本実施の形態における長軸長は、以下の方法で求められる。反射偏光子30に用いられる複数の磁性微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察する。観察された複数の磁性微粒子322のうち、100個の磁性微粒子322の各々の長軸長の値を求める。求めた100個の値の平均を、磁性微粒子322の長軸長とする。
【0042】
さらに、磁性微粒子322のアスペクト比AR(Aspect Ratio)は2以上が好ましい。ここで、アスペクト比ARは、以下の式(1)で示される。
【0043】
AR=磁性微粒子の長軸長/磁性微粒子の短軸長 (1)
アスペクト比ARが2未満であれば、可視光に対する透過軸及び反射軸が反射偏光子30上に形成されない。そのため、偏光成分が反射され難くなる。好ましいアスペクト比は3以上であり、さらに好ましいアスペクト比は5以上である。ここで、アスペクト比ARで用いられる磁性微粒子の短軸長は、上述の長軸長と同様の方法で求められる。つまり、TEMを用いて100個の磁性微粒子の短軸長の値を測定し、その平均を磁性微粒子の短軸長とする。
【0044】
好ましくは、偏光層32はさらに、磁性微粒子100重量部に対して樹脂321を7〜2000重量部含有する。磁性微粒子322と樹脂321との含有量が上述の範囲であるとき、偏光層32は可視光の一方の偏光成分を透過し、他方の偏光成分を高い反射率で反射することができる。より具体的には、電場ベクトルが磁性微粒子322の長軸方向と垂直な平行成分が透過される。また、電場ベクトルが磁性微粒子322の長軸方向と平行な偏光成分が反射され、その可視光反射率が10%以上となる。
【0045】
磁性微粒子100重量部に対する樹脂の重量部が2000よりも大きい場合、偏光層32内の磁性微粒子322の数が少なすぎる。そのため、可視光よりも波長の長い光(たとえば、赤外線)は透過及び反射するが、可視光を透過及び反射できない。一方、磁性微粒子100重量部に対する樹脂の重量部が7未満である場合、偏光層32内の磁性微粒子の数が過剰に多い。そのため、偏光層32内で隣り合う磁性微粒子同士の干渉が起こり、可視光反射率が低下する。好ましくは、偏光層32は、磁性微粒子100重量部に対して樹脂321を30〜1000重量部含有する。
【0046】
反射偏光子30は、自身の透過軸が、液晶パネル20に敷設された吸収偏光子22の透過軸と平行になるように、バックライト10上に敷設される。この場合、バックライト20からの入射光(無偏光の光)のうち、磁性微粒子322の長軸方向と垂直な電場ベクトルを有する偏光成分は反射偏光子30を透過した後、吸収偏光子22も透過する。一方、磁性微粒子322の長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分は、反射偏光子30で反射され、バックライト20内へ戻る。そして、バックライト20内の反射シート121で散乱して、蛍光灯13の光と合成され、無偏光の光として再び反射偏光子30に入射する。以上の動作を繰り返すことで、散乱された偏光成分もいずれは反射偏光子30を透過する。そのため、光の利用効率を向上できる。
【0047】
なお、磁性微粒子の分散性を向上するために、偏光層32に分散剤を添加してもよい。分散剤としては、たとえば、リン酸系分散剤、カルボン酸系分散剤、アミン系分散剤、キレ―ト剤、各種シランカップリング剤などが好適なものとして用いられる。
【0048】
リン酸系分散剤としては、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチルなどのアルキルリン酸エステル類、フェニルホスホン酸、モノオクチルフエニルホスホン酸などの芳香族リン酸類などが挙げられ、市販品として、東邦化学製の「GARFAC RS410」、城北化学工業製の「JP−502」、「JP−504」、「JP−508」などを用いることができる。
【0049】
カルボン酸系分散剤としては、炭素数12〜18個の脂肪酸、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸などが用いられる。また、上記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石けん、上記脂肪酸のアミド、上記脂肪酸のエステルまたはこれにフッ素を含ませた化合物、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンはエチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、スルホン酸塩、りん酸塩、銅フタロシアニン、安息香酸、フタル酸、テトラカルボキシルナフタレン、ジカルボキシルナフタレン、炭素数12〜22の脂肪酸などが挙げられる。
【0050】
アミン系分散剤としては炭素数8〜22の脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミン、アルコキシアルキルアミン等がある。さらに、キレ―ト剤としては、1,10−フエナントロリン、EDTA、ジメチルグリオキシム、アセチルアセトン、グリシン、ジチアゾン、ニトリロ三酢酸などが挙げられる。これらは、単独でも使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0051】
分散剤は、磁性微粒子100重量部に対して通常、0.5〜5重量部の範囲で添加される。
【0052】
[製造方法]
本発明の実施の形態による反射偏光子30の製造方法の一例を説明する。
【0053】
まず、偏光層32を構成する塗料(以下、偏光層用塗料という)を製造する。上述の樹脂321に、有機溶剤を加えて樹脂321を溶解する。有機溶剤は、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤などである。これらの有機溶剤は、単独で使用してもよく、複数の溶剤を混合して使用してもよい。さらにトルエンなどと混合して使用してもよい。
【0054】
樹脂321が溶解された有機溶剤に、さらに、磁性微粒子322及び分散剤を添加して所定時間攪拌する。以上の工程により偏光層用塗料が製造される。なお、分散剤は添加しなくてもよい。
【0055】
製造された偏光層用塗料を、基材31を構成する基材フィルム上にグラビアコータ等を用いて均一に塗布する。続いて、塗布された偏光層用塗料が硬化する前に、基材フィルムを挟むように配置された一対の磁石により、偏光層用塗料に磁場を印加する。磁場の印加により、偏光層用塗料が硬化する前に、磁性微粒子322は一方向に配向される。そして、磁性微粒子322が一方向に配向された状態で、偏光層用塗料が硬化する。以上の工程により、反射偏光子30が製造される。
【0056】
なお、樹脂321として活性エネルギ線硬化性樹脂を用いる場合は、以下の方法で反射偏光子30が製造される。活性エネルギ線硬化性樹脂に磁性微粒子322を添加し、偏光層用塗料を製造する。製造された偏光層用塗料をグラビアコータ等を用いて基材フィルム上に均一に塗布する。塗布後に磁場を印加して、磁性微粒子を一方向に配向する。その後、偏光層用塗料に活性エネルギ線を照射して塗料を硬化して、偏光層32とする。以上の工程により、反射偏光子30が製造される。
【0057】
上述のとおり、反射偏光子30は、磁場を印加することにより、容易に製造でき、製造工程が簡潔である。
【0058】
上述の実施の形態では、偏光層32は板状の基材31上に形成されたが、たとえば、基材31をプリズムシートやレンチキュラレンズシート等のレンズを有する光学シートとし、レンズが形成される面と反対側の面上、又はレンズが形成される面上に偏光層32が形成されてもよい。また、基材31を拡散シートや拡散板とし、拡散シートや拡散板の表面に偏光層32が形成されてもよい。さらに、基材31を液晶パネルに敷設される吸収偏光子(ヨウ素系偏光子又は染料系偏光子等)とし、吸収偏光子の表面に偏光層32が形成されてもよい。
【0059】
また、上述の実施の形態では、バックライト10を直下型としたが、バックライト10はサイドライト型であってもよい。
【実施例】
【0060】
複数の偏光子を製造し、各偏光子の偏光度及び反射率を調査した。
【0061】
表1に示す磁性微粒子を用いた複数の偏光子を製造した。表1に示すとおり、試験番号1、3及び6の偏光子には、還元された鉄(Fe)からなる磁性微粒子を用いた。一方、試験番号2、4及び5の偏光子には、還元された鉄(Fe)と、表面に形成された銀(Ag)被膜とを備えた磁性微粒子を用いた。いずれの磁性微粒子も、40〜320kA/mの保磁力と、20〜150A・m・kgの飽和磁化量とを有した。
【表1】

【0062】
試験番号1〜5の磁性微粒子のアスペクト比はいずれも15であり、かつ、長軸長はいずれも0.3μmであり、本発明の好ましい範囲内であった。一方、試験番号6の磁性微粒子のアスペクト比は1.5であり、長軸長は0.1μmであり、本発明の好ましい範囲外であった。
【0063】
また、試験番号1〜4及び6の磁性微粒子100重量部に対する樹脂の重量部は、いずれも100であり、本発明の好ましい範囲内であった。一方、試験番号5の樹脂の重量部は100000であり、本発明の好ましい範囲を超えた。なお、樹脂は、いずれの試験番号に対しても、塩化ビニル樹脂を用いた。
【0064】
各試験番号の偏光子を以下の方法で製造した。
【0065】
偏光層を作成するための塗料を以下の方法で作製した。試験番号1〜4及び6については、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、シクロヘキサンとメチルエチルケトンとで構成されこれらの重量比が1である溶媒を920重量部、分散剤であるリン酸ジメチルを2重量部、磁性微粒子を100重量部それぞれ含有した。そして、溶媒、分散剤、磁性微粒子が含有された塩化ビニル樹脂を18時間攪拌し、偏光層用塗料とした。一方、試験番号5については、磁性微粒子100重量部に対して偏光層用塗料中の塩化ビニル樹脂を100000重量部とした。試験番号5の他の成分(溶媒及び分散剤)の重量部は、試験番号1〜4及び6と同じとした。
【0066】
続いて、基材として、厚さが0.1mmのポリエチレンテレフタラートフィルムを準備した。グラビアコータを用いて、準備されたポリエチレンテレフタラートフィルムの一方の表面上に偏光層用塗料を均一に塗布した。
【0067】
試験番号1、2、5及び6については、一対の磁石を偏光層用塗料が塗布されたポリエチレンテレフタラートを挟んで互いに対向して配置し、これらの磁石により磁場を一定方向に印加した。これにより、偏光層用塗料が硬化する前に、磁性微粒子を一方向に配向した。磁性微粒子を配列後、偏光層用塗料を完全に硬化させて、偏光子とした。
【0068】
一方、試験番号3及び4については、磁場を印加することなく、偏光層用塗料を硬化し、偏光子とした。そのため、これらの試験番号の偏光子の磁性微粒子は、一方向に配向しなかった。
【0069】
製造された各偏光子の偏光度を以下の方法で求めた。まず、偏光子内の磁性微粒子の長軸方向と垂直な電場ベクトルを有する偏光成分の光を入射したときの透過率Taと、長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分の光を入射したときの透過率Tbとを測定した。測定には、分光光度計を用いた。測定された透過率Ta及びTbを用いて、偏光度Pを以下の式(2)より求めた。
【0070】
P=(Ta−Tb)/(Ta+Tb) (2)
さらに、製造された各偏光子について、無偏光の光を入射し、磁性微粒子の長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分の可視光反射率を分光光度計を用いて測定した。
【0071】
求めた偏光度及び可視光反射率を表1に示す。表1を参照して、試験番号1及び2は、偏光度が高く、50%を超えた。さらに、磁性微粒子の長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分の可視光反射率は10%以上であった。さらに、試験番号2の磁性微粒子は、可視光反射率の高い銀被膜を表面に有するため、磁性微粒子の長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分の可視光反射率が試験番号1よりも高かった。
【0072】
一方、試験番号3及び4の偏光子は、磁性微粒子が一方向に配向しなかったため、偏光度が低かった。また、試験番号5の偏光子は、偏光度が50%未満であり、可視光反射率も10%未満であった。可視光に対して高い偏光度及び可視光反射率を得るには磁性微粒子の含有量が少なすぎたためと考えられる。また、試験番号6の偏光子は、磁性微粒子のアスペクト比及び長軸長が低かったため、偏光度が50%未満であり、可視光反射率が10%未満であった。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態による液晶表示装置の斜視図である。
【図2】図1中の線分II−IIの断面図である。
【図3】図1中の反射偏光子の斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 液晶表示装置
10 バックライト
13 蛍光灯
20 液晶パネル
21,22 吸収偏光子
30 反射偏光子
31 基材
32 偏光層
121 反射シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する基材と、
前記基材上に形成された偏光層とを備え、
前記偏光層は、
各々が強磁性を有し、磁場配向により一方向に配向され、かつ、各々が長軸を有し、可視光のうち前記長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分を反射する複数の磁性微粒子と、
透光性を有し、一方向に配列された前記複数の磁性微粒子を含有する樹脂とを含むことを特徴とする反射偏光子。
【請求項2】
請求項1に記載の反射偏光子であって、
前記反射偏光子は、前記偏光成分に対して10%以上の反射率を有することを特徴とする反射偏光子。
【請求項3】
請求項2に記載の反射偏光子であって、
前記偏光層は、前記磁性微粒子100重量部に対して前記樹脂を7〜2000重量部含むことを特徴とする反射偏光子。
【請求項4】
請求項3に記載の反射偏光子であって、
前記磁性微粒子の長軸長は、0.1μmよりも大きく10μm以下であり、前記磁性微粒子のアスペクト比は、2以上であることを特徴とする反射偏光子。
【請求項5】
請求項4に記載の反射偏光子であって、
前記磁性微粒子は、金属磁性粒子であることを特徴とする反射偏光子。
【請求項6】
請求項4に記載の反射偏光子であって、
前記磁性微粒子は、表面に形成される金属被膜を含み、
前記金属被膜は、アルミニウム、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、鉄及びスズからなる群の1種又は2種以上からなることを特徴とする反射偏光子。
【請求項7】
両面に吸収偏光子が敷設された液晶パネルと、
光源と、前記光源から出射された光を反射する反射シートとを含むバックライトと、
前記液晶パネルと前記バックライトとの間に敷設され、対向する前記吸収偏光子の透過軸と平行な透過軸を有する反射偏光子とを備え、
前記反射偏光子は、
透光性を有する基材と、
前記基材上に形成された偏光層とを備え、
前記偏光層は、
各々が強磁性を有し、磁場配向により一方向に配向され、かつ、各々が長軸を有し、可視光のうち前記長軸方向と平行な電場ベクトルを有する偏光成分を反射する複数の磁性微粒子と、
透光性を有し、一方向に配列された前記複数の磁性微粒子を含有する樹脂とを含むことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−69450(P2009−69450A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237456(P2007−237456)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】