説明

反射型スクリーン、及び反射型投射システム

【課題】映像源との距離が近い場合であってもコントラストを向上させることができる反射型スクリーン、及び該反射型スクリーンを備えた反射型投射システムを提供する。
【解決手段】映像光が投射される側から、光学機能層と、フレネルレンズ層と、該フレネルレンズ層のレンズ面に形成された光反射層とを備え、光学機能層は、光を透過可能に並列された光透過部と、該光透過部間に光を吸収可能に形成された光吸収部とを備えており、光透過部の屈折率が光吸収部の屈折率より大きく、光吸収部の並列方向を鉛直方向とした姿勢での層厚方向の断面視において、光吸収部の光透過部との界面のうち、上側の界面及び下側の界面の一方が、光学機能層に入射すると想定される映像光の入射方向に基づいて形成されている、反射型スクリーン、及び該反射型スクリーンを備えた反射型投射システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像源から投射された光を反射させて観察可能とする反射型スクリーン、及び該反射型スクリーンを備えた反射型投射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射型スクリーンはプロジェクター等の映像源からの光を反射させて観察者側に出射し、その映像光を提供するためのスクリーンである。このような反射型スクリーンにおいて、コントラストの高い映像を得たいという要求やできる限り高輝度な映像を得たいという要求を満たす目的で、これまでに様々な技術が開示されている。例えば、特許文献1には、スクリーン面に対して直交する断面において、光を透過可能に並列された光透過部と、光透過部間に形成された空洞部とを備え、光透過部の裏面側には、光を反射する反射部が形成され、空洞部及び反射部より裏面側に光を吸収する光吸収層が形成されていることを特徴とする反射型スクリーンが開示されている。また、特許文献2には、スクリーン面に対して直交する断面において、光を透過する光透過部と、光を吸収する光吸収部と、少なくとも光透過部の裏面側に設けられ、光透過部を通過した光を反射する反射層と、を備え、光透過部と光吸収部とがスクリーン面に沿って交互に多数並べて形成されており、光透過部のスクリーン面に直交する断面における形状がスクリーン面に沿った方向で位置によって変化していることを特徴とする反射型スクリーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−204572号公報
【特許文献2】特開2008−39901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1や特許文献2に開示されている反射型スクリーンによれば、コントラストの高い映像を得られると考えられる。しかしながら、従来の反射型スクリーンでは、該スクリーンに対して近い位置(例えば、反射型スクリーンから1m以内の位置)に映像源を配置して斜め方向から映像光を投射すると、該映像源から反射型スクリーンに投射される光の入射角が大きくなり、反射型スクリーン内で映像光を適切に誘導して観察者側に反射させることが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、映像源との距離が近い場合であってもコントラストを向上させることができる反射型スクリーン、及び該反射型スクリーンを備えた反射型投射システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、映像源(2)から投射された映像光(VL)を反射させて観察可能とする反射型スクリーン(10)であって、映像光が投射される側から、光学機能層(12、12’、12’’)と、フレネルレンズ層(23)と、該フレネルレンズ層のレンズ面に形成された光反射層(24)とを備え、光学機能層は、光を透過可能に並列された光透過部(13)と、該光透過部間に光を吸収可能に形成された光吸収部(14、14’)とを備えており、光透過部の屈折率が光吸収部の屈折率より大きく、光吸収部の並列方向を鉛直方向とした姿勢での層厚方向の断面視において、光吸収部の光透過部との界面のうち、上側の界面(14b、14b’)及び下側の界面(14a、14a’)の一方が、光学機能層に入射すると想定される映像光の入射方向に基づいて形成されている、反射型スクリーンである。
【0008】
本発明において、「映像光が投射される側から、光学機能層と、フレネルレンズ層と、該フレネルレンズ層のレンズ面に形成された光反射層とを備え」とは、映像光が投射される側から、少なくとも光学機能層、フレネルレンズ層、及び光反射層が備えられており、これらの層間または表面に他の層が備えられていてもよいことを意味する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の反射型スクリーン(10)において、光吸収部(14、14’)の並列方向を鉛直方向とした姿勢において、光吸収部の光透過部(13、13’)との界面のうち下側の界面(14a、14a’)が光学機能層(12)に入射すると想定される映像光(VL)の入射方向に基づいて形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の反射型スクリーン(10)において、光吸収部(14、14’)の並列方向を鉛直方向とした姿勢において、光吸収部の配置位置が高い程、光吸収部の光透過部(13、13’)との界面のうち下側の界面(14a、14a’)の水平面に対する角度が大きくなっていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の反射型スクリーン(10)において、光学機能層(12’’)に入射すると想定される映像光(VL)の入射方向に基づいて形成された、光吸収部の光透過部との界面(14a)に、映像光を反射する反射部(17)が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反射型スクリーン(10)と、該反射型スクリーンに映像光(VL)を投射する映像源(2)とを備える、反射型投射システム(1)である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の反射型投射システム(1)において、映像源(2)の出光面から反射型スクリーン(10)の観察者側の面までの水平方向距離が1m以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、映像源との距離が近い場合であってもコントラストを向上させることができる反射型スクリーン、及び該反射型スクリーンを備えた反射型投射システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一つの実施形態にかかる反射型投射システム1を概略的に示す断面図である。
【図2】光学機能層12の一部を拡大して概略的に示す図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、光吸収部の具体的な形状を例示した断面図である。
【図4】光透過部13、13、…を形成する工程の一例を模式的に示す図である。
【図5】他の実施形態にかかる光学機能層12’を概略的に示す断面図であり、図2に相当する図である。
【図6】光学機能層12’を作製する方法について説明する図である。
【図7】他の実施形態にかかる光学機能層12’’を概略的に示す断面図であり、図2に相当する図である。
【図8】光学機能層12’’を作製する方法について説明する図である。
【図9】フレネルレンズ層23の一部を拡大するとともに、フレネルレンズ層23に入射した映像光の光路例を示す図である。
【図10】フレネルレンズ層23を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。なお、各図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺等は変更して簡略化している。また、各図面において、同様の構成のものには同じ符号を付しており、繰り返しとなる符号は一部省略している場合がある。
【0017】
<反射型投射システム1>
以下に反射型投射システムについて説明する。図1は一つの実施形態にかかる反射型投射システム1を概略的に示す断面図である。図1からわかるように、反射型投射システム1は、映像源2及び反射型スクリーン10を備えている。以下にそれぞれについて説明する。
【0018】
映像源2は、反射型スクリーン10に向けて映像光を投射する装置であり、公知のプロジェクターを用いることができる。図1からわかるように本実施形態では、映像源2は反射型スクリーン10の画面中央より下方側から映像光を反射型スクリーン10に向けて投射する。
【0019】
反射型スクリーン10は、全体として矩形の薄いシート状であり、使用時には展開されてシート面が垂直方向に立てられるように設置される。なお、使用時において反射型スクリーン10の平面性を確保するため、反射型スクリーン10は所定の剛性を有する不図示の支持手段に粘着剤等により貼り付けられていることが好ましい。支持手段としては板やシート状の部材を挙げることができるが、反射型スクリーン10の姿勢を維持することができれば特に限定されることはない。また使用していないときにはロール状に巻いてコンパクトにすることができてもよい。
そして反射型スクリーン10は映像源2から投射された映像光を観察者A(図1参照)の側に反射させることによりスクリーンとして機能する。
【0020】
後述するように、反射型スクリーン10によれば、映像源2と反射型スクリーン10との距離が近い場合であってもスクリーン面に表示される映像のコントラストを向上させることができる。よって、映像源2の出光面と反射型スクリーン10の観察者側の面との水平方向距離は、1m以内とすることができる。例えば超短投写距離フロントプロジェクターCP‐A100J(日立製作所社製)を用いたときには0.63mの距離から80インチの画像を表示することができる。
【0021】
<反射型スクリーン10>
次に、図面を参照しつつ反射型スクリーンについて説明する。図1に示した反射型スクリーン10は、映像源2からの光が投射される側(観察者側)から、ハードコート層21、光学機能層12、基材層11、拡散層22、フレネルレンズ層23、及び反射層24を備えている。以下、これらの層について詳細に説明する。
【0022】
(基材層11)
基材層11は、光学機能層12を形成するための基材となるシート状の部材で、透光性が高く形成されている。基材層11を構成する材料は特に限定されることはないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)、アクリル系、トリアセチルセルロース(TAC)等の各樹脂を挙げることができる。入手性や取り扱い容易性、成形性、及び価格等の観点からは、MBSを用いることが好ましい。
【0023】
ここで、基材層11は透光性を有しつつも、他の機能を備えるものとされてもよい。例えば視野角を拡大したり、面内の輝度の均一性を高めたりするために光散乱材を混入することができる。また、色調を修正したり、映像光以外の光(以下、映像光以外の光を「外光」ということがある。)の一部を吸収してコントラストを向上させたりするために顔料や染料を混入してもよい。
【0024】
(光学機能層12)
光学機能層12は、後に詳述するように、映像光を効率良く透過させつつ、外光を吸収することもできることによって、反射型スクリーン10に表示される映像のコントラストを向上させることに寄与する層である。光学機能層12は、図1に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を備える。すなわち、図1に表れる断面において、光学機能層12は、光を透過可能に並列された光透過部13、13、…と、光透過部13、13、…間に光を吸収可能に形成された光吸収部14、14、…とを備えている。図2には、光学機能層12の一部を拡大して示した。図中の一点鎖線は、光吸収部14と光透過部13との界面のうち下側の界面14aに平行な線を示している。
【0025】
光透過部13、13、…は、光を透過する機能を有する部位で、図1及び図2に表れる断面において、上下非対称な略四角形の断面を有する要素である。また、光透過部13、13、…は、屈折率がNpであり、このような光透過部13、13、…は、例えば、後に説明する光透過部構成組成物を硬化させることによって構成することができる。なお、屈折率Npの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。
【0026】
次に、光吸収部14、14、…について説明する。光吸収部14、14、…は、光を吸収する機能を有する部位で、光透過部13、13、…の間に配置されている。また、光吸収部14は、その延在方向に直交する断面視において、光反射層24側に一つの頂点が在る上下非対称な略三角形の断面を有する。光吸収部14、14、…の略三角形断面における底辺14cは、光学機能層12の観察者側の層面に沿う方向に配置されている。なお、図には光吸収部14が略三角形断面を有する形態を例示しているが、光吸収部の断面形状は、略三角形の頂部を欠いた略台形であってもよい。
【0027】
光吸収部14、14、…は屈折率Nbを有する所定の材料により構成されており、光吸収部14、14、…の屈折率Nbは光透過部13、13、…の屈折率Npより小さい。このように、Np>Nbの関係を満たすようにすることによって、光透過部13と光吸収部14との界面に所定の角度(臨界角以上の角度)で入射した映像光を光吸収部14で吸収させずに全反射させることができる。NpとNbとの差は特に限定されないが、0.005以上、0.06以下であることが好ましい。NpとNbとの差を0.005以上とすることによって、光透過部13と光吸収部14との界面で光を全反射させ易くなる。また、NpとNbとの差を0.06以下とすることによって、材料の入手が容易になる。さらに、いわゆるゴーストの発生を抑制し易くなる。
【0028】
光吸収部14の形状について、以下にさらに詳細に説明する。図1及び図2に表れる断面、すなわち、光吸収部14、14、…の並列方向を鉛直方向とした姿勢での層厚方向の断面視において、光吸収部14の光透過部13との界面のうち、上側の界面14b及び下側の界面14aの一方は、光学機能層12に入射すると想定される映像光の入射方向に基づいて形成されている。
【0029】
光吸収部14と光透過部13との界面について、以下により具体的説明する。光吸収部の光透過部との界面のうち、上側の界面及び下側の界面のどちらの界面が映像光の入射方向に基づいて形成されるかは、映像源の配置位置による。図1及び図2に例示した実施形態では、反射型スクリーン10の斜め下方に映像源2を配置し、反射型スクリーン10の斜め下方から映像光VLを投射する場合を想定している。よって、界面14aが水平面と成す角θ1は、映像光VLの入射方向に基づいて形成されている。具体的には、θ1は映像光VLの入射角に近い角度になるように形成されている。θ1は、映像光VLの入射角と同一であることが好ましい。なお、蛍光灯や太陽光等など外光OLは、主に斜め上方から光学機能層12に入射する。
【0030】
上述したように、界面14aと水平面が成す角θ1を映像光VLの入射角に近い角度になるように形成することによって、光吸収部14の底面14cに到達する映像光VL(図2に矢印x1で示した領域の映像光VL)の一部は光吸収部14で吸収されるが、その他の領域の映像光VLの多くは界面14aに到達することなく光透過部13を透過し、光吸収部14で吸収されない。なお、映像光VLは全ての光が平行となって光学機能層12に入射するわけではない。したがって、θ1を映像光VLの入射角に近い角度にしたとしても、図2に示した光路例L1にように、界面14aに到達する映像光もある。このとき、界面14aは映像光の入射角に近い角度に形成されているため、光L1は大きな入射角で界面14aに入射することになる。一方、上述したように、光透過部13の屈折率Npは光吸収部14の屈折率Nbより大きくなっている。したがって、映像光が界面14aに到達したとしても、その多くは臨界角以上の角度で界面14aに入射されるため、界面14aで全反射されて光吸収部14で吸収されずに光透過部13を透過することができる。光透過部13を透過した映像光は、後に説明するように、フレネルレンズ層23及び反射層24で角度を変えて反射されることによって、再び光透過部13を透過し、観察者側から観察することができる。このとき、光吸収部14と光透過部13との界面に到達した反射光の一部は光吸収部14で吸収されずに当該界面で全反射されるため、映像光の減衰が抑制される。このように、反射型スクリーン10によれば、多くの映像光を効率よく利用し、明るい映像を提供することができる。
【0031】
上述したように、光学機能層12では映像光VLの入射角に基づいて界面14aの角度を適宜調整することによって、映像光VLの入射角が大きい場合であっても該映像光VLを効率良く透過させ、フレネルレンズ層23及び反射層24へと導くことができる。したがって、映像源2が反射型スクリーン10の近くに配置された場合であっても、スクリーン面に映像を表示することができる。
【0032】
一方、斜め上方から入射する外光OLは、一部は界面14bで全反射されずに吸収される。
【0033】
このように、反射型スクリーン10によれば、映像光VLを効率良く利用しつつ、外光OLを光吸収部14で吸収することができるため、スクリーン面に表示される映像のコントラストを高くすることができる。また、上述したように映像源2と反射型スクリーン10との距離を近くしても映像光VLを透過させることができ、かつ外光OLを吸収することができるので、映像源2が反射型スクリーン10の近くに設置された場合でもスクリーン面に表示される映像のコントラストを高くすることができる。
【0034】
より多くの映像光VLを光吸収部14で吸収させずに光透過部13を透過させるためには、図1に示した姿勢において、光吸収部14の配置位置が高い程、界面14aの水平面に対する角度を大きくすることが好ましい。すなわち、図1に示した姿勢において、光吸収部14の配置位置が高い程、θ1を大きくすることが好ましい。図1に例示したように反射型スクリーン10の斜め下方から映像光VLを投射する場合、反射型スクリーン10の高い位置程、映像光VLの入射角が大きくなるからである。
【0035】
上述したように、反射型スクリーンにおいて、スクリーン面に表示される映像のコントラストを高くするには、光学機能層に備えられた光吸収部の形状が大きく寄与する。また、適切な光吸収部の形状及び配置は反射型スクリーンと該反射型スクリーンに映像光を投射する映像源との位置関係によって変わる。したがって、光吸収部の大きさ、配置間隔、及び光吸収部と光透過部との界面の角度等は、反射型スクリーンと映像源と位置関係などに応じて適宜変更することができる。
【0036】
例えば、光吸収部14の底辺14cに達する映像光が在る領域の幅x1は5μm以上50μm以下とすることが好ましく、10μm程度とすることがより好ましい。一方、底辺14cには到達しない映像光が在る領域の幅x2は25μm以上250μm以下とすることが好ましく、50μm程度とすることがより好ましい。また、光学機能層12の観察者側からの平面視において、スクリーン面に占める光吸収部14、14、…の割合は、2%以上50%以下であることが好ましく、20%程度であることがより好ましい。θ1は、20度以上85度以下であることが好ましく、より好ましくは32.9度以上77度以下である。ここで、θ1が77度の場合は、反射型スクリーンの映像表示面の下端から水平距離で269.9mm、高さで174.3mm下に映像源の出光面が配置される場合を想定している。θ1が32.9度である場合と、77度である場合の具体的な形態を例示すると、図3のようになる。図3(a)及び図3(b)は、光吸収部の具体的な形状を例示した断面図であり、図3(a)はθ1が32.9度である場合、図3(b)はθ1が77.0度である場合を示している。なお、上述したように、θ1は光吸収部の配置位置(映像源からの距離)に応じて変更されることが好ましく、映像光の入射角に応じて、x1とx2とが一定となるように各光吸収部が形成されることが好ましい。
【0037】
光学機能層12は、例えば、以下に説明するように、基材層11の表面に光透過部13、13、…を形成した後、光透過部13、13、…間の溝に光吸収部14、14、…を形成することによって作製することができる。
【0038】
図4は、光透過部13、13、…を形成する工程の一例を模式的に示した図である。光透過部13、13、…を形成するには、まず、光透過部13、13、…の形に対応した形の溝を所定のピッチで有する金型ロール42を準備する。次に、当該金型ロール42とニップロール41との間に、基材層11となる、又は基材層11となる層を含む基材11’を送り込む。図4に示した矢印は、基材11’を送り込む方向である。基材11’の送り込みに合わせて、金型ロール42と基材11’との間に、後に説明する光透過部構成組成物40の液滴を供給装置45から供給し続ける。供給装置45から基材11’上に光透過部構成組成物40を供給するとき、金型ロール42と基材11’との間に、光透過部構成組成物40が溜まったバンクが形成されるようにする。このバンクにおいて、光透過部構成組成物40が基材11’の幅方向に広がる。
【0039】
上記のようにして金型ロール42と基材11’との間に供給された光透過部構成組成物40は、金型ロール42およびニップロール41間の押圧力により、基材11’と金型ロール42との間に充填される。その後、光照射装置44によって光透過部構成組成物40に紫外線等を照射し、光透過部構成組成物40を硬化させることによって光透過部13、13、…を形成することができる。光透過部13、13、…が形成された後、基材11’上に光透過部13、13、…が形成されたシートは、剥離ロール43を介して引かれることによって、金型ロール42から引き剥がされる。
【0040】
次に、光吸収部14、14、…を形成するには、上述したようにして作製した光透過部13、13、…上に、後に説明する光吸収部構成組成物を供給し、ドクターブレードなどによって該光吸収部構成組成物を光透過部13、13、…間の溝に充填しつつ、余剰分の光吸収部構成組成物を掻き落とす。その後、光透過部13、13、…間の溝に残った光吸収部構成組成物に紫外線等を照射して硬化させることにより、光吸収部14、14、…を形成することができる。
【0041】
上記光透過部構成組成物としては、紫外線などの光で硬化させられる組成物が好ましい。このような組成物としては、例えば、以下に挙げる光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)および光重合開始剤(S1)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0042】
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
【0043】
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0044】
さらに、上記光重合開始剤(S1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物、ベンゾイルホルメート化合物、チオキサントン化合物、ベンゾフェノン、リン酸エステル化合物、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、光透過部13の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
【0045】
上記光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(S1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また必要に応じて、光透過部構成組成物中に、塗膜の改質や塗布適性、金型からの離型性を改善させるため、種々の添加剤としてシリコーン系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を添加することも可能である。
【0046】
本実施形態における光吸収部14、14、…は、光吸収粒子16、16、…と光吸収粒子16、16、…を分散させたバインダー15とを含む光吸収部構成組成物が光透過部13、13、…間の溝に充填されることにより構成されている。これにより、光吸収部14、14、…の内側に入射した光を光吸収粒子16、16、…で吸収することができる。
【0047】
なお、屈折率Nbを有する所定の材料により光吸収部14、14、…を構成するとは、例えば、屈折率Nbである材料によりバインダー15が構成されることを意味する。当該バインダー15として用いられるものは特に限定されないが、紫外線などの光によって硬化される組成物が好ましい。このような組成物としては、例えば、以下に例示する光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)及び光重合開始剤(S2)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0048】
上記光硬化型プレポリマー(P2)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0049】
また、上記反応性希釈モノマー(M2)としては、例えば、単官能モノマーとして、ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、(メタ)アクリレート系のものを挙げられる。
【0050】
さらに、上記光重合開始剤(S2)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。
【0051】
上記光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)及び光重合開始剤(S2)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート及びメトキシトリエチレングリコールアクリレートからなる光重合性成分(詳しくは、光硬化型プレポリマー(P2)及び反応性希釈モノマー(M2))の屈折率、粘度、又は光学機能層12の性能への影響等を考慮して任意に配合して用いることができる。また必要に応じて、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤及び溶剤等を光吸収部構成組成物に添加してもよい。
【0052】
光吸収粒子16としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。着色粒子の平均粒子径は1.0μm以上20μm以下であることが好ましい。平均粒子径が1.0μm以上の着色粒子を用いることによって、光吸収部を形成する過程において、着色粒子がドクターブレードと光透過部13の上部との間の隙間を抜け難くなり、光透過部13の上部に着色粒子が残留することを防止できる。
【0053】
なお、光吸収部は、上述したような光吸収粒子を用いる形態に限定されず、光吸収部全体を顔料などによって着色することによって構成してもよい。
【0054】
上述したように、光学機能層12によれば、映像光VLを効率よく透過させつつ、外光OLを吸収することができるため、スクリーン面に表示される映像のコントラストを高くすることができる。透過する映像光の量を増やして光吸収部によって吸収される外光の量も多くするという観点からは、光学機能層は、例えば、以下のような形態であってもよい。図5は、他の実施形態にかかる光学機能層12’を概略的に示す断面図であり、図2に相当する図である。
【0055】
光学機能層12’は、光透過部13’と光吸収部14’とが交互に形成された層である。光吸収部14’の下側の界面14a’は、上述した界面14と同様に、映像光VLの入射方向に近い角度になるように形成されている。一方、光吸収部14’の上側の界面14b’は、界面14a’と略平行に形成されている。かかる形態とすることによって、光学機能層12に比べて、光吸収部で吸収される映像光の量を減らすことができる。光学機能層12’において光吸収部14’の底辺14c’に到達する映像光VLがある領域(図5に矢印x3で示した領域)は、光学機能層12において光吸収部14の底辺14cに到達する映像光VLがある領域(図2に矢印x1で示した領域)よりも小さくすることができるからである。また、斜め上方から入射する外光OLの界面14b’への入射角が界面14bへの入射角より小さくなるため、光吸収部14’で吸収できる外光の量を増やすことができる。よって、光学機能層12’を用いれば、コントラストが高い映像を提供することができる。ただし、生産性の観点からは、上述した光学機能層12の方が好ましい。
【0056】
光学機能層12’は、例えば、以下に説明するようにして作製することができる。図6は、光学機能層12’を作製する方法について説明する図である。光学機能層12’を作製するには、例えば、図6に示したように、光を透過する層31と、光を吸収する層32とを交互に積層した積層体を作製し、該積層体を図6に破線で示したように積層方向に対して斜めに切断することによって、作製することができる。この場合、切断して作製されたシートのうち、光を透過する層31の部分が光透過部13’となり、光を吸収する層32の部分が光吸収部14’となる。
【0057】
また、これまでの光学機能層の説明では、光透過部と光吸収部と屈折率差を利用して光透過部と光吸収部との界面で映像光を反射させる形態を例示して説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。スクリーン面に表示される映像をできる限り明るくするためには、光透過部を透過する映像光の量をできる限り多くすることが好ましい。したがって、光学機能層は、例えば、以下に説明するような形態であってもよい。図7は、他の実施形態にかかる光学機能層12’’を概略的に示す断面図であり、図2に相当する図である。
【0058】
光学機能層12’’は、光透過部13と光吸収部14との界面のうち、下側の界面14aに映像光を反射する反射部17が形成されている以外は上述した光学機能層12と同様である。
【0059】
映像光VLは全てが平行となって光学機能層に入射するわけではない。したがって、光学機能層に入射すると想定される映像光VLの角度に合わせて光透過部と光吸収部との界面を形成したとしても、図7に示した光路例L2のように、一部の光は光透過部と光吸収部との界面に到達する。このとき、光学機能層12’’のように、界面14aに反射部17を形成しておくことによって、反射部17に達した映像光を反射させ、映像光が光吸収部14で吸収させるのを防止するとともに、該映像光を光反射層24側へと導くことができるので、映像光の利用効率を向上させることができる。
【0060】
光学機能層12’’は、例えば、以下に説明するようにして作製することができる。図8は、光学機能層12’’を作製する方法について説明する図である。光学機能層12’’を作製するには、例えば、図8(a)に示したように、光透過部13、13、…を形成する。光透過部13、13、…の形成方法は、上述した光学機能層12の作製方法と同様の方法とすることができる。次に、図8(b)に示したように、斜め方向(矢印で示した方向)から光を反射する層17’を蒸着する。その後、図8(c)に示したように、シート表面を削ることによって、反射部17を形成することができる。光透過部13、13、…間の溝14’、14’、…に光吸収部14、14、…を形成方法は、上述した光学機能層12の作製方法と同様の方法とすることができる。なお、シート表面を削る工程は、光吸収部14、14、…を形成する前であっても後であってもよい。
【0061】
また、これまでの光学機能層の説明では、反射型スクリーンの斜め下方から映像光が透過される場合について説明したが、映像源は反射型スクリーンの斜め上方に配置されることもある。この場合、これまでに説明した光学機能層の上下を逆にすることによって、これまでに説明した光学機能層と同様にスクリーン面に表示される映像のコントラストを高くすることができる。なお、この場合は、床面などで反射して反射スクリーンの斜め下方から入射する外光を光吸収部で吸収することができる。
【0062】
(フレネルレンズ層23)
次に、フレネルレンズ層23について説明する。フレネルレンズ層23としては、公知のフレネルレンズを有する層を、特に限定することなく用いることができる。
【0063】
図9はフレネルレンズ層23の一部を拡大するとともに、フレネルレンズ層23に入射した映像光の光路例を示した図である。フレネルレンズ層23は、単位レンズ23aを複数備えている。また、単位レンズ23aは、斜面23bと、該斜面23bを形成するための立ち上げ面23cとを備えたレンズ面を有し、観察者側とは反対側に凸となるように形成されている。単位レンズ23aのレンズ面には後述する光反射層24が形成されており、斜面23bは、当該斜面23bに到達した光を反射させる反射面として機能する。
【0064】
ここで、斜面23bは、スクリーン面に垂直な面となす角がαである。当該αは以下に光路例を示すように、映像源2からフレネルレンズ層23に到達した映像光を反射させ、最終的にはこれを観察者に向けて出射させることができる偏向機能を有するように構成されている。従ってαの角の大きさは映像光を投射する映像源2の画素の大きさや映像源2の位置等に応じて適宜変更可能である。また、複数のレンズ部23aの全てにおいてαを同じ大きさにする必要はなく、一部を変更したり、配列方向に沿って次第に変化させたりしてもよい。これらは映像源2からフレネルレンズ層23に入射する光の角度等を考慮して適宜形状を選択することができる。
【0065】
フレネルレンズ層23に入射した映像光の光路例について、図9を参照しつつ説明する。ただし、図に表した光路例は概念的に光の進路を表したものであり、屈折の程度や反射の角度を精密に表したものではない。
【0066】
図9に示すように、斜め下方から斜面23bに到達した映像光L3は、光反射層24によって反射され、観察者側に提供される。このとき、斜面23bは上述したように適切な傾斜角度(α)とされているため、観察者によって見易いように映像光L3の光路が制御される。
【0067】
このようなフレネルレンズ層23に備えられる単位レンズ23aの構成について、以下に例示する。図10は、フレネルレンズ層23を模式的に表した平面図である。
【0068】
図10に示したフレネルレンズ層23に備えられる単位レンズ23a、23a、…は、同心円をなす円の弧上に延びるように配列されている。そして、水平方向における単位レンズ23a、23a、…の構成は、水平方向における中心位置を通る鉛直方向と平行な軸Aaを中心として、線対称となっている。このような単位レンズ23a、23a、…の構成は反射型スクリーン10に対する映像源等の配置に基づいて設計され得る。例えば、反射型スクリーン10を備えた反射型投射システムを正面から観察した場合において、単位レンズ23a、23a、…の配置に関する同心円の中心Oが、映像源2の配置位置に重なる位置になるように設計する。このように中心Oをフレネルレンズ層23の中心から鉛直方向下側に偏心させることにより、反射型スクリーン10の斜め下方から映像光VLを投射したとしても、映像源2から反射型スクリーン10方向へ広がっていく光束を反射させて、反射型スクリーン10の正面方向への平行光束にすることができる。反射型スクリーン10の斜め下方から映像光VLを照射する構成とすることによって、反射型スクリーン10と映像源2の距離を近づけることができる。
【0069】
このようなフレネルレンズ層23を構成する材料としては、特に限定されることなく種々のものを使用することができる。ただし、スクリーン用の材料として広く使用され、優れた機械的特性、光学特性、安定性及び加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。
【0070】
なお、フレネルレンズ層としてサーキュラーフレネルレンズを例示して説明したが、フレネルレンズ層は、単位レンズの配列方向が交差するように組み合わされた2以上のリニアフレネルレンズ層で構成されていてもよい。
【0071】
(光反射層24)
次に、光反射層24について説明する。光反射層24は、フレネルレンズ層23のレンズ面に形成され、映像光を反射させる層である。光反射層24は映像光を反射可能な形態であれば特に限定されず、公知の手段によって形成することができる。例えば、蒸着によってアルミニウムなどの金属からなる境面を形成し、当該境面を光反射層24とすることができる。また、スプレーコーティングによって反射性塗料を吹き付けて乾燥させて光反射層24を形成することもできる。当該反射性塗料としては、表面が平滑なアルミ片を含んだ鏡面塗料、フレーク状のアルミ微細粉を含んだメタリック塗料(1液のもの、硬化剤を含む2液のものいずれもでもよい。)などを挙げることができる。さらに、スクリーン印刷やその他印刷方式によって、ミラーインキやメタリックインキを塗布し、熱硬化またはUV硬化させて光反射層24を形成することもできる。
なお、光反射層24は、映像光を100%反射させるものに限定されない。例えば、白色インキ(顔料として、例えば酸化チタンを含むもの。)及びアルミニウムや黒色インキを混合するなどして、反射率を適宜調整することもできる。
【0072】
(光拡散層22)
次に、光拡散層22について説明する。光拡散層22は、光反射層24で反射された映像光を等方拡散して観察者側に出射する層である。具体的には、光拡散層22は、透明樹脂からなるベース部と、該ベース部中に分散された光拡散剤とを有している。そして、光拡散層22は、例えば、ベース部と光拡散剤との間の屈折率差に起因して、或いは、光拡散剤自体が有する反射性に起因して、光を等方的に拡散する機能を発現する。ただし、本発明において、光拡散層22は光を等方拡散する層に限定されず、反射型スクリーンの用途に応じて、光を異方拡散する層であってもよい。例えば、ベース部中における光拡散剤の分布や光拡散剤の形状を調整することによって、光を異方拡散することができる。光拡散層22のこのような光拡散能によって、映像光が拡散され、観察者は、光拡散層22の光拡散能に応じた視野角の範囲内で映像を観察することができる。
【0073】
光拡散層22のベース部を構成する透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)、アクリル系、トリアセチルセルロース(TAC)等の各樹脂を挙げることができる。入手性や取り扱い容易性、成形性、及び価格等の観点からMBSが好ましい。
【0074】
一方、光拡散剤は、一例として、平均粒径が1μm〜100μm程度であるシリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の透明物質からなる粒子を用いることができる。或いは、拡散成分は気泡であっても良い。これらによれば母材と光拡散剤との屈折率差による界面反射を利用して光を散乱させることができる。
【0075】
光拡散層22の厚みは、0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.2mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。光拡散層22の厚みが0.1mm未満であれば、光拡散層22の光拡散能が不十分となる虞がある。一方、光拡散層22の厚みが2mmを超えると、反射型スクリーン10の観察者側に表示される映像の解像性が劣化し、映像がぼやける虞がある。
【0076】
(ハードコート層21)
次に、ハードコート層21について説明する。ハードコート層21は、反射型スクリーン10の最表面に配置されており、反射型スクリーン10の映像表示面を構成する。したがって、ハードコート層21は、外部との接触に起因した擦傷に対する耐性が付与されている。このようなハードコート層21としては、公知のものを用いることができる。ハードコート層21は、例えば、電離放射線硬化型樹脂を硬化させることによって形成できる。当該電離放射線硬化型樹脂の具体例としては、アクリルウレタン系の電離放射線硬化型樹脂を挙げることができる。
【0077】
(その他の層)
これまでに説明した各層は、融着、又は粘着剤層を介することによって互いに固定されている。当該粘着剤層に用いられる粘着剤は、光を透過させるとともに、適切な粘着性を有すればその材質は特に限定されるものではない。これには、例えばアクリル系粘着剤を挙げることができる。その粘着力は、例えば、数N/25mm〜20N/25mm程度である。
【0078】
なお、これまでの説明では、ハードコート層、光学機能層、基材層、光拡散層、フレネルレンズ層、及び光反射層を備える形態について例示したが、本発明の反射型スクリーンは、少なくとも光学機能層、フレネルレンズ層、及び光反射層を備えていればよく、上記の層全てを必須とするわけではない。また、その他の層が備えられていてもよい。
【0079】
上記その他の層としては、従来の反射型スクリーンに備えられていた層を適宜用いることができ、例えば、減光層を挙げることができる。減光層は、外光の一部を吸収してコントラストを向上させる機能を有する層である。このような減光層は、上述した光拡散層や粘着剤層や光学機能層の光透過部に顔料又は染料を混合し、これらの層に減光層としての機能を兼ね備えさせることによって構成してもよく、別途、減光層としての機能のみを有する層を形成してもよい。
このような減光層によれば、反射型スクリーンに入射される外光の少なくとも一部を吸収させることができ、観察者に提供される映像光のコントラストを向上させることができる。かかる観点からは、減光層はできる限り観察者側に配設されることが好ましい。
【符号の説明】
【0080】
1 反射型投射システム
2 映像源
10 反射型スクリーン
11 基材層
12 光学機能層
13 光透過部
14 光吸収部
15 バインダー
16 光吸収粒子
20 光拡散層
21 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投射された映像光を反射させて観察可能とする反射型スクリーンであって、
前記映像光が投射される側から、光学機能層と、フレネルレンズ層と、該フレネルレンズ層のレンズ面に形成された光反射層とを備え、
前記光学機能層は、光を透過可能に並列された光透過部と、該光透過部間に光を吸収可能に形成された光吸収部とを備えており、
前記光透過部の屈折率が前記光吸収部の屈折率より大きく、
前記光吸収部の並列方向を鉛直方向とした姿勢での層厚方向の断面視において、前記光吸収部の前記光透過部との界面のうち、上側の界面及び下側の界面の一方が、前記光学機能層に入射すると想定される映像光の入射方向に基づいて形成されている、反射型スクリーン。
【請求項2】
前記光吸収部の並列方向を鉛直方向とした姿勢において、前記下側の界面が前記光学機能層に入射すると想定される映像光の入射方向に基づいて形成されている、請求項1に記載の反射型スクリーン。
【請求項3】
前記光吸収部の並列方向を鉛直方向とした姿勢において、前記光吸収部の配置位置が高い程、前記下側の界面の水平面に対する角度が大きくなっている、請求項2に記載の反射型スクリーン。
【請求項4】
前記光学機能層に入射すると想定される映像光の入射方向に基づいて形成された前記界面に、該映像光を反射する反射部が形成されている、請求項1に記載の反射型スクリーン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の反射型スクリーンと、該反射型スクリーンに映像光を投射する映像源とを備える、反射型投射システム。
【請求項6】
前記映像源の出光面から前記反射型スクリーンの観察者側の面までの水平方向距離が1m以下である、請求項5に記載の反射型投射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−252096(P2012−252096A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123581(P2011−123581)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】