説明

反射型スクリーン及びそれを用いた投射画像表示システム

【課題】外光の反射によるコントラスト低下を軽減し、ゲインの低下を抑える反射型スクリーンを提供する。
【解決手段】反射型スクリーン1は、樹脂シート2、光吸収層4、光反射層5及び低屈折率層6を備える。樹脂シート2は、透光性を有し、主平面の一方の側にストライプ状の凸部3が周期Pの幅で周期的に形成される。低屈折率層6は、主平面の他方の側に配置され、樹脂シート2より0.15以上低い屈折率を有する。光吸収層4は、凸部3のストライプ形状に平行するように、低屈折率層6と交互に凸部3に対向して配置される。光反射層5は、低屈折率層6を挟んで、低屈折率層6と樹脂シート2との界面と対向して配置され、散乱反射特性を有する。凸部3は、長手方向と直交する断面形状が円弧である。低屈折率層6と樹脂シート2との界面の法線方向が主平面の法線方向に対して傾斜し、一組の光吸収層4及び低屈折率層6は周期Pと略同じ幅で配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ホームシアター、会議システムなどに適用可能な反射型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタ、DMD(Digital Micro mirror Device)プロジェクタは、スクリーンに画像を投射拡大し表示することで、60インチ以上の大画面を実現することができる。表示デバイスの解像度向上、並びに、光源ランプの光束向上に伴い、大画面化、高精細化が進み、ホームシアター、会議システムで主に使用されている。また投射した画像を観察者側に戻すには反射型スクリーンを使用する必要がある。反射型スクリーンは表面に凹凸を有した白色シートを用いるのが一般的である。
【0003】
ところで、上述したような白色のシートの反射型スクリーンでは投射した画像以外の外光も反射し、観察者側で観察されるようになる。このため、投射した画像に外光反射光が重なり、黒を表示した場合でも灰色となり、コントラストの低下を引き起こす。そこで、コントラストの高い画像を得るためには、外光の要因である天井に設置された蛍光灯を消灯することや、昼間であれば窓にカーテンを掛けることが必要である。
【0004】
一方、反射型スクリーンが白色シートではなく、凹凸構造と位置合わせをした吸収層を形成することによって、外光を吸収しコントラストを高める反射型スクリーンも提案されている(特許文献1〜2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−7027号公報(図1等)
【特許文献2】国際公開番号WO2008/139914号(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の反射型スクリーンではガラスビーズの裏面に投射光を集光させている。これを実現するにはガラスビーズの屈折率を2以上にする必要がある。このため、高価な材料を使用することになり、コストが掛かるという点が問題となる。
また、特許文献2記載の反射型スクリーンでは拡散層が透光層と接しており、かつ拡散層が光を拡散反射させるため、透光層に反射された光は透光層と空気との屈折率で決まる臨界角以上の光が発生する。透光層の入射面の法線に対し臨界角以上の角度で達した光は、全反射により出射することはできない。つまりエネルギー損失を生じるため、高いゲインを得ることは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、外光の反射によるコントラスト低下を軽減すると共に、ゲインの低下を抑えることが可能な反射型スクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る反射型スクリーンの一態様は、樹脂シート、低屈折層、光吸収層、及び光反射層を備える。樹脂シートは、透光性を有し、主平面の一方の側(表面)にストライプ状の凸部が周期Pの幅で周期的に形成される。低屈折率層は、主平面の他方の側(裏面)に配置され、樹脂シートより0.15以上低い屈折率を有する。光吸収層は、凸部のストライプの形状に平行するように、低屈折率層と交互に凸部に対向して配置される。光反射層は、低屈折率層を挟んで、低屈折率層と樹脂シートとの界面と対向して配置され、散乱反射特性を有する。凸部は、当該凸部の長手方向と直交する断面形状が円弧からなる。低屈折率層と樹脂シートとの界面の法線方向が、主平面の法線方向に対して傾斜している。一組の光吸収層及び低屈折率層は、周期Pと略同じ幅で配置される。
光源から発射される投射光は、凸部3に形成される円弧のレンズ機能で集光され、低屈折率層6を通過後、光反射層5で散乱反射される。散乱反射光は再度、低屈折率層6を通過後、樹脂シート2に入射し、円弧のレンズ機能で集光され、効率的に伝播する。これにより、高いゲインを有する画像を得ることができる。
一方、外光は主に上方からスクリーンに入射する。外光の一部は光吸収層に、一部は低屈折率層に入射する。従って、外光の反射によるコントラスト低下を軽減することができる。このため、外光が存在する場合でも高いコントラストの画像を得ることができる。
【0009】
本発明に係る反射型スクリーンの一態様において、円弧の中心角が100°以上であることが好ましく、低屈折率層と樹脂シートとの界面の法線方向と、前記主平面の法線方向とのなす角が15°から35°の範囲であることが好ましい。
加えて、円弧の半径を長さRとし、凸部の長手方向に垂直かつ主平面の法線方向に平行する断面上の、前記円弧の中心点と前記低屈折率層の前記界面側の中央との間の距離を、前記主平面の法線方向の長さaと、前記主平面に平行な方向の長さbとの二つの長さで表す、言い換えると、二次元の平面上の長さで表現すると、
半径の長さRに対する、長さaの比率(a/R)が−0.2から0.1の範囲であり、
半径の長さRに対する、長さbの比率(b/R)が−0.1から0・3の範囲であることが好ましい。
さらに加えて、低屈折率層が空気層であることが好ましく、周期Pと、低屈折率層を主平面の法線方向で主平面へ投影した幅Mとの比率M/Pが、0.5から0.85の範囲であることが好ましい。
また、凸部表面と、低屈折率層と樹脂シートとの界面との少なくとも一方に、アンチグレア処理が施されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る投射画像表示システムの一態様は、上述したいずれかの反射型スクリーンと、プロジェクタと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る反射型スクリーンによれば、プロジェクタからの投射光は効率的に観察者側に反射させることができる。また室内照明などの外光は光吸収層にて吸収されるため高いコントラストを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る反射型スクリーンの概略断面構成図である。
【図2】本発明に係る反射型スクリーンの光吸収層、低屈折率層、及び、光反射層の配置図である。
【図3】低屈折率層がない場合の反射型スクリーン内部での光の挙動の説明図である。
【図4】低屈折率層がある場合の反射型スクリーン内部での光の挙動の説明図である。
【図5】本発明に係る反射型スクリーンの第1の概略断面構成図である。
【図6】本発明に係る反射型スクリーンの第2の概略断面構成図である。
【図7】本発明に係る反射型スクリーンの第3の概略断面構成図である。
【図8A】本発明に係る反射型スクリーンの第4の構成例の製造方法例の第1段階の説明図である。
【図8B】本発明に係る反射型スクリーンの第4の構成例の製造方法例の第2段階の説明図である。
【図8C】本発明に係る反射型スクリーンの第4の構成例の製造方法例の第3段階の説明図である。
【図8D】本発明に係る反射型スクリーンの第4の構成例の製造方法例の最終段階の説明図である。
【図9】本発明に係る投射画像表示システムの構成例を示す図である。
【図10】実施例2の反射型スクリーンの構成図である。
【図11】反射光角度及び凸部の構成を説明する、特性計算の説明図である。
【図12】プロジェクタとスクリーンまでの距離を特定する、特性計算の説明図である。
【図13A】本発明の実施例6の反射型スクリーンにおける、視野角特性の計算結果(0deg入射、10deg入射)を示すグラフである。
【図13B】本発明の実施例6の反射型スクリーンにおける、視野角特性の計算結果(20deg入射、30deg入射)を示すグラフである。
【図13C】本発明の実施例6の反射型スクリーンにおける、視野角特性の計算結果(40deg入射、50deg入射)を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例1の反射型スクリーンにおける、面内のゲイン分布計算結果を示すグラフである。
【図15】本発明の実施例2の反射型スクリーンにおける、面内のゲイン分布計算結果を示すグラフである。
【図16】本発明の実施例3の反射型スクリーンにおける、面内のゲイン分布計算結果を示すグラフである。
【図17】本発明の実施例4の反射型スクリーンにおける、面内のゲイン分布計算結果を示すグラフである。
【図18】本発明の実施例5の反射型スクリーンにおける、面内のゲイン分布計算結果を示すグラフである。
【図19】本発明の実施例6の反射型スクリーンにおける、面内のゲイン分布計算結果を示すグラフである。
【図20】本発明の比較例1の反射型スクリーンにおける、面内のゲイン分布計算結果を示すグラフである。
【図21】本発明の比較例2の反射型スクリーンにおける、面内のゲイン分布計算結果を示すグラフである。
【図22】本発明の比較例3の反射型スクリーンにおける、面内のゲイン分布計算結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。加えて、反射型スクリーンを構成する各構成要素について、形状が異なるが機能が同じ場合には、同じ符号をつけて説明する。
【0014】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る反射型スクリーンを示す概略断面構成図である。図2は、本発明に係る反射型スクリーンの光吸収層、低屈折率層、及び、光反射層の配置図である。
図1に示すように、本実施形態に係る反射型スクリーン1は、透光性を有する樹脂シート2の表面に、周期(ピッチ)P(Pは正の数値)で周期的に配置したストライプ状の凸部3が形成されている。樹脂シート2としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、メタアクリル−スチレン共重合樹脂、シクロオレフィンポリマー等の透明性に優れた樹脂であれば何れも用いることができる。
【0015】
以降の説明において、主平面は、反射型スクリーン1の主平面であり、主平面の一方の側は、光源から発射される投射光を反射して映像を映す平面である。また、反射型スクリーン1の表面(若しくは、主平面の表面)は、当該映像を映す側の面であり、樹脂シート2に凸部3が形成される側の面と一致する。一方、反射型スクリーン1の裏面(主平面の裏面)は、主平面の表面と反対側の面であり、光吸収層4及び光反射層5が配置される側の面となる。樹脂シート2の表面は、凸部3形成される側の面である。樹脂シート2の裏面は、凸部3と対向する面であり、光吸収層4及び光反射層5が配置される側である。加えて、「略一致」、「略同じ」等の表現は製造工程で生じる誤差を考慮して「一致」あるいは「同じ」と判断できる範囲を含むことを意味する。
【0016】
ストライプ状の凸部3の長手方向と直交する面での断面形状は、半径が長さR(Rは正の数値)の円弧からなっている。ここで、円弧は、円周上の2点から特定される形状の場合に限られない。例えば、円弧の形状は、製造の問題で完全な円の一部ではなくなる場合もある。従って、円弧は、円弧に類似する形状である場合、レンズ機能を実現する曲面を有する場合も含む。
さらに樹脂シート2の凸部3が形成された面と対向する面には光吸収層4と低屈折率層6がそれぞれ幅L(Lは正の数値)および幅M(Mは正の数値)で凸部3と同じ方向にストライプ状に形成されている。さらにこれら一組の光吸収層4及び低屈折率層6は周期Pで配置されている。つまり、
L+M=P
の関係が成り立つ。
このとき、幅Lまたは幅Mは、光吸収層4または低屈折率層6を、主平面の法線方向で主平面に投影したときに長さ(幅)である。従って、光吸収層4または低屈折率層6と樹脂シート2との界面に沿った長さと異なる場合もある。例えば、図2に示すように、光吸収層4や低屈折率層6が主平面の法線方向(x方向)に対して垂直でなく、傾斜している場合、光吸収層4あるいは低屈折率層6の界面に沿った長さは、幅Lあるいは幅Mよりそれぞれ長くなる。
【0017】
光反射層5が、低屈折率層6の樹脂シート2と対向する面に形成されている。言い換えると、光反射層5は、低屈折率層6を挟んで、低屈折率層6と樹脂シート2との界面と対向して配置されることになる。低屈折率層6を配置する意義を、図3、および図4を用いて説明する。
図3では樹脂シート2に直接光反射層5を形成した場合を示している。この場合、光反射層5で拡散反射した光は樹脂シート2内に様々な角度で伝播する。樹脂シート2と空気の屈折率で決まる臨界角以上の角度で凸部3表面に入射した光は、全反射により空気側に出射することはできない。つまりエネルギーの損失を生じることになるため、ゲインの低下を生じる。図3では、凸部3のストライプの方向と直交する断面における光の反射のみを示しているが、凸部3のストライプの方向と平行な方向でも同様の現象は発生する。また全反射により光が樹脂シート2内を臨界角以上の角度で伝播し、再度出射した場合は、投射された一点が広がって出射するようになるため、解像度の低下を招く。
【0018】
これに対し、図4に示す構成では、樹脂シート2の裏面に低屈折率層6を形成し、さらに光反射層5を形成している。ここで樹脂シート2の屈折率をn、低屈折率層6の屈折率をnとした場合、屈折率nは屈折率nより大きい関係(n>n)となる(n、nは正の数値)。図4の構成では、低屈折率層6内であらゆる角度に反射散乱光が生じても、樹脂シート2内部での角度の広がりは、屈折率nとnで決まる臨界角γ内の円錐角内に限定される。臨界角γは下記式で表すことができる。
γ=sin−1(n/n
つまり凸部3表面での全反射を低減し、ゲインを向上させ、解像度低下を軽減させることができる。
【0019】
屈折率nとnとの差は0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.15以上である。さらに好ましくは低屈折率層6の屈折率nが1(n=1)、つまり低屈折率層6が空気層の場合である。屈折率差が小さいと、臨界角γが大きくなりゲイン向上と解像度低下の軽減との効果が低下する。
【0020】
さらに図2に示す通り、低屈折率層6と樹脂シート2との界面の法線方向は、反射型スクリーン1の主平面の法線方向と角度αをなしている。角度αにより反射型スクリーン1に対し角度をもって入射してきた投射光は、低屈折率層6と樹脂シート2の界面で全反射する割合を低減して効率的に光反射層5に入射する。
【0021】
角度αは10°から40°の範囲にあることが望ましい。さらに望ましくは15°から35°の範囲である。
角度αが10°より小さくなると投射画像が大画面化した場合、もしくは短焦点型プロジェクタを用いた場合、反射型スクリーン1への入射角度が大きくなる。このため、低屈折率層6と樹脂シート2の界面で全反射が発生し、スクリーン上部でゲインの低下を招く。
逆に、角度αが40°より大きくなると、反射型スクリーン1に対し垂直に近く角度で入射した光が低屈折率層6の界面で全反射する割合が大きくなるため、スクリーン下部でのゲイン低下を招く。
【0022】
凸部3を形成する円弧の中心角θは、100°から180°の範囲であることが望ましく、さらに望ましくは120°以上である。円弧の中心角θが120°以上では、スクリーンに対し斜めに入射するプロジェクタからの投射光の集光効果の低減を抑制できるため、十分なゲインを得ることができる。
【0023】
さらに、凸部3の幅である周期Pに対する低屈折率層6の幅Mの比率M/Pは0.5から0.85の範囲にあることが好適である。さらに望ましくは0.65から0.75の範囲である。比率M/Pが0.5より小さくなると光反射層5の占める割合が小さくなるため、入射角度によってはプロジェクタからの投射光が光吸収層4に入射するため、ゲインの低下を招く。逆に、比率M/Pが0.85より大きくなると、外光が光吸収層4へ入射する割合が低下するため、コントラスト向上効果が小さくなる。
【0024】
次に、凸部3と、低屈折率層6との位置関係を図2を参照して検討する。凸部3の位置として、凸部3を形成する円弧の中心点を用いる。低屈折率層6の位置として、低屈折率層6と樹脂シート2との界面側における低屈折率層6の中央を用いる。
凸部3を形成する円弧の中心点を原点として、反射型スクリーン1の主平面の法線の凸部3方向をx軸、反射型スクリーン1と平行かつストライプ状の凸部3の長手方向及びx軸と直交する方向をy軸とする2次元の座標を設定する。
円弧の半径を長さR、凸部3の長手方向に垂直かつ主平面の法線方向に平行する断面における低屈折率層6の中央の座標(中心座標)を(a,b)(a,bは、長さであり、正の数値)とする。
【0025】
半径の長さRに対する、長さaの比率a/R、及び、半径の長さRに対する、長さbの比率b/Rが、
−0.2≦a/R≦0.1
−0.1≦b/R≦0.3
であることが好ましい。さらに好ましくは、
−0.1≦a/R≦0.05
−0.05≦b/R≦0.2
である。
【0026】
ここで、凸部3の長手方向に垂直かつ主平面の法線方向に平行する断面上において、円弧の中心点と低屈折率層7の界面側の中央との距離を、長さaでは主平面の法線方向の長さで表し、長さbでは主平面に平行な方向の長さで表したものとなる。
加えて、円弧とは製造の問題で完全な円の一部ではなくなる場合もあるが、円弧の中心点とは、凸部3の裾部両端および頂部の3点で決まる円を想定した場合の円の中心点を意味する。
【0027】
比率a/Rが−0.2より小さい(a/R<−0.2)と、低屈折率層6と樹脂シート2との界面と凸部3との距離が離れてしまうため、反射光が隣接する凸部3へ入射し、ゲインの低下や解像度の低下を招く。また比率a/Rが0.1より大きい(0.1<a/R)と、投射光が十分集光されていないため、光吸収層4に入射し損失となる。
比率b/Rが−0.1より小さい(b/R<−0.1)もしくは比率b/Rが0.3以上(b/R≦0.3)であると、光反射層5に入射しない投射光が発生するため、ゲインの低下を招く。
【0028】
次に、反射型スクリーン1の製造方法を説明する。
例えば、図5に示す反射型スクリーン1aは、樹脂シート2の表面にストライプ状の凸部3を周期Pの幅(長さ)で周期的に形成する。樹脂シート2の裏面(ストライプ状の凸部3と対向する面)に、断面が略鋸歯状の凹凸を形成する。光吸収層4は、樹脂シート2の裏面に黒色顔料を含んだインクを印刷等して得ることができる。その後、樹脂シート2の光吸収層4を形成した面に発泡PETなどの光反射層5を貼り合せることで、インク厚みの空気層からなる低屈折率層6を有する反射型スクリーン1aを得ることができる。
【0029】
図6に示す反射型スクリーン1bは、透明な樹脂シート2の表面にストライプ状の凸部3を周期Pの幅で周期的に形成する。樹脂シート2の裏面(ストライプ状の凸部3と対向する面)に低屈折率層6を構成する、断面が略鋸歯状の凹部を形成する。光吸収層4は、樹脂シート2の裏面に黒色顔料を含んだインクを印刷等することで得ることができる。その後、樹脂シート2の光吸収層4を形成した面に発泡PETなどの光反射層5を透明接着層7で接着させることによって、空気層からなる低屈折率層6を有する反射型スクリーン1bを得ることができる。透明接着層7は透明性を有していれば粘着剤でも使用可能である。
【0030】
また同様に、図7に示す反射型スクリーン1cは、先ず透明な樹脂シート2の表面にストライプ状の凸部3、その対向する面に低屈折率層6を構成する、断面が略鋸歯状の凹部を形成する。一方で、発泡PET等の光拡散性を有するシート(光反射層5)の表面に周期Pで所定幅の黒色インクを印刷することで光吸収層4を形成する。これらのシートを位置合わせして、透明接着層7で接着させることによって、低屈折率層6が空気からなる図7に示す反射型スクリーン1を得ることができる。透明接着層7は透明性を有していれば粘着剤でも使用可能である。
【0031】
さらに、図8Aで示すように、先ず透明な樹脂シート2の片面にストライプ状の凸部3、その対向する面に低屈折率層6を構成する、断面が略鋸歯状の凹部を形成する。次に、図8Bのように、スクリーン印刷等で、平坦面に黒色インクを印刷することによって光吸収層4を形成する。図8Cのように、鋸歯状の凹部を埋めるように硬化後の屈折率がnとなる透明接着剤をコートする。最後に図8Dで示す通り、発泡PETなどの光反射層5を樹脂シート2に貼り合せることによって、反射型スクリーン1dを得ることができる。
【0032】
プロジェクタで投射される画像は複数の画素から構成されているため、スクリーン上に投射された縦方向の画素サイズが周期Pに近いとモアレが発生し、画質の低下を招く。このため、周期Pはスクリーン上に投射された縦方向の画素サイズの1/2以下が好適であり、さらに1/3以下がより好適である。
【0033】
表1に、投射画像の対角寸法と解像度を想定した場合の、スクリーン上での画素サイズを示す。表2に、解像度の定義を示す。この結果から縦方向の画素サイズは大凡1mm程度を考えればよい。表1、2において、SVGA(Super Video Graphics Array)、XGA(eXtended Graphics Array)、WXGA(Wide XGA)は解像度を示す。
【0034】
【表1】

【表2】

【0035】
一方で、周期Pが小さい場合にはシート表裏の構造の成形、凸部3と裏面の光吸収層4や光反射層5の位置合わせが困難になる。また光吸収層4の厚みが薄くなるため、光吸収効果が小さくなりコントラスト向上の効果が小さくなる。このため、周期Pはある値以上であることが好ましい。
【0036】
凸部3の周期Pは0.1から0.5mmの範囲であることが望ましい。さらに望ましくは0.15mmから0.3mmの範囲である。
【0037】
加えて、凸部3の表面には微小な表面凹凸からなるアンチグレア処理を施すことが好ましい。凸部3の表面で鏡面反射が発生すると、プロジェクタからの投射光がホットバンドとして発生し、画質の低下を発生させる。さらに液晶パネルを用いたプロジェクタで色によってその偏光方向が異なる場合には、凸部3で界面反射があるとP波、S波で反射率が異なるため、反射画像に着色現象が発生し、画質の低下を招く。このためにも鏡面反射成分を低減させるアンチグレア処理が望ましい。
【0038】
図9に本発明に係る投射画像表示システムの構成例を示す。説明のため、図9では投射画像表示システム10に加え、観察者31も示す。図9に示す通り、本発明の反射型スクリーンの表面側の前方にプロジェクタ30を配置することで、高いゲインの画像を高コントラストで得ることができる。
【0039】
以上説明した通り、本実施形態の反射型スクリーンの一態様では、透光性を有する樹脂シート(例えば、PMMAなど)2の表面に、周期Pで周期的に配置された複数のストライプ状の凸部3を形成する。樹脂シート2の凸部3が形成された面と対向する面には光吸収層4と低屈折率層6が形成される。さらに、これらの光吸収層4と低屈折率層6は周期Pで配置されている。また低屈折率層と樹脂シートとの界面の法線方向が、反射型スクリーンの主平面に対して傾斜している。
ストライプ状の凸部3の長手方向と直交する方向での断面形状は略円弧からなっている。低屈折率層の樹脂シートと対向する側には光反射層5が形成されている。
【0040】
このような構成により、プロジェクタ30からの投射光は凸部3で集光され、低屈折率層6を通過後、光反射層5で散乱反射される。散乱反射光は再度、低屈折率層6を通過後、樹脂シート2に入射し、円弧のレンズ機能で集光され、観察者31側へ効率的に伝播する。これにより観察者は高いゲインを有する画像を得ることができる。
一方、室内照明等の外光は主に上方からスクリーンに入射する。外光の一部は光吸収層4に、一部は低屈折率層6に入射する。従って、外光の反射による、一般に白浮きと呼ばれるコントラスト低下を軽減することができる。このため、観察環境に外光が存在する場合でも高いコントラストの画像を得ることができる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の反射型スクリーンを評価するために、反射型スクリーン光線追跡法によるシュミレーションソフトLightTools(Optical Research Associates社)を用いて、以下に示すような実施例1、比較例の視野角特性、吸収特性の評価を行った。以下の実施例、比較例では樹脂シートの屈折率は1.5を用いた。本発明の実施例および比較例の構成パラメータを表3に示す。
【0042】
【表3】

表3中、構成Iは、図1に示す反射型スクリーン1の構成を用い、構成IIは、図10に示す反射型スクリーン1eの構成を用いた。
【0043】
図11に示す通り反射型スクリーンへスクリーン法線方向に対し、プロジェクタ30からの投射光が角度0degから50degの範囲で入射した光の各入射点での反射光角度分布を計算した。観察者31はプロジェクタ30側にいるので、観察者が反射型スクリーンを見上げる場合にはプラス方向の角度となり、スクリーンを覗き込む場合にはマイナス方向の角度となる。図12に、プロジェクタとスクリーンまでの距離を特定する、特性計算の説明図を示す。プロジェクタ30から反射型スクリーン1までの距離を1000mm、プロジェクタ30から観察者31までの後方の距離が1000mm、プロジェクタ30から観察者31までの上方の距離が500mmであることを前提とする。
計算は、凸部3の表面での鏡面反射成分を削除し、完全拡散面(反射率100%のランバート反射面)に対する輝度の比率であるゲイン(GAIN)を算出した。
【0044】
図13A〜13Cに実施例6の構成の反射型スクリーンの視野角特性の計算結果を示す。本実施例ではスクリーンで再帰的に反射しており、プロジェクタ30側へ効率的に光を反射している。
【0045】
[実施例1]
実施例1では、表3に記載の通りの反射型スクリーンを用い、図12に示す、プロジェクタ30からスクリーンまでの距離を1000mm、プロジェクタ後方1000mm、上方500mmに観察点を想定して、反射型スクリーンの面内のゲイン分布を計算した。
この実施例1に対する結果を図14に示す。ここでスクリーン高さの原点(高さ0mm)は、プロジェクタ30から反射型スクリーン1に垂直に入射した点としている。本結果が示す通り、面内で高いゲインの反射型スクリーンを得ることができる。
【0046】
[実施例2]
実施例2では、図10に示す反射型スクリーン1eの構成を用い、中心角θを180°とし、比率M/Pを0.70として、図12に示す配置でのゲインの分布を求めた。図15にその結果を示す。本結果が示す通り、面内で高いゲインの反射型スクリーンを得ることができる。
【0047】
[実施例3]
実施例3では、角度αを30°とする以外は実施例1と同じ構成で、図12に示す配置でのゲインの分布を求めた。図16にその結果を示す。本結果が示す通り、面内で高いゲインの反射型スクリーンを得ることができる。
【0048】
[実施例4]
実施例4では、比率a/Rを−0.2、比率b/Rを0.2とする以外は実施例1と同じ構成で、図12に示す配置でのゲインの分布を求めた。図17にその結果を示す。本結果が示す通り、面内で高いゲインの反射型スクリーンを得ることができる。
【0049】
[実施例5]
実施例5では、比率M/Rを0.98、比率M/Pを0.57とする以外は実施例1と同じ構成で、図12に示す配置でのゲインの分布を求めた。図18にその結果を示す。本結果が示す通り、面内で高いゲインの反射型スクリーンを得ることができる。
【0050】
[実施例6]
実施例6では、中心角θを100°とする以外は実施例1と同じ構成で、図12に示す配置でのゲインの分布を求めた。図19にその結果を示す。本結果が示す通り、面内で高いゲインの反射型スクリーンを得ることができる。図19に示す結果から、中心角θが100°以上であることが好ましく、120°以上がより好ましいといえる。
【0051】
[比較例1]
比較例1では、低屈折率層6の屈折率を樹脂シートの屈折率と同じとした。つまり低屈折率層がない場合である。他のパラメータは実施例1と同じとした構成で、図12に示す配置でのゲインの分布を求めた。図20にその結果を示す。
【0052】
[比較例2]
比較例2では、低屈折率層6の屈折率を1.4とし、他のパラメータは実施例1と同じとした構成で、図12に示す配置でのゲインの分布を求めた。図21にその結果を示す。図21に示す結果から、低屈折率層6と樹脂シート2との屈折率差は、0.1より大きくする必要があることがわかる。
【0053】
[比較例3]
比較例3では、比率a/Rを−0.4、比率b/Rを0.4とし、他のパラメータは実施例1と同じとした構成で、図12に示す配置でのゲインの分布を求めた。図22にその結果を示す。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の反射型スクリーンを用いることで、大画面の映像を表示可能なホームシアター、会議システム、広告用表示システム等を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、1a〜1e 本発明の反射型スクリーン
2 樹脂シート
3 凸部
4 光吸収層
5 光反射層
6 低屈折率層
7 透明接着層
10 投射画像表示システム
30 プロジェクタ
31 観察者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し、主平面の一方の側にストライプ状の凸部が周期Pの幅で周期的に形成された樹脂シートと、
前記主平面の他方の側に配置され、前記樹脂シートより0.15以上低い屈折率を有する低屈折率層と、
前記凸部のストライプの形状に平行するように、前記低屈折率層と交互に前記凸部に対向して配置された光吸収層と、
前記低屈折率層を挟んで、前記低屈折率層と前記樹脂シートとの界面と対向して配置され、散乱反射特性を有する光反射層と、を備え、
前記凸部は、当該凸部の長手方向と直交する断面形状が円弧からなり、
前記低屈折率層と前記樹脂シートとの界面の法線方向が、前記主平面の法線方向に対して傾斜し、
一組の前記光吸収層及び前記低屈折率層は、前記周期Pと略同じ幅で配置される、
反射型スクリーン。
【請求項2】
前記円弧の中心角が100°以上であることを特徴とする請求項1記載の反射型スクリーン。
【請求項3】
前記低屈折率層と前記樹脂シートとの界面の法線方向と、前記主平面の法線方向とのなす角が15°から35°の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の反射型スクリーン。
【請求項4】
前記円弧の半径を長さRとし、
前記凸部の長手方向に垂直かつ前記主平面の法線方向に平行する断面上の、前記円弧の中心点と前記低屈折率層の前記界面側の中央との間の距離を、前記主平面の法線方向の長さaと、前記主平面に平行な方向の長さbとの二つの長さで表すと、
半径の長さRに対する、長さaの比率(a/R)が−0.2から0.1の範囲であり、
半径の長さRに対する、長さbの比率(b/R)が−0.1から0・3の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の反射型スクリーン。
【請求項5】
前記低屈折率層が空気層であることを特徴とする請求項請求項1乃至4のいずれか一項に記載の反射型スクリーン。
【請求項6】
前記周期Pと、前記低屈折率層を前記主平面の法線方向で前記主平面へ投影した幅Mとの比率M/Pが、0.5から0.85の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の反射型スクリーン。
【請求項7】
前記凸部表面と、前記低屈折率層と前記樹脂シートとの界面との少なくとも一方に、アンチグレア処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の反射型スクリーン。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の反射型スクリーンと、
プロジェクタと、を備える投射画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−73077(P2013−73077A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212870(P2011−212870)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】