説明

反射特性を分析するための方法

【課題】表面の反射特性を客観的に決定することができ、さらに、下流側システムに利用できるパラメータに反射特性を変換し、これらの特性をデータレコードの形態で利用可能にする方法を提供する。
【解決手段】オリジナル圧刻表面のトポロジを3次元の走査方法を用いて走査し、表面のトポロジデータを決定し、オリジナル圧刻表面を走査したラスタの各々の面素に属する深さ値を実質的に含むトポロジデータを第1のデータレコードに記憶し、第1のデータレコードについて、エッジ検出を行い、次に、深さ値を参照して平均計算を行って、反射特性に対する深さ値の影響に関する深さ値の評価を行い、平均計算で得られた、エッジの周波数及び/又は高さを記述する値を、反射値として各々の面素に割り当てて、第2のデータレコードに記憶し、第2のデータレコードが、別の加工システム又は試験システムに利用可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面用の加工システム又は試験システムに利用できるデータレコードの形態の3次元構造化オリジナル表面、特に圧刻表面の反射特性を分析して記述するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面の反射挙動を評価及び/又は分析するための方法が公知である。
【0003】
最も簡単な方法の1つは、例えば、標準化された測定条件、例えばISO2813に従って「光沢度」を決定することからなり、この場合、表面から60°の角度で反射された光放射が測定されて、反射の割合に応じて「艶消し」から「光沢」の光沢度の分類に割り当てられる。しかし、このような光沢度は、光比率に関して考慮される表面全体の平均化された光沢性を単に記述するに過ぎない。
【0004】
さらに、物質自体に関する表現が、その表面の反射挙動を分析することによって獲得される方法が存在する。このことは、例えば、液体又は粉末のような材料サンプルを分析するとき、溶接継手を検査するとき、又は、例えば、加工工程を制御するときに利用される。このように、例えば、欧州特許第618851A1号は、基材の表面被覆/塗料を取り除くための方法を示しており、当該方法は、浸食されるべき被覆のみが取り除かれ、基材それ自体が破損されないように反射光の色差を評価することによって制御される。
【0005】
例えば、自動車の内部クラッドの部分の人造皮革又はプラスチック成形スキン、すなわち、例えば、ドアクラッド又はダッシュボードを製造するとき、人工的な表面構造又は表面被覆の製造に関し、基準面/パターン化面の反射特性が照明の制御下で評価され、またさらなる制御及び作業工程の基礎として使用される方法が知られている。これらの決定方法の大部分に特有なことは、強く又は弱く反射する基準面の部分領域の間では、経験のある観察者の主観的な評価がこれまでのところもっぱら決定的であったことである。しかし、このような主観的な評価は、画像処理に又は生産工程に影響を及ぼす自動システムに、不十分な精度でのみ転換することができ不利である。
【0006】
他方、人間の目による主観的な評価は、それ自体が表面の外観の非常に小さな変化を明らかに記録する構造化表面の極めて精密な種類の評価であり、これまでのところ自動的な方法で交換可能であることは明らかになっていない。例えば、表面全体を形成するサブセグメントの並置、繰り返し及びムレット筋の形成のため生じる移行部又は境界領域は、例えば、表面におけるチェス盤型パターン化からの結果である、異なるか又は「不自然に」作用する光学的反射及び/又は光学的屈折とまさに同じ程度目立つものとして表される。
【0007】
例えば、可能な限り自然に作用する革粒子でプラスチック成形スキンを製造することが望まれる場合、反射挙動が、特に、大きな役割を果たす。革表面を見たとき、人間の目は、異なる光比率の場合の特定の反射挙動に慣れ、まさにこの反射挙動を正確に欠く人工皮革表面に極めてはねつけるように反応する。日光で不快に反射する革粒子を有するプラスチック成形スキンで覆われるダッシュボードは、消費者によって拒絶される。このことは、しばしば、このような成形スキンが生成されると、例えば規則的な穿孔の形態で、反射を減らす追加の3次元の「人工的な」構造が刻印されるという事実をもたらす。しかし、一般に、「真正の革表面」の印象はその後もう存在しなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、表面の反射特性を客観的に決定することができ、さらに、下流側システムに利用できるパラメータに反射特性を変換し、また自然に忠実に反射特性の説明を可能にし、かつ特に人工的表面を生成するために、これらの特性をデータレコードの形態で利用可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、主請求項の特徴によって達成される。さらに有利な改良が従属請求項に開示されている。同様に、本方法の有利な使用が開示される。
【0010】
ここで、本発明の解決方法は、次のこと、すなわち、
a)最初にオリジナル表面のトポロジが3次元の走査方法を用いて決定され、このように決定され、かつオリジナル表面に跨るラスタの各々の面素に属する高さと深さとを実質的に含むトポロジデータが第1のデータレコードに記憶され、オリジナル表面の深さマップが得られるように各々の面素又はラスタ要素に測定された深さ値が割り当てられ、
b)第1のデータレコードが、反射特性に対する深さ値の影響に関する当該深さ値の評価を受け、
c)評価に応じて、反射値が各々の面素に割り当てられて、第2のデータレコードに記憶され、
その後、各々の面素に割り当てられた反射値/パラメータを含む第2のデータレコードが別の加工システム又は試験システムに利用できる
ということにおいて成り立つ。
【0011】
以前に知られている方法が光沢度を介した表面全体の主観的な評価のみを含むか、あるいはバーチャルな照明源の影響を受けて、一般化された方法で写真又はCAD(コンピュータ支援設計)シミュレーションを介して反射を表面に割り当てるのに対し、本発明の解決方法の場合の重要なステップは、異なって小さな面素の3次元表面に実際に存在する巨視的な深さ構造に、表面の反射特性を結合することにある。このように、本発明による方法は、一般化された方法から逸脱し、深さ構造、すなわち、表面の高解像度のトポロジマップと局所的な反射挙動との相関関係を発生する。
【0012】
1つの有利な発展形態は、方法ステップb)とc)が、
b)第1のデータレコードがエッジ検出を受け、次に、深さ値を参照して平均計算を受け、
c)平均計算によって獲得されかつエッジの周波数及び/又は高さを記述する値が、反射値として各々の面素に割り当てられて、第2のデータレコードに記憶される
ように設計されるということにおいて成り立つ。
【0013】
エッジにおける光の散乱の物理的効果、及びこれによって影響を受けるランダムに配置された数のエッジの反射性から進んで、ここにさらに形成される解決方法は、計算用のデータとして、実際の物理的に存在する深さ情報及び/又は深さの差、すなわち、実際のエッジを最初に提供することによって、エッジ検出の画像処理からそれ自体公知である方法を特定の数学的演算子により、すなわち、例えば、ソーベル又はラプラス演算子により3次元表面の反射分析に有用ならしめることにある。
【0014】
具体的に、従来の画像処理では、実行されてきたすべてのことは、2次元の観測、輝度差によって形成された画像内の「境界」の検出及び処理である。これらの境界は「エッジ」として、またそれらの検出は「エッジ検出」として示されている。例えば、加工されるべきまたカメラを用いて写真撮影されるか又は撮影される対象物をアセンブリラインで検出又は計数するために、このようなエッジ検出が使用される。このような2次元の観測は、2次元の空間割当を検出するために確かに十分であるが、3次元表面の複雑な構造には十分でなく、そこから導かれるべき反射特性のモデル化にも十分でない。
【0015】
反射値によって説明される反射特性は、その他、絶対値として記憶される必要はなく、相対的な反射値、すなわち、本方法の実施のために、同様にその使用のために、個々の面素の反射値の間の差で十分である。例えば、相対的なエッジ周波数は、反射値を説明するパラメータとして記憶することができる。
【0016】
一発展形態は、面素がグループに組み合わせられ、各々の場合に、近接演算によってグループの内部で平均計算されたエッジ周波数及び/又は高さがグループに割り当てられて、第2のデータレコードに記憶されるように、平均計算がエッジ検出後に実行されることにある。例えば、このような平均計算は、演算子としてのガウスフィルタによって実行される。このことにより、特徴付け又は一般化が行われ、これによって、適切な場合、大幅に変化する数及び厚さ/高さのエッジが適切に均質化された反射値に帰され、このことは、更なる方法の際に、そして例えば、処理機械を制御するためのデータに使用の際に有利であることができる。
【0017】
1つのさらなる有利な発展形態は、第1のデータレコードの深さ値の、方向に依存するフィルタリングがエッジ検出の前に実行されることにある。様々な数学演算子を用いて実施することができるこのような方向に依存するフィルタリングによって、異なる照明条件又は観測角度について反射特性を同様に客観的かつ測定可能に表すことができるように、通常のエッジ検出によってエッジ高さ及びエッジ周波数に向かってのみ向けられる反射に関する表現が実質的に洗練される。
【0018】
さらに有利な発展形態は、フィルタリングが指向性のガウスフィルタリングによってエッジ検出前に実行されることにある。ここで関係するものは、迅速に働き、かつ容認可能な時間内にそれらの反射特性に関する十分な数の方向表示を可能にする簡単な演算子である。
【0019】
1つの有利な発展形態は、
b)オリジナル表面の、深さ値の第1のデータレコードによって特徴づけられる、輪郭に作用する光放射が、シミュレーションモデルによって記述されるように、
c)光放射の反射が、反射値に割り当てられかつ第2のデータレコードに記憶される被照射面素の深さの不連続から計算されるように、
方法ステップb)とc)を設計することによって実際の3次元構造の反射特性/反射値を決定するために、いわゆるレイトレーシング方法を使用することにある。
【0020】
厳密に物理的な整列に基づき、またシミュレーションモデルに応じて、本方法のこの発展形態は、反射性の客観的な説明において非常に優れた結果をもたらすが、特に方向に依存する観察の場合に大きな計算費用を必要とする。
【0021】
人工的に生成される表面、特に圧刻されるプラスチックフィルムの表面の反射特性に影響を及ぼす/を改善するための本方法の特に有利な1つの使用は、
d)第2のデータレコードの反射値がクラスに分割され、
e)分類された反射値に割り当てられた第1のデータレコードの深さ値が分類に従って変更され、
f)変更された深さ値が、人工的に生成される表面を加工するための工具を電子制御するためのパラメータとして使用されることにある。
【0022】
本発明による方法は、したがって、人工的表面を生成するための任意の種類の方法に使用することができる。したがって、反射特性に関し修正され、したがって最適化される表面の深さ構造は、前もって生成された任意の基本的な深さスキーム/構造スキームに簡単なパラメータとして重ね合わせることができ、したがって、制御変数として直接利用できる。一例として、かかる方法は、消費者が所望する「頑丈な印象」を有するが、特定の光入射の場合にダッシュボードで不快に反射するその形状及び圧刻のため自動車内装用に選択された革、例えば水牛の革を、全体的な印象に影響を及ぼすことなしに、反射が最適化された深さ構造を有するプラスチック成形スキンとして製造することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面用の加工システム又は試験システムに利用できるデータレコードの形態の3次元構造化オリジナル圧刻表面の反射特性を分析して記述するための方法であって、
a)最初に、該オリジナル圧刻表面のトポロジを3次元の走査方法を用いて走査し、該表面のトポロジデータを決定し、
このように決定されたトポロジデータであって、オリジナル圧刻表面を走査したラスタの各々の面素に属する深さ値を実質的に含むトポロジデータを第1のデータレコードに記憶し、
各面素は、オリジナル圧刻表面の深さマップが得られるように、測定された深さ値が割り当てられており、
b)前記第1のデータレコードについて、エッジ検出を行い、次に、深さ値を参照して平均計算を行って、前記反射特性に対する深さ値の影響に関する深さ値の評価を行い、
c)平均計算で得られた、エッジの周波数及び/又は高さを記述する値を、反射値として各々の面素に割り当てて、第2のデータレコードに記憶し、
以後、各面素に割り当てられた反射値を含む第2のデータレコードが、別の加工システム又は試験システムに利用可能になることを特徴とする方法。
【請求項2】
面素がグループに組み合わせられ、各々の場合に、近接演算によってグループの内部で平均計算されたエッジ周波数及び/又は高さが前記グループに割り当てられて、前記第2のデータレコードに記憶されるように、前記平均計算が前記エッジ検出後に実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のデータレコードの深さ値の方向に依存するフィルタリングがエッジ検出の前に実行されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタリングが、指向性のガウスフィルタリングによって前記エッジ検出の前に実行されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法ステップb)とc)が、
b)前記オリジナル表面の、前記深さ値の前記第1のデータレコードによって特徴づけられる、前記輪郭に作用する光放射が、シミュレーションモデルによって記述されるように、
c)前記光放射の反射が、反射値に割り当てられかつ第2のデータレコードに記憶される被照射面素の深さの不連続から計算されるように、
設計されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
人工的に生成されたプラスチックフィルムの圧刻表面の反射特性に影響を及ぼす/を改善するための請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法の使用において、
d)前記第2のデータレコードの反射値がクラスに分割され、
e)前記分類された反射値に割り当てられた前記第1のデータレコードの深さ値が前記分類に従って変更され、
f)前記変更された深さ値が、前記人工的に生成される表面を加工するための工具を電子制御するためのパラメータとして使用される
ことを特徴とする、方法の使用。

【公開番号】特開2012−68257(P2012−68257A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246983(P2011−246983)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【分割の表示】特願2009−515794(P2009−515794)の分割
【原出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(599004139)ベネツケ−カリコ・アーゲー (15)
【氏名又は名称原語表記】Benecke−Kaliko AG
【Fターム(参考)】