説明

反射鏡、及び当該反射鏡の加工方法

【課題】
本発明は、反射鏡の複雑なデザインの装飾品を提供することを提供することにある。
【解決手段】
本発明の反射鏡の加工方法は、光を透過する光透過媒体と、前記光透過媒体に設けられており、かつ、光を反射するための被膜面とを有する反射鏡の加工方法であって、前記光透過媒体の切断を、前記被膜面の被膜面側に保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより行うことを特徴とする。また、本発明の反射鏡は、光を透過する光透過媒体と、前記光透過媒体に設けられており、かつ、光を反射するための被膜面とを有する反射鏡であって、前記被膜面と反対側の面を光透過媒体の表面とした場合に、前記被膜面及び前記表面以外に切断面を有し、前記切断面の表面粗さが前記表面よりも粗く、前記切断面が前記被膜面の被膜面側に保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより切断された切断面であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射鏡、及び当該反射鏡の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鏡を使った装飾品としては、四角形、丸型、楕円形、扇形などの単純な形しかなかった。それは、総て手作業でダイヤモンドカッターなどを用いて表面に傷をつけ、切断するというよりは、割るというに近い工程で加工していたからである。
【0003】
この加工方法では、複雑な加工は困難であり、くりぬくなどという加工もできなかった。他の金属製品、プラスチック製品などはレーザー加工で複雑な加工ができるが、鏡の場合はレーザー加工ができない。
【0004】
そして、近年、消費者のニーズにより、単純な形だけでなく、複雑なデザインの鏡の需要も高まっている。
【0005】
例えば、インテリア鏡として、サンドブラスト加工とにかわによって特徴的な模様を作成して結晶ガラスを作成し、当該結晶ガラスに銀引き加工を施すことを特徴とする装飾ガラスが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−83743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、単に切削又はにかわを利用して、鏡の所謂表面(側面ではなく)にランダムな画像、図柄、模様等を形成するにすぎないものである。すなわち、この従来技術は、鏡の所謂側面においてカット、切断を工夫したものではない。このように、鏡を切断することなく、鏡の表面等のみを処理することが可能であっても、鏡を細かく、複雑に切断しようとすると、ひびわれが多発し、製品化することが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、反射鏡の複雑なデザインの装飾品を提供することを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者は、反射鏡及び当該反射鏡の加工方法について鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
【0010】
本発明の反射鏡の加工方法は、光を透過する光透過媒体と、前記光透過媒体に設けられており、かつ、光を反射するための被膜面とを有する反射鏡の加工方法であって、前記光透過媒体の切断を、前記被膜面の被膜面側に保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の反射鏡の加工方法の好ましい実施態様において、前記保護部材の鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の反射鏡の加工方法の好ましい実施態様において、前記ウォータージェットカッターによる切断を、研磨材の供給下で行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の反射鏡の加工方法の好ましい実施態様において、前記ウォータージェットカッターによる切断を、10〜500MPの水圧で行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の反射鏡の加工方法の好ましい実施態様において、前記ウォータージェットカッターによる切断を、1〜15000mm/minの加工速度で行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の反射鏡の加工方法の好ましい実施態様において、前記研磨材の供給量が、10〜300g/minであることを特徴とする。
【0016】
本発明の反射鏡は、光を透過する光透過媒体と、前記光透過媒体に設けられており、かつ、光を反射するための被膜面とを有する反射鏡であって、前記被膜面と反対側の面を光透過媒体の表面とした場合に、前記被膜面及び前記表面以外に切断面を有し、前記切断面の表面粗さが前記表面よりも粗く、前記切断面が前記被膜面の被膜面側に保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより切断された切断面であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の反射鏡の好ましい実施態様において、前記保護部材の鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の反射鏡の好ましい実施態様において、前記切断面が、研磨材の供給下、前記ウォータージェットカッターにより切断された面であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の反射鏡の好ましい実施態様において、前記光透過媒体が、ガラス製、又はアクリル製であることを特徴とする。
【0020】
本発明の装飾反射鏡は、本発明の反射鏡をパーツとして、前記パーツの組み合わせからなることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の装飾反射鏡の好ましい実施態様において、前記パーツが、反射色の異なる鏡であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、反射鏡を文字、キャラクター画像など、複雑なデザインで切断してもひび割れのない、高精度な反射鏡を提供することが可能であるという有利な効果を奏する。また、本発明によれば、反射色の違う鏡を複雑に切断し、それぞれのパーツを組み合わせて、又は単体でデザインカットすることにより、より高級感あふれる反射鏡を提供可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる反射鏡の加工方法を示すフローチャートを示す図である。
【図2】図2は、本発明の加工方法により得られた反射鏡のデザイン装飾品の一例を示す図である。
【図3】図3は、アブレシブヘッドの一例を示す図である。
【図4】図4は、所謂テーブル移動型のウォータジェットカッターの切断の様子を示す図である。
【図5】図5は、所謂ノズル移動型のウォータジェットカッターの切断の様子を示す図である。
【図6】図6は、本発明の反射鏡の一例を示す図である。
【図7】図7は、ガーネット♯80及び♯120の加工面の比較(研磨材粒度の違いによる比較)を示す図である。(A)が、研磨材の粒度として、♯80の場合を、(B)が、研磨材の粒度として、♯120の場合を、それぞれ示す。♯80の方が、♯120に比べて粗い仕上がりであるのが分かる。
【図8】図8は、保護部材を介さずに、ウォータージェットカッターにより切断した反射鏡を示す図である。丸で囲んだ部分が、ウォータ-ジェットの跳ね返し等による傷であり、反射鏡の反射の被膜が削られていることが分かる。
【図9】図9は、図8の右から3番目の丸で囲んだ傷の部分の拡大図を示す図である。
【図10】図10は、鉛筆硬度H以上の保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより切断した反射鏡を示す図であり、保護部材の厚さが1mmのものである。
【図11】図10は、鉛筆硬度H以上の保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより切断した反射鏡を示す図であり、保護部材の厚さが5mmのものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の反射鏡は、光を透過する光透過媒体と、前記光透過媒体に設けられており、かつ、光を反射するための被膜面とを有する反射鏡であって、前記被膜面と反対側の面を光透過媒体の表面とした場合に、前記被膜面及び前記表面以外に、切断面を有し、前記切断面の表面粗さが、前記表面よりも粗いことを特徴とする。まず、光透過媒体とは、所謂光を透過するものであれば特に限定されない。光透過媒体としては、ガラス製、アクリル製、プラスチック製、ポリエステル製等を挙げることができる。また、光を反射するための被膜面は、前記光透過媒体のいずれかの面に存在することができる。被膜面は、光を反射して所謂鏡として機能させるものである。被膜面の材質としては、常法に従い特に限定されるものではないが、例えば、金属を用いることができ、アルミニウム、銀など例示することができる。これらアルミニウム、銀などの金属を、常法により光透過媒体に蒸着して被膜面を形成することができる。
【0025】
また、本発明においては、前記被膜面と反対側の面を光透過媒体の表面とした場合に、前記被膜面及び前記表面以外に、切断面を有し、前記切断面の表面粗さが、前記表面よりも粗いことを特徴とする。この切断面の粗さは、種々の角度から鏡を見た場合に、微妙な光沢と高級感、美感を与える。この切断面は、前記光透過媒体の表面と垂直であってもよく、±90度の範囲内であれば、斜めのカットでもよい。所望の最終製品に応じて適宜設定することができる。
【0026】
また、本発明において、被膜面に傷をつけて、線、図形、キャラクターデザインなどの輪郭を付けることが可能である。線を描きたいときに、線に沿って被膜面を削れば、当該線が浮かび上がることを利用したものである。キャラクターデザインの目、鼻、口等の輪郭部分のみを被膜面を一部削って、描くことができる。
【0027】
本発明においては、前記被膜面と反対側の面を光透過媒体の表面とした場合に、前記被膜面及び前記表面以外に、切断面を有し、前記切断面の表面粗さが、前記表面よりも粗いことを特徴とする。通常、光透過媒体が、割れたり、ひびが入ったりした場合には、表面の粗さと切断面の粗さは同様であり、かつ、割れた面は、透明である。本発明においては、切断面は、前記表面よりも粗い。そして、好ましい実施態様において、前記切断面が、不透明である。切断面が粗く、不透明な部分を有することは、所謂切り子等のデザインにも類似して、非常に高級感を有する反射鏡を提供することができる。切断面は、磨りガラスにも似ている。好ましい態様において、本発明においては、一部にこのような不透明な部分を有することで、使用時に正面から角度を変えてみた場合に、光の乱反射と相まって、透明感に富む良質な美感及び高級感を生じさせるという有利な効果を奏することができる。
【0028】
本発明の反射鏡の好ましい実施態様において、前記切断面が、ウォータージェットカッターによる切断面である。すなわち、好ましい態様において、本発明の反射鏡、及び装飾反射鏡には、ウォータージェットカッター切断部を有することができる。ウォータージェットカッターの条件については、特に限定されない。装飾品、反射鏡、コンパクト等の最終製品の所望の品質によって、適宜設定することが可能である。
【0029】
ウォータージェットカッターの条件について、説明すれば以下の通りである。例えば、水圧に関しては、10〜500MPaとすることができる。水圧に関して、より高品質な製品を得るという観点から、好ましくは、100〜350MPa、より好ましくは、200〜320MPaとすることができる。なお、製品に関係がない、ピアスと呼ばれる部分の切断については、20〜40Mpaとすることができる。ピアスと呼ばれる、製品には直接関係がない部分であっても切断条件は、重要である。なぜなら、ピアス部分において、割れが発生した場合に、製品使用箇所にまで割れが到達すると、歩留まり等に問題が生じかねないからである。このような観点から、ピアス切断の条件についても工夫が必要となる。
【0030】
また、ウォータージェットカッターのノズル径についても特に限定されるものでない。ノズル径の内、水部分のノズル径については、例えば、0.1〜1mmとすることができ、好ましくは、0.1〜0.45mm、より好ましくは、0.15〜0.25mmとすることができる。また、ノズル径の内、アブレシブ(研磨材)を混入する場合のノズル径は、0.4〜2mmとすることができ、好ましくは、0.5〜1.0mm、より好ましくは、0.6〜0.9mmとすることができる。
【0031】
また、ウォータージェットカッターの水の流量についても、特に限定されるものではなく、要求される所望の最終製品の品質により適宜設定可能である。例えば、流量としては、0.1〜15L/min、より高品質な製品を得ることが可能という観点から、好ましくは、0.5〜3.0L/min、より好ましくは、0.7〜2.0L/minとすることできる。
【0032】
また、ウォータージェットカッターの加工速度についても、特に限定されることはない。例えば、1〜15000mm/minとすることができ、より高品質に仕上げるという観点から、10〜500mm/min、50〜150mm/minとすることができる。より遅いと高品質に仕上がる傾向にあるが、量産性を考慮すると、ゆっくり仕上げると時間がかかるので、一定の速度が必要となる。
【0033】
また、本発明の反射鏡の好ましい実施態様において、前記切断面が、研磨材の供給下、前記ウォータージェットカッターにより切断された面であることを特徴とする。研磨材としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、SiO2、ガーネット(ザクロ石)、ガラスビーズ等を挙げることができる。例えば、ガーネットについて言えば、粒度について、♯30〜♯400のものを用いることができ、粒度の数字が低いほど粗く仕上がる傾向がある。
【0034】
研磨材の供給量についても特に限定されない。例えば、最終反射鏡の品質に応じて、研磨材の供給量が、10〜300g/minとすることができる。切断面の部分については、よりきれいに仕上げるという観点から、好ましくは、60〜200g/min、より好ましくは、100〜170g/minである。なお、ピアスの部分については、研磨材の供給量は、30〜90g/min、好ましくは、50〜70g/minとすることができる。
【0035】
ウォータージェットカッターによる切断の場合においては、所望のデザインカットを付与することができるが、被膜面の剥離を防止する必要がある場合も生じる。被膜面の金属等の被膜剤が剥離すると、当該剥離部分においては、光を反射することができないので、鏡等としての用途に合わないことになりかねない。この場合、当該剥離面を補修、修正等することもできる。また、剥離自体をさせないような切断を意識することも重要である。
【0036】
したがって、被膜面の金属等の被膜剤の剥離を防止するために、本発明の反射鏡の好ましい実施態様において、前記切断面が、切断される対象の反射鏡の被膜面側に、保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより切断してもよい。保護部材の存在は、ウォータージェットカッターによる、高水圧の水、使用した研磨材等の反射によって、反射鏡の被膜が削られるのを防止することができる。
【0037】
このような保護部材としては、被膜を防止することが可能であれば、特に限定されない。例えば、スポンジ、ベニヤ板等の板材、ゴム、ガラス等を使用することができる。厚さは、用いる保護部材、最終製品の反射鏡に要求される品質等により特に限定されない。例えば、ズポンジであれば、3〜10mm、ガラスであれば、1〜10mm等適宜設定可能である。ガラスの場合、好ましくは、1〜5mm、経済性を考慮して、より好ましくは、1〜3mmである。
【0038】
品質に優れる反射鏡を提供するという観点から、好ましい態様において、前記保護部材の鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする。鉛筆硬度がH未満であると、反射鏡のガラス部分には問題はないが、反射させるための被膜面において、剥離が生じる虞がある。より高品質な反射鏡を提供するという観点から、前記保護部材の鉛筆硬度が、H以上、より好ましくは2H以上である。また、保護部材の材質としては、ガラス、樹脂等種々のものが考えられるが、加工時にある程度の摩擦を確保し、歩留まりを向上させ、加工を容易にするという観点から、樹脂製が好ましい。ガラスも使用可能であるが、加工時に反射鏡との間で滑りが生じ、上手に加工するのが困難な傾向がある。ガラス等滑りやすい材質を保護部材に使用する場合には、反射鏡との間にさらに滑り防止材を挿入してもよい。
【0039】
鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4規格のものを用いることができる。鉛筆硬度は、鉛筆の芯を試料表面に押し付けて動かし、傷付きの有無により試料の引っかき硬度を鉛筆の芯の硬さ(6B〜HB〜6H等)で表わすものである。プラスチック、塗膜等の表面硬さの評価方法として一般に用いられている。
【0040】
鉛筆を斜め45度等にセットし、試料表面を走行させて、測定する。鉛筆硬度の測定方法の概略は、1)水平であることを確認し、2)一定の速度、例えば0.5〜1.0mmの速度で、数mm程度の距離を走行させて、3)傷又は圧痕がついた場合には、鉛筆スケールを軟らかくし、傷跡がつかない鉛筆スケールを探し、逆に傷又は圧痕がつかない場合には、鉛筆スケールを硬くし、傷跡がつく鉛筆スケールを探す、というものである。
【0041】
また、好ましい態様によれば、別のパラメータにおいて、前記保護部材のロックウェル硬度(試験方法:JISK7202、単位:Mスケール)が、55以上であることを特徴とする。ロックウェル硬度が55未満であると、反射鏡のガラス部分には問題はないが、反射させるための被膜面において、剥離が生じる虞がある。より高品質な反射鏡を提供するという観点から、前記保護部材のロックウェル硬度が、55以上、より好ましくは、75H以上、さらに好ましくは98以上である。上限は特に規定していないが、より硬度が高ければ、ウォータジェットカッターにより裏面の被膜面の剥離を防止できる。作業工程を緻密に管理することによって、これら硬度以下のものでも反射用の被膜面の剥離を防止可能な場合も有り得るが、加工工程を単純化するという意味において、上記硬度の範囲が好ましいということができる。
【0042】
また、別の態様によれば、反射鏡と同じ素材の板ガラスを、保護部材として用いることができる。保護部材として、ガラスなどの部材の硬度に用いられるモース硬度や、ビッカース硬度によって規定するとすれば、以下のようになる。
【0043】
すなわち、別のパラメータによれば、一般にガラスのモース硬度が6.5度であるという観点から、前記保護部材のモース硬度が、6.5度以上であることが好ましい。モース硬度は、柔らかいものから順に10種類の基準となる純粋鉱物が決められており、これを比較することにより、硬さを測定するものである。
【0044】
また、別のパラメータによれば、一般に通常のガラスのビッカース硬度が548kg/mmであるという観点から、前記保護部材のビッカース硬度が、548kg/mm以上の硬いものが好ましく用いられる。ビッカース硬度の測定は、まず、対面角α=136°の正四角錐ダイヤモンドでつくられたピラミッド形をしている圧子を材料表面に押し込み、荷重を除いたあとに残ったへこみの対角線の長さd(mm)から表面積S(mm)を算出する。そして、試験荷重F(N)を算出した表面積S(mm)で割った値がビッカース硬さ(HV)である。
【0045】
このようにして得られた反射鏡は、切断面が磨りガラス状、切り子状に類似しており、非常に高級感あふれるものとなっている。切断面に合わせて、淵、枠等をつければ、コンパクト、手鏡等にも使用することができる。被膜面を一部削ることにより、反射鏡に、文字、図形、デザイン等を新たに付与することも可能である。反射鏡は、もともとは、長方形、丸型等のいわゆるお決まりの形状に基づいて生産された、いわゆる鏡であるが、本発明においては、所望の原画等に応じて、デザインカットされた反射鏡を提供することができる。
【0046】
本発明の装飾反射鏡は、本発明の反射鏡をパーツとして、前記パーツを組み合わせることにより装飾化されていることを特徴とする。切断された反射鏡をパーツとして使用することで、パーツ毎に切断面を有していることから、すなわち、パーツには、切断部、例えば、ウォータ−ジェットカッターによる切断部を有していることから、切断部は、反射鏡の所謂表面よりも粗いので、所謂切り子状等に類似して、高級感、独特の美感を提供する。
【0047】
反射鏡は、パーツ毎に切断面を有し、高級感がパーツ毎に生まれるので、パーツを組み合わせた装飾化反射鏡もまた高級感を生みだすという効果を奏する。
【0048】
また、本発明の装飾反射鏡の好ましい実施態様において、前記パーツが、反射色の異なる鏡であることを特徴とする。反射色の異なる鏡でパーツが一部又は全部構成されることで、切断面の高級感に加えて、付加的な高級感を生み出す。
【0049】
次に、本発明の反射鏡の加工方法について説明すれば、以下の通りである。
【0050】
本発明の反射鏡の加工方法は、光を透過する光透過媒体と、前記光透過媒体に設けられており、かつ、光を反射するための被膜面とを有する反射鏡の加工方法であって、前記光透過媒体の切断を、ウォータージェットカッターにより行うことを特徴とする。
【0051】
本発明において、光透過媒体とは、光透過媒体とは、所謂光を透過するものであれば特に限定されない。光透過媒体としては、ガラス製、アクリル製、プラスチック製、又はポリエステル製等を挙げることができる。また、光を反射するための被膜面は、前記光透過媒体のいずれかの面に存在することができる。被膜面は、光を反射して所謂鏡として機能させるものである。被膜面の材質としては、常法に従い特に限定されるものではないが、例えば、金属を用いることができ、アルミニウム、銀など例示することができる。これらアルミニウム、銀などの金属を、常法により光透過媒体に蒸着して被膜面を形成することができる。
【0052】
ウォータージェットカッターによる切断は、一般に、水は比較的管理がしやすいため、維持費、製造コスト等を安くできること、精密切断が可能であること、非接触加工であること、等の特徴がある。ウォータージェットカッターの条件についても、反射鏡を切断できれば特に限定されない。条件については、装飾品、反射鏡、コンパクト等の最終製品の所望の品質によって、適宜設定することが可能である。
【0053】
ウォータージェットカッターの条件について、説明すれば以下の通りである。例えば、水圧に関しては、10〜500MPaとすることができる。水圧に関して、好ましくは、100〜350MPa、より好ましくは、200〜320MPaとすることができる。なお、ピアスと呼ばれる、製品に関係がない部分の切断については、20〜40Mpaとすることができる。
【0054】
また、ウォータージェットカッターのノズル径についても特に限定されるものでない。ノズル径の内、水部分のノズル径については、例えば、0.1〜1mmとすることができ、好ましくは、0.1〜0.45mm、より好ましくは、0.15〜0.25mmとすることができる。また、ノズル径の内、アブレシブ(研磨材)を混入する場合のノズル径は、0.4〜2mmとすることができ、好ましくは、0.5〜1.0mm、より好ましくは、0.6〜0.9mmとすることができる。
【0055】
また、ウォータージェットカッターの水の流量についても、特に限定されるものではなく、要求される所望の最終製品の品質により適宜設定可能である。例えば、流量としては、0.1〜15L/min、好ましくは、0.5〜3.0L/min、より好ましくは、0.7〜2.0L/minとすることできる。
【0056】
また、ウォータージェットカッターの加工速度についても、特に限定されることはない。例えば、1〜15000mm/minとすることができ、より高品質に仕上げるという観点から、10〜500mm/min、50〜150mm/minとすることができる。より遅いと高品質に仕上がる傾向にあるが、量産性を考慮すると、ゆっくり仕上げると時間がかかるので、一定の速度が必要となる。
【0057】
また、本発明の反射鏡の加工方法の好ましい実施態様において、前記ウォータージェットカッターによる切断を、研磨材の供給下で行うことを特徴とする。研磨材としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、SiO2、ガーネット(ザクロ石)、ガラスビーズ等を挙げることができる。例えば、ガーネットについて言えば、粒度について、♯30〜♯400のものを用いることができ、粒度の数字が低いほど粗く仕上がる傾向がある。
【0058】
また、本発明の反射鏡の加工方法の好ましい実施態様において、前記研磨材の供給量が、10〜300g/minであることを特徴とする。切断面の部分については、よりきれいに仕上げるという観点から、好ましくは、60〜200g/min、より好ましくは、100〜170g/minである。なお、ピアスの部分については、前記研磨材の供給量が、30〜90g/min、好ましくは、50〜70g/minとすることができる。
【0059】
また、ウォータージェットカッターによる切断の場合においては、所望のデザインカットを付与することができるが、被膜面の剥離を防止する必要がある場合も生じる。被膜面の金属等の被膜剤が剥離すると、当該剥離部分においては、光を反射することができないので、鏡等としての用途に合わないことになりかねない。この場合、当該剥離面を補修、修正等することもできる。また、剥離自体をさせないような切断を意識することも重要である。
【0060】
したがって、被膜面の金属等の被膜剤の剥離を防止するために、本発明の反射鏡の好ましい実施態様において、前記切断面が、切断される対象の反射鏡の被膜面側に、保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより切断してもよい。保護部材の存在は、ウォータージェットカッターによる、高水圧の水、使用した研磨材等の反射によって、反射鏡の被膜が削られるのを防止することができる。
【0061】
このような保護部材としては、被膜を防止することが可能であれば、特に限定されない。例えば、スポンジ、ベニヤ板等の板材、ゴム、ガラス等を使用することができる。厚さは、用いる保護部材、最終製品の反射鏡に要求される品質等により特に限定されない。例えば、ズポンジであれば、3〜10mm、ガラスであれば、1〜10mm等適宜設定可能である。ガラスの場合、好ましくは、1〜5mm、経済性を考慮して、より好ましくは、1〜3mmである。
【0062】
品質に優れる反射鏡を提供するという観点から、好ましい態様において、前記保護部材の鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする。鉛筆硬度がH未満であると、反射鏡のガラス部分には問題はないが、反射させるための被膜面において、剥離が生じる虞がある。より高品質な反射鏡を提供するという観点から、前記保護部材の鉛筆硬度が、H以上、より好ましくは2H以上である。また、保護部材の材質としては、ガラス、樹脂等種々のものが考えられるが、加工時にある程度の摩擦を確保し、歩留まりを向上させ、加工を容易にするという観点から、樹脂製が好ましい。ガラスも使用可能であるが、加工時に反射鏡との間で滑りが生じ、上手に加工するのが困難な傾向がある。ガラス等滑りやすい材質を保護部材に使用する場合には、反射鏡との間にさらに滑り防止材を挿入してもよい。
【0063】
鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4規格のものを用いることができる。鉛筆硬度は、鉛筆の芯を試料表面に押し付けて動かし、傷付きの有無により試料の引っかき硬度を鉛筆の芯の硬さ(6B〜HB〜6H等)で表わすものである。プラスチック、塗膜等の表面硬さの評価方法として一般に用いられている。
【0064】
鉛筆を斜め45度等にセットし、試料表面を走行させて、測定する。鉛筆硬度の測定方法の概略は、1)水平であることを確認し、2)一定の速度、例えば0.5〜1.0mmの速度で、数mm程度の距離を走行させて、3)傷又は圧痕がついた場合には、鉛筆スケールを軟らかくし、傷跡がつかない鉛筆スケールを探し、逆に傷又は圧痕がつかない場合には、鉛筆スケールを硬くし、傷跡がつく鉛筆スケールを探す、というものである。
【0065】
また、好ましい態様によれば、別のパラメータにおいて、前記保護部材のロックウェル硬度(試験方法:JISK7202、単位:Mスケール)が、55以上であることを特徴とする。ロックウェル硬度が55未満であると、反射鏡のガラス部分には問題はないが、反射させるための被膜面において、剥離が生じる虞がある。より高品質な反射鏡を提供するという観点から、前記保護部材のロックウェル硬度が、55以上、より好ましくは、75H以上、さらに好ましくは98以上である。上限は特に規定していないが、より硬度が高ければ、ウォータジェットカッターにより裏面の被膜面の剥離を防止できる。作業工程を緻密に管理することによって、これら硬度以下のものでも反射用の被膜面の剥離を防止可能な場合も有り得るが、加工工程を単純化するという意味において、上記硬度の範囲が好ましいということができる。
【0066】
また、別の態様によれば、反射鏡と同じ素材の板ガラスを、保護部材として用いることができる。保護部材として、ガラスなどの部材の硬度に用いられるモース硬度や、ビッカース硬度によって規定するとすれば、以下のようになる。
【0067】
すなわち、別のパラメータによれば、一般にガラスのモース硬度が6.5度であるという観点から、前記保護部材のモース硬度が、6.5度以上であることが好ましい。モース硬度は、柔らかいものから順に10種類の基準となる純粋鉱物が決められており、これを比較することにより、硬さを測定するものである。
【0068】
また、別のパラメータによれば、一般に通常のガラスのビッカース硬度が548kg/mmであるという観点から、前記保護部材のビッカース硬度が、548kg/mm以上の硬いものが好ましく用いられる。ビッカース硬度の測定は、まず、対面角α=136°の正四角錐ダイヤモンドでつくられたピラミッド形をしている圧子を材料表面に押し込み、荷重を除いたあとに残ったへこみの対角線の長さd(mm)から表面積S(mm)を算出する。そして、試験荷重F(N)を算出した表面積S(mm)で割った値がビッカース硬さ(HV)である。
【0069】
次に、本発明の一実施態様において、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる反射鏡の加工方法を示すフローチャートを示す図である。図1は、本発明の装飾反射鏡の一例の加工方法を示し、本発明の反射鏡をパーツとして、前記パーツを組み合わせることにより装飾化されている装飾反射鏡の加工工程の一例を示す。
【0070】
まず、最終製品である装飾反射鏡の原画をパソコン(パーソナルコンピューター)に入力する。これは反射色の異なる鏡を組み合わせてデザインが実現できるように、それぞれの色がわかるようになっているものとする。図1において、1〜16までは、最終製品のパーツを示す。例えば、1〜5までを、 反射色クリアー、6〜10までを、反射色グレー、11〜16までを反射色ブラウンとすることができる。また、1〜16までを総て異なる16色の色で構成されていてもよい。また、1〜16総てを、反射色クリア、グレー、又はブラウン等としてもよい。この場合には、単一色で構成されるものとなる。また、1〜16までは、パーツとして切断されていてもよく、一部又は全部が、パーツの境界において切断されていない部分があってもよい。切断されていない部分で輪郭を付けたい場合には、反射用の被膜部分を上述のように削ると線、図形等のデザインを出すことができる。
【0071】
反射色の色は限定されず、例えば、目に当たる部分のみを、反射色レッドにしたりしてもよい。反射色の色は種々変更可能である。いずれにしても、切断面が、所謂表面よりも粗いために、独特の高級感を有する装飾反射鏡を提供可能である。
【0072】
例えば、反射色をブラウン、クリア、グレーを使用した場合について説明すると、まず、反射色の鏡(例えばブラウン)をセットする。そして、ブラウンの反射色の鏡で作成したいパーツを切断するように、パソコン制御された機械をセットする。
【0073】
次に、異なる色の反射色の鏡(例えばクリア)をセットする。クリアの鏡で作成したいパーツを切断するように、パソコン制御された機械をセットする。
【0074】
以下同様に、それぞれの反射色の鏡のパーツを切断し、それらを組み合わせてデザインされた装飾品を作成する。
【0075】
次に、図2に上記の加工方法で作成されたデザインされた装飾品の一例を示す。図2は、本発明の加工方法により得られた反射鏡のデザイン装飾品の一例を示す図である。
【0076】
図2は、ある動物をモチーフにした装飾品の一例である。このように反射色のクリアー、グレー、ブラウンの鏡を組み合わせることにより、動物の絵をデザインすることが可能となる。装飾品は、単一色、例えば、クリア、グレー、ブラウン、またはそれら以外の色で構成されていてもよい。他に様々な反射色の鏡を組み合わせることにより、様々なデザインの装飾品を作成することが可能である。
【0077】
図3は、アブレシブヘッドの一例を示す図である。20は超高圧水出口、21はアブレシブノズル、22はアブレシブ導入口、23はウォーターノズル、24は超高圧水導入口を、それぞれ示す。なお、図では、研磨材を使用する場合のノズルを示しているが、研磨材を使用しない場合には、21、22等は不要となる。24から超高圧水が導入され、ウォーターノズル23を介して、反射鏡を切断可能である。研磨材を使用する場合には、さらに、アブレシブ導入口から導入された所望の研磨材とともに、超高圧水がアブレシブノズルを経由して、超高圧水出口22において噴射される。
【0078】
図4は、所謂テーブル移動型のウォータジェットカッターの切断の様子を示す図である。31はアブレシブヘッド(Y軸方向へ移動)、32は加工対象物(X軸方向へ移動)、33はワークストッパー、34はスリットキャッチャー(固定)を、それぞれ示す。この移動型の装置においては、超高圧水、研磨材、及び切断屑等は、総てキャッチャへ収納される仕組みになっている。水の跳ね返りが少なく、後述のノズル移動型などに代表されるような水中で切断するものではないので、ノズル移動型よりは騒音が問題となるが、それでも低騒音である。
【0079】
図5は、所謂ノズル移動型のウォータジェットカッターの切断の様子を示す図である。41はアブレシブヘッド(XY軸方向へ移動)、42はオープンキャッチャー(固定)、43は台、44はキャッチャータンクをそれぞれ示す。このノズル移動型は、キャッチャタンク44上にステンレス鋼板(台43)をおいた簡単な構造である。ステンレス鋼板(台43)は、格子状としてもよい。
【0080】
図6は、本発明の反射鏡の一例を示す図である。一般の反射鏡は、光を透過する光透過媒体と、前記光透過媒体に設けられており、かつ、光を反射するための被膜面とを有する反射鏡であって、前記被膜面と反対側の面を光透過媒体の表面とした場合に、通常の反射鏡は、それ自体一体成型等により得られているので、前記被膜面及び前記表面以外の部分の側面は、表面と同じ表面粗さである。また、側面は、透明である。割って切断したとしても、側面は、やはり透明であり、また、表面粗さも表面と同じである。
【0081】
一方、本発明の反射鏡において、前記被膜面及び前記表面以外の部分において、切断面を有し、前記切断面の表面粗さが、前記表面よりも粗い。これは、最終製品である反射鏡に独特の高級感を生みだす。所望のデザイン形状にしたものを、後で磨りガラス、切り子等のように、サンドブラスト等によって研磨して、切断面を表面よりも粗くしてもよい。量産性、低コスト化を狙うという観点から、切断面は、ウォータージェットカッターにより切断されたものであること好ましい。すなわち、本発明の反射鏡には、ウォータージェットカッター切断部を有していてもよい。これは、反射鏡が、単一のものから、パーツを組み合わせた装飾反射鏡のものでも同様である。
【実施例】
【0082】
ここで、本発明の実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
実施例1
【0083】
まず、反射鏡の粗い切断面を付与するのに、量産性等を考慮して、ウォータージェットカッターによる反射鏡の切断を試みた。
【0084】
まず、種々の加工速度による反射鏡及びガラスの切断面について評価を行った。ウォータージェットカッターのうち、移動式と呼ばれるものを用いて、切断は、水中下で行った。水圧としては、反射鏡については300Mpa、ピアスと呼ばれる、製品に関係しない部分の切断には、30MPaとした。流量としては、反射鏡については、1.1L/min、ピアスについては、0.35L/minとした。ノズル径としては、0.2mmのものを使用した。
【0085】
加工速度について、具体的には、100〜2000mm/min、具体的には、100、250、500、750、1000、1250、1500、及び2000mm/minで行った。その時に用いた反射鏡の厚みは5mmであった。いずれに加工速度において、切断面において、表面よりも粗い切断面を付与することができた。また切断面は不透明であった。傾向としては、加工速度が大きくなるほど、すなわち、速く切断すると、切断面と表面、又は切断面と被覆面での仕上がりが粗くなる傾向があった。すなわち、加工速度が速くなるほど、加工面エッジ(上面及び下面)にチッピングの発生量の多くなる傾向が判明した。チッピングが発生しないほど、高級感を生じさせるため、100〜2000mm/minの間での試験では、100mm/min、250mm/min、500mm/min、750mm/min、1000mm/min、1250mm/min、1500mm/min、2000mm/minの順で良好であった。したがって、量産性の問題があるが、より遅く加工することで高品質の反射鏡が得られることが判明した。
【0086】
上記の結果、直径50mmの穴加工において、切断の起点となるピアスを自動ピアス機能で低圧噴射・貫通して、加工を開始して、所望の輪郭、切断点まで、カットしていくことにより、ガラス及び反射鏡が割れることなく加工が可能であることが判明した。したがって、反射鏡等の割れを防止するために、所望のピアスカット開始の加工条件があることが判明した。すなわち、あまりに大きい圧力、流量等を使用すると反射鏡が割れる虞があるため、良好なピアス(切断開始の加工条件)条件があることが判明した。すくなくとも、最終製品の反射鏡の切断時の条件より、圧力及び流量については、ピアス条件は、低い値が望ましいことが判明した。
【0087】
実施例2
次に、研磨材を使用して、ウォータ―ジェットカッターによる反射鏡の切断を試みた。用いた反射鏡の厚さは5mmであった。研磨材としては、ガーネットを使用して、粒度として、♯120、及び♯80のものを使用した。研磨材の供給量としては、反射鏡については、150g/min、ピアスの部分については、60g/minとした。水圧としては、反射鏡については300Mpa、ピアスと呼ばれる製品に関係しない部分の切断には、30MPaとした。流量としては、反射鏡については、1.1L/min、ピアスについては、0.35L/minとした。ノズル径としては、0.2mmのものを使用した。
【0088】
また、実施例1の結果、加工速度に関しては、遅い方が高品質化が期待できることが分かるが、ここでは、実施例1の評価の中で良好であった100mm/minとした。
【0089】
ガーネット♯80及び♯120の加工面の比較(研磨材粒度の違いによる比較)を示したのものが、図7である。(A)が、研磨材の粒度として、♯80の場合を、(B)が、研磨材の粒度として、♯120の場合を、それぞれ示す。その結果、研磨材の粒度について、ガーネット♯120のものが、ガーネット♯80のものに比べて、表面粗さが良好な結果を示し、数値が低いほど、粗い出来上がりとなることが判明した。したがって、より高品質な反射鏡を生産する場合には、粒度の数字が大きいものが良いことが分かる。
【0090】
実施例3
次に、反射鏡の被膜面における被膜剤、例えば金属等の剥離をより防止可能な条件について調べた。テーブル移動型の場合には、被膜の剥離はほとんど問題がない。しかしながら、格子等の加工対象物を載せるための台を必要とする場合であって、超高水圧が当該台に当たって加工対象物に跳ね返る虞がある装置である場合には、被膜面の被膜剤まで、研磨されてしまう虞がある。
【0091】
したがって、被膜面に保護部材を介して、切断試験を行った。保護部材として、高質スポンジ、ガラス等を使用した。厚さについては、ズポンジについては、5mm、ガラスについては、2mmのものを用いた。その結果、いずれの保護部材を用いた場合であっても、保護部材なしに切断したものと比較して、切断面のチッピングも全く認められないか、または少なく、被膜の剥離も改善されることが判明した。
【0092】
実施例4
次に、保護部材なしの場合、保護部材の厚さ、保護部材の硬度等を種々変更した場合について、反射鏡の反射用の被膜に対する評価を行った。併せて歩留まり等も考慮して、工業生産可能で、高歩留まりで高品質の反射鏡を提供し得る条件を調べた。
【0093】
テスト条件としては、アブレシブジェットカッタNC,アクジェットポンプ(型式:AJP-35025G2、株式会社スギノマシン社製)のウォータージェットカッターを用いた。切断において、圧力は300MPa、ピアス部分は30MPaとした。ノズル径として、ウォータ部分は、切断において0.2mm、ピアスにおいて0.2mmであった。ノズル径として、アブレシブ部分については、切断において0.76mm、ピアスにおいて0.76mmとした。流量は、切断において1.1L/min、ピアスにおいて0.35L/minであった。また、加工速度については、切断において100mm/minとした。研磨材供給量については、切断において150g/min、ピアスにおいて60g/minとした。使用研磨材は、ガーネット♯120とした。
【0094】
具体的に、保護部材として、アクリル(厚さ1mm、2mm、3mm、及び5mm)のもの、ガラス(厚さ3mm)のもの、スポンジ(厚さ5mm)のものを使用した。加工形状は楕円とした。
【0095】
図8は、保護部材を介さずに、ウォータージェットカッターにより切断した反射鏡を示す図である。丸で囲んだ部分が、ウォータージェットによる跳ね返し等を含めウォータージェットに起因する傷であり、反射鏡の反射の被膜が削られていることが分かる。図8中に下の定規は、1目盛り1mmのスケールの定規である。図9は、図8の右から3番目の丸で囲んだ傷の部分の拡大図を示す図である。やはり、スケールは1目盛り1mmである。傷の大きさは長いところで3mm程度である。肉眼でも判別可能であり、この部分を枠等で隠せば、反射鏡として使用可能であることが分かる。図10は、鉛筆硬度H以上の保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより切断した反射鏡を示す図であり、保護部材の厚さが1mmのものである。右側の1目盛りはやはり1mmのスケールである。図11は、鉛筆硬度H以上の保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより切断した反射鏡を示す図であり、保護部材の厚さが5mmのものである。右側の1目盛りはやはり1mmのスケールである。
【0096】
反射用の被膜の剥離の程度については、肉眼で反射鏡として使用する場合に気にならない程度であるものが、図10及び図11の条件で行った反射鏡であるので、具体的に、これを例にどのぐらいの傷があるのか測定した。まず、図10においては、図からも測定可能であるが、最も傷が大きい部分の長さは、0.113mmであり、最も短い傷の部分は、0.02mmであった。
【0097】
また、図11においては、最も傷が大きい部分の長さは、0.204mmであり、最も短い傷の部分は0.02mmであった。したがって、0.5mm程度以下の剥離であれば、反射鏡として使用する場合にほとんど気にならない剥離と考えられる。
【0098】
ウォータージェットにより生じた傷は、図10及び図11においても共通することは、いずれも連続的な傷で凹凸、山と谷の連続である。鋭い山谷という感じではなく、なめらかな山谷(傾斜角が山谷とも概ね45度以下のなめらかな山谷)の連続といえる。このような山谷は、概ね0.5mm未満程度の範囲の傷の深さに収まっていることが図からも読み取れる。
【0099】
また、図示しないが、JIS K5600−5−4規格の鉛筆硬度B、HB、H、2Hの樹脂板について試験をしたところ、鉛筆硬度H以上の樹脂板が良好な結果を示すことも判明した。
【0100】
以上のように、従来は、ウォータージェットカッターは、石材等の切断には用いられるものの、反射鏡の切断には用いられることはなかった。また、複雑なデザインの切断をすることはなかった。
【0101】
しかし、本実施形態は、そのウォータージェットカッターを反射鏡に用いることで、ひび割れのない高精度な反射鏡の加工を行うことができる。
【0102】
そして、複雑なデザインに加工された反射色の異なる反射鏡を組み合わせて小物から壁面全体の大物まで多種多様の今までにない装飾品を製造することが可能である。
【0103】
そして、この複雑なデザイン加工された反射色の異なる反射鏡を組み合わせて手鏡、コンパクト、キャラクター壁飾り、店舗内装、ホテルロビーの内装などが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
これまで、反射鏡は、お決まりの形状、すなわち、丸型、四角型等の形状であったが、複雑なデザインカットが可能であり、かつ、高級感を有する装飾品を提供できるので、広範な分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1〜16 パーツ
20 超高圧水出口
21 アブレシブノズル
22 アブレシブ導入口
23 ウォーターノズル
24 超高圧水導入口
31 アブレシブヘッド(Y軸方向へ移動)
32 加工対象物(X軸方向へ移動)
33 ワークストッパー
34 スリットキャッチャー(固定)
41 アブレシブヘッド(XY軸方向へ移動)
42 オープンキャッチャー(固定)
43 台
44 キャッチャータンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する光透過媒体と、前記光透過媒体に設けられており、かつ、光を反射するための被膜面とを有する反射鏡の加工方法であって、前記光透過媒体の切断を、前記被膜面の被膜面側に保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより行うことを特徴とする反射鏡の加工方法。
【請求項2】
前記保護部材の鉛筆硬度がH以上である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ウォータージェットカッターによる切断を、研磨材の供給下で行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ウォータージェットカッターによる切断を、10〜500MPの水圧で行うことを特徴とする請求項1又は2項に記載の方法。
【請求項5】
前記ウォータージェットカッターによる切断を、1〜15000mm/minの加工速度で行うことを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記研磨材の供給量が、10〜300g/minである請求項1〜4項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
光を透過する光透過媒体と、前記光透過媒体に設けられており、かつ、光を反射するための被膜面とを有する反射鏡であって、前記被膜面と反対側の面を光透過媒体の表面とした場合に、前記被膜面及び前記表面以外に切断面を有し、前記切断面の表面粗さが前記表面よりも粗く、前記切断面が前記被膜面の被膜面側に保護部材を介して、ウォータージェットカッターにより切断された切断面であることを特徴とする反射鏡。
【請求項8】
前記保護部材の鉛筆硬度がH以上である請求項7記載の反射鏡。
【請求項9】
前記切断面が、研磨材の供給下、前記ウォータージェットカッターにより切断された面であることを特徴とする請求項7又は8項に記載の反射鏡。
【請求項10】
前記光透過媒体が、ガラス製、又はアクリル製である請求項7〜9項のいずれか1項に記載の反射鏡。
【請求項11】
請求項7〜10項のいずれか1項に記載の反射鏡をパーツとして、前記パーツの組み合わせからなることを特徴とする装飾反射鏡。
【請求項12】
前記パーツが、反射色の異なる鏡である請求項11記載の装飾反射鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−31993(P2013−31993A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22006(P2012−22006)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【特許番号】特許第5000019号(P5000019)
【特許公報発行日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(508158481)
【出願人】(511030552)
【Fターム(参考)】