説明

反射鏡付放電ランプ

【課題】発光管の後部封止部のガラス端部およびその周辺部から漏れる放射光を反射させて、ランプ後部に設置されているプロジェクター内の部品の温度上昇を抑えて熱劣化を抑制するだけでなく、反射される光を前方への放射光として加えることで、前方への放射光量がより増加した反射鏡付放電ランプを提供することを目的とする。
【解決手段】この発明に係る反射鏡付放電ランプ1は、反射鏡3の内部に発光管2が収納され、発光管2の後部封止部のガラス端部4が、反射鏡3の後部に露出する反射鏡付放電ランプ1において、少なくとも発光管2の後部封止部のガラス端部を、鏡面反射加工が施された鏡面反射加工部7としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロジェクター用光源に使用される反射鏡付放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
反射鏡付放電ランプの発光管の発光部分は、球面、楕円面、放物面等の碗状の反射鏡の焦点に位置する。発光管から放射された光は反射鏡の内面に施された反射膜によって反射され、ランプ前方に放射される。放射された光は、ランプ前方に設けられた光学系に入射する。
【0003】
一方、図5に示すように、反射鏡付放電ランプ101の反射鏡103の後部から突出している発光管102の後部封止部のガラス端部104から、漏れ光として後方に放射される。
【0004】
図6に示すように、発光管102の後部封止部のガラス端部104から漏れる放射光は熱エネルギーを含み、鋭い指向性で放射される。そのため、ランプの後方に設置されているプロジェクター内の部品の熱劣化をもたらすという課題があった。また、ランプ後部に放射される分、ランプ前部に放射される有効利用光が減少する課題があった。
【0005】
ランプの後方に設置されているプロジェクター内の部品の熱劣化を抑制するために、反射鏡の内部に発光管が収納され、発光管の後部封止部のガラス端部が、反射鏡の後部に露出する反射鏡付放電ランプにおいて、発光管の後部封止部のガラス端部をフロスト加工部とする反射鏡付放電ランプが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−253048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1によれば、発光管の後部封止部のガラス端部をフロスト加工部としても、拡散された放射光が照射される部分の部品の温度は95℃上昇し、その効果は十分とは言えなかった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、発光管の後部封止部のガラス端部およびその周辺部から漏れる放射光を反射させて、ランプ後部に設置されているプロジェクター内の部品の温度上昇を抑えて熱劣化を抑制するだけでなく、反射される光を前方への放射光として加えることで、前方への放射光量がより増加した反射鏡付放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る反射鏡付放電ランプは、反射鏡の内部に発光管が収納され、発光管の後部封止部のガラス端部が、反射鏡の後部に露出する反射鏡付放電ランプにおいて、少なくとも発光管の後部封止部のガラス端部を、鏡面反射加工が施された鏡面反射加工部としたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明に係る反射鏡付放電ランプは、後部封止部の端部周辺のガラス外壁面も鏡面反射加工部としたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明に係る反射鏡付放電ランプは、鏡面反射加工部を、金属薄膜をガラス表面に蒸着法又はスパッタ法により形成したものであることを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係る反射鏡付放電ランプは、鏡面反射加工部を、少なくとも後部封止部のガラス端部を覆うような形状の金属膜、あるいは金属筐体を、耐熱性接着剤を用いて接着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る反射鏡付放電ランプは、上記構成により、発光管の後部封止部のガラス端部および周辺のガラス外壁面から漏れる鋭い指向性の放射光を鏡面反射加工部で反射させて、ランプ後部に設置されているプロジェクター内の部品の温度上昇を抑えて熱劣化を抑制することに加えて、前方への放射光の強度が増加するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1乃至図4は実施の形態1を示す図で、図1は反射鏡付放電ランプ1の一部を破断した側面図、図2は反射鏡付放電ランプ1の要部側面図(a)と要部正面図(b)、図3は反射鏡付放電ランプ1の後部からの放射光が鏡面反射加工部7の反射遮蔽により抑制される様子を示す図、図4は反射鏡付放電ランプ1の後方のプロジェクター内の部品の温度上昇を従来の方法と比較した試験結果を示す図である。
【0014】
図1に示すように、反射鏡付放電ランプ1(以下、ランプとも言う)は、反射鏡3の内部に発光管2が収納される。発光管2の発光部分は、球面、楕円面、放物面等の碗状の反射鏡3の焦点に位置する。放射された光は、反射鏡3の内面に施された反射膜によって反射され、ランプ前方に放射される。放射された光はランプ前方に設けられて光学系に入射する。
【0015】
発光管2は、両端部が封止され、後部封止部付近で無機接着剤により反射鏡3に固定されている。そして、後部封止部のガラス端部4は、反射鏡3の後方に突出し、外部に露出している。
【0016】
図2に示すように、後部封止部のガラス端部4および露出しているガラス外壁面9は、鏡面反射加工が施されて鏡面の鏡面反射加工部7になっている。
【0017】
尚、鏡面反射加工を施す鏡面反射加工部7は、大部分の漏れ放射光が放射される後部封止部のガラス端部4のみでもよい。
【0018】
鏡面反射加工部7の鏡面反射加工は、一般に金属薄膜をガラス表面に蒸着法、スパッタ法等の方法で形成したものである。用いられる金属としては、アルミニウム、銀、金、銅、ニッケル、プラチナ、ロジウムなどの単体金属元素の他、それらの合金や、鉄、ニッケル、クロムなどの合金でもよい。
【0019】
また、他の鏡面反射加工部7の形成方法としては、後部封止部のガラス端部4および周辺のガラス外壁面9を覆うような形状の金属膜、あるいは金属筐体を耐熱性接着剤を用いて接着してもよい。後部封止部のガラス端部4のみに、金属膜、あるいは金属筐体を耐熱性接着剤を用いて接着してもよい。
【0020】
前記金属膜、あるいは金属筐体は、反射鏡付放電ランプ1の後方にある片側電極の導線10に接触し導通していてもよい。しかし、反射鏡付放電ランプ1のもう一方の反対側電極と導通する導線11とは電気的に絶縁状態であるように注意して配置する必要がある。
【0021】
図3はこのような鏡面反射加工を、後部封止部のガラス端部4および周辺のガラス外壁面9に施した反射鏡付放電ランプ1の、後部封止部のガラス端部4および周辺のガラス外壁面9から漏れる放射光の様子を示している。後部封止部のガラス端部4および周辺のガラス外壁面9から漏れる放射光が、鏡面反射加工部7の反射によってほとんど遮られ、反射鏡付放電ランプ1の後方に設置されるプロジェクター内の部品8の温度上昇は抑えられると考えられる。また、紫外光等を主原因とするプロジェクター内の部品8の光劣化も抑えられると考えられる。
【0022】
次に、後部封止部のガラス端部4および周辺のガラス外壁面9に施した鏡面反射加工部7の効果を検証するために、従来の鏡反射加工を施さない、放射光が鋭い指向性で放射されるランプと、本実施の形態のランプとについて、反射鏡付放電ランプ1の後方に設置されるプロジェクター内の部品8の温度上昇を比較した。
【0023】
その試験結果を図4に示す。試験は、電力300W、後部封止部のガラス端部4とその周辺のガラス外壁面9に厚さ0.05mmのアルミニウム膜を密着させ、後部封止部のガラス端部4からプロジェクター内の部品までの距離Lが15mmの時の、プロジェクター内の部品8の温度上昇を測定した。
【0024】
図4から明らかなように、後部封止部のガラス端部4に鏡面反射加工を施したものは、プロジェクター内の部品8の温度上昇が大幅に低下する。後部封止部のガラス端部4に鏡面加工もフロスト加工も施さない従来の方法(特許文献1)によるものが、温度上昇が47℃であるのに対し、本実施の形態のものは、7℃であった。温度上昇の絶対値が、特許文献1と異なる理由は、冷却ファンから冷却風量、ランプおよびプロジェクター内の部品の種類、部品の配置、放熱、伝導熱の条件等が必ずしも一致しないためである。
【0025】
尚、反射鏡付放電ランプ1の後部は、ランプ点灯中は高温となる。本実施の形態の場合、温度測定の結果、200℃以下であり、融点660℃と比較的融点の低いアルミニウム金属を反射膜として用いた場合でも十分低い温度に保たれており、アルミニウムが融解する等といった問題は無く、アルミニウムあるいは他の金属耐熱テープ等を用いても温度上問題が無く、本実施の形態の効果が得られることが分かる。
【0026】
以上のように、反射鏡付放電ランプ1の発光管2の後部封止部のガラス端部4および周辺のガラス外壁面9(少なくとも後部封止部のガラス端部4)に鏡面反射加工を施すことにより、鋭い指向性の放射光を反射させてプロジェクター内の部品8の温度上昇を大幅に低減することができるだけでなく、ランプ後部方向へ放射光を反射させることにより、ランプ前面への放射光強度を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態1を示す図で、反射鏡付放電ランプ1の一部を破断した側面図。
【図2】実施の形態1を示す図で、反射鏡付放電ランプ1の要部側面図(a)と要部正面図(b)。
【図3】実施の形態1を示す図で、反射鏡付放電ランプ1の後部からの放射光が鏡面反射加工部7の反射遮蔽により抑制される様子を示す図。
【図4】実施の形態1を示す図で、反射鏡付放電ランプ1の後方のプロジェクター内の部品の温度上昇を従来の方法と比較した試験結果を示す図。
【図5】従来の反射鏡付放電ランプ101の要部側面図(a)と要部正面図(b)。
【図6】従来の反射鏡付放電ランプ101の後部から漏れる放射光を示す図。
【符号の説明】
【0028】
1 反射鏡付放電ランプ、2 発光管、3 反射鏡、4 後部封止部のガラス端部、7 鏡面反射加工部、8 プロジェクター内の部品、9 ガラス外壁面、10 導線、11 導線、101 反射鏡付放電ランプ、102 発光管、103 反射鏡、104 後部封止部のガラス端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射鏡の内部に発光管が収納され、発光管の後部封止部のガラス端部が、前記反射鏡の後部に露出する反射鏡付放電ランプにおいて、
少なくとも前記発光管の後部封止部のガラス端部を、鏡面反射加工が施された鏡面反射加工部としたことを特徴とする反射鏡付放電ランプ。
【請求項2】
前記後部封止部の端部周辺のガラス外壁面も鏡面反射加工部としたことを特徴とする請求項1記載の反射鏡付放電ランプ。
【請求項3】
前記鏡面反射加工部は、金属薄膜をガラス表面に蒸着法又はスパッタ法により形成したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の反射鏡付放電ランプ。
【請求項4】
前記鏡面反射加工部は、少なくとも前記後部封止部のガラス端部を覆うような形状の金属膜、あるいは金属筐体を、耐熱性接着剤を用いて接着することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の反射鏡付放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−293774(P2008−293774A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137630(P2007−137630)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(591015625)オスラム・メルコ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】