説明

反射防止フィルムの製造方法、偏光板及びディスプレイ

【課題】塗液の水分混入が発生しやすい開放系の塗工方式において反射防止フィルムを製造する際、溶剤に親水性溶剤を用いても、ハジキ欠陥、色ムラの発生を抑えた反射防止フィルムを製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】低屈折率層形成用塗液にモレキュラーシーブを脱水剤として使用する。開放系の塗工による塗液の水分吸収をモレキュラーシーブが抑制する。このため、ハジキ欠陥、色ムラの発生を防止して、高品質の反射防止フィルムを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイの表示画面に適用される、反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。したがって、高品質の画面表示を実現するためには、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することが必須である。
【0003】
一般に反射防止機能は、透明基材上に金属酸化物等の透明薄膜からなる多層膜を形成することで得られる。これらの多層膜は、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法などのドライコーティング法により形成することが可能だが、蒸着による形成方法は生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、反射防止膜の形成方法として、低屈折率の塗料を塗布するウェットコーティング法が注目されており、このウェットコーティング法によれば大面積化、連続生産、低コスト化が可能である。
【0004】
ウェットコーティング法による生産方式において、ナノレベルでの均一な膜を塗布形成するためにはマイクログラビア方式が有効であるが、マイクログラビア方式は開放系であり、塗液が空気中の水分を吸収し、ハジキ欠陥、色ムラといった不具合が発生する。
【0005】
この塗液の水分吸収を抑える為に、使用溶剤にケトン系のような疎水性溶剤を使用することが有効であるが、疎水性溶剤は粘性が低く、塗工時における色ムラが発生しやすい傾向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−191544号公報
【特許文献2】特開2007−102206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、塗液の水分混入が発生しやすい開放系の塗工方式において、溶剤に親水性溶剤を用いても、ハジキ欠陥、色ムラの発生を抑えた反射防止フィルムを製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0008】
この方法で製造された反射防止フィルムはハジキ欠陥や色ムラがなく、しかも、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有するものである。このため、偏光フィルムに積層して偏光板を得ることができる。また、ディスプレイ用部材に適用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、透明基材の少なくとも片面に低屈折率層を積層した反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液にモレキュラーシーブを脱水剤として使用することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記低屈折率層が、電離放射線硬化型樹脂組成物を主成分とし、シリコーン系撥水剤、シリコーン系レべリング剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記モレキュラーシーブとしてモレキュラーシーブ3Aを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記低屈折率層形成用塗液とモレキュラーシーブの重量比が低屈折率層形成用塗液/モレキュラーシーブとして3.3〜10.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液の主溶剤がアルコール系であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液のアルコール系溶剤中に、沸点10〜120℃の溶剤が溶剤比で60〜85%含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液のアルコール系溶剤中に、沸点120〜200℃の溶剤が溶剤比で15〜40%含まれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記低屈折率層が、粒径0.5〜200nmの低屈折率微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、L色度系における反射色相が0≦a≦5かつ−3≦b≦3であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0018】
請求項10に記載の発明は、平均視感反射率(Y)がY≦1.3%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0019】
請求項11に記載の発明は、前記低屈折率層がマイクログラビア方式により塗工されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法である。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれかに記載の方法により製造された反射防止フィルムを有することを特徴とする偏光板である。
【0021】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜11のいずれかに記載の方法により製造された反射防止フィルムを有することを特徴とするディスプレイである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、低屈折率層形成用塗液にモレキュラーシーブを脱水剤として使用するため、開放系の塗工による塗液の水分吸収を抑制することが可能となる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、電離放射線硬化型樹脂及びシリコーン系撥水剤を用いるため、膜の摩擦強度が増加し、耐擦傷性向上することが可能となり、シリコーン系レベ
リング剤を用いることにより色ムラ低減することが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、モレキュラーシーブ3Aを用いるから、塗液内の脱水を効率的に実施することが可能となる。
【0025】
請求項4に記載の発明においては、前記低屈折率層形成用塗液とモレキュラーシーブの重量比が低屈折率層形成用塗液/モレキュラーシーブとして3.3〜10.0であるため、モレキュラーシーブが塗液内のシリコーン系撥水剤およびシリコーン系レベリング剤を吸着することなく、水分のみ吸着することが可能となる。
【0026】
請求項5に記載の発明においては、低屈折率層形成用塗液の溶剤がアルコール系であるため、色ムラの少ない均一な膜を作製することが可能となる。
【0027】
請求項6に記載の発明においては、低屈折率層形成用塗液のアルコール系溶剤中に、沸点10〜120℃の溶剤が溶剤比で60〜85%含まれている。このため、色ムラの少ない均一な膜を作製することが可能となる。
【0028】
請求項7に記載の発明においては、前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液のアルコール系溶剤中に、沸点120〜200℃の溶剤が溶剤比で15〜40%含まれている。このため、色ムラの少ない均一な膜を作製することが可能となる。
【0029】
請求項8に記載の発明においては、前記低屈折率層が、粒径0.5〜200nmの低屈折率微粒子を含有する。このため、屈折率を下げることと透過性を損なわないことを両立することが可能となる。
【0030】
請求項9に記載の発明においては、反射防止フィルムのL色度系における反射色相が0≦a≦5かつ−3≦b≦3である。したがって、反射色としての赤色、青色の出現を抑え、反射色が無色に極めて近く色ムラの少ない反射防止フィルムを得ることができる。
【0031】
請求項10に記載の発明においては、反射防止フィルムの平均視感反射率(Y)がY≦1.3%である。平均視感反射率(Y)は、反射防止機能の出現による反射率の低下を示すものであり、平均視感反射率(Y)の値が小さいほど視認性が良くなる。従来の反射防止フィルムでは、Yが1.3%以下であると反射色が出現してしまうが、本発明の反射防止フィルムは、Yが1.3%以下においても反射色相が0≦a* ≦5かつ−3≦b* ≦3であり、反射防止機能と反射光の色味の低減とを同時に満たすことができる。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、前記低屈折率層がマイクログラビア方式により塗工される。このため、ナノレベルにおいて均一な膜厚を作製することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の製造方法は、透明基材の少なくとも片面に低屈折率層を積層して反射防止フィルムを製造する方法である。低屈折率層の積層は、塗液の塗布により行う必要がある。
【0034】
この塗液は、放射線硬化型樹脂、低屈折率微粒子、シリコーン系撥水剤、シリコーン系レべリング剤及び溶剤を主成分とするものが使用できる。このほか、前記放射線硬化型樹脂を硬化するため、開始剤や増感剤を含有することが望ましい。
【0035】
また、この塗液を塗布するにあたっては、脱水剤としてモレキュラーシーブを添加する必要がある。モレキュラーシーブとしては、孔径の点から、モレキュラーシーブ3Aが好
ましく使用できる。また、その添加量は、添加前の塗液の重量をモレキュラーシーブの重量で割った値が3.3〜10.0となる量である。低屈折率層形成用塗液/モレキュラーシーブの重量比が10.0を超えるとモレキュラーシーブに塗液のシリコーン系撥水剤およびシリコーン系レベリング剤が吸着し耐擦傷性が弱くなる。また、低屈折率層形成用塗液/モレキュラーシーブの重量比が3.3未満になると塗液の吸水による不具合が生じ、ハジキ欠陥および色ムラが顕著に発生する。
【0036】
次に、透明基材としては、公知の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材の中から、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらに耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、選択すればよい。その材質としては、例えば、ポリオレフィン系有機高分子、ポリエステル系有機高分子、セルロース系有機高分子、ポリアミド系有機高分子、アクリル系有機高分子、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等が例示できる。ポリオレフィン系有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が例示できる。また、ポリエステル系有機高分子としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が例示できる。セルロース系有機高分子としては、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等が例示できる。ポリアミド系有機高分子としては、6−ナイロン等が例示できる。アクリル系有機高分子としては、ポリメチルメタクリレート等が例示できる。また、これらの混合物から構成されるフィルムまたはシートでもよいし、複数の層を積層して構成されるものであってもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。なお、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより、機能を付加させたものも使用できる。
【0037】
次に、前記放射線硬化型樹脂としては、アクリレート系の官能基を有するものが使用できる。例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーが使用できる。好ましくはアクリル樹脂である。これら放射線硬化型樹脂を透明基材に塗布した後、例えば、電子線等の放射線を照射することにより硬化することができる。
【0038】
また、この放射線硬化型樹脂に光重合開始剤を添加することにより、紫外線照射で硬化する紫外線硬化樹脂を製造することができる。また、光重合開始剤に加えて光増感剤を添加することもできる。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類が使用できる。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリーn−ブチルホスフィン等を用いることができる。
【0039】
次に、前記低屈折率微粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFもしくはAlF(以上、いずれも屈折率は1.4)、Na3AlF6(氷晶石、屈折率は1.33)などを使用することができ、好ましくは、シリカゾル微粒子を使用する。シリカゾル微粒子の表面をアルミニウムアルコキシドなどアルミニウム有機物で修飾することが好ましい。また、内部が空洞の中空シリカ微粒子を使用することもできる。
【0040】
前記低屈折率微粒子としては、平均粒径が0.5〜200nmの範囲内であるのが好ましい。この平均粒径が200nmよりも大きくなると、低屈折率層の表面においてレイリー散乱によって光が散乱され、白っぽく見え、透明性が低下する。また、平均粒径が0.5nm未満であると、微粒子が凝集しやすくなってしまう。
【0041】
低屈折率微粒子の添加量は、低屈折率層中、10〜80質量%が好ましい。また、低屈折率層の屈折率は、1.30〜1.40が好ましい。
【0042】
次に、前記シリコーン系レべリング剤としては、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。シリコーン系撥水剤としては、フッ素を含有せず、(メタ)アクリル基を持たない有機ケイ素化合物を用いることができる。具体的には、アルキルアルコキシシラン化合物、シランシロキサン化合物、ポリエステル基を含有するシラン化合物、ポリエーテル基を有するシラン化合物、シロキサン化合物を用いることができる。
【0043】
前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液のアルコール系主溶剤中に、沸点10〜120℃の溶剤が溶剤比で60〜85%の範囲にあることが好ましい。85%を越える、もしくは、60%未満になると色ムラが顕著に発生する。
【0044】
次に、溶剤としては、親水性の非水溶剤が好ましく使用できる。すなわち、アルコール系溶剤である。このアルコール系溶剤中に、沸点120〜200℃の溶剤が溶剤比で15〜40%の範囲にあることが好ましい。40%を越える、もしくは、15%未満になると色ムラが顕著に発生する。また、沸点10〜120℃の溶剤が溶剤比で60〜85%含まれていることが望ましい。
【0045】
本発明の反射防止積層体は、偏光板に適用することができる。例えば、ディスプレイ用として通常用いられる偏光板における偏光膜の保護膜として、本発明の反射防止積層体を使用することができる。さらに本発明は、本発明の反射防止積層体を備える画像表示装置を提供する。このような画像表示装置としては、特に限定されず、CRTディスプレイ、液晶(LCD)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、プロジェクションディスプレイ等、いずれの方式のものであってもよい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施例および比較例に限定されるものではない。
【0047】
以下の低屈折率層形成用塗液(L−1〜L−4)を調整した。
【0048】
[低屈折率層形成用塗液(L−1)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液を、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールを90重量部と10重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整した。この溶液と純水を97重量部と3重量部になるように調整し、24h放置して低屈折率用塗液を作製した。
【0049】
[低屈折率層形成用塗液(L−2−1)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液を、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールを80重量部と20重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整し、低屈折率層形成用塗液を作製した。この溶液と純水を97重量部と3重量部になるように調整し、24h放置して低屈折率用塗液を作製した。
【0050】
[低屈折率層形成用塗液(L−2−2)]
低屈折率層形成用塗液(L−2−1)とモレキュラーシーブ3Aを95重量部と5重量部になるように調整し、24h放置して低屈折率用塗液を作製した。塗液/モレキュラーシーブの重量比は19.0である。
【0051】
[低屈折率層形成用塗液(L−2−3)]
低屈折率層形成用塗液(L−2−1)とモレキュラーシーブ3Aを90重量部と10重量部になるように調整し、24h放置して低屈折率用塗液を作製した。塗液/モレキュラーシーブの重量比は9.0である。
【0052】
[低屈折率層形成用塗液(L−2−4)]
低屈折率層形成用塗液(L−2−1)とモレキュラーシーブ3Aを50重量部と50重量部になるように調整し、24h放置して低屈折率用塗液を作製した。塗液/モレキュラーシーブの重量比は1.0である。
【0053】
[低屈折率層形成用塗液(L−3)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液を、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールを50重量部と50重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整した。この溶液と純水を97重量部と3重量部になるように調整し、24h放置して、低屈折率用塗液を作製した。
【0054】
[低屈折率層形成用塗液(L−4)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液を、メチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンを80重量部と20重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整した。この溶液と純水を97重量部と3重量部になるように調整し、24h放置して、低屈折率用塗液を作製した。
【0055】
(実施例)、(比較例1〜6)
表面にUV硬化樹脂ハードコート(HC)層(5μm)を設けた80μm厚のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムに低屈折率層形成用塗液(L−1〜L−4)をマイクログラビア法を用いて塗布し、乾燥、紫外線照射をおこない膜厚100nmの低屈折率層を形成した。(実施例)、(比較例1〜6)における低屈折率層形成用塗液(L−1〜L−4)は表1に示す。
【0056】
【表1】

上記の(実施例)、(比較例1〜6)について、各種物性評価方法を以下に示す。
【0057】
1.光学特性
分光光度計により入射角5度で550nmにおける反射率を測定した。
【0058】
2.耐擦傷試験
スチールウール♯0000を用い、500g/cm2 の荷重で10回往復擦傷試験を実施し、目視による傷の外観を検査した。評価は、傷なし(◎)、程度が小さい傷あり(○)、相当傷つく(△)、著しく傷つく(×)の4段階とした。
【0059】
3.目視評価(色ムラ)
積層の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処理を行った反射防止フィルムを目視で観察し、色ムラの発生を評価した。評価は、明るい環境下でも色ムラが見えにくい(◎)、明るい環境下にて色ムラが見える(○)、暗い環境下でも色ムラが見える(△)、暗い環境下にて色ムラがはっきりと見える(×)の4段階とした。
【0060】
4.目視評価(ハジキ欠陥)
積層の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処理を行った反射防止フィルムを目視で観察し、ハジキ欠陥の発生を評価した。評価は、明るい環境下にてハジキ欠陥がない(○)、明るい環境下にてハジキ欠陥がある(×)とした。
【0061】
5.油性ペンの拭き取り性
反射防止フィルムの表面に付着した油性ペンのインキをセルロース製不織布〔旭化成工業(株)製:ベンコットM−3〕で拭き取り、その取れ易さを目視判定で行った。評価は、油性ペンのインキを完全に拭き取ることが出来る(○)、油性ペンのインキの拭き取り跡が残る(△)、油性ペンのインキを拭き取ることが出来ない(×)の3段階とした。
【0062】
6.指紋の拭き取り性
反射防止フィルムの表面に付着した指紋をセルロース製不織布〔旭化成工業(株)製:ベンコットM−3〕で拭き取り、その取れ易さを目視判定で行った。評価は、指紋を完全に拭き取ることが出来る(○)、指紋の拭き取り跡が残る(△)、指紋を拭き取ることが出来ない(×)の3段階とした。
【0063】
【表2】

以上の結果から、次のことが分かる。
【0064】
(1)アルコール系溶剤を使用してモレキュラーシーブを使用しなかった比較例1〜2、比較例5、疎水性溶剤を使用してモレキュラーシーブを使用しなかった比較例3のいずれの場合も、ハジキ欠陥が生じたのに対し、モレキュラーシーブを使用した実施例ではハジキ欠陥がなかった。この結果から、ハジキ欠陥を防止するためには、モレキュラーシーブを使用する必要があることが分かる。
【0065】
(2)モレキュラーシーブを使用した場合でも、その量が少ない比較例4(塗液/モレキュラーシーブの重量比は19.0)ではハジキ欠陥が発生している。これに対し、その量が多い実施例(塗液/モレキュラーシーブの重量比は9.0)及び比較例6(塗液/モレキュラーシーブの重量比は1.0)ではハジキ欠陥がなかった。この結果から、ハジキ欠陥を防止するためには、モレキュラーシーブを一定量より多くすることが望ましいことが分かる。
【0066】
(3)モレキュラーシーブの量が多い比較例6(塗液/モレキュラーシーブの重量比は1.0)では、ハジキ欠陥はなかったが、油性ペンや指紋の拭き取り性に劣っており、耐擦傷性にも劣っている。これに対し、実施例(塗液/モレキュラーシーブの重量比は9.0)では、ハジキ欠陥がないことはもちろん、油性ペンや指紋の拭き取り性や耐擦傷性にも優れている。この結果から、油性ペンや指紋の拭き取り性、あるいは耐擦傷性を考慮すると、モレキュラーシーブは一定量より少ないことが望ましいことが分かる。
【0067】
以上のように、本発明の反射防止フィルムは、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながら色ムラおよびハジキ欠陥の発生を抑えることができる。したがって、該反射防止フィルムは、各種偏光板及びそれを備えた、CRTディスプレイ、液晶(LCD)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、プロジェクションディスプレイ等の画像表示装置に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも片面に低屈折率層を積層した反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液にモレキュラーシーブを脱水剤として使用することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記低屈折率層が、電離放射線硬化型樹脂組成物を主成分とし、シリコーン系撥水剤、シリコーン系レべリング剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記モレキュラーシーブとしてモレキュラーシーブ3Aを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記低屈折率層形成用塗液とモレキュラーシーブの重量比が低屈折率層形成用塗液/モレキュラーシーブとして3.3〜10.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液の主溶剤がアルコール系であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液のアルコール系溶剤中に、沸点10〜120℃の溶剤が溶剤比で60〜85%含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液のアルコール系溶剤中に、沸点120〜200℃の溶剤が溶剤比で15〜40%含まれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記低屈折率層が、粒径0.5〜200nmの低屈折率微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項9】
色度系における反射色相が0≦a≦5かつ−3≦b≦3であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項10】
平均視感反射率(Y)がY≦1.3%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記低屈折率層がマイクログラビア方式により塗工されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法により製造された反射防止フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の方法により製造された反射防止フィルムを有することを特徴とするディスプレイ。

【公開番号】特開2010−286581(P2010−286581A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138961(P2009−138961)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】