説明

反射防止膜とその製造方法及びそれを用いた光学機器

【課題】
微粒子を用いて、塗布方式で粒子サイズレベルで均一厚みの反射防止膜を製造する。
【解決手段】
第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させ、アルコキシシラン化合物とを反応させた基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と微粒子を第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第2の有機膜を形成する工程と第1の有機膜が形成された基材表面に第2の有機膜で被覆された微粒子を接触させて反応させる工程と第2有機膜で被覆された余分な微粒子を洗浄除去する工程とにより、基材表面に1層形成された微粒子の膜が微粒子表面に形成された第1の有機膜と基材表面に形成された第2の有機膜を介して共有結合している反射防止膜

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品等に用いる反射防止膜とその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、表面に熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性を付与した透光性の無機微粒子、高分子や高分子ミセルよりなる有機微粒子、あるいは有機−無機ハイブリッド微粒子を用いて塗布方式で均一厚みで製造できる反射防止膜及びそれを用いた光学機器に関するものである。
【0002】
特に、本発明において、「透光性の無機微粒子」には、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の微粒子が含まれている。
【背景技術】
【0003】
従来から、両親媒性の有機分子を用い、水面上で分子を並べて基板表面に単分子膜を累積するラングミュアー・ブロジェット(LB)法が知られている。また、界面活性剤を溶かした溶液中で化学吸着法を用いて単分子膜を累積する化学吸着(CA)法が知られている。
【0004】
しかしながら、任意の基材表面に透光性の微粒子を1層のみ並べた粒子サイズレベルで均一厚みの被膜や微粒子を1層のみ並べた膜を複数層累積した被膜(以下、反射防止膜という。)及びそれらの製造方法は未だ開発、提供されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、光学部品の反射膜の製造に、屈折率の異なる透光性の被膜を多層真空蒸着する(マルチコート)方法が知られている。しかしながら、真空蒸着装置を用いると製造コストが高くなり、また大面積の被膜を均一厚みで製造することは、技術的にも極めて難しかった。
【特許文献1】特開2005-017544
【0006】
本発明は、真空蒸着装置を用いず、透光性の微粒子を用い、各種微粒子本来の透光性や屈折率を損なうことなく、任意の基材表面に微粒子を1層のみの並べた粒子サイズレベルで均一厚みの反射防止膜や微粒子を1層のみ並べた膜を複数層累積した反射防止膜及びそれらの塗布型製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として提供される第一の発明は、基材表面に1層形成された微粒子の膜が前記基材表面に形成された第1の有機膜と前記微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合していることを特徴とする反射防止膜である。
【0008】
第二の発明は、第一の発明に於いて、基材表面に形成された第1の有機被膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜が互いに異なることを特徴とする反射防止膜である。
【0009】
第三の発明は、第一の発明に於いて、共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする反射防止膜である。
【0010】
第四発明は、第一及び第2の発明に於いて、基材表面に形成された第1の有機被膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする反射防止膜である。
【0011】
第五の発明は、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と前記基材表面を反応させて前記基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と前記微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された前記基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された前記微粒子を洗浄除去することを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0012】
第六の発明は、第五の発明に於いて、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて前記基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と前記微粒子表面を反応させて前記微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ前記基材および前記微粒子表面を有機溶剤で洗浄して前記基材及び前記微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0013】
第七の発明は、第五の発明に於いて、第1の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含むことを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0014】
第八の発明は、第六の発明に於いて第1の反応性の単分子膜がエポキシ基を含み第2の反応性の単分子膜がイミノ基を含むか、第1の反応性の単分子膜がイミノ基を含み第2の反応性の単分子膜がエポキシ基を含むことを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0015】
第九の発明は、基材表面に層状に複数層累積され微粒子が前記微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合していることを特徴とする反射防止膜である。
【0016】
第十の発明は、第九の発明に於いて、微粒子表面に形成された有機被膜が2種類有り、第1の有機膜が形成された微粒子と第2の有機膜が形成された微粒子とが交互に積層されていることを特徴とする反射防止膜である。
【0017】
第十一の発明は、第十の発明に於いて、第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していることを特徴とする反射防止膜である。
【0018】
第十二の発明は、第九の発明に於いて、共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする反射防止膜。
【0019】
第十三の発明は、少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて前記基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第1の微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を洗浄除去して第1の反射防止膜を形成する工程と、第2の微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第2の微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の反射防止膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を洗浄除去して第2の反射防止膜を形成する工程とを含むことを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0020】
第十四の発明は、第十三の発明に於いて、第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜が同じものであることを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0021】
第十五の発明は、第十三の発明に於いて、第2の微粒子膜を形成する工程の後、同様に第1の微粒子膜を形成する工程と第2の微粒子膜を形成する工程を繰り返し行うことを特徴とする多層構造の反射防止膜の製造方法である。
【0022】
第十六の発明は、第十三の発明に於いて、第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材あるいは微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材や微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0023】
第十七の発明は、第十三の発明に於いて、第1および3の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1および3の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含むことを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0024】
第十八の発明は、第五および第十三の発明に於いて、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0025】
第十九の発明は、第五および第十三の発明に於いて、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする反射防止膜の製造方法である。
【0026】
第二十の発明は、第一乃至第四の発明の反射防止膜、および第九乃至第十二の発明の反射防止膜を用いた光学機器である。
以下、かかる発明について、さらに説明する。
【0027】
本発明は、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を洗浄除去する工程により、基材表面に1層形成された微粒子の膜が基材表面に形成された第1の有機膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合している反射防止膜提供することを要旨とする。
【0028】
このとき、基材表面に形成された第1の有機被膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜が互いに違えておけば、反射防止膜として微粒子の膜を1層形成する上で都合がよい。
また、共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であると、反射防止膜の耐久性を向上する上で都合がよい。
さらに基材表面に形成された第1の有機被膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていると被膜厚さの均一性を向上する上で都合がよい。
【0029】
ここで、基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材および微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材及び微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成すると、均一性を向上できて都合がよい。
【0030】
また、第1の反応性の有機膜あるいは単分子膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜あるいは単分子膜がイミノ基を含むか、第1の反応性の有機膜あるいは単分子膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜あるいは単分子膜がエポキシ基を含むと反射防止膜の耐久性を向上する上で都合がよい。
【0031】
さらにまた、本発明は、少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第1の微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を洗浄除去して第1の反射防止膜を形成する工程と、第2の微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第2の微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の反射防止膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を洗浄除去して第2の反射防止膜を形成する工程とにより、基材表面に層状に複数層累積され微粒子が微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合している反射防止膜を提供することを要旨とする。
【0032】
このとき、微粒子表面に形成された有機被膜が2種類有り、第1の有機膜が形成された微粒子と第2の有機膜が形成された微粒子とを交互に積層しておくと反射防止膜として微粒子の膜を累積形成する上で都合がよい。
また、第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していると耐久性を向上する上で都合がよい。
さらに、共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であると、信頼性の高い反射防止膜を提供する上で都合がよい。
【0033】
また、ここで、第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜が同じものであると、製造工程を単純化できてコストダウンの上で都合がよい。
さらに、第2の微粒子膜を形成する工程の後、同様に第1の微粒子膜を形成する工程と第2の微粒子膜を形成する工程を繰り返し行うと、被膜の膜厚を制御する上で好都合である。
【0034】
さらにまた、第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材あるいは微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材や微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成すると被膜膜厚を均一化する上で都合がよい。
また、第1および3の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1および3の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含むと、被膜形成を手軽に行えて好都合である。
【0035】
また、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いると、反応時間を短縮する上で都合がよい。
また、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いると、より一層反応時間を短縮する上で都合がよい。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したとおり、本発明によれば、真空蒸着装置を用いず、透光性の微粒子を用い、各種微粒子本来の透光性や屈折率を損なうことなく、任意の基材表面に微粒子を1層のみ並べた粒子サイズレベルで均一厚みの反射防止膜や微粒子を1層のみ並べた膜を複数層累積した反射防止膜及びそれらの塗布型製造方法を低コストで提供できる格別の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明は、少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第1の微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を洗浄除去して表面屈折率制御用の第1の反射防止膜を形成する工程と、第2の微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第2の微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の反射防止膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を洗浄除去して表面屈折率制御用の第2の反射防止膜を形成する工程とにより、基材表面に層状に累積され微粒子が微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合している反射防止膜を提供するものである。
【0038】
したがって、本発明では、2種類の被膜で被われた2種類の微粒子を用いることにより、各種微粒子本来の機能を損なうことなく、任意の基材表面に微粒子を1層のみ並べた粒子サイズレベルで均一厚みの被膜(反射防止膜)や微粒子を1層のみ並べた膜を複数層累積した表面屈折率制御用の被膜(例えば、反射防止膜)を提供したり、それらを簡便で低コストに製造できる方法を提供できる作用がある。
【0039】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0040】
また、本発明に関する反射防止膜や反射防止膜用の微粒子には、光透過性のアルミナや、シリカ、あるいはジルコニア微粒子等があるが、まず、代表例として光透過粒子として屈折率が1.46のシリカ微粒子を取り上げて説明する。
【実施例1】
【0041】
まず、透明微粒子として大きさが100nm程度の無水のシリカ微粒子1を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、下記式(化1)あるいは(化2)に示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、あるいは有機酸として酢酸を1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサンとジメチルホルムアミド(50:50)混合溶媒に1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0042】
【化1】

【0043】
【化2】

【0044】
この吸着液に無水のシリカ微粒子1を混入撹拌して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、無水のシリカ微粒子表面には水酸基2が多数含まれているの(図1(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒、あるいは有機酸として酢酸の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記式(化3)あるいは(化4)に,示したような結合を形成し、微粒子表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜3あるいはアミノ基を含む化学吸着膜4が約1ナノメートル程度の膜厚で形成された(図1(b)、1(c))。
【0045】
なお、ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒では沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。また、アミノ基はイミノ基を含んでいるが、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体や、イミダゾール誘導体等がある。さらに、ケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
その後、塩素系有機溶媒であるクロロホルムを用い添加して撹拌洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子、あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子をそれぞれ作製できた。
【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
なお、この被膜はナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、粒子径を損なうことはなかった。
一方、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し粒子表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成された微粒子が得られた。
【0049】
この方法の特徴は、脱アルコール反応であるため、微粒子が有機、あるいは無機物であったとしても使用可能であり、適用範囲が広い。
【実施例2】
【0050】
実施例1と同様に、まず、光学ガラス基材11を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、前記式(化1)あるいは(化2)に,示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナートを1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0051】
次に、この吸着液に、光学ガラス基材11を漬浸して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間反応させた。このとき、光学ガラス基材11表面には水酸基12が多数含まれている(図2(a))ので、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、前記式(化3)あるいは(化4)に、示したような結合を形成し、光学ガラス基材11表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜13(図2(b))あるいは、アミノ基を含む化学吸着膜14(図2(c))が約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。
【0052】
その後、クロロホルムを用いて洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われた光学ガラス基材15、あるいは、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われた光学ガラス基材16がそれぞれ作製できた。(図2(b)、2(c))
【0053】
なお、この被膜はナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、光学ガラス基材の透明性を損なうことはなかった。
一方、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し光学ガラス基材表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成された光学ガラス基材が得られた。
【実施例3】
【0054】
次に、前記エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われた光学ガラス基材15表面に、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子(前記アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われた光学ガラス基材表面に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子の組み合わせでもよい。)をアルコールに分散させて塗布し、100℃程度に加熱すると、光学ガラス基材表面のエポキシ基と接触しているシリカ微粒子表面のアミノ基が下記式(化5)に示したような反応で付加して微粒子と光学ガラス基材は二つの単分子膜を介して結合固化した。なお、このとき、超音波を当てながらアルコールを蒸発させると、被膜の膜厚均一性をさらに向上できた。
【0055】
【化5】

そこで、再びアルコールで基材表面を洗浄し、余分で未反応のアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子を洗浄除去すると、光学ガラス基材表面15に共有結合したアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子が1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの屈折率1.45の反射防止膜17が形成できた。(図3(a))
【0056】
一方、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われた光学ガラス基材表面に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子の被膜を形成した場合には、光学ガラス基材表面に共有結合したエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子が1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの反射防止膜が形成できた。
ここで、シリカ微粒子の反射防止膜が形成された光学ガラス基材の光透過率を測定すると、シリカ微粒子の反射防止膜が形成されていない光学ガラス基材より2%程度光透過率が良くなっていた。つまり、この被膜は、反射防止膜の機能がある。
また、シリカ微粒子の反射防止膜の厚みが100nm程度であり、極めて均一性が良かったので、干渉色も全く見えなかった
【実施例4】
【0057】
さらに、微粒子膜の膜厚を厚くしたい場合、実施例3に引き続き、共有結合したアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子が1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの反射防止膜17が形成された光学ガラス基材表面15に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子をアルコールに分散させて塗布し、100℃程度に加熱すると、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子の反射防止膜が形成された光学ガラス基材表面のアミノ基と接触しているシリカ微粒子表面のエポキシ基が前記式(化5)に示したような反応で付加して、光学ガラス基材表面でアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われた微粒子とエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子は、二つの単分子膜を介して結合固化した。
【0058】
そこで、再びアルコールで基材表面を洗浄し、余分で未反応のエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子を洗浄除去すると、光学ガラス基材表面15に共有結合した2層目のシリカ微粒子が1層のみ並んだ状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの2層構造の反射防止膜18が形成できた。(図3(b))
以下同様に、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子とエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたシリカ微粒子を交互に積層すると、多層構造の微粒子の被膜を累積製造できた。
【0059】
なお、上記実施例1および2では、反応性基を含む化学吸着剤として式(化1)あるいは(化2)に示した物質を用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)〜(16)に示した物質が利用できた。
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(3) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CH2OCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(8) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(9) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) H2N (CH2)Si(OCH)3
(12) H2N (CH2)Si(OCH)3
(13) H2N (CH2)Si(OCH)3
(14) H2N (CH2)Si(OC)3
(15) H2N (CH2)Si(OC)3
(16) H2N (CH2)Si(OC)3
【0060】
ここで、(CHOCH)−基は、下記式(化7)で表される官能基を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、下記式(化8)で表される官能基を表す。
【0061】
【化6】

【0062】
【化7】

【0063】
なお、実施例1および2に置いて、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチル錫ビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチル錫マレイン酸エステル塩、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0064】
また、膜形成溶液の溶媒としては、水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒、あるいはそれら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50〜250℃程度がよい。
【0065】
具体的に使用可能なものは、クロロシラン系非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0066】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭光学ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単層独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0067】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を半分〜2/3程度まで短縮できた。
【0068】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9〜9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早く(30分程度まで)でき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0069】
例えば、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0070】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を30分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0071】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0072】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0073】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0074】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
上記実施例1〜4では、シリカ微粒子と光学ガラス基材を例とした反射防止膜について説明したが、本発明は、表面に活性水素、すなわち水酸基の水素やアミノ基あるいはイミノ基の水素などを含んだ透光性の微粒子であれば、どのような微粒子や基材にでも適用可能である。
【0076】
具体的には、シリカ微粒子以外にはジルコニアやアルミナ、あるいはそれらの混合物が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施例における微粒子表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の微粒子表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図2】本発明の第2の実施例における光学ガラス基材表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図3】本発明の第3および第4の実施例における光学ガラス基材表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反射防止膜が形成された基材表面の図、(b)は、反射防止膜が2層形成された基材表面の図を示す。
【符号の説明】
【0078】
1 シリカ微粒子
2 水酸基
3 エポキシ基を含む単分子膜
4 アミノ基を含む単分子膜
エポキシ基を含む単分子膜で被われたシリカ微粒子
アミノ基を含む単分子膜で被われたシリカ微粒子
11 光学ガラス基材
12 水酸基
13 エポキシ基を含む単分子膜
14 アミノ基を含む単分子膜
15 エポキシ基を含む単分子膜で被われた光学ガラス基材
16 アミノ基を含む単分子膜で被われた光学ガラス基材
17 反射防止膜
18 2層構造の反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に1層形成された微粒子の膜が前記基材表面に形成された第1の有機膜と前記微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合していることを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
基材表面に形成された第1の有機被膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜が互いに異なることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
【請求項3】
共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
【請求項4】
基材表面に形成された第1の有機被膜と微粒子表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする請求項1および2記載の反射防止膜。
【請求項5】
基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と前記基材表面を反応させて前記基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と前記微粒子表面を反応させて微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された前記基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された前記微粒子を洗浄除去することを特徴とする反射防止膜の製造方法。
【請求項6】
基材表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて前記基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と前記微粒子表面を反応させて前記微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ前記基材および前記微粒子表面を有機溶剤で洗浄して前記基材及び前記微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする請求項5記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項7】
第1の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含むことを特徴とする請求項5記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項8】
第1の反応性の単分子膜がエポキシ基を含み第2の反応性の単分子膜がイミノ基を含むか、第1の反応性の単分子膜がイミノ基を含み第2の反応性の単分子膜がエポキシ基を含むことを特徴とする請求項6記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項9】
基材表面に層状に複数層累積され微粒子が前記微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合していることを特徴とする反射防止膜。
【請求項10】
微粒子表面に形成された有機被膜が2種類有り、第1の有機膜が形成された微粒子と第2の有機膜が形成された微粒子とが交互に積層されていることを特徴とする請求項9記載の反射防止膜。
【請求項11】
第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していることを特徴とする請求項10記載の反射防止膜。
【請求項12】
共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする請求項9記載の反射防止膜。
【請求項13】
少なくとも基材表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と基材表面を反応させて前記基材表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第1の微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された基材表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の微粒子を洗浄除去して第1の反射防止膜を形成する工程と、第2の微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と微粒子表面を反応させて第2の微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の反射防止膜が形成された基材表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の微粒子を洗浄除去して第2の反射防止膜を形成する工程とを含むことを特徴とする反射防止膜の製造方法。
【請求項14】
第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜が同じものであることを特徴とする請求項13記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項15】
第2の微粒子膜を形成する工程の後、同様に第1の微粒子膜を形成する工程と第2の微粒子膜を形成する工程を繰り返し行うことを特徴とする請求項13記載の多層構造の反射防止膜の製造方法。
【請求項16】
第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ基材あるいは微粒子表面を有機溶剤で洗浄して基材や微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする請求項13記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項17】
第1および3の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1および3の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含むことを特徴とする請求項13記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項18】
シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする請求項5および13に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項19】
シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項5および13に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項20】
請求項1乃至4記載の反射防止膜、および9乃至12記載の反射防止膜を用いた光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−127847(P2007−127847A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320705(P2005−320705)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】