説明

反応器系、吸収剤および供給材料を反応させるための方法

本発明は、−銀および、アルカリ金属またはアルカリ土類金属および、20m/gを超える表面積を有する担持材料を含む吸収剤を含む1つ以上の精製ゾーンと、−触媒を含み、1つ以上の精製ゾーンの下流に配置される反応ゾーンとを含む反応器系;吸収剤;1つ以上の供給材料成分を含む供給材料を反応させる方法;ならびに1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、またはアルカノールアミンの調製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器系、吸収剤、および本発明の反応器系を使用して供給材料を反応させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業規模の化学操作では、精製プロセスの後でさえも少量の不純物を典型的には含有する供給材料流中の成分が使用される。供給材料流中に依然として残留するこの少量の不純物は、反応プロセス中の触媒毒として作用して、触媒の性能に悪影響を与えることがある。特に問題となるのは、供給材料流中に存在し得る微量の硫黄、ハロゲン、リン、ヒ素、およびセレンの不純物である。一般に金属または貴金属触媒は、これらの元素による触媒被毒の影響を受けやすく、例えば多くの金属は、数ppmレベル未満の量で硫黄が供給材料流中に存在する場合でさえも硫化物を形成することが知られている。金属または貴金属触媒を使用するプロセスとしては、アンモ酸化反応、脱水素反応、接触改質反応、および酸化反応、特に、エチレンオキシドなどのオレフィンオキシドを形成するためのオレフィンの部分酸化が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの反応は、典型的には非常に発熱し、一般には、それぞれが固体粒子状触媒の充填層を含有する多数の反応管を含み熱交換流体で取り囲まれた垂直多管式熱交換器中で行われる。エチレンオキシドなどのオレフィンオキシドの生成においては、エチレンおよび酸素をエチレンオキシドに変換するために銀系触媒が使用される。これらの銀系触媒は、特に、数ppbレベル程度の不純物量でさえも触媒被毒の影響を受ける。触媒被毒によって、触媒性能、特に選択性または活性に影響が生じ、汚染された触媒を新しい触媒に交換する必要が生じるまでの、触媒を反応器中に維持できる時間の長さが短縮される。
【0003】
供給材料流中に存在する典型的な硫黄含有不純物としては、硫化二水素、硫化カルボニル、メルカプタン類、および有機スルフィドを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。供給材料流中に存在する典型的なハロゲン含有不純物としては、フレオンまたはハロハイドロカーボンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。エポキシ化プロセス中のさらなる不純物としてリン、ヒ素、セレン、アセチレン、一酸化炭素を挙げることができる。供給材料流中に存在する硫黄、リン、ヒ素、およびセレンの不純物は、オレフィンなどの炭化水素またはメタンもしくはエタンなどの飽和炭化水素から生じる場合がある。供給材料流中に存在するハロゲン不純物は、空気または高純度酸素などの酸素源から生じる場合がある。
【0004】
長年にわたって、オレフィンエポキシ化プロセスの改善に大きな労力が払われていた。種々の改善された反応器設計に解決方法が見出されている。
【0005】
例えば、US 6939979には、反応管の上部区画内に配置される触媒の希釈剤として、アルカリ金属で処理した不活性物質の使用が記載されている。不活性物質をアルカリ金属で処理することによって、不活性物質によるエチレンオキシドの分解が減少し、それによってエチレンオキシドに対する選択性が改善される。しかし、触媒の上流に不活性材料を配置することは、供給材料中に存在し触媒を被毒させる不純物量を著しく減少させることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6939979号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、すでに実現されている改善を損なうことなく、触媒の性能、特に新しい触媒と交換するまで触媒が反応器中に維持される時間をさらに改善する反応器系および反応プロセスが所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
銀と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と、20m/gを超える表面積を有する担持材料とを含む吸収剤を含む1つ以上の精製ゾーンと、
触媒を含み、1つ以上の精製ゾーンの下流に配置される反応ゾーンとを含む反応器系を提供する。
【0009】
本発明は、炭化水素を含む1つ以上の供給材料成分を含む供給材料を反応させる方法であって、
供給材料成分中の1種類以上の不純物の量を減少させるために、供給材料成分の1つ以上を、銀と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と、20m/gを超える表面積を有する担持材料とを含む吸収剤と接触させるステップと;
続いて、反応生成物を得るために、供給材料成分を触媒と接触させるステップとを含む方法も提供する。
【0010】
一実施形態においては、供給材料中の炭化水素はオレフィンを含み、この供給材料は、オレフィンオキシドを含有する反応生成物が得られる酸素を供給材料成分としてさらに含む。
【0011】
本発明は、1つ以上の供給材料成分から1つ以上の不純物を除去するための吸収剤であって、銀と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と、20m/gを超える表面積を有する担持材料とを含む吸収剤も提供する。
【0012】
さらに、本発明は、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、またはアルカノールアミンの調製方法であって、本発明による方法によってオレフィンオキシドを得るステップと、このオレフィンオキシドを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、またはアルカノールアミンに変換するステップとを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】反応容器の外側に配置された吸収剤を含む精製ゾーンを有する本発明の一実施形態による反応器系の概略図である。
【図2】反応容器の内側で反応管の上流に配置された精製ゾーンを有する本発明の一実施形態による反応器系の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
銀と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と、20m/gを超える表面積を有する担持材料とを含む吸収剤によって、供給材料成分中の不純物、特に硫黄含有またはハロゲン含有不純物の量を大幅に減少可能であることを発見した。触媒毒として機能し得る不純物の量を減少させることによって、触媒性能、特に触媒の選択性または活性、ならびに触媒を反応器系中に維持できる時間が改善される。驚くべきことに、本発明の吸収剤は、最大10m/gの典型的な表面積を有する担体を使用して調製した典型的な銀系エポキシ化触媒と比較して、供給材料中の不純物を減少させることに関して改善された性能を有する。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「実質的に垂直」および「実質的に水平」は、反応容器の中心長手方向軸に対して正確に垂直または水平の位置からのわずかなずれを含むものと理解され、特にこの用語は、正確に垂直または水平の位置から0から20度の範囲内のばらつきを含むことを意味する。正確に垂直は、反応容器の中心長手方向軸に沿った位置である。正確な水平位置は、反応容器の中心長手方向軸に対して垂直な位置である。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「実質的に平行」は、反応容器の中心長手方向軸に対して正確な平行位置からわずかなずれを含むものと理解され、特にこの用語は、反応容器の中心長手方向軸に対して正確な平行位置から0から20度の範囲内のばらつきを含むことを意味する。
【0017】
図1を参照すると、この図は、実質的に垂直の容器(18)と、反応容器(18)の中心長手方向軸(20)に対して実質的に平行に配置された複数の開口反応管(19)とを有する多管式熱交換器反応容器を含む反応器系(17)の概略図である。反応管(19)の上端(21)は実質的に水平の上部管板(22)に接続され、反応管(19)の下端(23)は実質的に水平の下部管板(24)に接続される。上部管板(22)および下部管板(24)は、反応容器(18)の内壁によって支持される。複数の反応管(19)は、触媒(36)を含有する反応ゾーン(26)を有する。触媒(36)は、反応管(19)の下端(23)に配置された触媒支持手段(図示せず)によって反応管(19)中で支持される。
【0018】
炭化水素などの供給材料の成分は、反応管(19)の上端(21)と流体連通している入口(27)などの1つ以上の入口を通って反応容器(18)に入る。反応生成物(34)は、反応管(19)の下端(23)と流体連通している出口(28)などの1つ以上の出口を通って反応容器(18)から出る。熱交換流体は、入口(30)などの1つ以上の入口を通って熱交換室(29)に入り、出口(31)などの1つ以上の出口を通ってでる。熱交換室(29)には、熱交換流体を熱交換室(29)に案内するためのバッフル(図示せず)を設けることができる。
【0019】
反応器系(17)は、反応容器(18)の上流および外側に配置された独立した精製容器(38)の内側に含まれる精製ゾーン(37)を含む。精製ゾーン(37)は、吸収剤(35)を含んでいる。処理されるべき1つ以上の供給材料成分(39)は、入口(40)を通って独立した精製容器(38)に入り、処理された供給材料成分(41)は、出口(42)を通って独立した精製容器(38)を出る。処理された供給材料成分は次に、入口(27)を通って供給材料(33)としての任意の追加の供給材料成分(43)とともに反応容器(18)に入る。
【0020】
図2は、吸収剤(35)を含有する精製ゾーン(32)が反応容器(18)の内部および反応管(19)の上流に配置されることを除けば図1と類似の多管式熱交換器反応容器(18)を含む反応器系(17)の概略図である。
【0021】
本発明の反応容器は、1つ以上の供給材料成分を含有する供給材料を反応させるために使用されるあらゆる反応容器であってよい。反応容器は1つ以上の開口反応管を含むことができる。好ましくは、反応容器は複数の反応管を含むことができる。反応管は任意の大きさであってよい。好適には、反応管は少なくとも5mm(ミリメートル)、特に少なくとも10mmの内径を有することができる。好適には、反応管は最大5m(メートル)、特に最大1mの内径を有することができる。好適には、反応管は少なくとも1m、特に少なくとも5mの長さを有することができる。好適には、反応管は最大50m、特に最大30mの長さを有することができる。
【0022】
好ましくは、反応容器は、複数の反応管を有する多管式熱交換器である。これらの反応管は、好ましくは15から80mm、より好ましくは20から75mm、最も好ましくは25から70mmの範囲内の内径を有することができる。反応管は、好ましくは5から20m、より好ましくは10から15mの範囲内の長さを有することができる。多管式熱交換器は1000から20000本の反応管、特に2500から15000本の反応管を有することができる。
【0023】
1つ以上の反応管は、反応容器の中心長手方向軸に対して実質的に平行に配置され、熱交換流体を受け取るように適合したシェル(即ち、多管式熱交換器のシェル側)によって取り囲まれている。熱交換室中の熱交換流体は、熱伝達に適したあらゆる流体、例えば水、または熱交換に適した有機材料であってよい。この有機材料は油またはケロシンであってよい。1つ以上の反応管の上端は、実質的に水平の上部管板に接続され、反応容器の1つ以上の入口と流体連通しており、1つ以上の反応管の下端は、実質的に水平の下部管板に接続され、反応容器の1つ以上の出口(即ち、多管式熱交換器の管側)と流体連通している。反応容器は、触媒粒子の充填層を含む反応ゾーンを含む。触媒層は1つ以上の反応管の内側に配置される。
【0024】
供給材料成分の精製は、反応容器の外側に設置された1つ以上の精製ゾーン中、または反応容器の内側に配置された精製ゾーン中で行われる。
【0025】
一実施形態においては、1つ以上の精製ゾーンが反応容器の外側に設置される(即ち、反応容器とは独立している。)。種々の供給材料成分を独立した精製ゾーンに供給することができる。1つの精製ゾーンは、それぞれが吸収剤の充填層を有する1つ以上の独立した精製容器を含むことができる。1つ以上の精製容器は、反応容器の上流に配置される。吸収剤の充填層は、あらゆる層高を有することができる。1つの精製ゾーンは、2つ以上の独立した精製容器を含むことができる。2つ以上の精製容器は、関連する切り替え手段を使用して並列に配置することができ、それによってプロセス中に精製容器間で切り替えられ、プロセスの連続運転を維持することができる。この実施形態に使用可能な好適な切り替え手段は当業者には周知である。
【0026】
一実施形態では、反応容器は、1つ以上の反応管の上流に配置される、例えば反応容器のヘッドスペース中の上部管板の上部および反応管の上部に配置される、吸収剤の充填層を含む精製ゾーンを含むことができる。この実施形態では、吸収剤の充填層は少なくとも0.05m、特に少なくとも0.075m、特に少なくとも0.1m、特に少なくとも0.15mの層高を有することができる。この実施形態では、吸収剤は最大2m、特に最大1m、特に最大0.5mの層高を有することができる。
【0027】
本発明の反応容器は、触媒層を含む反応ゾーンを含む。本発明の通常の実施では、触媒層の大部分が触媒粒子を含む。「大部分」とは、触媒粒子の重量の、触媒層中に含まれる全粒子の重量に対する比が、少なくとも0.50、特に少なくとも0.8、好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.9であることを意味する。触媒層中に含まれ得る触媒粒子以外の粒子は、例えば不活性粒子であるが、このような他の粒子が触媒層中に存在しないことが好ましい。触媒層は、反応管の下端に配置された触媒支持手段によって、1つ以上の反応管中に支持されている。支持手段としては、スクリーンまたはばねを挙げることができる。
【0028】
触媒層は、あらゆる層高を有することができる。好適には、触媒層は、反応管の長さの100%の層高を有することができる。触媒層は、好適には反応管の長さの最大95%または最大90%、または最大85%、または最大80%の層高を有することができる。触媒層は、好適には反応管の長さの少なくとも10%、特に少なくとも25%、特に反応管の長さの少なくとも50%の層高を有することができる。
【0029】
1つ以上の反応管は、例えば供給材料流との熱交換などを目的とする不活性材料の粒子の独立した層を含むこともできる。1つ以上の反応管は、例えば反応生成物との熱交換などを目的とする、さらに別のこのような不活性材料の粒子の独立した層を含むこともできる。または、棒状金属インサートを不活性材料層の代わりに使用することもできる。このようなインサートのさらなる説明は、US 7132555を参照でき、これは参照により援用される。
【0030】
本発明は、炭化水素を含む1つ以上の供給材料成分を含む供給材料を反応させる方法であって、本発明による反応器系を提供するステップと;前記供給材料成分を吸収剤と接触させることによって、前記供給材料成分の1つ以上の中の不純物量を減少させて、処理済みの供給材料成分を得るステップと;続いて、供給材料を触媒と接触させることによって、1つ以上の処理済みの供給材料成分を含む供給材料を反応させて、反応生成物を得るステップとによる方法も提供する。本明細書において使用される場合、用語「反応生成物」は、反応容器の出口から出る流体を意味するものと理解されたい。金属含有触媒の存在下で供給材料を反応させるプロセスとしては、アンモ酸化、脱水素、改質、および酸化、特に、オレフィンオキシドを形成するためのオレフィンのエポキシ化などの部分酸化が挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者であれば、問題となるプロセスに適した触媒および反応条件を選択することができるであろう。
【0031】
1つ以上の精製ゾーンが反応容器の外側に配置される実施形態では、1つ以上の精製ゾーン中の吸収剤の温度は、0から350℃、特に15から320℃、特に20から300℃の範囲内とすることができる。低温で運転する場合、供給材料成分中のアセチレン不純物は、アセチリドの形成を最小限にするために、吸収剤と接触させる前に除去するべきである。この実施形態において、1つ以上の供給材料成分中のハロゲン含有不純物の量を減少させることが望ましい場合には、吸収剤の温度が190から350℃、特に200から320℃、特に210から270℃の範囲内であることが特に好ましい。反応容器に入る供給材料は有機ハロゲン化物反応調整剤などの1つ以上のハロゲン含有供給材料成分を含むことがあるため、好ましくは、反応容器に入る前に1つ以上の供給材料成分からハロゲン不純物が除去される。供給材料成分中のハロゲン含有不純物の量を減少させる場合、プロセス中の反応物として機能する供給材料成分を別個に処理すること、例えば、炭化水素を実質的に含有しない酸素供給材料成分、および酸素を実質的に含有しない炭化水素供給材料成分を別個に処理することが好ましい。「炭化水素を実質的に含有しない」とは、成分を基準にして成分が最大0.5mol%の炭化水素を含有することを意味する。「酸素を実質的に含有しない」とは、成分を基準にして成分が最大0.5mol%の酸素を含有することを意味する。炭化水素成分または酸素成分は、不活性希釈剤などの追加の供給材料成分をさらに含むことができる。高温における反応物供給材料成分の混合物の処理は、供給材料成分の燃焼が発生することがあるので、回避すべきである。
【0032】
精製ゾーンが反応容器の内側に配置される実施形態では、精製ゾーン中の吸収剤の温度は少なくとも90℃、特に少なくとも130℃、特に少なくとも150℃、最高180℃、特に最高175℃、特に最高170℃とすることができる。この実施形態では、吸収剤の温度は130から180℃、好ましくは150から175℃の範囲内とすることができる。吸収剤が反応容器の内側に配置される場合は、吸収剤が所望のハロゲン含有供給材料成分、例えば有機ハロゲン化物の反応調整剤を除去することがあり、反応物供給材料成分の燃焼、例えば酸素の存在下でのオレフィンの燃焼が発生することがあるので、より高い温度は回避される。
【0033】
反応ゾーン中の反応温度は、少なくとも130℃、特に少なくとも150℃、特に少なくとも180℃、特に少なくとも200℃とすることができる。反応温度は最高350℃、特に最高325℃、特に最高300℃とすることができる。反応温度は150から350℃、好ましくは180から300℃の範囲内とすることができる。
【0034】
反応容器への反応供給材料は、1つ以上の供給材料成分を含有する。供給材料成分としては、炭化水素、酸素、反応調整剤、不活性希釈剤、および再循環流を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
反応供給材料中に存在する炭化水素は、反応物または希釈剤として機能することができる。この炭化水素は不飽和炭化水素または飽和炭化水素であってよい。飽和炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、およびこれらの混合物から選択することができる。特に、飽和炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、およびこれらの混合物、好ましくはメタンから選択することができる。特にエポキシ化プロセスにおいては、飽和炭化水素は一般的な希釈ガスであり、反応供給材料中の不純物、特に硫黄不純物の大きな供給源となり得る。
【0036】
不飽和炭化水素は、反応物として機能することができ、芳香族オレフィン、例えばスチレン、または共役もしくは非共役のジオレフィン、例えば1,9−デカジエンまたは1,3−ブタジエンなどのあらゆるオレフィンを挙げることができる。好ましくは、このオレフィンは、モノオレフィン、例えば2−ブテンまたはイソブテンであってよい。より好ましくは、オレフィンはモノ−α−オレフィン、例えば1−ブテンまたはプロピレンであってよい。最も好ましいオレフィンはエチレンである。好適には、複数のオレフィンの混合物を使用することができる。
【0037】
オレフィンは、限定するものではないが、熱分解装置、接触分解装置、水添分解装置、または改質装置によって発生したものなどの石油精製流、天然ガス留分、ナフサ、ならびにアルコールなどの有機酸素化物などの幾つかの供給源から得ることができる。アルコールは、限定するものではないが、サトウキビ、シロップ、ビート果汁、糖蜜、およびその他のデンプン系材料などの種々の生体材料の発酵から典型的には誘導される。発酵プロセスで調製されるアルコールから誘導されるエチレンなどのオレフィンは、特に問題となる硫黄不純物供給源になり得る。
【0038】
炭化水素は、全反応供給材料に対して少なくとも1mol%、特に、同じ基準に対して少なくとも5mol%、特に少なくとも15mol%、特に少なくとも20mol%の量で反応供給材料中に存在することができる。炭化水素材料は、全反応供給材料に対して最大95mol%、特に、同じ基準に対して最大90mol%、特に最大80mol%、特に最大75mol%の量で反応供給材料中に存在することができる。
【0039】
不飽和炭化水素は、全反応供給材料に対して少なくとも0.5mol%、特に、同じ基準に対して少なくとも1mol%、特に少なくとも15mol%、特に少なくとも20mol%の量で存在することができる。不飽和炭化水素は、全反応供給材料に対して最大80mol%、特に、同じ基準に対して最大70mol%、特に最大60mol%の量で存在することができる。
【0040】
飽和炭化水素は、全反応供給材料に対して少なくとも1mol%、特に、同じ基準に対して少なくとも10mol%、特に少なくとも20mol%、特に少なくとも30mol%の量で存在することができる。飽和炭化水素は、全反応供給材料に対して最大80mol%、特に、同じ基準に対して最大75mol%、特に最大70mol%の量で存在することができる。
【0041】
反応供給材料は、反応物として酸素を含有することもできる。酸素源としては、空気および/または高純度酸素を挙げることができる。酸素は、全反応供給材料に対して少なくとも0.5mol%、特に、全反応供給材料に対して少なくとも1mol%、特に少なくとも2mol%、特に少なくとも5mol%の量で存在することができる。酸素は、全反応供給材料に対して最大25mol%、特に、全反応供給材料に対して最大20mol%、特に最大15mol%、特に最大12mol%の量で存在することができる。
【0042】
本発明の吸収剤は、銀と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と、担持材料とを含む。理論によって束縛しようと望むものではないが、化学的または物理的手段、例えば限定するものではないが、不純物との反応および不純物の吸収などによって、吸収剤は供給材料中の不純物を減少させると考えられる。吸収剤は、吸収剤の成分を同時混練することによって調製することができる。このような同時混練方法のさらなる説明については、US 2006/0036104が参照され、これは参照により本明細書に援用される。好ましくは、銀とアルカリ金属またはアルカリ土類金属とは、含浸方法によって担持材料上に堆積される。このような含浸方法のさらなる説明については、US−A−5380697、US−A−5739075、EP−A−266015、US−B−6368998を参照することができ、これらの方法は参照により本明細書に援用される。担持材料上に銀を堆積する方法は、銀陽イオンまたは錯形成した銀を含有する銀化合物を担持体に含浸させ、還元することで金属銀粒子を形成することを含む。好適には、銀分散体、例えば銀ゾルを使用して、担持材料上に銀を堆積することができる。
【0043】
銀陽イオンの金属銀への還元は、吸収剤を乾燥させるステップ中に行うことができ、そのため還元自体に独立したプロセスステップは不要である。これは、銀含有含浸溶液が還元剤、例えば、オキサラート、ラクタート、またはホルムアルデヒドを含む場合であってよい。
【0044】
吸収剤は、吸収剤の重量に対して少なくとも5g/kg、好ましくは少なくとも100g/kg、より好ましくは少なくとも150g/kg、最も好ましくは少なくとも200g/kgの量の銀を含有することができる。好ましくは、吸収剤は、同じ基準に対して5から500g/kg、より好ましくは150から400g/kg、例えば105g/kg、または120g/kg、または190g/kg、または250g/kg、または350g/kgの量の銀を含む。本明細書において使用される場合、特に明記しない限り、吸収剤の重量は、担持材料の重量を含めた吸収剤の総重量であると見なされる。
【0045】
担持材料は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、活性炭、またはこれらの混合物から選択することができる。好ましくは、担持材料はアルミナ、特にγ−アルミナであってよい。担持材料は、20m/gを超え、好ましくは少なくとも25m/g、より好ましくは少なくとも50m/g、最も好ましくは少なくとも75m/g、特に少なくとも100m/g、特に少なくとも125m/gの表面積を有する。担持材料は、最大1200m/g、好ましくは最大300m/g、より好ましくは最大200m/g、最も好ましくは最大175m/gの表面積を有することができる。
【0046】
担持材料の大きさおよび形状は本発明にとって重要ではなく、塊状、断片、円筒、環、球形、車輪状、錠剤、三葉などの形態であってよく、固定層中での使用に好適な大きさ、例えば2mmから30mmであってよい。
【0047】
本発明の吸収剤は、担持材料の表面積に対する銀の量(即ち、銀密度)が、0.025gAg/m、好ましくは最大0.01gAg/m、より好ましくは最大0.005gAg/mとなることができる。吸収剤は、少なくとも1×10−5gAg/m、好ましくは少なくとも5×10−5gAg/m、より好ましくは少なくとも1×10−4gAg/mの銀密度を有することができる。吸収剤は、触媒の遷移金属密度(即ち、金、銀、白金、パラジウムなど)より低い銀密度を有することが好ましい。
【0048】
本発明に使用される吸収剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む。好ましくは、アルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、およびこれらの組み合わせ、特にナトリウムから選択することができる。好ましくは、アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、およびこれらの組み合わせから選択することができる。アルカリ金属は、好適には塩または塩基の形態で提供することができる。好適なアルカリ金属塩としては、硝酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、アルカリ金属は、水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩の形態であってよい。アルカリ土類金属は、好適には塩または塩基の形態で提供することができる。好適なアルカリ土類金属塩としては、硝酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、アルカリ土類金属は水酸化物の形態であってよい。理論によって束縛しようと望むものではないが、オレフィンなどの炭化水素と反応して、望ましくない副生成物を供給材料中に形成することができる、担持材料の表面上に存在する酸性部位の量をアルカリ金属またはアルカリ土類金属が減少させると考えられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、吸収剤の重量に対する全元素量として計算して、少なくとも0.1mmol/kg、より典型的には少なくとも1mmol/kg、特に少なくとも10mmol/kg、特に少なくとも50mmol/kg、特に少なくとも100mmol/kgの総量で存在することができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、吸収剤の重量に対する全元素量として計算して、最大5000mmol/kg、好ましくは最大500mmol/kg、より好ましくは最大300mmol/kgの量で存在することができる。
【0049】
硫黄不純物としては、硫化二水素、硫化カルボニル、メルカプタン類、有機スルフィド、およびこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。メルカプタン類としては、メタンチオールまたはエタンチオールを挙げることができる。有機スルフィドとしては、芳香族スルフィドまたはアルキルスルフィド、例えばジメチルスルフィドを挙げることができる。メルカプタン類および有機スルフィド、特に有機スルフィドは、供給材料から除去するのが特に困難な硫黄不純物である。処理された供給材料成分中、硫黄不純物の量は、未処理の供給材料成分中に存在する硫黄不純物の総量の最大50重量%、好ましくは基準に対して最大25重量%、より好ましくは最大1重量%であってよい。
【0050】
ハロゲン不純物としては、フレオン、ハロハイドロカーボン、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。フレオンとしては、CFCl、CFCl、およびCFBrを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ハロハイドロカーボンとしては、テトラクロロエチレンが挙げられるが、これに限定されるものではない。高温で処理された供給材料成分中、ハロゲン不純物の量は、未処理の供給材料成分中に存在するハロゲン不純物の総量の最大50重量%、好ましくは同じ基準に対して最大40重量%、より好ましくは最大10重量%であってよい。
【0051】
次に、処理された1つ以上の供給材料成分を含有する反応供給材料を、反応生成物が得られるプロセス条件下で触媒と接触させる。触媒は、元素周期表(「CRC Handbook of Chemistry and Physics」,69th ed.(CRC Press Inc.1988)中のPeriodic Table of Elements中のCAS版として記載される)のIB族、VIB族、VIIB族、VIIIB族、およびこれらの組み合わせから選択される金属を含むことができる。
【0052】
特定の実施形態においては、本発明の方法は、銀を含む触媒の存在下でオレフィンおよび酸素を含む供給材料を反応させることによるオレフィンオキシドの調製方法である。例えば、オレフィンのエポキシ化方法を含む本発明の実施形態の詳細な説明が以下に示される。
【0053】
以下の説明は、銀触媒、この調製、およびこのエポキシ化プロセスにおける使用の詳細を示している。以下の説明は、本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【0054】
オレフィンのエポキシ化に典型的に使用される触媒は、担体上に堆積された銀を含む触媒である。触媒の大きさおよび形状は本発明にとって重要ではなく、塊状、断片、円筒、環、球形、車輪状、錠剤、三葉などの形態であってよく、固定層多管式熱交換器反応容器中での使用に適した大きさ、例えば2mmから20mmであってよい。
【0055】
担体は、多種多様の材料を主成分とすることができる。このような材料は、天然または人工の無機材料であってよく、耐火材料、炭化ケイ素、クレー、ゼオライト、チャコール、およびアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウムを挙げることができる。アルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカ、およびこれらの混合物などの耐火材料が好ましい。最も好ましい材料はα−アルミナである。典型的には、担体は、担体の重量に対して、少なくとも85重量%、より典型的には少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%のα−アルミナ、多くの場合最大99.9重量%のα−アルミナを含む。α−アルミナ担体の他の成分として、例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルカリ金属成分、例えばナトリウムおよび/またはカリウム成分、および/またはアルカリ土類金属成分、例えばカルシウムおよび/またはマグネシウム成分を含むことができる。
【0056】
担体の表面積は、担体の重量に対して、好適には少なくとも0.1m/g、好ましくは少なくとも0.3m/g、より好ましくは少なくとも0.5m/g、特に少なくとも0.6m/gであってよく、表面積は、担体の重量に対して、好適には最大10m/g、好ましくは最大6m/g、特に最大4m/gであってよい。本明細書において使用される場合「表面積」は、Journal of the American Chemical Society 60(1938)pp.309−316に記載されるようなB.E.T.(ブルナウアー(Brunauer)、エメット(Emmett)、およびテラー(Teller))法によって測定される表面積に関連していると理解されたい。高表面積担体は、特にシリカ、アルカリ金属、および/またはアルカリ土類金属の成分を場合によりさらに含むαアルミナ担体である場合に、使用において改善された性質および安定性が得られる。
【0057】
担体の吸水は、好適には少なくとも0.2g/g、好ましくは少なくとも0.25g/g、より好ましくは少なくとも0.3g/g、最も好ましくは少なくとも0.35g/gであってよく;吸水は、好適には最大0.85g/g、好ましくは最大0.7g/g、より好ましくは最大0.65g/g、最も好ましくは最大0.6g/gであってよい。担体の吸水は、0.2から0.85g/gの範囲内、好ましくは0.25から0.7g/g、より好ましくは0.3から0.65g/g、最も好ましくは0.3から0.6g/gの範囲内であってよい。金属および促進剤が存在する場合に、これらが含浸によって担体上により効率的に堆積するという点では、より多い吸水が好ましい場合がある。しかし、吸水が多いと、担体またはそれより製造された触媒は、より低い圧壊強度を有する場合がある。本明細書において使用される場合、吸水は、ASTM C20に準拠して測定されたものと見なされ、吸水は、担体の重量に対する、担体の孔隙中に吸収可能な水の重量として表される。
【0058】
銀を含む触媒の調製は当技術分野において周知であり、本発明の実施に使用可能な成形触媒粒子の調製にこれら周知の方法を適用可能である。担体上に銀を堆積する方法は、銀陽イオンおよび/または錯形成した銀を含有する銀化合物を担体に含浸させ、還元することで金属銀粒子を形成することを含む。このような方法のさらなる説明については、US−A−5380697、US−A−5739075、EP−A−266015、US−B−6368998を参照することができ、これらの方法は参照により本明細書に援用される。好適には、銀分散体、例えば銀ゾルを使用して、担体上に銀を堆積することができる。
【0059】
銀陽イオンの金属銀への還元は、触媒を乾燥させるステップ中に行うことができ、そのため還元自体に独立したプロセスステップは不要である。これは、銀含有含浸溶液が還元剤、例えば、オキサラート、ラクタート、またはホルムアルデヒドを含む場合であってよい。
【0060】
触媒の重量に対して少なくとも10g/kgの触媒の銀含有率を使用することによって、許容される触媒活性を得ることができる。好ましくは、触媒は、同じ基準に対して、50から500g/kg、より好ましくは100から400g/kg、例えば105g/kg、または120g/kg、または190g/kg、または250g/kg、または350g/kgの量の銀を含む。本明細書において使用される場合、特に明記しない限り、触媒の重量は、担体および触媒成分の重量を含む触媒の総重量であると見なされる。
【0061】
触媒は、少なくとも0.025gAg/m、好ましくは少なくとも0.05gAg/m、より好ましくは少なくとも0.1gAg/mの担持材料の表面積に対する銀の量(即ち、銀密度)を有することができる。触媒は、最大1.5gAg/m、好ましくは最大1gAg/m、より好ましくは最大0.5gAg/mの担持材料の表面積に対する銀の量を有することができる。触媒は、0.01から1gAg/mの範囲内の担持材料の表面積に対する銀の量を有することができる。触媒は、吸収剤よりも高い銀密度を有することが好ましい。
【0062】
本発明に使用される触媒は、レニウム、タングステン、モリブデン、クロムから選択される元素、ニトラート形成性化合物、またはニトリット形成性化合物、およびこれらの組み合わせを含む促進剤成分を含むことができる。好ましくは促進剤成分は、元素としてレニウムを含む。担体上に堆積することができる促進剤成分の形態は、本発明にとって重要ではない。レニウム、モリブデン、タングステン、クロム、またはニトラート形成性化合物、もしくはニトリット形成性化合物は、好適には、オキシアニオンとして、例えば、過レニウム酸、モリブデン酸、タングステン酸、または硝酸の塩または酸の形態として提供することができる。
【0063】
促進剤成分は、触媒の重量に対する元素(即ちレニウム、タングステン、モリブデンおよび/またはクロム)の総量として計算して、典型的には少なくとも0.1mmol/kg、より典型的には少なくとも0.5mmol/kg、特に少なくとも1mmol/kg、特に少なくとも1.5mmol/kgの量で存在することができる。促進剤成分は、触媒の重量に対する元素の総量として計算して、最大50mmol/kg、好ましくは最大10mmol/kgの量で存在することができる。
【0064】
触媒が促進剤成分としてレニウムを含む場合、この触媒は、担体上に堆積されるさらなる成分として、好ましくはレニウム共促進剤を含むことができる。好適には、レニウム共促進剤は、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、リン、ホウ素、およびこれらの組み合わせから選択される元素を含む成分から選択することができる。好ましくは、レニウム共促進剤は、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、およびこれらの組み合わせから選択される。レニウム共促進剤が、元素としてタングステンおよび/または硫黄を含むことが特に好ましい。
【0065】
レニウム共促進剤は、触媒の重量に対する元素(即ち、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、リンおよび/またはホウ素の総量)として計算して、典型的には少なくとも0.1mmol/kg、より典型的には少なくとも0.25mmol/kg、好ましくは少なくとも0.5mmol/kgの総量で存在することができる。レニウム共促進剤は、同じ基準に対して、最大40mmol/kg、好ましくは最大10mmol/kg、より好ましくは最大5mmol/kgの総量で存在することができる。担体上に堆積することができるレニウム共促進剤の形態は本発明にとって重要ではない。例えば、好適には酸化物としてまたはオキシアニオンとして、例えば、硫酸、ホウ酸、またはモリブデン酸の塩または酸の形態として提供することができる。
【0066】
触媒は、好ましくは、担体上に堆積された銀と、促進剤成分と、さらなる元素を含む成分とを含む。好適なさらなる元素は、窒素、フッ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タリウム、トリウム、タンタル、ニオブ、ガリウム、およびゲルマニウム、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択することができる。好ましくはアルカリ金属は、リチウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択される。最も好ましくはアルカリ金属は、リチウム、カリウム、および/またはセシウムである。好ましくはアルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、およびバリウムから選択される。典型的には、さらなる元素は、触媒の重量に対する元素として計算して、0.01から500mmol/kg、より典型的には0.05から100mmol/kgの総量で触媒中に存在する。さらなる元素は、あらゆる形態で提供することができる。例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩が好適である。例えば、リチウム化合物は水酸化リチウムまたは硝酸リチウムであってよい。
【0067】
触媒の重量に対する元素として計算した場合の、触媒の成分の好ましい量は以下の通りである。
銀10から500g/kg、
レニウムが存在する場合には0.01から50mmol/kg、
さらなる1種類以上の元素が存在する場合には、それぞれ0.1から500mmol/kg、
レニウム共促進剤が存在する場合には0.1から30mmol/kg。
【0068】
本明細書において使用される場合、触媒/吸収剤中に存在するアルカリ金属の量は、100℃の脱イオン水で触媒/吸収剤から抽出可能な量と見なされる。この抽出方法は、触媒/吸収剤の10gの試料を、各20mlの100℃の脱イオン水中で5分間加熱することによって3回抽出し、1つにまとめた抽出物中の関連する金属を周知の方法、例えば原子吸光分析によって求めることを含む。
【0069】
本明細書において使用される場合、触媒/吸収剤中に存在するアルカリ土類金属の量は、100℃において脱イオン水中10重量%硝酸で触媒/吸収剤から抽出可能な量と見なされる。この抽出方法は、触媒/吸収剤の10gの試料を100mlの10重量%硝酸とともに30分間沸騰させる(1気圧、即ち101.3kPa)ことによって抽出し、1つにまとめた抽出物中の関連する金属を周知の方法、例えば原子吸光分析によって求めることを含む。US−A−5801259が参照され、これは参照により本明細書に援用される。
【0070】
本発明のエポキシ化プロセスは多くの方法で行うことができるが、気相プロセスとして、即ち、最初に供給材料の1つ以上の成分を気相中で吸収剤の充填層と接触させて、前述のような処理済みの供給材料成分を得て、続いて処理済みの供給材料成分を含む気体供給材料を触媒の充填層と接触させるプロセスとして行うことが好ましい。一般に、本発明のプロセスは連続プロセスとして行われる。
【0071】
オレフィンおよび酸素に加えて、供給材料成分は、飽和炭化水素希釈ガス、反応調整剤、不活性希釈ガス、および再循環ガス流をさらに含むことができる。好ましくは、オレフィンは、精製ゾーン中の吸収剤と接触させてから、反応ゾーン中の触媒と接触させる。オレフィンとともに、またはオレフィンとは別に、追加の供給材料成分の1つ以上を、吸収剤と接触させることもできる。
【0072】
本発明のエポキシ化プロセス中に使用するためのオレフィンは、本明細書で前述したあらゆるオレフィンであってよい。最も好ましいオレフィンはエチレンである。
【0073】
反応供給材料中に存在するオレフィンの量は広い範囲内で選択することができる。典型的には、反応供給材料中に存在するオレフィンの量は、全反応供給材料に対して最大80mol%であってよい。好ましくは、同じ基準に対して、0.5から70mol%、特に1から60mol%、特に5から40mol%の範囲内であってよい。
【0074】
好ましくは、飽和炭化水素が存在する場合、これらを精製ゾーン内の吸収剤と接触させてから、反応ゾーン中の触媒と接触させることができる。飽和炭化水素は、オレフィンとともに、または別々に処理することができる。飽和炭化水素、特にメタン、エタン、およびこれらの混合物、特にメタンは、全反応供給材料に対して最大80mol%、特に同じ基準に対して最大75mol%、特に最大65mol%の量で存在することができる。飽和炭化水素は、同じ基準に対して少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも40mol%の量で存在することができる。酸素可燃限界を増加させるために飽和炭化水素を反応供給材料に加えることができる。
【0075】
本発明のエポキシ化プロセスは、空気系または酸素系であってよく、「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」,3rd edition.Volume 9,1980,pp.445−447を参照することができる。空気系プロセスにおいては、空気または酸素に富む空気が酸化剤の供給源として使用され、酸素系プロセスでは高純度(少なくとも95mol%)酸素または超高純度(少なくとも99.5mol%)酸素が酸化剤の供給源として使用される。酸素系プロセスのさらなる説明については、参照により援用されるUS−A−6040467を参照することができる。現在のほとんどのエポキシ化プラントは酸素系であり、これが本発明の好ましい一実施形態となる。
【0076】
反応供給材料中に存在する酸素の量は広範囲内で選択することができる。しかし、実際には、酸素は、可燃性の領域を回避する量で一般に使用される。典型的には、酸素は、全反応供給材料に対して2から15mol%、より典型的には5から12mol%の範囲内の量で使用することができる。
【0077】
可燃性の領域から外れるように維持するために、反応供給材料中の酸素量は、オレフィン量の増加と共に減少させる必要がある。実際の安全運転範囲は、供給材料の組成とともに、反応温度および圧力などの反応条件にも依存する。
【0078】
所望のオレフィンオキシドの形成に対して、オレフィンまたはオレフィンオキシドから二酸化炭素および水への望ましくない酸化の抑制を選択的に増加させるために、反応調整剤が反応供給材料中に存在することができる。多くの有機化合物、特に有機ハロゲン化物および有機窒素化合物を反応調整剤として使用することができる。酸化窒素、ニトロメタン、ニトロエタン、およびニトロプロパンなどの有機ニトロ化合物、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、またはアンモニアを使用することもできる。多くの場合、オレフィンのエポキシ化の操作条件下で、窒素含有反応調整剤はニトラート類またはニトリット類の前駆体であると考えられ、即ちこれらはいわゆるニトラート形成性化合物、またはニトリット形成性化合物である(参照として、例えばEP−A−3642およびUS−A−4822900、これらは参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0079】
有機ハロゲン化物、特に有機臭化物、さらに特に有機塩化物は、好ましい反応調整剤である。好ましい有機ハロゲン化物は、クロロハイドロカーボンまたはブロモハイドロカーボンである。より好ましくはこれらは、塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、二臭化エチレン、塩化ビニル、またはこれらの混合物の群より選択される。最も好ましい反応調整剤は塩化エチルおよび二塩化エチレンである。
【0080】
好適な酸化窒素は、一般式NO(式中、xは1から2.5の範囲内である)のものであり、例えばNO、N、N、およびNが挙げられる。好適な有機窒素化合物は、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、アミン類、ニトラート類、およびニトリット類、例えばニトロメタン、1−ニトロプロパン、または2−ニトロプロパンである。好ましい実施形態においては、ニトラート形成性化合物またはニトリット形成性化合物、例えば酸化窒素および/または有機窒素化合物が、有機ハロゲン化物、特に有機塩化物とともに使用される。
【0081】
反応調整剤は、全反応供給材料に対して例えば最大0.1mol%、例えば0.01×10−4から0.01mol%の少量で反応供給材料中に使用される場合に一般に有効である。特にオレフィンがエチレンである場合、反応調整剤は、全反応供給材料に対して0.1×10−4から500×10−4mol%、特に0.2×10−4から200×10−4mol%の量で反応供給材料中に存在することが好ましい。
【0082】
不活性希釈ガス、例えば窒素、ヘリウム、またはアルゴンは、全反応供給材料に対して30から90mol%、典型的には40から80mol%の量で反応供給材料中に存在することができる。
【0083】
エポキシ化プロセス中の反応供給材料成分として再循環ガス流を使用することができる。反応生成物は、オレフィンオキシド、未反応オレフィン、未反応酸素、反応調整剤、希釈ガス、ならびに場合により二酸化炭素および水などの他の反応副生成物を含む。反応生成物は、オレフィンオキシド吸収装置および二酸化炭素吸収装置などの1つ以上の分離システムに通され、それによって未反応のオレフィンおよび酸素を反応器系に再循環することができる。二酸化炭素は、エポキシ化プロセス中の副生成物である。しかし、二酸化炭素は一般に触媒活性に対して悪影響を有する。典型的には、反応供給材料中の二酸化炭素は、全反応供給材料に対して25mol%を超え、特に10mol%を超える量は回避される。全反応供給材料に対して3mol%未満、好ましくは2mol%未満、より好ましくは1mol%未満の二酸化炭素量を使用することができる。商業運転下では、全反応供給材料に対して少なくとも0.1mol%、特に少なくとも0.2mol%の二酸化炭素量が供給材料中に存在することができる。
【0084】
エポキシ化プロセスは、広範囲から選択される反応温度を使用して行うことができる。好ましくは反応温度は150から325℃の範囲内、より好ましくは180から300℃の範囲内である。
【0085】
エポキシ化プロセスは、好ましくは1000から3500kPaの範囲内の反応器入口圧力で行われる。「GHSV」即ちガスの毎時空間速度は、標準温度および圧力(0℃、1気圧、即ち101.3kPa)において1時間当たりの充填触媒の1単位体積を通過するガスの単位体積である。好ましくは、エポキシ化プロセスが、充填触媒層を伴う気相プロセスである場合、GHSVは1500から10000Nl/(1.h)の範囲内である。好ましくは、このプロセスは、1時間当たり触媒1m当たり0.5から10kmolのオレフィンオキシドが製造され、特に1時間当たり触媒1m当たり0.7から8kmolのオレフィンオキシドが製造され、例えば1時間当たり触媒1m当たり5kmolのオレフィンオキシドが製造される稼働率で行われる。本明細書において使用される場合、稼働率は、1時間当たりの触媒の単位体積当たりに製造されるオレフィンオキシドの量であり、選択率は、変換されるオレフィンのモル量に対して形成されるオレフィンオキシドのモル量である。本明細書において使用される場合、活性は、特定のエチレンオキシド製造量を実現するために必要な温度の測定値となる。温度が低いほど、活性が優れている。
【0086】
製造されるオレフィンオキシドは、当技術分野において周知の方法を使用することによって、例えば反応器出口流(即ち、反応生成物)からオレフィンオキシドを水中に吸収させ、場合により蒸留によって水溶液からオレフィンオキシドを回収することによって、反応生成物から回収することができる。オレフィンオキシドを含有する水溶液の少なくとも一部は、オレフィンオキシドを、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、またはアルカノールアミンに変換する後のプロセスで使用することができる。
【0087】
エポキシ化プロセスで生成されるオレフィンオキシドは、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、またはアルカノールアミンに変換することができる。本発明によって、オレフィンオキシドを製造するためのより魅力的なプロセスが得られるので、本発明によって同時に、本発明によるオレフィンオキシドの製造と、続いて、得られたオレフィンオキシドを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、および/またはアルカノールアミンの製造に使用することとを含むより魅力的な方法が得られる。
【0088】
1,2−ジオールまたは1,2−ジオールエーテルへの変換は、例えば、好適には酸性または塩基性の触媒を使用して、オレフィンオキシドを水と反応させることを含むことができる。例えば、1,2−ジオールが主となりおよび1,2−ジオールエーテルが少なくなるように製造するためには、酸触媒、例えば全反応混合物を基準にして0.5から1.0重量%の硫酸の存在下、50から70℃において1絶対barにおける液相反応、または130から240℃および20から40絶対barにおいて、好ましくは触媒非存在下での気相反応で、オレフィンオキシドを10倍モル過剰の水と反応させることができる。このような大量の水の存在は、1,2−ジオールの選択的な形成に好都合となることができ、発熱反応を抑える機能を果たして反応温度の制御を促進することができる。水の比率が低下すると、反応混合物中の1,2−ジオールエーテルの比率が増加する。こうして精製した1,2−ジオールエーテルは、ジエーテル、トリエーテル、テトラエーテル、またはそれに続くエーテルとなり得る。アルコール、特にメタノールまたはエタノールなどの第1級アルコールを使用して、アルコールによって水の少なくとも一部を置換することによって、オレフィンオキシドを変換することで、別の1,2−ジオールエーテルを調製することができる。
【0089】
オレフィンオキシドは、二酸化炭素と反応させることによって、対応する1,2−カーボネートに変換することができる。希望するなら、次に1,2−カーボネートを水またはアルコールと反応させて1,2−ジオールを形成することによって、1,2−ジオールを調製することができる。適用可能な方法については、US 6080897が参照され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
アルカノールアミンへの変換は、例えば、オレフィンオキシドをアンモニアと反応させることを含むことができる。モノアルカノールアミンの生成に好都合となるように、無水アンモニアが典型的には使用される。オレフィンオキシドのアルカノールアミンへの変換に適用できる方法については、例えばUS−A−4845296を参照でき、これは参照により本明細書に援用される。
【0091】
1,2−ジオールおよび1,2−ジオールエーテルは、例えば食品、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化性樹脂系、洗剤、熱伝達システムの分野などの多様な工業用途において使用することができる。1,2−カーボネートは希釈剤として、特に溶媒として使用することができる。アルカノールアミンは、例えば、天然ガスの処理(「スイートニング」)に使用することができる。
【0092】
特に明記しない限り、本明細書で言及される低分子量有機化合物、例えばオレフィン、1,2−ジオール類、1,2−ジオールエーテル類、1,2−カーボネート類、アルカノールアミン類、および反応調整剤は、典型的には最大40個の炭素原子、より典型的には最大20個の炭素原子、特に最大10個の炭素原子、特に最大6個の炭素原子を有する。本明細書の定義では、炭素原子数(即ち炭素数)の範囲は、範囲の境界値として指定される数を含んでいる。
【0093】
本発明の概要を説明してきたが、以下の実施例を参照することによってさらなる理解を得ることができ、これらの実施例は単に説明を目的として提供されるものであり、特に明記しない限り限定を意図したものではない。
【実施例1】
【0094】
ストック銀溶液の調製
この実施例では、実施例の吸収剤Aの調製に使用されるストック銀含浸溶液の調製を説明する。
【0095】
銀−アミン−シュウ酸塩ストック溶液を以下の手順で調製した。
5リットルのステンレス鋼ビーカーに、試薬グレードの水酸化ナトリウム415gを脱イオン水2340ml中に溶解させ、温度を50℃に調整した。
4リットルのステンレス鋼ビーカーに、高純度「Spectropure」硝酸銀1699gを脱イオン水2100ml中に溶解させ、温度を50℃に調整した。
撹拌し、溶液温度を50℃に維持しながら水酸化ナトリウム溶液を硝酸銀溶液にゆっくりと加えた。この混合物を15分間撹拌した。必要に応じて水酸化ナトリウム溶液を加えることによって、溶液のpHが10を超えるように維持した。
【0096】
混合ステップ中に生じた沈殿物から水を取り出し、ナトリウムおよび硝酸イオンを含有するこの水の伝導率を測定した。取り出した量と同じ量の新しい脱イオン水を銀溶液に戻した。溶液を40℃で15分間撹拌した。取り出した水の伝導率が90μmho/cm未満になるまでこのプロセスを繰り返した。次に新しい脱イオン水1500mlを加えた。高純度シュウ酸二水和物630gを約100gずつ加えた。シュウ酸二水和物の最後の130gを加える間、温度を40℃(±5℃)に維持し、溶液のpHを監視して、pHが長時間7.8未満に下がらないようにした。この混合物から水を除去すると、高濃度の銀含有スラリーが残った。このシュウ酸銀スラリーを30℃に冷却した。
【0097】
温度を30℃以下に維持しながら、92重量%エチレンジアミン(8%脱イオン水)699gを加えた。この最終溶液を、吸収剤Aを調製するためのストック銀含浸溶液として使用した。
【実施例2】
【0098】
吸収剤の調製
吸収剤A
吸収剤Aを以下の手順で調製した。比重1.548g/mlのストック銀溶液100gに、水20g中に溶解させた水酸化ナトリウム1.0gを加えた。担持体A(以下の表Iの三葉状γアルミナの説明を参照)40gが入った容器を、20mmHgまで1分間排気し、減圧下で最終含浸溶液を担持体Aに加え、次に減圧を開放し、担体を液体と3分間接触させた。含浸させた担持体Aを、次に500rpmで2分間遠心分離して過剰の液体を除去した。含浸させた担持体Aを振動シェーカーに入れ、空気を250℃において16.2Nl/hの速度で15分流して乾燥させ、吸収剤Aを製造した。
【0099】
吸収剤Aの最終組成は、硝酸中の温浸および銀の滴定によって測定して24.1%のAg、および含浸の細孔容積に基づいて計算して260mmolNa/kg吸収剤で構成された。これらの値は、吸収剤の重量を基準としている。
【0100】
【表1】

【実施例3】
【0101】
吸収剤の試験
粉砕した吸収剤4gをステンレス鋼のU字管に入れた。この管の両端をガス流動装置に接続した。入口ガス圧力を1550kPa(絶対)とした。吸収剤の温度を周囲温度(25℃)とした。
【0102】
全5日間の試験運転中に、ガス混合物を、吸収剤層に「ワンスルー」操作で通し、このガス混合物は、10ppmvの硫化二水素(HS)、10ppmvの硫化カルボニル(COS)、10ppmvのエタンチオール(CSH)、10ppmvのジメチルスルフィド((CHS)、および残分の窒素からなった。ガス混合物の流量は3.0Nl/1.hとした。これらの硫黄含有不純物量は、商業運転中に生じるよりもはるかに多い量である。
【0103】
吸収剤層の6つの画分の全硫黄含有率をXRF(X線蛍光)分析によって分析した。XRF分析の結果は以下の通りであった(最も入口に近い画分から最も出口に近い画分まで)。使用した吸収剤の重量に対して0.85重量%;0.68重量%;0.25重量%;0.05重量%;0.042重量%。同じ装置上で分析した新しい吸収剤Aの試料は、Sが0.053重量%であった。これらの結果は、本発明による吸収剤が、供給材料成分中の硫黄含有不純物の量の減少に有効であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀、アルカリ金属またはアルカリ土類金属および、20m/gを超える表面積を有する担持材料とを含む吸収剤を含む1つ以上の精製ゾーンと、
触媒を含み、1つ以上の精製ゾーンの下流に配置される反応ゾーンとを含む、反応器系。
【請求項2】
多管式熱交換器反応容器であって、容器の中心長手方向軸に対して実質的に平行に配置された1つ以上の開口反応管を含む多管式熱交換器反応容器の1つ以上の開口反応管の内側に反応ゾーンが配置され、上端が実質的に水平の上部管板に接続され、下端が実質的に水平の下部管板に接続される、請求項1に記載の反応器系。
【請求項3】
精製ゾーンが、反応容器の内側および1つ以上の反応管の上流に配置される、請求項2に記載の反応器系。
【請求項4】
精製ゾーンが、少なくとも0.05m、特に少なくとも0.1mの層高を有する吸収剤の充填層の形態で存在する、請求項3に記載の反応器系。
【請求項5】
1つ以上の精製ゾーンが、反応器ゾーンの上流で反応器ゾーンから離れて配置される、請求項1または請求項2から4のいずれか一項に記載の反応器系。
【請求項6】
触媒が、元素周期表のIB族、VIB族、VIIB族、VIIIB族、またはこれらの組み合わせから選択される金属を含む、請求項1または請求項2から5のいずれか一項に記載の反応器系。
【請求項7】
触媒が、担体の表面積に対して、少なくとも0.025gAg/m、特に少なくとも0.05gAg/mの銀の量を有し;吸収剤が、担持材料の表面積に対して0.025gAg/m未満、特に0.01gAg/m未満の銀の量を有する、請求項1または請求項2から7のいずれか一項に記載の反応器系。
【請求項8】
触媒が、銀および、レニウム、モリブデン、タングステン、クロム、ニトラート形成性化合物またはニトリット形成性化合物、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の選択性促進ドーパントとを含む、請求項6または7に記載の反応器系。
【請求項9】
担持材料が少なくとも25m/g、特に50から1200m/gの範囲内の表面積を有する、請求項1または請求項2から8のいずれか一項に記載の反応器系。
【請求項10】
炭化水素を含む1つ以上の供給材料成分を含む供給材料を反応させる方法であって、
供給材料成分中の1種類以上の不純物の量を減少させるために、供給材料成分の1つ以上を、請求項1または請求項2から9のいずれか一項に記載の反応器系の中に配置された銀および、アルカリ金属またはアルカリ土類金属および、20m/gを超える表面積を有する担持材料とを含む吸収剤と接触させるステップと、
続いて、反応生成物を得るために、供給材料成分を触媒と接触させるステップとを含む、方法。
【請求項11】
炭化水素がオレフィン、特にエチレンを含み、酸素が供給材料成分として存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
炭化水素が、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、およびこれらの混合物、特にメタンから選択される飽和炭化水素をさらに含み;供給材料成分が反応調整剤および再循環ガス流をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
オレフィン中の1つ以上の不純物の量を減少させるために0から350℃の範囲内の温度で、オレフィンを、2つ以上の精製ゾーンの少なくとも1つの内側に配置された吸収剤と接触させるステップと;
独立したステップとして、酸素中の1つ以上の不純物の量を減少させるために190から350℃の範囲内の温度で、酸素を、2つ以上の精製ゾーンの少なくとも1つの内側に配置された吸収剤と接触させるステップと;
続いて、供給材料成分を、吸収剤よりも高い銀密度を有する触媒と接触させるステップとをさらに含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上の供給材料成分から1つ以上の不純物を除去するための吸収剤であって、銀および、アルカリ金属またはアルカリ土類金属および、20m/gを超える表面積を有する担持材料とを含む、吸収剤。
【請求項15】
1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、またはアルカノールアミンの調製方法であって、オレフィンオキシドを、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、またはアルカノールアミンに変換するステップを含み、オレフィンオキシドが請求項11または請求項12から13のいずれか一項に記載の方法によって調製された方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−527758(P2010−527758A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508579(P2010−508579)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/063722
【国際公開番号】WO2008/144402
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】