説明

反応性イソシアネート乳化剤

【課題】 ポリイソシアネート化合物の水中乳化能に優れるとともに、ポリイソシアネート化合物への反応性が良好で、この化合物を用いて乳化した乳化物の高温安定性を向上させることの可能な化合物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩からなる反応性イソシアネート乳化剤。ここで、Rは炭素数4〜12の炭化水素基等、Rは炭素数1〜12の炭化水素基等、Rは水酸基で置換された炭素数1〜18の炭化水素基等、R及びRは、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基等、Xは、Cl、Br等を意味する。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性イソシアネート乳化剤に関する。より詳しくは、本発明は、イソシアネート化合物に反応性であるとともにイソシアネート化合物を水中で乳化することのできる乳化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の脱溶剤の要求から、ポリウレタンの原料となるポリイソシアネート化合物としては、水分散性を有するものや自己乳化性を有するものが求められている。自己乳化性を有するポリイソシアネート化合物を作成する方法としては、ポリイソシアネート化合物にメトキシポリエチレングリコールを反応させる方法が知られており(特許文献1)、メトキシポリエチレングリコールを付加したポリイソシアネート化合物にイオン性界面活性剤を添加することも行われている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平5−222150号公報
【特許文献2】特開平9−71720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1又は2に開示された、メトキシポリエチレングリコール等の片末端がアルキル基でキャップされたオキシアルキレン化合物では、得られる自己乳化型ポリイソシアネート化合物の高温での乳化安定性が悪いという問題がある。
【0004】
ポリイソシアネート化合物を乳化又は分散可能な化合物としてはまた、第4級アンモニウム基を有するヒドロキシル化合物が知られているが(例えば、特公昭46−18501号公報)、このような化合物は融点が高く、一般にポリイソシアネート化合物と水酸基を反応させる0℃から120℃では固体でありポリイソシアネート化合物との反応性に劣る不具合がある。また、このような化合物の融点以上でポリイソシアネートと反応させると、ウレタン化のみならずアロファネート化やイソシアヌレート化など望ましくない反応が生じる問題がある。さらに、水酸基を有する3級アミンとポリイソシアネート基を反応させた後アルキル化剤で4級化する方法では、未反応の3級アミンが残存することが多く、その場合は、3級アミンが触媒となりイソシアヌレート化するので貯蔵安定性が非常に悪くなる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ポリイソシアネート化合物の水中乳化能に優れるとともに、ポリイソシアネート化合物への反応性が良好で、この化合物を用いて乳化した乳化物の高温安定性を向上させることの可能な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩からなる反応性イソシアネート乳化剤を提供する。
【化1】



[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]
【0007】
上記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩からなる反応性イソシアネート乳化剤は、ポリイソシアネート化合物の水中乳化能に優れるとともに、ポリイソシアネート化合物への反応性が良好である。また、メトキシポリエチレングリコール等の片末端がアルキル基でキャップされたオキシアルキレン化合物等に比較して、この化合物を用いて乳化した乳化物の高温安定性が格段に優れる。
【0008】
乳化性能を向上させることができることから、R及びRはいずれも水素原子であり、Xは、Cl又はBrであることが好ましく、Rは炭素数4〜12のアルキル基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましい。
【0009】
一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩が下記一般式(2)で表されるイミダゾリウム塩である反応性イソシアネート乳化剤は、ポリイソシアネート化合物の水中乳化能に優れることはもちろんのこと、ポリイソシアネート化合物への反応性が非常によく、この化合物を用いて乳化した乳化物の高温安定性が顕著に優れる。
【化2】



[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、nは1〜18の数、Xは、Cl又はBrを示す。]
【0010】
一般式(2)で表されるイミダゾリウム塩においても、Rは炭素数4〜12のアルキル基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
ポリイソシアネート化合物の水中乳化能に優れるとともに、ポリイソシアネート化合物への反応性が良好で、この化合物を用いて乳化した乳化物の高温安定性を向上させることの可能な化合物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の反応性イソシアネート乳化剤は、下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩からなるものである。
【化3】



【0014】
ここで、Rは炭素数4〜12の炭化水素基であるが、この炭化水素基としては、直鎖状、環状若しくは分岐状のアルキル基、アルケニル基又はベンジル基、フェニル基などの芳香族炭化水素基が適用できる。炭素数4〜12の炭化水素基としては、例えば、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、4−ペンテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基等が挙げられる。また、それぞれの炭化水素基に水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基、もしくはアルデヒド基を有していてもよい。
【0015】
炭化水素基の炭素数が4未満である場合は、ポリイソシアネート化合物に対する溶解性が低下し反応が生じ難い。一方、炭素数が12を超す場合は、粘度が高くなり、ポリイソシアネート化合物との反応速度が遅くなる。ポリイソシアネート化合物に対する溶解性に優れ、反応速度も速いことから、上記炭化水素基の炭素数は6〜10が好ましい。なお、Rが水素原子の場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しウレア結合した化合物が固体として析出してしまうため、このようなイミダゾリウム塩は用いることができない。
【0016】
一般式(1)におけるRは、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子である。この炭化水素基としては、直鎖状、環状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はベンジル基、フェニル基などの芳香族炭化水素基が適用できる。炭素数1〜12の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、4−ペンテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基等が挙げられる。
【0017】
の炭化水素基の炭素数が12を超す場合は、粘度が高くなり、ポリイソシアネート化合物との反応速度が遅くなる。Rの炭化水素基としては、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8の炭化水素基がより好ましい。
【0018】
一般式(1)におけるRは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基である。このような炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、4−ペンテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基が挙げられる芳香族炭化水素基としてはベンジル基、フェニル基が挙げられる。
【0019】
の炭化水素基としては、炭素数1〜15の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10の炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜8の炭化水素基が更に好ましい。なお、Rは水酸基を有していることが好ましく、ポリイソシアネート化合物との反応性の観点から、水酸基の位置は末端(イミダゾール環の窒素原子に結合している炭素から最も離れた位置)であることが好ましい。
【0020】
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基である。炭素数1〜18の炭化水素基としては上記例示と同様のものが挙げられ、炭素数としては、1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい。
【0021】
一般式(1)におけるXは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。ポリイソシアネート化合物の反応性の観点から、Xは、Cl、Br又はIが好ましく、Cl又はBrがより好ましい。
【0022】
なお、上記R及びRの少なくとも一方は水酸基を有している必要があるが、Rが水酸基を有していることが好ましい。
【0023】
一般式(1)のイミダゾリウム塩においてXがClである場合において、反応させるポリイソシアネート化合物がポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)であるときは、Rの炭素数は6〜10が好ましい。Rの炭素数が6より少ない場合、ポリイソシアネート化合物の反応性が悪く、炭素数が10を超える場合は粘度が高くなりポリイソシアネート化合物との反応速度が遅くなる傾向にある。
【0024】
一般式(1)のイミダゾリウム塩においてXがBrである場合において、反応させるポリイソシアネート化合物がポリメリックMDIであるときは、Rの炭素数は4〜10が好ましい。Rの炭素数が4より少ない場合、ポリイソシアネート化合物の反応性が悪く、炭素数が10を超える場合は粘度が高くなりポリイソシアネート化合物との反応速度が遅くなる傾向にある。
【0025】
一般式(1)のイミダゾリウム塩は、以下に示すイミダゾール化合物(1a)とアルキル化剤(1b)、又はイミダゾール化合物(2a)とアルキル化剤(2b)を反応させることにより、合成することができる。アルキル化剤(1b)又は(2b)の使用量は、イミダゾール化合物(1a)又は(2a)1モル当り、1〜1.3モルが好ましく、1〜1.2モルがより好ましい。
【化4】



[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]
【0026】
イミダゾール化合物(1a)としては1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール,1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール,1−(2−ヒドロキシエチル)−2−エチルイミダゾール,1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ブチルイミダゾール,1−メチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−エチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−プロピル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−n−ブチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−n−ヘキシル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−ベンジル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,などが挙げられる。
【0027】
イミダゾール化合物(2a)としては1−n−ブチルイミダゾール,1−イソブチルイミダゾール,1−n−ペンチルイミダゾール,1−n−ヘキシルイミダゾール,1−n−オクチルイミダゾール,1−n−デシルイミダゾール,1−n−ドデシルイミダゾール,1−ベンジルイミダゾール,1−n−ブチル−2−メチルイミダゾール,1−イソブチル−2−メチルイミダゾール,1−n−ペンチル−2−メチルイミダゾール,1−n−ヘキシル−2−メチルイミダゾール,1−n−オクチル−2−メチルイミダゾール,1−n−デシル−2−メチルイミダゾール,1−n−ドデシル−2−メチルイミダゾール,1−ベンジル−2−メチルイミダゾール,1−n−ブチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−n−ヘキシル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−ベンジル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,などが挙げられる。
【0028】
アルキル化剤(1b)としては1−クロロブタン,2−クロロブタン,1−クロロペンタン,2−クロロペンタン,1−クロロヘキサン,1−クロロヘプタン,1−クロロオクタン,1−クロロノナン,1−クロロデカン,1−クロロドデカン,1−クロロオクタデカン,1−ブロモブタン,2−ブロモブタン,1−ブロモペンタン,2−ブロモペンタン,1−ブロモヘキサン,1−ブロモヘプタン,1−ブロモオクタン,1−ブロモノナン,1−ブロモデカン,1−ブロモドデカン,1−ブロモオクタデカンなどのハロゲン化アルキル,ジブチル硫酸などのジアルキル硫酸、パラトルエンスルホン酸−n−ブチル、パラトルエンスルホン酸イソブチル、メタンスルホン酸ブチル等のアルキルスルホン酸エステル、ベンジルクロリド、ベンジルブロミドなどが挙げられる。
【0029】
アルキル化剤(2b)としては1−クロロメタン,1−クロロエタン,1−クロロプロパン,2−クロロプロパン,1−クロロブタン,2−クロロブタン,1−クロロペンタン,2−クロロペンタン,1−クロロヘキサン,1−クロロヘプタン,1−クロロオクタン,1−クロロノナン,1−クロロデカン,1−クロロドデカン,1−クロロオクタデカン,1−ブロモメタン,1−ブロモエタン,1−ブロモプロパン,2−ブロモプロパン,1−ブロモブタン,2−ブロモブタン,1−ブロモペンタン,2−ブロモペンタン,1−ブロモヘキサン,1−ブロモヘプタン,1−ブロモオクタン,1−ブロモノナン,1−ブロモデカン,1−ブロモドデカン,1−ブロモオクタデカンなどのハロゲン化アルキル,クロロエタノール、クロロブタノール、クロロオクタノール、クロロデカノール、ブロモエタノール、ブロモブタノール、ブロモオクタノール、ブロモデカノール等のハロゲン化アルコール,ジメチル硫酸,ジエチル硫酸,ジブチル硫酸などのジアルキル硫酸、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸−n−ブチル、パラトルエンスルホン酸イソブチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸ブチル等のアルキルスルホン酸エステル、ベンジルクロリド、ベンジルブロミドなどが挙げられる。
【0030】
合成は、イミダゾール化合物(1a)にアルキル化剤(1b)又はイミダゾール化合物(2a)にアルキル化剤(2b)を一度に加えて行なってもよく、また、徐々に滴下することによっても実施することができる。この場合の反応は、無溶剤または反応溶媒の存在下で実施される。反応溶媒としては、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリルの他、メタノールやプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、そして石油系溶媒のn−ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロルメタン、トルエン、キシレン、クロルベンゼンが挙げられる。また、これらの反応溶媒については、単独又は混合体で使用することもできる。
【0031】
溶媒使用量はイミダゾール化合物(1a)又は(2a)のイミダゾール1モル当り、50ccから500ccの割合であり、好ましくは100ccから300ccである。反応温度は20℃から150℃であり、好ましくは30℃から110℃である。反応時間は1時間から100時間であり、好ましくは3時間から48時間である。ここで使用する反応器としてはアルキル化剤(1b)が低沸点の場合、密閉型のオートクレイブを使用するとよく、この時の圧力は1〜10気圧が好ましい。
【0032】
このような反応で得られたイミダゾリウム塩には未反応のアルキル化剤(1b)又は(2b)が含まれている場合もあり、反応溶媒が残存している場合もある。そのような場合は精製を行う。
【0033】
精製方法としては、蒸留、反応溶媒を用いた再結晶,再沈、抽出等の方法が挙げられ、蒸留特に薄膜蒸留が溶剤等を用いることなくできるので好ましい。また、好ましい薄膜蒸留の条件としては、圧力:2.0kPa以下、温度:100〜200℃であり、特に好ましい条件は圧力:1.5kPa以下、温度:120〜180℃である。
【0034】
上記に加え、必要に応じてアルキル化剤(1b)又は(2b)の脱離アニオンを目的とするアニオンのイオン交換を行うこともできる。アルキル化剤(1b)又は(2b)の脱離アニオンと目的とするアニオンのイオン交換の方法としては、以下の式で表される方法で行うことができる。ここで、Yはハロゲン原子、Mはアルカリ金属、AはBF、NO等を示す。
【化5】



【0035】
このとき、溶媒(アセトニトリル、酢酸エチルエステル、アセトン等)中に、イミダゾリウムハロゲン塩と当量の対アニオンのアルカリ金属塩を添加して、0〜100℃(さらに好ましくは40〜60℃)で、3〜20時間(さらに好ましくは5〜10時間)反応を行った後、ろ過を行い、その後濃縮することが好ましい。これにより目的とするイミダゾリウム塩が得られる。なお、上記において、反応温度が0℃未満では反応が十分に進まない場合があり、逆に100℃を超えると着色の原因となって好ましくない。
【0036】
本発明の反応性イソシアネート乳化剤としては、下記一般式(2)で表されるイミダゾリウム塩が特に好ましい。
【化6】



【0037】
ここで、Rは炭素数4〜12のアルキル基であることが好ましく、Rは水酸基又はメチル基であることが好ましく、nは1〜18(好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6、更には1〜3)の数であることが好ましく、Xは、Cl又はBrがよい。
【0038】
以上説明した本発明の反応性イソシアネート乳化剤は、ポリイソシアネート化合物の乳化に用いることができ、乳化して得られたイソシアネート化合物は自己乳化型ポリイソシアネート化合物として機能する。これらの化合物は、中密度繊維板・パーティクルボード・オリエンテッドストランドボードなどのリグノセルロース系材料の成形体用バインダー、水性塗料、水性接着剤に適用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール100.0gと、1−クロロオクタン198.9gを仕込み、100℃にて攪拌しながら、46時間反応させた。その後H―NMRで未反応の1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾールが無いことを確認した。この反応混合物から未反応の1−クロロオクタンを140℃・1.3kPaにて留去することによりオニウム塩(イミダゾリム塩)「A1」を得た。
【0041】
(実施例2)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に1−イソブチル−2−メチルイミダゾール100.0gと、2−ブロモエタノール119.0gを仕込み、100℃にて攪拌しながら、20時間反応させた。その後H―NMRで未反応の1−イソブチル−2−メチルイミダゾールが無いことを確認した。この反応混合物から未反応の2−ブロモエタノールを140℃・1.3kPaにて留去することによりオニウム塩(イミダゾリム塩)「A2」を得た。

【0042】
(実施例3)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール100.0gと、1−クロロドデカン237.4gを仕込み、100℃にて攪拌しながら、40時間反応させた。その後H―NMRで未反応の1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾールが無いことを確認した。この反応混合物から未反応の1−クロロドデカンを140℃・1.3kPaにて留去することによりオニウム塩(イミダゾリム塩)「A3」を得た。
【0043】
(比較例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にN,N−ジメチルアミノエタノール100.0gと、1−ブロモドデカン307.5gとエタノール300gを仕込み、70℃にて攪拌しながら、24時間反応させた。その後H―NMRで未反応のN,N−ジメチルアミノエタノールが無いことを確認した。この反応混合物を再結晶することによりオニウム塩「B1」を得た。
【0044】
(比較例2)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に1−メチルイミダゾール100.0gと、2−クロロエタノール117.7gを仕込み、100℃にて攪拌しながら、42時間反応させた。その後H―NMRで未反応の1−メチルイミダゾールが無いことを確認した。この反応混合物から未反応の2−クロロエタノールを140℃・1.3kPaにて留去することによりオニウム塩「B2」を得た。
【0045】
(比較例3)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に1−メチルイミダゾール100.0gと、2−ブロモエタノール183.6gを仕込み、100℃にて攪拌しながら、16時間反応させた。その後H―NMRで未反応の1−メチルイミダゾールが無いことを確認した。この反応混合物から未反応の2−ブロモエタノールを140℃・1.3kPaにて留去することによりオニウム塩「B3」を得た。
【0046】
実施例1〜5及び比較例1〜3において使用したアミン及びアルキル化剤をまとめて以下の表1に示した。なお、表1には生成したオニウム塩の室温での性状も記載した。
【表1】



【0047】
(反応性評価)
(実施例4)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を990g仕込んだ。次いでイミダゾリム塩組成物「A1」10gを室温で攪拌しながら仕込み、室温(25℃)にて攪拌しながら反応させ,ポリメリックMDIのイソシアネート含有量とA1の水酸基含有量から計算された目標のイソシアネート含量になるまでの時間を測定した。1時間後に目標のイソシアネート含有量となり,変性量1%、イソシアネート(NCO)含量30.4%、25℃での粘度300mPa・sの自己乳化型ポリイソシアネート化合物「P1」を得た。
【0048】
(実施例5〜6、比較例4〜6)
実施例4と同様の方法で表2に記載の量のポリメリックMDIとオニウム塩を仕込み、ポリメリックMDIのイソシアネート含有量とA1の水酸基含有量から計算された目標のイソシアネート含量になるまでの時間を測定した。目標のイソシアネート含量にならなかったものを反応せずとした。目標のイソシアネート含量になるまでの時間が5時間未満のものを合格,目標のイソシアネート含量になるまでの時間が5時間以上のもの及び反応しなかったものを不合格とした。反応性の評価結果をまとめて以下の表2に示した。
【表2】



【0049】
(乳化性評価)
100mlのポリカップ中に、25℃に調整した水45mlに25℃に調整したP1、P2、P3、P4、P5又はP6を5g添加して、この混合液を攪拌機(TKホモディスパー)で3000rpmにて20秒攪拌した。攪拌直後に10mlを目盛つき試験管にとり、25℃で1分間静置した後の離水量を測定することで乳化性を評価した。なお、「離水量」とは、エマルジョンから分離した水の量を意味する。評価は、離水量1ml以下の場合を合格とし、離水量1mlを超える場合を不合格とした。乳化性の評価結果をまとめて以下の表3に示した。
【表3】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩からなる反応性イソシアネート乳化剤。
【化1】



[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]
【請求項2】
及びRはいずれも水素原子であり、Xは、Cl又はBrである請求項1記載の反応性イソシアネート乳化剤。
【請求項3】
は炭素数4〜12のアルキル基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基である請求項1又は2記載の反応性イソシアネート乳化剤。
【請求項4】
一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩が下記一般式(2)で表されるイミダゾリウム塩である請求項1記載の反応性イソシアネート乳化剤。
【化2】



[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、nは1〜18の数、XはCl又はBr、をそれぞれ示す。]
【請求項5】
は炭素数4〜12のアルキル基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子である請求項4記載の反応性イソシアネート乳化剤。

【公開番号】特開2009−185091(P2009−185091A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23141(P2008−23141)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】