説明

反応性シアニン化合物

本発明は、式I〜VIIの化合物及び組成物並びにこれらの化合物の使用方法を提供する。本発明の化合物を、同様の構造の既知のカルボシアニン色素で標識したコンジュゲートよりタンパク質、核酸又はその他の生体高分子上で均一で実質的により強い蛍光を発する色素コンジュゲートの調製に使用することができる。事実上同じ波長で同様の構造の色素より強い蛍光を発すること及び生体高分子へのコンジュゲート時のその吸収スペクトルにおけるより少ないアーチファクトに加えて、本発明の化合物は、そのような同様の構造の色素より高い光安定性及び/又はピーク吸収波長でのより高い吸光度(吸光係数)も有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年8月31日に出願の米国仮特許出願第61/238459号の利益を請求するものであり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
蛍光化合物を別の材料に共有又は非共有結合させることによって、色彩及び蛍光を付与することができる。鮮やかな蛍光色素によって、この蛍光色素が付着した材料を高い感度でもって検出する又はその位置を特定することが可能になる。特定のカルボシアニン色素の、様々な生物学的用途のための標識試薬としての有用性は実証されていて、例えば米国特許第4981977号、第5268486号、第5569587号、第5569766号、第5486616号、第5627027号、第5808044号、第5877310号、第6002003号、第6004536号、第6008373号、第6043025号、第6127134号、第6130094号、第6133445号、国際公開第97/40104号、第99/51702号、第01/21624号、欧州特許出願公開第1065250号A1及びOzmenらのTetrahedron Letters,41:9185(2000)が挙げられる。しかしながら、多くのカルボシアニン色素には共通したある欠点があることが知られていて、例えば、GruberらのBioconjugate Chem.,11:696(2000)及び欧州特許出願公開第1065250号A1において論じられているような、生体高分子コンジュゲートにおけるカルボシアニン色素の蛍光の深刻なクエンチング及びコンジュゲート上のCy5、Cy7色素バリアントのクエンチングである。加えて、反応性カルボシアニン色素の特定の望ましいスルホアルキル誘導体(Cy3、Cy5バリアント等)の調製は困難である(WaggonerらのBioconjugate Chem.,4:105(1993)を参照のこと)。シアニン色素には、極めて強い自己会合(すなわち、凝集する)の傾向もあり、この傾向によって、蛍光量子収率が著しく低下する場合がある(Mishra et al.,Chem.Rev.,100:1973(2000))。したがって、バイオテクノロジーの分野における研究を支援するための新規な標識試薬が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、式I:
【化1】

(I)
又は式II:
【化2】

(II)
の化合物を提供し、
式中、
1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立してH、アルキル、シクロアルキル、アリール、(アリール)アルキル、ヘテロアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、スルホ又は−L−Rxであり、あるいは
1、R2、R3、R4、R5又はR6の2つの隣接する基は、それらが結合する原子と共に、任意で1、2、3又は4個のアルキル、シクロアルキル、アリール、(アリール)アルキル、ヘテロアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、スルホ又は−L−Rx基で置換される縮合ベンゾ環を形成し、
各W1及びW2は、それらが結合する原子と共に、独立して5、6、7又は8員複素環であり、この環は任意で、O、S又はNから選択される第2のヘテロ原子を含み、このNは、存在する場合、H、アルキル、(アリール)アルキル又は−L−Rxで置換され、W1又はW2の少なくとも1つの炭素原子は任意でR7で置換され、
各Yは、独立してCR77、S、O、CF2又はNR7であり、
各R7は、独立してH、(C1〜C8)アルキル、アリール、(アリール)アルキル、オキソ又は−L−Rxであり、
各Lは、独立して直接結合、又はリンカーであり、このリンカーは式−A−B−Z−の2価の基であり、Aは、直接結合、又は任意で1つ以上の不飽和を含み、任意で1つ以上のオキソ基で置換され、また任意で1つ以上のO原子によって中断される(C1〜C12)アルキル鎖であり、Bは、直接結合、又は−NHC(=O)−、−C(=O)NH−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−若しくは−N(R8)−基であり、Zは、直接結合、又は任意で1つ以上の不飽和を含み、任意で1つ以上のオキソ基で置換され、また任意で1つ以上のO原子によって中断される(C1〜C20)アルキル鎖であり、
各R8は、独立してH、(C1〜C6)アルキル又は窒素保護基であり、
9は、−L−Rx、−O−Ph−Rx、−O−Ph−L−Rxであり、
各Rxは、独立してカルボン酸の活性化エステル、マレイミド、アミン、アルコール、スルホニルハライド、メルカプタン、ボロネート、ホスホルアミダイト、イソシアネート、ハロアセトアミド、アルデヒド、アジド、アシルニトリル、光活性化性(photoactivatable)基、4−シアノベンゾチアゾール、(C1〜C8)アルキルハライド、カルボン酸又はスルホ基であり、
ただし、少なくとも1つの−L−Rx基が存在し、また少なくとも1つのRxはスルホ基ではなく、
アルキル、シクロアルキル、アリール、(アリール)アルキル又はヘテロアリールは、任意で1、2又は3個のハロ、ヒドロキシ又はスルホ基によって置換され、
mは0又は1であり、nは0、1又は2であり、
式I又はIIの化合物がカチオン性の場合、有機又は無機アニオンが存在する。
【0004】
カルボシアニン色素のインドリウム環を反応性基を含むように修飾すると、予期せぬことに、同様の構造のカルボシアニン色素で標識したコンジュゲートよりタンパク質、核酸及びその他の生体高分子上で均一で実質的により強い蛍光を発する色素コンジュゲートがもたらされ得る。一実施形態においては、事実上同じ波長で同様の構造の色素より強い蛍光を発すること及び生体高分子へのコンジュゲート時のその吸収スペクトルにおけるより少ないアーチファクトに加えて、本発明の特定の化合物は、そのような同様の構造の色素より高い光安定性及び/又はピーク吸収波長でのより高い吸光度(吸光係数)も有し得る。したがって、本発明の化合物は、アッセイにおいて著しく高い感度を有し得る。更に、本明細書に記載の特定の色素は、少なくとも約2〜約5nm、例えば約10〜約20nmのスペクトルシフトを示し得る。
【0005】
一実施形態において、本発明の色素は、例えば少なくとも約620nm(例えば、少なくとも約650、670、690又は700及び約750nmより少し上)で発光バンドを示すことから、例えば535〜545nm、555〜565nm、575〜585nm、605〜615nmといった、全く異なる発光バンドを有する別の色素又は全く異なる発光バンドを有する色素の組み合わせと共に使用する場合に特に有用である。一実施形態において、本発明の色素は、少なくとも約400nm(例えば、少なくとも約420、440、460、480又は500nm)の発光バンドを示すことから、例えば515〜525nm、535〜545nm、555〜565nm、575〜585nm、605〜615nmといった、全く異なる発光バンドを有する別の色素又は全く異なる発光バンドを有する色素の組み合わせと共に使用する場合に特に有用である。
【0006】
本発明の化合物は、スペクトルの遠端(例えば、より青色、より赤色(レーザー検出))でのより良好なスペクトル分解能をもたらすことができ、またCy5等の他のシアニン色素より高い光安定性も、例えば負の電荷(例えば、ジ−若しくはトリスルホン化、フッ化又はホスホルアミド誘導体)に起因して有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1−1】様々な実施形態による、式I又はIIの化合物の調製に使用できる中間体である様々なインドリウム誘導体を示す。
【図1−2】様々な実施形態による、式I又はIIの化合物の調製に使用できる中間体である様々なインドリウム誘導体を示す。
【図2−1】様々な実施形態による、式I又はIIの化合物の調製に使用できる中間体である様々なインドリウム誘導体を示す。
【図2−2】様々な実施形態による、式I又はIIの化合物の調製に使用できる中間体である様々なインドリウム誘導体を示す。
【図3−1】PowerPlex(登録商標)ESX 16 Systemを示す電気泳動図である。
【図3−2】PowerPlex(登録商標)ESX 16 Systemを示す電気泳動図である。
【図4】CC5 Internal Lane Standard 500フラグメントを示す電気泳動図である。
【図5】PBI3847で標識したHaloTag発現細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、修飾カルボシアニン色素及びそのコンジュゲートを提供するものである。一実施形態において、本発明の色素化合物は、化学反応性基を含む少なくとも1つの置換インドリウム環系又はコンジュゲートされた物質を有する。一実施形態において、本発明の化合物は、3個以上の環を含むインドリウム部分及び任意で少なくとも1つのスルホネート部分を取り込む。これらの色素及び色素コンジュゲートを、試料中の分析物又はリガンドの相互作用、存在又は位置特定の検出に利用し得る。本発明の化合物又はそのコンジュゲートを取り入れたキットは、このような方法において有用である。
【0009】
定義
本明細書で使用の特定の用語は以下の意味を有する。本明細書で使用のその他の用語及び言い回しは全て、当業者が理解するところの通常の意味を有する。そのような通常の意味は、専門用語の辞書(R.J.LewisのHawley’s Condensed Chemical Dictionary 14th Edition,John Wiley&Sons,New York,N.Y.,2001等)を参照することによって得られる。基、置換基及び範囲に関して以下で挙げる具体的な値は説明のためのものに過ぎず、基、置換基又は用語に関して、その他の定義された値又は定義された範囲内のその他の値を排除するものではない。
【0010】
明細書における「一実施形態(one embodiment)」、「ある実施形態(an embodiment)」、「例示的な実施形態(an exemplary embodiment)」等への言及は、記載の実施形態が特定の態様、特色、構造、部分又は特徴を含み得るが、必ずしも全ての実施形態がその態様、特色、構造、部分又は特徴を含むわけではないことを示す。更に、このような言い回しは、必ずではないが、明細書の別の箇所で言及された同じ実施形態のことであり得る。更に、特定の態様、特色、構造、部分又は特徴をある実施形態との関連で記載する場合、明確に記載されているか否かに関わらず、そのような態様、特色、構造、部分又は特徴をその他の実施形態と関連させて使用することは当業者の知識の範囲内である。
【0011】
用語「約」は、指定された値の±5%、10%又は20%の変動に言及し得る。例えば、「約50」%は、一部の実施形態において、45〜55%の変動を許容し得る。整数の範囲の場合、用語「約」は、挙げられたある整数より大きい及び/又は小さい1つ又は2つの整数を含み得る。本明細書において特に記載がない限り、用語「約」は、個々の成分、組成物又は実施形態の機能性の観点から同等である、挙げられた範囲に近似した値(例えば、質量%)を含むことを意図している。加えて、本明細書において特に記載がない限り、挙げられた範囲(例えば、質量%、炭素基数)には、その範囲内の具体的な個々の値、整数、小数又は単位元が含まれる。
【0012】
「1つ以上(one or more)」という言い回しは、特にその使用された文脈で読まれた場合に当業者によって容易に理解される。例えば、フェニル環上の1つ以上の置換基とは、1〜5個又は1、2、3若しくは4個の置換基、例えばフェニル環が二置換されることを意味する。
【0013】
用語「安定した化合物(stable compound)」及び「安定した構造体(stable structure)」は、反応混合物から有用な純度にまで単離することに耐えるに十分な強さの化合物を示す。典型的には、本発明においては安定した化合物を請求しているが、一部の不安定な化合物(例えば、容易に単離できない化合物)もまた有用であり、また例えば本明細書に記載の方法において利用することができる。
【0014】
本明細書で使用の用語「アルキル」とは、例えば1〜約20個の炭素原子、多くの場合は1〜約12個、1〜約6個又は1〜約4個の炭素原子を有する分岐又は非分岐炭化水素のことである。例には、以下に限定するものではないが、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−ブチル、2−メチル−2−プロピル(t−ブチル)、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−1−ブチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が含まれる。アルキルは無置換であり得る。あるいは、以下で説明するように1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5)置換基によって置換され得る。アルキルは、上で説明及び例示したように1価の炭化水素基であり得る。あるいは、アルキルは、2価の炭化水素基(すなわち、アルキレン)であり得る。
【0015】
用語「アルケニル」とは、分岐、非分岐又は環式の部分不飽和炭化水素鎖(すなわち、炭素−炭素、sp2二重結合を含むもの)のことである。一実施形態において、アルケニル基は、2〜10個の炭素原子、2〜6個の炭素原子又は2〜4個の炭素原子を有し得る。例には、以下に限定するものではないが、エチレン、ビニル、アリル、シクロペンテニル、5−ヘキセニル等が含まれる。アルケニルは無置換であり得る又は置換され得る。
【0016】
用語「アルキニル」とは、完全不飽和の地点を有する分岐又は非分岐炭化水素鎖(すなわち、炭素−炭素、sp三重結合を含むもの)のことである。一実施形態において、アルキニル基は、2〜10個の炭素原子又は2〜6個の炭素原子を有し得る。別の実施形態において、アルキニル基は、2〜4個の炭素原子を有し得る。この用語は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、1−オクチニル等の基によって例示される。アルキニルは無置換であり得る又は置換され得る。
【0017】
用語「シクロアルキル」とは、1つの環又は複数が縮合した環を有する3〜約10個の炭素原子の環状アルキル基のことである。このようなシクロアルキル基には、例として、単環構造体(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル等)又は複環構造体(アダマンタニル等)が含まれる。シクロアルキルは無置換であり得る又は置換され得る。シクロアルキル基は1価又は2価であり得て、またアルキル基に関して上で説明したように任意で置換され得る。シクロアルキル基は、芳香環が形成されない限り、任意で1つ以上の不飽和部位を含み得る。例えば、シクロアルキル基は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含み得て、例えばシクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン等である。
【0018】
用語「アルコキシ」とは基アルキル−O−のことであり、アルキルは本明細書で定義される通りである。一実施形態において、アルコキシ基には、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシ等が含まれる。アルコキシは無置換であり得る又は置換され得る。
【0019】
本明細書で使用の「アリール」とは、親芳香環系の1つの炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される芳香族炭化水素基のことである。ラジカルは、親環系の飽和又は不飽和炭素原子においてあり得る。アリール基は、6〜約20個の炭素原子を有し得る。アリール基は、1つの環(例えば、フェニル)又は複数の縮合した環を有し得て、少なくとも1つの環が芳香族である(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、アントリル)。典型的なアリール基には、以下に限定するものではないが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル等から誘導された基が含まれる。アリールは、アルキル基に関して上で説明したように、無置換であり得る又は任意で置換され得る。
【0020】
用語「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードのことである。同様に、用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のことである。
【0021】
用語「ヘテロアリール」とは、1、2又は3個の芳香環を含み且つ少なくとも1つの窒素、酸素又は硫黄原子を芳香環内に含む単環式、2環式又は3環式の環系のことである。ヘテロアリール環は無置換であり得る又は「置換される」の定義において上で説明したように、例えば1つ以上、特には1〜3個の置換基で置換され得る。典型的なヘテロアリール基は、1つ以上のヘテロ原子に加えて2〜10個の炭素原子を、例えば追加の環又はアルキル置換基として含む。ヘテロアリール基の例には、以下に限定するものではないが、2H−ピロリル、3H−インドリル、4H−キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β−カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル、インダゾリル、インドリシニル(indolisinyl)、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル(phenarsazinyl)、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル及びキサンテニルが含まれる。一実施形態において、用語「ヘテロアリール」は、炭素と、ペルオキシドではない酸素、硫黄及びN(Z)(Zは存在しない又はΗ、O、アルキル、アリール若しくは(C1〜C6(アルキル)アリールである)から独立して選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子とを含む5又は6個の環原子を含む単環式芳香環を示す。別の実施形態において、ヘテロアリールは、それらから誘導される約8〜10個の環原子のオルソ位で縮合された2環式複素環、特にはベンズ誘導体又はプロピレン、トリメチレン若しくはテトラメチレンジラジカルを縮合させることによって誘導される誘導体を示す。
【0022】
用語「複素環」とは、酸素、窒素及び硫黄の群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み且つ本明細書において「置換」という用語で定義されるように1つ以上の基によって任意で置換される飽和又は部分的に不飽和の環系のことである。複素環は、1つ以上のヘテロ原子を含む単環式、2環式又は3環式の基であり得る。複素環基は、環に結合したオキソ基(=O)又はチオキソ(=S)基も含み得る。複素環基の非限定的な例には、1,3−ジヒドロベンゾフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,4−ジチアン、2H−ピラン、2−ピラゾリン、4H−ピラン、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、モルホリン、ピペラジニル、ピペリジン、ピペリジル、ピラゾリジン、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジン、ピロリン、キヌクリジン及びチオモルホリンが含まれる。したがって、一部の実施形態において、複素環は、ヘテロアリール基であり得る。
【0023】
用語「複素環」は、例であって限定するものではないが、Leo A.PaquetteのPrinciples of Modern Heterocyclic Chemistry(W.A.Benjamin,New York,1968)、特にはその第1、3、4、6、7及び9章、The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A Series of Monographs(John Wiley&Sons,New York,1950〜現在)、特にはその第13、14、16、19及び28巻、並びにJ.Am.Chem.Soc.,82:5566(1960)に記載の複素環のモノラジカルを含み得る。一実施形態において、「複素環」には、本明細書で定義されるような「炭素環」が含まれ、1つ以上(例えば、1、2、3、4)の炭素原子はヘテロ原子(例えば、O、N、S)で置換されている。
【0024】
複素環の例には、例であって限定するものではないが、ジヒドロキシピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリ(indazoly)、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンズオキサゾリニル、イサチノイル(isatinoyl)及びビス−テトラヒドロフラニルが含まれる。
【0025】
例であって限定するものではないが、炭素結合複素環は、ピリジンの2、3、4、5若しくは6位、ピリダジンの3、4、5若しくは6位、ピリミジンの2、4、5若しくは6位、ピラジンの2、3、5若しくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール若しくはテトラヒドロピロールの2、3、4若しくは5位、オキサゾール、イミダゾール若しくはチアゾールの2、4若しくは5位、イソオキサゾール、ピラゾール若しくはイソチアゾールの3、4若しくは5位、アジリジンの2若しくは3位、アゼチジンの2、3若しくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7若しくは8位又はイソキノリンの1、3、4、5、6、7若しくは8位で結合される。炭素結合複素環には、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、5−ピリジル、6−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、6−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−ピラジニル、5−ピラジニル、6−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル等が含まれる。
【0026】
例であって限定するものではないが、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位及びカルバゾール又はβ−カルボリンの9位で結合され得る。一実施形態において、窒素結合複素環には、1−アジリジル、1−アゼテジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル及び1−ピペリジニルが含まれる。
【0027】
用語「炭素環」とは、単環として3〜8個の炭素原子、2環として7〜12個の炭素原子及び多環として最高約30個の炭素原子を有する飽和、不飽和又は芳香環のことである。単環式炭素環は、典型的には3〜6個の環原子、より典型的には5又は6個の環原子を有する。2環式炭素環は、7〜12個の環原子(例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系として配置される)又はビシクロ[5,6]若しくは[6,6]系として配置される9若しくは10個の環原子を有する。炭素環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキシ−1−エニル、1−シクロヘキシ−2−エニル、1−シクロヘキシ−3−エニル、フェニル、スピリル及びナフチルが含まれる。炭素環は任意で、アルキル基に関して上で説明したように置換され得る。
【0028】
用語「アルカノイル」又は「アルキルカルボニル」とは−C(=O)Rのことであり、Rは上で定義されるようなアルキル基である。
【0029】
用語「アシルオキシ」又は「アルキルカルボキシ」とは−O−C(=O)Rのことであり、Rは上で定義されるようなアルキル基である。アシルオキシ基の例には、以下に限定するものではないが、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ及びペンタノイルオキシが含まれる。上で定義されるようないずれのアルキル基を使用しても、アシルオキシ基を形成することができる。
【0030】
用語「アルコキシカルボニル」とは−C(=O)OR(又はCOOR)のことであり、Rは上で定義されるようなアルキル基である。
【0031】
用語「アミノ」とは−NH2のことである。アミノ基は任意で、用語「置換される」に関して本明細書において定義されるように置換され得る。用語「アルキルアミノ」とは−NR2のことであり、少なくとも1つのRはアルキルであり、第2のRはアルキル又は水素である。用語「アシルアミノ」とは−N(R)C(=O)Rのことであり、各Rは独立して水素、アルキル、アリール又は(アリール)アルキルである。
【0032】
用語「スルホ」とはスルホン酸部分又はスルホン酸部分の塩(例えば、スルホネート)のことである。同様に、「カルボキシ」とは、カルボン酸部分又はカルボン酸部分の塩のことである。用語「ホスフェート」とはリン酸のエステルのことであり、ホスフェート部分の塩を含む。用語「ホスホネート」とはホスホン酸部分のことであり、ホスホネート部分の塩を含む。本明細書での使用において、特に記載がない限り、置換基(アルキル、アルコキシ、アリールアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ペルフルオロアルキル等)のアルキル部は任意で飽和、不飽和、線状又は分岐していて、全てのアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ及びジアルキルアミノ置換基は、それら自体が任意でカルボキシ、スルホ、アミノ、ヒドロキシ又はこれらの組み合わせで更に置換される。
【0033】
保護基は当該分野で周知である。様々なタイプの保護基(アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ保護基等)が広く検討されてきている。例えば、T.W.GreeneのProtecting Groups In Organic Synthesis(Wiley,New York,Third Edition,1999)、その中で引用されている参考文献、D.VoetのBiochemistry(Wiley,New York,1990)、L.StryerのBiochemistry(3rd Ed.,W.H.Freeman and Co.,New York,1975)、J.MarchのAdvanced Organic Chemistry,Reactions,Mechanisms and Structure(2nd Ed.,McGraw Hill,New York,1977)、F.Carey及びR.SundbergのAdvanced Organic Chemistry,Part B:Reactions and Synthesis(2nd Ed.,Plenum,New York,1977)並びにその中で引用されている参考文献を参照のこと。具体的な有用な保護基には、例えばベンジル、ベンゾイル、アセチル、トリメチルシリル、テトラヒドロピラニル及びt−ブチルジフェニルシリル基が含まれる。
【0034】
用語「中断される(interrupted)」は、示された各原子の通常の原子価を超えず、また中断によって安定した化合物が得られるならば、用語「中断される」を使用した表現において言及される特定の炭素鎖の2つの隣接する炭素間又は末端炭素原子とその隣接する基との間に別の原子又は原子群を挿入することによってヘテロアルキル基を得ることを示す。例えば、中断された鎖とは、炭素鎖(アルキル基)内にエーテル結合が形成されるように2つの炭素間に酸素原子が挿入されていることを意味し得る。炭素鎖を中断し得る適切な基には、例えば1つ以上の非ペルオキシドオキシ(−O−)、チオ(−S−)、イミノ(−N(H)−)、メチレンジオキシ(−OCH2O−)、カルボニル(−C(=O)−)、カルボキシ(−C(=O)O−)、カルボニルジオキシ(−OC(=O)O−)、カルボキシラト(−OC(=O)−)、イミン(C=NH)、スルフィニル(SO)又はスルホニル(SO2)基が含まれる。アルキル基を、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、約6)の上記の適切な基によって中断することができる。中断の部位は、アルキル基の炭素原子とそのアルキル基が結合している炭素原子との間でもあり得る。特定の実施形態において、上述の基の1つ以上は実施形態から除外される。
【0035】
1つ以上の置換基を含む上記の基の全てに関して、当然のことながら、このような基が、立体的に実行不可能である及び/又は合成が実現不可能である置換又は置換パターンを含まないことがわかる。加えて、本発明の化合物は、これらの化合物の置換から生じる立体化学的異性体を全て含む。
【0036】
本発明の化合物が非対称的に置換された炭素原子を含み、また光学活性体又はラセミ体で単離され得ることがわかる。ラセミ体の分割又は光学的に活性な出発原料からの合成等による光学活性体の調製方法は、当該分野において周知である。全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体及びある構造体の全ての幾何異性体が、本発明の一部である。
【0037】
あるジアステレオマーは、他のものより優れた特性又は活性を示し得る。必要に応じて、ラセミ材料の分離を、キラルカラムを使用したHPLCによって又はTuckerらのJ.Med.Chem.,37:2437(1994)に記載されるようなカンフォニッククロリド(camphonic chloride)等の分割剤を使用した分割によって達成することができる。キラル化合物は、キラル触媒又はキラルリガンドを使用して直接合成することもできる(例えば、Huffman et al.,J.Org.Chem.,60:1590(1995))。
【0038】
本明細書で使用の用語「リンカー(linker)」は、2つの化学基を共有結合し、また酵素によって切断され得るその酵素のための基質若しくは別の分子を含み得る又は感光性であり得る原子鎖(典型的には、炭素鎖)である。この鎖は、1つ以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換された)芳香環若しくはペプチド結合によって任意で中断され得る及び/又はこれらの基の1つは、リンカーを形成する原子鎖の一端若しくは両端に生じ得る。多くのリンカーが当該分野において周知であり、本明細書に記載の化合物又は式を別の基(固体支持体、樹脂等)に連結するために使用することができる。例えば、Peptides:Chemistry and Biology,Wiley−VCH,Weinheim(2002),pp.212−223においてSewald及びJakubkeが、またOrganic Synthesis on Solid Phase,Wiley−VCH,Weinheim(2002)においてDorwaldが記載しているリンカー及び固体支持体を参照のこと。
【0039】
「有効量(effective amount)」とは概して、所望の効果をもたらす量を意味し、例えば反応をもたらすのに十分な量である。
【0040】
本明細書での使用において、「接触(contacting)」とは、触れる、接する又は密接若しくは近接させること(分子レベルでの接触を含む)によって、例えば化学反応又は物理的な変化を(例えば、溶液、細胞又はその他の反応混合物中で)起こさせる行為のことである。
【0041】
色素
本発明のカルボシアニン色素は概して、リンカー又はブリッジによって互いに結合された2つの複素環系を含み、一方の環系(A)は、任意で1つ以上の窒素原子を取り込む置換ベンズアゾリウム環(例えば、アザベンズアゾリウム環系を形成する)であり得る第1複素環系であり、第2の環系(B)は、任意で置換されるベンズアゾリウム又はアザベンズアゾリウム環系である複素環系であり得る。
【化3】

【0042】
これらの環系は、任意で置換されるメタン又はポリメチンリンカーで互いに連結される。第1及び第2の環系並びにリンカーは、任意で様々な置換基によって更に置換される。環系を、任意で更に置換される追加の環に縮合することもできる。本発明の一態様において、カルボシアニン色素は、インドリウム環系に付着させられる化学反応性基又はコンジュゲート物質を含む。一実施形態において、カルボシアニン色素を更にR1、R2及びR3で置換することによって、スルホ基、フルオロ又はスルホアルキル基によって1回以上置換される縮合ベンゾ環を形成する。
【0043】
上述したように、本発明の化合物は、式Iの化合物
【化4】

(I)
及び/又は式IIの化合物
【化5】

(II)
を含む。式中、各変数は上述した又は後述する通りである。
【0044】
式Iの化合物は、式IIIの化合物でもあり得る。
【化6】

(III)
式中、X1及びX2は、それぞれ独立してCH2、(CH22、(CH23、NH、O又はSであり、その他の各変数は、式Iに関して上述した又は後述する通りである。
【0045】
別の実施形態において、式IIIの化合物は、式IVの化合物でもあり得る。
【化7】

(IV)
式中、各変数は、式IIIに関して上述した又は後述する通りである。
【0046】
式Iの化合物は、式Vの化合物でもあり得る。
【化8】

(V)
式中、各Rは、独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、(アリール)アルキル、ヘテロアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、スルホ、−L−Rx、R2又はR7であり、その他の各変数は、式Iに関して上述した又は後述する通りである。1、2、3又は4個のR基が、R基で置換されたベンズ縮合環のそれぞれの上に存在し得る。
【0047】
式Iの化合物は、式VIの化合物でもあり得る。
【化9】

(VI)
式中、各Rは、独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、(アリール)アルキル、ヘテロアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、スルホ、−L−Rx、R2又はR7であり、その他の各変数は、式Iに関して上述した又は後述する通りである。1、2、3又は4個のR基が、R基で置換されたベンズ縮合環のそれぞれの上に存在し得る。
【0048】
式IIの化合物は、式VIIの化合物でもあり得る。
【化10】

(VII)
式中、X1及びX2は、それぞれ独立してCH2、(CH22、(CH23、NH、O又はSであり、その他の各変数は、式IIに関して上述した又は後述する通りである。式Iから式IV〜VIを得るために施した修飾を、式IIをベースとした対応する式を得るのに利用することもできる。図1及び2に図示の中間体から、式I及びIIの範囲内で調製することができる様々な化合物についての指標が更に得られる。
【0049】
様々な実施形態において、Rxは、化合物を対象の物質に連結して例えば標識物質を生成することができる反応性基であり得る。Rx基の例には、スクシンイミジル、スルホスクシンイミジル若しくは1−オキシベンゾトリアゾリル基に共有結合される−C(=O)O−基を含むカルボン酸の活性化エステル、−NH2、−OH、−SO2Cl、−SO2Br、−SH、−B(OH)2、−B(OR)2(Rはアルキル又はアリールである)、−O−P(N(アルキル)2)(O−アルキレン−CN)(例えば、−O−P(N(iPr)2)(OCH2CH2CN)基)、−N=C=O、−C(=O)−Cl、−C(=O)−Br、−C(=O)−I、−C(=O)−NHCl、−C(=O)−NHBr、−C(=O)−NHI、−C(=O)H、−N3、−C(=O)CN、マレイミド基、ジアジリニル基、アジドアリール基、プソラレン誘導体(例えば、3、4、5、8、4’、5’等の利用可能な炭素で又はその置換基の1つ若しくはリンカーを介して付着したアンゲリシン、キサントトキシン、ベルガプテン、ノダケネチン)、ベンゾフェノン(例えば、オルト、メタ又はパラ位の炭素でベンゾフェノンカルボニルに連結)、4−シアノベンゾチアゾール(例えば、酸素原子を介してベンゾチアゾール4’、5’、6’又は7’炭素で連結される)、(C1〜C7)アルキル−メチレンクロリド、(C1〜C7)アルキル−メチレンブロミド、(C1〜C7)アルキル−メチレンヨージド、−CO2H又は−SO3Hが含まれる。(C1〜C7)アルキル−メチレンハライド基の例には、エチルハライド、プロピルハライド、ブチルハライド、ペンチルハライド、ヘキシルハライド又はヘプチルハライド及びこれらの分岐誘導体が含まれる。
【0050】
一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立してH、ハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、スルホ又は(C1〜C8)スルホである。
【0051】
一実施形態において、W1は、式I又はIIのW1環のNに対してパラ位に−CH2−、−O−、−S−又は−NH−を有する6員環を形成する。別の実施形態において、W1は、式I又はIIのW1環内に、例えば式I又はIIのNから1、2、3、4又は5原子離れて−CH2−、−O−、−S−又は−NH−を含む7又は8員環を形成する。
【0052】
別の実施形態において、W2は、式I又はIIのW2環のNに対してパラ位に−CH2−、−O−、−S−又は−NH−を有する6員環を形成する。別の実施形態において、W2は、式I又はIIのW2環内に、例えば式I又はIIのNから1、2、3、4又は5原子離れて−CH2−、−O−、−S−又は−NH−を含む7又は8員環を形成する。
【0053】
一実施形態において、W1、W2又はその両方は、環の炭素上で−(CH2m−OH、−(CH2m−CO2H又は−(CH2m−Rx(mは1〜約12である)で置換される。
【0054】
一実施形態において、R1及びR2は、それらが結合している原子と共に縮合ベンゾ環を形成する。このベンゾ環は、1、2、3又は4個のアルキル、シクロアルキル、アリール、(アリール)アルキル、ヘテロアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、スルホ又は−L−Rx基で置換され得る。別の実施形態においては、R2及びR3が、このような縮合ベンゾ環を形成する。別の実施形態においては、R4及びR5が、このような縮合ベンゾ環を形成する。更に別の実施形態においては、R5及びR6が、このような縮合ベンゾ環を形成する。
【0055】
一実施形態において、各Yは、独立してCR77、S、O、CF2又はNR7である。別の実施形態において、各Yは、CR77、S、O、CF2又はNR7である。YがCR77の場合、Yの一方のR7はアルキル基(メチル等)であり得て、Yのもう一方のR7は−L−Rxであり得る。
【0056】
各Lは、独立して直接結合、又はリンカーであり、このリンカーは式−A−B−Z−の2価の基であり、各Aは、独立して直接結合、又は任意で1つ以上の不飽和を含み、任意で1つ以上のオキソ基で置換され、また任意で1つ以上のO原子によって中断される(C1〜C12)アルキル鎖である。O原子による中断は、基Aの2つの炭素原子の間、最初の炭素原子の前又は最後の炭素原子の後であり得る。各Bは、独立して直接結合、又は−NHC(=O)−、−C(=O)NH−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−若しくは−N(R8)−基であり、各R8は、独立してH、(C1〜C6)アルキル又は窒素保護基である。各Zは、独立して直接結合、又は任意で1つ以上の不飽和を含み、任意で1つ以上のオキソ基で置換され、また任意で1つ以上のO原子によって中断される(C1〜C20)アルキル鎖である。O原子によるこの中断は、基Zの2つの炭素原子の間、最初の炭素原子の前又は最後の炭素原子の後ろであり得る。
【0057】
一実施形態において、Lは、(C1〜C12)アルキル又は(C1〜C12)アルキル−B−(CH2CH2O)n(CH2m−であり、nは1〜6であり、mは1〜8であり、Bは−NHC(=O)−、−C(=O)NH−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−、−NH−又は直接結合である。別の実施形態においては、少なくとも1つのLは(C1〜C10)アルキル又は(C1〜C12)アルキル−C(=O)NH−(CH2CH2O)n(CH2m−であり、nは1〜6であり、mは1〜8である。
【0058】
別の実施形態において、各Bは、独立して直接結合又は−X−C(=Z)−X−であり得て、ZはO又はSであり、XはO、NH又はSである。Bの具体的な値には、O、S、NH、−O−C(=O)−、−NH−C(=O)−、−S−C(=O)−、−C=N−、カルボニル、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−S−、−O−C(=S)−O−、−O−C(=S)−NH−及び−O−C(=S)−S−が含まれ得る。
【0059】
別の実施形態において、各Lは、独立して直接結合又はリンカーであり、このリンカーは、式−Z−A−Z―の2価の基であり、各Zは、独立して−(CH2n−(nは1〜12である)、−N(R)C(=O)−、−C(=O)N(R)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−N(R)−、−C(=O)−又は直接結合であり、各Rは、独立してH、(C1〜C6)アルキル又は窒素保護基であり、Aは(C1〜C20)アルキル、(C2〜C16)アルケニル、(C2〜C16)アルキニル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C6〜C10)アリール、−(OCH2−CH2n−(nは1〜約20である)、−C(O)NH(CH2n(nは1〜約6である)又は2つの炭素間若しくは炭素と酸素との間で(C3〜C8)シクロアルキル若しくは(C6〜C10)アリール基で中断される−(C1〜C20)アルキル、(C2〜C16)アルケニル、(C2〜C16)アルキニル若しくは−(OCH2〜CH2n−である。
【0060】
特定の実施形態において、連結基Lは式W−Aの2価の基であり得て、Aは(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C3〜C8)シクロアルキル又は(C6〜C10)アリールであり、Wは−N(R)C(=O)−、−C(=O)N(R)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−N(R)−、−C(=O)−又は直接結合であり、各Rは、独立してH、(C1〜C6)アルキル又は保護基であり、連結基Lは、反応性基Rxと式I又はIIの図示の部分とを連結する。
【0061】
一部の実施形態において、連結基Lは、任意で1つ以上の(例えば、1、2、3、4、1〜5、1〜6)ハロ、ヒドロキシ、オキソ、(C1〜C6)アルキル又は(C1〜C6)アルコキシで置換され、また任意で1つ以上の(例えば、1、2、3、4、1〜5、1〜6)N(R1)、O、S又は−N−C(=O)−基で中断される(C1〜C16)アルキルを含む連結基であり得る。用語「任意で中断される(optionally interrupted)」とは、連結基の1つ以上(例えば、1、2、3、4、1〜5、1〜6)の炭素原子(連結基の一方又は両方の末端炭素を含む)を、O、N(R1)、S又は−N−C(=O)−基で置き換えできることを意味し得る。一部の実施形態において、Lは、例えばRxがアジド(N3)の場合、任意で不在であり得る。一部の実施形態において、Lは、−(C1〜C6)アルキル−、−O−(C1〜C6)アルキル−、−O−(C1〜C6)アルキル−O−、−O−(C1〜C6)アルキル−NH−、−O−(C1〜C6)アルキル−(CO)NH−、−NH−(C1〜C6)アルキル−NH−、−NH−(CO)(C1〜C6)アルキル−NH−、−NH−(CO)(C1〜C6)アルキル−(CO)−NH−又は−O−(C1〜C6)アルキル−(CO)NH−(C1〜C6)アルキル−であり得る。
【0062】
一部の実施形態において、各R7は、独立してH、(C1〜C8)アルキル、アリール、(アリール)アルキル又は−L−Rxである。
【0063】
一実施形態において、式IIのR9は、−OPh−CO2H、−OPh−NH−(C1〜C12)アルキル−Rx又は−OPh−C(=O)NH−(CH2CH2O)n(CH2m−Rx(nは1〜6であり、mは1〜8である)である。
【0064】
一実施形態において、式IIのmは1である。別の実施形態において、mは0である。
【0065】
一実施形態において、式Iのnは1又は2である。別の実施形態において、nは0である。
【0066】
一実施形態において、2、3又は4個の−L−Rx基が式I又はIIの化合物中に存在する。
【0067】
一実施形態において、式I又は式IIはカチオン性であり、化合物は対イオン、例えば無機アニオン(ハロアニオン、サルフェートアニオン、ハロサルフェートアニオン等)を含む。別の実施形態において、対イオンは有機アニオン(カーボネート、アセテート、トリフルオロアセテート等)である。一部の実施形態において、式I及び/又は式IIは全体として中性である。このような場合、対イオンは、任意で、分子上で荷電基と共に存在し得る。
【0068】
一実施形態において、化合物は
5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムトリフルオロアセテート(3525)、
6−(6−((2−シアノエトキシ)(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノオキシ)ヘキシル)−5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(3742)、
(E)−2−((2E,4E)−5−(6−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−6−メチル−7−スルホ−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン)−1,1−ジメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−9−スルホネート(3526)、
6−(25−クロロ−6−オキソ−10,13,16,19−テトラオキサ−7−アザペンタコシル)−5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−9−スルホ−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(3665)、
5−((1E,3E)−3−((E)−2−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)−6−ヒドロキシヘキシ−1−エニル)−6,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(3688)、
(E)−2−((E)−3−((E)−2−(6,6−ジメチル−7−スルホ−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ビニル)−6−ヒドロキシヘキシ−2−エニリデン)−1,1−ジメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−9−スルホネート(3786)、
5−((1E,3E)−3−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−6−(6−ヒドロキシヘキシル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(3785)、
ナトリウム−2−((1E,3Z)−3−(1−(5−カルボキシペンチル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(3845)、
ナトリウム2−((1E,3Z)−3−(1−(6−(2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エチルアミノ)−6−オキソヘキシル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(3838)、
6−((Z)−5−((2E,4E)−5−(6,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロベンゾ[f]ピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン)−6−メチル−2,3,5,6−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[f]ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−6−イル)ヘキサノエート(3846)、
ナトリウム2−((1E,3E,5Z)−5−(1−(6−(2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エチルアミノ)−6−オキソヘキシル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(3847)、
ナトリウム5−((1E,3E,5Z)−5−(1−(5−カルボキシペンチル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−6−(4−スルホナトブチル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(3848)、
ナトリウム5−((E)−2−((E)−2−(4−カルボキシフェノキシ)−3−((E)−2−(1−メチル−9−スルホナト−1−(4−スルホナトブチル)−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキシ−1−エニル)ビニル)−6−メチル−6−(4−スルホナトブチル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(3855)、
ナトリウム2−((E)−2−((E)−2−(4−(2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エチルカルバモイル)フェノキシ)−3−((E)−2−(1−メチル−9−スルホナト−1−(4−スルホナトブチル)−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキシ−1−エニル)ビニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(3856)又は
5−((E)−2−((E)−3−((Z)−2−(1−(25−クロロ−6−オキソ−10,13,16,19−テトラオキサ−7−アザペンタコシル)−1−メチル−9−スルホ−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)−2−(4−スルホフェノキシ)シクロヘキシ−1−エニル)ビニル)−6−メチル−6−(4−スルホブチル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(3921)
である。
【0069】
反応性色素のコンジュゲート
本発明の一実施形態において、色素は少なくとも1つの基−L−Rxを含み、Rxは、共有結合Lによって色素に付着させられる反応性基である。一部の実施形態において、色素は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の−L−Rx基を含み、各Rxは、共有結合Lによって色素に付着させられるスルホ基又は反応性基であり得る。特定の実施形態において、色素をRxに付着させている共有結合は、スペーサーとしての役割を果たす複数の介在原子を含む。反応性基(Rx)を有する色素は、適切な反応性を備えた官能基を含む又は含むように修飾された幅広い様々な有機又は無機物質を標識し、−L−Scで表わされるコンジュゲートされた物質(Sc)の化学的な付着がもたらされる。本明細書で使用の用語「反応性基(reactive group)」には、別の化合物の官能基と化学的に反応して共有結合を形成可能な化合物上の部分が含まれる。典型的には、反応性基は、それぞれ求核性又は求電子性である対応する官能基への曝露によって共有結合を形成し得る求電子性体又は求核性体である。あるいは、反応性基は光活性化性基であり、適当な波長の光の照射によってはじめて化学的に反応性となる。典型的には、反応性色素とコンジュゲートさせる物質との間でのコンジュゲーション反応によって、反応性基Rxの1つ以上の原子が、色素をコンジュゲート物質Scに付着させている新しい結合Lに取り込まれる。反応性基及び結合の選択された例を表1に示す。求電子性基及び求核性基の反応によって共有結合が形成される。
【0070】
表1:有用な共有結合を得る幾つかのルートの例
【表1】



*活性化エステルは、当該分野で理解されるように、一般に式−COΩを有し、Ωは適切な脱離基である。
**アシルアジドは、イソシアネートに転位することもできる。
【0071】
適切な脱離基は当該分野で周知であり、またスクシンイミジルオキシ(−OC442)、スルホスクシンイミジルオキシ(−OC432SO3H)、−1−オキシベンゾトリアゾリル(−OC643)、アリールオキシ基、活性化アリールエステルを形成するために使用される電子求引置換基(ニトロ、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、これらの組み合わせ等)によって1回以上置換されるアリールオキシ又は無水物若しくは混合無水物−OCORa若しくは−OCNRaNHRb(同一又は異なり得るRa及びRbはC1〜C6アルキル、C1〜C6ペルフルオロアルキル、C1〜C8アルコキシ、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル)、N,N−ジアルキルアミノアルキル(例えば、3−ジメチルアミノ−プロピル)又はN−モルホリノエチルである)を形成するためにカルボジイミドによって活性化されるカルボン酸等の基が含まれる。
【0072】
共有結合Lは、反応性基Rx又はコンジュゲート物質Scを化合物に直接(Lは単結合である)又は安定した化学結合の組み合わせ(任意で、一重、二重、三重又は芳香族炭素−炭素結合、炭素−窒素結合、窒素−窒素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、リン−酸素結合、リン−窒素結合、窒素−白金結合を含む)でもって結合する。Lは、典型的にはエーテル、チオエーテル、カルボキサミド、スルホンアミド、ウレア、ウレタン又はヒドラジン部分を含む。L部分は、C、N、O、P及びSから成る群から選択される1〜20個の水素ではない原子を有し得て、またエーテル、チオエーテル、アミン、エステル、カルボキサミド、スルホンアミド、ヒドラジド結合及び芳香族又はヘテロ芳香族結合のいずれの組み合わせからも構成され得る。
【0073】
一実施形態において、Lは、炭素−炭素単結合とカルボキサミド又はチオエーテル結合との組み合わせである。一実施形態において、結合Lの最も長い線状セグメントは、1又は2個のヘテロ原子を含め、4〜10個の水素ではない原子を含み得る。Lの例には、置換又は非置換ポリメチレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリーレンアルキル又はアリールチオが含まれる。一実施形態において、Lは1〜6個の炭素原子を含み得る。別の実施形態において、Lはチオエーテル結合及び1〜6個の炭素原子を含み得る。更に別の実施形態において、Lは、式−(CH2d(CONH(CH2ez’−、−(CH2d(CON(CH24NH(CH2ez’−、−(CH2d(CONH(CH2eNH2z’−若しくは−(CH2d(CONH(CH2eNHCO)z’−である又はこの式を有し、dは0〜5であり、eは1〜5であり、z’は0又は1である。
【0074】
色素をコンジュゲート対象の物質に付着させるのに使用する反応性基の選択は、典型的には、コンジュゲート対象の物質上の官能基及び所望の共有結合のタイプ又は長さに左右される。有機又は無機物質上に典型的に存在する官能基には、以下に限定するものではないが、アミン、アミド、チオール、アルコール、フェノール、アルデヒド、ケトン、ホスフェート、イミダゾール、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、二置換アミン、ハライド、エポキシド、カルボキシレートエステル、スルホネートエステル、プリン、ピリミジン、カルボン酸、オレフィン結合又はこれらの基の組み合わせが含まれる。物質上では、単一のタイプの反応部位を利用し得る(多糖に典型的)又はタンパク質に典型的であるように様々な反応部位が生じ得る(例えば、アミン、チオール、アルコール、フェノール)。コンジュゲート物質は、2種以上の色素(同一又は異なり得る)にコンジュゲートされ得る。あるいは、コンジュゲート物質は、ハプテン(ビオチン等)によって更に修飾される物質にコンジュゲートされ得る。反応条件を注意深く制御することによって幾らかの選択性を得るられるものの、標識の選択性は、適当な反応性色素の選択によって最も良好に得られる。
【0075】
典型的には、Rxは、アミン、チオール、アルコール、アルデヒド又はケトンと反応する。一実施形態において、Rxは、アミン又はチオール官能基と反応する。一実施形態において、Rxは、アクリルアミド、反応性アミン(カダベリン(−NH(CH25NH2)、エチレンジアミン(−NH(CH22NH2)を含む)、カルボン酸の活性化エステル(典型的には、カルボン酸のスクシンイミジルエステル)、アシルアジド、アシルニトリル、アルデヒド、アルキルハライド、無水物、アニリン、アリールハライド、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン(ヒドラジドを含む)、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ホスホルアミダイト、反応性白金錯体、スルホニルハライド又はチオール基である。用語「反応性白金錯体(reactive platinum complex)」とは、米国特許第5580990号、第5714327号及び第5985566号明細書に記載されるもの等の化学反応性の白金錯体のことである。
【0076】
反応性基が光活性化性基(アジド、ジアジリニル、アジドアリール、プソラレン誘導体等)である場合、色素は、適当な波長の光の照射によってはじめて化学反応性となる。
【0077】
xがカルボン酸の活性化エステルの場合、反応性色素は、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド又はハプテンの色素コンジュゲートの調製に有用であり得る。Rxがマレイミド又はハロアセトアミドの場合、反応性色素は、チオール含有物質へのコンジュゲーションに有用であり得る。Rxがヒドラジドの場合、反応性色素は、ペルヨーデート(periodate)酸化炭水化物及び糖タンパク質へのコンジュゲーションに有用であり得て、加えて、細胞のマイクロインジェクションのためのアルデヒド固定性極性トレーサーであり得る。
【0078】
一実施形態において、Rxは、カルボン酸、カルボン酸のスクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアネート、マレイミド基、脂肪族アミン、ペルフルオロベンズアミド、アジドペルフルオロベンズアミド基又はプソラレンである。一実施形態において、Rxは、カルボン酸のスクシンイミジルエステル、マレイミド、ヨードアセトアミド又は反応性白金錯体である。一実施形態において、Rxは、反応性白金錯体又はカルボン酸のスクシンイミジルエステルである。Rxが反応性白金錯体の場合、典型的にはハロプラチネート又は硝酸白金である。
【0079】
上記の属性に基づいて、本発明の適当な反応性色素を、所望の色素コンジュゲートの調製のために選択する。
【0080】
有用な色素コンジュゲートには、以下に限定するものではないが、Scが抗原、ステロイド、ビタミン、薬剤、ハプテン、代謝産物、毒素、環境汚染物質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、核酸高分子(オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド)、炭水化物、脂質、イオン錯化部分、又はガラス、プラスチック若しくはその他の非生体高分子であるコンジュゲートが含まれる。Scは、細胞(動物の細胞、植物の細胞、細菌、酵母、プロテスト(protest)等)又は細胞内粒子(例えば、ウィルス粒子又はその構成要素、細菌又は真核細胞の細胞内構成要素)であり得る。反応性色素は、細胞表面、細胞膜、細胞小器官又は細胞質で官能基を標識し得る。
【0081】
一実施形態において、Scは、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、チラミン、多糖、イオン錯化部分、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ハプテン、プソラレン、薬剤、ホルモン、脂質、脂質集合体、高分子、高分子微粒子、生体細胞又はウィルスである。一実施形態において、Scは、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。本発明の色素をこのような生体高分子にコンジュゲートさせる場合、1生体高分子あたり2つ以上の色素分子を取り込ませることによって、蛍光シグナルを増大させ得る。例えば、抗体1分子あたり少なくとも4個の色素分子をコンジュゲートさせ得る。本発明の標識コンジュゲートの蛍光は、本明細書に記載の式の入手可能なコンジュゲートに対して少なくとも2倍強い蛍光を示し得る。
【0082】
一実施形態において、Scは、リガンド、ハプテン(ビオチン等)、フェノール(チラミン等)又は西洋ワサビペルオキシダーゼのための基質として有用な分子である。
【0083】
一実施形態において、Scは生体高分子、例えば、少なくとも第2の非蛍光又は蛍光色素(例えば、任意で本発明の追加の色素)でも標識されることによってエネルギー移動対を形成するペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。本発明の一部の態様において、標識コンジュゲートは酵素基質として機能し、また酵素加水分解がエネルギー移動を断つ。あるいは、Scは蛍光又は非蛍光色素、任意で本発明の追加の色素であり、その色素コンジュゲートは、内部エネルギー移動による大きなストークスシフトを示す標識錯体を形成し(米国特許第6008373号明細書に記載)、この錯体は、有機又は無機物質を標識するのに有用である。
【0084】
一実施形態において、Scはアミノ酸(保護された又はホスフェート、炭水化物若しくはC1〜C22カルボン酸で置換されたものを含む)である又はアミノ酸の高分子(ペプチド、タンパク質等)である。一実施形態において、ペプチドのコンジュゲートは、少なくとも5個のアミノ酸(例えば、5〜36個のアミノ酸)を含有する。例示的なペプチドには、以下に限定するものではないが、ニューロペプチド、サイトカイン、毒素、プロテアーゼ基質及びタンパク質キナーゼ基質が含まれる。例示的なタンパク質コンジュゲートには、酵素、抗体、レクチン、糖タンパク質、ヒストン、アルブミン、リポタンパク質、アビジン、ストレプトアビジン、タンパク質A、タンパク質G、フィコビリタンパク質、他の蛍光タンパク質、ホルモン、毒素、ケモカイン及び増殖因子が含まれる。一実施形態において、コンジュゲートタンパク質はフィコビリタンパク質、例えばアロフィコシアニン、フィコシアニン、フィコエリトリン、アロフィコシアニンB、B−フィコエリトリン、フィコエリスロシアニン及びb−フィコエリトリン(例えば、米国特許第5714386号明細書を参照のこと)である。一実施形態において、R−フィコエリトリンの本発明の選択された色素とのコンジュゲート及びアロフィコシアニンの本発明の選択された色素とのコンジュゲートは、励起状態エネルギーアクセプター又はドナーとしての役割を果たす。これらのコンジュゲートにおいて、励起状態エネルギー移動は、比較的短い波長で励起させた場合、長い波長の蛍光発光をもたらし得る。本発明の別の態様において、コンジュゲートタンパク質は、抗体、抗体フラグメント、アビジン、ストレプトアビジン、毒素、レクチン、ホルモン、ケモカイン又は増殖因子である。コンジュゲート物質が毒素の場合、それはニューロペプチド又はファロトキシン(ファロイジン等)であり得る。
【0085】
別の実施形態において、Scは、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであり、本発明の色素の付着のための追加のリンカー又はスペーサー、例えばアルキニル結合(米国特許第5047519号明細書に記載)、アミノアリル結合(米国特許第4711955号明細書に記載)、ヘテロ原子置換リンカー(米国特許第5684142号明細書に記載)又はその他の結合を有するように修飾されたものを含む。別の実施形態において、コンジュゲート物質は、プリン又はピリミジン塩基をホスフェート又はポリホスフェート部分に非環状スペーサーを介して連結するヌクレオシド又はヌクレオチド類似体である。別の実施形態において、色素は、ヌクレオチド又はヌクレオシドの炭水化物部分に典型的にはヒドロキシル基を介して、ただし任意で更にチオール又はアミノ基を介して(米国特許第5659025号、5668268号、第5679785号明細書を参照のこと)コンジュゲートされる。典型的には、コンジュゲートヌクレオチドは、ヌクレオシドトリホスフェート、デオキシヌクレオシドトリホスフェート又はジデオキシヌクレオシドトリホスフェートである。
【0086】
メチレン部分又は窒素若しくは硫黄ヘテロ原子のホスフェート又はポリホスフェート部分への取り込みも有用である。プリン以外及びピリミジン以外の塩基、例えば7−デアザプリン(米国特許第6150510号)及びこのような塩基を含む核酸も、本発明の色素と結合させることができる。脱プリン化核酸とアミン、ヒドラジド又はヒドロキシルアミン誘導体との反応によって調製される核酸付加物によって、核酸を標識及び検出する更なる手段が得られる(例えば、Atamna et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:686(2000))。
【0087】
ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、1本鎖若しくは複数本鎖の天然若しくは合成のDNA若しくはRNAを含み得る又はDNA/RNAハイブリッドの一部を形成し得る又はモルホリン誘導ホスフェート等のリンカー(AntiVirals社、コーバリス、オレゴン)若しくはペプチド核酸(N−(2−アミノエチル)グリシン単位等)を取り込み得る。コンジュゲートがオリゴヌクレオチドを含む場合、コンジュゲートは典型的には50個より少ない、より典型的には25個以下のヌクレオチドを含む。ペプチド核酸(PNA)のコンジュゲート(米国特許第5539082号)は概して、より速いハイブリダイゼーション率を有する。
【0088】
蛍光オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドプライムドDNA重合を利用して標識ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドから調製され得る(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、プライマー伸長法又は標識ヌクレオチドの核酸高分子の3’末端へのターミナルトランスフェラーゼ触媒的付加によって)。蛍光RNA高分子は、転写によって標識ヌクレオチドから調製され得る。典型的には、色素を、アミド、エステル、エーテル又はチオエーテル結合によって1つ以上のプリン又はピリミジン塩基を介して付着させる。あるいは、色素を、エステル、チオエステル、アミド、エーテル又はチオエーテルである結合によってホスフェート又は炭水化物に付着させる。あるいは、本発明の色素コンジュゲートは、ハプテン(ビオチン、ジゴキシゲニン等)で又は酵素(アルカリ性ホスフェート等)に又はタンパク質(抗体等)に同時に標識され得る。本発明のヌクレオチドコンジュゲートは、DNAポリメラーゼによって容易に取り込まれ、またin situハイブリダイゼーション及び核酸シークエンシングに使用することができる(米国特許第5332666号、第5171534号、第4997928号、国際公開第94/05688号)。
【0089】
本発明の一態様において、オリゴヌクレオチドは脂肪族アミンを取り込み、続いて本発明のアミン反応性色素にコンジュゲートされる。あるいは、チオール又はチオホスフェートを取り込み、続いて本発明のチオール反応性色素にコンジュゲートされる。本発明の更に別の態様において、オリゴヌクレオチドのプリン塩基は、本発明の色素に結合した反応性金属錯体(例えば、白金錯体)と反応し、色素コンジュゲートが形成される。本発明の色素の核酸コンジュゲートは、同様の構造のカルボシアニン色素のものより優れたスペクトル特性を有し得る。
【0090】
一実施形態において、本発明のコンジュゲートオリゴヌクレオチドは、特定の標的分子(代謝産物、色素、ハプテン、タンパク質等)にとってのアプタマーである。すなわち、オリゴヌクレオチドは、標的分子に結合するように選択されている。所定の標的分子のためのアプタマーを調製及びスクリーニングするための方法はこれまでに記載されていて、当該分野で既知である(例えば、米国特許第5567588号)。
【0091】
別の実施形態において、コンジュゲート物質(Sc)は、典型的には多糖(デキストラン等、FICOLL(登録商標)多糖、ヘパリン、グリコーゲン、アミロペクチン、マンナン、イヌリン、スターチ、アガロース、セルロース等)である炭水化物を含む。あるいは、この炭水化物は、リポ多糖を含む多糖である。例示的な多糖コンジュゲートは、デキストラン、FICOLL(登録商標)多糖又はリポ多糖コンジュゲートである。
【0092】
別の実施形態において、コンジュゲート物質(Sc)は、脂質(典型的には6〜60個の炭素を有する)を含み、脂質には、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質及びステロイドが含まれる。あるいは、コンジュゲート物質は、脂質集合体(リポソーム等)を含む。米国特許第5208148号明細書に記載されるように、親油性部分を使用してコンジュゲート物質を細胞内に留め得る。本発明の特定の極性色素もまた、脂質集合体内に捕捉され得る。
【0093】
別の実施形態において、コンジュゲート物質(Sc)は、シアノベンゾチアゾール部分を含む。特定の実施形態において、シアノベンゾチアゾール部分は式(VIII):
【化11】

(VIII)
を有する。
【0094】
式(III)において、変数Zは、H、F、Cl、Br、I、CN、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルエステル(例えば、−CO2(アルキル))、カルボキシ、カルボン酸塩、アルキルアミド(−C(=O)NH(アルキル))、ホスフェート(−OPO(OH)2)、アルキルホスホネート、サルフェート(−OSO3H)、アルキルスルホネート、ニトロ又は任意で無置換である及び任意でアミノ、ヒドロキシ、オキソ(=O)、ニトロ、チオール若しくはハロで置換される(C1〜C10)アルキルであり得る。基Zは、シアノベンゾチアゾールの4’、5’又は7’位に位置し得る。特定の実施形態において、Zは、7’位に位置する。
【0095】
式(III)において、R1は、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ又は(C1〜C6)アルキルチオであり得て、各アルキル、アルコキシ又はアルキルチオは、任意でF、Cl、Br、I、アミノ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルスルホネート又はCO2Mで置換され、Mは、H、有機カチオン又は無機カチオンであり、nは0、1又は2である。基又は基R1は、シアノベンゾチアゾールの4’、5’又は7’位に位置し得る。特定の実施形態において、Zは7’位に位置し得る。
【0096】
式(III)において、基Yは、任意で1つ以上(例えば、1、2、3、4、1〜5、1〜6)のハロ、ヒドロキシ、オキソ、(C1〜C6)アルキル又は(C1〜C6)アルコキシで置換され、また任意で1つ以上(例えば、1、2、3、4、1−5、1〜6)のN(R1)、O、S又は−N−C(=O)−基で中断される(C1〜C16)アルキルを含む連結基であり得て、あるいはYは不在であり得る。用語「任意で中断される」とは、連結基の1つ以上(例えば、1、2、3、4、1〜5、1〜6)の炭素原子(連結基の一方又は両方の末端炭素を含む)を、O、N(R1)、S又は−N−C(=O)−基で置き換えることができることを意味する。一部の実施形態において、Yは任意で不在であり得て、例えばXがアジド(N3)の場合である。例えば、一部の実施形態において、Yは、−(C1〜C6)アルキル−、−O−(C1〜C6)アルキル−、−O−(C1〜C6)アルキル−O−、−O−(C1〜C6)アルキル−NH−、−O−(C1〜C6)アルキル−(CO)NH−、−NH−(C1〜C6)アルキル−NH−、−NH−(CO)(C1〜C6)アルキル−NH−、−NH−(CO)(C1〜C6)アルキル−(CO)−NH−又は−O−(C1〜C6)アルキル−(CO)NH−(C1〜C6)アルキル−であり得る。
【0097】
イオン錯化部分を有するコンジュゲートは、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、カリウム又はその他の生物学的に重要な金属イオンにとっての指標としての役割を果たし得る。例示的なイオン錯化部分は、クラウンエーテル(米国特許第5405975号)、1,2−ビス−(2−アミノフェノキシエタン)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸の誘導体(BAPTAキレート化剤、米国特許第5453517号、第5516911号、第5049673号)、2−カルボキシメトキシアニリン−N,N−二酢酸の誘導体(APTRAキレート化剤、Am.J.Physiol.,256:C540(1989))、ピリジン−及びフェナントロリン系金属キレート化剤(米国特許第5648270号)又はニトリロ三酢酸の誘導体(McMahanらのAnal.Biochem.,236:101(1996)を参照のこと。参照により本明細書に組み込まれる)である。一実施形態において、イオン錯化部分は、クラウンエーテルキレート化剤、BAPTAキレート化剤、APTRAキレート化剤又はニトリロ三酢酸である。
【0098】
非生物材料のその他のコンジュゲートには、有機若しくは無機高分子、高分子フィルム、高分子ウェハ、高分子膜、高分子粒子又は高分子微粒子(磁気及び非磁気マイクロスフィア、鉄、金又は銀の粒子、導電性及び非導電性の金属及び非金属、ガラス及びプラスチック表面及び粒子を含む)の色素コンジュゲートが含まれる。コンジュゲートは任意で、高分子を調製しながらの、適当な官能性を有する色素の共重合又は適切な化学反応性を備えた官能基を有する高分子の化学修飾によって調製される。高分子の色素コンジュゲートの調製に有用なその他のタイプの反応には、アルケンの触媒重合又は共重合、ジエンのジエノフィルとの反応、エステル交換反応又はアミノ交換反応が含まれる。別の実施形態において、コンジュゲート物質はガラス又はシリカであり、光ファイバー又はその他の構造体に形成され得る。
【0099】
本発明の一態様において、Scは、抗体(無傷抗体、抗体フラグメント、抗体血清等を含む)、アミノ酸、アンジオスタチン、エンドスタチン、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン(例えば、アミドビオチン、ビオサイチン、デスチオビオチン等)、血液成分タンパク質(例えば、アルブミン、フィブリノゲン、プラスミノーゲン等)、デキストラン、酵素、酵素阻害剤、IgG−結合タンパク質(例えば、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G等)、蛍光タンパク質(例えば、フィコビリタンパク質、エクオリン、緑色蛍光タンパク質等)、増殖因子、ホルモン、レクチン(例えば、小麦胚芽凝集素、コンカナバリンA等)、リポ多糖、金属結合タンパク質(例えば、カルモジュリン等)、微生物及びその一部(例えば、細菌、ウィルス、酵母等)、ニューロペプチド及びその他の生物学的活性因子(例えば、デルモルフィン、デルトロピン(deltropin)、エンドモルフィン、エンドルフィン、腫瘍壊死因子等)、非生体微粒子(例えば、磁性流体、金、ポリスチレン等の)、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド毒素(例えば、アパミン、ブンガロトキシン、ファロイジン等)、リン脂質結合タンパク質(例えば、アネキシン等)、小分子薬剤(例えば、メトトレキサート等)、構造タンパク質(例えば、アクチン、フィブロネクチン、ラミニン、微小管結合タンパク質、チューブリン等)又はチラミドを含む。
【0100】
一実施形態において、生体高分子(ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド等)のコンジュゲートを、少なくとも第2の蛍光又は非蛍光色素(任意で、本発明の追加の色素である)でも標識することによって、エネルギー移動対を形成する。本発明の一部の態様において、標識コンジュゲートは酵素基質として機能し、酵素加水分解によってエネルギー移動が断たれる。あるいは、コンジュゲート物質それ自体が、任意で本発明の追加の色素である蛍光又は非蛍光色素であり、内部エネルギー移動による大きなストークスシフトを示す標識錯体を形成する(米国特許第6008373号に記載)。本発明の別の実施形態において、本発明の色素を取り込むエネルギー移動対は、そのヘアピン立体配座において効率的な蛍光クエンチング(いわゆる、TyagiらのNature Biotechnology,16:49(1998)に記載の「分子ビーコン」)又は蛍光エネルギー移動を示すオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされる。
【0101】
反応性色素を使用した色素コンジュゲートの調製は、例えばR.HauglandのMolecular Probes Handbook Of Fluorescent Probes And Research Chemicals,Chap.1−3(1996)及びBrinkleyのBioconjugate Chem.,3,2(1992)に詳細に記載されている。コンジュゲートは、典型的には、適当な反応性色素及びコンジュゲート対象の物質を、その両方が可溶である適切な溶媒中で混合することによって得られる。本発明の色素は水溶液に易溶性であり得て、殆どの生物材料とのコンジュゲーション反応を促進する。光活性化される反応性色素に関しては、コンジュゲーションには、反応性色素を活性化させるために反応混合物の光照射が必要とされる。
【0102】
特異的結合対の標識されたメンバーは、典型的にはその特異的結合対の相補的メンバーの蛍光プローブとして使用され、各結合対メンバーは、もう一方の特定の空間的及び極性組織に特異的に結合し且つ相補的である領域を表面又は空洞内に有する。例示的な特異的結合対メンバーは、低分子量リガンド(ビオチン等)に非共有結合で結合するタンパク質、薬剤−ハプテン及び蛍光色素(抗フルオレセイン抗体等)である。代表的な特異的結合対を表2に示す。
【0103】
表2:代表的な特異的結合対
【表2】

*:IgGは免疫グロブリンである。
†:aDNA及びaDNAはハイブリダイゼーションに使用されるアンチセンス(相補的)鎖である。
【0104】
一般的な準備方法
色素及び色素コンジュゲート、例えば本明細書に記載の化合物によって、複合混合物中の対象の分子を、反応性基Rxとの反応後に検出することができる。この反応性基は、本明細書に記載の合成法によって又は当業者に周知の技法によって、式I又は式IIの対応する前駆体に追加され得る。例えば、反応性基のコア分子への付着を、幾つかのタイプの化学修飾によって達成することができる。Greg T.HermansonのBioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,CA(1996)を参照のこと。本明細書に記載の化合物の調製に使用され得る一般的な合成方法に関する更なる情報は、Michael B.Smith及びJerry MarchのMarch’s Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms,and Structure,5th Ed,John Wiley&Sons,Publishers(2001)及びWutsらのProtective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley&Sons,Publishers(1999)を参照のこと。
【0105】
本発明の化合物の調製方法によって、一部のケースにおいて異性体が生成される場合がある。本発明の方法ではこれらの異性体の分離を常に必要とするものではないが、必要に応じて、このような分離を、当該分野で既知の方法によって達成し得る。例えば、分取高速液体クロマトグラフィ法を、例えばキラル充填剤を充填したカラムを使用して、異性体の精製に使用し得る。
【0106】
連結基
連結基Lの末端に反応性基を形成することによって式I又はIIの化合物を生成する一般的な方法は、当該分野で周知である。このような変換(例えば、「連結(linking)」反応又は「カップリング」反応)、標準的な技法である。様々なRx基の連結基へのカップリングに使用さえる技法は、Hermanson’s Bioconjugate Techniques等の標準的なハンドブック中に見出すことができる。当然のことながら、当業者なら、適当なRxと対応する式−Lとの間での反応だけではなく、−L−Rxと適切に官能化された式I又はII前駆体(例えば、適切な求電子性体又は求核性体を有する前駆体等)との間での反応によっても式I及びIIの化合物を調製できることが認識できる。連結基上の第1級ヒドロキシル基をトルエンスルホニル基等の脱離基に転化することができ、次にその基を求核性体(例えば、脱プロトン化6’−ヒドロキシシアノベンゾチアゾール)で置換することができる。シアノベンゾチアゾール−リンカー基を形成する具体例は、Zhou(J.Amer.Chem.Soc.2006,128(10),3122を参照のこと)によって記載されている。
【0107】
当業者なら、基−L−Rxの連結基Lを得るには多数のやり方があることがすぐに認識できる。例えば、カルバメート(ウレタン)基を含む連結基は、2つのアルキル基又はアルキル基とポリエチレングリコール基(例えば、2〜約6個の反復単位を有するもの)とを互いに連結し得る。L基前駆体の末端ヒドロキシル基を反応性p−ニトロフェニルカーボネートに転化し、続いてアミンを追加することによってウレタンを得ることができる。その他の方法も周知である。例えば、アルコールを1,1’−カルボニルジイミダゾールで処理することによってイミダゾリドを得て、続いてアミンを追加する。このアミンは、例えば、有機基を介してアミンに連結されるスルホン酸ナトリウム塩であり得る。アルコールをホスゲン又はホスゲン同等物(例えば、ジホスゲン、トリホスゲン)で処理することによってクロロホルメートを得ることもでき、続いてアミンを追加する。あるいは、アルコールをカルバモイルクロリドと化合させてウレタンを得ることができる。当業者なら、アミド、エステル、エーテル及びアミン等の基を含むその他の連結基を得ることができる数多くの変化形があることがすぐに認識できる。
【0108】
−L−Rx基の調製に有用な多数のスクシンイミジルエステルは、例えばInvitrogen Corporation社から市販されている。さらに、当業者は、−L−Rx基だけでなく連結基部分−A−B−Z−の一部を得るためのスクシンイミジルエステルを調製するための市販の試薬及び周知の条件を利用することができる。Hermanson’s Bioconjugate Techniquesは、−L−Rx基の調製に使用することができるカップリング反応及び合成変換についての広汎な説明を、特にパートI(「Functional Targets」及び「The Chemistry of Reactie Groups」の記載。1〜416頁)で提供する。例えば、スクシンイミジルエステルの調製に使用される通常の試薬には、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(J.Am.Chem.Soc.,86:1839(1964))及びカルボジイミド活性化剤(ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)、1,3−ジメチルアミノプロピル−エチルカルボジイミド(EDC)(J,Am.Chem.Soc.,95:875(1973))等)が含まれる。あるいは、「自己活性化」NHS誘導体を使用することができ、例えばN−トリフルオロアセチル−スクシンイミド(TFA−NHS)、N,N−ジスクシンイミジルカーボネート(Tetrahedron Lett.,22:4817(1981))又はO−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−ビス(テトラメチレン)ウラニウムヘキサフルオロホスファートである。ベンゾチアゾール又は活性化されている連結基の反応性及び可溶性に応じて、条件は有機溶媒から水性溶媒にわたり得る。例えば、適切な有機溶媒はジメチルホルムアミド(DMF)であり得る。これらの反応を、ヒンダードアミン塩基(例えば、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン)等の塩基の存在下において実行することができるが、水性条件は、pHを約6.5〜約8.5で調節することを含み得る。
【0109】
連結基Lがアミンを含む場合、例えば−A−B−Z−基のBが−NH−の場合、このような基のスクシンイミジルエステルを、Lの残りの部分を形成するための反応において使用することができる。基−A−又は−A−B−が酸で終端する場合、この酸をスクシンイミジルエステルに転化し、アミン末端−Z−、−Z−Rx又は−Rx基と化合することができる。その他の活性化基(スルホスクシンイミジルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、スルホジクロロフェノールエステル、イソチオシアネート、スルホニルクロリド、ジクロロトリアジン、アリールハライド、アシルアジド等)をスクシンイミジルエステルの代わりに使用することによって、例えばアミンと連結させることができる。当業者なら、様々な有機部分を適切なアミン又は酸へと標準的な変換(酸化、還元、置換反応を含む)を利用して容易に転化することができる。更に、保護基を使用することによって、式I又はIIの特定の化合物の調製を簡略化することができる。保護基の使用は当該分野で周知である(例えば、GreeneのProtecting Groups In Organic Synthesis;Wiley:New York,1981を参照のこと)。
【0110】
本発明の化合物の調製
シアニンの調製には幾つかの方法がある。本明細書に記載の化合物の調製に使用する方法は、3環式インドリウム誘導体(「A」環系又は「B」環系)を調製し、続いて2つの3環式の環系をブリッジ(メチン、ポリメチンブリッジ等)を介して連結することを伴う。このような技法は当該分野で周知であり、また関連技法は、米国特許第5321130号(Yueら)、第5658751号(Yueら)、第6492102号B1(Kagawaら)、第6974873号B2(Leungら)、第6977305号(Leungら)、米国特許出願公開第20060239922号(Cooperら)及び第2002/0106593号(Kagawaら)の明細書に記載されていて、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
A環系及びB環系は、同一又は異なり得る。環系を修飾することによって、側鎖及び/又は置換基(例えば、−L−Rx基)をブリッジによる連結前又は連結後に含めることもできる。本発明の化合物の調製に使用できる様々なA及びB環系を、図1及び2に図示する。これらの2つの環系を一旦連結したら、Rx基を任意で更に修飾し、例えばヒドロキシル基、アミン基又はカルボキシル基を所望の反応性基に転化することができる(例えば、異なるRx基、例えば活性化エステル、4−シアノベンゾチアゾール、ハロアルカン)。
【0112】
本発明の化合物は、以下のようにして又は当業者によって容易に理解される同様の経路で調製することができる。スキーム1に図示されるように、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン又はその誘導体をニトロ化及び還元することによって、3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−アミン又は対応するその誘導体である中間体Aが得られる。化合物1,2,3,4−テトラヒドロキノリン及びその多くの誘導体は、Aldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン)等の供給業者から市販されている。
【化12】

式中、Xは、CH2、(CH22、(CH23、NH、O又はSである。
【0113】
中間体Aを、分岐ケトン(3−メチル−2−ブタノン等)又は分岐ケトカルボン酸(7−メチル−8−オキサノナン酸等)と反応させることによって3環式インドリウム誘導体に転化することができる。当然のことながら、いずれの適切な長さのケトン又はカルボン酸及びメチル以外のアルキル置換基を利用して様々な誘導体を得ることができる。例えば、図1及び2に図示の中間体を参照のこと。得られる化合物を、硫酸での処理によってスルホン化することができる。このような3環式インドリウム誘導体及びその対応するスルホン化誘導体の例を、スキーム2に示す。
スキーム2:3環式インドリウム化合物及びそのスルホン化誘導体
【化13】

【化14】

式中、Xは、CH2、(CH22、(CH23、NH、O又はSである。
【0114】
4環式中間体を、同様の手順によって調製することができる。1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[f]キノリン又はその誘導体から開始することによって、スキーム3に図示されるように、対応する2,3−ジヒドロベンゾ[f]キノリン−4(1H)−アミン又はその誘導体を得ることができる。
スキーム3:ジヒドロベンゾ[f]キノリン誘導体の調製
【化15】

式中、Xは、CH2、(CH22、(CH23、NH、O又はSである。
【0115】
次に、中間体Bを、中間体Aの3環式インドリウム誘導体への転化に関して説明したように、4環式ベンゾ[f]インドリウムに転化することができる。4環式インドリウム誘導体及びその対応するスルホン化誘導体の例をスキーム4に示す。
スキーム4:4環式ベンゾ[f]インドリウム塩及びそのスルホン化誘導体
【化16】

【化17】

式中、Xは、CH2、(CH22、(CH23、N、O又はSである。
【0116】
同様のやり方で、ベンゾ[e]インドリウム誘導体を、1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[g]キノリン又は適切な誘導体から調製し、3,4−ジヒドロベンゾ[g]キノリン−1(2H)−アミン又は対応する誘導体である、スキーム5に図示の中間体Cを得ることができる。
スキーム5:ジヒドロベンゾ[g]キノリン誘導体の調製
【化18】

式中、Xは、CH2、(CH22、(CH23、N、O又はSである。
【0117】
次に、中間体Cを、中間体Aの3環式インドリウム誘導体への転化に関して説明したように、4環式ベンゾ[e]インドリウムに転化することができる。このような4環式インドリウム誘導体及びその対応するスルホン化誘導体の例をスキーム6に示す。
スキーム6:4環式ベンゾ[e]インドリウム塩及びそのスルホン化誘導体
【化19】

【化20】

式中、Xは、CH2、(CH22、(CH23、NH、O又はSである。
【0118】
上の各化合物に関して、フッ素化誘導体を、適当な出発原料の選択によって調製することもできる。本発明の様々なフッ素化3環式及び4環式化合物を、スキーム7に図示するように調製することができる。
スキーム7:フッ素置換されたスルホン化インドリウム誘導体の一般的な反応スキーム
【化21】

式中、R1はH又はFであり、R2はH又はFであり、R3はH又はFであり、XはCH2、(CH22、(CH23、NH、O又はSである。
【0119】
具体例には、R1がFであり、R2がHであり、R3がHである化合物、R1がHであり、R2がFであり、R3がHである化合物、R1がFであり、R2がFであり、R3がHである化合物、R1がFであり、R2がFであり、R3がFである化合物及びR1がFであり、R2がHでありR3がFである化合物が含まれる。これらの化合物のそれぞれを、XがCH2、(CH22、(CH23、N、O又はSである対応する化合物に転化することができる。
【0120】
インドリウム誘導体の環を、スキーム8に図示するように置換することもできる。
スキーム8:フッ素置換されたスルホン化インドリウム反応種の一般的な反応スキーム
【化22】

式中、R1、R2及びR3は、スキーム7で又は式Iで定義した通りであり、R4は、(CH2xCO2H又は(CH2xOHであり、xは1〜約12である。
【0121】
次に、3環式(又は4環式)の環系A及びBを連結することによって、本発明の色素及びその中間体を得ることができる。様々なインドリウム誘導体色素を、下のスキーム9〜11に図示するように調製することができる。
スキーム9:インドリウム誘導体から色素を調製するための一般的な反応スキーム
【化23】

スキーム10:インドリウム誘導体から色素を調製するための一般的な反応スキーム
【化24】

スキーム11:インドリウム誘導体から色素を調製するための一般的な反応スキーム
【化25】

【0122】
次に、R1及びR2の官能基を、標準的な合成的変換によって別の反応性基Rx(カルボン酸の活性化エステル、アミン、スルホニルハライド、メルカプタン、ボロネート、ボロネートエステル、ホスホルアミダイト、イソシアネート、ハロアセトアミド、アルデヒド、アジド、アシルニトリル、光活性化性基、O−又はN−結合4−シアノベンゾチアゾール、(C1〜C8)アルキルハライド、スルホ基等)に転化することができる。本発明の色素を修飾して、例えばスキーム12に図示するように、酵素の基質であり得る反応性基(ハロアルキル基等)を含めることができる。
スキーム12:HaloTag反応性色素
【化26】

【化27】

【0123】
本発明の色素を修飾して、例えばスキーム13に図示するように、4−シアノベンゾチアゾール部分を含めることもできる。
スキーム13:シアノベンゾチアゾール反応性色素
【化28】

【0124】
その他の3環式中間体を利用することによって(図1及び2に図示のもの等)、本発明の化合物の多数の別の例を、対応する合成方法を利用して調製することができる。
【0125】
使用方法
本発明の一態様において、本発明の色素コンジュゲートを使用して試料を標識することによって、この試料を同定する又は定量化することができる。例えば、このようなコンジュゲートを、生物学的標的分析物用のアッセイの一部として、生物学的若しくは非生物学的流体中の検出可能なトレーサー元素として又は腫瘍の光線力学的治療(染色した試料に光照射することによって腫瘍細胞及び組織を選択的に破壊する)等の目的のために又は通常は一重項酸素の光増感産生を通じて動脈プラーク若しくは細胞にフォトアブレーションを行うために添加し得る。一実施形態においては、色素コンジュゲートを、リガンド(コンジュゲート物質がそのリガンドにとっての特異的結合対の相補的メンバーである)を含む試料の標識に使用する(表2を参照のこと)。
【0126】
試料は、生物材料(例えば、固形材料(有機、無機)の洗浄液、細胞を培養した増殖培地、細胞を評価のために入れておいた緩衝液)又は生理学的源から直接得られ得る。試料が細胞を含む場合、この細胞は任意で単一の細胞(微生物を含む)又は二次元若しくは三次元で別の細胞と会合した複数の細胞(多細胞生物、胚、組織、生検試料、線維、バイオフィルム等を含む)である。
【0127】
あるいは、試料は固形物であり、任意でスメア、スクレイプ又は液体若しくは気体から濾過によって分離されたリテンテートである。本発明の一態様において、試料は、分離された又は濾過されていない生理学的流体を含む生物学的流体(尿、脳脊髄液、血液、リンパ液、組織ホモジネート、間質液、細胞抽出物、粘液、唾液、痰、便、生理的分泌物、その他同様の流体等)から得られる。あるいは、試料は環境由来(土壌、水、空気)又は工業由来(廃棄物流、水源、供給ライン又は製造ロットから採取される等)である。
【0128】
更に別の実施形態において、試料は、固形若しくは半固形のマトリックス上又はその中に存在する。本発明の一態様において、このマトリックスは膜である。別の態様において、このマトリックスは、核酸若しくはタンパク質の分離及び特徴付けに使用されるような電気泳動ゲル又は電気泳動ゲルから膜への転写によって調製されるブロットである。別の態様において、このマトリックスはシリコンチップ又はガラススライドであり、対象の分析物は、このチップ又はスライド上にアレイ状に固定されている(例えば、試料は、タンパク質又は核酸高分子をマイクロアレイ状に含む)。更に別の態様において、マトリックスはマイクロウェルプレート又はマイクロ流体チップであり、試料は自動化された方法によって分析され、典型的には様々なハイスループットスクリーニング法によって分析される(ドラッグスクリーニング等)。
【0129】
色素コンジュゲートは一般に、上述のコンジュゲートを対象の試料と、検出可能な光応答が得られるように選択された条件下で組み合わせることによって利用される。次に、この試料に、その光応答を引き出すように選択された波長で光照射を行う。典型的には、試料の特定の特徴は、この光応答を標準又は期待される応答と比較することによって決定される。
【0130】
検出可能な光応答とは、観察又は機器の使用によって検出可能な光信号における変化又は光信号の発生を意味する。典型的には、この検出可能な応答は蛍光における変化、例えば蛍光の強度、励起若しくは発光波長分布、蛍光寿命、蛍光偏向又はこれらの組み合わせにおける変化である。標準又は期待される応答と比較した場合の標識の度合い及び/又は位置は、試料が所定の特徴を有しているか否か、またどの程度であるかを示す。本発明の一部の色素は殆ど蛍光発光を示さないが、依然として発色色素として有用である。このような発色団は、FRET用途におけるエネルギーアクセプターとして又は単に所望の色彩を試料若しくは試料の一部に付与するのに有用である。
【0131】
生物学的な用途に関し、色素コンジュゲートは典型的には、当該分野で一般に知られている方法に従って調製された水性、ほぼ水性又は水性混和性溶液において使用される。色素化合物の正確な濃度は実験条件及び所望の結果に左右されるが、典型的には1nM〜1mM以上である。最適な濃度は、バックグラウンド蛍光が最小限に抑えられた満足のいく結果が達成されるまで体系的に濃度を変化させることによって求められ得る。
【0132】
色素コンジュゲートは、生物学的成分が含まれる試料の標識に使用され得る。この試料は、異種の成分(無傷細胞、細胞抽出物、細菌、ウィルス、細胞小器官、これらの混合物を含む)から成る混合物又は単一の成分若しくは同種の成分群(例えば、天然又は合成のアミノ酸、核酸、炭水化物高分子、脂質膜複合体)を含み得る。色素は一般に、使用濃度内では生細胞及びその他の生物学的成分にとって非毒性である。
【0133】
色素コンジュゲートは、この色素コンジュゲートと対象の試料成分との間での接触を促進するようなやり方で試料と組み合わされる。典型的には、色素コンジュゲート又はこの色素コンジュゲートを含有する溶液を単に試料に添加する。本発明の特定の色素(例えば、1つ以上のスルホン酸部分によって置換されたもの)の生体細胞の膜への浸透性が低い場合があるが、一旦内部に入ると、生細胞は典型的には良好に保持される。細胞膜を透過性にする処理(電気穿孔、衝撃処理、高細胞外ATP等)を利用することによって、選択された色素コンジュゲートを細胞内に導入し得る。あるいは、選択された色素コンジュゲートを、例えば圧力マイクロインジェクション、スクレイプローディング、パッチクランプ法又は貪食によって物理的に細胞に導入することができる。
【0134】
脂肪族アミン又はヒドラジン残基を取り込む色素は細胞内にマイクロインジェクションによって導入され得て、そこで色素を、所定の場所にアルデヒド固定剤(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等)によって固定することができる。この特性が、このような色素を、細胞内用途(神経回路の解析等)にとって有用なものにしている。
【0135】
親油性の置換基(リン脂質等)を有する色素は、例えば膜構造用のプローブとして使用するために又はリポソーム、リポタンパク質、フィルム、プラスチック、親油性マイクロスフィア若しくは同様の材料内への取り込みのために又は追跡のために脂質集合体内に非共有結合的に取り込まれ得る。親油性色素は、膜構造の蛍光プローブとして有用である。
【0136】
化学反応性の色素化合物は、幅広い様々な材料上の対応する官能基に共有結合して、上述したような色素コンジュゲートを形成し得る。細胞表面上、細胞膜内、細胞内区画内(細胞小器官等)又は細胞質内の反応部位の標識に色素化合物を使用することによって、試料におけるその存在、量、アクセス性又はその空間的及び時間的分布を判断できるようになる。光反応性色素を、生体細胞の外膜の成分を光標識するのに又は細胞のための光定着性極性トレーサーとして同様に使用し得る。
【0137】
任意で、試料を標識後に洗浄することによって、残留した過剰な又は結合していない色素化合物又は色素コンジュゲートを除去する。標識中に、試料を任意で1種以上の別の溶液(洗浄液、透過処理及び/又は固定溶液、追加の検出試薬を含有している溶液を含む)と組み合わせる。追加の検出試薬によって、典型的には、特定の細胞成分、細胞内物質の存在又は細胞状態による、当該分野で一般に知られる方法に従って検出可能な応答が得られる。この追加の検出試薬が、主題の色素化合物のものとは異なるスペクトル特性を有する又はそのようなスペクトル特性の生成物を生じる場合、多色の応用例が可能である。これは特に、追加の検出試薬が、標識色素のものとは異なって検出されるスペクトル特性を有する色素又は色素コンジュゲートの場合に有用である。
【0138】
色素コンジュゲートは、当該分野で既知の方法(例えば、顕微鏡検査及び免疫蛍光アッセイにおける抗体コンジュゲート、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、核酸増幅反応及び核酸シークエンシングのためのヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドコンジュゲートの使用。例えば、米国特許第5332666号、第5171534号、第4997928号、国際公開第94/05688号)に従って使用される。本発明の複数の独立した色素の色素コンジュゲートは、多色用途に利用できる。
【0139】
標識後又はその最中のいずれかのタイミングで、試料に、検出可能な光応答が得られるように選択された波長で光を照射し、この光応答を検出するための手段で観察する。本発明の色素化合物の光照射に有用な機器には、以下に限定するものではないが、携帯紫外線ランプ、水銀アークランプ、キセノンランプ、レーザー及びレーザーダイオードが含まれる。これらの光照射源は任意で、レーザースキャナ、蛍光マイクロプレートリーダー、標準若しくは小型蛍光測定器又はクロマトグラフィ検出器に統合される。
【0140】
光応答は任意で、目視又は以下のデバイスのうちのいずれか(CCDカメラ、ビデオカメラ、写真用フィルム、レーザー走査装置、蛍光測定器、フォトダイオード、量子カウンター、落射蛍光顕微鏡、走査型顕微鏡、フローサイトメーター、蛍光マイクロプレートリーダー)の使用によって又は信号を増幅する手段(光電子増倍管等)によって検出される。試料をフローサイトメーターを使用して検査する場合、試料の検査は任意で、その蛍光応答に応じた試料の部位の仕分けを含む。
【0141】
例示的な使用方法
一実施形態において、本発明の色素オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、核酸高分子を含有する又は含有すると考えられる試料と混合され、色素オリゴヌクレオチドコンジュゲートと試料との混合物を、コンジュゲート内のオリゴヌクレオチドが試料中の核酸高分子と結合して核酸ハイブリッド(複合体)を形成するのに(色素オリゴヌクレオチドコンジュゲートはプローブである)又は核酸合成のプライミング(色素オリゴヌクレオチドコンジュゲートはプライマーである)に十分な時間にわたってインキュベートされる(これらは検出され得る)。標識された分子の特徴(存在、位置、強度、励起及び発光スペクトル、蛍光偏光、蛍光寿命並びに蛍光信号のその他の物理的特性を含む)を利用することによって、試料を検出、差別化、仕分け、定量化する及び/又は試料の様相若しくは一部を分析することができる。本発明の色素コンジュゲートは任意で、異なるスペクトル特性を有する同類の色素を含めた1種以上の追加の試薬(例えば、検出上異なる蛍光試薬)と共に使用される。
【0142】
典型的には、色素コンジュゲートを、試料及び意図する用途に適合する水性又は水性混和性溶液に溶解させてから使用する。細胞のモルホロジー又は生理機能への影響を最小限に抑えたい生物試料の場合、溶液はそれに従って選択される。イオン性洗剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度が>0.01%の場合と同様に、高濃度の有機溶媒、カチオン及び酸化剤によって蛍光が低下し得る。しかしながら、多くの標識溶液添加物は、色素核酸複合体の蛍光を干渉しない(例えば、ウレアは最高8M、CsClは最高1g/mL、ホルムアミドは溶液の最高50%、スクロースは最高40%)。色素は、水だけの場合より緩衝溶液中でより高い安定性を有し得る。また、遊離酸素ラジカルのレベルを低下させる薬剤(β−メルカプトエタノール等)も、色素の安定性に貢献し得る。
【0143】
標識溶液は、色素コンジュゲートを直接、水等の水性溶媒、緩衝溶液、例えば緩衝生理食塩水(一部の生存能を判別する用途では好ましくはホスフェート以外)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)緩衝液(好ましくはEDTAを含有する)又は水混和性有機溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、低級アルコール(メタノール、エタノール等)に溶解させることによって調製される。通常、色素コンジュゲートを、標識溶液に使用される濃度の約10倍を超える濃度で有機溶媒(例えば、100%DMSO)に予備的に溶解させ、次に、色素コンジュゲートが有効量で存在するように水性溶媒(水等)又は緩衝液で1回以上希釈する。
【0144】
典型的には、細胞試料のための標識溶液は、0.1nMより高く50μMより低い、より典型的には1nMより高く10μMより低い(例えば、0.5〜5μMの間)の色素濃度を有する。電気泳動ゲルのための標識溶液は、典型的には0.1μMより高く10μMより低い、より典型的には約0.5〜2μMの色素濃度を有し、同じことが、核酸と組み合わせる前に色素をゲルに添加する場合(プレキャスト)にもあてはまる。溶液中の遊離核酸を検出及び定量化するための標識溶液は、典型的には0.1μM〜2μMの濃度を有する。標識溶液の最適濃度及び組成は、試料の性質(物理的、生物学的、生化学的及び生理学的特性を含む)、色素と試料との相互作用の性質(色素の核酸の部位への輸送速度を含む)及び実行する分析の性質によって決定され、また標準的な手順に従って決定することができる。
【0145】
試料中の核酸は、DNA若しくはRNA又はそれらの混合物若しくはハイブリッドであり得る。DNAは任意で1本鎖、2本鎖、3本鎖又は4本鎖のDNAであり、RNAは任意で1本鎖(「ss」)又は2本鎖(「ds」)である。核酸は、天然高分子(生物由来)又は合成高分子(人工的に修飾又は調製)である。核酸高分子(例えば、少なくとも8個の塩基又は塩基対を含有するもの)は、核酸フラグメント、オリゴヌクレオチド又は二次若しくは三次構造のより大きな核酸高分子として存在し得る。核酸は任意で凝縮相(染色体等)で存在する。核酸高分子は任意で、1つ以上の修飾塩基若しくはリンクを含む又は非共有結合若しくは共有結合した標識を含む。例えば、修飾塩基は、天然の修飾塩基、例えばtRNAのΨ(プソイドウリジン)、5−メチルシトシン、6−メチルアミノプリン、6−ジメチルアミノプリン、1−メチルグアニン、2−メチルアミノ−6−ヒドロキシプリン、2−ジメチルアミノ−6−ヒドロキシプリン又はその他の既知の微量塩基であり得る(例えば、DavidsonのThe Biochemistry Of The Nucleic Acids(1976)を参照のこと)。あるいは、修飾塩基は、モルホリン誘導ホスフェート等の普通ではないリンカー(AntiVirals社、コーバリス、オレゴン)を含有する、N−(2−アミノエチル)グリシン単位等のペプチド核酸(WittungらのNature,368:561(1994))を含有する、脂肪族アミン、カルボン酸、アルコール、チオール若しくはヒドラジンである単純な反応性官能基(<10個の炭素)を含有する又は蛍光標識若しくは他のハプテン、例えばイノシン、ブロモデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、ビオチン、ジゴキシゲニン、2,4−ジニトロフェニルを含有するように人工的に変性される。標識は本来、ヌクレオチド上に(例えば、CHROMATIDE(登録商標)標識ヌクレオチド、Molecular Probes社、ユージーン、オレゴン)、高分子の3’若しくは5’末端上に又は核酸に非共有結合したリガンドに付着させられる。一次的に修飾された塩基及びリンクを含む高分子のための色素の感度は、結合様式の干渉によって低下し得る。色素の一部の実施形態は、特定の色素:塩基対比で非特異的なヌクレアーゼ活性を阻害し得るが、制限エンドヌクレアーゼ活性を阻害することはない。
【0146】
核酸を含む試料は任意で生物学的構造体(すなわち、生物又は生物の個別の単位)、溶液(生物学的構造体を含有する溶液を含む)又は固形若しくは半固形の材料である。したがって、核酸は任意で、溶液中で遊離している又は固形若しくは半固形の材料内若しくは上に固定される又は生物学的構造体から抽出される(例えば、溶解細胞、組織、生物又は細胞小器官から)又は生物学的構造体内に閉じ込められたままである。核酸を色素に結合させるためには、たとえ核酸が生物学的構造体内に閉じ込められていなくても、この核酸が、色素と接触するための水性環境にある必要がある。
【0147】
核酸を取り囲む生物学的構造体は任意で細胞又は組織であり、例えば核酸は、細胞又は間質腔内に原核若しくは真核微生物、ウィルス、ウィロイド、染色体又は細胞小器官として存在する。あるいは、生物学的構造体は組織又は細胞内に閉じ込められることなく、またウィルス、微生物又はその他の細胞として存在する。あるいは、その親細胞から取り出された細胞成分(例えば、プラスミド、染色体、ミトコンドリア、核、その他の細胞小器官)として存在する。典型的には、生物学的構造体は、任意で真核生物の細胞内にある細胞小器官、染色体又細胞である。真核生物の細胞内に存在する細胞は、典型的には寄生虫又はその他の感染病原体(細菌、原虫、マイコプラズマ、マイコバクテリア等)である。核酸が細胞である生物学的構造体内に含まれる場合、この細胞は生細胞、死細胞又はこれらの混合物であり、すなわち細胞膜の完全性は任意で無傷である又は自然(自己融解)に若しくは機械的、化学的な手段によって若しくは環境的な原因(温度、圧力における変化等)によって損なわれる。あるいは、細胞は、ブレビングすなわちアポトーシスを起こす又は増殖すなわち細胞分裂の周期にある。
【0148】
核酸が溶液中に存在する場合、試料溶液は、精製又は合成核酸(オリゴヌクレオチド等)から未精製混合物(細胞抽出物、ホモジネート、その他の生物学的流体、生物、工業又は環境由来の希釈溶液等)の一種であり得る。一部のケースでは、核酸を、色素との組み合わせに先立って、溶液中の生体分子又は流体の混合物から分離することが望ましい。核酸を、他のタンパク質又は生体分子との概して未精製である混合物から分離及び精製するための技法は多数存在する。これには、様々な担体若しくは溶液を使用した又は流れにおけるクロマトグラフィ技法及び電気泳動技法等の手段が含まれる。あるいは、核酸の混合物をリボヌクレアーゼ又はデオキシリボヌクレアーゼで処理することによって、ヌクレアーゼの存在下でも分解されない高分子を、主題の色素を使用した分解生成物から区別することができる。
【0149】
殆どの用途において、色素は、核酸に結合した場合、約0.3より高い、好ましくは0.6より高い量子収率が得られるように選択される。例えば、色素は、核酸と結合していない場合に<0.01の量子収率及び約200倍より大きい(例えば、1000倍より大きい)蛍光増大を有する。色素−核酸複合体の蛍光を、持続的な高強度の光照射を利用して検出する場合(例えば、顕微鏡法)、一般に使用される色素(例えば、フルオレセイン)より低い光退色率の色素を、特には生細胞での使用に利用し得る。生物系に対しての色素の毒性が比較的低いことから、一般に、色素自体による影響を殆ど又は全く与えることなく、生体試料中の核酸を検査することが可能になる。無傷細胞又はゲル内の試料での使用の場合、より浸透性の高い色素を利用し得る。ただし、一部の細胞は、他の細胞では非浸透性であると判明している色素でも、細胞膜を超えての受動拡散以外の手段(例えば、貪食、他のタイプの摂取)によって色素を容易に吸収する。細胞を迅速且つ容易に貫通する色素が迅速にゲルを貫通するとは限らない。核酸がゲル上にある応用例において、色素はまた、高い結合親和性(Kd>10-6M等)を有するように選択され得る。一方で、分離工程(ゲル又はキャピラリー電気泳動等)に先立って核酸を前標識する応用例においては、より高い結合親和性(Kd>10-8M)の色素さえ、良好な分離を確保するために使用され得る。核酸を溶液中で標識する場合、結合親和性が高いと少量の核酸に対する感度が高くなるが、中程度の結合親和性(例えば、10-6M<Kd<10-8M)の色素のほうが、より広いダイナミックレンジにわたってより効果的となり得る。色素の光安定性、毒性、結合親和性、量子収率及び蛍光増大は、当該分野で既知の標準的な方法に従って求められる。
【0150】
一実施形態において、色素オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、生理学的試料中の対立遺伝子を2つ以上の遺伝子座で検出するための方法及びキットで利用される。一実施形態においては、遺伝子座、プライマー及び増幅プロトコルの適切なセットを選択することによって、一実施形態においては、共増幅させる複数の遺伝子座から、サイズが重ならない又はサイズが重なる、異なる遺伝子座からの対立遺伝子の差別化を可能にするやり方で標識される増幅対立遺伝子を産生する。加えて、この方法は、シングル増幅プロトコルでの利用に適合するショートタンデムリピート(STR)遺伝子座の選択を企図している。好結果が得られる組み合わせは、遺伝子座の組み合わせの試行錯誤、プライマー対配列の選択及び含まれる全ての遺伝子座が増幅され得る均衡を特定するためのプライマー濃度の調節によって得ることができる。マルチプレックス増幅反応工程において増幅され得る遺伝子座の数は、この反応によって各遺伝子座から増幅対立遺伝子が産生される限り、2〜50又は2〜50の間のいずれの整数であり得る。一実施形態において、増幅フラグメントの長さは500塩基対未満である。
【0151】
1セットの遺伝子座を検出するためのマルチプレックスが一旦発現したら、これをコアとして使用して、最初の遺伝子座セットに加えて別の遺伝子座を検出するためのマルチプレックスを形成し得る。STR分析のための例示的な遺伝子座は米国特許第7008771号に開示されていて、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。マルチプレックス分析のために選択される遺伝子座は、一般に以下の特徴を有する。(1)評価を可能にするのに十分な増幅産物を産生する。(2)マルチプレックス増幅工程中に増幅対立遺伝子に塩基を追加する(又は追加しない)ことに起因するアーチファクトが、あったとしてもごくわずかである。(3)ポリメラーゼによる増幅反応の未熟終結に起因するアーチファクトが、あったとしてもごくわずかである。(4)連続した単一塩基の欠失による低分子量の「トレーリング(trailing)」バンドが、所定の基準増幅対立遺伝子より下で殆ど又は全く生成されない(例えば、SchummらのFourth International Symposium on Human Identification 1993,pp.177−187(Promega社によって1994年に発表)を参照のこと)。
【0152】
1回のマルチプレックス反応で共増幅させる遺伝子座セットが一旦特定されたら、そのセットの各遺伝子座の共増幅に適したプライマーを決定することができる。マルチプレックス反応で使用するプライマー配列は、慎重に選択されるべきである。プライマーの選択が不適当だと、増幅の不足、複数部位での増幅、プライマー二量体の形成、異なる遺伝子座のプライマー配列の望ましくない相互作用、別の遺伝子座の対立遺伝子と重なるある遺伝子座からの対立遺伝子の産生、マルチプレックスにおいて不適合である異なる遺伝子座のための増幅条件又はプロトコルを必要とすること等の望ましくない影響が幾つかでる場合がある。プライマー配列を選択する反復工程を行い、選択された遺伝子座の共増幅のためのプライマーを混合し、遺伝子座を共増幅し、次に増幅産物を分離及び検出することによって、プライマーが、マルチプレックス系での使用のために選択される。この工程では、初期に不均衡な形で増幅対立遺伝子が産生されることが多く(すなわち、一部の遺伝子座の増幅産物収量が他の遺伝子座の増幅産物収量より高い)、また対立遺伝子自身を表わさない増幅産物も発生し得る。このような余分なフラグメントをマルチプレックス系から排除するために、セット全体の個々のプライマーを同一又は別の遺伝子座のプライマーと共に使用することによって、どのプライマーがその余分なフラグメントの増幅に寄与しているかを特定し得る。そのフラグメントの1つ以上を形成する2つのプライマーが一旦特定されたら、そのプライマーの一方又は両方を修飾し、その対だけで又はマルチプレックス系(又はマルチプレックス系のサブセット)で再試験する。この工程を、増殖産物を評価した場合に、マルチプレックス系中で、増殖対立遺伝子が余分なフラグメントを伴うことなく又は許容範囲のレベルでしか伴わず見出されるまで繰り返す。プライマー対の反対のプライマーを標識することによって、余分なフラグメントを排除できることもある。この変更によって、検出工程において反対のプライマーの産物が明らかとなる。この新たに標識したプライマーは、真の対立遺伝子を、全増幅産物の大部分として真の対立遺伝子を産生する標識プライマーより高い忠実度でもって増幅し得る。
【0153】
プライマー濃度の決定は、最終的なプライマー配列の選択前又は選択後に行われ得る。一般に、特定の遺伝子座についてプライマー濃度を上昇させると、その遺伝子座について産生される増幅産物の量も増加する。しかしながら、これもまた反復工程となる。ある遺伝子座についての収量の上昇によって1つ以上のその他の遺伝子座についての収量が低下し得るからである。更に、プライマーが直接相互作用して、その他の遺伝子座の収量に影響を与え得る。プライマー濃度の直線的増加が、対応する遺伝子座についての増殖産物収量の直線的増加につながるとは限らない。
【0154】
遺伝子座間のバランスは、増幅プロトコルの数多くのパラメータ(使用するテンプレートの量、増幅サイクルの回数、熱サイクリングプロトコルのアニーリング温度、サイクリング工程の最後での追加の伸長工程の挿入又は排除等)の影響も受ける。全ての対立遺伝子及び遺伝子座にわたっての完全に釣り合ったバランスは一般に達成されない。
【0155】
本発明の方法で使用するプライマーの合成を、当業者に既知のオリゴヌクレオチド合成についての標準的な手順を利用して行うことができる。各遺伝子座あたり少なくとも1つのプライマーが、異なる色素標識に共有結合させられる。
【0156】
ゲノムDNAの試料を、DNAの増幅に適合するいずれのDNA調製法を利用しても、本発明の方法での使用にむけて調製することができる。多くのこのような方法が当業者に既知である。分析対象である少なくとも1つのDNA試料がヒトゲノムDNAの場合、このDNAは、血液、精液、膣細胞、毛髪、唾液、尿、骨、頬から採取した試料、胎盤細胞又は胎児細胞を含有する羊水、絨毛膜絨毛及び上で挙げた組織の組み合わせから成る群から選択される組織から調製され得る。任意で、DNA濃度を、本発明の方法での使用に先立って、当業者に既知のDNA定量化の標準法を利用して測定することができる。増幅反応で使用するテンプレートDNAが多すぎると、真の対立遺伝子を表わさない余分なバンドとして出現するアーチファクトが発生する場合がある。
【0157】
ゲノムDNAの試料が調製されたら、標的となる遺伝子座をマルチプレックス増幅工程において共増幅することができる。多数の様々な増幅方法のいずれを利用しても遺伝子座を増幅することができ、以下に限定するものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写に基づいた増幅及び鎖置換増幅(SDA)が含まれる。一実施形態において、DNA試料は、セット内の各遺伝子座に特異的なプライマー対を使用したPCR増幅に供される。
【0158】
各遺伝子座あたり少なくとも1つのプライマーを、色素標識に共有結合させることができ、色素標識の1つは本発明の色素を含む。プライマー及びプライマーに付着した色素はマルチプレックス増幅反応での使用に合わせて選択されることから、1色で標識された各遺伝子座のためのプライマーを使用して増幅した対立遺伝子は、対立遺伝子を例えばゲル又はキャピラリー電気泳動で分離した場合に、同色で標識したプライマーを使用して増幅反応で共増幅させたセット内のその他の遺伝子座の対立遺伝子と重ならない。本発明で使用するプライマーへの付着に適した蛍光標識は市販されている。例えば、PE Biosystems社及びMolecular Probes社のフルオレセイン、カルボキシテトラメチルローダミン標識及びこれらの化学的誘導体を参照のこと。一実施形態においては、少なくとも3種類の異なる標識を、マルチプレックス増幅反応で使用する異なるプライマーの標識に使用する。マルチプレックス反応を評価するためにサイズマーカーを含める場合、このサイズマーカーの調製に使用するプライマーを、反応において対象の遺伝子座の増幅に使用するプライマーとは異なる標識で標識し得る。
【0159】
増幅対立遺伝子のセットがマルチプレックス増幅工程で産生されたら、この増幅対立遺伝子を評価する。この方法の評価工程は、多数の様々な手段のいずれによっても達成することができる。電気泳動を利用してマルチプレックス増幅反応の産物を分離し得る(例えば、キャピラリー電気泳動、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動)。ゲルの調製及び電気泳動手順並びに評価工程での使用に適した条件は当該分野で既知である。変性ポリアクリルアミドゲル及びキャピラリー電気泳動におけるDNAフラグメントの分離は、主にフラグメントサイズに基づいて起きる。
【0160】
増幅対立遺伝子が分離されたら、次にゲル又はキャピラリー中の対立遺伝子及びその他のDNA(例えば、DNAサイズマーカー、アレリックラダー)を可視化及び分析することができる。ゲル中のDNAの可視化は、従来の多数の技法のいずれを利用しても達成することができ、銀標識又はレポーター、例えば放射性同位元素、フルオレッサー、ケミルミネッサー及び検出可能な基質と組み合わせた酵素が含まれる。一実施形態において、多数の遺伝子座を含むマルチプレックスを検出する方法は蛍光であり、マルチプレックス反応における各遺伝子座用のプライマーは、蛍光検出装置を利用した標識産物の検出によって追跡される。DNA試料中に存在する対立遺伝子は、試料内の各遺伝子座に存在する対立遺伝子を決定するためのDNAマーカー又は遺伝子座特異的アレリックラダー等のサイズスタンダードと比較することによって決定され得る。個々の遺伝子座についてのアレリックラダーの構築に続いて、これらのアレリックラダーを、増幅された試料のローディングと同時に混合してゲル電気泳動にかけ得る。各アレリックラダーは、対応する遺伝子座から試料中の対立遺伝子と共泳動する。
【0161】
本発明のマルチプレックス反応の産物を、インターナルレーンスタンダード(ポリアクリルアミドゲルの同一レーン又は同一キャピラリーを泳動するように構成された特殊なタイプのサイズマーカー)を使用して評価することができる。インターナルレーンスタンダードは、既知の長さの一連のフラグメントからなり得る。インターナルレーンスタンダードは、増幅反応において他の色素から区別可能な蛍光色素で標識され得る。
【0162】
インターナルレーンスタンダードの構築に続いて、このスタンダードを、増幅された試料又はアレリックラダーと混合し、またゲル電気泳動の異なるレーン又はキャピラリー電気泳動の異なるキャピラリーでの泳動の比較のために電気泳動にかけ得る。インターナルレーンスタンダードの泳動における違いは、分離媒体の性能の違いを示す。この違い及びアレリックラダーとの相関関係を定量化することによって、未知の試料中の対立遺伝子のサイズ決定に修正を加えることができる。
【0163】
例示的な蛍光標識プライマーには、式(I)又は(II)の化合物、フルオレセイン標識(FL−)、カルボキシ−テトラメチルローダミン標識(TMR−)及び5,6−カルボキシローダミン6G標識(R6G)プライマーが含まれる。このような標識プライマーを使用して産生された増幅フラグメントの分離は、スラブゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動によって達成され得る。得られる分離フラグメントを、蛍光検出装置を使用して分析することができる。蛍光検出法は一般に、銀標識より増幅時のアーチファクトの発生が少ない。このアーチファクト数の少なさは、1つには、標識されたDNAの増幅鎖だけが蛍光検出で検出されるのに対して、銀染色ではマルチプレックス増幅反応で産生されたDNAの全ての増幅対立遺伝子の両方の鎖が標識及び検出される事実によるものである。
【0164】
キット
本発明の一態様は、上述したような本発明の色素のいずれかを使用した様々なアッセイの実践を円滑にするキットの設計である。本発明のキットは典型的には、色素コンジュゲートの調製に有用な化学反応性の標識として存在する又はコンジュゲート物質が特異的結合対メンバーである若しくは例えばヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド若しくはタンパク質である色素コンジュゲートとして存在する、本発明の着色又は蛍光色素を含む。このキットは任意で、典型的には水溶液として存在する1種以上の緩衝剤を更に含む。本発明のキットは任意で、追加の検出試薬、得られる標識物質を精製するための精製媒体、ルミネッセンススタンダード、酵素、酵素阻害剤、有機溶媒又は本発明のアッセイを行うための使用説明書を更に含む。
【0165】
一実施形態において、本発明のキットは1種以上の遺伝子座特異的プライマーを含む。使用説明書が任意で含まれ得る。その他の任意のキット構成要素には、指定の各遺伝子座用のアレリックラダー、増幅用の十分な量の酵素、増幅を促進するための増幅バッファ、増幅させた材料を電気泳動向けに準備するためのローディング溶液、テンプレートコントロールとしてのゲノムDNA、材料に分離媒体内を予測通りに泳動させるためのサイズマーカー並びにユーザーを教育し、また使用時の失敗を抑制するためのプロトコル及びマニュアルが含まれ得る。また、キット中の様々な試薬の量は、多数の要素(工程の最適感度等)に応じて変化し得る。手動で検査する場合のためのテストキット又は自動検出装置若しくは分析装置で使用するためのテストキットを提供することは、本発明の範囲内である。
【0166】
以下の実施例は上記の本発明を説明するためのものであり、その範囲を狭めると解釈されるべきではない。当業者なら、実施例が本発明を実践できる他のやり方を示唆し得ることがすぐに認識できる。本発明の範囲を逸脱することなく、変更及び改変を行い得ることを理解すべきである。
【実施例】
【0167】
実施例1:中間体及び生物学的標識の調製。化合物PBI3525
【化29】

1−ニトロソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
150mLのCH2Cl2中の1,2,3,4−テトラヒドロキノリン(10.0g、75.08mmol)の撹拌溶液に、150mLの1MのH2SO4、続いてNaNO2(5.70g、82.59mmol)を添加した。この反応混合物を1.5時間にわたって撹拌した。反応混合物を分離し、有機層を保持し、NaClの飽和溶液(水性)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮すると、生成物(13.4g、100%)が暗色の油として得られた。1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ8.08(d、1H)、7.28(m、3H)、3.92(m、2H)、2.82(m、2H)、2.03(m、2H)ppm、C9102Oについて計算したMSm/z(M+H):163.09。実測値:163.1(M+、ESI+)。
【化30】

【0168】
3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−アミン
60mLの無水THF中の1−ニトロソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン(10.0g、61.66mmol)の溶液を、130mLのTHF中のLiAlH4(4.26g、112.21mmol)の還流懸濁液に滴加した。この反応混合物を1時間にわたって還流させ、0℃にまで冷却し、次にロシェル塩溶液の滴加によってクエンチした。得られた沈殿物をTHFで希釈し、濾過した。次に、濾液を減圧下で濃縮し、次にフラッシュクロマトグラフィで精製すると、生成物(4.83g、52.9%)が白色の固形物として得られた。1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ7.12(m、2H)、6.95(d、1H)、6.69(m、1H)、3.32(m、2H)、2.75(t、2H)、2.04(dt、2H)ppm、C913NOについて計算したMSm/z(M+H):149.1。実測値:149.1(M+H、ESI+)。
【化31】

【0169】
5,6,6−トリメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムアセテート
10mLの酢酸及び2.5mLの濃縮HCl中の3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−アミン(1.0g、6.75mmol)及び7−メチル−8−オキソノナン酸(1.38g、7.43mmol)の溶液を、加熱して1時間にわたって還流させた。この混合物を室温にまで冷却し、水で希釈し、CH2Cl2で抽出した。有機層を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮すると暗色の油が得られ、この油をシリカゲルクロマトグラフィで精製すると、生成物(685.0mg、30.3%)が暗色の油として得られた。1H−NMR(300MHz、d6−DMSO):δ7.85(d、1H)、7.80(d、1H)、7.58(d、1H)、2.63(t、2H)、1.90(m、2H)、1.75(m、11H)、1.30(t、2H)、1.22(s、3H)、1.11(m、2H)ppm、Cl926NO2について計算したMSm/z(M+):300.2。実測値:300.2(M+、ESI+)。
【化32】

【0170】
6−(5−カルボキシペンチル)−5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド
7mLの無水酢酸及び7mLの酢酸中の5,6,6−トリメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムアセテート(480.0mg、1.86mmol)及びマロンアルデヒドビス(フェニルイミン)モノヒドロクロリド(720.0mg、2.78mmol)の混合物を、2時間にわたって還流させた。次に、この反応混合物を室温にまで冷却し、揮発性物質を減圧下で除去した。得られた油をCH2Cl2で希釈し、2MのHCl(水性)で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮すると褐色の固形物が得られ、この固形物を続いて15mLの無水酢酸中の6−(5−カルボキシペンチル)−5,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(685.0mg、2.04mmol)と混合した。この撹拌混合物に2.5mLのトリエチルアミンを添加した。この反応混合物を90℃にまで1時間にわたって加熱すると青色の溶液が得られ、この溶液を次に室温にまで冷却した。未精製生成物を減圧下で濃縮し、CH2Cl2に溶解させた後、2MのHClで洗浄した。次に、有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮すると青色の固形物が得られた。生成物(600.0mg、56.6%)をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィで精製すると、黒色の固形物が得られた。1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ8.49(s、2H)、7.07(m、8H)、6.22(t、1H)、6.10(m、2H)、4.13(m、2H)、3.94(m、2H)、2.84(m、4H)、2.22(m、4H)、1.67(s、9H)、1.23(m、4H)、0.83(m、4H)ppm、C364322について計算したMSm/z(M+):535.7。実測値:535.4(M+、ESI+)。
【化33】

【0171】
5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムトリフルオロアセテート(PBI3525)
1mLのDMFに溶解させた遊離酸の形態の上記の色素(10mg、0.019mmol)に、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(11.3mg、0.037mmol)及び65μLのジイソプロピルエチルアミンを添加した。この反応混合物を1時間にわたって暗所において撹拌し、水で希釈し、RP−HPLCで精製すると、スクシンイミジルエステル(13.7mg、98.0%)が青色の固形物として得られた。C404634について計算したMSm/z(M+):632.5。実測値:632.6(M+、ESI+)。
【0172】
実施例2:中間体及び生物学的標識の調製。化合物PBI3742
【化34】

エチル2−アセチル−8−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−メチルオクタノエート
エチル−2−メチルアセトアセテート(10.0g、69.36mmol)を5mLのDMFに溶解させ、これを0℃の20mLのDMF中のNaH(2.77g、69.36mmol)の懸濁液に滴加した。添加が完了し、この混合物を室温にまで30分にわたって温まるにまかせると透明な橙色の混合物が得られ、この混合物を0℃にまで冷却した。この混合物に、5mLのDMF中の溶液としての6−ブロモヘキサノエート(23.56g、79.77mmol)を20分にわたって滴加した。反応混合物を一晩にわたって60℃にまで温め、次に室温にまで冷却し、酢酸エチルで希釈した。有機層をまず希釈NH4Cl溶液、続いて水で洗浄した。分離した有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮すると黄色の油が得られた。この未精製生成物をシリカゲルクロマトグラフィに供すると、無色の油(13.5g、54.3%)が得られた。1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ4.16(m、2H)、3.56(t、2H)、2.11(s、3H)、1.84(m、1H)、1.74(m、1H)、1.46(m、2H)、1.25(m、6H)、1.14(M、2H)、0.86(d、9H)、0.01(d、6H)ppm、C19394Siについて計算したMSm/z(M+H):359.26。実測値:359.3(M+H、ESI+)。
【化35】

【0173】
9−ヒドロキシ−3−メチルノナン−2−オン
エチル2−アセチル−8−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−メチルオクタノエート(13.5g、37.65mmol)を、10mLのCH3OHに溶解させ、次にこれに50mLの水中の5gのNaOHを添加した。次に、この混合物を50℃にまで一晩にわたって加熱した。反応混合物の体積を約50mLにまで減圧下で低下させ、2MのHClの添加によってpH1にまで酸性化した。この得られた混合物を60℃にまで5時間にわたって加熱した。室温にまで冷却した後、生成物をEtOAcに抽出した。濃縮によって黄色の油が得られ、この油をシリカゲルクロマトグラフィに供すると、無色の油(4.25g、65.5%)が得られた。1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ3.60(t、2H)、2.46(m、1H)、2.09(s、3H)、1.54(m、4H)、1.30(m、6H)、1.04(d、3H)ppm、C10202について計算したMSm/z(M+H):173.2。実測値:173.1(M+H、ESI+)。
【化36】

【0174】
6−(6−ヒドロキシヘキシル)−5,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド
15mLの酢酸及び2.5mLの濃縮HCl中の3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−アミン(1.29g、8.71mmol)及び9−ヒドロキシ−3−メチルノナン−2−オン(1.65g、9.58mmol)の溶液を、加熱して1時間にわたって還流させた。この混合物を室温にまで冷却し、水で希釈し、CH2Cl2で抽出した。有機層を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮すると暗色の油が得られ、この油をシリカゲルクロマトグラフィで精製すると、生成物(1.84g、65.7%)が暗色の油として得られた。
【化37】

【0175】
5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−(6−ヒドロキシヘキシル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド
10mLの無水酢酸及び10mLの酢酸中の5,6,6−トリメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムアセテート(1.35g、6.29mmol)及びマロンアルデヒドビス(フェニルイミン)モノヒドロクロリド(1.63g、6.29mmol)の混合物を、2時間にわたって還流させた。次に、この反応混合物を室温にまで冷却し、この時点で揮発性物質を減圧下で除去した。得られた油をCH2Cl2で希釈し、2MのHCl(水性)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、凝固させると褐色の固形物が得られ、この固形物を、20mLの無水酢酸中の6−(6−ヒドロキシヘキシル)−5,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(1.84g、5.73mmol)と混合した。この撹拌溶液に、5mLのトリエチルアミンを添加した。この反応混合物を90℃にまで1時間にわたって加熱し、次に室温にまで冷却した。揮発性物質を減圧下で濃縮すると暗色の油が得られた。この油を3時間にわたって70mLのACN及び70mLの1MのHCl中で還流させた。反応混合物を50mLにまで濃縮し、CH2Cl2で抽出した。分離された有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮すると青色の固形物が得られ、この固形物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィで精製すると、生成物(2.14g、73.7%)が黒色の固形物として得られた。1H−NMR(300MHz、d6DMSO):δ8.34(m、2H)、7.15(m、6H)、6.48(t、2H)、6.61(m、2H)、4.00(s、4H)、3.32(m、9H)、2.81(s、4H)、2.10(m、4H)、1.67(s、9H)、1.11(m、4H)ppm、C364522について計算したMSm/z(M+):521.4。実測値:521.5(M+、ESI+)。
【化38】

【0176】
6−(6−((2−シアノエトキシ)(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノオキシ)ヘキシル)−5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(PBI3742)
4mLの無水CH2Cl2中の上記のアルコール(200mg、0.36mmol)の磁気的撹拌溶液に無水トリエチルアミン(150μL、1mmol)を添加し、続いて2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホルアミダイト(100μL、0.45mmol)を滴加した。作業は全て窒素ガスの不活性雰囲気下で行われた。15分の撹拌後、反応混合物の精製を94グラムアミンカラムで行った(純粋なCH2Cl2中で前平衡化された)。75%のアセトニトリルまでの25分の緩やかなグラジエント勾配を採用した。所望の化合物は約40%のアセトニトリルで溶出した。適当なフラクションをプールし、濃縮すると250mgのアミダイトが得られた。31PNMR(121MHz、CDCl3):δ148.07、C456242Pについて計算したMSm/z(M+):721.46。実測値:721.5(M+、ESI+)。
【0177】
実施例3:中間体及び生物学的標識の調製。化合物PBI3526、PBI3665、PBI3688、PBI3786及びPBI3785
【化39】

ナトリウム1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−スルホネート
1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを、40mLの0℃の発煙硫酸に15分にわたって滴加した。次に、この混合物を、100℃にまで1時間にわたって撹拌しながら加熱した。0℃にまで冷却した後、飽和NaCl(水性)を滴加すると、未精製の生成物が白色の固形物として沈殿した。この固形物を最初は冷却したイソプロパノール、次にジエチルエーテルで洗浄し、次に真空下で乾燥させると所望の生成物が白色の固形物として得られた。1H−NMR(300MHz、d6DMSO):δ7.43(m、2H)、7.21(d、1H)、3.38(m、2H)、2.81(t、2H)、1.96(m、2H)ppm、C910NO3Sについて計算したMSm/z(M−):212.04。実測値:212.0(M−、ESI−)。
【化40】

【0178】
5,6,6−トリメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート
ナトリウム1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−スルホネート(6.4g、30.0mmol)を、15mLの氷酢酸中に撹拌しながら懸濁させた。これに10mLの水中のNaNO2(2.77g、33.0mmol)を15分にわたって滴加した。次に、この反応混合物を45分にわたって室温で撹拌した。続いて、3−メチル−2−ブタノン(4.8mL、45mmol)を添加し、次に亜鉛末(5.886g、90.0mmol)を添加した(これは発熱反応を制御するために少量ずつ添加された)。反応混合物を加熱して1時間にわたって還流させ、室温にまで冷却し、揮発性物質を減圧下で除去した。イソプロパノールを残留物に添加し、一晩にわたって撹拌すると、生成物が沈殿した。灰色の固形物(1.3g、15.5%)を真空濾過で回収した。1H−NMR(300MHz、d6−DMSO):δ7.81(d、1H)、7.38(d、1H)、4.30(t、2H)、3.50(s、3H)、2.90(t、2H)、2.20(s、6H)ppm、C1418NO3Sについて計算したMSm/z(M+):280.1。実測値:280.1(M+、ESI+)。
【化41】

【0179】
6−(5−カルボキシペンチル)−5,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート
ナトリウム1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−スルホネート(1.72g、7.30mmol)を、8mLの氷酢酸中に撹拌しながら懸濁させた。これに10mLの水中のNaNO2(611.0mg、8.86mmol)を15分にわたって滴加した。この反応混合物を45分にわたって室温で撹拌した。続いて、7−メチル−8−オキソノナン酸(4.8mL、45mmol)を添加し、次に亜鉛末(1.58g、24.2mmol)を添加した(これは少量ずつ添加された)。反応混合物を加熱して1時間にわたって還流させ、室温にまで冷却し、揮発性物質を減圧下で除去した。イソプロパノールを残留物に添加し、一晩にわたって撹拌すると、生成物が沈殿した。灰色の固形物(500mg、18.4%)を真空濾過で回収した。1H−NMR(300MHz、CD3OD):δ8.00(d、1H)、7.50(d、1H)、4.50(m、2H)、3.35(m、3H)、3.10(m、2H)、3.05(t、2H)、2.25(m、2H)、1.81(s、3H)、1.40(m、2H)、1.15(m、2H)、0.60(m、2H)ppm、C1926NO5Sについて計算したMSm/z(M+2H):382.2。実測値:383.2(M+2H、ESI+)。
【化42】

【0180】
6,6−ジメチル−5−((1E,3E)−4−(N−フェニルアセトアミド)ブタ−1,3−ジエニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート
5mLの無水酢酸及び5mLの酢酸中の6−(5−カルボキシペンチル)−5,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(1.3g、4.65mmol)及びマロンアルデヒドビス(フェニルイミン)モノヒドロクロリド(1.60g、5.58mmol)の混合物を、加熱して4時間にわたって力強く撹拌しながら還流させた。この混合物を冷却し、揮発性物質を減圧下で除去した。得られた固形物をEtOAcでトリチュレートし、高真空下で乾燥させるとヘミシアニンが赤褐色の固形物(592.1mg、28.3%)として得られた。1H−NMR(300MHz、CD3OD):δ8.65(d、1H)、8.28(d、1H)、7.93(d、1H)、7.61(m、2H)、7.37(m、2H)、6.58(d、1H)、5.57(m、1H)、4.25(m、2H)、2.97(t、2H)、2.21(m、2H)、2.10(s、3H)、1.95(s、6H)ppm、C252724Sについて計算したMSm/z(M+):451.17。実測値:451.3(M+、ESI+)。
【化43】

【0181】
(E)−2−((2E,4E)−5−(6−(5−カルボキシペンチル)−6−メチル−7−スルホ−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン)−1,1−ジメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−9−スルホネート
5mLの無水酢酸中の6,6−ジメチル−5−((1E,3E)−4−(N−フェニルアセトアミド)ブタ−1,3−ジエニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート及び6−(5−カルボキシペンチル)−5,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネートの撹拌混合物に、5mLのピリジンを添加した。この反応混合物を110℃にまで2時間にわたって加熱した。室温にまで冷却した後、生成物を酢酸エチルで沈殿させ、Et2Oで洗浄し、真空濾過で単離した。最終生成物を逆相HPLCで精製すると、青色の固形物が得られた。C3643282について計算したMSm/z(M+H):695.25。実測値:695.3(M+H、ESI+)。
【化44】

【0182】
(E)−2−((2E,4E)−5−(6−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−6−メチル−7−スルホ−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン)−1,1−ジメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−9−スルホネート(PBI3526)
6mLのDMFに溶解させた遊離酸の形態の上記の色素(160mg、0.23mmol)に、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(104.0mg、0.35mmol)及び195μLのジイソプロピルエチルアミンを添加した。この反応混合物を1時間にわたって暗所において撹拌し、水で希釈し、RP−HPLCで精製すると、スクシンイミジルエステル(85.0mg、46.7%)が青色の固形物として得られた。C40453102について計算したMSm/z(M+):791.25。実測値:790.8(M+、ESI+)。
【化45】

【0183】
6−(25−クロロ−6−オキソ−10,13,16,19−テトラオキサ−7−アザペンタコシル)−5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−9−スルホ−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(PBI3665)
5mLのDMFに溶解させた遊離酸の形態の上記の色素(170mg、0.24mmol)に、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(73.5mg、0.24mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(85μL、0.49mmol)を添加した。N,18−ジクロロ−3,6,9,12−テトラオキサオクタデカン−1−アミンを、0.5Mの溶液(0.5mL、0.24mmol)として添加した。この反応混合物を一晩にわたって暗所において撹拌し、水で希釈し、逆相HPLCで精製すると、生成物(36.4mg、15%)が暗色の固形物として得られた。C5071ClN3112について計算したMSm/z(M+H):988.4。実測値:988.3(M+H、ESI+)。
【化46】

【0184】
5−((1E,3E)−3−((E)−2−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)−6−ヒドロキシヘキシ−1−エニル)−6,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(PBI3688)
5mLのEtOH中の5,6,6−トリメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムアセテート(500.0mg、1.93mmol)の撹拌溶液に、5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−3−カルバルデヒド(93mg、0.83mmol)及び2.5mLの酢酸を添加した。得られた溶液を、50℃にまで2時間にわたって加熱した。冷却後、揮発性物質を減圧下で除去した。その結果得られる残留物を5mLのエタノール/2mLのトリエチルアミンに溶解させる。この混合物を、加熱して2.5時間にわたって還流させ、室温にまで冷却し、CH2Cl2で希釈し、2MのHCl(水性)で洗浄し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィで精製すると、生成物が青色の固形物として得られた。1H−NMR(CDCl3、300MHz):δ7.54(d、2H)、7.10(m、6H)、6.32(d、2H)、4.14(t、4H)、3.76(t、2H)、2.81(m、6H)、2.25(m、4H)、1.80(m、2H)、1.67(s、12H)ppm、C34412Oについて計算したMSm/z(M+):493.3。実測値:493.4(M+、ESI+)。
【化47】

【0185】
(E)−2−((E)−3−((E)−2−(6,6−ジメチル−7−スルホ−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ビニル)−6−ヒドロキシヘキシ−2−エニリデン)−1,1−ジメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−9−スルホネート(PBI3786)
30mLのEtOH中の5,6,6−トリメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(3.80g、13.55mmol)の撹拌溶液に、5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−3−カルバルデヒド(690.0mg、6.16mmol)及び8mLの酢酸を添加した。得られた溶液を、50℃にまで2.5時間にわたって加熱した。冷却後、揮発性物質を減圧下で除去した。残留物を、30mLのエタノール/5mLのトリエチルアミンに溶解させた。この混合物を、加熱して3時間にわたって還流させ、室温にまで冷却し、2MのHCl(水性)で酸性化し、濃縮した。得られた固形物をイソプロパノール中で撹拌すると、生成物が青色の固形物として得られ、この固形物は真空濾過によって回収された。C3441272について計算したMSm/z(M+):653.24。実測値:653.2(M+、ESI+)。
【化48】

【0186】
5−((1E,3E)−3−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−6−(6−ヒドロキシヘキシル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(PBI3785)
10mLの無水酢酸及び10mLの酢酸中の5,6,6−トリメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムアセテート(1.0g、3.19mmol)及びN,N’−ジフェニルホルムアミジン(939.6mg、4.79mmol)の混合物を、2時間にわたって還流させた。室温にまで冷却した後、揮発性物質を減圧下で除去した。得られた油をCH2Cl2で希釈し、2MのHCl(水性)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、凝固させると褐色の固形物が得られた。この固形物を、15mLの無水酢酸中の6−(6−ヒドロキシヘキシル)−5,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(1.13g、3.51mmol)と混合した。この撹拌混合物に2.5mLのトリエチルアミンを添加した。この反応混合物を90℃にまで1時間にわたって加熱すると暗色の混合物が得られた。室温にまで冷却した後、揮発性物質を減圧下で除去した。残留物をCH2Cl2に溶解させ、2MのHClで洗浄した。分離された有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮すると赤色の固形物が得られた。これを続いて75mLのACN/75mLの1MのHCl(水性)に溶解させ、2.5時間にわたって還流させた。混合物の体積を約50mLにまで低下させ、生成物をCH2Cl2で抽出した。溶媒を蒸発させると暗色の固形物が得られ、この固形物をシリカゲルクロマトグラフィに供すると、生成物が赤色の固形物として得られた。C34432Oについて計算したMSm/z(M+):495.3。実測値:495.5(M+、ESI+)。
【0187】
実施例4:中間体及び生物学的標識の調製。化合物PBI3845及びPBI3838
【化49】

6,7,7−トリメチル−2,3,4,7−テトラヒドロ−1H−アゼピノ[3,2,1−hi]インドリウムトリフルオロアセテート(1)
EtOH(35mL)中の1−アミノテトラヒドロベンゾ[b]アゼピン(0.85g)の溶液(J.Med.Chem.36,3693−3699,1993に記載されるように調製された)を、メチルイソプロピルケトン(0.84mL)に添加した。この反応混合物を、加熱して90分にわたって還流させ、冷却し、濃縮した。未精製ヒドラゾンをAcOH(20mL)及び濃縮HCl(2mL)に溶解させ、加熱して45分にわたって還流させた。溶媒を除去し、得られた暗色の固形物をシリカゲルクロマトグラフィ(9/1CH2Cl2/MeOH)、続いて逆相分取HPLCで精製すると、所望の生成物(0.6g)が淡紫色の固形物として得られた。1HNMR(DMSO−d6)δ7.61(d、1H)、7.45(t、1H)、7.35(d、1H)、4.54−4.50(m、2H)、3.12(t、2H)、2.72(s、3H)、2.15−2.09(m、2H)、2.05−1.98(m、2H)、1.49(s、6H)、C1520+について計算したMSm/z:(M+)、214.3。実測値:214(M+、ESI+)。
【化50】

【0188】
4,4,5−トリメチル−4,7,8,9,10,11−ヘキサヒドロアゾシノ[3,2,1−hi]インドリウムトリフルオロアセテート
化合物1と同様の手順において、表題の化合物は、1−アミノヘキサヒドロベンゾ[b]アゾシンから合成された(J.Med.Chem.36,3693−3699,1993に記載されるように調製された)。1HNMR(DMSO−d6)δ7.69(d、1H)、7.52(t、1H)、7.38(d、1H)、4.69(t、2H)、3.17(s、2H)、2.81(s、3H)、2.10−2.01(m、2H)、1.85−1.79(m、2H)、1.53(s、6H)、1.40−1.31(m、2H)、C1622+について計算したMSm/z:(M+):228。実測値:228。
【化51】

【0189】
5,6,6−トリメチル−3,6−ジヒドロ−2H−[1,4]チアジノ[2,3,4−hi]インドール−4−イウムトリフルオロアセテート
化合物1と同様の手順において、表題の化合物は、1−アミノベンゾチオモルホリンから合成された(J.Med.Chem.36,3693−3699,1993に記載されるように調製された)。1HNMR(DMSO−d6)δ7.53−7.41(m、3H)、4.59(brs、2H)、3.50(brs、2H)、2.71(s、3H)、1.51(s、6H)、C1316NS+について計算したMSm/z(M+):218。実測値:218(M+、ESI+)。
【化52】

【0190】
3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン(2)
LAH(970mg、25.6mmol)の溶液を、THF50mL中、窒素雰囲気下で還流させた。2H−1,4−ベンゾアキシン(benzoaxin)−3(4H)−オン(1.88g、12.6mmol)の溶液を10分にわたって滴加した。1時間後、反応混合物を氷浴で冷却し、ロシェル塩の溶液でゆっくりとクエンチし、EtOAcでトリチュレートし、セライトプラグで濾過した。溶媒を蒸発させ、未精製の生成物をシリカでのカラムクロマトグラフィ(1:1ヘプタン:EtOAc)で精製すると、1.2gの所望の生成物が得られた。1H−NMR(300MHz、CD2Cl2)δ:6.76(m、2H)、6.61(m、2H)、4.22(m、2H)、3.80(bs、NH)、3.39(m、2H)、C810NOについて計算したMSm/z(M+H)136.08。実測値:136.1(M+H、ESI+)。
【化53】

【0191】
5,6,6−トリメチル−3,6−ジヒドロ−2H−[1,4]オキサジノ[2,3,4−hi]インドール−4−イウム(3)
3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン(1.15g、8.5mmol)を、100mLの丸底フラスコに入った酢酸(10mL)中で室温で撹拌した。水(2mL)中のNaNO2(646mg、9.4mmol)の溶液を添加し、溶液を2時間にわたって撹拌した。3−メチル−2−ブタノン(2.2g、25.5mmol)を添加し、続いてZn(1.67g、25.5mmol)をゆっくりと添加した。この反応混合物を100℃で1時間にわたって還流させ、室温にまで冷却し、蒸発させると褐色を帯びた残留物が得られ、この残留物をシリカでのカラムクロマトグラフィ(1:9MeOH:DCM)で精製すると、所望の生成物(380mg、17.1%)が得られた。1H−NMR(300MHz、CD2Cl2)δ:6.75(m、1H)、6.65(m、2H)、4.39(m、2H)、3.54(bs、2H)、2.04(s、3H)、1.40(s、6H)、C1316NOについて計算したMSm/z(M+)202.12。実測値:202.1(M+)。
【化54】

【0192】
4−(5,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−6−イル)ブタン−1−スルホネート
3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−アミン(2.0g、13.5mmol)及び5−メチル−6−オキソヘプタン−1−スルホン酸(米国特許出願公開第2006/0239922号(Cooperら)に記載されるように調製された)(4.216g、20.2mmol)を、15mLの酢酸及び1.5mLの濃縮HCl中で1時間にわたって還流させた。この混合物を冷却し、揮発性物質を減圧下で除去すると褐色の残留物が得られ、この残留物をフラッシュクロマトグラフィで精製すると、生成物(3.4g、78.4%)が黄色の固形物として得られた。1H−NMR(300MHz、D2O)δ:7.53(m、2H)、7.42(m、1H)、4.44(m、2H)、3.02(t、J=6Hz、2H)、2.74(m、5H)、2.33−2.21(m、4H)、1.59(m、5H)、0.93(m、2H)。
【化55】

【0193】
ナトリウム2−((1E,3Z)−3−(1−(5−カルボキシペンチル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(PBI3845)
2mLの無水酢酸及び2mLの酢酸中の5,6−ジメチル−6−(4−スルホブチル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(250mg、0.59mmol)及びN,N’−ジフェニルホルムアミジン(139.0mg、0.71mmol)の混合物を、2時間にわたって還流させた。室温にまで冷却した後、揮発性物質を減圧下で除去した。得られた油を酢酸エチルでトリチュレートすると褐色の固形物が得られ、この固形物を真空濾過で回収し、高真空下で乾燥させた。この固形物を、2mLの無水酢酸、2mLのピリジン及び0.5mLのトリエチルアミン中の6−(5−カルボキシペンチル)−5,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(0.21mg、0.55mmol)と混合した。この反応混合物を、90℃にまで1時間にわたって加熱すると暗色の混合物が得られた。室温にまで冷却した後、揮発性物質を減圧下で除去し、残留物をRP−HPLCに供すると、生成物(156.4mg、30.8mmol)が赤色の固形物として得られた。
【化56】

【0194】
ナトリウム2−((1E,3Z)−3−(1−(6−(2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エチルアミノ)−6−オキソヘキシル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(PBI3838)
5mLのDMFに溶解させた遊離酸の形態の上記の色素(60mg、0.078mmol)に、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(32.4mg、0.11mmol)及び37.5μLのジイソプロピルエチルアミンを添加した。この反応混合物を、2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エタンアミニウムクロリド(28.0mg、0.11mmol)の添加の前に暗所で0.5時間にわたって撹拌した。この反応混合物を4時間にわたって撹拌し、水で希釈し、RP−HPLCで精製すると、所望の生成物(85.0mg、46.7%)が青色の固形物として得られた。C4766Cl33Na2123について計算したMSm/z(M+HCl):1076.3。実測値:1076.5(M+HCl、ESI+)。
【0195】
実施例5:生物学的標識。化合物PBI3846、PBI3847、PBI3848、PBI3855及びPBI3856
以下の化合物は、上記の方法及び適当な対応する出発原料を利用して調製されている。
【化57】

【0196】
6−((Z)−5−((2E,4E)−5−(6,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロベンゾ[f]ピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン)−6−メチル−2,3,5,6−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[f]ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−6−イル)ヘキサノエート(PBI3846)
【化58】

【0197】
ナトリウム2−((1E,3E,5Z)−5−(1−(6−(2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エチルアミノ)−6−オキソヘキシル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(PBI3847)
【化59】

【0198】
ナトリウム5−((1E,3E,5Z)−5−(1−(5−カルボキシペンチル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−6−(4−スルホナトブチル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(PBI3848).
【化60】

【0199】
ナトリウム5−((E)−2−((E)−2−(4−カルボキシフェノキシ)−3−((E)−2−(1−メチル−9−スルホナト−1−(4−スルホナトブチル)−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキシ−1−エニル)ビニル)−6−メチル−6−(4−スルホナトブチル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(PBI3855).
【化61】

【0200】
ナトリウム2−((E)−2−((E)−2−(4−(2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エチルカルバモイル)フェノキシ)−3−((E)−2−(1−メチル−9−スルホナト−1−(4−スルホナトブチル)−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキシ−1−エニル)ビニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(PBI3856)
【0201】
実施例6:PBI3956の合成
【化62】

2−((1E,3Z)−3−(1−(6−((3−((2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イル)オキシ)プロピル)アミノ)−6−オキソヘキシル)−1−メチル−9−スルホ−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エン−1−イル)−1−メチル−1−(4−スルホブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリン−3−イウム−9−スルホネート(PBI3956)
1mlのDMFに溶解させた化合物3845(30.0mg、0.038mmol)に、N−N−N’−N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(34.3mg、0.11mmol)及び66.2μLのジイソプロピルエチルアミンを添加した。この反応混合物を、3−((2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イル)オキシ)プロパン−1−アミニウムトリフルオロアセテート(20.4mg、0.38mmol)を添加する前に、暗所において0.5時間にわたって撹拌した。この反応混合物を1時間にわたって撹拌し、水で希釈し、RP−HPLCで精製すると、所望の生成物が赤色の固形物として得られた。C48565114について計算したMSm/z(M+H):1006.3。実測値:1006.3(M+H)。
【0202】
実施例7:PBI4011の合成
【化63】

2−((1E,3E,5Z)−5−(1−(6−((3−((2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イル)オキシ)プロピル)アミノ)−6−オキソヘキシル)−1−メチル−9−スルホ−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエン−1−イル)−1,1−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリン−3−イウム−9−スルホネート(PBI4011)
1mLのDMFに溶解させた化合物3526(17.0mg、0.21mmol)に、3−((2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イル)オキシ)プロパン−1−アミニウムトリフルオロアセテート(9.0mg、0.26mmol)及び11.2μLのジイソプロピルエチルアミンを添加した。この反応混合物を暗所で4時間にわたって撹拌し、水で希釈し、RP−HPLCで精製すると、生成物が暗色の固形物として得られた。C4751583について計算したMSm/z(M−):910.1。実測値:910.7(M−)。
【0203】
実施例8:PBI3957の合成
【化64】


2−((1E,3E,5Z)−5−(1−(6−((3−((2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イル)オキシ)プロピル)アミノ)−6−オキソヘキシル)−1−メチル−9−スルホ−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエン−1−イル)−1−メチル−9−スルホ−1−(4−スルホブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリン−3−イウム(PBI3957)
1.5mLのDMFに溶解させた化合物3848(65.0mg、0.08mmol)に、N−N−N’−N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(113.5mg、0.38mmol)及び0.13mLのジイソプロピルエチルアミンを添加した。この反応混合物を2時間にわたって撹拌し、水で希釈し、RP−HPLCで精製すると、スクシンイミジルエステルが青色の固形物として得られた。1.5mLのDMFに溶解させたこの化合物(68.9mg、0.08mmol)に、3−((2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イル)オキシ)プロパン−1−アミニウムトリフルオロアセテート(52.4mg、0.15mmol)及び39μLのジイソプロピルエチルアミンを添加した。この反応混合物を2時間にわたって暗所で撹拌し、水で希釈し、RP−HPLCで精製すると、所望の生成物(10.0mg)が青色の固形物として得られた。C50585114について計算されたMSm/z(M+H):1032.3。実測値:1032.3(M+H)。
【0204】
実施例9:3環式シアニンのN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルの使用のための一般的な手順
1マイクロモルスケール:5’−アミノ標識オリゴヌクレオチドを、ABI 394 DNAシンセサイザー(1マイクロモル)で、5'−Amino modifier C6 TFAアミダイト(Glen Research社)を使用して合成した。濃縮水酸化アンモニウム中での一晩にわたる60℃での脱保護によって、5'−アミノヘキシル標識オリゴヌクレオチドが生成された。得られたオリゴヌクレオチドを蒸発乾固させ、1mLの0.5MのNaClに再溶解させ、NAP−10サイズ排除カートリッジ(GE Healthcare社)で脱塩した。脱塩後、オリゴヌクレオチドを蒸発乾固させ、続いて200μLの0.5Mの炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)に再溶解させた。3環式シアニンスクシンイミジルエステル(3526、3525)を、DMFに濃度20μL/mgで溶解させた。色素/DMF溶液の2x20μLのアリコートを、溶解オリゴヌクレオチドに30分間隔で添加した。2回目の添加後、反応混合物を1時間にわたって混合した。1時間後、これを水で1mLにまで希釈し、NAP−10カラム(GE Healthcare社)で脱塩した。NAP−10溶出物を、逆相HPLCによってPhenomonex Jupiter C18カラムでアセトニトリル/0.1M TEAA緩衝系を使用して精製した。HPLC精製オリゴヌクレオチドを蒸発乾固させ、0.01Mのトリエチルアンモニウムバイカーボネートに再溶解させ、NAP−10カラムで脱塩した。最終脱塩工程後、オリゴヌクレオチドを蒸発乾固させた。
【0205】
100マイクロモルスケール:5’−アミノ標識オリゴヌクレオチドを、AKTA OligoPilot(100マイクロモル)DNAシンセサイザーで、5'−Amino modifier C6 TFAアミダイト(Glen Research社)を使用して合成した。濃縮水酸化アンモニウム中での一晩にわたる60℃での脱保護によって、5'−アミノヘキシル標識オリゴヌクレオチドが生成された。得られたオリゴヌクレオチドを蒸発乾固させ、75mLの2MのNaClに再溶解させ、500mL G−25カラム(GE Healthcare社)で脱塩した。脱塩後、オリゴヌクレオチドを蒸発乾固させ、続いて50mLの0.5Mの炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)に再溶解させた。3環式シアニンスクシンイミジルエステルを、DMFに濃度20μL/mgで溶解させた。2400μLの色素/DMF溶液を、溶解オリゴヌクレオチドに滴加した。この反応混合物を1時間にわたって混合した。色素コンジュゲートオリゴヌクレオチドを、酢酸ナトリウム(pH5.5)溶液で中和し、2倍の体積のエタノールから沈殿させた。沈殿したオリゴヌクレオチドを、9000rpmで60分にわたって遠心分離した。上清をデカントして廃棄した。得られた固形物を70mLの水に溶解させ、イオン交換クロマトグラフィで精製した。オリゴヌクレオチドを濃縮し、接線流限外濾過(tangential flow ultrafiltration)を利用して脱塩し、続いて蒸発乾固させた。
【0206】
実施例10:3環式シアニンのホスホルアミダイトの使用のための一般的な手順
1マイクロモルスケール:5’−3環式シアニン標識オリゴヌクレオチドを、ABI 394 DNAシンセサイザー(1マイクロモル)で、Promega Biosciences LLC社の、アセトニトリルに0.1Mで溶解させたシアニンアミダイト(3742)を使用して合成した。t−ブチルアミン/MeOH/水(25/25/50)中での2時間にわたる60℃での脱保護によって、5'−3環式シアニン標識オリゴヌクレオチド(Pac−dA、ipPAc−dG及びAc−dCアミダイトが、温和な脱保護条件に必要とされた)が生成された。得られたオリゴヌクレオチドを蒸発乾固させ、0.01Mのトリエチルアンモニウムバイカーボネートに再溶解させ、逆相HPLCによってPhenomonex Jupiter C18カラムでアセトニトリル/0.1M TEAA緩衝系を使用して精製した。HPLC精製オリゴヌクレオチドを蒸発乾固させ、0.01Mのトリエチルアンモニウムバイカーボネートに再溶解させ、NAP−10カラム(GE Healthcare社)で脱塩した。最終脱塩工程後、オリゴヌクレオチドを蒸発乾固させた。
【0207】
100マイクロモルスケール:5’−3環式シアニン標識オリゴヌクレオチドを、AKTA OligoPilot DNAシンセサイザー(100マイクロモル)で、Promega Biosciences LLC社の、アセトニトリルに0.1Mで溶解させたシアニンアミダイト(3742)を使用して合成した。t−ブチルアミン/MeOH/水(25/25/50)中での2時間にわたる60℃での脱保護によって、5'−3環式シアニン標識オリゴヌクレオチド(Pac−dA、ipPAc−dG及びAc−dCアミダイトが、温和な脱保護条件に必要とされた)が生成された。得られたオリゴヌクレオチドを蒸発乾固させ、0.01Mのトリエチルアンモニウムバイカーボネートに再溶解させ、イオン交換HPLCで精製した。得られた精製オリゴヌクレオチドを濃縮し、接線流限外濾過を利用して脱塩し、蒸発乾固させた。
【0208】
実施例11:マルチプレックスPCRにおけるシアニン色素の使用
DNAテンプレートを、単一の反応器において、個々のショートタンデムリピート(STR)遺伝子座アメロゲニン、D3S1358、TH01、D2S11、D18S51、D10S1248、D1S1656、D2S1338、D16S539、D22S1045、vWA、D8S1179、FGA、D12S391及びD19S433で同時に増幅した。PCR増幅を、5μLのPowerPlex(登録商標)ESX 16 Master Mix(Promega社)、2.5μLのPowerPlex(登録商標)ESX 16 10x Primer Mix(Promega社)、0.5ngのテンプレートDNA及び4.0単位のGoTaq(登録商標)Hot Start Polymerase(Promega社)を水で最終体積25μlにして使用して実行した。各STR遺伝子座のための各プライマー対の一方のプライマーを、表1に示すように標識した。
【0209】
【表3】

【0210】
DNAテンプレートを、GeneAmp(登録商標)PCR System 9700サーマルサイクラーを使用し、以下の増幅プロトコルで増幅した:96℃で2分、96℃で30秒、59℃で2分、72℃で90秒、続いて60℃で45分のホールドを30サイクル。
【0211】
増幅産物をHiDi(登録商標)ホルムアミド及びCC5 Internal Lane Standard500(DG1521)と混合し、次にApplied Biosystems 3130ジェネティックアナライザーで3Kv、5秒のインジェクションを使用してキャピラリー電気泳動によって可視化した。分析は、Applied Biosystems社のGene Mapper(登録商標)IDソフトウェアv3.2を使用して行った。増幅及びCC5 Internal Lane Standard500の結果を図3及び4にそれぞれ示す。
【0212】
実施例12:HaloTagを発現する哺乳動物細胞のリガンドPBI3847での標識
化合物3847を、まずDMSO中で1mMの使用濃度にまで希釈し、−20℃で保管した。イメージング1日前に、HaloTag−ECS(細胞表面でHaloTag(登録商標)を示す細胞外表面(Extracellular Surface))又はHaloTag−NLS(核HaloTag(登録商標)タンパク質のための核局在配列(Nuclear Localization Sequence))を安定して発現する非形質移入CHO K1細胞、U2OS細胞をそれぞれ8チャンバーカバースリップ上にプレーティングし、一晩インキュベートした。次の日、リガンドPBI3847を、温かい完全培養培地で1:200に希釈すると、5倍希釈作業原液が得られた(F12+10%FBS及びMcCoyの5A+10%FBSをCHO K1及びU2OS細胞にそれぞれ使用した)。細胞培地の5分の1を、最終標識濃度1μMとするためにリガンドPBI3847の5倍希釈作業原液と置き換え、細胞を15分にわたって37℃、5%CO2でインキュベートした。15分の標識後、リガンドPBI3847を含有している培地を同体積の温かく新鮮な完全培地と2回置き換え、次に細胞を37℃、5%CO2で30分にわたって置き、結合していないリガンドを洗い出した。洗浄に続いて、培地を同体積の温かく新鮮な完全培地で置き換え、細胞のイメージングを行った。全てのイメージングは、37℃、5%CO2の環境チャンバ、赤色HeNeレーザー(λ633)及び適当なフィルターセットを備えたOlympus FV500共焦点顕微鏡を使用して行われた。
【0213】
実施例13:化合物PBI3956を使用した部位特異的タンパク質標識
N−末端システイン(Cys)残基を含有するタンパク質の部位特異的標識を、アミノ末端にHaloTagタンパク質、システイン残基が続くTEVプロテアーゼ切断部位及び甲虫ルシフェラーゼ(Luc)のためのコード領域を有する融合タンパク質コンストラクトを使用して実証した。このコンストラクトを、大腸菌(E.coli)細胞に形質移入し、次に凍結した。この凍結され形質移入された大腸菌細胞を音波処理によって溶解させ、細胞デブリを遠心分離によって除去した。清澄化されたライセートをHaloLinkレジンカラム(Promega社)に通すことによって、融合タンパク質を補足した。レジンを50mMのHEPES(pH7.0)で洗浄し、ProTEVプロテアーゼ(Promega社)を含有する1MのHEPES(pH7.0)バッファをレジンカラムに適用することによって、融合コンストラクトをTEVプロテアーゼ部位で切断した。放出された融合タンパク質Cys−Lucを回収し、ProTEVプロテアーゼをNi系親和性レジンであるHisLink(登録商標)タンパク質精製用レジン(Promega社)を使用して除去した。放出されたタンパク質の濃度を、クーマシータンパク質アッセイによって測定し、SDS PAGEゲル分析を、このタンパク質溶液に行った。溶液は、本質的に1種類のタンパク質Cys−Lucを含有すると判明した。精製及び分析に続いて、DMSO中の10μlの2mMのPBI3956を200μlに水で希釈し、10μlを反応管に入れた。50μlのCys−Luc試料(タンパク質濃度:5.6mg/ml)及び250μlの100mMのHEPES(pH7.5)を混合し、20μlのこの溶液を、PBI3956が入った反応管に追加した。トリス−グリシンSDSサンプルバッファーの0.5mlサンプルを、50μlのシスタミン(20mM)及び50μlの100mMの2−メルカプトエタノールと混合し、10μlのこの混合物を反応管に追加した。この混合物を室温で90分にわたってインキュベートした。システイン(トリス−グリシンSDSサンプルバッファー中で20mM)を次に反応混合物に10分にわたって添加することによって、過剰なシアノベンゾチアゾールをクエンチした。この工程の後、反応混合物をZebaスピンカラムで処理すると、80〜90%の精製標識タンパク質が得られた。
【0214】
本明細書に記載の実施形態を本明細書に記載の別の適切な実施形態と組み合わせることによって、追加の実施形態を提供することができる。
【0215】
本明細書で使用の単数不定冠詞(a、an)は「1つ以上(one or more)」を意味する。明細書全体を通して、複数形及び単数形は、数が示されていない限り同じものとして扱われるべきである。
【0216】
当業者なら理解できるように、任意及び全ての目的に関し、特には書面で説明するという観点において、本明細書で開示の全ての範囲は、任意の及び全ての考えられ得る部分範囲、その部分範囲の組み合わせ及び範囲を構成している個々の値、特には整数値も網羅する。挙げられた範囲は、少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分等に分割された同範囲を十分に説明し且つ可能にするものであると容易に認識される。非限定的な例として、本明細書で論じた各範囲を、下3分の1、中3分の1、上3分の1等に容易に分割することができる。また、当業者なら理解できるように、「最高(up to)」、「少なくとも(at least)」、「〜より多い・高い(greater than)」、「〜より少ない・低い(less than)」、「〜を超える(more than)」、「〜以上(or more)」等の全ての表現は挙げられた数値を含み、また上で論じたような部分範囲に続いて分割することができる範囲のことである。同様に、本明細書で開示の全ての比には、より広い比に含まれる全ての下位比(subratio)も含まれる。
【0217】
構成要素を通常のやり方でグループ化する場合(マーカッシュグループ等)、本発明が、1つのものとして挙げられたグループ全体だけではなく、そのグループの各構成要素を個々に及びメイングループの考えられ得る全ての下位グループも網羅することも、当業者ならすぐに認識する。加えて、全ての目的に関して、本発明は、メイングループだけではなく、グループの構成要素の1つ以上が欠けているメイングループも網羅する。本発明は、請求の発明におけるグループ構成要素の1つ以上の明示的な排除も想定している。
【0218】
当業者ならすぐに認識できるように、全ての数値(成分の量、特性(分子量等)、反応条件等を表すものを含む)は近似値であり、用語「約」によって全てのケースにおいて修飾されると理解される。これらの値は、当業者が本発明の教示を利用して得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。このような値が本質的に、そのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる変動性を伴うことも理解される。
【0219】
本明細書で開示の全ての参考文献は、参照により全て具体的に組み込まれる。
【0220】
本願で使用の「工程」の記載は便宜上のものに過ぎず、本明細書に記載の本発明を分類、定義又は限定するものではない。
【0221】
具体的な実施形態について、開示の実施形態及び実施例を参照しながら説明してきたが、これらの実施形態及び実施例は説明上のものに過ぎず、本発明の範囲を限定しない。以下の請求項で定義されるようなその広い態様において本発明から逸脱することなく、通常の技術に従って変更及び改変を加えることができる。
【0222】
全ての出版物、特許及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において、本発明をその特定の好ましい実施形態との関連で説明し、また多くの詳細を説明のために記載してきたが、当業者には、本発明に追加の実施形態の余地があり、また本発明の基本的な原理から逸脱することなく、本明細書に記載の詳細の一部を大きく変化させ得ることが明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(I)
又は式II:
【化2】

(II)
の化合物であって、
式中、
1、R2、R3、R4、R5及びR6が、それぞれ独立してH、アルキル、シクロアルキル、アリール、(アリール)アルキル、ヘテロアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、スルホ又は−L−Rxであり、あるいは
1、R2、R3、R4、R5又はR6の2つの隣接する基が、それらが結合する原子と共に、1、2、3又は4個のアルキル、シクロアルキル、アリール、(アリール)アルキル、ヘテロアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、スルホ又は−L−Rx基で任意に置換される縮合ベンゾ環を形成し、
各W1及びW2が、それらが結合する原子と共に、独立して5、6、7又は8員複素環であり、該環が任意にO、S又はNから選択される第2のヘテロ原子を含み、Nが、存在する場合、H、アルキル、(アリール)アルキル又は−L−Rxで置換され、また、W1又はW2の少なくとも1つの炭素原子がR7で任意に置換され、
各Yが、独立してCR77、S、O、CF2又はNR7であり、
各R7が、独立してH、(C1〜C8)アルキル、アリール、(アリール)アルキル、オキソ又は−L−Rxであり、
各Lが、独立して直接結合又はリンカーであり、該リンカーが式−A−B−Z−の2価の基であり、Aが、直接結合、又は任意で1つ以上の不飽和を含み、任意で1つ以上のオキソ基で置換され、また任意で1つ以上のO原子によって中断される(C1〜C12)アルキル鎖であり、Bが、直接結合、又は−NHC(=O)−、−C(=O)NH−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−若しくは−N(R8)−基であり、Zが、直接結合、又は任意で1つ以上の不飽和を含み、任意で1つ以上のオキソ基で置換され、また任意で1つ以上のO原子によって中断される(C1〜C20)アルキル鎖であり、
各R8が、独立してH、(C1〜C6)アルキル又は窒素保護基であり、
9が、−L−Rx、−O−Ph−Rx、−O−Ph−L−Rxであり、
各Rxが、独立してカルボン酸の活性化エステル、マレイミド、アミン、アルコール、スルホニルハライド、メルカプタン、ボロネート、ホスホルアミダイト、イソシアネート、ハロアセトアミド、アルデヒド、アジド、アシルニトリル、光活性化性基、4−シアノベンゾチアゾール、(C1〜C8)アルキルハライド、カルボン酸又はスルホ基であり、
ただし、少なくとも1つの−L−Rx基が存在し、また少なくとも1つのRxがスルホ基ではなく、
アルキル、シクロアルキル、アリール、(アリール)アルキル又はヘテロアリールが、1、2又は3個のハロ、ヒドロキシ又はスルホ基によって任意に置換され、
mが0又は1であり、
nが0、1又は2であり、
式I又はIIの化合物がカチオン性の場合、有機又は無機アニオンが存在する、
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
xが、スクシンイミジル、スルホスクシンイミジル、マレイミド若しくは1−オキシベンゾトリアゾリル基に共有結合される−C(=O)O−基を含むカルボン酸の活性化エステル、−NH2、−OH、−SO2Cl、−SO2Br、−SH、−B(OH)2、−B(OR)2であってRがアルキル又はアリール、−O−P(N(アルキル)2)(O−アルキレン−CN)、−N=C=O、−C(=O)−Cl、−C(=O)−Br、−C(=O)−I、−C(=O)H、−N3、−C(=O)CN、マレイミド基、ジアジリニル基、アジドアリール基、プソラレン誘導体、ベンゾフェノン、6’−O連結−4−シアノベンゾチアゾール、(C1〜C7)アルキル−メチレンクロリド、(C1〜C7)アルキル−メチレンブロミド、(C1〜C7)アルキル−メチレンヨージド、−CO2H又は−SO3Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1、R2、R3、R4、R5及びR6が、それぞれ独立してH、F又はスルホである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
1が、式I又はIIのW1環のNに対してパラ位に−CH2−、−O−、−S−又は−NH−を有する6員環を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
2が、式I又はIIのW2環のNに対してパラ位で−CH2−、−O−、−S−又は−NH−を有する6員環を形成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
1、W2又はその両方が、環の炭素上で−(CH2m−OH又は−(CH2m−CO2Hであってmが1〜約12である基で置換される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
各YがCR77であり、Yの一方のR7がメチルであり、Yのもう一方のR7が−L−Rxである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
少なくとも1つのLが、(C1〜C12)アルキル又は(C1〜C12)アルキル−B−(CH2CH2O)n(CH2m−であり、nが1〜6であり、mが1〜8であり、Bが−NHC(=O)−、−C(=O)NH−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−、−NH−又は直接結合である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
少なくとも1つのLが、(C1〜C10)アルキル又は(C1〜C12)アルキル−C(=O)NH−(CH2CH2O)n(CH2m−であり、nが1〜6であり、mが1〜8である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式IIのR9が、−OPh−CO2H、−OPh−NH−(C1〜C12)アルキル−Rx又は−OPh−C(=O)NH−(CH2CH2O)n(CH2m−Rxであり、nが1〜6であり、mが1〜8である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
式IIのmが1である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
式Iのnが1又は2である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
2、3又は4個の−L−Rx基が存在する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
無機アニオンがハロアニオンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムトリフルオロアセテート(3525)、
6−(6−((2−シアノエトキシ)(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノオキシ)ヘキシル)−5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(3742)、
(E)−2−((2E,4E)−5−(6−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−6−メチル−7−スルホ−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン)−1,1−ジメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−9−スルホネート(3526)、
6−(25−クロロ−6−オキソ−10,13,16,19−テトラオキサ−7−アザペンタコシル)−5−((1E,3E,5E)−5−(1,1−ジメチル−9−スルホ−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(3665)、
5−((1E,3E)−3−((E)−2−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)−6−ヒドロキシヘキシ−1−エニル)−6,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(3688)、
(E)−2−((E)−3−((E)−2−(6,6−ジメチル−7−スルホ−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ビニル)−6−ヒドロキシヘキシ−2−エニリデン)−1,1−ジメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−9−スルホネート(3786)、
5−((1E,3E)−3−(1,1−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−6−(6−ヒドロキシヘキシル)−6−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウムクロリド(3785)、
ナトリウム−2−((1E,3Z)−3−(1−(5−カルボキシペンチル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(3845)、
ナトリウム2−((1E,3Z)−3−(1−(6−(2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エチルアミノ)−6−オキソヘキシル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)プロプ−1−エニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(3838)、
6−((Z)−5−((2E,4E)−5−(6,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロベンゾ[f]ピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−5−イル)ペンタ−2,4−ジエニリデン)−6−メチル−2,3,5,6−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[f]ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−6−イル)ヘキサノエート(3846)、
ナトリウム2−((1E,3E,5Z)−5−(1−(6−(2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エチルアミノ)−6−オキソヘキシル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(3847)、
ナトリウム5−((1E,3E,5Z)−5−(1−(5−カルボキシペンチル)−1−メチル−9−スルホナト−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−6−メチル−6−(4−スルホナトブチル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(3848)、
ナトリウム5−((E)−2−((E)−2−(4−カルボキシフェノキシ)−3−((E)−2−(1−メチル−9−スルホナト−1−(4−スルホナトブチル)−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキシ−1−エニル)ビニル)−6−メチル−6−(4−スルホナトブチル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(3855)、
ナトリウム2−((E)−2−((E)−2−(4−(2−(2−(6−クロロヘキシルオキシ)エトキシ)エチルカルバモイル)フェノキシ)−3−((E)−2−(1−メチル−9−スルホナト−1−(4−スルホナトブチル)−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキシ−1−エニル)ビニル)−1−メチル−1−(4−スルホナトブチル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−9−スルホネート(3856)又は
5−((E)−2−((E)−3−((Z)−2−(1−(25−クロロ−6−オキソ−10,13,16,19−テトラオキサ−7−アザペンタコシル)−1−メチル−9−スルホ−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−2(4H)−イリデン)エチリデン)−2−(4−スルホフェノキシ)シクロヘキシ−1−エニル)ビニル)−6−メチル−6−(4−スルホブチル)−1,2,3,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリニウム−7−スルホネート(3921)、
である請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
試料中の選択された分子を検出する方法であって、
a)選択された分子を有すると疑われる試料を、請求項1〜15に記載の化合物及び選択された分子のためのリガンドを含むコンジュゲートを含む組成物と接触させて、混合物を得て、
b)前記混合物における前記化合物の存在又は量を検出する、
ことを含むことを特徴とする、方法。
【請求項17】
前記コンジュゲートが請求項1〜15に記載の化合物を含み、−L−Rxが−リンカー−A−Xであり、リンカーが、任意で1つ以上のN、S又はO原子を含む多原子直線炭素鎖又は分岐炭素鎖であり、
−A−Xがデハロゲナーゼのための基質であり、Xがハロゲンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
リガンドがオリゴヌクレオチドである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
リガンドが、シアノベンゾチアゾール部分である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記シアノベンゾチアゾール部分が、式(VIII):
【化3】

で表され、式中、
Zが、H、F、Cl、Br、I、CN、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルエステル、カルボキシ、カルボン酸塩、アルキルアミド、ホスフェート、アルキルホスフェート、サルフェート、アルキルスルホネート、ニトロ又は任意で無置換である及び任意でアミノ、ヒドロキシ、オキソ(=O)、ニトロ、チオール若しくはハロで置換される(C1〜C10)アルキルであり、
各R1が、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ又は(C1〜C6)アルキルチオであり、各アルキル、アルコキシ又はアルキルチオが、F、Cl、Br、I、アミノ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルスルホネート又はCO2Mで任意に置換され、Mが、H、有機カチオン又は無機カチオンであり、nが0、1又は2であり、
Yが、1つ以上のハロ、ヒドロキシ、オキソ、(C1〜C6)アルキル又は(C1〜C6)アルコキシで任意に置換され、また1つ以上のN(R1)、O、S又は−N−C(=O)−基で任意に中断される(C1〜C16)アルキルを含む連結基であり、あるいはYが不在であり得る、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を含む、試料中の分子の標識に使用される色素コンジュゲートを含むコンジュゲートと、前記分子ためのリガンドとを含むキット。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−503209(P2013−503209A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527968(P2012−527968)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047274
【国際公開番号】WO2011/026085
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】