説明

反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーを含有する、硬質コートを形成する化粧品用組成物

【課題】毛髪への適用後に指に付着することなく、毛髪を乾燥させることもなく、皮脂が存在する場合でさえも良好な化粧品特性を付与し、繰り返しの洗浄に対する耐性が改善された毛髪に硬質コートを付与する化粧品用組成物を提供する。
【解決手段】化粧品的に許容可能な媒体に、少なくとも2つの非光活性化反応性化学官能基を有する非シリコーン骨格の少なくとも1種のポリマーを含有せしめ、反応性官能基をエポキシ、無水物、酸塩化物、エチレンイミノ、アルデヒド等から選択し、該ポリマーをビニルブチラール/ビニルアルコール/酢酸ビニルのコポリマー以外とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性化学官能基を有する非シリコーン骨格の少なくとも1つのポリマーを含有してなり、毛髪に硬質コートを形成可能な非粘着性化粧品用組成物、特に毛髪用組成物に関する。また本発明は、毛髪にこの非粘着性組成物を適用することを含む美容方法、及び毛髪に硬質(堅牢な)コートを生成させるための該組成物の使用にも関する。
【0002】
本発明では、ポリマー(P)のフリーの有機官能基(F)が反応性化学官能基を構成するか否か決定するために、以下に記載するテスト1を実施する:
(1)水、C〜Cアルコール類、エステル類及びケトン類から選択される化粧品的に許容可能な溶媒、好ましくは水にポリマー(P)を入れた溶液又は分散液を調製し、該溶液又は分散液における反応性ポリマーの含有量を0.1重量%〜50重量%とし;
(2)1〜60分間、ポリマー(P)の溶液又は分散液を放置するか、又は次の操作:
(i)攪拌;
(ii)0℃〜100℃の温度で活性化;
(iii)1〜13のpHで活性化;
(iv)ポリマー(P)の少なくとも1つのフリーの有機官能基(F)と反応可能なフリーの化学官能基を担持するポリマー又は分子から選択される少なくとも1種の化学添加剤(A)による活性化であって、該添加剤(A)は、好ましくは、アミン、アルコール、カルボン酸、ジスルフィド及びチオール官能基から選択される、毛髪のものと同一の化学官能基を担持するポリマーであるもの;
の少なくとも1つを施し;
(3)ポリマー(P)の少なくとも1つのフリーの有機官能基(F)が共有結合を形成し、例えば:
− 異なるポリマー(P)に属するフリーの有機官能基(F)に存在する2つの原子、
− 化学添加剤(A)に存在する1つの原子とポリマー(P)に存在する1つの原子、
を結合させるか否かを決定するために、ポリマー(P)の溶液又は分散液を当業者に公知の方法、特に赤外線又はRAMAN分光法により検査し;
(4)共有結合が専ら加水分解又は酸化によって生じない条件下で、共有結合の形成が(3)で検出されるならば、ポリマー(P)は「反応性官能基を有するポリマー」であるとする。
【0003】
本発明の非シリコーン骨格と反応性官能基を有するポリマーは、テスト1の実施により、共有結合を形成可能であるという特定の特徴を有する。この特徴は、強い結合を形成するが、水素結合又は塩類タイプの結合を介して、せいぜい互いに又は添加剤と相互作用するので、テスト1の条件下で反応しない毛髪用組成物の分野で周知のほとんどのポリマーと上記のものを区別する。
本発明は光活性化反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマー、すなわち、200〜800nmの波長を照射した場合に、一又は複数の工程で新規の共有結合を形成する、化学官能基を有するポリマーを除外する。
「非シリコーン骨格のポリマー」なる表現は、その主鎖が専ら-Si-O-Si-配列からなるものではないポリマーを意味する。
【背景技術】
【0004】
毛髪のトリートメントを意図した化粧品には、多くの場合ポリマーが使用される。それらにより、例えばヘアスタイルの保持効果、柔軟効果又は光沢効果を得ることができる。
ポリマーを使用する組成物のいくつかには、不便であるといった欠点がある。例えば、ポリマーを含有する製品を適用した後、手を毛髪に通した場合に、いくらかのポリマーが接触中に指に付着してしまうおそれがあった。この移動現象は、たとえ部分的であったとしても、毛髪に粘着質な、又は汚れた印象を残すものであった。この移動の程度は気候条件に依存する。よって、湿気のある環境では特に顕著であった。
さらに、毛髪は、その長さ方向に沿ってもしくはその根本が皮脂で覆われ、そこに化粧品、例えばスタイリング製品を適用すると、該製品は効果的でないばかりか、毛髪をより人工的に光らせ、不潔にしてしまっていた。
【0005】
化粧品に使用されるポリマーの他の欠点は、時折毛髪を乾燥させ、よってその感触を害し、製品に期待されている効果、例えばヘアスタイルの保持及び/又は固定効果を低減させる原因となっているという点にある。さらなる欠点としては、毛髪に付着したポリマーが洗髪中に、非常に素早く除去されるという点を挙げることができる。
特に、毛髪にコート、特に硬質のコンシステンシーを有する皮膜を形成するポリマーの使用を選択した場合、毛髪の感触は特に粗く粘着質で、不快なものである。さらに、この硬質コートは毛髪の洗浄で直ちに除去され、よって少なくともシャンプーの毎にその後に、再び製品を適用する必要があった。
そこで、従来の製品に対し、特に毛髪への適用後に指に付着することなく、毛髪を乾燥させることもなく、皮脂が存在する場合でさえも良好な化粧品特性を付与し、繰り返しの洗浄に対する残留性が改善された、非粘着性化粧品用組成物の製造が必要とされている。
【特許文献1】特願2002−582108号
【発明の開示】
【0006】
本出願人は、驚くべきことに、また予期しないことに、それらが担持する化学官能基の性質に基づき、また毛髪に形成される皮膜の特徴に基づいて、非粘着性化粧品用組成物に導入するポリマーを選択することにより、上述した目的を達成可能であることを見出した。
よって、本発明の主題は、化粧品的に許容可能な媒体に、同一又は異なっていてもよい少なくとも2つの非光活性化反応性化学官能基を有する非シリコーン骨格の少なくとも1種のポリマーを含有せしめてなる非粘着性化粧品用組成物、特に毛髪用組成物において:
(i)室温(22±2℃)及び50%±5%の相対湿度で、該組成物を乾燥させて得られる皮膜が、0.5mm厚、20mm/minの牽引力で測定して100〜2000MPaのヤング率を有し、
(ii)反応性官能基(類)が次の一価又は二価の基:
−エポキシ、
−無水物、
−酸塩化物、
−エチレンイミノ、
−アルデヒド、
−アセタール又はヘミアセタール、
−アミナール又はヘミアミナール、
−ケトン、α-ハロケトン又はα-ヒドロキシケトン、
−ラクトン又はチオラクトン、
−イソシアナート、
−チオシアナート、
−N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、
−イミド、
−イミン、
−イミダート、
−オキサゾリン、オキサゾリニウム、オキサジン又はオキサジニウム、
−ピリジルチオ、
−チオスルファート、
−次の式:
-OCO-A'-COCH
[上式中、A'は結合、1から5の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表す]
に相当するアセトアルキラート、
−AX、
−ASOX、
[ここで、
・Xはハロゲン、OSOH、SOCH、SO、SOTos、N(CH)、OPO、CNから選択される脱離基であり、Tosはトシラート基を表し、Rは水素原子又はCないしCアルキル基を表し、
・Aは一又は複数の不飽和環が挿入されていてもよく、N、S又はO等のヘテロ原子を含有していてもよい、1〜22の炭素原子を有するアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基である]
から選択され、
(iii)少なくとも2つの反応性化学官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーがビニルブチラール/ビニルアルコール/酢酸ビニルのコポリマー以外である、
ことを特徴とする組成物にある。
【0007】
「粘着化(tackifying)組成物」、すなわち、ケラチン繊維に適用して乾燥させた後に、少なくとも:
− 最大層間剥離力Fmax>1ニュートン、及び
− また好ましくは、ガラス表面に接触して配された物質の分離エネルギーEs(M/V)が300μJ未満、
(Fmax及びEs(M/V)は、本出願人により出願された国際公開第98/38969号の国際特許出願に記載されているプロトコルに従い測定される)
により定義される層間剥離性を有するスタイリング物質を付与する組成物は、本発明から除外される。
【0008】
本発明の他の主題は、この非粘着化組成物の適用を含む化粧品に関する。
本発明のさらなる他の主題は、毛髪に硬質コートを生成するための、この非粘着性組成物の使用に関する。
本発明の目的において、「コート」なる用語は、非粘着化化粧品用組成物が乾燥した後に、それぞれの毛髪表面に形成された外皮膜を意味する。この外皮膜は、実質上、毛髪の根本から末端まで伸長し、そこに強く付着している中空円筒状の形態をしている。
何らかの理論に拘束されることを望むものではないが、本出願人は、本発明の化粧品用組成物に存在する非シリコーン骨格のポリマーが、同一又は異なった反応性官能基のために、それら自身で、互いに、敏感であってもなくてもよい毛髪、又は毛髪用組成物の一又は複数の反応成分と、全体的又は部分的に反応し、毛髪に化粧品用組成物を適用した後に反応し、コートを形成することができると考えている。コートの形成メカニズムは、次の反応経路例により、より明確に理解されるであろう:
1)式RHN-A-NHR'を有する組成物の反応成分と、エポキシ反応性官能基を有する2種のポリマーの反応
【化1】

2)毛髪のアミン官能基とエポキシ反応性官能基を有する2種のポリマーの反応
【化2】

【0009】
本発明の非シリコーン骨格のポリマーの、互いに及び/又は毛髪との反応は、pH調節剤、化学活性剤、例えば酸化剤、還元剤、阻害剤又は重合触媒等の成分を添加することにより、又は熱を供給することにより促進され得る。
好ましくは、少なくとも2つの反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーは、反応性化学官能基の全数に対し、数基準で50%未満のカルボン酸エステル官能基を有する。
有利には、脱離基Xは臭素、塩素、ヨウ素及びフッ素から選択されるハロゲンを表す。
【0010】
少なくとも2つの反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーがエポキシ基を有する場合、該基は好ましくは一価であり、次の式(I):
【化3】

[上式中、R、R及びRは互いに独立して、
−水素原子、
−O、N、S、Si及びFから選択される一又は複数のヘテロ原子(類)が挿入されていてもよく、一又は複数のヒドロキシル又はアミノ基で置換されていてもよい、1〜20の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキル基、
−6〜22の炭素原子を有するアリール基、又は
−アルキル基が1〜20の炭素原子を有するアラルキル基、
−5〜7員の複素環、
を表す]
に相当する。
【0011】
少なくとも2つの反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーが無水カルボン酸基を有する場合、該基は好ましくは一価であり、
(a)式(II):
【化4】

[上式中、R、R、R、R及びRは互いに独立して、式(I)のR、R及びRに対して付与したものと同一の意味を有する]、又は
(b)式(III):
【化5】

[上式中、Yは:
−結合、
−O、N、S、Si及びFから選択されるヘテロ原子、
−1〜5の炭素原子を有し、一又は複数のヒドロキシル又はアミノ基で置換されるか未置換である、アルキル又はアルキレン基、
−7〜10の炭素原子を有するアラルキレン基、又は
−1〜6のケイ素原子を有するポリジメチルシロキサン基、
を表し、
、R10及びR11は互いに独立して、式(I)のR、R及びRに対して付与したものと同一の意味を有する]
のいずれかに相当する。
【0012】
少なくとも2つの反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーがアセトアルキラート基を有する場合、該基は、好ましくは次の式(IV):
-R'-OCO-A'-COCH 式(IV)
[上式中、R'は式(I)に記載されたR基の任意の水素原子を除去して得られたもので、A'は上述した意味を有する]
に相当する基に含まれる。
少なくとも2つの反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーが酸塩化物基を有する場合、該基は、好ましくは次の式(V):
-R'-COCl 式(V)
[上式中、R'は式(IV)と同一の意味を有する]
に相当する基に含まれる。
少なくとも2つの反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーがイソシアナート基を有する場合、該基は、好ましくは次の式(VI):
-R'-NCO 式(VI)
[上式中、R'は式(IV)と同一の意味を有する]
に相当する基に含まれる。
【0013】
少なくとも2つの反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーがアセタール基を有する場合、該基は好ましくは一価であり、次の式(VII)、(VIII)及び(IX):
【化6】

[上式中:
、R及びRは式(I)で付与された意味を有し、
R'及びR'は式(I)に記載されたR又はR基の任意の水素原子を除去して得られたものであり、
A''及びA'''は同一又は異なっており、O、N、S、Si及びFから選択される一又は複数のヘテロ原子が挿入されていてもよく、一又は複数のヒドロキシル又はアミノ基で置換されていてもよい、1〜5の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキル又はアルキレン基を表す]
の少なくとも1つに含まれる。
【0014】
少なくとも2つの反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーとして、特に好ましいポリマーは次のものから選択される:
(a)一般式(IV.1):
【化7】

[上式中、RはH又はCHを表し、Yは式(III)のものと同一の意味を有し、Rは好ましくはHを表し、Yは好ましくは-(CH)を表す]
に相当し、アセトアセタート官能基を有する(メタ)アクリラート及びアクリラートモノマーから合成されるコポリマー、
(b)一般式(VII.1)又は(VIII.1):
【化8】

[上式中、Y=O又はNH、
=H又はCH
A、A''、A'''、R及びRは上述した同一の意味を有する]
に相当し、アセタール官能基を有する(メタ)アクリラート及び(メタ)アクリルアミドモノマーから合成されるコポリマー。
式(VII.2):
【化9】

のN-エチルアセタールアクリルアミドから合成されるコポリマーが特に好ましい。
(c)一般式(X):
【化10】

[上式中、Rは上述した同一の意味を有し、
n、m及びpは1〜10000である]
のポリ(ビニルアルコール/酢酸ビニル)と一又は複数のアルデヒドとの反応により誘導されるコポリマー等の、合成又は天然ポリマーを化学的に修飾して得られるアセタール官能基を有するコポリマー。
【0015】
これらの合成法は当業者公知であり、le Precis de Matieres Plastiques, J.P. Trotigon, J. Verdu, Editions Nathan, 1996に記載されている。
本発明で使用される非シリコーン骨格のポリマーは、ポリマーの重合又は修正のための標準的なプロセスに従い得られる。
これらのポリマーを得るための、製造プロセスの工程の一つは、好ましくは:
− 重縮合;
− 2〜9の炭素原子を有する少なくとも1つの環、又は2〜4のケイ素原子を有する環の開裂、これらの環は、N、O、S又はSi等の一又は複数のヘテロ原子を含有可能;
− 基移動(group transfer)による、フリーラジカル又はイオン型の不飽和モノマーの重合;
からなる。
【0016】
本発明のポリマー骨格は、直鎖状、分枝状、多分枝状(hyperbrancched)及び樹状であってよい。それらは一又は複数の種類の繰り返し単位を有していてもよく、よってランダム、交互(alternating)もしくはブロックのホモポリマー又はコポリマーであってよい。
反応性官能基は、本発明のポリマーの主鎖又は側鎖に沿って配置しており、分枝状、多分枝状及び樹状ポリマーの場合においては、鎖の末端にあってもよい。
本発明の非シリコーン骨格のポリマーが、上に列挙した重合プロセスにより形成される場合、反応性官能基は、重合の出発物質として供給されたモノマー上に存在していてもよく、重合中に互いのモノマーが反応して形成されてもよく、重合に加えた少なくとも1つの化学工程、例えばグラフト化からなる工程、特に適切な反応性官能基(I)ないし(IX)を担持する分子又はポリマー単位を得られたポリマー上にグラフトすることにより提供されてもよい。
【0017】
重縮合を実施するためには、例えば、重合原理における段階重合(Step polymerisation in principles of polymerization)(G. ODIAN 3版, Wiley Interscience)に記載されている操作プロトコルに従う。
重縮合の場合では、出発物質として使用されるモノマーは、好ましくはジイソシアナート又は二酸又はジエステルと反応するジアミン及び/又はジオールから選択され、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル及びアジリジン及びその誘導体になり、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン及びその誘導体になる。
例えば、ポリウレタンは、次のモノマー:ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、メチレンビス(ジイソシアン酸シクロヘキサン)、ポリテトラメチレングリコールジヒドロキシルの反応により得られる。
【0018】
2〜9の炭素原子を有するか、2〜4のケイ素原子を有する環の開裂を実施するため、N、O、S及びSiから選択される一又は複数のヘテロ原子を含有していてもよいこれらの環においては、例えば、「総合ポリマー科学(Comprehensive Polymer Science)」(Preg. Press vol.3)の環開裂重合(Ring opening polymerization)に記載されている手順に従う。
環開裂の場合では、ポリマーを形成するための出発物質として使用されるモノマーは、好ましくは環状エステル(ラクトン類)及び環状アミド(ラクタム類)、例えば:
【化11】

【化12】

から選択される。
【0019】
本発明のポリマーが環開裂からなる工程を含む製造プロセスにより形成される場合、反応性官能基は、例えば環上に存在する化学置換基として、出発物質となり、環を含むモノマー上に存在していてもよく、又は環を含むこれらのモノマーが相互反応した後に形成されてもよく、又は環開裂工程に加えた少なくとも1つの化学工程、例えば適切な反応性官能基(I)ないし(IX)を担持する分子又はポリマー単位をグラフトすることからなる分離工程により提供されてもよい。
【0020】
フリーラジカル又はアニオン重合を実施するため、例えば、重合原理(Principles of Polymerization)中のラジカル重合及びアニオン重合(Radical polymerization and anionic polymerization)(G. ODIAN 3版, Wiley Interscience)に記載されている手順に従う。
フリーラジカル又はアニオン重合の場合では、ポリマーを形成するための出発物質として使用されるモノマーは、好ましくはビニル、ジエン、(メタ)アクリラート及び(メタ)アクリルアミドから選択される。
フリーラジカル又はアニオン重合の場合では、ポリマーは、好ましくは共有結合を介して結合する少なくとも10の単位からなる。本発明の組成物の一部を形成するポリマーに存在する反応性官能基は、フリーラジカル反応のための出発物質として供給されるモノマー上に既に存在していてもよく、フリーラジカル反応中に形成されてもよく、あるいは、例えば任意の付加的な化学工程によりポリマー上に提供されてもよい。
【0021】
また、上述にて列挙した反応性官能基を有するように化学的に修飾された天然ポリマー及び非シリコーン骨格の天然ポリマーを使用することもできる。限定するものではないが、例えば、多糖類(セルロース、キトサン、グアー及びそれらの誘導体)及びポリペプチド(ポリアスパラギン酸、ポリリジン及びそれらの誘導体)を挙げることもできる。この場合、非シリコーン骨格のこれらのポリマーは、天然に又は修飾後に、ヒドロキシル、アミン、カルボン酸、チオール、アルデヒド又はエポキシ官能基を有しており、その反応性は組成物においてさらなる変性をさせないで使用されるか(例えば、エポキシ官能基を担持するポリマーで)、あるいは上述にて列挙した化学官能基を提供する。
例えばポリマーは、次のように修飾されうる:
【化13】

【0022】
ヤング率を測定するため、本発明のポリマーを含有する組成物は、テフロン(登録商標)マトリックス中に、500±50μm厚の乾燥皮膜を得るのに適切な量で使用される。乾燥は、皮膜の重量がもはや変化しなくなるまで続けられる。
ヤング率を測定するために、牽引テストを実施する。皮膜を80mm長さ、15mm幅の長方形のテスト片に切断する。
ロイド(Lloyd)なる名称、又はツヴィック(Zwick)なる名称で販売されている機械で、乾燥操作と同一の温度及び湿度条件、すなわち温度22±2℃及び相対湿度50±5%にて、テストを実施する。
テスト片を20mm/minの速度で引っ張り、顎部間の距離は50±1mmである。
【0023】
本発明の方法は、本発明の化粧品用組成物を毛髪に適用することを含む。
有利には、それは、pH変化を引き起こし、及び/又は温度を上昇させ、及び/又は一又は複数の添加剤を添加し、及び/又はすすぐことからなる付加的な操作を含む。
【0024】
本発明の一実施態様では、手入れ、染色、パーマネントウエーブによる成形、毛髪のメークアップ、ヘアスタイルの固定及び/又はヘアスタイルの保持のための組成物が、本発明の組成物を適用する前に適用される。
本発明の組成物において、反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマー(類)は、組成物の全重量に対して、好ましくは0.05〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.25〜10重量%の濃度で存在する。
本発明において、有利には組成物は、固定用ポリマー、増粘剤、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性の界面活性剤、香料、防腐剤、サンスクリーン剤、タンパク質、ビタミン類、プロビタミン類、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性の非固定用ポリマー、鉱物性、植物性又は合成油、セラミド類、擬似セラミド類、直鎖状又は環状、変性又は未変性で揮発性又は非揮発性のシリコーン類、pH調節剤、酸化剤、還元剤、阻害剤、触媒及び毛髪に適用することを意図した化粧品用組成物に従来から使用されている任意の他の添加剤から選択される、従来からの化粧品用添加剤をさらに含有する。
【0025】
化粧品的に許容可能な媒体は、好ましくは、水及び/又は一又は複数の化粧品的に許容可能な溶媒、例えばアルコール、エステル、ケトン又は環状で揮発性のシリコーン類、又は水/溶媒の混合物からなり、これらの溶媒は好ましくはC-Cアルコールである。
本発明の組成物がエアゾール装置に包装される場合、それは、揮発性炭化水素、例えばn-ブタン、プロパン、イソブタン、ペンタン及びハロゲン化炭化水素、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの噴霧剤を含有する。噴霧剤として、二酸化炭素、亜酸化窒素、ジメチルエーテル(DME)、窒素又は圧縮空気を使用してもよい。噴霧剤の混合物を使用することもできる。ジメチルエーテルが好ましく使用される。
有利には、噴霧剤は、エアゾール装置の組成物の全重量に対して5〜90重量%、好ましくは10〜60重量%の濃度で存在している。
本発明の組成物は、湿った又は乾燥した毛髪に適用してよい。
【実施例】
【0026】
次の非限定的な実施例により、本発明をさらに詳しく例証する。
a.m.は活性物質を意味する。
実施例:
次の組成物を調製する:
ポリ(グリシジルメタクリラート)(1) 20g(2%a.m.)
エチレンジアミン 5g
22%のNHを含有するアンモニア水 pHを9にする量
メチルエチルケトン 20g
水 全体を100にする量
(1)ポリサイエンス・インク(Polysciences, Inc.)から販売されており、メチルエチルケトンに10重量%溶解した溶液。
この組成物から得られた皮膜のヤング率は約800MPaであった。
毛髪に適用されて乾燥した組成物は、シャンプーに対しても耐性のある硬質コートを付与するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品的に許容可能な媒体に、同一でも異なっていてもよい少なくとも2つの非光活性化反応性化学官能基を有する非シリコーン骨格の少なくとも1種のポリマーを含有せしめてなる、毛髪用組成物等の化粧品用組成物において:
(i)室温(22±2℃)及び50%±5%の相対湿度で、前記組成物を乾燥させて得られる皮膜が、0.5mm厚、20mm/minの牽引力で測定して100〜2000MPaのヤング率を有し、
(ii)反応性官能基が次の一価又は二価の基:
−エポキシ、
−無水物、
−酸塩化物、
−エチレンイミノ、
−アルデヒド、
−アセタール又はヘミアセタール、
−アミナール又はヘミアミナール、
−ケトン、α-ハロケトン又はα-ヒドロキシケトン、
−ラクトン又はチオラクトン、
−イソシアナート、
−チオシアナート、
−N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、
−イミド、
−イミン、
−イミダート、
−オキサゾリン、オキサゾリニウム、オキサジン又はオキサジニウム、
−ピリジルチオ、
−チオスルファート、
−次の式:
-OCO-A'-COCH
[上式中、A'は結合、1〜5の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表す]
に相当するアセトアルキラート、
−AX、
−ASOX、
[ここで、
・Xはハロゲン、OSOH、SOCH、SO、SOTos、N(CH)、OPO、CNから選択される脱離基であり、Tosはトシラート基を表し、Rは水素原子又はC〜Cアルキル基を表し、
・Aは一又は複数の不飽和環が挿入されていてもよく、N、S又はO等の一又は複数のヘテロ原子を含有していてもよい、1〜22の炭素原子を有するアルキレン、アリーレン又はアラルキレン基である]
から選択され、
(iii)少なくとも2つの反応性化学官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーがビニルブチラール/ビニルアルコール/酢酸ビニルのコポリマー以外である、
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
少なくとも2つの反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーが、反応性化学官能基の全数に対し、数基準で50%未満のカルボン酸エステル官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Xが臭素、塩素、ヨウ素及びフッ素から選択されるハロゲンを表すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
エポキシ基が一価であり、次の式(I):
【化1】

[上式中、R、R及びRは互いに独立して、
−水素原子、
−O、N、S、Si及びFから選択される一又は複数のヘテロ原子が挿入されていてもよく、一又は複数のヒドロキシル又はアミノ基で置換されていてもよい、1〜20の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキル基、
−6〜22の炭素原子を有するアリール基、又は
−アルキル基が1〜20の炭素原子を有するアラルキル基、
−5〜7員の複素環、
を表す]
に相当することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
無水カルボン酸基が一価であり、次の式(II):
【化2】

[上式中、R、R、R、R及びRは互いに独立して、式(I)のR、R及びRに対して付与したものと同一の意味を有する]
に相当することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
無水カルボン酸基が一価であり、次の式(III):
【化3】

[上式中、Yは:
−結合、
−O、N、S、Si及びFから選択されるヘテロ原子、
−1〜5の炭素原子を有し、一又は複数のヒドロキシル又はアミノ基で置換されるか未置換である、アルキル又はアルキレン基、
−7〜10の炭素原子を有するアラルキレン基、又は
−1〜6のケイ素原子を有するポリジメチルシロキサン基、
を表し、
、R10及びR11は互いに独立して、式(I)のR、R及びRに対して付与したものと同一の意味を有する]
に相当することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
アセトアルキラート基が、次の式(IV):
-R'-OCO-A'-COCH 式(IV)
[上式中、R'は式(I)に記載されたR基の任意の水素原子を除去して得られたもので、A'は請求項1で付与された意味を有する]
に相当する基に含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
酸塩化物基が、次の式(V):
-R'-COCl 式(V)
[上式中、R'は式(IV)と同一の意味を有する]
に相当する基に含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
イソシアナート基が、次の式(VI):
-R'-NCO 式(VI)
[上式中、R'は式(IV)と同一の意味を有する]
に相当する基に含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
アセタール基が一価であり、次の式(VII)、(VIII)及び(IX):
【化4】

[上式中:
、R及びRは式(I)で付与された意味を有し、
R'及びR'は式(I)に記載されたR又はR基の任意の水素原子を除去して得られたものであり、
A''及びA'''は同一又は異なっており、O、N、S、Si及びFから選択される一又は複数のヘテロ原子が挿入されていてもよく、一又は複数のヒドロキシル又はアミノ基で置換されていてもよい、1〜5の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキル又はアルキレン基を表す]
の少なくとも1つに含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーが:
− 重縮合;
− 2〜9の炭素原子を有する少なくとも1つの環、又は2〜4のケイ素原子を有する環の開裂で、これらの環が、N、O、S又はSi等の一又は複数のヘテロ原子を含有可能であるもの;
− 基移動による、フリーラジカル又はイオン型の不飽和モノマーの重合;
から一つの工程がなるプロセスにより得られることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
反応性官能基を有する非シリコーン骨格のポリマーが、組成物の全重量に対して0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.25〜10重量%の濃度で存在していることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
固定用ポリマー、増粘剤、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性の界面活性剤、香料、防腐剤、サンスクリーン剤、タンパク質、ビタミン類、プロビタミン類、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性の非固定用ポリマー、鉱物性、植物性又は合成油、セラミド類、擬似セラミド類、直鎖状又は環状、変性又は未変性で揮発性又は非揮発性のシリコーン類、pH調節剤、酸化剤、還元剤、阻害剤、触媒及び毛髪に適用することを意図した化粧品用組成物に従来から使用されている任意の他の添加剤から選択される、従来からの化粧品用添加剤をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
化粧品的に許容可能な媒体が、水、及び/又はアルコール又は環状で揮発性のシリコーン類等の一又は複数の化粧品的に許容可能な溶媒、又は水/溶媒の混合物からなり、これらの溶媒は好ましくはC-Cアルコールであることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種の噴霧剤と、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の組成物を含むエアゾール装置。
【請求項16】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の組成物を適用することを含むことを特徴とする美容処理方法。
【請求項17】
手入れ、パーマネントウエーブによる成形、毛髪のメークアップ、ヘアスタイルの固定及び/又はヘアスタイルの保持のための組成物を、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の組成物を適用する前に適用することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の組成物の、毛髪に硬質コートを形成するための使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品的に許容可能な媒体に、少なくとも2つのエポキシ基を有する非シリコーン骨格の少なくとも1種のポリマーを含有せしめてなる、毛髪コート組成物であって、上記各エポキシ基が一価であり、次の式(I):
【化1】

[上式中、R、R及びRは互いに独立して、
−水素原子、
−O、N、S、Si及びFから選択される一又は複数のヘテロ原子が挿入されていてもよく、一又は複数のヒドロキシル又はアミノ基で置換されていてもよい、1〜20の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキル基、
−6〜22の炭素原子を有するアリール基、又は
−アルキル基が1〜20の炭素原子を有するアラルキル基、
−5〜7員の複素環、
を表す]
に相当し、上記ポリマーが、エポキシ基の全数に対し、数基準で50%未満のカルボン酸エステル官能基を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
上記ポリマーがポリ(グリシジルメタクリラート)である、請求項1に記載の毛髪コート組成物。
【請求項3】
エチレンジアミンを更に含有する、請求項1又は2に記載の毛髪コート組成物。
【請求項4】
上記ポリマーが、組成物の全重量に対して0.05〜20重量%濃度で存在していることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の毛髪コート組成物。
【請求項5】
固定用ポリマー、増粘剤、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性の界面活性剤、香料、防腐剤、サンスクリーン剤、タンパク質、ビタミン類、プロビタミン類、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性の非固定用ポリマー、鉱物性、植物性又は合成油、セラミド類、擬似セラミド類、直鎖状又は環状、変性又は未変性で揮発性又は非揮発性のシリコーン類、pH調節剤、酸化剤、還元剤、阻害剤、触媒及び毛髪に適用することを意図した化粧品用組成物に従来から使用されている任意の他の添加剤から選択される、従来からの化粧品用添加剤をさらに含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の毛髪コート組成物。
【請求項6】
化粧品的に許容可能な媒体が、水、及び/又は又は複数の化粧品的に許容可能な溶媒からなることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の毛髪コート組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の噴霧剤と、請求項1ないしのいずれか1項に記載の毛髪コート組成物を含むエアゾール装置。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の毛髪コート組成物を毛髪に適用することを含むことを特徴とする毛髪コート方法。

【公開番号】特開2006−36793(P2006−36793A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304918(P2005−304918)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【分割の表示】特願2002−367351(P2002−367351)の分割
【原出願日】平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】