説明

反応槽

【課題】高温下で微粒子状の触媒と廃プラスチックを攪拌する反応槽を提供する。
【解決手段】廃プラスチックと触媒を加熱状態下で循環させて加熱分解する反応槽100の底面21は、2つ相交差する傾斜を持つ斜面から構成されている。この斜面25、26は開始端25a、26aから終了端25b、26bまで上り傾斜であり、水平方向に隣り合って配置されている。一方の斜面の開始端が他方の斜面の終了端の下に位置している。各斜面の終了端側から当該斜面に沿った線上に回転中心を有するスクリューフィーダ30、31が各斜面に対して夫々設けられ、スクリューフィーダ30、31の回転中心線上であって、前記終了端側の前記反応槽の側面にスクリューフィーダの回転軸受け32、33が配置されている。スクリューフィーダ30、31を回転させることで、一方の斜面上を引き上げられ、他方の斜面に落下する循環経路が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックを分解する反応槽に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃プラスチックを処理し又は再利用する方法として、種々のものが提案されている。その一つの方法として、触媒を用いて廃プラスチックを加熱して再資源化をする方法が知られている。
【0003】
従来このような触媒を利用した廃プラスチックの分解は、破砕した廃プラスチックを、予め粒状の触媒が蓄積された反応槽に投入する。続いて、反応槽の内部で触媒と有機物とを攪拌し、反応槽内で熱分解させて、廃プラスチックを気化させる。例えば、流動接触分解(FCC : Fluid Catalyst Cracking)プロセスで用いられる40〜80マイクロメーターの微粒子状に造粒された固体酸触媒(以下FCC触媒と称する。)を用いた廃プラスチックの熱分解油化方法として特許文献1に示されたものがある。
【0004】
触媒が1〜3ミリメーター前後の大きさの粒であれば、攪拌羽根の回転に伴って触媒の流動が反応槽の内部全体で起こるが、微粒子状の触媒は流動し難く、廃プラスチックと混ざりにくい。
特許文献2には、微粒子状の触媒を攪拌する反応槽として、スクリューフィーダを用いて触媒を常に循環させる反応槽を開示している。本文献によれば、触媒は反応槽の上流端から下流端に達したところで、帰還経路に案内されて反応槽の上流端へ再び戻ることにより反応槽内を循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-107058号公報
【特許文献2】国際公開WO2007/122967公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では循環させる経路として、水平姿勢に配置設置して水平方向に循環させるものや、反応槽内に高低差を設けて高低差の循環路の中で滑落させるものが開示されている。
特許文献2に利用されるスクリューフィーダは、反応槽の外部から回転させることが必要である。反応槽内は420度〜560度の高温であり、しかも触媒が微粒子であるので、反応槽内にスクリューフィーダを回転するための回転軸受けのシールが問題となる。また、少なくとも3本のスクリューフィーダを用いているものの、落下させる箇所は1箇所であり、攪拌は専らスクリューフィーダによる運搬の際に行っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって本願発明は、内部に投入された廃プラスチックと触媒を加熱状態下で循環させて加熱分解する反応槽において、前記反応槽の底面は、開始端から終了端まで上り傾斜の2つの斜面が、水平方向に隣り合って配置され、一方の斜面の開始端が他方の斜面の終了端の下に位置されており、各斜面の終了端側から当該斜面に沿った線上に回転中心を有するスクリューフィーダが各斜面に対して夫々設けられ、前記スクリューフィーダの回転中心線上であって、前記終了端側の前記反応槽の側面にスクリューフィーダの回転軸受けが配置され、前記夫々の斜面に設けられたスクリューフィーダを回転させることで、前記一方の斜面上を引き上げられ、他方の斜面に落下する循環経路を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、斜面の終了端側の側面にスクリューフィーダの回転軸受けが設けられており、この位置は反応槽内に投入されている廃プラスチックの高さよりも高い位置に配置されることから、シール構造は簡易になる。
また、2つの斜面の終了端が、廃プラスチックと触媒を落下させる位置となるため、循環経路の中で2箇所落下させる箇所を設けることができ攪拌を加速させるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】油化装置を示す図である。
【図2】反応槽を示す図である。
【図3】反応槽の動作を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本実施例の反応槽100を具備した油化装置1を示している。反応槽100は、油化装置1の架台2の下に設置されている。架台2の上には、廃プラスチックを投入する投入口3と、反応槽100において気化した廃プラスチックを冷却して液化する凝縮器4が設置されている。投入口3は、鉛直方向のパイプ5及び、脱着栓6を介して反応槽100に繋がっている。投入口3から投入された廃プラスチックは、パイプ5を介して反応槽100の内部に落下する。凝縮器4も反応槽100と脱着栓7を介して繋がっている。
【0011】
移動台8は、その底面に移動車輪(キャスター)9とアジャスター10が設けられており、キャスター9により移動し、アジャスター10により固定される。図においては、アジャスター10のパッド10aを接地させて移動台を持ち上げ、キャスター9を浮かせた状態にして移動台8を固定した状態を示している。脱着栓6、7は、油化装置1の架台2の下に移動台8が移動した時に反応槽100と投入口3を連通し、移動台8が点検等のために架台2の下から離す必要があるときには閉塞可能にしている。
【0012】
移動台8には、反応槽100を挟んで両側に、第1駆動装置11及び第2駆動装置12を固定するフレーム13、14が設けられている。このフレーム13、14は、駆動装置11、12の回転軸15、16を、水平に対して斜め下に向けるように駆動装置11、12を搭載する。回転軸15、16の延長線c1、c2上は、互いに図面の奥行き方向にずれた状態で相互に交差している。尚、駆動装置11、12は、電動機そのものでも良いし、電動機と減速器を組み合わせたものでも良い。
【0013】
移動台8には、熱遮蔽する遮蔽室17が搭載されており、この中に反応槽100が設置されている。駆動装置11、12の回転軸15、16の軸先は、遮蔽室17の壁面や反応槽100の側面を貫通し、反応槽内のスクリューフィーダ(図2)に連結される。
【0014】
図2に反応槽100を示す。図2Aは断面側面図であり、図2Bは蓋20を外した状態の平面図であり、図2Cは側面図である。反応槽100は、蓋20、底面21、側面22で囲まれた容器であり、その平面視において長方形状になっており、長手方向にその底面21は第1経路R1及び第2経路R2を形成する領域に分割されている。
【0015】
第1経路R1は、第1駆動装置11の回転軸15の延長線c1に沿った傾斜の斜面25を有しており、反応槽100の図2A中左側の開始端25aから右側の終了端25bに向かって上昇する経路である。
【0016】
第2経路R2は、第2駆動装置12の回転軸16の延長線c2に沿った傾斜の斜面26を有しており、反応槽100の図2A中右側の開始端26aから左側の終了端26bに向かって上昇する経路である。第1経路の開始端25aは、第2経路の終了端26bの下側に位置しており、また第2経路の開始端26aは、第1経路の終了端25bの下側に位置している。一方の経路の終了端25b、26bと他方の経路の開始端25a、26aとは水平方向に隣り合っており、一方の終了端25b、26bに押し上げられた廃プラスチックが他方の開始端25a、26aに落下するようになっている。第1、第2経路R1、R2の開始端25a、26aの下側には、排出口27、28が夫々設けられている。排出口27、28は、通常は閉塞状態であり、反応槽100を点検する際に槽内の残渣を取り除くときに開放される。
【0017】
第1経路R1、第2経路R2の斜面25、26に沿って、スクリューフィーダ30、31が夫々設けられている。本実施例で用いるスクリューフィーダ30、31は、螺旋状の羽30a、31aのみからなるスクリューフィーダである。スクリューフィーダ30、31の回転中心線は、夫々駆動装置11、12の回転軸15、16の延長線c1、c2に一致しており、各終了端25b、26b側の反応槽100の側面22にスクリューフィーダ30、31の回転軸受け32、33が配置される。この回転軸受け32、33を介して、夫々駆動装置11、12の回転軸15、16に連結している。スクリューフィーダ30、31が回転駆動されることにより、各経路R1、R2の開始端25a、26aから終了端25b、26bに廃プラスチックを引き上げる作用をする。尚、斜面25及び斜面26ともに、スクリューフィーダ30、31の螺旋状の羽30a、31aが、回転時にその外周で描く円筒状の軌跡に沿うように、断面が半円状の曲面となっている。
【0018】
スクリューフィーダ30、31が、通常のスクリューフィーダと異なり螺旋状の羽を支える軸部を有していないのは、回転軸受けを各経路の開始端25a、26a側に設けることを避けたためである。従って、本実施例においては、スクリューフィーダ30、31の回転中心を終了端25b、26b側に延長した側面22のみに回転軸受け32、33が設けられ、この回転軸受け32、33の一箇所でスクリューフィーダ30、31が片持ちされている。
【0019】
反応槽100には、さらに内部の温度を検出する電熱対35が複数個設置されており、内部の温度管理が行われる。反応槽100の加熱は、温風加熱、輻射加熱などを用いることができるが、本実施例では電熱ヒータを用いて行う(図示せず)。反応槽100の蓋20には、脱着栓6に接続して廃プラスチックを受ける連結口36と、内部で気化した廃プラスチックを脱着栓7を介して凝縮器4へ連結する吐出口37を有している。
【0020】
スクリューフィーダ30、31を回転させることにより、反応槽100内で、廃プラスチックが移動する経路が形成される。図3はその経路を示す図であり、図3Aは第1経路R1を示し、図3Bは第2経路R2を示している。尚、図中、廃プラスチックは、Fの高さまで投入されている。終了端25b、26bまで、引き上げられた廃プラスチックの落下高さを考慮すると、廃プラスチックを投入する高さFは終了端25b、26bの高さと同程度若しくは、低い高さのほうが良い。
【0021】
図3Aにおいて、開始端25aの底面の位置にある廃プラスチックは、スクリューフィーダ30により引き上げられ、終了端25bにおいては、高さFまで引き上げられる。終了端25bに至った廃プラスチックは、第2経路R2の開始端26aに向かって落下する。同様に、図3Bにおいて、開始端26a側の底面の位置にある廃プラスチックは、スクリューフィーダ31により引き上げられ、終了端26bにおいては、高さFまで引き上げられる。終了端26bに至った廃プラスチックは、第1経路R1の開始端25aに向かって落下する。このように、反応槽100の長辺の両側に沿って、廃プラスチックを引き上げて落下して循環させる経路が2箇所形成される。廃プラスチックとFCC触媒は、落下し着地する際の衝撃で攪拌される。循環経路中に2箇所の落下が設けられるので微細なFCC触媒と良く混じり合う。
【0022】
また、開始端25a、26aにおいては、スクリューフィーダ30、31が廃プラスチックを底面から引き上げている。このことにより、破砕された廃プラスチックが螺旋の渦を巻いたすり鉢状になり、その中を転がり落ちる現象が生じるので、微細なFCC触媒とさらに良く混ざり合う。2つのスクリューフィーダ30、31で、このようなすり鉢状箇所を2箇所設けることができる。尚、図中において、斜面25、26の曲面が、延長部40により回転軸受け33の近くまで延長されて、第1経路R1と第2経路R2の間を高さFまで仕切るようにしているが、これは廃プラスチックをより高い位置に引き上げるために用いたものである。
【0023】
次に、本実施例の反応槽100の使用方法について説明する。
まず、投入口3からゼオライトをFCC触媒として反応槽100に投入する。電熱ヒータによって、投入口3から投入されたFCC廃触媒を300℃〜500℃の温度域に加熱する。予めFCC触媒を加熱した後、破砕した廃プラスチックが投入口3から投入される。スクリューフィーダ30、31を回転させることにより、反応槽100の中に第1経路R1と第2経路R2を巡回する経路が形成される。廃プラスチックが各開始端25a、26aにおいて落下を繰り返すことにより、混合・撹拌されて廃プラスチックに高温の粒粉状のFCC触媒がまぶされ、加熱および分解反応が進行する。
【0024】
廃プラスチックの接触分解によって生成した分解ガスが吐出口37から送出されて凝縮器4へ導かれて、様々な凝縮温度において選別して回収される。分解反応が進行するにつれ、廃プラスチックは気化し、廃プラスチックの残渣とFCC触媒が反応槽100内に残る。FCC触媒が未だ活性状態にあるならば、投入口3からさらに廃プラスチックを投入して、分解反応を再開することができる。
【0025】
上記実施例においては、触媒としてFCC触媒を用いたが、他の触媒例えば酸化チタンを用いても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 油化装置
2 架台
3 投入口
4 凝縮器
8 移動台
11 第1駆動装置
12 第2駆動装置
25、26 斜面
30、31 スクリューフィーダ
32、33 回転軸受け
35 熱電対
100 反応槽
R1 第1経路
R2 第2経路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に投入された廃プラスチックと触媒を加熱状態下で循環させて加熱分解する反応槽において、
前記反応槽の底面は、開始端から終了端まで上り傾斜の2つの斜面が、水平方向に隣り合って配置され、一方の斜面の開始端が他方の斜面の終了端の下に位置されており、
各斜面の終了端側から当該斜面に沿った線上に回転中心を有するスクリューフィーダが各斜面に対して夫々設けられ、
前記スクリューフィーダの回転中心線上であって、前記終了端側の前記反応槽の側面にスクリューフィーダの回転軸受けが配置され、
前記夫々の斜面に設けられたスクリューフィーダを回転させることで、前記一方の斜面上を引き上げられ、他方の斜面に落下する循環経路を形成することを特徴とする反応槽。
【請求項2】
前記スクリュフィーダは、前記回転軸受けに片持ちされ、螺旋羽のみからなることを特徴とする請求項1に記載の反応槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95826(P2013−95826A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238975(P2011−238975)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(511264652)エムアイ技研株式会社 (1)
【Fターム(参考)】