説明

反応装置

【課題】反応容器内に均一に過熱蒸気を吹き込むことができ、反応容器を均一に加熱できて、ヒータの断線のおそれのない反応装置を提供することを課題とする。
【解決手段】導電性金属で構成された有底の筒状容器とこの容器を閉塞する上蓋とで構成された反応容器を備え、前記反応容器の底部近傍の外側にこれを取り囲んで、管径の大きな管により構成したドーナツ状の蒸気分散管を設置し、この蒸気分散管に外部から蒸気供給管を介して過熱蒸気を供給し、この蒸気分散管から多数の細管からなる蒸気吹込み管を通して前記反応容器内へ分散して過熱蒸気を吹き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過熱水蒸気をプラスチックや食材に反応させて低分子化したり、熱処理したりするための反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気を利用した反応装置は、例えば特許文献1等により知られている。
【0003】
図3および図4にこのような従来の反応装置の構成を示す。図3は、従来の反応装置の正面断面図であり、図4はこの従来の反応装置が備える蒸気を反応容器内に分散して供給するための蒸気分散器の平面図である。
【0004】
図3および図4において、反応容器10は、ステンレス鋼等の金属材料で構成された有底の筒状容器11、この筒状容器11上部を閉塞する上蓋12、および筒状容器11内へ、過熱蒸気を導入するための蒸気供給管13で構成されている。蒸気導入管13は反応容器10の外側から、筒状容器11内に引き込まれ、その先端に円環状の蒸気分散器14が結合されている。蒸気分散器14は蒸気導入管13を構成するステンレス鋼等の金属パイプと同じ金属パイプで構成され、上面に図4に示すように多数の蒸気噴出口14aが均等に分散して設けられている。
【0005】
また、筒状容器11の外側にはこの容器を加熱するためのヒータが配設され、容器11、ヒータ15および上蓋12の周囲を断熱材19でとき囲んで外部への放熱を防止するようにしている。さらに上蓋12の上部には、反応ガスを取り出すためのガスダクト16が設けられている。
【0006】
このように構成された反応装置は、処理物を収容した筒状容器11に上蓋12を被せてこれを閉塞したうえで、ヒータ15より加熱して筒状容器11内で蒸気が凝縮しないように所定温度に保たれたところで蒸気供給管13から過熱蒸気を供給し、蒸気分散器14より噴き出して筒状容器11内全体に分散させることにより処理物と反応させて低分子化処理等を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007‐070485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した従来の反応装置における蒸気分散器14は、蒸気供給管13と同じ金属パイプをリング状に整形加工して構成されているので、蒸気分散器との結合部付近と先端部付近とで蒸気圧力の分布が異なるため、筒状容器11の底部に広く均一に蒸気を噴き出すことが難しく、また、上蓋12蒸気供給管13が貫通する部分のシール材が劣化すると反応ガスが漏れる事故が発生する問題がある。また、筒状容器11の加熱にヒータ15を用いているので、容器の加熱に偏りが生じ全体を均一に加熱することができないだけでなく、ヒータ15は、400℃以上の高温となるため、断線が生じやすく信頼性に欠ける問題もある。
【0009】
この発明は、従来の反応装置におけるこのような問題を解決して反応容器内に均一に過熱蒸気を吹き込むことができ、反応容器を均一に加熱できて、ヒータの断線のおそれのない反応装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、この発明は、導電性金属で構成された有底の筒状容器とこの容器を閉塞する上蓋とで構成された反応容器を備え、前記反応容器の底部近傍の外側にこれを取り囲んで、管径の大きな管により構成したドーナツ状の蒸気分散管を設置し、この蒸気分散管に外部から蒸気供給管を介して過熱蒸気を供給し、この蒸気分散管から多数の細管からなる蒸気吹込み管を通して前記反応容器内へ分散して過熱蒸気を吹き込むことを特徴とするものである。
【0011】
この発明おいては、前記反応容器の筒状容器内吹き込まれる過熱蒸気が直径方向から円周方向に傾斜されるように前記蒸気吹込み管を筒状容器の周壁に傾斜して貫通結合するのがよい。
【0012】
また、この発明においては、前記反応容器の過熱手段として反応容器の側面、底面および上蓋の上面の何れかに誘導加熱コイルを設け、この誘導加熱イルにより反応容器を電磁誘導加熱することができる。その際、前記反応容器の筒状容器と上蓋の接合部にフランジを形成し、このフランジの外周端を前記誘導加熱コイルの外周の外側まで延長するようにするのがよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、反応容器の筒状容器の外側に管径の大きなドーナツ状管により蒸気分散管を設け、この蒸気分散管からこれに外部から蒸気供給管を介して供給されたる過熱蒸気を複数の細管の蒸気吹き込み管を介して前記筒状容器内へ分散して吹き込むようしたので、管径が大きいため蒸気分散管内の圧力がほぼ均一なることにより反応容器内への吹き込まれる過熱蒸気を全周にほぼ均一に分散させることができる。
【0014】
反応容器へ過熱蒸気を吹き込む蒸気吹き込み管を反応容器の周壁に斜めに結合して加熱蒸気を筒状容器内の直径方向から円周方向へ傾斜させて吹き込まれた過熱蒸気は反応容器内を旋回流となって流れるようになるため、反応容器内で滞留時間を長くすることができる。
【0015】
また、反応容器を、誘導加熱コイルにより加熱することにより、反応容器を全体を均等に加熱することができる。
【0016】
そして、反応容器の筒状容器と上蓋の接合部に設けたフランジの外周端を誘導加熱コイルの外周より外側まで延ばすことにより、筒状容器部および上蓋部にそれぞれ誘導加熱コイルを設けた場合に、相互のコイルの干渉なしに加熱制御をおこなうことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施例による反応装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う横断面図である。
【図3】従来の反応装置の構成を示す縦断面図である。
【図4】従来の反応装置に使用される蒸気分散器を示す平面図である
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1および図2にこの発明の実施例の反応装置示す。これらの図において、前記図3および図4に示す従来装置と同一の構成要素は、同一の符号で示す。
【0019】
この発明による反応装置1は、ステンレス鋼等の導電性金属で構成した有底の筒状容器11と、この容器11の上部の開口を閉塞する、容器11と同様にステンレス鋼等の導電性金属で構成した上蓋12とで構成した反応容器10を備える。上蓋12には筒状容器11内で発生する反応ガスを取り出すためのガスダクト16が結合される。筒状容器11および上蓋12の外周は、放熱を防ぐための断熱層19により被覆されている。
【0020】
そして、筒状容器11の外周の底部付近の断熱層19の中に、管径の大きな管により構成したドーナツ状の蒸気分散管17が埋め込まれている。この蒸気分散管17には、その外周に、これに外部から過熱蒸気を供給するための蒸気供給管13が連通結合される一方、内周に多数の細管からなる蒸気吹込み管18が均等に分散して連通結合されている。蒸気吹込み管18は、図2に示すように筒状容器11の周壁を直径方向ら円周方向へ傾斜するように斜めに貫通し、先端の吹出し口18aが筒状容器11の周壁の内周面に開口する。
【0021】
また、この発明に従って、筒状容器11の周壁および上蓋12を取り囲んでそれぞれを電磁誘導加熱するための誘導加熱コイル21および22が、そして筒状容器11の底壁の下部にこれを加熱するための誘導加熱コイル23がそれぞれ断熱層19の外側に設けられる。さらに筒状容器11と上蓋12の接合部には、それぞれフランジ11aおよび12aが水平に張り出して設けられている。
【0022】
次に、このように構成されたこの発明の反応装置による反応処理について説明する。
【0023】
反応容器10内に処理物を収容した上で、誘導加熱コイル21ないし23に高周波または商用周波の交流電力を供給することにより、筒状容器11および上蓋12に誘導電流が流れて、そのジュール熱により筒状容器11および上蓋12が加熱される。反応容器10内の温度が、供給される過熱蒸気が凝縮してドレンとならない程度に高められるように誘導加熱を行う。筒状容器11を誘導加熱コイルにより誘導加熱することにより反応容器全体を均等に加熱でき、反応容器10内の温度を均一にすることができる。
【0024】
この際、筒状容器11と上蓋12の接合部に水平方向に張り出したフランジが設け、図示のとおり誘導加熱コイル21の外径をフランジの外径よりも小さくすることにより、筒状容器11側の誘導加熱コイル21と上蓋12側の誘導加熱コイル22との電磁的な相互干渉をなくすことができる。また筒状容器11の周壁側の誘導加熱コイル21と底壁側の誘導加熱コイル23との間には、ドーナツ状の蒸気分散管17が配設されているため、この蒸気分散管17によって両コイルの作る磁界が遮蔽されることによりコイル21と23の間でも相互干渉が生じない。このため、3つの誘導コイル21,22および23をそれぞれ独立して制御することが可能となる。
【0025】
このようにして反応容器10内の温度の高められたところで4、蒸気供給管13を介して外部の図示しない蒸気源から過熱蒸気を蒸気分散管17に供給する。蒸気分散管17に供給された過熱蒸気は蒸気分散管17の内周に分散して設けられた多数の蒸気吹込み管18を通して、筒状容器11内にほぼ均等に分散して吹き込まれる。吹込み管18が傾斜して筒状容器11に結合されているため、蒸気分散器17から供給される加熱蒸気は、吹込み管18から筒状容器11内に内周方向に傾斜して吹き込まれ、筒状容器11内でその内周壁に沿って旋回しながら上昇して容器全体に拡散する。
【0026】
反応容器10内に供給された加熱蒸気は、反応容器10内に収容された処理物と反応して分解ガス等の反応ガスを生成し、余剰の蒸気とともにガスダクト16から取り出される。筒状容器11内に吹き込まれた加熱蒸気は、前記したとおり、この筒状容器11内を旋回しながら上昇することにより、反応容器10内での滞留時間が長くなり、処理物とより良好に接触し、反応効率を高めることができる。
【0027】
この発明のように、管径の大きい管により構成したドーナツ状の蒸気分散管17を設け、ここから内周に分散して多数設けられた、細管により構成して蒸気吹込み管18を通して筒状容器11内に吹き込むようにすると、蒸気分散管17内における過熱蒸気の圧力が全体にほぼ均等ととなるため、蒸気分散管17の内周の各吹込み管18から全周にわたってほぼ均一に過熱蒸気を筒状容器11内へ吹き込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明の反応装置は、有機物に水蒸気を接触させて水和反応を起こさせて分解処理するための装置等として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 :反応装置
10:反応容器
11:筒状容器
12:上蓋
13:蒸気供給管
16:ガスダクト
17:ドーナツ状蒸気分散管
18:蒸気吹込み管
19:断熱層
21〜23:誘導加熱コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属で構成された有底の筒状容器とこの容器を閉塞する上蓋でと構成された反応容器を備え、前記反応容器の底部近傍の外側にこれを取り囲んで、管径の大きな管により構成したドーナツ状の蒸気分散管を設置し、この蒸気分散管に外部から蒸気供給管を介して過熱蒸気を供給し、この蒸気分散管から多数の細管からなる蒸気吹込み管を通して前記筒状容器内へ分散して過熱蒸気を吹き込むことを特徴とする反応装置。
【請求項2】
請求項1に記載の反応装置において、前記反応容器の筒状容器内に吹き込まれる過熱蒸気が反応容器の直径方向に対して斜めになるように前記蒸気吹込み管を筒状容器の周壁に傾斜して貫通結合したことを特徴とする反応装置。
【請求項3】
請求項1また2に記載の反応装置において、前記反応容器の過熱手段として反応容器の側面、底面および上蓋の上面の何れかに誘導加熱コイルを設け、この誘導加熱イルにより反応容器を電磁誘導加熱することを特徴とする反応装置。
【請求項4】
請求項3に記載の反応装置において、前記反応容器の筒状容器と上蓋の接合部に反応容器と上蓋の少なくとも何れか一方に一体的に外側へ延びるフランジを形成し、このフランジの外周端を前記誘導加熱コイルの外周の外側まで延長したことを特徴とする反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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