説明

反転オフセット印刷用除去版及びその製造方法、並びに印刷物の製造方法

【課題】機械的強度が大きく、かつ印刷時のパターン乱れが小さい反転オフセット印刷用除去版及びその製造方法、並びに印刷物の製造方法を提供する。
【解決手段】除去版6は、印刷物7の画像部7aに対応する撥インク処理された凸部領域(画像凸部6a)と、印刷物7の非画像部7bに対応する凸部領域(非画像凸部6b)と、印刷物7の画像部7aに対応する凹部領域(画像凹部6c)で構成され、凹部形成のためのエッチング等の加工と撥インク処理により作製される。言い換えると、除去版6の表面は、画像部7aの一部に対応して形成された凸状の画像凸部6aと、画像部7aの残りの部分に対応して形成された凹状の画像凹部6cと、非画像部7bに対応して形成された凸状の非画像凸部6bとを備え、画像凸部6aの頂面が撥インク処理をされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転オフセット印刷に用いられる除去版及びその製造方法、並びに印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の低コスト化に対応するため、絶縁体や導電体などを印刷法により形成する試みが盛んになっている。
【0003】
印刷法は既存のフォトリソ技術と比較すると概して解像性が悪いため、微細な電子部品への対応が課題である。
【0004】
これに対し、微細パターンに対応する印刷方法として反転オフセット印刷法がある。(特許文献1参照)
【0005】
反転オフセット印刷法について図2を用いて説明する。
【0006】
(インク膜形成工程)
まず、剥離性表面を有するブランケット1aに、転写物を含むインク2を塗布した後、溶剤の少なくとも一部を乾燥させ、ブランケット1a表面に転写物3aを形成することでブランケット1bとする(図2(a)〜(c))。
【0007】
(除去工程)
次に、ブランケット1bを除去版4に密着させ、転写物3aの不要な部分3bを除去版4に付着させることで除去し、ブランケット1bに転写物3cを形成することで転写物3cが形成されたブランケット1cを得る(図2(d)〜(f))。
【0008】
(転写工程)
次に、ブランケット1cを被転写物5に密着させ離すことで、転写物3cを被転写物5に転写しパターンを形成する(図2(g)〜(i))。
【0009】
反転オフセット印刷は、問題点として”底当りパターン抜け”がある。
”底当りパターン抜け”とは、前記除去工程において、ブランケット1bが変形することにより除去版4の凹部の底面に接触し、かつ接触部分において転写物3aが凹部底面に付着した場合、パターンの必要部まで除去されることになるため、結果的に被転写物5に形成したパターンに欠陥が生じる現象である。
【0010】
”底当りパターン抜け”の対策としては、大きく2種類考えられる。
【0011】
一つは、版の深さを大きくすることにより、ブランケット1bの除去版4の版底への接触を避ける方法である。必要な版の深さはパターン形状に依存する。
解像度が低いパターンは、除去版の開口部が大きくなるため、版深方向へのブランケットの変形量が大きく、深度を大きくする必要がある。
【0012】
しかし、高解像度と低解像度パターンが混在したパターンは、深度を大きくすることが簡単ではない。
除去版4の作製方法としては、ウェットエッチングが一般的であるが、エッチングは等方的であるため、版深度を大きくするとサイドエッチにより、除去版の高解像度パターンに対応する部分を形成できないことがある。
プロセス上の工夫により、サイドエッチの影響を抑えた例も報告されているが、複雑な工程が必要とされる。(非許文献1参照)
【0013】
また、深度を大きくすると、除去版4の機械的強度の問題が大きくなり、印刷時や版洗浄時に欠け等の破損が生じやすくなる。
欠けた部分はインクが除去されないため、不要なパターンが被印刷体に転写されることになる。
【0014】
”底当りパターン抜け”のもう一つの対策は、除去版4の凹部底面に撥インク処理を施すことにより、ブランケットが版底に接触した場合でも、インクを付着させないようにする方法である。
【0015】
しかし、印刷時にブランケット1bを除去版4の版底に接触させると、ブランケットの変形により接触箇所において圧力が複雑に作用し、その結果、パターンの乱れが発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2000−289320号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Youn−Gyoung Chang,Seong−Hee Nam,Nam−Kook Kim,Jinook Kim,Soon−Seong Yoo,Chang−Dong Kim,Inbyeong Kang and In−Jae Chung,SID'08 Digest, p.637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、機械的強度が大きく、かつ印刷時のパターン乱れが小さい反転オフセット印刷用除去版及びその製造方法、並びに印刷物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の発明は、反転オフセット印刷に用いられ、インク膜形成基材上に形成されたインク膜に接触させることにより印刷物の画像部を除く非画像部に対応する部分のインクを除去することにより前記インク膜形成基材上に前記画像部に対応するインクを残存させる除去版であって、前記除去版の表面は、前記画像部の一部に対応して形成された凸状の画像凸部と、前記画像部の残りの部分に対応して形成された凹状の画像凹部と、前記非画像部に対応して形成された凸状の非画像凸部とを備え、前記画像凸部の頂面が撥インク処理をされていることを特徴とする反転オフセット印刷用除去版である。
【0020】
請求項2に記載の発明は、前記画像凸部と前記非画像凸部の境界に、前記画像凹部が前記画像凸部を縁取るように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の反転オフセット印刷用除去版である。
【0021】
請求項3に記載の発明は、前記画像凹部の底面が撥インク処理をされていることを特徴とする請求項1または2に記載の反転オフセット印刷用除去版である。
【0022】
請求項4に記載の発明は、前記撥インク処理は撥インク性のシランカップリング剤による処理であることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の反転オフセット印刷用除去版である。
【0023】
請求項5に記載の発明は、前記撥インク性のシランカップリング剤はフルオロアルキルシラン、フルオロアルキル基を含むオリゴマー、もしくは加水分解性基を含むシロキサンであることを特徴とする請求項4に記載の反転オフセット印刷用除去版である。
【0024】
請求項6に記載の発明は、基板表面にマスクを形成する工程と、前記マスクのうち前記画像凹部に対応する部分を除去する工程と、前記基板表面をエッチングして前記画像凹部を形成する工程と、前記マスクのうち前記画像凸部に対応する部分を除去する工程と、前記基板表面のうち前記マスクが除去された部分に撥インク処理をする工程と、前記基板表面から前記マスクを剥離する工程とを含むことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の反転オフセット印刷用除去版の製造方法である。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至5に何れか1項記載の反転オフセット印刷用除去版を用いたパターン形成方法であり、インクをインク膜形成基材上に塗布してインクの膜を形成するインク膜形成工程と、該インク膜に前記反転オフセット印刷用除去版を接触させて、前記非画像凸部に対応するインクをインク膜形成基材から除去する除去工程と、該インク膜形成基材上に残った前記画像凸部および前記画像凹部に対応する該インク膜を被印刷基板に転写する転写工程とを含むことを特徴とする印刷物の製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、反転オフセット印刷用の除去版を、画像部に対応する凸部領域(画像凸部)と、非画像部に対応する凸部領域(非画像凸部)と、画像部に対応する凹部領域(画像凹部)とからなる構成とし、前記画像凸部の表面を撥インク処理し、前記画像凸部と前記非画像凸部の境界に、前記画像凹部の少なくとも一部が前記画像凸部を縁取るように設けることで、版の深さを大きくすることなくインク膜形成基材としてのブランケットの版底への接触を避けることができるため、除去版の機械的を強度が大きくすることができ、さらにブランケットが版底に接触することによるブランケットの変形が起こらないため、印刷時のパターン乱れの小さい反転オフセット印刷用除去版が得られる。
【0027】
また、本発明の反転オフセット印刷用除去版を用いることで、印刷パターンの小さい印刷物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の反転オフセット印刷用除去版を説明するための図であり、図1aは除去版、図1bはこれに対応する印刷物である。
【図2】反転オフセット印刷の工程を説明するための断面図である。
【図3】本発明の反転オフセット印刷用除去版の製造工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に本発明の反転オフセット印刷用除去版の一例として、除去版6(図1(a))および、除去版6に対応する印刷物7(図1(b))を示す。
除去版6の材料は、とくに限定されるものではないが、ガラス、ステンレスなどの金属、各種材料あるいはそれらを組み合わせたものなどを用いることができるが、堅牢で加工が容易であるガラスが好ましい。
【0030】
除去版6は、反転オフセット印刷に用いられ、インク膜形成基材上に形成されたインク膜に接触させることにより印刷物7の画像部を除く非画像部に対応する部分のインクを除去することによりインク膜形成基材上に画像部に対応するインクを残存させるものである。
除去版6は、印刷物7の画像部7aに対応する撥インク処理された凸部領域(画像凸部6a)と、印刷物7の非画像部7bに対応する凸部領域(非画像凸部6b)と、印刷物7の画像部7aに対応する凹部領域(画像凹部6c)で構成され、凹部形成のためのエッチング等の加工と撥インク処理により作製される。
言い換えると、除去版6の表面は、画像部7aの一部に対応して形成された凸状の画像凸部6aと、画像部7aの残りの部分に対応して形成された凹状の画像凹部6cと、非画像部7bに対応して形成された凸状の非画像凸部6bとを備え、画像凸部6aの頂面が撥インク処理をされている。
画像凹部6cと非画像凸部6bとの高低差、および、画像凹部6cと撥インク処理前の画像凸部6aとの高低差が版深である。
【0031】
非画像凸部6bは、前記除去工程において、それに対応する部分の転写物をインク膜形成基材としてのブランケットから除去するために設けられている。
【0032】
画像凸部6aは、表面(頂面)が撥インク処理されているが、撥インク処理は凹部形成のための加工を受けていない表面に施されている。
このため、撥インク処理の機能が安定的に発現し、パターニングにおける”底当りパターン抜け”の問題の回避が容易となる。
例えばエッチング加工を行った表面は、表面粗さが増加しているが、この表面に撥インク処理をすると撥インク性が安定的に得られない。表面粗さが撥インク処理の効果に関係していると考えられる。
【0033】
画像凸部6aは、インクの除去工程においてブランケットが除去版6の画像凹部6c底面に接触する(おそれがある)場合に設けられる。
その様な場合の画像凹部6cの大きさは、版の深さ・ブランケットの種類・ブランケットと除去版との接触圧、等の条件の組合せによって変わるため、印刷条件によって適切に選択することが望ましい。
また、インクの除去工程においてブランケットが除去版6の画像凹部6c底面に接触しなくとも、安定して印刷パターンを形成するために画像凸部6aを適宜形成することができる。
【0034】
画像凹部6cは、版深が小さくてもブランケットの版底の接触の恐れが低い開口部の小さな画像部、つまり高解像度パターンに対応する部分に用いられる。
【0035】
画像凹部6cはまた、前記高解像度パターンに対応する部分のほか、画像凸部6aの輪郭を縁取るように設けることが好ましい。
言い換えると、画像凸部6aと非画像凸部6bの境界に、画像凹部6cが画像凸部6aを縁取るように設けることが好ましい。
画像凸部6aと非画像凸版部6bを隣接させると、除去工程において画像部7aの輪郭に乱れが生じ印刷に欠陥が発生しやすい。
これに対し、画像凸部6aと非画像凸版部6bの境界に画像凹部6cを介在させることで、パターン乱れを防ぐことができる。
この輪郭を縁取る画像凹部6cは、形状は特に限定されるものではないが、例えば2μm程度の狭い幅でも機能する。
【0036】
画像凸部6aと非画像凸版部6bの境界に設ける画像凹部6cの版深は、0.05μm以上2μm以下であることが好ましい。
0.05μm以下の場合、パターン乱れを防ぐ効果が十分に得られない。また、2μm以上の場合は、機械的強度への影響が無視できなくなり、また、版洗浄後に画像凹部6cに異物が残存しやすくなる。
【0037】
画像凹部6cの底面は、ブランケットが版底に接触する可能性が無ければ撥インク処理は不要であるが、接触の原因となるブランケットの変形は、除去版との接圧やブランケット材料の硬度などで異なるため、撥インク処理を施しておくことが好ましい。
【0038】
画像凸部6aの表面(頂面)に対する撥インク処理および画像凹部6cの底面に対する撥インク処理としてはシリコーンやシランカップリング剤を用いた化学的処理、フッ素プラズマなどの物理的処理などが挙げられるが、長期安定性などを考慮するとガラスや金属表面に対するシランカップリング剤による処理が好ましい。
【0039】
シランカップリング剤は用いるインクによって異なるが、撥水性や撥油性の高いフッ素やシロキサン基が含むものが好ましく、例えば、長鎖フルオロアルキルシラン、加水分解性基含有シロキサン、フルオロアルキル基含有オリゴマーなどが挙げられる。
【0040】
撥インク処理の方法としては、シランカップリング剤による公知の表面処理方法を用いることができる。例えば、シランカップリング剤の溶液を、スピンコート、ディップコート、アプリケータなどの公知の方法で塗工した後、熱処理を行うことでシランカップリング剤を化学的結合により固定することができる。
【0041】
本発明の反転オフセット印刷用除去版6は各種公知の方法で作製が可能である。前記図1に示した除去版の製造工程の一例について、図3に示し説明する。
図3は図1(a)に記したAB線の断面に対応する工程図である。
【0042】
まず、除去版6の母材となるガラス板60にエッチングレジスト61をフォトリソパターン形成する(図3(a))。
すなわち、ガラス板60(基板表面)にマスクを形成する工程と、マスクのうち画像凹部6aに対応する部分を除去する工程とを行う。
次に、ガラス板60を所定の深さになるようウェットエッチングし画像凹部6cを形成する(図3(b))。
すなわち、ガラス板60(基板表面)をエッチングして画像凹部6cを形成する工程を行う。
次に、パターン形成されたレジスト61の、画像凸部6aに対応する部分をフォトリソエッチングにより除去する(図3(c))。
すなわち、マスクのうち画像凸部6aに対応する部分を除去する工程を行う。
続いて、撥インク処理を行い、画像凹部6cおよび画像凸部6aの表面に撥インク性を付与する(図3(d))。ここで、符号62は、撥インク性が付与された表面の部分(撥インク性表面)を示す。
すなわち、ガラス板60(基板表面)のうちマスクが除去された部分に撥インク処理をする工程を行う。
撥インク処理においてレジストを残した部分が非画像凸部6bに対応する。
最後に、レジスト61を全て除去することで除去版6が得られる(図3e)。
すなわち、ガラス板60(基板表面)からマスクを剥離する工程を行う。
【0043】
本発明の反転オフセット印刷用除去版6は、図2に示した通常の反転オフセット印刷に用いることができる。
すなわち、本発明の印刷物の製造方法は、反転オフセット印刷用除去版6を用いたパターン形成方法であり、インク2をブランケット1a(インク膜形成基材)上に塗布して転写物3aとしてのインク2の膜を形成するインク膜形成工程と、該インク膜に反転オフセット印刷用除去版6を接触させて、非画像凸部6bに対応するインクをブランケット1aから除去する除去工程と、ブランケット1a上に残った画像凸部6aおよび画像凹部6cに対応する該インク膜を被印刷物5(被印刷基板)に転写する転写工程とを含むものである。
【0044】
インク膜形成基材としてのブランケット1aの材料としては、転写物3aの形成が可能で、除去版6による転写物3bの除去および被印刷物5への転写物3cの転写が可能なものが用いられる。
また、変形の少ない硬い材料が好ましいが、ある程度の柔軟性が必要である。このような材料として、シリコーン系エラストマー、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム等を用いることができる。また、ブランケット1a表面の濡れ性を調整するため、ブランケット1a表面に、フッ素樹脂およびシリコーンの塗工、プラズマ処理、UVオゾン洗浄処理などの表面処理を施してもよい。
【0045】
ブランケット1aは通常可撓性を有する板として供給されるので、これを円筒形の版胴に巻きつけて用いたり、強度のある平板に固定して用いたりすることができる。
【0046】
反転オフセット印刷法に用いられるインクは、製造する印刷物の種類に応じて調整すればよく、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウムなどの金属微粒子分散液に必要に応じて各種添加剤を加えた導電性インクや、有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料を有機溶媒に溶解または分散させたインク、カラーフィルタ用顔料分散液などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ブランケット材料の膨潤などを考慮すると、水またはアルコール系溶媒を用いて調整することが好ましい。
【0047】
ブランケット1aへのインクの塗布方法は、均一なインク膜が形成できればよく、バーコート、ダイコート、キャップコート、スピンコート、スリットコート法等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
被印刷物5は、目的とする印刷物に応じて適宜選択することができる。
電子部品を製造する場合は通常、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネートなどのフレキシブルなプラスチック材料、石英などのガラス基板やシリコンウェハーなどを挙げることができる。
印刷物が使用される環境に合わせてフィルム等のフレキシブルな基材を選択することも可能であり、この場合は生産効率の向上のために長尺の基材を用い、連続して印刷を行うことが好ましい。
【0049】
本発明の反転オフセット印刷用除去版を用いた製造方法により製造される印刷物としては、例えば、薄膜トランジスタ基板、カラーフィルタ、プリント配線板、有機エレクトロルミネッセンス素子等を挙げることができる。
薄膜トランジスタ基板は、液晶などのディスプレイを駆動するためのアクティブマトリクス基板として使用することができる。
【0050】
本発明の反転オフセット印刷用除去版を用いて印刷される画像パターンとしては、例えば、薄膜トランジスタ基板の電極、キャパシタ電極、配線等、また、カラーフィルタの着色層、有機エレクトロルミネッセンス素子の電極や有機エレクトロルミネッセンス層、プリント配線板の配線や、素子内蔵型のプリント配線板である場合はキャパシタ電極や誘電体層、抵抗素子電極や抵抗体、インダクタ、トランジスタ構成部材等の受動素子・能動素子を挙げることができる。
【実施例1】
【0051】
除去版のパターンは、図1に模式的に示した構成単位を100×100個で合計10000個配列させた図柄とした。
構成単位は500μm×500μmの領域に、400μm×200μmの矩形、および5μm×50μmの矩形を10μm間隔で複数個配列させたものである。
【0052】
除去版の作製は、前記図3に示した方法で実施した。
工程1)ソーダガラス板(100mm×100mm、0.7mm厚)の片面にクロムを蒸着した(厚さ500m)。
工程2)ポジレジストを用いたフォトリソによりクロム皮膜をパターニングし、画像凹部に対応するクロム皮膜を除去した。
工程3)フッ酸を用いたガラスエッチングにより、版深が0.5μmになるように画像凹部(4μm幅)を形成した。
工程4)ガラス板に残したクロム皮膜パターンから、画像凸部に対応する部分のクロム皮膜を、ポジレジストを用いたフォトリソにより除去した。
工程5)シランカップリング剤としてフルオロアルキルシラン(GE東芝シリコーン社製:商品名TSL8233)をイソプロピルアルコールに0.5重量%となるよう溶解させた溶液に10分間浸漬後、120℃で10分乾燥させることで、画像凹部および画像凸版の表面に撥インク処理を施した。
工程6)クロム皮膜をエッチングにより除去することで、反転オフセット印刷用除去版とした。
【0053】
パターン形成例として導電インクのパターニングを示す。
インクは、銀粒子水分散液(平均粒径20nm、住友電工製)にポリエチレンオキサイド(平均分子量10,000、アルドリッチ製)を、(ポリエチレンオキサイド/銀粒子/水)=(1/10/31)の重量比となるように溶解させ調製した。
ブランケットは、東芝GE社製の2液型シリコーンゴムを、厚さ2mm、大きさ100mm×100mmに成形して作製した。
【0054】
パターン形成は前記図2に示した方法で実施した。
工程1)ブランケットにインクをバーコータ(#6)を用い塗布した後、室温で3分間乾燥させ、ブランケット上に転写物を形成した。
工程2)転写物が形成されたブランケットを除去版に密着させ、非画像凸部に対応する領域の転写物をブランケットから除去し、転写物がパターン形成されたブランケットを得た。
工程3)ブランケット上の転写物を、ソーダガラス板(100mm×100mm、0.7mm厚)に密着させることで転写し、パターンを形成した。
【0055】
得られたパターンを光学顕微鏡で観察したところ、除去版の画像凹部および画像凸部に対応するパターンが欠陥なく形成されていた。
【実施例2】
【0056】
実施例に1おいて、工程3)を省いたこと以外は実施例1と同様に除去版を作製した。得られた除去版は画像凸部と非画像凸部からなり、画像凹部は形成されていない。
【0057】
この除去版を用い、実施例1と同様の方法で導電パターンを形成した。
【0058】
得られたパターンを光学顕微鏡で観察したところ、”底当りパターン抜け”の異常は無いが、パターンの輪郭に顕著な乱れが生じていた。
【0059】
本発明の反転オフセット印刷用除去版は、機械的強度が大きく、かつ印刷時のパターン乱れが小さいため、各種材料のパターンニングに広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1a・・・ブランケット、1b・・・転写物3aが形成された印刷用ブランケット、1c・・・転写物3cが形成された印刷用ブランケット、2・・・・インク、3a・・・(ブランケットの全面に形成された)転写物、3b・・・(除去版によりパターン除去された)転写物、3c・・・(ブランケットにパターン形成された)転写物、4・・・・除去版、5・・・・被転写物、6・・・・本発明の除去版、6a・・・画像凸部、6b・・・非画像凸部、6c・・・画像凹部、7・・・・除去版6に対応する印刷物、7a・・・印刷物における画像部、7b・・・印刷物における非画像部、60・・・除去版の母材、61・・・レジスト、62・・・撥インク性表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反転オフセット印刷に用いられ、インク膜形成基材上に形成されたインク膜に接触させることにより印刷物の画像部を除く非画像部に対応する部分のインクを除去することにより前記インク膜形成基材上に前記画像部に対応するインクを残存させる除去版であって、
前記除去版の表面は、前記画像部の一部に対応して形成された凸状の画像凸部と、前記画像部の残りの部分に対応して形成された凹状の画像凹部と、前記非画像部に対応して形成された凸状の非画像凸部とを備え、
前記画像凸部の頂面が撥インク処理をされている、
ことを特徴とする反転オフセット印刷用除去版。
【請求項2】
前記画像凸部と前記非画像凸部の境界に、前記画像凹部が前記画像凸部を縁取るように設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の反転オフセット印刷用除去版。
【請求項3】
前記画像凹部の底面が撥インク処理をされている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の反転オフセット印刷用除去版。
【請求項4】
前記撥インク処理は撥インク性のシランカップリング剤による処理である、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の反転オフセット印刷用除去版。
【請求項5】
前記撥インク性のシランカップリング剤はフルオロアルキルシラン、フルオロアルキル基を含むオリゴマー、もしくは加水分解性基を含むシロキサンである、
ことを特徴とする請求項4に記載の反転オフセット印刷用除去版。
【請求項6】
基板表面にマスクを形成する工程と、
前記マスクのうち前記画像凹部に対応する部分を除去する工程と、
前記基板表面をエッチングして前記画像凹部を形成する工程と、
前記マスクのうち前記画像凸部に対応する部分を除去する工程と、
前記基板表面のうち前記マスクが除去された部分に撥インク処理をする工程と、
前記基板表面から前記マスクを剥離する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の反転オフセット印刷用除去版の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5に何れか1項記載の反転オフセット印刷用除去版を用いたパターン形成方法であり、
インクをインク膜形成基材上に塗布してインクの膜を形成するインク膜形成工程と、
該インク膜に前記反転オフセット印刷用除去版を接触させて、前記非画像凸部に対応するインクをインク膜形成基材から除去する除去工程と、
該インク膜形成基材上に残った前記画像凸部および前記画像凹部に対応する該インク膜を被印刷基板に転写する転写工程と、
を含むことを特徴とする印刷物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−73264(P2011−73264A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226748(P2009−226748)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】