説明

反転装置、画像形成装置、電子写真複写機、ファクシミリ、プリンタ、スキャナ

【課題】 記録媒体にカールが生じていても、確実に反転することができ、反転時において記録媒体に耳折れやジャム等の不具合が発生しにくい反転装置、画像形成装置を提供する。
【解決手段】 3本の反転ローラ15、16、17のうち、駆動ローラである反転ローラ15、17が複数のそれぞれ異なる従動ローラである反転ローラ16に圧接する。従動ローラである反転ローラ16はその軸16cを中心に自由に回転できる。反転往路11側の駆動ローラ15と、反転復路13側の駆動ローラ17の間に自由に線速差を設けることができ、用紙が画像形成部のプロセススピードに依存した速度で反転した後の搬送速度はプロセススピード寄りも速い速度に設定でき、生産性を向上させ得る。反転ローラ15、17の周速を用紙搬送速度より早い周速で回転させることにより、反転ローラ15、17への突入時に受ける用紙先端のダメージを低減させることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ、スキャナ等において用いる記録媒体の反転装置と、これを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のレーザープリンタや複写機等の画像形成装置は、デジタル化に伴い記録媒体を裏面排紙してページ順に揃えることが基本になっている。このため、画像形成を終えた転写材を、排紙するまでの搬送経路にて反転させる装置を備えた装置が多く出現している。
【0003】
このような画像形成装置用の記録媒体の反転装置では、記録媒体を反転させるローラに記録媒体を送入するときの速度が、画像形成部の画像形成速度に依存するのに対し、記録媒体の搬送方向を反転した後は、そのような制約が少ない。そのため、記録媒体反転後の搬送速度を画像形成速度よりも速い速度に設定し、記録媒体を速い速度で送出することによって、生産性の向上やソーターなどの後処理装置で必要な処理時間を確保することができるものがある。
【特許文献1】特開2000-118830号公報
【特許文献2】特開2001-163501号公報
【特許文献3】特開2003-312915号公報
【特許文献4】特開2004-250146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような反転装置の場合には、駆動モータによって駆動ギア及び従動ギアを介して回転駆動される1本の駆動ローラに、2本の従動ローラを圧接させて構成するようになっているため、用紙の反転前と反転後とで1本の駆動ローラの搬送速度を変えるには、駆動モータの変速手段やクラッチと変速ギア等からなる変速手段が必要となり、コストアップを招いたり、速度の変動時に駆動モータ等の回転速度が変化することに伴う耳触りな騒音発生の原因となるという問題点があった。
【0005】
また、1本の駆動ローラに2本の従動ローラが圧接しているため、2本のニップラインに同時に送入側と送出側の用紙が挟持されている場合には、それぞれの用紙を同一の速度で搬送する必要があるため、さらに生産性を高めるためには送出側の用紙を増速する等の制御が不可能になるという問題点もあった。
【0006】
さらに、反転後の用紙を排出する以外に反転後の用紙を画像形成装置内に戻して裏面に画像形成を行うモードを実行する場合があるが、このような画像形成装置の用紙反転装置として3本のローラを用いる構成、いわゆるトリローラを用いる場合、裏面に画像形成を行うモードでは、搬出側のピンチローラは動作している必要がないが、搬出側のピンチローラだけを停止させることができないため、搬出側のピンチローラが不必要に回転し、無駄な負荷及び騒音を発生させることがあるという問題点もあった。
【0007】
そこで本発明は、生産性のアップや反転ローラの周速を用紙搬送速度より早くすることによって記録媒体先端のダメージを低減することができる反転装置と、これを用いた画像形成装置を提供することを目的としている。なお、以上及び以下の説明において、「略同じ」とは同一含むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る反転装置は、記録媒体が搬入される導入路と、該導入路と略同じ方向に延在する記録媒体の反転路と、前記導入路と前記反転路の接続部分から前記反転路と略直交する方向に延在する記録媒体の搬出路を有し、前記反転路接合部分に従動ローラを設け、前記導入路側に第一の駆動ローラ、前記搬出路側に第二の駆動ローラを配置し、該第一及び第二の駆動ローラが前記反転路接合部分に設けた複数のそれぞれ異なる従動ローラに圧接している反転搬送装置において、前記従動ローラを、軸状部材を中心に各ローラ毎に自由に回転可能としてなることを特徴とする。
【0009】
同請求項2に係るものは、請求項1に記載の反転装置において、前記第一の駆動ローラと前記第二の駆動ローラの駆動を一つの駆動源で行うことを特徴とする。
【0010】
同請求項3に係るものは、請求項1または2に記載の反転搬送装置において、前記導入路側の前記第一の駆動ローラと圧接した前記従動ローラの径に対し、前記搬出路側の前記第二の駆動ローラと圧接する前記従動ローラの径を大きくしてなることを特徴とする。
【0011】
同請求項4に係るものは、請求項3に記載の反転装置において、前記導入路側の前記駆動ローラと前記従動ローラの圧接位置、及び前記搬出路側の前記従動ローラの位置それぞれに合せた形状のガイド部を有することを特徴とする。
【0012】
同請求項5に係るものは、請求項3に記載の反転装置において、前記搬出路側の前記駆動ローラと前記従動ローラの圧接位置と、前記導入路側の前記駆動ローラと圧接した前記従動ローラの位置より、両端外側に配置することを特徴とする。
【0013】
同請求項6に係るものは、請求項3に記載の反転搬送装置において、前記搬出路側に配置された前記駆動ローラと圧接する前記従動ローラは摺動部材からなることを特徴とする。
【0014】
同請求項7に係るものは、請求項3に記載の反転搬送装置において、前記搬出路側に配置された前記駆動ローラと圧接する前記従動ローラは導電性部材からなることを特徴とする。
【0015】
同請求項8に係る画像形成装置は、請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とする。
【0016】
同請求項9に係る電子写真複写機は、請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とする。
【0017】
同請求項10に係るファクシミリは、請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とする。
【0018】
同請求項11に係るプリンタは、請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とする。
【0019】
同請求項12に係るスキャナは、請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、記録媒体が画像形成部でのプロセススピードに依存した速度で反転した後の搬送速度を、プロセススピードよりも速い速度に設定でき、生産性のアップが図れるとともに、反転ローラの周速を用紙搬送速度より早くすることによって記録媒体先端が反転ローラへ突入する時に受けるダメージを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明に係る画像形成装置の転写材の搬送経路を示す説明図である。図2は、図1に示す画像形成装置の反転装置部分の拡大説明図である。図1において、本実施形態の画像形成装置は、装置本体に下部に2段の給紙カセット1a、1bが配置され、給紙指令が発せられると、一方の給紙カセット1より記録媒体としての用紙が分離給送手段2によって1枚ずつ給紙される。給紙された用紙は、グリップローラ対3を通過し、再給紙搬送路との合流地点の中間ローラ対4を経てレジストローラ対5に達する。なお、分離給送手段2、グリップローラ対3、中間ローラ対4及びレジストローラ対5は、それぞれクラッチ、ステッピングモータ等により単独で駆動できるように構成されている。
【0023】
図中の符号6は像担持体としての感光体ドラムであり、この感光体ドラム6上には公知の電子写真プロセスによってトナー像が形成され、給送された用紙はレジストローラ対5によりこのトナー像に同期して感光体ドラム6の転写位置に搬送され、そしてトナー像が転写される。転写を終えた用紙は、定着装置7に搬送され、ここでトナー像が用紙に定着される。
【0024】
画像形成を終えた用紙は、反転しない場合、そのままストレートに排紙ローラ9に搬送されて機外に排紙される。また、反転排紙若しくは両面コピーが選択されている場合は、分岐爪8の切り替えにより用紙は反転装置10へ搬送される。
【0025】
反転装置10は、図1及び図2に示すように、スイッチバック路としての中間トレイ12に通ずる反転往路11と、中間トレイ12から上記排紙ローラ9に通ずる反転復路13とを有する。反転往路11に送り込まれた用紙は、搬送ローラ対14を経由して反転ローラ対15、16に挟持され、その搬送作用により中間トレイ12に送られる。中間トレイ12には、スイッチバックローラ対20、21が設けられている。上スイッチバックローラ20が図示していないソレノイドを駆動源として下スイッチバックローラ21に対し接離可能となっている。
【0026】
反転往路11には、本例の場合、反転ローラ対15、16の上流側に、入口センサ22が設けられ、入口センサ22が用紙の先端を検知すると、その検知をトリガとしてスイッチバックローラが用紙を受け入れるように回転駆動し、用紙後端が所定の用紙停止位置に到達したとき駆動を停止させる。その後、スイッチバックローラ対20、21を逆転方向に駆動させ、用紙は後端が前端となって進入方向と逆方向に搬送される。
【0027】
反転ローラ対16、17に挟持された用紙は、その搬送作用により搬送され、上スイッチバックローラ20は、図示していないソレノイドにより駆動され鎖線位置に移動することにより、次給紙が中間トレイ12に進入可能となる。
【0028】
中間トレイ12に続いて設けられた切り換え爪23により、反転排出する場合と、両面コピーする場合とで搬送方向が切り換えられる。切り換え爪23が図1及び図2の実線の位置にあるとき、スイッチバックされる用紙は上スイッチバックローラ20、下スイッチバックローラ21、反転ローラ16、17により反転復路を搬送され、図1に示す搬送ローラ対24及び14を介し、そして排紙ローラ9に搬送されて機外に排紙される。
【0029】
また、切り換え爪23が図2の鎖線の位置にあるとき、用紙は反転ローラ17に沿って送られ、中間トレイ12の下方に設けられた再給紙搬送路25、中間ローラ対4を経てレジストローラ対5へ送られる。そして、用紙の裏面に画像形成の終えると機外に排紙される。
【0030】
すなわち本実施例の反転装置においては、用紙が搬入される導入路である反転往路11と、この導入路と略同じ方向に延在する記録媒体反転路である反転復路13と、導入路と反転路の接続部分から反転路とは略直交する方向に延在する記録媒体搬出路(実施例では反転往路11の一部)を有し、反転路の接合部分に従動ローラである反転ローラ対16を設け、また導入路側に第一の駆動ローラである反転ローラ対15を、搬出路側に第二の駆動ローラである反転ローラ対17を配置する。
【0031】
そして図3に示すように、第一及び第二の駆動ローラである反転ローラ15、17が複数のそれぞれ異なる従動ローラである反転ローラ16に圧接している。図3では反転ローラ15に圧接する反転ローラ16を符号16aで示し、反転ローラ17に圧接する反転ローラ16を符号16bで示してある。
【0032】
この反転装置において、従動ローラである反転ローラ16は、軸状部材であるその軸16cを中心に自由に回転できるようになっている。ただし、軸16cのスラスト方向へは移動しない構造としてある。そのため、反転往路11側の駆動ローラ15と、反転復路13側の駆動ローラ17の間に自由に線速差を設けることができる。したがって、用紙が画像形成部のプロセススピードに依存した速度で反転した後の搬送速度はプロセススピード寄りも速い速度に設定でき、生産性を向上させ得る。また駆動ローラである反転ローラ15、17の周速を用紙搬送速度より早い周速で回転させることにより、反転ローラ15、17への突入時に受ける用紙先端のダメージを低減させることもできるようになる。
【0033】
また図4に示すように、駆動ローラである反転ローラ15、17の駆動を1つの駆動源(モータ50、駆動ギア51、52)で行える構成とすることにより、簡単な構成となりかつ制御を簡素化でき、低コスト化が図れる。
【0034】
また反転ローラ16a、16bは、反転ローラ17と圧接する反転ローラ16bのほうが径が大きくなっている。そのため、反転ローラ16a、16bの間に線速差が生じている場合においても、反転時に用紙先端にダメージを与えること無く、反転復路13側に用紙を送り込むことができる。
【0035】
なお、図5に示すように、反転ローラ15、17と反転ローラ16の圧接位置それぞれに合せた形状のガイド部30を有するので、同軸上にローラ径が異なるローラを備えた場合においても用紙を正確に各ローラの円周位置に導くことができ、反転ローラへの突入時に受ける用紙先端のダメージを低減することができる。
【0036】
また反転ローラ15、17と反転ローラ16の圧接位置を、反転ローラ15と反転ローラ16aの圧接位置を内側に、反転ローラ17と反転ローラ16bの圧接位置を外側に配置することで、ローラ径の差、線速差がある場合においても用紙両端はフリーとなり、しわ発生等が起きにくいものとなっている。
【0037】
さらに、搬出路側に配置された反転ローラ17と圧接する反転ローラ16bを摺動部材とすることで、用紙へのこすれ等の発生を低減することができる。また反転ローラ16bを導電性部材で構成すれば、当接面での摩擦帯電を発生を防止でき、印画時(第2面)の異常画像発生を防止することができる。
【0038】
このような反転装置を電子写真複写機、ファクシミリ装置、プリンタ、スキャナ等で用いれば、小スペース化、高生産性化、低コスト化が図れることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る画像形成装置の転写材の搬送経路を示す説明図
【図2】図1に示す画像形成装置の反転装置部分の拡大説明図
【図3】本発明の要部の説明図
【図4】本発明の要部の斜視図
【図5】本発明の要部の図3相当の説明図
【符号の説明】
【0040】
1 給紙カセット
2 分離給紙手段
3 グリップローラ
4 中間ローラ
5 レジストローラ
6 感光体ドラム
7 定着装置
8 分岐爪
9 排紙ローラ
10 反転装置
11 反転往路
12 中間トレイ
13 反転復路
14 搬送ローラ
15、17 反転ローラ(駆動ローラ)
16、16a、16b 反転ローラ(従動ローラ)
16c 反転ローラ(従動ローラ)の軸
18 スプリング
19 ソレノイド
20、21 スイッチバックローラ
22 入口センサ
23 切り換え爪
24 搬送ローラ
25 再給紙搬送路
30 ガイド部
50 駆動用モータ
51、52 ギア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が搬入される導入路と、該導入路と略同じ方向に延在する記録媒体の反転路と、前記導入路と前記反転路の接続部分から前記反転路と略直交する方向に延在する記録媒体の搬出路を有し、前記反転路接合部分に従動ローラを設け、前記導入路側に第一の駆動ローラ、前記搬出路側に第二の駆動ローラを配置し、該第一及び第二の駆動ローラが前記反転路接合部分に設けた複数のそれぞれ異なる従動ローラに圧接している反転搬送装置において、前記従動ローラを、軸状部材を中心に各ローラ毎に自由に回転可能としてなることを特徴とする反転装置。
【請求項2】
請求項1に記載の反転装置において、前記第一の駆動ローラと前記第二の駆動ローラの駆動を一つの駆動源で行うことを特徴とする反転装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の反転搬送装置において、前記導入路側の前記第一の駆動ローラと圧接した前記従動ローラの径に対し、前記搬出路側の前記第二の駆動ローラと圧接する前記従動ローラの径を大きくしてなることを特徴とする反転装置。
【請求項4】
請求項3に記載の反転装置において、前記導入路側の前記駆動ローラと前記従動ローラの圧接位置、及び前記搬出路側の前記従動ローラの位置それぞれに合せた形状のガイド部を有することを特徴とする反転装置。
【請求項5】
請求項3に記載の反転装置において、前記搬出路側の前記駆動ローラと前記従動ローラの圧接位置と、前記導入路側の前記駆動ローラと圧接した前記従動ローラの位置より、両端外側に配置することを特徴とする反転装置。
【請求項6】
請求項3に記載の反転搬送装置において、前記搬出路側に配置された前記駆動ローラと圧接する前記従動ローラは摺動部材からなることを特徴とする反転装置。
【請求項7】
請求項3に記載の反転搬送装置において、前記搬出路側に配置された前記駆動ローラと圧接する前記従動ローラは導電性部材からなることを特徴とする反転装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とする電子写真複写機。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とするファクシミリ。
【請求項11】
請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とするプリンタ。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかに記載の反転装置を有することを特徴とするスキャナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−45541(P2007−45541A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229349(P2005−229349)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】