説明

収容体

【課題】内容物注出時に外気などが入り込むことを防止して再封止が可能な収容体を提供する。
【解決手段】本発明の収容体は、内容物50を収容する収容部9と、内容物を注出するための注出部11と、注出部11と収容部9との間に形成され内容物を通過させる流路10と、流路10に配設され内容物を通過させると共に通過を停止する開閉部材15とを有する。開閉部材15は、シート状部材間に溶着される溶着部を具備し流路10に沿って貫通孔が形成された本体と、貫通孔に対してスライド可能に抜け止め挿通された栓体17と、を備え、栓体17は、収容部9を押圧したときに注出部側に移動して開栓し、収容部の押圧力がなくなったときに収容部側に移動して貫通孔を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材を重ねて溶着することにより内容物を収容するための収容部を形成して成る収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば合成樹脂製のシート(プラスチックフイルムなど)を重ねて溶着(熱溶着)すると共に、これにスパウトと称される注出口を溶着(熱溶着)したスパウト付き収容体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなスパウト付き収容体は、内部(収容部)に液体や半流動体などの内容物を充填し、スパウトを介して内容物が注出されるようになっており、医療分野、食品分野、日用品分野等、様々な分野で使用されている。
【0003】
また、上記したスパウト付きの収容体では、内容物を取り出した後、再封止できるように、キャップのような栓体を設けることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−291549号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなスパウト付きの収容体を利用するにあたり、特定の分野では、スパウトを介して内容物を取り出す際に、収容部内に外気などが入り込むのを防止したいことがある。これは、外気が入り込むことで内容物と反応し、内容物の性質が変化してしまう可能性があるためである。
【0006】
従来のような栓体を有するスパウトでは、使用時において、栓体を外し、そのまま内容物を注出した後、再び栓体を取着しても、栓体を開封して注出操作をする際に、必然的に外気が収容部に入り込んでしまう。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、内容物注出時に外気などが入り込むことを防止して再封止が可能な収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、シート状部材を重ねて周囲を溶着した収容体において、内容物を収容する収容部と、内容物を注出するための注出部と、前記注出部と収容部との間に形成され内容物を通過させる流路と、前記流路に配設され内容物を通過させると共に通過を停止する開閉部材と、を有し、前記開閉部材は、前記シート状部材間に溶着される溶着部を具備し前記流路に沿って貫通孔が形成された本体と、前記貫通孔に対してスライド可能に抜け止め挿通された栓体と、を備え、前記栓体は、前記収容部を押圧したときに注出部側に移動して開栓し、収容部の押圧力がなくなったときに収容部側に移動して貫通孔を閉塞することを特徴とする。
【0009】
上記した構造の収容体によれば、収容部に収容された内容物は、流路に設けられた開閉部材によって、注出部からの注出、及び注出の停止が成される。すなわち、収容部に対して押圧力を付与すると、収容部の内圧が高まり、開閉部材に設けられたスライド可能な栓体は注出部側に移動し、これにより、開閉部材の本体に形成された貫通孔を開いて開栓する(内容物の注出)。そして、収容部に対する押圧力を解除すると、前記スライド可能な栓体は、収容部側に移動して貫通孔を閉塞し、流路が封止されることから、外部から気体や液体などが収容部内に流入することが防止される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内容物注出時に外気などが入り込むことを防止して再封止が可能な収容体が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す図であり、溶着部を斜線で示した収容体の構成を示す正面図。
【図2】収容体に溶着される開閉部材を示す斜視図。
【図3】開閉部材を下方側から見た斜視図。
【図4】開閉部材の構造を示す分解斜視図。
【図5】開閉部材の部分で内容物が通過する状態を示す図。
【図6】収容体の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
図1から図5は本発明の一実施形態に係る収容体の構成を示す図であり、図1は、溶着部を斜線で示した収容体の正面図、図2は、収容体に溶着される開閉部材を示す斜視図、図3は、開閉部材を下方側から見た斜視図、図4は、開閉部材の構造を示す分解斜視図、そして、図5は、開閉部材の部分で内容物が通過する状態を示す図である。
【0013】
本実施形態に係る収容体1は、例えば、図1に示すような形態で構成することができ、シート状部材3a,3bを重ね合わせ、斜線で示す周囲領域をヒートバー等によって熱溶着することによって、その収容体本体が形成される。
【0014】
前記シート状部材3a,3bは、柔軟性を有する合成樹脂製のシート(プラスチックフイルム)、例えば、溶着し易いように、ポリエチレンやポリプロピレンなどによって構成されており、公知のように、その表面側に、収容物に対するバリア性(ガスバリア性および遮光性)を高めるように、ナイロン、アルミホイルなどを積層した、いわゆる複合層で構成されることが好ましい。
【0015】
前記シート状部材3a,3bは、重ね合わせた状態で周囲の斜線領域(上縁部5、側縁部6、下縁部7)がヒートバーによって熱溶着され、液体や半流動体のような内容物50が収容される収容部9、及び流路10が形成される。この場合、本実施形態では、下縁部7を溶着するに際して底壁8を設けることで、自立型の収容体として構成されている。
【0016】
なお、本実施形態では、前記シート状部材3a,3bを溶着するに際しては、一方の側縁部6の下方部から上方に向けて斜めに溶着される第1内側溶着部9aを設けることで、前記収容部9が形成される。また、第1内側溶着部9aの上端位置で垂直上方に向けて溶着され、かつ所定の位置で水平方向に溶着される第2内側溶着部10aを設けることで、前記流路10が形成される(水平部分10Aと垂直部分10Bを有する流路10が形成される)。
【0017】
上記したような第1内側溶着部9a及び第2内側溶着部10aを設けることで、収容部9は、流路10に移行するにしたがって次第に縮径する形状となっており、収容部9を押圧した際の押圧力が、後述する開閉部材15に対して効率的に作用するようにしている。
【0018】
前記流路10には、内容物を通過させると共に、その通過を停止させるための開閉部材15が配設される。開閉部材15は、シート状部材3a,3b間に溶着される溶着部(溶着し易いように断面舟形形状とされる)16aを具備し、流路10に沿って貫通孔16bが形成された本体16と、前記貫通孔16bに対してスライド可能に抜け止め挿通された栓体17と、を備えている。
【0019】
前記本体16は、図2及び図3に示すように、表面部16cを有する略円筒形状(空洞状)に構成されており、これにより、貫通孔16bの軸方向長さを短くして、収容部9が押圧された際、内容物50を通過し易くしている。
【0020】
また、前記栓体17は、貫通孔16bの内径に対して、所定の隙間を生じさせて軸方向にスライド可能に挿通されている。具体的には、栓体17は、スライド可能な部分となる軸部18と、軸部18の両端に形成される上側抜け止め部(弁部)19、及び下側抜け止め部20とを備えている。
【0021】
この場合、上側抜け止め部19は、円板状に構成されており、裏面19aを本体16の表面部16cに当接させて、栓体17が下方側に抜けないようにするとともに、その表面19bは受圧面として構成され、後述するように、貯留状態にある内容物からの圧力によって栓体17を下方にスライドさせる機能を有する。また、下側抜け止め部20は、最初の組み付け時に栓体17を圧入して挿通孔16bにセットできるように、円錐状の圧入部20aを有するとともに、フランジ部20bを備えており、フランジ部20bによって栓体17が上方側に抜けないようにしている。
【0022】
なお、上記した栓体17と貫通孔16bとの関係は、収容体の大きさ、内部に収容される内容物50の粘性などによって適宜変形されるが、例えば、内容物に粘性がなく、かつ本体16の大きさ(最大幅)が20mm程度である場合、貫通孔16bの径を3.0〜3.5mm程度とし、かつ軸部18との間で隙間が0.2〜1.0mm程度生じるように、軸部18の径を設定することが可能である。また、軸部18の長さ(スライド長さ)については、2〜5mm程度確保されていれば良い。
【0023】
また、開閉部材15の上方側に形成される流路10は、図1で示すカット位置Cで収容体1をカットした際、その部分が注出部11となり、かつ収容体1を傾けて収容部9に押圧力を作用させた際に内容物50が流れる部分となる。この場合、内容物を一定量注出した後、前記栓体17が再び閉塞位置(上側抜け止め部19の裏面19aが、本体16の表面部16cに面接して内容物の封止状態となる位置)に直ちにスライドできるように、栓体17の表面(受圧面)19bに圧力を付与可能にする貯留部を形成しておくことが好ましい。
【0024】
本実施形態では、上記したように、収容体1が自立体として構成されており、かつ流路10は、水平部分10Aと垂直部分10Bを備えているため、一定量を注出した後、再び収容体1を起立状態にすると、垂直部分10Bに内容物が残り易くなり、この部分に貯留された内容物50aが直ちに栓体17を押下げるようになる。すなわち、垂直部分10Bを貯留部として機能させることが可能となる。
【0025】
なお、収容体1を起立状態にした際、貯留部10Bに確実に内容物が貯留可能となるように、図1に示す第2内側溶着部10aの垂直部分の上方側に、シール部(擬似シール)10dを形成しておくことが好ましい。このシール部10dは、収容部9に押圧力が作用した際に内容物を通過させ、かつ押圧力が作用しないときに内容物が通過しないか少量の通過を許容する程度に形成されていれば良く、例えば、ポイントシールとしたり、この部分にアルミ箔などの部材を挟んで硬化状態にしておくことで、上記したような内容物の通過作用を実現することが可能である。
【0026】
次に、上記した構成の収容体1の作用について説明する。
まず、図1で示すカット位置Cで収容体1をカットして注出部11を形成する。この状態で、収容体1を傾けて収容部9に押圧力を付与すると、収容部9の内圧が高まり、開閉部材15に設けられたスライド可能な栓体17は注出部側に移動し、開閉部材15の本体16に形成された貫通孔16bを開いて開栓する。すなわち、内容物50は、図5の矢印で示すように、軸部18と貫通孔16bとの間の隙間を介して栓体17の上側抜け止め部19の裏面19aに当たって栓体17を押し上げて(開栓して)流路10に沿って流れるようになり、注出部11から注出が可能となる。
【0027】
そして、収容部9に対する押圧力を解除すると、スライド可能な栓体17は、収容部9側に移動して貫通孔16bを閉塞する。この場合、前記流路10にシール部10dを形成して垂直部分(貯留部)10Bを設けたことから、この部分に内容物50aが残るようになる。すなわち、収容体1が多少傾いた状態にあっても、貯留部の部分に内容物が残ることでその内圧が高まり、栓体17の上側抜け止め部19の表面19bに押圧力が作用して、栓体17を直ちに下方にスライドさせることができる。
【0028】
これにより、上側抜け止め部19の裏面19aが本体16の表面部16cに面接して貫通孔16bは閉塞され、収容部9内に外気などが入り込むことが防止される(収容部内の内容物50は確実に封止される)。
【0029】
上記したような開閉部材15を備えた収容体1によれば、内容物50を注出する際、外気などが入り込むことを確実に防止して再封止するが可能となり、内容物50と外気が反応するようなことがなくなる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、収容部9の形成位置や大きさ、上記した開閉部材15の取着位置、それに伴う流路10の形成位置、注出がなされる部分(カットされる部分)、注出部の構成等については、種々変形することが可能である。
【0031】
例えば、開閉部材15は、収容体1の中央領域に配設する等、その設置箇所については特に限定されることはなく、これにより注出時にカットする部分についても適宜変形することが可能である。また、開閉部材15の構成(栓体の形状や本体の形状など)についても、所望の流出量や内容物の粘度などに応じて、適宜変形することが可能である。さらに、図1に示す構成では、カット位置Cでカットすることにより注出部11を形成し、内容物50を注出するようにしていたが、注出部の構成については一般的な口栓(スパウトとも称される)によって構成しても良い。例えば、図6に示すように、注出部は、シート状部材3a,3bの側縁部6間に溶着される口栓(スパウト)40によって構成しても良い。図6に示すスパウト40は、プル式の栓体41を一体成型したものであり、栓体41を指で摘んで引き上げることで、注出口を露出させ、内容物50を注出することが可能となっている。また、内容物を注出した後は、栓体41を再び注出口に嵌入することで、再封止することが可能となっている。もちろん、このようなスパウトについては、様々な形態のものを用いることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 収容体
3a,3b シート状部材
9 収容部
10 流路
10d シール部
11 注出部
15 開閉部材
16 本体
16b 貫通孔
17 栓体
50 内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を重ねて周囲を溶着した収容体において、
内容物を収容する収容部と、内容物を注出するための注出部と、前記注出部と収容部との間に形成され内容物を通過させる流路と、前記流路に配設され内容物を通過させると共に通過を停止する開閉部材と、を有し、
前記開閉部材は、前記シート状部材間に溶着される溶着部を具備し前記流路に沿って貫通孔が形成された本体と、前記貫通孔に対してスライド可能に抜け止め挿通された栓体と、を備え、
前記栓体は、前記収容部を押圧したときに注出部側に移動して開栓し、収容部の押圧力がなくなったときに収容部側に移動して貫通孔を閉塞することを特徴とする収容体。
【請求項2】
前記開閉部材と注出部との間に、内容物を注出した後に内容物を貯留し、前記栓体に対して収容部側へ押圧力を作用させる貯留部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の収容体。
【請求項3】
前記貯留部は、前記収容部に押圧力が作用した際に内容物を通過させ、かつ押圧力が作用しないときに内容物が通過しないか少量の通過を許容する程度に、前記流路に形成したシール部によって構成されることを特徴とする請求項2に記載の収容体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84303(P2011−84303A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237901(P2009−237901)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000228408)日本キム株式会社 (37)
【Fターム(参考)】