説明

収容物の取り出し装置

【課題】包装体に収容された収容物の取り出し容易な装置を提供する。
【解決手段】収容物を包装材によって覆っている包装体(7)の内部から、上記収容物を取り出すための収容物の取り出し装置(B)であって、上記包装材(22)を破損させる包装材用の破損手段(70a)と、上記収容物が上記包装材(22)の破損部分を通過するように上記収容物を移動させる動作部材(70)と、を備え、上記動作部材(70)は、上記包装材(22)に対向する方向に往復動可能であるとともに、上記包装体(7)に向けて移動してこの包装体内の収容物に接触または接近したときに上記収容物を保持し、上記包装体(7)から離れる方向に移動することによって保持した上記収容物を取り出し、かつ、上記破損手段(70a)は、上記動作部材(70)が上記包装材(22)に向けて移動するときにこの包装材(22)を突き破ることが可能に上記動作部材(70)の先端部に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば人間の血液中のグルコースの濃度を測定するといった用途に用いられる測定装置、およびこの測定装置に組み込んで使用するのに好適な収容物の取り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病を病む人は、自己の血液中のグルコース濃度を定期的に測定し、その測定結果に応じて薬剤投与やその他の対応措置を講じることが好ましい。そこで、従来においては、そのための測定装置として、特開平8−262026号公報(特許文献1)に記載されたものがある。
【0003】
同公報に記載された測定装置は、図26に表わすように、筐体90の上面部の操作部91を操作すると、筐体90の先端の開口部90aからセンサSの一部が突出するように構成されている。センサSは、血液中のグルコースと反応する試薬を備えた小片状である。このセンサSに使用者の血液を付着させると、筐体90内の測定回路(図示略)がその血液中のグルコース濃度を測定し、その測定結果が表示画面92に表示される。
【0004】
筐体90内には、図27に表わすようなカートリッジとしての包装体95が装着される。この包装体95は、複数のセンサSを収容する複数の凹部96が放射状に設けられた基材95aを有しており、各センサSの保護を図る観点から、この基材95aの上面部はフィルム95bによって覆われている。筐体90内には、包装体95の内部からセンサSを1つずつ取り出して開口部90aを介して外部に突出させるように動作する取り出し装置(図示略)が設けられている。この取り出し装置の詳細な説明は省略するが、この取り出し装置は、図28に表わすような刃97aを有する動作体97を備えている。この動作体97は、操作部91が操作されると、図29A,図29Bに表わすように、刃97aが包装体95のフィルム95bの一部分を突き破った後に、この刃97aがセンサSの後端を包装体95の外周縁方向に押すようになっている。すると、センサSは、フィルム95bの一部分を突き破り、筐体90の開口部90aまで押し出される。
【0005】
このような構成によれば、包装体95を所定部分にセットしておけば、複数のセンサSを順次利用することによって、血液中のグルコース濃度の測定作業を複数回にわたって行なうことができる。
【0006】
【特許文献1】特開平8−262026号公報
【0007】
しかしながら、上記従来技術においては、次のような問題点があった。
【0008】
すなわち、センサSが包装体95の外部に取り出されるときには、センサS自体がフィルム95bを突き破る。このため、センサSの先端を、鋭利にする必要がある。ところが、センサSの先端にはユーザが手を触れる可能性があるため、上記先端を鋭利にすることはユーザに恐怖感を与える虞れがあり、好ましいものではない。また、センサS自体でフィルム95bを突き破らせる手段では、センサSの先端を鋭利にしても、フィルム95bが容易に破れない場合があり、センサSの取り出しが困難となる場合もある。
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解消し、または抑制することが可能な収容物の取り出し装置および測定装置を提供する点にある。
【0010】
本発明の第1の側面によって提供される収容物の取り出し装置は、収容物を包装材によって覆っている包装体の内部から、上記収容物を取り出すための収容物の取り出し装置であって、上記包装材を破損させる包装材用の破損手段と、上記収容物が上記包装材の破損部分を通過するように上記収容物を移動させる動作部材と、を備え、上記動作部材は、上記包装材に対向する方向に往復動可能であるとともに、上記包装体に向けて移動してこの包装体内の収容物に接触または接近したときに上記収容物を保持し、上記包装体から離れる方向に移動することによって保持した上記収容物を取り出し、かつ、上記破損手段は、上記動作部材が上記包装材に向けて移動するときにこの包装材を突き破ることが可能に上記動作部材の先端部に設けられていることを特徴としている。
【0011】
好ましくは、上記動作部材は、上記動作部材の先端部に設けられている刃である。
【0012】
好ましくは、上記動作部材および上記刃は、金属板により一体に形成されている。
【0013】
好ましくは、上記動作部材は、フック状の保持片を備え、かつ上記包装体内を移動するときには撓み変形を行なう一方、上記保持片が上記収容物を越える位置まで進行したときには元の形状に弾性復帰可能とされており、この復帰がなされることによって、上記保持片が上記収容物を引っ掛けるように変移して上記収容物を保持する構成とされている。
【0014】
本発明の第2の側面によって提供される収容物の取り出し装置は、収容物を包装材によって覆っている包装体の内部から、上記収容物を取り出すための収容物の取り出し装置であって、上記包装材を破損させる包装材用の破損手段と、上記収容物が上記包装材の破損部分を通過するように上記収容物を移動させる動作部材と、を備え、上記破損手段は、上記包装材に一定方向に延びた切断開口部を形成する動作が可能な切断刃であり、かつ、上記動作部材は、上記切断開口部から上記包装体内に進入するとともに、この進入後に上記収容物を上記切断開口部から上記包装体の外部へ押し出す動作が可能であることを特徴としている。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点については、以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0017】
図1および図2は、本発明に係る収容物の取り出し装置の一実施形態を備えた測定装置の一例を表わしている。これらの図によく表われているように、この測定装置Aは、筐体1と、この筐体1内に収容された取り出し装置Bとを具備している。
【0018】
この測定装置Aは、図3A,図3Bに表わされたカートリッジ2内に収容されている複数のセンサSを利用することによって、血液中のグルコース濃度を測定可能である。各センサSは小片状であり、図面においては省略されているが、グルコースに反応する試薬やこの試薬に接触する電極を有している。
【0019】
カートリッジ2は、略半円弧状の合成樹脂製のケース23を具備している。このケース23には、上面開口状の複数の凹溝20が等間隔で放射状に並んで形成されており、これら複数の凹溝20内にセンサSがその短手方向に起立した姿勢で収容されている。各凹溝20には半円状の小サイズの凹部21が繋がって形成されている。この凹部21内には乾燥剤(図示略)が収容されており、各センサSの試薬が湿気に起因して品質劣化をきたさないように配慮されている。ケース23の上面部には、たとえばアルミニウム箔からなるフィルム22が貼られており、これにより各センサSは密封包装されている。カートリッジ2は、後述するカートリッジ装着部6に装着されて使用される。
【0020】
図2によく表われているように、筐体1の一側面には開口部10が設けられている。この開口部10は、取り出し装置Bによってカートリッジ2内から取り出されたセンサSの一部を外部に露出させるための部分である。筐体1内には、端子部30、測定回路31、および表示器32が組み込まれている。端子部30は、開口部10からセンサSの一部を露出させたときにこのセンサSの電極に接触するように設けられている。測定回路31は、CPUやこれに付属するメモリなどを具備して構成されており、端子部30がセンサSの電極に接触している状態において、センサSの試薬に人間の血液が導入されると、その後の試薬に流れる電流の変化などに基づいて上記血液中のグルコースの濃度を求めるように構成されている。このグルコースの濃度を求める手法は公知であり、その説明は省略する。表示器32は、たとえば液晶パネルからなり、測定回路31によって求められたグルコース濃度やその他の情報を表示するのに利用される。この表示器32の表示画面は筐体1の外部から目視可能である。
【0021】
図4および図5によく表われているように、取り出し装置Bは、ベース部材40と、このベース部材40上に取り付けられたスライダ5とを有している。ベース部材40には、カートリッジ装着部6と、動作部材70を支持する揺動アーム71とが付属して設けられている。
【0022】
動作部材70は、カートリッジ2のフィルム22を突き破ってからカートリッジ2内のセンサSを保持するためのものであり、たとえば硬質の薄肉金属製である。この動作部材70は、図7によく表われているように、下端先端がフック状に形成された一対の保持片70bを備えたものであり、この動作部材70の下部には、下端先端が鋭利な一対の刃70aが一体に形成されている。この動作部材70は、ベース部材40に貫通して設けられた開口穴40aを通過するように昇降可能である。カートリッジ2は、このベース部材40の下方に配されており、動作部材70は、昇降することによって、次のようにカートリッジ2内のセンサSの取り出しを行なうように構成されている。
【0023】
すなわち、図8Aに表わすように、動作部材70がベース部材40の開口穴40aを通過して下降すると、一対の刃70aがカートリッジ2の上面部のフィルム22を突き破る。これにより、動作部材70はカートリッジ2の凹溝20内に進入する。センサSは、リブ24によって支持されており、凹溝20内の底面から浮き上がった状態に設定されている。動作部材70の進入時においては、図8Bに表わすように、保持片70bの先端がセンサSの一側面に接触し、このことによりこの保持片70bのフック状の部分は圧縮変形する。次いで、図8Cに表わすように、保持片70bがセンサSの下方まで下降すると、この保持片70bはその弾性復元力によって元の状態に復帰する。この復帰動作が保持片70bのフック状の部分をセンサSの下方に廻り込ませてこのフック状の部分とセンサSの下縁部とを嵌合させることとなる。この嵌合により、センサSは保持片70bに保持され、図8Dに表わすように、その後動作部材70が上昇することにより、センサSの取り出しがなされることとなる。
【0024】
図4および図5によく表われているように、揺動アーム71は、一対の軸部72を中心として上下方向に揺動可能であり、各軸部72を挟むようにして繋がった一対ずつの突出片71a,71bを有している。一対の突出片71aどうしは、連結部71cを介して互いに連結されている。動作部材70は、連結部71cから略水平に突出した支持突起71dにピン71eを介して吊り下げ支持されている。この揺動アーム71は、後述するように、スライダ5の往復動作によって揺動し、その揺動に伴って動作部材70が昇降を行なうようになっている。
【0025】
図9および図10によく表われているように、カートリッジ装着部6は、筒状部61、ロータ62、押さえ部材63、およびホルダ64を具備している。
【0026】
筒状部61は、ベース部材40に固定されている。この筒状部61は、ベース部材40と一体または別体のいずれであってもかまわない。ホルダ64は、カートリッジ2を着脱自在に嵌合させるための下向き開口状の空間部64aを有している。このホルダ64内には、図4に表わすように、2つのカートリッジ2がリング状となるように組み合わされて収容される。このようにすれば、2つのカートリッジ2のうち、いずれか一方の全てのセンサSを使い終えた後には、その時点においてそのカートリッジ2を他の新たなカートリッジに交換することにより、ホルダ64内には常に一定数以上のセンサSを確保しておくことができる。図10によく表われているように、ホルダ64の上面部には、スリット状の複数の開口部64bが設けられている。これら複数の開口部64bは、カートリッジ2内のセンサSを取り出すときの通路となる部分である。カートリッジ2およびホルダ64には、ホルダ64内にカートリッジ2が装着されるときに、カートリッジ2の各センサSがホルダ64の各開口部64bの直下に位置するように位置合わせするための凸部や凹部などの適当な位置合わせ手段(図示略)が設けられている。
【0027】
カートリッジ装着部6には、ロータ62が矢印N2方向に押し下げられる都度、ホルダ64およびカートリッジ2を筒状部61の中心軸C周りの一方向に一定ピッチずつ回転させるカートリッジ動作機構が設けられている。より具体的には、このカートリッジ動作機構は、図11によく表われているように、ロータ62の外周面上部に、複数の第1の凸部62aが一定ピッチで設けられた構造を有している。ロータ62の下部周縁には、複数の第2の凸部62bが一定ピッチで設けられている。ロータ62の底面部と筒状部61の底部との間には、バネ65が介装されており、このバネ65の弾発力F1によりロータ62は常時上向きに付勢されている。図10によく表われているように、押さえ部材63は、ロータ62の一部に当接可能な鍔部63aを有しており、ロータ62が弾発力F1によって一定高さ以上に上昇することが阻止されている。筒状部61の周壁および底面壁には、複数ずつの第3および第4の凸部62c,62dが設けられており、次に述べるように、これらがロータ62の第1および第2の凸部62a,62bに干渉することによってロータ62が回転するようになっている。
【0028】
まず、通常時においては、図12Aに表わすように、ロータ62が弾発力F1によって所定高さの上死点に位置している。この状態において、ロータ62が弾発力F1に抗して適当な力F2によって下方に押されると、図12Bに表わされているように、第2の凸部62bのテーパ面62b’が、第4の凸部62dのテーパ面62d’に接触する。すると、これらテーパ面62b’,62d’の摺接作用により、ロータ62は、同図の矢印N3方向に回転する。図12Cに表わされているように、ロータ62が下死点となる所定高さまで下降すると、このロータ62は、1つの第1の凸部62aの上端が、第3の凸部62cの下端よりもロータ62の回転方向N3寄りに位置するように回転する。このため、その後ロータ62を下方に押圧している力F2を解除することによりこのロータ62をバネ65の弾発力F1によって上昇させるときには、第1の凸部62aのテーパ面62a’に第3の凸部62cのテーパ面62c’が摺接する。すると、その際のテーパ面62a’,62c’の摺接作用により、ロータ62はなおも矢印N3方向に回転する。図12Dに表わされているように、その後ロータ62が元の上死点まで上昇復帰したときには、第1ないし第4の凸部62a〜62dの相対的な位置関係は、図12Aに表わした最初の状態と同様な関係となるようになっている。したがって、その後、ロータ62を押し下げる都度、このロータ62を一定角度ずつ上記回転方向に回転させることが可能となる。ロータ62が1回の昇降動作によって回転する角度は、複数の第1の凸部62aの1ピッチに対応する角度である。
【0029】
図10によく表われているように、ロータ62には押さえ部材63の鍔部63aの外周縁が係合しているとともに、押さえ部材63とホルダ64とはネジ体66を介して連結されている。このことにより、ホルダ64は、ロータ62の回転が行なわれると、これに伴って回転する。このホルダ64の回転は、複数の開口部64bとカートリッジ2内の複数のセンサSとが、それらの1ピッチ分ずつ回転し、開口穴40aの直下に順次送られるようになされる。ロータ62の押し下げは、スライダ5に具備されている後述の押圧用部材52によって所定のタイミングでなされるように構成されている。
【0030】
図4および図5によく表われているように、スライダ5は、ベース部材40上に設けられた一対のガイド部47にガイドされることにより、ベース部材40上をこの取り出し装置Bの前後方向N1にスライド可能である。このスライダ5は、操作用突起50と、一対の可動アーム51と、押圧用部材52と、突起53と、可動ブロック54とを有している。
【0031】
図2によく表われているように、操作用突起50は、筐体1の上面部に位置する操作用摘まみ11に連結されている。この操作用摘まみ11をスライド操作することにより、スライダ5を往復動させることが可能である。ただし、本発明はこれに限定されず、操作用突起50を筐体1の外部に露出させることにより、この操作用突起50が使用者によって直接操作されるように構成してもよい。
【0032】
図6によく表われているように、スライダ5の各可動アーム51は、先端に水平方向に突出した突起51aを有しており、この突起51aが昇降するように基端の軸部51bを支点として揺動可能である。各可動アーム51が上昇したときには、薄肉の金属板からなるバネ55が変形し、各可動アーム51にはこのバネ55による押し下げ力が作用するようになっている。
【0033】
この取り出し装置Bにおいては、次に説明するように、スライダ5が往復動作することにより、動作部材70が昇降を行なうようになっている。すなわち、図13に表わされているように、スライダ5は、操作用突起50に操作力が働いていない通常時においては、後述するバネ78の弾発力により、ベース部材40の後端部42b寄りに位置している。その際、各可動アーム51の前方(図面右方)には、ベース部材40の先端部42a寄りほど高さが高くなるように傾斜したバネ板73aと、このバネ板73aを支持し、かつベース部材40のスライダ5の底面をガイドする面40bよりも適当な高さHだけ高い位置に存在するガイド板部73bとが位置する構成となっている。
【0034】
図14に表わされているように、スライダ5が前進したときには、各可動アーム51の突起51aがバネ板73aによって上向きに移動するようにガイドされる。このため、各突起51aは、可動アーム51を上方に回転させつつガイド板部73b上にガイドされる。すると、各突起51aは、揺動アーム71の突出片71bを上方に持ち上げ、揺動アーム71を同図の時計周り方向に回転させる。その結果、動作部材70が下降することとなる。
【0035】
スライダ5が、さらに前進すると、図15に表わされているように、各可動アーム51の突起51aは、ガイド板部73bに設けられているスリット73c上に到達してから、このスリット73cを通過して下降する。このため、揺動アーム71の突出片71bが突起51aによって押し上げられていた状態が解消されることとなり、揺動アーム71は、バネ74の弾発力によって反時計周りに回転し、元の姿勢に復帰する。その結果、動作部材70も、元の高さまで上昇する。各突起51aが上記下降を行なった後においては、スライダ5は、各突起51aがベース部材40上に起立して設けられた壁面48に当接するまでの適当なストロークs1でベース部材40上をさらに前進可能となっている。またこれとは反対に、スライダ5を図13に表わした元の位置まで後退させることも可能である。このスライダ5の後退時には、突起51aがバネ板73aの下端部を上方に撥ね上げるようにしてこのバネ板73aの下方を通過する。
【0036】
スライダ5の押圧用部材52は、カートリッジ装着部6のロータ62の上部を押し下げるための部材であり、バネ板52aに支持されていることにより昇降可能である。突起53は、スライダ5の前部からその前方に向けて突出している。これら押圧用部材52や突起53は、次のような作用を生じるように構成されている。
【0037】
すなわち、スライダ5が図16に表わすように前進したときには、押圧用部材52はロータ62の上方に位置する。その際、押圧用部材52はロータ62を未だ押し下げる状態にはない。一方、突起53は、その際には、スライドブロック77を適当量だけ前進させるようになっている。このスライドブロック77は、図17A,図17Bによく表われているように、突起53によって押動されると、動作部材70に保持されているセンサSを前進させるようにセンサSの後端部を押圧するものであり、ベース部材40上にスライド可能に設けられている。スライドブロック77は、バネ78によって常時矢印N4方向に付勢されており、突起53がスライドブロック77を前進させる動作はバネ78の弾発力に抗して行なわれる。このバネ78の弾発力は、スライダ5をベース部材40の後端部42b寄りの所定箇所に復帰させるのに役立つ。図17Bに表わされているように、動作部材70に保持されているセンサSが適当量だけ前進したときには、このセンサSの電極(図示略)に端子部30が接触するようになっている。
【0038】
図18に表わされているように、スライダ5がさらに前進したときには、押圧用部材52の一部が、揺動アーム71の連結部71cに設けられたカム76の傾斜面76aに当接する。この当接により、押圧用部材52はその前進に伴って下降するようにガイドされ、ロータ62を押し下げる。一方、突起53は、その際にはスライドブロック77をさらに前進させる。このため、スライドブロック77は、動作部材70に保持されているセンサSを動作部材70から離脱させるように押圧する。このようにして押圧されたセンサSは、筐体1の開口部10から外部に排出されることとなる。
【0039】
図5によく表われているように、ベース部材40にはカム溝49が設けられているとともに、スライダ5の可動ブロック54の底面部にはカム溝49に係入する下向きのピン59が設けられている。可動ブロック54は、スライダ5の幅方向に往復動可能である。ただし、この可動ブロック54は、バネ54aの弾発力によって常時矢印N5の方向に付勢されている。
【0040】
カム溝49は、図19に表わしたような形状を有している。スライダ5が最も後退しているときには、ピン59はカム溝49の第1のポジションP1にある。スライダ5を往復動させる場合、ピン59は、カム溝49の第2のポジションP2まで所定距離Saだけ前進した後に、第3のポジションP3まで後退し、その後は第4のポジションP4まで前進してから第1のポジションP1に復帰する経路を辿るようになっている。このようなことにより、スライダ5の1サイクルの移動動作には、2回の前進動作が行なわれるようになっている。ただし、第2のポジションP2よりも第4のポジションP4の方が所定寸法Sbだけ前方に位置している。このため、スライダ5の1回目の前進動作時よりも2回目の前進動作時の方が、スライダ5がより前方に前進できるようになっている。スライダ5の1回目および2回目の前進動作は、図16および図18にそれぞれ表わしたスライダ5の前進動作に相当している。
【0041】
ピン59がスライダ5の幅方向に移動するときには、可動ブロック54がスライダ5の幅方向に移動し、スライダ5の他の部分は同方向に振れないようになっている。既述したとおり、可動ブロック54は常時矢印N5方向に付勢されているために、ピン59が第2のポジションP2から第3のポジションP3に移動するとき、および第4のポジションP4から第1のポジションP1に復帰するときには、ピン59が上記の矢印N5方向に積極的に移動することとなって、それらの動作が確実に行なわれる。ピン59は、第1のポジションP1から前進するときには、カム溝49に設けられている壁部49aに接触してガイドされることにより、第4のポジションP4に向けては直進しないようになっている。
【0042】
次に、上記構成の測定装置Aの使用例ならびに作用について説明する。
【0043】
まず、カートリッジ装着部6に2つのカートリッジ2を装着した状態において、操作用摘まみ11を前進させる。この1回目の前進は、図19を参照して説明したとおり、ピン59が第2のポジションP2に到達するまで行なわれる。この前進時には、図14および図15に表わしたように、スライダ5の各可動アーム51の突起51aが揺動アーム71を揺動させる。このことにより、動作部材70の下降および上昇復帰動作が行なわれる。動作部材70の下降時には、フィルム22がこの動作部材70の刃70aによって突き破られてからカートリッジ2内のセンサSがこの動作部材70に保持される。次いで、動作部材70の上昇によりセンサSがベース部材40の上方に取り出される。このセンサSの取り出しは、動作部材70の刃70aによってフィルム22が突き破られた部分からなされる。したがって、センサSによってフィルム22に穴をあける必要はなく、上記従来技術とは異なり、センサSの一部を鋭利にしておく必要がなくなるため、使用者に安心感を与えることができる。
【0044】
スライダ5の1回目の前進時には、動作部材70によってセンサSがカートリッジ2から取り出された後においても、図16に表わすように、スライダ5をさらに前進させることが可能である。このようにスライダ5が前進すると、センサSは動作部材70に保持されたまま突起53およびスライドブロック77によって前方に押圧される。このため、センサSの一部が筐体1の開口部10から突出する。したがって、使用者は、このセンサSに血液を付着させることができる。センサSには、図17A,Bに表わしたように、端子部30が接触するため、測定回路31を利用して上記血液中のグルコース濃度の測定処理を適切に行なうことができる。使用者が操作用摘まみ11から手を離すと、スライダ5は図17A,Bに表わされたバネ78の弾発力によって若干量後退するが、センサSの一部が筐体1の開口部10から突出した状態は維持される。したがって、測定回路31によってグルコース濃度の測定処理を行なっている間、使用者が操作用摘まみ11を触り続けておく煩わしさはない。
【0045】
グルコース濃度の測定処理が終了し、その測定結果の内容が表示器32に表示された後には、使用者は操作用摘まみ11を再度前進させる。この2回目の前進時には、図18に表わしたように、突起53およびスライドブロック77が1回目の前進時よりも大きく前進する。したがって、センサSは筐体1の開口部10から外部に排出される。このセンサSは使用済みのものであり、たとえば廃棄処分に付されるが、この廃棄処理に際しては、使用者がセンサSを手で把持する必要がないため、使用者の手が血液によって汚れないようにすることができる。
【0046】
上記した2回目の前進時には、押圧用部材52がカム76に当接することにより押し下げられる。使用者がセンサSの廃棄処理を行なった後に、操作用摘まみ11から手を離すと、スライダ5は元の位置に後退する。したがって、押圧用部材52は、カートリッジ装着部6のロータ62を1回だけ押し下げてからバネ板52aの弾発力によって元の高さに復帰することとなる。このように、ロータ62が1回だけ押し下げられると、図12A〜図12Dを参照して説明した動作原理により、ホルダ64およびカートリッジ2は、カートリッジ2内のセンサSの配列の1ピッチ分だけ回転し、未使用の新しいセンサSが動作部材70および開口穴40aの直下に位置する。したがって、その後に操作用摘まみ11を再度操作したときには、この新しいセンサSをカートリッジ2内から適切に取り出すことができる。このようなことにより、カートリッジ2内の複数のセンサSを1つずつ一定の順序で取り出しながら、これらを利用した測定処理を複数回にわたって繰り返し行なうことが可能となる。
【0047】
図20A〜図25は、本発明の他の実施形態を表わしている。これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0048】
図20Aに表わした構成においては、カートリッジ2A内からセンサSを取り出すための動作部材として、刃70aを有する第1の動作体7Aと、バネ79aを介して押動体79bを吊り下げ支持している第2の動作体7Bとを具備している。カートリッジ2Aは、図21に表わすように、ケース23の上面部に複数の凹部20Aを放射状に設けたものであるが、各凹部20A内には、センサSが寝かされた姿勢で収容されている。
【0049】
第1の動作体7Aは、図20Aの仮想線に表わすように、水平移動を行なうことにより、刃70aがカートリッジ2Aのフィルム22を連続して切断するようになっている。このため、このフィルム22には、所定長さの切断開口部が形成される。第1の動作体7Aは、カートリッジ2Aの上方を通過すると、その後は図20Bに表わすように、カートリッジ2Aの一側方に位置して待機するようになっている。第2の動作体7Bは、押動体79bがフィルム22の切断開口部からカートリッジ2A内に進入し、かつセンサSの後端部を押動するように水平移動を行なう構成とされている。このようにしてセンサSが押動されると、図20Cに表わすように、このセンサSは、フィルム22の切断開口部を通過してカートリッジ2Aの外部に押し出しされ、第1の動作体7A上に導かれる。その際、センサSの電極には、測定用の端子部30が接触する。
【0050】
このような構成によっても、センサSは、刃70aによってフィルム22が切断された部分から取り出されるために、このセンサSによってフィルム22を突き破る必要はなく、センサSの先端を鋭利にする必要はない。図20Aに表わされているように、カートリッジ2Aの内周部分にフィルム22の一部分22aが上下方向に起立した状態で存在する場合には、押動体79bまたは刃70aを押し下げることによって上記部分22aを破るようにすることもできる。
【0051】
図21に表わしたように、センサSをカートリッジ2A内に寝かせて収容する場合には、センサSを起立させて収容させる場合と比較すると、センサSの収容総数が少なくなる。この収容総数を多くするための手段としては、たとえば図22に表わすように、センサSを収容するための凹部20Aをケース23Aの表裏両面部に設ける手段が有効である。本発明においては、このような構成のカートリッジを用いることもできる。
【0052】
図23に表わされたカートリッジ2Bは、ケース23Bの凹部20B内にセンサSが収容されている。センサSの一側縁は、凹部20Bの底面部に形成された筋状の凹溝20aに嵌入しており、このことによりセンサSの起立保持がなされている。このような構成においても、図20A〜図20Cに表わした実施形態と同様に、押動体79bによってセンサSの後端部を押圧することによってセンサSをカートリッジ2Bの外部に取り出すことが可能である。本発明においてはこのような手段を採用することもできる。
【0053】
図24に表わされたカートリッジ2Dは、ケース23Dが曲率した周面部を有し、かつこの周面部に開口した複数の凹部20Dを備えている。このカートリッジ2Dは、図25に表わすように、2つ組み合わせることによって、中空のドラム状に形成可能である。このようなカートリッジ2Dを対象とする場合にも、図1〜図19に表わした実施形態の場合と同様な原理でセンサSを取り出すことが可能である。すなわち、各凹部20Dを塞ぐフィルム22については、動作部材70の刃70aを利用して突き破る。その後は、動作部材70を凹部20D内に進入させることによってセンサSを動作部材70に保持させてから、この動作部材70をカートリッジ2Dの外部に移動させる。2つのカートリッジ2Dをそれらの中心O周りに回転させることにより、動作部材70によってセンサSの取り出しがなされる箇所に、複数のセンサSを1つずつ順番に送ることができる。
【0054】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る収容物の取り出し装置の各部の具体的な構成は種々に設計変更自在である。
【0055】
本発明に係る収容物の取り出し装置は、必ずしも測定装置に組み込まれている必要はなく、それ単独で使用可能である。また、測定装置以外の装置に組み込んで使用することも可能である。したがって、包装体およびこの包装体内に収容されている収容物の具体的な種類なども限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明に係る収容物の取り出し装置の一実施形態を備えた測定装置の一例を表わす外観斜視図である。
【図2】図2は、図1の測定装置の概略断面図である。
【図3】図3Aは、センサを収容したカートリッジの一例を表わし、図3Bは、その分解斜視図である。
【図4】図4は、図1の測定装置に組み込まれている取り出し装置の斜視図である。
【図5】図5は、図4の取り出し装置の分解斜視図である。
【図6】図6は、図4の取り出し装置が備えているスライダの斜視図である。
【図7】図7は、図4の取り出し装置が備えている動作部材の構造を表わす要部斜視図である。
【図8】図8A〜図8Dは、センサを取り出す時の作用を表わす要部断面図である。
【図9】図9は、図4のIX−IX断面図である。
【図10】図10は、図9の要部断面図である。
【図11】図11は、図9の要部分解断面斜視図である。
【図12】図12A〜図12Dは、図11に表わされた部分の作用説明図である。
【図13】図13は、図4の取り出し装置の一部断面側面図である。
【図14】図14は、図4の取り出し装置の動作を表わす一部断面側面図である。
【図15】図15は、図4の取り出し装置の動作を表わす一部断面側面図である。
【図16】図16は、図4の取り出し装置の動作を表わす側面断面図である。
【図17】図17Aおよび図17Bは、図4の取り出し装置の動作を表わす要部概略平面図である。
【図18】図18は、図4の取り出し装置の動作を表わす側面断面図である。
【図19】図19は、図4の取り出し装置の要部平面図である。
【図20】図20A〜図20Cは、本発明の他の実施形態を表わす概略説明図である。
【図21】図21は、カートリッジの他の例を表わす斜視図である。
【図22】図22は、カートリッジの他の例を表わす要部断面図である。
【図23】図23は、カートリッジの他の例を表わす要部断面図である。
【図24】図24は、カートリッジの他の例を表わす斜視図である。
【図25】図25は、本発明の他の実施形態を表わす概略説明図である。
【図26】図26は、測定装置についての従来技術を表わす外観斜視図である。
【図27】図27は、カートリッジおよびセンサを覆うフィルムについての従来技術を表わす斜視図である。
【図28】図28は、従来技術の動作説明図である。
【図29】図29Aおよび図29Bは、従来技術の動作説明図である。
【符号の説明】
【0057】
B 取り出し装置
7 包装体(カートリッジ)
22 包装材
70 動作部材
70a 破損手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物を包装材によって覆っている包装体の内部から、上記収容物を取り出すための収容物の取り出し装置であって、
上記包装材を破損させる包装材用の破損手段と、上記収容物が上記包装材の破損部分を通過するように上記収容物を移動させる動作部材と、
を備え、
上記動作部材は、上記包装材に対向する方向に往復動可能であるとともに、上記包装体に向けて移動してこの包装体内の収容物に接触または接近したときに上記収容物を保持し、上記包装体から離れる方向に移動することによって保持した上記収容物を取り出し、かつ、
上記破損手段は、上記動作部材が上記包装材に向けて移動するときにこの包装材を突き破ることが可能に上記動作部材の先端部に設けられていることを特徴とする、収容物の取り出し装置。
【請求項2】
上記破損手段は、上記動作部材の先端部に設けられた刃である、請求項1に記載の内容物の取り出し装置。
【請求項3】
上記動作部材および上記刃は、金属板により一体に形成されている、請求項2に記載の収容物の取り出し装置。
【請求項4】
上記動作部材は、フック状の保持片を備え、かつ上記包装体内を移動するときには撓み変形を行なう一方、上記保持片が上記収容物を越える位置まで進行したときには元の形状に弾性復帰可能とされており、この復帰がなされることによって、上記保持片が上記収容物を引っ掛けるように変移して上記収容物を保持する構成とされている、請求項2または3に記載の収容物の取り出し装置。
【請求項5】
収容物を包装材によって覆っている包装体の内部から、上記収容物を取り出すための収容物の取り出し装置であって、
上記包装材を破損させる包装材用の破損手段と、上記収容物が上記包装材の破損部分を通過するように上記収容物を移動させる動作部材と、
を備え、
上記破損手段は、上記包装材に一定方向に延びた切断開口部を形成する動作が可能な切断刃であり、かつ、
上記動作部材は、上記切断開口部から上記包装体内に進入するとともに、この進入後に上記収容物を上記切断開口部から上記包装体の外部へ押し出す動作が可能であることを特徴とする、収容物の取り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A−B】
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【図12C−D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2009−63594(P2009−63594A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323521(P2008−323521)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【分割の表示】特願2003−568397(P2003−568397)の分割
【原出願日】平成15年2月10日(2003.2.10)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】