説明

収容箱

【課題】 本発明は、製造に際しては、任意の最大開放角度に対応可能としつつも、使用に際しては、設定された最大開放角度を不用意に変更されることなく、安全を確保することができる収容箱を提供することを課題とする。
【解決手段】 箱本体1に電力機器が収納され、内部を開放可能な扉10を有する収容箱であって、全開状態よりも開放角度が狭められた半開状態を限度として、扉10がさらに開放されることを規制するための規制手段42を、扉10の基端部13に取り付け可能に構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器や開閉器などの電力機器を収納する収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、景観上の理由などから、電線等のケーブルや電柱が地上の空間に出現することのないよう、ケーブルを地中に埋設することが行われつつある。これに伴い、従来電柱に取り付けられていた変圧器や開閉器などの電力機器も、ケーブルの近傍に備えられるべく、地上に配置される。
【0003】
かかる電力機器は、電力の供給に必要不可欠なものである上に、中には感電のおそれなど危険なものもあるため、不用意に接触することは望ましくない。例えば、変圧器は、高い電圧(例えば、6600V)を、一般家庭などに供給される低い電圧(例えば、210V)に下げるために用いられるものであり、高圧の電気を扱うものであって危険である。そのため、これら電力機器は、地上に設置される専用の収容箱に収容されて管理される。
【0004】
ところで、この収容箱は、ケーブルが埋設される場所や設置に適した場所の事情などから、道路、特に、歩道に設置されるものである。従って、上記電力機器のメンテナンスを行う際には、通行人が往来する歩道において、収容箱に設けられた扉を開放することとなり、内部に収容された電力機器は、開口部を介して外部にさらされる状況となる。
【0005】
しかし、上述の理由から、メンテナンス作業中に開口部のすぐ近傍を通行人が通行することは好ましくないため、従来から、メンテナンス作業中の安全対策として、収容箱の扉を利用することが行われている。即ち、このような収容箱は、扉を箱本体に対しておよそ垂直となる角度(例えば、100°)まで扉を開放すると、扉の基端部が箱本体に当接し、その角度を最大開放角度として、それ以上には扉を開放することができない構造を有している。
【0006】
このような構造の収容箱であれば、扉を最大限に開放した際には、扉が歩道に突き出た態様となり、通常、通行人が、扉と開口部とで画される領域に立ち入ることがない。また、通行人には、扉が障害物として認識され、無意識のうちにもこれを避けて通行することを促すことができるため、通行人を開口部から遠ざけることも可能となる。さらに、扉が障害物となって、何らかの物体が予期せず進入することも防止できる。
【0007】
このように、箱本体に対しておよそ垂直となる角度までしか扉を開放することのできない収容箱は、安全性の観点からは、優れたものである。
【0008】
しかし、作業者の側から見れば、扉によって作業領域が狭められてしまい、作業効率が低下せざるを得ないという問題があり、より大きい角度まで扉を開放することができる収容箱が要望される場合もある。
【0009】
そこで、このような要望に応えつつも、安全を優先する観点から、開口部の周囲にセーフティーコーンを配置することや、通行人を安全に誘導するための人員を配置することなどによって、安全対策を別途に講じることが確実に可能である場合には、これを設置場所の条件として、より大きい角度(例えば、約180°)まで開放することができる構造の収容箱も提供されている。かかる収容箱も、扉の基端部が箱本体に当接することで、扉の開放を規制している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の状況においては、いずれの収容箱であっても、扉の基端部が箱本体に当接することで扉の開放を制限しているため、それぞれの収容箱によって構造が大幅に異なったものとなってしまい、収容箱の主要な構成要素を効率良く共通化することができない。また、これら収容箱は、設置場所の条件に則した構造をそれぞれ有するものであるため、収容箱を転用することはできない。さらに、いずれの収容箱に対しての要望にも即座に対応するためには、常時、異なる型の収容箱をそれぞれ別個に製造しておく必要があるが、その一方、製造計画に狂いが生じた場合には在庫管理の問題が発生するため、製造計画の立案が非常に困難となっている。
【0011】
ここで、任意の角度で扉を開放することができる収容箱を共通して設置し、扉を開放した際に扉を固定すべく使用されるストッパーによって、最大開放角度を調整する方法も考えられる。しかし、ストッパーは、扉を開放した後に扉を固定するものであって、所定角度以上の開放を規制するものではない。従って、収容箱ごとに予め最大開放角度を設定しておくことができないため、作業者が無意識のうちに設置場所に応じて定められる最大開放角度以上に扉を開放してしまうことも考えられ、安全確保の観点からは好ましい方法ではない。
【0012】
このように、従来の状況においては、構造に起因する問題点が、安全性や生産の効率性などにまで影響を及ぼす状況となっている。
【0013】
そこで、本発明は、製造に際しては、任意の最大開放角度に対応可能としつつも、使用に際しては、設定された最大開放角度を不用意に変更されることなく安全を確保することができる収容箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る収容箱は、箱本体に電力機器が収納され、内部を開放可能な扉を有する収容箱であって、全開状態よりも開放角度が狭められた半開状態を限度として、扉がさらに開放されることを規制するための規制手段を、扉又は箱本体のいずれか一方側に取り付け可能に構成されることを特徴とする。
【0015】
上記構成からなる収容箱によれば、規制手段を取り付けた場合には、半開状態を限度として、扉の開放角度をそれ以上大きくすることができない一方、規制手段を取り付けない場合には、扉を全開状態まで開放することができる。また、規制手段を取り付けるか否かによって扉の最大開放角度を違えることができるため、収容箱の主要な構成要素を共通させることができる。
【0016】
また、前記規制手段は、前記半開状態において、該扉又は箱本体の他方側に当接する構成を採用することができる。このようにすれば、規制手段を取り付けた場合には、扉を半開状態まで開放すると、規制手段が扉側又は箱本体側のいずれか一方に当接し、扉をさらに開放することが規制される。
【0017】
具体的には、前記規制手段は、扉又は箱本体のいずれか一方側に設けられる台座に取り付け可能な板状体である構成を採用することができる。このようにすれば、全開状態まで扉を開放可能な収容箱に対して、さらに板状体を取り付けることで、扉の開放が半開状態で規制される収容箱が完成することとなる。
【0018】
また、前記板状体は、扉の基端部に取り付け可能であり、前記半開状態において、箱本体の開口部に設けられる枠体に当接する構成を採用することができる。このようにすれば、板状体が箱本体に直接当たることがない。また、板状体の当接箇所を箱本体とは別の部材である枠体とすることで、箱本体の開口部を扉と適合する形状に形成することの困難性が解消される。
【0019】
さらに、前記板状体は、台座に対する取り付け位置を調整可能である構成を採用することができる。このようにすれば、板状体が扉又は箱本体若しくは枠体に当接する位置を変更することが可能となり、半開状態の開放角度を正確に実現することができる。
【0020】
この場合、前記板状体は、ネジによって台座に取り付けられ、該板状体には、ネジが挿入され、幅方向に沿う長孔が形成される構成を採用することができる。かかる構成によれば、ネジを用いることにより、板状体の取り付けが容易となる一方、不用意に取り外されることがない。また、ネジが挿入される孔を幅方向に沿う長孔とすることにより、取り付けに際して幅方向にスライド可能となり、取り付け位置の微調整が容易となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、規制手段を取り付けるか否かにより、最大開放角度を違えることが可能であるため、製造に際しては、任意の最大開放角度に対応可能としつつも、使用に際しては、設定された最大開放角度を不用意に変更されることなく、安全を確保することができる。
【0022】
また、収容箱の主要な構成要素を効率良く共通させることで、最大開放角度が異なる収容箱に対する要望に、迅速に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る収容箱の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0024】
本発明に係る収容箱は、図1(イ)及び(ロ)に示すように、電力機器を収納する箱本体1と、該箱本体1に取り付けられる扉10とを備えて構成され、直方体形状を有する。
【0025】
箱本体1は、鋼鉄製の堅牢な筐体であり、天板、底板、側板、背板を有するとともに、正面には開口部2が設けられている。なお、収容箱は、ボルトなどによって地面に確実に固定することが可能である。また、箱本体1には、用途に応じて、変圧器、開閉器、高圧分岐装置、低圧分岐装置及び計器など、各種の電力機器が収容される。
【0026】
また、図1(ハ)に示すように、前記開口部2の端縁部には、該開口部2の周囲を縁取るように枠体20が設けられており、具体的には、ボルト又は溶接などによって固定されている。該枠体20のうち上下方向に沿う部分は、扉10を取り付けるために用いられる。
【0027】
一方、扉10は、箱本体1の前記開口部2(より厳密には、前記枠体20)に上下方向に沿って適宜個数設けられるヒンジ30によって箱本体1と連結されている。具体的には、開口部2には、二枚の扉10,10が取り付けられ、開口部2を閉塞する。なお、扉10の裏面には、扉を閉じているときに、外部から水などが入り込むのを防止すべく、パッキン12が施されている。該パッキン12は、扉を閉じた際に前記枠体20と接触するように位置決めされるものである。
【0028】
次に、箱本体1と扉10との連結部分について、図2及び図3に基づいてより詳しく説明する。
【0029】
枠体20は、図2(イ)に示すように、箱本体1に固定される基部21と、該基部21の一端側に連続して設けられる湾曲部22とを有し、該湾曲部22は、基部21に隣接する開口を形成し且つ内側に空間を形成するように湾曲した形状を有する。湾曲部22によって画される前記空間は、枠体20を箱本体1に取り付けた際には、収容箱の内側にオフセットしたオフセット空間23となる。具体的には、湾曲部22は、前記基部21の一方の端縁部から立ち上がる第一壁部24と、該第一壁部24から前記基部21とは反対方向に立ち上がる第二壁部25と、該第二壁部25から前記基部21側に延びる突起部26とから構成される。また、基部21、第一壁部24、第二壁部25、突起部26は、それぞれほぼ90°の角度をなして連続している。
【0030】
一方、扉10は、図2(ロ)に示すように、開口部2を閉塞する扉板11と、該扉板11の一方の端縁部に設けられる基端部13と、他方の端縁部に設けられる開放端部14とで構成される。該基端部13は、扉板11から内側に廻り込むように屈曲している。具体的には、扉の基端部13には、扉板11から立ち上がる側縁部15が設けられ、さらに、該側縁部15から前記扉板11の裏面側に沿って延びるリブ部16が設けられている。これにより、基端部13には、前記側縁部15を底とした溝17が形成される。より具体的には、前記扉板11と側縁部15との間には、ほぼ90°に屈曲する第一角部11Aが形成され、側縁部15とリブ部16との間には、ほぼ90°に屈曲する第二角部15Aが形成される。なお、開放端部14は、前記基端部13とほぼ鏡面対称な形状を有する。
【0031】
箱本体1と扉10とを連結するヒンジ30は、図3に示すように、枠体20のオフセット空間23及び扉10の溝17を利用して取り付けられる。具体的には、ヒンジ30の軸部31は、溝17に一部が収容される態様で配置され、該軸部31が軸支する一方のヒンジ片32は、扉10の前記側縁部15及び扉板11に溶接などによって固定され、他方のヒンジ片33は、枠体20の前記第二壁部25及び突起部26に、溶接などによって固定される。
【0032】
なお、扉10の基端部13のうちヒンジ片33に対応する上下方向位置においては、リブ部16から側縁部15の中間部にかけて、該ヒンジ片33の長さと同等以上の長さを有する切欠き18が、上下方向に沿う端縁18Aを有して形成されている。
【0033】
なお、図3(ロ)に示すように、扉10の回転中心であるヒンジの軸中心Cから前記扉10の第一角部11Aまでの距離L1は、該軸中心Cから枠体20の前記第一壁部24及び第二壁部25までの距離L4,L5よりも短く構成される。さらに、軸中心Cから第二角部15A及びリブ部16の先端16Aまでの距離L2,L3は、該軸中心Cから前記第一壁部24、第二壁部25及び突起部26までの距離L4,L5,L6よりも短く構成される。
【0034】
以上が、収容箱の基本的な構成であり、次に、本発明の特徴的部分である規制手段を収容箱に取り付け可能とする構成について説明する。
【0035】
規制手段は、所定の開放角度において、扉10をさらに開放する方向への回転を規制すべく、箱本体1と扉10とが干渉するように設けられるものである。具体的には、前記規制手段は、図4及び図5に示すように、扉10に設けられる台座41に取り付け可能な板状体42であり、図6に示すように、扉10の基端部13に設けられる。なお、該規制手段は、前記ヒンジ30と上下方向にずれた位置に設けられる。
【0036】
台座41は、板状体42が取り付けられる位置と台座41の固定対象位置とが所定の間隔を確保できるよう、高さを有するものである。具体的には、図4に示すように、平面視長方形状を有し、また、幅方向に沿う両端部が同一方向に平行に屈曲して脚部44,44が形成されており、側面視略コの字状を有する。そして、脚部44の角部44Aは、扉10の溝17に安定して固定できるように、第一角部11A及び/又は第二角部15Aの内端部の形状に合わせて角取りされている。
【0037】
該台座41は、前記ヒンジ30と同様に、扉10の基端部13に形成される溝17を利用して設けられ、具体的には、前記脚部44を側縁部15に溶接することによって取り付けられる。このため、幅が扉10の前記溝17(即ち、側縁部15の幅)の幅よりも小さく、高さが溝17の深さよりも大きく構成される。
【0038】
また、台座41には、板状体42をネジ45によって取り付けることができるように、ネジ45を受け入れるためのネジ孔46が、適宜個数(図4では二つ)形成されている。なお、台座41が有する面のうち、脚部44が形成されるのとは反対側の面が、板状体42が取り付けられる取り付け面43となる。
【0039】
一方、板状体42は、図5に示すように、前記台座41及び扉10の溝17よりも幅広な長方形状を有する。また、板状体42には、該板状体42を台座41に取り付けるために用いられる孔47が、適宜個数(図5では二つ)形成される。より具体的には、孔47は、高さ方向より幅方向に長く伸びた長孔である。より好ましくは、板状体42は、長手方向に沿う一方の端縁部を、所定角度で屈曲させて形成される。
【0040】
なお、広角度用の収容箱は、台座41を扉10の基端部13に取り付けた状態で完成品とされる。一方、挟角度用の収容箱は、該広角度用の収容箱に、さらに上記の板状体42を装着することで完成される。
【0041】
次に、台座41及び板状体42からなる規制手段を扉10の基端部13に取り付けた状態について、図6に基づいて説明する。
【0042】
台座41の高さは溝17の深さよりも大きいことから、基端部13に台座41を固定すると、図6(イ)に示すように、取り付け面43がリブ部16より溝17の深さ方向に突出した状態となる。そして、板状体42を台座41に取り付けると、板状体42が扉10のリブ部16より扉板11の中心側に位置する状態となる。また、板状体42の幅が台座41及び溝17の幅よりも大きいことから、板状体42が台座41及び溝17より幅方向に突出する状態となる。この場合、前記所定角度で屈曲する端縁部が突出する状態となるように、板状体42を取り付ける。
【0043】
なお、図6(ロ)に示すように、ヒンジ30の軸部31によって確定される軸中心Cから板状体42の先端部42Aまでの距離L7は、軸中心Cから枠体20の前記第一壁部24及び第二壁部25までの距離L4,L5よりも短く、一方、突起部26までの距離L6よりも長く構成される。
【0044】
本実施形態に係る収容箱は、以上の構成からなり、次に、その動作を図7に基づいて説明する。なお、規制手段が取り付けられていない広角度用の収容箱について説明した上で、規制手段が取り付けられた挟角度用の収容箱について説明する。
【0045】
まず、扉10を閉じている状態では、図7(イ)に示すように、扉板11が箱本体1の側板3に対して垂直となっている。このとき、扉10の基端部13に設けられた側縁部15と箱本体1の側板3とが隙間Sを有しつつ面一に並んだ状態となっている。また、扉10の裏面に取り付けられたパッキン12が箱本体1に取り付けられた枠体20の突起部26に接触し、収容箱の開口部2を密に閉塞している。
【0046】
次に、扉10を開放すると、扉10は前記ヒンジ30を回転軸として回転する。このとき、扉板11は、箱本体1から離間するように外側に移動する一方、扉10の基端部13は、前記隙間Sからオフセット空間23の内部に入り込むように内側に移動する。
【0047】
そして、扉10をさらに開放すると、扉10の第一角部11A、第二角部15A及びリブ部16の先端16Aが枠体20の有する第一壁部24、第二壁部25、突起部26と接触することなく、基端部13がオフセット空間23内を回転し、所定の角度まで回転すると、該基端部13が箱本体1側に当接し、扉10がそれ以上回転できない状態となる。具体的には、基端部13に形成される前記切欠き18の端縁18Aがヒンジ30の前記ヒンジ片33に当接する。このとき、図7(ロ)に示すように、扉10は、開口部2に対してほぼ水平に開放される。
【0048】
なお、上記の場合においては、前記台座41は、扉10の基端部13に形成された溝17に収まっているので、扉10の回転時に該台座41が箱本体1や枠体20に接触することはない。また、扉10の基端部13には、リブ部16から側縁部15に至る切欠き18がヒンジ片33に対応して形成されているため、扉10を回転させた際に、リブ部16はヒンジ片33を収容する態様で回転可能であり、切欠き18の端縁18Aがヒンジ片33と当接する位置に到達するまでは、扉10の回転が阻害されることはない。
【0049】
ここで、切欠き18がより扉板11側(図3では下方側)まで設けられていれば、端縁18Aがヒンジ片33と干渉することなく、扉板11が箱本体1の側板3に当接する位置まで回転可能となるが、扉板11の当接箇所が損傷することを防止する観点からは、端縁18Aがヒンジ片33と当接するように切欠き18が設けられることが好ましい。
【0050】
一方、規制手段としての板状体42を台座41に取り付けた挟角度用の収容箱の動作を、図8に基づいて説明する。
【0051】
まず、収容箱の扉10を閉じている状態では、図8(イ)に示すように、板状体42は、隙間Sを形成しつつ面一に並んでいる扉10の側縁部15及び箱本体1の側板3と平行となっている。
【0052】
次に、扉10を開放すると、扉10の基端部13に取り付けられた規制手段が、所定の角度までは湾曲部22と接触することなくオフセット空間23内を回転し、湾曲部22の所定の箇所に当接することにより、該所定の角度で扉10の開放が規制される。即ち、扉10を開放すると、板状体42は、枠体20の第一壁部24及び第二壁部25と接触することなくオフセット空間23内を回転する。そして、板状体42が所定の角度まで回転すると、図8(ロ)に示すように、枠体20の突起部26に当接し、扉10がそれ以上回転できない状態となる。このとき、扉10は開口部2に対してほぼ垂直に開放され、開放角度は約100°となっている。
【0053】
なお、いずれの収容箱においても、各開放位置において扉10を一時的に固定するストッパー機構が各開放角度に対応して設けられており、開放時には該ストッパー機構によって扉を固定する。
【0054】
まず、図9に基づいて、挟角度用の収容箱におけるストッパー機構について説明する。ストッパー50は、図9(イ)に示すように、断面円形状の棒体の両端部を直角に屈曲させた形状を有するものであり、図9(ロ)に示すように、一端部50Aが、扉板11の裏面に設けられた支持具51に、回転自在且つ上下方向にスライド自在に抜け止め支持されている。そして、扉板11の裏面及び枠体20の第二壁部25には、ともにストッパー50の他端部50Bを受け入れ可能な孔が形成された受け具52,53が設けられている。
【0055】
ストッパー50の他端部50Bは、通常は、扉側の受け具52に収容されている。一方、扉10が約100°に開放された際には、図9(ハ)に示すように、ストッパー50の他端部50Bが回転して描かれる円周上に枠体側の受け具53が位置する状態となり、ストッパー50の他端部50Bを枠体側の受け具53の孔に挿入することで、扉10を固定することができる。
【0056】
次に、図10に基づいて、広角度用の収容箱におけるストッパー機構について説明する。ストッパー60は、図10(イ)に示すように、矩形状を有する三面がほぼ90°に直交して横並びに連続する形状、即ち、角筒の一面を取り去った断面コの字形状を有し、対向する二面には、下端縁から上方に延びる切欠き60Aがそれぞれ形成されている。なお、対向する二面の間隔は、少なくとも扉10のリブ部16の幅よりも大きく構成される。
【0057】
ストッパー60は、通常は、扉10の裏面に取り付けられた保持具61に収容されており、扉がほぼ水平に開放された際には、扉10の基端部13に設けられた固定座62に嵌合される。
【0058】
前記保持具61は、図10(ロ)に示すように、矩形状を有する三面がほぼ90°に直交して横並びに連続する形状を有し、二面に挟まれた中間の面には、前記ストッパー60の切欠き60Aに対応する部分に、上端縁から下方に延びる切欠き61Aが二箇所形成されている。なお、対向する該二面の間隔は、少なくともストッパー60の幅よりも大きく構成される。
【0059】
また、前記固定座62は、図10(ハ)に示すように、扉10の前記基端部13に設けられた溝17の中央部から突出する係止体63と、該係止体63を補助的に支持する部材64を備えて構成される。
【0060】
そして、扉10を固定する際には、図10(ニ)に示すように、前記一方の切欠き60Aが前記固定座62の係止体63に嵌合され、他方の切欠き60Aを有する面が扉10の側縁部15と枠体20の前記突起部26との間に位置するように、ストッパー60を前記基端部13に取り付ける。これにより、扉10を回転させようとすると、基端部13の一部を収容するストッパー60が枠体20に当接して回転が阻害される状態となって、扉10が固定される。
【0061】
以上のように、本発明に係る収容箱によれば、製造に際しては、板状体42を取り付けるか否かにより、最大開放角度を違えることが可能であるため、製造に際しては、任意の最大開放角度に対応可能としつつも、使用に際しては、設定された最大開放角度を不用意に変更されることなく、安全を確保することができる。
【0062】
また、広角度用の収容箱として収容箱を完成させておけば、要望に応じて板状体42を取り付けることにより、即座に挟角度用の収容箱とすることができる。従って、収容箱を単一種類のみ製造しておけばよく、収容箱の製造や在庫管理をそれぞれ別個に行う必要がなくなる。即ち、広角度用の収容箱の部品の全てが挟角度用の収容箱の部品に包含されるため、部品の共通性を最大限に高めることができる。
【0063】
さらに、板状体42を孔47に沿ってスライドさせることにより、取り付け位置を微調整することができる。従って、製造誤差が原因となって箱本体1及び扉10の基端部13における寸法や位置関係が微妙に異なってしまう事態が生じても、要望された最大開放角度を正確に実現することができる。
【0064】
なお、本発明に係る収容箱は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態においては、規制手段は、台座41に取り付け可能な板状体42として説明したが、これに限定されるものではなく、板状体と台座とが一体的に形成されたものであってもよく、要するに、規制手段を基端部13に取り付けた際の回転半径が、前記L4及びL5よりも小さい一方、L6より大きくなるように構成すればよい。従って、規制手段は、基端部13を外側から覆うように取り付けられるものであってもよい。
【0066】
また、上記実施形態に係る収容箱は、ほぼ垂直な位置において扉の開放が規制されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、規制手段の寸法や形状を変更することで当接位置を変更すれば、任意の位置において扉の開放を規制することができる。
【0067】
さらに、上記実施形態に係る収容箱は、広角度用と挟角度用の二種類の最大開放角度を選択できるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、板状体を複数用いることで、より多くの種類の最大開放角度を選択できるようにしてもよい。
【0068】
そして、上記実施形態においては、枠体20は、箱本体1に取り付けられる独立した部材として説明したが、箱本体1に一体的に設けられるものであってもよい。
【0069】
また、本実施形態に係る収容箱は、正面に二つの扉を有するものとして説明したが、扉は一枚のみであってもよく、また、側面に扉が設けられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る収容箱を示す図であって、(イ)は、斜視図を示し、(ロ)は、正面図を示し、(ハ)は、扉を開放した際の正面図を示す。
【図2】同実施形態に係る収容箱の構成部品を示す断面図であって、(イ)は、枠体を示し、(ロ)は、扉を示す。
【図3】同実施形態に係る収容箱の扉の連結部分における、ヒンジ取り付け位置での図であって、(イ)は、部分断面図を示し、(ロ)は、寸法関係を説明する図を示す。
【図4】同実施形態に係る収容箱の台座を示す図であって、(イ)は、斜視図を示し、(ロ)は、平面図を示し、(ハ)は、側面図を示し、(ニ)は、正面図を示す。
【図5】同実施形態に係る収容箱の板状体を示す図であって、(イ)は、平面図を示し、(ロ)は、正面図を示す。
【図6】同実施形態に係る収容箱の扉の連結部分における、規制手段取り付け位置での図であって、(イ)は、部分断面図を示し、(ロ)は、寸法関係を説明する図を示す。
【図7】同実施形態に係る収容箱に板状体を取り付けない場合の部分断面図であって、(イ)は、扉を閉じた状態を示し、(ロ)は、扉を開放した状態を示す。
【図8】同実施形態に係る収容箱に板状体を取り付けた場合の部分断面図であって、(イ)は、扉を閉じた状態を示し、(ロ)は、扉を開放した状態を示す。
【図9】同実施形態に係る収容箱に取り付けられる挟角度用のストッパー機構を示す図であって、(イ)は、ストッパーを示し、(ロ)は、ストッパーが支持具に支持される状態の正面図を示し、(ハ)は、ストッパーが支持具に支持される状態の平面図を示す。
【図10】同実施形態に係る収容箱に取り付けられる広角度用のストッパー機構を示す図であって、(イ)は、ストッパーを示し、(ロ)は、保持具を示し、(ハ)は、係止体を示し、(ニ)は、扉をストッパーで固定した状態の断面図を示す。
【符号の説明】
【0071】
1…箱本体、2…開口部、3…側板、10…扉、11…扉板、11A…第一角部、12…パッキン、13…基端部、14…開放端部、15…側縁部、15A…第二角部、16…リブ部、17…溝、18…切欠き、18A…端縁、20…枠体、21…基部、22…湾曲部、23…オフセット空間、24…第一壁部、25…第二壁部、26…突起部、30…ヒンジ、31…軸部、32…ヒンジ片、33…ヒンジ片、41…台座、42…板状体、43…取り付け面、44…脚部、44A…角部、45…ネジ、46…ネジ孔、47…孔、50…ストッパー、51…支持具、52…受け具、53…受け具、60…ストッパー、61…保持具、62…固定座、63…係止体、C…軸中心、S…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱本体に電力機器が収納され、内部を開放可能な扉を有する収容箱であって、
全開状態よりも開放角度が狭められた半開状態を限度として、扉がさらに開放されることを規制するための規制手段を、
扉又は箱本体のいずれか一方側に取り付け可能に構成されることを特徴とする収容箱。
【請求項2】
前記規制手段は、前記半開状態において、該扉又は箱本体の他方側に当接するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の収容箱。
【請求項3】
前記規制手段は、扉又は箱本体のいずれか一方側に設けられる台座に取り付け可能な板状体であることを特徴とする請求項2に記載の収容箱。
【請求項4】
前記板状体は、扉の基端部に取り付け可能であり、前記半開状態において、箱本体の開口部に設けられる枠体に当接することを特徴とする請求項3に記載の収容箱。
【請求項5】
前記板状体は、台座に対する取り付け位置を調整可能であることを特徴とする請求項4に記載の収容箱。
【請求項6】
前記板状体は、ネジによって台座に取り付けられ、該板状体には、ネジが挿入され、幅方向に沿う長孔が形成されることを特徴とする請求項5に記載の収容箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−253213(P2006−253213A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64216(P2005−64216)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000211293)中国電機製造株式会社 (69)
【Fターム(参考)】