説明

収納ボックスの把手取付構造

【課題】把手の格納位置と使用位置とにおける回動姿勢保持機能を長期に亘って維持できる収納ボックスの把手取付構造の提供を図る。
【解決手段】収納ボックス1のフランジ部2に立設された軸受片3は、その上面とカバー20との間に設定されたクリアランスδにより上下方向の撓み変形が許容される。把手10の連結軸11はフランジ部2上で軸受片3の上下方向の撓み変形による弾性作用と、クリアランスδを埋めて介装されたクッション材22の弾性とによって、所要の回動抵抗をもって回動可能に抱持した状態で軸受けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のラッゲージフロアに配設されて、車載工具類やその他の小物類の収納に便利な収納ボックスの把手取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のラッゲージフロアに配設されて、小物類を収納する上側が開放した収納ボックスが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平10−129353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記収納ボックスは適宜の合成樹脂材をもって型成形されており、その上側開放部の周縁には、フロアパネルの凹陥部周縁に対する収納ボックスの係着,定置と、該収納ボックスの閉蓋を兼ねたラッゲージフロアの定置に便利なようにフランジ部が形成されている。
【0005】
この収納ボックスは、ラッゲージルーム内,外への出し入れや、持ち運びに便利なように把手を設けることが望まれる。
【0006】
前記把手の付設形態としては、把手を前記収納ボックスの上側開放部周縁のフランジ部上に回動可能に装着し、収納ボックスをラッゲージフロアに格納する際には把手をボックスの内側に回動して折り込み、収納ボックスの出し入れ時には把手をボックス内側から回動して前記フランジ部上に起立させて、作業者が把持し易いようにすることが望ましい。
【0007】
そこで、前記把手の連結部側の端部に一対の連結軸を設ける一方、収納ボックスの前記フランジ部上に逆L字状の軸受片を一体に立設し、この軸受片の弾性作用により前記連結軸をこれらフランジ部上面と軸受片とで抱持して、把手をこのフランジ部上に回動可能に軸受装着することが考えられる。
【0008】
このような把手の取付構造を採用すれば、前記軸受片の弾性により把手の連結軸周りに所要の回動抵抗(摩擦抵抗)が得られて、把手をボックス内側に折り込んだ格納位置と、把手を前記フランジ部上に回動,起立させた使用位置と、にそれぞれ姿勢保持させることが可能となって良好な使用性を得ることができる。
【0009】
また、軸受片を逆L字状に一体に立設することで、把手の組付け時には該軸受片を径外方向に弾性変形させて、軸受片の端末とフランジ部上面との間の間隔を拡開し、この間隙から把手の連結軸を軸受片の内側にくぐり入れて、把手を前記フランジ部上に容易に組付けることも可能である。
【0010】
しかし、このような把手の取付構造では、前記軸受片が前記フランジ部上に逆L字状に立設されているために、該軸受片が経時的に径外方向に変形し易い傾向にあり、この軸受片の径外方向の変形によって、前記把手の連結軸周りの回動抵抗が減少して前記把手が自由に回動して当初の姿勢保持機能が失われる不具合を生じてしまう。
【0011】
この把手の姿勢保持機能の低下を回避するために、前記フランジ部上面における前記把手の連結軸が摺接する部分に、不織布等のクッション材を接着して摺動抵抗を高めることも考えられる。しかし、この対応では把手を繰り返し回動しているうちにクッション材が次第に剥れて、所期する把手の姿勢保持機能を維持できなくなったり、剥れたクッション材が把手を回動する都度粘着して、不快な粘着音が生じる等の不具合を生じてしまう。
【0012】
そこで、本発明は把手を収納ボックス側壁に沿って回動した格納位置と、把手を収納ボックスの上側開放部周縁のフランジ部上に回動起立させた使用位置と、の姿勢保持機能を長期に亘って維持することができて、使用性を高めることができる収納ボックスの把手取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の収納ボックスの把手取付構造にあっては、物品を収納する上側が開放した合成樹脂製の収納ボックスと、前記収納ボックスの上側開放部周縁のフランジ部上に一体に立設された軸受片と、前記軸受片の弾性作用により、連結軸が前記フランジ部上面とこの軸受片とで抱持されて、該フランジ部上に回動可能に軸受装着された把手と、前記把手の装着部分を内包して、前記フランジ部に外嵌固定されたカバーと、を備え、前記軸受片の上面と、前記カバーとの間には、該軸受片の上下方向の撓み変形を許容する所要のクリアランスが設定され、かつ、前記クリアランスを埋めて該軸受片の上面を押えるクッション材が介装されていることを主要な特徴としている。
【0014】
前記軸受片は、その上面とカバーとの間に設定されたクリアランスにより上下方向の撓み変形が許容されているため、把手の連結軸は前記フランジ部上でこの軸受片の上下方向の撓み変形による弾性作用と、該軸受片の上面とカバーとの間で前記クリアランスを埋めて介装されたクッション材の弾性とによって、所要の回動抵抗をもって回動可能に抱持した状態で軸受けされる。
【0015】
これにより、把手をボックス内,外方向に回動して折り込んだ格納位置、あるいは、把手を上方に回動して前記フランジ部の上方に起立させた使用位置の何れにあっても、把手の自重による回動方向の遊動、即ち、自由回動が阻止されて、該把手が確実に姿勢保持される。
【0016】
前記クッション材は、前述のように軸受片の上面とカバーとの間にあって、前記連結軸の摺接回動部分には存在していないので、該連結軸の回動によって剥離することはなく、軸受片の押え反力の機能低下が回避される。
【0017】
一方、軸受片は経時的に径外方向に変形し易い傾向にあるが、前記クッション材が前記クリアランスで弾性圧縮されることでこの軸受片の径外方向の変形が規制される。
【0018】
この結果、前記軸受片とクッション材との弾性作用による前記連結軸の抱持力の低下が抑制され、該連結軸周りの回動抵抗の減少に起因した把手の姿勢保持機能の低下が回避される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、把手の連結軸を抱持する軸受片の経時的な径外方向の変形が、該軸受片の上面とカバーとの間に設定されたクリアランスにこれを埋めて介装されたクッション材の弾性圧縮作用により規制される。
【0020】
この結果、軸受片とクッション材との弾性作用による前記連結軸の抱持力の低下が抑制されて、該連結軸周りの回動抵抗の減少に起因した把手の姿勢保持機能の低下が回避され、長期に亘って把手を適正に姿勢保持することができて、使用性が低下するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る収納ボックスを示す外観斜視図。
【図2】図1に示した収納ボックスの把手取付け部分の構造を分解して示す斜視図。
【図3】把手の軸受装着部分を示す拡大斜視図。
【図4】図2のA−A線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を自動車のラッゲージフロアに配設される収納ボックスを例に採って、図面と共に詳述する。
【0023】
図1,2に示す収納ボックス1は、適宜の合成樹脂材をもって上側が開放した平面短形状に型成形されている。
【0024】
この収納ボックス1は、自動車のラッゲージフロアFに形成した開口部Faに落し込んで、該開口部Faに挿脱可能に配設されるもので、前記収納ボックス1の上側開放部の周縁には、前記開口部Faの周縁に形成された図外の棚部上に係止するフランジ部2が一体に形成されている。
【0025】
このフランジ部2は、収納ボックス1の上側開放部周縁を補剛すると共に、前述のようにラッゲージフロアFの開口部Faの周縁の棚部上への定置係止部として機能する他、該収納ボックス1の上側開放部を閉塞するリッドFbの定置棚部としての機能を併有している。
【0026】
前記リッドFbは、前記ラッゲージフロアFの開口部Faに配設された収納ボックス 1のフランジ部2上に落し込んだ閉蓋状態で、該ラッゲージフロアFと略面一に整合して、該ラッゲージフロアFの一部を構成する。
【0027】
前記収納ボックス1の車幅方向両側(図1,2の左右方向両側)のフランジ部2Aには、その車両前後方向(図1,2の上下方向)の中央部分に把手配設部2Bが一段低く有段成形されている。この把手配設部2Bに、前,後一対の軸受片3が一体に立設されている。
【0028】
前記軸受片3は、図3,4にも示すように把手配設部2Bの内縁側から逆L字状に形成されていて、その内周には後述する把手10の連結軸11に摺接する抱持面3aが形成されている。
【0029】
この抱持面3aは前記連結軸11の回動中心を中心とする円弧に形成されるが、本実施形態では前記抱持面3aが形成される部分が全体的に円弧状に形成されている。
【0030】
前記把手10は、適宜の合成樹脂材もしくは軽量金属材料をもって略コ字形に形成されている。
【0031】
この把手10の連結側端部には、車両前後方向に内向きに略直角に延出する前後一対の連結軸11が形成されている。
【0032】
前記把手10は、その連結軸11を前記軸受片3を径外方向に拡開した状態で該軸受片3の内側にくぐり入れて、前記把手配設部2B上に回動可能に抱持した状態で連結される。
【0033】
前記把手配設部2Bには、前記把手10の装着部分を内包してカバー20が外嵌固定されている。
【0034】
前記カバー20は、適宜の合成樹脂材をもって、上面が前記フランジ部2Aと略面一に整合する高さで略コ字形断面に形成されている。
【0035】
前記把手配設部2Bの前記カバー20が被冠される部分の車幅方向両側縁部は、該カバー20の肉厚相当の段差をもって車幅方向に有段成形されて、車幅方向の面整合が行われるように構成されている(図4参照)。
【0036】
このカバー20は、前,後端部が端壁で閉止され、この閉止端には把手10の連結軸11が挿通する切欠部20aが形成されている。
【0037】
前記カバー20は、把手配設部2Bに適宜の止着手段により着脱可能に固定される。
【0038】
例えば、本実施形態では前記把手配設部2Bに設けたボルト挿通孔2aに下面側から図外のボルトを挿通し、カバー20の内側に突設された図外のボス部にこのボルトで締結して基本的な固定が行われる。
【0039】
前記軸受片3の上面と、このカバー20との間には、該軸受片3の上下方向の撓み変形を許容する所要のクリアランスδが設定されている。
【0040】
本実施形態では、図4に示すように前記カバー20の内面における前記軸受片3に対応する部分に、カバー断面を横切るようにリブ壁21が一体に突設され、該リブ壁21の下縁に前記軸受片3の上面外形よりも僅かに大きく成形した整合縁21aを形成して、該整合縁21aと軸受片3の上面との間に前記クリアランスδが設けられている。
【0041】
そして、このリブ壁21の整合縁21aと軸受片3との間に、前記クリアランスδを埋めてクッション材22が介装され、このクッション材22によって軸受片3の上面が弾性的に押えつけられている。
【0042】
クッション材22として、例えば適宜の厚みの不織布を用いることができ、この不織布を図3に示すように軸受片3の上面に両面接着テープ等の接着剤で接着して簡単に配設することが可能である。
【0043】
以上の構成からなる本実施形態の把手取付構造によれば、前記軸受片3は、その上面とカバー20のリブ壁21との間に設定されたクリアランスδにより上下方向の撓み変形が許容される。一方、把手10の連結軸11は、前記把手配設部2B上で前記軸受片3の上下方向の撓み変形による弾性作用と、該軸受片3の上面とカバー20のリブ壁21との間で前記クリアランスδを埋めて介装されたクッション材22の弾性とによって、所要の回動抵抗をもって回動可能に抱持した状態で軸受けされる。
【0044】
これにより、把手10を収納ボックス1の内側に回動して折り込んだ格納位置、あるいは、把手10を上方に回動して前記把手配設部2Bの上方に起立させた使用位置の何れにあっても、把手10の自重による回動方向の遊動、即ち、自由回動が阻止され、該把手10の確実な姿勢保持が行われる。
【0045】
前記クッション材22は、前述のように軸受片3の上面とカバー20のリブ壁21との間にあって、前記連結軸11の摺接回動部分には存在していないので、該連結軸11の回動によって剥離することはなく、従って、軸受片3の押え反力の機能低下が回避される。
【0046】
一方、軸受片3は経時的に径外方向に変形し易い傾向にあるが、前記クッション材22が前記クリアランスδで弾性圧縮されることでこの軸受片3の径外方向の変形が規制される。
【0047】
この結果、前記軸受片3とクッション材22との弾性作用による前記連結軸11の抱持力の低下が抑制される。
【0048】
これにより、連結軸11周りの回動抵抗の減少に起因した把手10の姿勢保持機能の低下が回避され、長期に亘って把手10を適正に姿勢保持することができて、使用性が低下するのを回避することができる。
【0049】
なお、前記実施形態では、カバー20の内面にリブ壁21を設けて、該リブ壁21と軸受片3との間にクリアランスδを設定しているが、仕様によってカバー20の上壁と軸受片3の上面との間にこのクリアランスδを設定することも可能である。
【0050】
また、本発明は自動車のラッゲージフロア配設用の収納ボックスに限定されることはなく、各種の物品収納ボックスに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…収納ボックス
2,2A…フランジ部
3…軸受片
10…把手
11…連結軸
20…カバー
22…クッション材
δ…クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する上側が開放した合成樹脂製の収納ボックスと、
前記収納ボックスの上側開放部周縁のフランジ部上に一体に立設された軸受片と、
前記軸受片の弾性作用により、連結軸が前記フランジ部上面とこの軸受片とで抱持されて、該フランジ部上に回動可能に軸受装着された把手と、
前記把手の装着部分を内包して、前記フランジ部に外嵌固定されたカバーと、を備え、
前記軸受片の上面と、前記カバーとの間には、該軸受片の上下方向の撓み変形を許容する所要のクリアランスが設定され、かつ、
前記軸受片の上面とカバーとの間には、前記クリアランスを埋めて該軸受片の上面を押えるクッション材が介装されていることを特徴とする収納ボックスの把手取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−116226(P2011−116226A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275085(P2009−275085)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】