説明

収納棚

【課題】 本発明は、可能な限りの収納力を確保し、最下段の引出に補助機能を設けつつ、最下段の引出が意図しないときに開いてしまうことを防止することにより、使い勝手のよい収納棚を提供することを目的としている。
【解決手段】 上下方向に配置された複数の引出124、126と、引出をスライド自在に収納可能な収納庫120と、引出が所定の収納完了位置より所定量移動されたことによって引出を押し出す押出機構210とを備え、押出機構は、複数の引出のうち最下段の引出126において、引出が収納完了位置から収納方向へ移動した場合には押し出さず、引出が収納完了位置から反収納方向へ移動した場合には押し出すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機構を備える引出を有する収納棚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被収納物を収納する収納棚としては、戸棚や押し入れといった、固定された棚に被収納物自体を動かして収納するものと、タンスやキッチンといった、引出をスライドして被収納物を載置し引出ごと収納するものとがある。
【0003】
後者の、引出を用いる収納棚では、被収納物を上方から容易に収納でき、複数の引出を水平および垂直方向に並行して設けることで高い空間効率を得ることができる。例えば、キッチンにおける引出には、碗、皿、カップ等の食器類、鍋、フライパン等の調理器具、塩、胡椒等の調味料など、大小様々な被収納物を上方から容易に収納することができる。
【0004】
一方、昨今の付加価値の増大や高機能化に伴い、特にキッチンではさらなる使い勝手の良さや便利さ等を求める要望もある。そこで、引出の前板の前面を少しだけ奥に押すだけで自動的に引出を引き出す、いわゆるプッシュオープン式の押出機構を備えたキッチンが提案されている(例えば特許文献1)。かかるプッシュオープン式のキッチンでは、引出に手の甲や手以外の部位を接触させることによっても容易に引き出すことができ、調理の効率を向上することができる。
【0005】
上述したプッシュオープン式のキッチンにおける押出機構としては、ばねとラッチを用いた機械式の装置や、モータを用いた電動式の装置を用いることができる。電動式の押出機構は、押し込み量や押出速度を自由に設定することができるため、機械式のものよりも所望の動作を得られやすい点で優れている。
【0006】
特に、キッチンの上層部の引出(ハンドエリア)に上述のプッシュオープン式の押出機構が備えられている場合、キッチンでの作業の際、使用頻度の高い調理器具の出し入れをするのにとても効率的であった。
【特許文献1】国際公開WO2006/112189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、キッチンの前面の下端(床面近傍)には、キッチンに対面した際につま先を収容するための蹴込み(奥側に後退した部分)が設けられる。ここで海外や旧来の日本のキッチンであれば、蹴込みは単に幕板が取り付けられ、壁面となっていた。しかし近年の日本のキッチンでは収納力の増大を目的として、床面にほぼ接する高さから引出が設けられている。このように低い位置に設けられた引出には、引出の前面(前板)に蹴込みが設けられるが、それでもつま先や掃除機がぶつかる場合はある。このような最下段の引出までもプッシュオープン式とすると、ユーザが意図しない場合にも引出が開いてしまうことがあり、ユーザが煩わしさを感じるおそれがある。
【0008】
一方、最下段の引出には、位置が低いこと、容量が大きく取れることから、缶詰や瓶、普段は使わないような鍋や食器など、比較的重量物が収容されることが想定される。すると、最下段にこそ押出機構による補助が望まれる。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、可能な限りの収納力を確保し、最下段の引出に補助機能を設けつつ、最下段の引出が意図しないときに開いてしまうことを防止することにより、使い勝手のよい収納棚を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる収納棚の代表的な構成は、上下方向に配置された複数の引出と、引出をスライド自在に収納可能な収納庫と、引出が所定の収納完了位置より所定量移動されたことによって引出を押し出す押出機構とを備え、押出機構は、複数の引出のうち最下段の引出において、引出が収納完了位置から収納方向へ移動した場合には押し出さず、引出が収納完了位置から反収納方向へ移動した場合には押し出すことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、最下段の引出は、プッシュオープン式の押出機構ではなく、引出が収納完了位置から反収納方向へ所定量移動した場合にのみ引出を押し出す押出機構を備える。したがって、足等が最も接触しやすい最下段の引出がユーザの意図しない場合には開かないようにすることにより、煩わしさを低減することが可能であり、使い勝手を向上することができる。
【0012】
上記の押出機構は、複数の引出のうち最下段以外の引出においては、引出が収納完了位置から収納方向および反収納方向のいずれに移動した場合にも押し出すとよい。
【0013】
これにより最下段以外の引出は、ユーザが引出を所定量押した場合および引いた場合のいずれの場合でも押し出される。したがって、例えば、ユーザの両手がふさがっていた場合等は手以外の部位を引出に接触させたり、手があいていれば取っ手に指を引っ掛けて少し引出を引き出すことにより引出を押し出すことができ、ユーザの利便性を向上することができる。
【0014】
上記の収納庫は、収納庫の壁板の前面と、引出の前板の裏面との間に配置され、引出が収納完了位置にあるとき、収納庫の壁板の前面と引出の前板の裏面との間に形成される隙間を封止するパッキンを備え、収納庫の最下段の引出のパッキンよりも、最下段以外の引出のパッキンのほうが低弾力であってもよい。
【0015】
上記パッキンを備えることにより、収納庫と引出の間に形成される隙間を塞ぐことが可能となる。したがって、上記隙間から、虫やホコリが侵入するのを防止することができ、収納庫の内部を衛生的に保つことが可能となる。
【0016】
また、最下段以外の引出は、開く際に収納完了位置からさらに収納方向に所定量移動することを想定し、押し込み方向に容易に変形可能な低弾力性のパッキンを備えることが好ましい。しかし、最下段の引出は開く際に収納完了位置から反収納方向にのみ移動するため、押出機構を備えない通常の引出に使用しているパッキンと同様のパッキンを使用可能であり、生産コストの削減を図ることができる。
【0017】
また収納庫を複数備え、夫々の収納庫において上下方向に配置された複数の引出を有し、夫々の収納庫における最下段の引出を押し出す押出機構は、該引出が収納完了位置から収納方向へ移動した場合には押し出さず、該引出が収納完了位置から反収納方向へ移動した場合には押し出すよう構成してもよい。
【0018】
上記構成によれば、キッチンや戸棚のように複数の収納庫が並ぶ構成であっても、足等が最も接触しやすい最下段の引出がユーザの意図しない場合には開かないようにすることにより、煩わしさを低減することが可能であり、使い勝手を向上することができる。
【0019】
複数の引出のうち、最下段の引出の前板の下端は床面近傍に配置され、かつ該前板の前面には奥側に後退した蹴込みを一体に形成されていてもよい。最下段の引出の前板が床面近傍まで至る場合、キッチンのように使用者が正対して立ったときに前板がつま先にあたる位置に配置されることになる。このとき上記のように蹴込みを設けることにより、使用者はさらに近接して立つことができ、作業性を向上させることができる。また前板には全幅に亘って下方に向かって屈曲する折り返し部を形成することにより、目立たない手かけを形成することができる。
【0020】
本発明にかかる収納棚の他の構成は、前板の下端が床面近傍にある引出と、引出をスライド自在に収納可能な収納庫と、引出が所定の収納完了位置より所定量移動されたことによって引出を押し出す押出機構とを備え、押出機構は、引出において、引出が収納完了位置から収納方向へ移動した場合には押し出さず、引出が収納完了位置から反収納方向へ移動した場合には押し出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、可能な限りの収納力を確保し、最下段の引出に補助機能を設けつつ、最下段の引出が意図しないときに開いてしまうことを防止することにより、使い勝手のよい収納棚を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
(全体構成)
図1はシステムキッチンの全体構成を説明する図である。キッチン100は、いわゆる対面式のオープンシステムキッチンであり、その天板110(ワークトップとも称される。)はステンレス材を用いて形成され、システムキッチンの全体の上面を覆っている。なお、天板110は合成樹脂素材を使用して形成されていてもよい。
【0024】
天板110の上面には、組み込みで取り付けられたコンロ112、調理スペース114、一体に形成されたシンク116、および準備スペース118が設けられる。調理スペース114と準備スペース118とは同様に平坦なテーブル面であるが、シンク116とコンロ112の間に位置する調理スペース114は主に調理を行う場所と想定し、シンク116より外側に位置する準備スペース118は一時的に食材や調理器具を置くための補助的な場所と想定している。
【0025】
天板110の下は、コンロ112が設置されているコンロキャビネット120と、調理スペース114を備えるベースキャビネット130、シンク116が設置されているシンクキャビネット140、準備スペース118を備える補助キャビネット150で構成している。各キャビネットは収納庫として機能し、キャビネット内の空きスペースには、コンロ112への配線や、シンク116および水栓への給排水管などが収容されている。
【0026】
このように、天板110は、システムキッチン100全体に亘って連続しているにも拘らず、天板110の下では、天板110の上のシンク116やコンロ112といった各構成に対応したキャビネットが複数設けられている。
【0027】
これによりシステムキッチン100の構成を異ならせたときにも、キャビネット単位で引出や前板などの部品を準備すればよく、生産効率を向上させることができる。ここでいうシステムキッチンの構成とは、例えば調理スペース114やシンク116の幅、準備スペース118の有無などである。
【0028】
各キャビネットは、本実施形態においては収納として様々な大きさの引出を設けている。例えばコンロキャビネット120は、上部にコンロ112のグリル112aおよび操作パネル112bを備え、その両脇には調味料などの小物を収納するための小さな引出であるスパイスボックス122が配置されている。コンロキャビネット120の中央部、すなわちグリル112aの下には幅の広い大きな引出124を配置し、鍋やボウルなどの比較的大きな調理器具を収納可能になっている。またコンロキャビネット120の最下段には、前板の下端が床面近傍にある引出としての足下収納庫126が配置されている。
【0029】
同様に、ベースキャビネット130には複数の比較的小さな引出132および足下収納庫136が備え付けられ、シンクキャビネット140には足下収納庫146からシンク116の幕板142に到る高い前板を備えた引出144が備え付けられている。補助キャビネット150には高い前板を備えた引出152が備えられ、その内部に独立して出し入れ可能な中引出154が備えられている。引出152の下には、前板の下端が床面近傍にある引出としての足下収納庫156が配置されている。
【0030】
(押出機構)
図2はキャビネットの内部構成を説明する図である。図に示すように、各キャビネットの壁板202には引出を案内するためのレール204が左右対称となるように備えられている。そして、それぞれの引出の収納位置(収納完了位置)の背面側には、引出を押し出す押出機構の例としてのドライブユニット210が備えられている。
【0031】
ドライブユニット210は、ベースキャビネット130のように多数の引出132が設けられている場合には、縦方向に設置され上下端を固定された縦ブラケット250に取り付けられている。またコンロキャビネット120のように幅が広い場合、およびシンクキャビネット140のように引出の奥行き位置が異なる場合には、横方向に設置され左右端を固定された横ブラケット260に取り付けられている。
【0032】
図3は最下段の引出を説明する図である。最下段の引出である足下収納庫(126、136、146、156)は複数あるが、足下収納庫126の符号を用いて説明する。図3に示すように、足下収納庫126は箱部126aの前面側に前板126bを備えている。前板126bは、例えばステンレス鋼にて形成することができる。
【0033】
前板126bの下端は、図1に示したように床面近傍に配置されている。したがってキッチンのように使用者が正対して立ったときに前板126bがつま先にあたる位置に配置されることになる。そこで図3に示すように、前板126bの前面には奥側に後退した蹴込み126cを形成している。これにより、使用者はさらに近接して立つことができ、作業性を向上させることができる。また前板126bの上端には全幅に亘って下方に向かって屈曲する折り返し部を形成することにより、手かけ126dを形成している。手かけ126dをこのように形成することにより、上から見下ろす使用者にとって目立たない手かけとすることができる。
【0034】
図4はドライブユニットを説明する図であって、図4(a)はドライブユニットの概略斜視図、図4(b)〜(f)はドライブユニットの動作を説明する平面図である。
【0035】
図4(a)に示すように、ドライブユニット210は、駆動部212と、駆動部212から片持ちで突出したアーム214とを備えている。駆動部212は電力によって動作し、アーム214を回動させるモータのほか、アーム214の回動量を検知するエンコーダ、およびこれらを制御する制御部を備えている。すなわちアーム214は、引出を押し出すために用いられると共に、引出の移動を検知するためにも用いられる。
【0036】
引出を収納した際には、アーム214は引出の背面に揺動可能に付勢されている。そして引出124が収納完了位置から収納方向に押し込まれるまたは反収納方向に引き出されることによってアーム214がそれぞれの方向に回動し、引出124が収納完了位置から所定量移動したときに駆動部212のモータを動作させて引出124を押し出す。ここで引出124の所定量の移動は、駆動部212のエンコーダが検知したアーム214の回動量として検知することができる。
【0037】
図4(b)に示すように、引出124が引き出されているときには、ドライブユニット210のアーム214は、引出に向かって突出した状態となっている。図4(c)に示すように引出124を収容すると、アーム214は引出124の背面に押されて回動する。このとき駆動部212内の制御部は、アーム214の回動をエンコーダによって検知する。
【0038】
キャビネットの壁板202にはダンパ330が設けられており、引出124の前板302がこのダンパ330に当接することによって、引出124の収納完了位置(完全に収容される位置)が規定される。引出124が収納完了位置にて静止すると、駆動部212内の制御部はエンコーダの単位時間あたりの変化量から、収納完了位置を認識する。
【0039】
例えば、図4(d)に示すように、引出124を収納完了位置から反収納方向に所定量引き出すと、制御部はエンコーダによってこれを検知し、駆動部212内のモータを動作させてアーム214を回動させる。これにより図4(f)に示すように、引出124を押し出す力を補助することができる。
【0040】
また図4(e)に示すように、ダンパ330の付勢力に抗して引出124を収納完了位置よりさらに収納方向に所定量押し込むと、制御部はエンコーダによってこれを検知し、駆動部212内のモータを動作させてアーム214を回動させる。これにより図4(f)に示すように、引出124を押し出す。
【0041】
ここで、最下段以外の引出、例えば引出124、132、144においては、上述のように反収納方向に引き出された場合と、収納方向に押し込まれた場合のいずれにおいても、押出機構により引出124が押し出される。
【0042】
上記構成によれば、例えば、ユーザの両手が汚れていて引き出しに触れたくない場合に手以外の部位を引出124に接触させたり、取っ手に指を引っ掛けて少し引出124を引き出すことにより引出124を押し出すことができる。
【0043】
したがって引出の開閉が極めて簡便になり、また自動化による高級感を得ることができる。なお、押し込むまたは引き出す所定量は任意に設定することができ、例えば1mm以上に設定することができる。また引出に寄りかかった際に引出を押し出してしまうことを回避するために、押し込みが短時間である場合にのみ押し出すこととし、所定時間以上(例えば2秒以上)押し込まれていた場合には押し出さないように制御することができる。
【0044】
一方、最下段の引出である足下収納庫126、136、146、156においては、引出が収納完了位置から収納方向へ移動した場合には押し出さず、引出が収納完了位置から反収納方向へ移動した場合には押し出すように動作させる。足下収納庫126等を引き出す場合には、手かけ126d(図3参照)を好適に利用することができる。
【0045】
上記構成によれば、最下段の引出の押出機構であるドライブユニット210は、引出が収納完了位置から反収納方向へ所定量移動した場合にのみ引出を押し出す。したがって、つま先や掃除機等が接触した場合であっても、ユーザの意図しない場合に足下収納庫126等が開くことがない。これによりキッチン100においてユーザの利便性を向上し、快適な環境を提供することができる。
【0046】
(パッキン)
図5は、収納ユニットの例としてのベースキャビネット130とベースキャビネット130に収納可能な引出132の一部の拡大図である。図5に示すように、ベースキャビネット130の両側面は2枚の壁板304で構成されており、壁板304の内側にダンパ330が設置され、壁板304の前面にはパッキン320が設けられている。引出132は、側縁が壁板304の前面を覆うように張り出した前板302と、2枚の側板と、底板とで構成されている。尚、ここでいう壁板304とは、キャビネットを構成し引出の側方に配置されている側板のことをいう。
【0047】
本実施形態において、パッキン320は壁板304の前面に設置されているが、これに限定されるものではなく、壁板304の前面と引出の前板302の裏面との間に形成される隙間を封止することができればよく、例えば、前板302の裏面に設置されてもよい。
【0048】
引出132を備える収納棚では、キャビネット(収納庫)の壁板304の前面と引出の前板302の裏面との間に隙間が形成されるため、当該隙間から虫やホコリが収納ユニット内部に侵入し不衛生となる可能性がある。したがって、上記のように、壁板304の前面にパッキン320を設置して隙間を封止し、収納ユニット内部に虫やホコリ等の異物が侵入することを防止している。
【0049】
図6は本実施形態のパッキンが加えられた力を逃がす作用を説明する説明図である。詳しくは、図6(a)には、最下段以外の引出に使用される低弾性パッキン320を示し、図6(b)には、最下段の引出(足下収納庫)に使用される通常のパッキン420を示す。
【0050】
図6(a)に示すように、低弾性パッキン320は、引出132の前板302を押し込む方向(図6中白抜き矢印)の力が加えられたとき、接合していない一方端が、接合部と反対方向(図6(a)中黒矢印)に移動し、押し込む方向(図6中白抜き矢印)の力を接合部と反対方向(図6(a)中黒矢印方向)に逃がすことができる。
【0051】
これに対し図6(b)に示すのは、通常のパッキン420であり、接合部は一方端のみであるが、断面形状において3つの略直線と2つの屈曲部とを備えている。そして図に示すように、引出132の前板302を押し込む方向(図6中白抜き矢印)の力が加えられたとき、通常のパッキン420は、押し込む方向と両垂直方向(図6(b)中黒矢印)に力を分散させる。
【0052】
上記2つのパッキン320、420における力の分散を比較すると、図6(a)に示した低弾性パッキン320の押し込み方向の形状変化量は、屈曲部が接合部のみであるために当接面320bがほとんど設置面320aに沿うように変形するため、従来の断面が略台形形状のパッキン420と比較して大きくなる。つまり、収納完了位置からさらに収納方向に押し込んで押出機構を動作させるために必要な所定量の移動を軽微な力で稼ぐことが可能となる。図6(b)に示したパッキン420は、材質や厚みが同じであっても、屈曲部が多いために押し込み方向の形状変化量は小さい。
【0053】
上記のように、最下段の引出(足下収納庫)と最下段以外の引出では、使用するパッキンの種類が異なる。これは、最下段の引出(足下収納庫)と最下段以外の引出が備える押出機構が異なることに起因する。最下段以外の引出が備える押出機構は、引出が引き出されたときだけでなく押し込まれたときにも引出が押し出される。したがって、最下段以外の引出に使用されるパッキンは、軽微な力で引出の前板を押し込むことができるようにするために低弾力性のものを使うことが好ましい。
【0054】
しかしながら、最下段の引出(足下収納庫)は、引出が引き出されたことによってのみ引出が押し出されるため、低弾性パッキン320を使用する必要はない。したがって、押出機構を備えない従来の引出と同様の通常のパッキン420を使用することができるため、手間とコストの削減が図れる。
【0055】
上記の構成により、引出の密封性が向上し、収納庫と引出の間に形成される隙間から収納ユニット内部に虫やホコリ等の異物が侵入することを防止することが可能となる。また、上記ダンパ330は、引出132を収納する際の衝撃を吸収する効果も備えている。これにより、引出132を強く収納したとしても、収納物に与える衝撃を軽減することができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、上記実施形態においては上下方向に複数の引出を備えた収納庫について、その最下段の引出の動作について説明した。しかし本発明はこれに限定するものではなく、収納庫に1つしか引出がない場合であっても、その引出の前板の下端が床面近傍にある場合には、本発明を適用することにより、引出が意図しないときに開いてしまうことを防止して使い勝手のよい収納棚とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、押出機構を備える引出を有する収納棚として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】システムキッチンの全体構成を説明する図である。
【図2】キャビネットの内部構成を説明する図である。
【図3】最下段の引出を説明する図である。
【図4】ドライブユニットを説明する図である。
【図5】収納ユニットの例としてのベースキャビネットとベースキャビネットに収納可能な引出の一部の拡大図である。
【図6】パッキンが加えられた力を逃がす作用を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0060】
100…キッチン、
110…天板、
112…コンロ、
112a…グリル、112b…操作パネル、
114…調理スペース、
116…シンク、
118…準備スペース、
120…コンロキャビネット、
122…スパイスボックス、
124、132、144、152…引出、
126、136、146、156…足下収納庫、
130…ベースキャビネット、
140…シンクキャビネット、
142…幕板、
150…補助キャビネット、
154…中引出、
202、304…壁板、
204…レール、
210…ドライブユニット、
212…駆動部、
214…アーム、
250…縦ブラケット、
260…横ブラケット、
302…前板、
320…低弾性パッキン、420…通常のパッキン
330…ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に配置された複数の引出と、
前記引出をスライド自在に収納可能な収納庫と、
前記引出が所定の収納完了位置より所定量移動されたことによって該引出を押し出す押出機構とを備え、
前記押出機構は、前記複数の引出のうち最下段の引出において、該引出が収納完了位置から収納方向へ移動した場合には押し出さず、該引出が収納完了位置から反収納方向へ移動した場合には押し出すことを特徴とする収納棚。
【請求項2】
前記押出機構は、前記複数の引出のうち最下段以外の引出においては、該引出が収納方向および反収納方向のいずれに移動した場合にも押し出すことを特徴とする請求項1に記載の収納棚。
【請求項3】
前記収納庫は、該収納庫の壁板の前面と、前記引出の前板の裏面との間に配置され、該引出が収納完了位置にあるとき、該収納庫の壁板の前面と該引出の前板の裏面との間に形成される隙間を封止するパッキンを備え、
前記収納庫の最下段の引出のパッキンよりも、最下段以外の引出のパッキンのほうが低弾力であることを特徴とする請求項1または2に記載の収納棚。
【請求項4】
前記収納庫を複数備え、
夫々の収納庫において上下方向に配置された複数の引出を有し、
夫々の収納庫における最下段の引出を押し出す押出機構は、該引出が収納完了位置から収納方向へ移動した場合には押し出さず、該引出が収納完了位置から反収納方向へ移動した場合には押し出すことを特徴とする請求項1に記載の収納棚。
【請求項5】
前記複数の引出のうち、最下段の引出の前板の下端は床面近傍に配置され、かつ該前板の前面には奥側に後退した蹴込みを一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の収納棚。
【請求項6】
前板の下端が床面近傍にある引出と、
前記引出をスライド自在に収納可能な収納庫と、
前記引出が所定の収納完了位置より所定量移動されたことによって該引出を押し出す押出機構とを備え、
前記押出機構は、前記引出において、該引出が収納完了位置から収納方向へ移動した場合には押し出さず、該引出が収納完了位置から反収納方向へ移動した場合には押し出すことを特徴とする収納棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−136524(P2009−136524A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316684(P2007−316684)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】