説明

収縮低減機能と減水機能を併せ持つ一液型セメント用添加剤組成物及びセメント組成物

【課題】減水成分と収縮低減成分を含み、高濃度で一液化しても相溶性を保つ一液型セメント用添加剤であって、幅広い水セメント比の領域に適応した減水性を発揮すると共に、得られるセメント組成物の乾燥収縮を効果的に低減しかつ凍結融解抵抗性および美観を保つことのできる一液型セメント用添加剤組成物及びセメント組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるA成分、(I)α,β−不飽和モノカルボン酸X重量部、不飽和結合を有するポリオキシアルキレンモノエステル系単量体Y重量部及び(メタ)アリルビスフェノール類Z重量部の重合物、(II)一般式(3)で示される単位と無水マレイン酸単位とを必須単量体とする共重合体、及び(III)オキシカルボン酸系化合物からなるB成分を含有する一液型セメント用添加剤組成物、並びに当該添加剤組成物を含有するセメント組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮低減機能と減水機能を併せ持つ一液型セメント用添加剤組成物及びセメント組成物に関する。詳しくは、高濃度で一液化することができ、収縮低減機能と減水機能を併せ持つ一液型セメント用添加剤組成物、及び、減水性を損なわず、乾燥収縮が十分に低減されたセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にセメント用減水剤は、得られる硬化物の耐久性向上のためにセメント組成物中の単位水量を低減する目的で使用され、種々の減水機能を持つ成分が提案されている。なお、本明細書において、セメント用減水剤、もしくは減水剤とは、減水機能を持つ成分を含有するセメント用添加物全体のことをいう。
一方、セメント組成物用乾燥収縮低減剤(以下、収縮低減剤ともいう。)は、セメント組成物の耐久性上の問題点である乾燥収縮ひび割れを抑制することを目的として使用される添加剤である。低級アルコールアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレン誘導体等の種々の化合物が提案されているが、減水機能も併せて発揮するものは見出されていない。よって、減水剤と収縮低減剤をそれぞれ添加する必要があった。セメント用乾燥収縮低減剤の使用方法としては、例えばあらかじめ練混ぜられたコンクリート等に収縮低減剤を後添加するか、若しくは、レディミクストコンクリート工場の練混ぜミキサ内にセメント用減水剤と別添加する方法が挙げられる。後者の別添加の方法の場合、そのような設備を有しているレディミクストコンクリート工場は限られている。また、前者の収縮低減剤を後添加する場合は、アジテート車でコンクリートを高速攪拌する必要があり、近隣への騒音上の問題や投入の手間、人為的なミスが問題となる。
【0003】
セメント用減水剤とセメント組成物用乾燥収縮低減剤を混合することによって、減水性と乾燥収縮低減効果を有するセメント用添加剤を提供できるとも考えられる。しかしながら、セメント用添加剤の減水成分と収縮低減成分は相溶性が悪く、混合して使用できない問題がある。現在市販されているほとんどの収縮低減剤はセメント用減水剤と高濃度で混合することが出来ない(土木学会第58回年次学術講演会V−175:非特許文献1)。また、セメント用添加剤中の減水成分と収縮低減成分の濃度を薄くすることで相溶性を保つことは可能であるが、例えばレディミクストコンクリート製造工程上、必要な軟度を得るためのセメント用減水剤の添加量が多くなり、既存の混和剤計量ビンでは、バッチ当たりの練り量を減らさなければならず、所定量のコンクリートを製造する際のバッチ数が増加し、コンクリートの製造速度が落ち、生産効率が著しく悪くなるといった問題点がある。
【0004】
例えばレディミクストコンクリート製造工程は、通常、1バッチの混練作業で2.5m3を練る作業を2回行い、アジテート車に5.0m3のコンクリートを積載して工事現場へ運搬する。レディミクストコンクリート製造設備の混和剤計量ビンのサイズは一般的に10〜20kgであり、そしてその混和剤の添加量に見合うコンクリートしか練れないシステムである。例えば20kgの計量ビンでは、20kg以下の計量ができる。比較的サイズの大きい混和剤計量ビン20kg全量を使用する一例として、2.5m3のコンクリートを製造した場合、コンクリートの単位セメント量が350kgの場合は減水剤のセメントに対する添加率(重量%)は2.3%、単位セメント量が400kgの場合は2.0%、単位セメント量が450kgの場合は1.8%となる。例えば減水剤と収縮低減剤を1:1で混合した混和剤の場合、減水性を混合前と同等のレベルに保つためには混和剤全体の添加量を減水剤のみを添加した場合の2.0倍とする必要があり、2:1で混合した場合は1.5倍とする必要がある。上述のように混和剤を計量する計量ビンのサイズが限られているので、混和剤の濃度を保つためには、1バッチあたりのコンクリートの製造量を少なくするしか対処方法はない。特に、減水剤と収縮低減剤を2:1で混合したものより高濃度で一液化できるものであることが望ましい。
【0005】
減水剤と収縮低減剤の混合使用に関する技術としては、例えば、特開2001−48620号公報(特許文献1)には減水成分としてマレイン酸系ポリマーとポリエチレングリコールアリルエーテルを包含するポリオキシアルキレン誘導体の2成分使用が記載されている。
【0006】
一方、ポリオキシアルキレンアリルエーテルを混合使用する特開2002−338315(特許文献2)は、セメント組成物の空気量の安定、耐凍害性の向上、乾燥収縮の低減を効果とするものであるが、減水成分との混合使用や相溶性、一液化という観点からの特許ではない。また、3成分からなる混合成分であり、かつ所定の配合割合であることが、乾燥収縮低減効果を得るために必須である。更に、3成分のうちの一つであるポリオキシアルキレンアリルエーテルは、(ポリ)オキシプロピレン基が必須であった。
【0007】
一方、特開2001−302307号公報(特許文献3)には、炭素数1〜4のオキシエチレン基を有するエーテル化合物とポリカルボン酸系ポリマーを別々に添加、若しくは予め混合して水で希釈して一液として使用する方法が挙げられている。しかしながら、本文中及び実施例にも相溶性の開示はなく、実際に一液化できるか否かについて全く検証されていない。炭素数1〜2では収縮低減効果が弱いことは過去から報告されている(土木学会論文集No.433/V−15:非特許文献2)。
以上説明したように、減水成分と収縮低減成分の一液化という観点での先行技術は認められなかった。また、従来の収縮低減剤や減水剤は、添加剤としての効果が得られたとしても、その反面でコンクリートの凍結融解抵抗性が低下することがあり、このような問題が生じない添加剤が求められていた。
【0008】
【非特許文献1】土木学会第58回年次学術講演会V−175
【非特許文献2】土木学会論文集No.433/V−15
【特許文献1】特開2001−48620号公報
【特許文献2】特開2002−338315号公報
【特許文献3】特開2001−302307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、減水成分と収縮低減成分を含み、それらの成分を高濃度で一液化しても相溶性を保つ一液型セメント用添加剤の製造を可能にすることにより、様々な用途に応じた幅広い水セメント比の領域に適応した減水性を発揮すると共に、得られるセメント組成物の乾燥収縮を効果的に低減する一液型セメント用添加剤組成物及びセメント組成物を提供することを目的とするものである。更に、減水性や乾燥収縮性だけでなく、コンクリートの凍結融解抵抗性や美観にも優れ、バランスの取れた一液型セメント用添加剤組成物及びセメント組成物を提供することをも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般的に用いられている減水成分と収縮低減成分は、相溶性の悪いものが多い。濃度を低くすれば混合できるものもあるが、通常は、混合すると相分離や沈殿などを起こしてしまう。本発明の一液型セメント用添加剤組成物は、減水成分と相溶性の良い収縮低減成分を見出したものである。
また、一般に用いられている減水成分含有液は、水溶性のものが多い。従って、従来のように減水剤と収縮低減剤を別添すると、液体である収縮低減剤を加えることにより添加剤全体の体積が増え、上述のように計量ビンの容積が限られている関係上、結果的に減水剤の添加量を抑える必要が生ずるという問題点があった。そこで本発明者らは、セメント用添加剤組成物中の減水成分の含有率の低下の回避に重点を置くとともに、減水成分含有液中の水分を置き換えることができる程度に水と高い相溶性を保つ収縮低減成分を見出すべく検討を重ねた。その結果、従来別添していたときよりも減水成分の含有率を下げずに一液化することができ、環境温度に関わらず相溶性を保ち、収縮低減機能を持つ化合物を見出した。係る化合物と減水成分との組成物、すなわち本発明の一液型セメント用添加剤組成物は、従来のセメント用分散剤と同様の割合でセメントに対し添加することにより、セメント組成物に同程度の減水性能を付与することができ、加えて収縮低減性能も付与することができることをも確認した。更に、本発明の一液型セメント用添加剤は、実際にコンクリートに添加した際に、少量の添加でも効率よく減水効果および乾燥収縮の顕著な低減効果を発揮するだけでなく、凍結融解抵抗性や美観に優れていることを確認した。本発明は、係る知見に基づくものである。
【0011】
本発明は、下記の〔1〕〜〔7〕から構成される。
〔1〕下記A成分及びB成分を含有することを特徴とする一液型セメント用添加剤組成物。
A成分:下記一般式(1)で示される化合物。
CH2=CH−CH2−O−(A1O)n1−H・・・(1)
(一般式(1)中、A1Oは炭素数2のオキシアルキレン基を示し、n1はオキシアルキレン基の平均付加モル数でn1=2〜10である。)
B成分:下記(I)、(II)、及び(III)から選ばれる1種以上の化合物。
(I)α,β−不飽和モノカルボン酸のX重量部、不飽和結合を有するポリオキシアルキレンモノエステル系単量体のY重量部及び(メタ)アリルビスフェノール類のZ重量部を、下記式(2)を満足する割合で共重合して得られる重合物。
X+Y+Z=100、15≦X≦35、62≦Y≦85、0≦Z≦10 ・・・(2)
(II)下記一般式(3)で示される単位と、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩、マレイン酸エステルから選ばれる単位とを必須単量体とする共重合体。
1O(A2O)n22 ・・・(3)
(一般式(3)中、R1は炭素数2〜5のアルケニル基、R2は水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基、A2Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、n2は炭素数2〜3のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、n2=1〜100を満たす。
(III)オキシカルボン酸系化合物。
〔2〕前記一般式(1)中、n1=6〜8であることを特徴とする〔1〕に記載の一液型セメント用添加剤組成物。
〔3〕前記A成分とB成分の割合が、A成分が15〜65重量部、B成分が5〜35重量部であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の一液型セメント用添加剤組成物。
〔4〕前記B成分の重量割合が、A成分の重量割合の2倍未満であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の一液型セメント用添加剤組成物。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の一液型セメント用添加剤組成物を含有するセメント組成物。
〔6〕〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の一液型セメント用添加剤組成物を、0.5〜6.0重量%含有する〔5〕に記載のセメント組成物。
〔7〕前記B成分を含有する水溶液に前記A成分を添加することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の一液型セメント用添加剤組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、種々の減水成分と高濃度で混合しても相溶性を保つことのできる特定の収縮低減成分を用いることにより、収縮低減機能と減水機能を併せ持つ、一液型セメント用添加剤組成物が提供される。さらに、レディミクストコンクリート製造工程においては、生産効率を落とすことなく、かつ、添加するセメント用添加剤組成物中の減水成分の含有量を低下させることなく、収縮低減機能を付与したセメント組成物を提供できる。
また、係る相溶性に優れた一液型セメント用添加剤組成物を用いることにより、従来のレディミクストコンクリート製造工程においては、既存の減水剤計量装置を用いることができる。また、種々の水セメント比に対応可能である。
本発明のセメント組成物は、単位水量を低減させることができるため耐久性が高く、特に乾燥収縮率が低く、凍結融解抵抗性を損なうこともない。また、本発明のセメント組成物の外観は、空気あばた、色むら、表層の剥離が少なく、本発明の一液型セメント用添加剤組成物は、コンクリートの美観を向上させる効果もある。このように、本発明のセメント用添加剤組成物は、収縮低減機能と減水機能を併せ持つだけでなく、コンクリートに添加することにより、乾燥収縮率、凍結融解抵抗性および美観に優れた、バランスの取れたコンクリート組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一液型セメント用添加剤組成物は、収縮低減成分(A成分)として、前記一般式(1)で示される化合物を含むことを特徴とする。係る化合物は、収縮低減効果に優れることはもちろん、水への溶解性が高く、更に、求められるコンクリートの強度やフレッシュコンクリートの性状に適応するように選択された様々な種類、分量の減水成分に対し、高濃度でも一液化が可能である。ここで言う高濃度とは、添加剤全体に含まれる減水成分と収縮低減成分の合計量が、高濃度であることを意味する。
一般式(1)中、A1Oは炭素数2のオキシアルキレン基を示す。炭素数3以上のオキシアルキレン基であると、水への溶解性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0014】
また、n1はオキシアルキレン基((ポリ)オキシエチレン基)の単位数を示す。すなわち、n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、2〜10のいずれかの自然数である。中でも6〜8のいずれかの自然数であることが好ましい。n1が2未満の場合、水への溶解性が不十分となり好ましくない。n1が10を超えると、収縮低減効果が弱まる上、得られる化合物が常温で固体となることから、低温時に析出する可能性があるため好ましくない。
本発明のA成分は、少なくとも1つの末端にアリル基を有する。アリル基を有さず代わりにアルキル基を用いた場合、減水成分との相溶性が低下し高濃度での一液化が困難となり、分離してしまうおそれがあるので、好ましくない。
一般式(1)で示される化合物の平均分子量は、通常、140〜550Mwであり、好ましくは140〜499Mwであり、特に好ましくは300〜400Mwである。
【0015】
本発明の一液型セメント用添加剤は、減水成分(B成分)として、以下の(I)、(II)または(III)から選ばれる1種以上の化合物からなるものを含むものである。
(I)は、α,β−不飽和モノカルボン酸のX重量部、不飽和結合を有するポリオキシアルキレンモノエステル系単量体のY重量部及び(メタ)アリルビスフェノール類のZ重量部を、X+Y+Z=100、15≦X≦35、62≦Y≦85、0≦Z≦10を満足する割合で共重合して得られる重合物である。
【0016】
α,β−不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びその塩が挙げられる。代表的な具体例としては、メタクリル酸を挙げることができる。共重合体を作成するに当たり、上記単量体の2種以上を併用することも可能である。
【0017】
不飽和結合を有するポリオキシアルキレンモノエステル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα,β−不飽和モノカルボン酸類とポリオキシアルキレンの2つあるOH基の片方とをエステル結合させたものや、このエステルの残存している遊離OH基をアルキル基でエーテル化させたものが挙げられる。代表的な具体例としては、メトキシポリオキシエチレンメタクリレート(平均EO鎖長=9)、メトキシポリオキシエチレンメタクリレート(平均EO鎖長=23)を挙げることができる。
【0018】
(メタ)アリルビスフェノール類とは、ビスフェノール類のOH基のオルト位をアリル(またはメタリル)置換したものであれば良い。代表的な具体例としては、下記一般式(4)で表される4,4´−ジヒドロキシジフェニルメタンのOH基のオルト位の2つをアリル置換した化合物を挙げることができる。
【化1】

【0019】
(I)の重合物は、α,β−不飽和モノカルボン酸をX重量部、不飽和結合を有するポリオキシアルキレンモノエステル系単量体をY重量部、(メタ)アリルビスフェノール類をZ重量部とした場合に、X+Y+Z=100、15≦X≦35、62≦Y≦85、0≦Z≦10を満足する割合で共重合して得られるものであることが必要である。Xの範囲が15よりも小さい又は35よりも大きい場合、あるいはYの範囲が85よりも大きい又は62よりも小さい場合には、得られる共重合物の親水性と電荷とのバランスが悪くなり良好な分散性が発揮できないおそれがある。Zの範囲が10よりも大きいと、かえって分散性能が低下してしまう。尚、添加効果を高める上でZは1以上であることが好ましい。
【0020】
重合反応の開始剤としてはラジカルを発生するものであれば特に選ばないが、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムといった過硫酸塩、t−ブチルハイドロパーオキシドのような水溶性の過酸化物を用いることが望ましい。重合開始剤の量としては、0.5〜5重量%対全モノマーとすることが好ましい。
【0021】
重合反応は通常、反応物の濃度を10〜60重量%、反応温度を60〜100℃、反応時間を0.5〜20時間とする。濃度10重量%以下で反応を行うと製品温度が低いために輸送コスト等産業的に不利になり、60重量%以上の温度で行うと粘度が高くなったり、重合熱の除去が困難になったり分子量の異常に高い部分が生成したりして、良好な重合ができない。重合反応時間を0.5時間以下とすると、重合しないモノマーが残存する可能性が高くなり、安定した製品が得られない。また、反応は全モノマーを仕込んだ後に、20時間以内に完結するので、これ以上の時間を費やすことは意味がない。
【0022】
重合時のpHとしては、α,β−不飽和モノカルボン酸として、塩型ではなくカルボン酸型のものを使用した場合にはカルボン酸の酸性で1.0〜2.5となる。このカルボン酸をアルカリで中和して望むpHにしてもよいが、不飽和結合を有するポリオキシアルキレンモノエステル系単量体はエステル結合を有しており、加水分解を抑制するためにはpH7以下が好ましい。このときのpH調節用のアルカリとしてはNaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、アンモニア、有機アミン等が挙げられるが、NaOHやCa(OH)2を使用することが価格等産業的には有利である。
【0023】
重合させるモノマーや重合開始剤の添加方法としては、反応開始時に一括して仕込んでおく方法や、数度に分割して添加する方法、反応中徐々に連続して添加する方法などで合成できるが、反応のコントロールを行う上では徐々に連続して添加する方法が好ましい。また、モノマーの反応性などを考慮して添加中にモノマーの構成比を変化させても良いし、ある種のモノマーのみを最初から仕込んでおき、その他のモノマーを徐々に連続して添加してもよい。
得られる共重合物の平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することが可能である。
【0024】
本発明における減水成分(I)の分子量は、数平均分子量で表すと通常3,000〜100,000の範囲にするのが好ましい。これよりも数平均分子量が低いと分散性能を示さない低分子部分が多くなりすぎ、良好な分散性能は得られない。また、これよりも数平均分子量が高すぎると重合物が凝集性を示すようになり、やはり良好な分散性が得られない。また、溶液粘度が高くなり産業上の使用が困難となる。
【0025】
このような重合物としては、特許第3585600号公報に記載のセメント分散剤、特に同公報中の実施例6の重合体、実施例8の重合体及び実施例9の重合体を利用することができる。
【0026】
一方、(II)は、前記一般式(3)で示される単位と、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩、及びマレイン酸エステルから選ばれる単位とを必須単量体とする共重合体である。
一般式(3)においてR1で示される炭素数2〜5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、3−メチル−3−ブテニル基等があり、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、好ましくはアリル基である。
【0027】
前記一般式(3)においてR2で示される炭素数1〜18の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、ステアリル基、イソステアリル基等の脂肪族飽和炭化水素基;アリル基、オレイル基等の脂肪族不飽和炭化水素基;シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等の脂環式飽和炭化水素基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式不飽和炭化水素基;フェニル基、ベンジル基、クレジル基、ブチルフェニル基、ジブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基、α−メチルベンジルフェニル基等の芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基がある。これらは1種または2種以上を混合して用いてもよく、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基であり、より好ましくはメチル基である。炭素数が18を超えると、本発明における、分散性が低下するため好ましくない。
【0028】
一般式(3)において、A2Oで示される炭素数2〜3のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基等であり、好ましくはオキシエチレン基がモル比で50モル%以上であり、さらに好ましくはオキシエチレン基がモル比で90モル%以上である。また、オキシアルキレン基が2種のときはブロック状またはランダム状のどのように結合していてもよい。
一般式(3)において、n2は炭素数2〜3のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、n2=1〜100である。好ましくはn2=20〜70、より好ましくはn2=30〜40である。
【0029】
(III)はオキシカルボン酸系化合物である。オキシカルボン酸系化合物としては、グルコン酸、グルコヘプトン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロパン酸(例えば乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸等)、ヒドロキシ酪酸(例えば2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸等)、ヒドロキシ吉草酸(例えば2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸等)、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、シトラマル酸等が挙げられ、オキシカルボン酸の塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩)が挙げられる。オキシカルボン酸またはその塩の中でも好ましいのはグルコン酸ナトリウムまたはグルコヘプトン酸ナトリウム、もしくは両者の混合物である。
【0030】
本発明においては、B成分として上述の(I)、(II)及び(III)から選ばれる1種、それぞれから選ばれる複数、更にはこれらを適宜組み合わせて用いることができる。コンクリートの配合を考慮し、複数を組み合わせて用いることが好ましい。好ましい組み合わせは、(I)と(II)のそれぞれから選ばれる1種或いは複数の組み合わせである。尚、相溶性に影響しない範囲で、上述の(I)、(II)及び(III)以外の減水成分と組み合わせて用いることもできる。このような公知の減水成分としては、例えばナフタリンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩、アミノスルホン酸ホルマリン高縮合物塩、メラミンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩、多糖、リグニンスルホン酸塩等を挙げることができる。
減水成分は、通常は減水成分が含有された水溶液の状態で使用される場合が多いが、減水成分のみからなる固体を用いることもできる。固体の場合はそのまま用いても良いし、水に溶解して水溶液として用いても良い。
【0031】
本発明の一液型セメント用添加剤組成物は、上述のA成分及びB成分を含有する。A成分は、通常、水分を含まない液体である。B成分は、通常、固体もしくは水に溶解させた水溶液である。本発明の一液型セメント用添加剤組成物を製造するには、B成分が固体であるときは、A成分にそのまま添加すればよい。この際、水を添加する必要はないが、必要に応じて、例えば相溶性が悪い場合には水を添加することもできる。この場合添加する水としては、上水道水、蒸留水、精製水又は工業用水を使用することができる。
また、B成分が水溶液である場合は、各成分が所望の濃度になるよう、A成分を添加し混合することで一液型セメント添加剤組成物を製造できる。
【0032】
A成分とB成分の混合比率は、得られるセメント組成物の収縮低減効果を加味した上で、減水性も損なわない程度に適宜調整することができる。その混合比率は、水セメント比をはじめとして、得られるセメント組成物に求められる収縮低減効果により種々調整することができる。従って本発明の一液型セメント用添加剤組成物は、あらゆるセメント組成物に対応可能である。
A成分とB成分の混合比率は、組成物を100重量部とした場合に、各成分を固形分に換算して、A成分15〜65重量部、B成分(2種以上の場合はそれらの合計)5〜35重量部の範囲となるように調整することができる。更に好ましくは、A成分30〜60重量部、B成分10〜25重量部である。また、B成分が水溶液の場合や必要に応じて添加される場合等の水を含めて、組成物100重量部に占める水の割合は{100−(A+B)}重量部、特に、30〜85重量部の範囲で調整することが好ましい。
一方、A成分とB成分の混合比率は、B成分(2種以上の場合はそれらの合計)の重量割合がA成分の重量割合の2倍未満となるよう調整することができる。特に、B成分が(II)の場合にはこの範囲とすることが好ましい。
【0033】
本発明の一液型セメント用添加剤組成物に制泡機能を付加する場合、空気連行成分の化合物を含めることができる。このような化合物としては、カルボン酸型(樹脂酸塩、脂肪酸塩)、硫酸エステル型(高級アルコール硫酸エステル塩)、スルホン酸型(アルキルベンゼンスルホン酸塩)、エーテル型・エステルエーテル型(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、消泡成分の化合物としてはポリエーテル系、脂肪酸・脂肪酸誘導体類、アルコール類の一つまたは二つ以上の制泡成分を一液型セメント用添加剤組成物に混合して使用しても良い。
【0034】
本発明の一液型セメント用添加剤組成物の製造方法については特に制限はなく、各成分を適宜混合して製造することができる。各成分の混合方法として、A成分以外を調製した後、A成分を混入する方法が望ましいが、それ以外の混合順序であっても特に問題はない。
【0035】
本発明の一液型セメント用添加剤組成物は、収縮低減機能と減水機能を併せ持つ。A成分及びB成分を高濃度に含有し、かつA成分及びB成分が経時安定性に優れ、分離沈殿することなく相溶性に優れ、水セメント比の適用範囲が広く、水セメント重量比で60%〜15%程度のコンクリートまで製造が可能である。従って、汎用性が高く、種々の用途のセメント組成物に添加して用いることが可能である。
【0036】
本発明のセメント組成物は、上述した本発明の一液型セメント用添加剤組成物を含有するものである。すなわち、セメント及び細骨材、水から成るモルタル、更に粗骨材から成るコンクリート等のセメント組成物に、上述した本発明の一液型セメント添加剤組成物を所定の割合で添加したものである。
【0037】
本発明のセメント組成物の製造に用いるセメントとして、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントが挙げられ、また、セメント組成物中の粉体としてシリカヒューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末、膨張材、その他の鉱物質微粉末等が挙げられる。細骨材については、川砂、山砂、海砂、砕砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材等が挙げられる。粗骨材については、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材等が挙げられる。水については、JIS A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水など)、回収水等を使用しても問題はない。
【0038】
併用する材料については本発明の効果を損なわない程度に、コンクリート組成物中には公知の硬化促進剤、凝結遅延剤、防錆剤、防水剤、防腐剤等を併用して使用しても問題ない。また、その他の混和剤の使用量についても通常と同量で問題はなく、特に考慮する必要はない。また、コンクリート組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法などについては通常のコンクリートと同様の方法で問題はなく、特に制限する必要はない。
【0039】
本発明のセメント組成物において、上述した一液型セメント用添加剤組成物の添加量は、0.5〜6.0重量%とすることができる。また、セメント組成物100容量部当たりのセメント容量が14容量%を超える場合は、1.0〜6.0重量%、好ましくは、1.0〜5.0重量%含有するセメント組成物が望ましい。
【0040】
本発明によると、減水成分が水溶液の場合、その水の部分をA成分で置き換えることができるため、添加剤中の減水成分の比率を下げずに収縮低減成分と一液化することができる。一例を挙げると、添加剤中のB成分の最終濃度よりも倍濃度の濃いB成分含有液とA成分とを、1:1(体積比)で混合することにより、添加剤中のB成分の最終濃度を保ったまま、添加剤中にA成分を添加することができる。
本発明の一液化セメント添加剤組成物は、収縮低減成分としてのA成分と減水成分としてのB成分を、それぞれを別に添加するよりも高濃度で、かつ一液としてセメント組成物に添加できる。また、本発明の一液化セメント添加剤組成物のセメント組成物への添加量も、同じ減水性能を期待するのであれば、従来の減水剤と同量とすればよい上に、さらに収縮低減効果をも付与することができる。
本発明におけるA成分は、あらゆる環境、温度において分離、沈殿等を起こすことなく、減水成分と顕著な相溶性を示す。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明の有効性を説明するが実施例のみに本発明は限定されるものではない。表中の値はA成分、B成分及び水の合計を100重量部とした場合の各々の重量部割合を示す。
【0042】
[試験区分1]相溶性確認試験
表1のA成分及びB成分を様々な割合で組み合わせて、相溶性試験を行った。表1中の「EO」はオキシエチレン基を示し、「PO」はオキシプロピレン基を示す。比較例A成分中のオキシエチレン基、オキシプロピレン基はランダム付加のものもあり、表1中では/で表している。これらの成分を表2に示される割合で混合して実施例1〜10、比較例1〜47の組成物を調製した。各組成物の相溶性の試験結果を表3〜表6に示す。混合は、B成分及び水を混合し攪拌した後、A成分を最後に混合し再度攪拌する順序とした。表2のA、B成分の割合は、各成分を2つ以上用いる場合にはそれぞれを合計した割合を示す。混合種類のIはAE減水剤、IIは高性能AE減水剤に該当する。相溶性の試験は以下のように行った。すなわち、混合後13週間目の経時安定性を、環境温度5度及び20度、40度の条件下で確認した。そして、浮遊物、沈殿物、分離等を生じないものを合格(○)とし、それ以外のものを不合格(×)とした。
【0043】
尚、B成分として用いた特許第3585600号実施例6、8、および9重合物(表1参照)は、特許第3585600号公報に記載の通り下記の手順で得た。
【0044】
特許第3585600号実施例6重合物の調製条件は下記の通りである。攪拌装置、還流装置、及び滴下装置を備えた反応容器に、(C)一般式(4)で示される4,4´−ジヒドロキシフェニルメタンのOH基のオルト位のうちの2つをアリル置換した化合物1重量部、及び水150重量部を仕込んだ。得られた化合物を80℃に加熱攪拌し懸濁状態とした。このものに(A)メタクリル酸25重量部、(B)メトキシポリオキシエチレンメタクリレート(平均EO鎖長=9)74重量部、(重合開始剤)過硫酸カリウム2重量部、および水250重量部の混合溶液を2時間かけて添加した。その後、NaOH水溶液で中和し、重合物の水懸濁液を得た(特許第3585600号実施例6重合物)。
【0045】
また、同実施例8重合物は、(A)33重量部、(B)64重量部、(C)3重量部とし、(重合開始剤)を過硫酸アンモニウム3重量部に換えたほかは上記の同実施例6重合部と同様にして調製した。
【0046】
さらに、同実施例9重合物は、(A)20重量部、(C)2重量部、(重合開始剤)2重量部とし、(B)をメトキシポリオキシエチレンメタクリレート(平均EO鎖長=23)78重量部に換えたほかは、上記の同実施例6重合体と同様にして調製した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
[試験区分2]コンクリート物性確認試験
試験区分1において環境温度5度、20度及び40度の相溶性が合格になったもののうち、実施例1〜8、比較例1,5,6,20,24,25及び47についてコンクリート試験を行った。表7に示すコンクリート調合条件で、普通ポルトランドセメント3種等量混合(密度=3.16、比表面積=3300cm2/g)、細骨材(掛川産山砂、密度=2.58)、粗骨材(青梅産硬質砂岩砕石、密度=2.65)を使用してコンクリートを混練した。尚、表7中のWは水の単位量を示し、Cはセメントの単位量を示す。W/Cは水セメント重量比を示す。sはコンクリート中の細骨材の単位容積を示し、aはコンクリート中の細骨材と粗骨材をあわせた単位容積を示す。s/aは全骨材中の細骨材(砂)の占める容積比率を示す。目標スランプを18±1cmとし、目標スランプを得るようにセメント用組成物添加剤の使用量を増減した。空気量に関しては目標空気量を4.5±0.5%に設定し、目標空気量となるよう(株)フローリック社製のAE−400(主成分ロジン系界面活性剤)を使用し調整した。表8に実施例1〜4並びに比較例1,5及び6のコンクリート物性を示す。表9に実施例5〜8、比較例20,24,25及び47のコンクリート物性を示す。表8及び表9における項目として、添加率はセメント重量あたりの添加率で示した。スランプ値(SL)はJIS A 1101に、空気量(Air)はJIS A 1128に準拠し、それぞれ測定を行った。乾燥収縮率の測定はJIS A 1129に準拠した。すなわち、打設後直ちに10×10×40cmの供試体を作製し、24時間後に脱形を行い、刻線を引いた後、20℃の水中で1週間養生を行った。その後、20℃、R.H.60%の恒温恒湿室で保存し、乾燥収縮率の測定を行った。尚、表8及び表9中の乾燥収縮率(表8,9中*印で示した。)は乾燥材齢13週時の値を示す。
なお、乾燥収縮率は、値が小さいほどセメント組成物の収縮が少ない。すなわち、乾燥収縮率の値が小さいほど、収縮低減効果を有する。
【0054】
耐久性指数は、JIS A 1148の水中凍結A法に準拠し測定を行って得た動弾性係数を基に算出した。耐久性指数は凍結融解抵抗性の指標となるものである。
すなわち、断片の1辺の長さが100mm、長さが400mmの供試体を試験槽に入れ、前面が空気または水で覆われるようにした。この状態で供試体に凍結融解サイクル(原則として供試体の中心部温度が5〜−18度→−18〜5℃、1サイクルあたり3〜4時間)を与え、任意のサイクル後のたわみ振動の一次共鳴振動数(Hz)を測定し、相対動弾性係数を算出した。耐久性指数(DF)は次式から算出される。
【0055】
(式) DF=(P×N)/M
上記式中Pは相対動弾性係数、Nは相対動弾性係数が60%になるサイクル、または300サイクルの何れか小さいもの、Mは300サイクルである。一般に、耐久性指数が60%以上のものは凍結融解抵抗性に優れるとされる。
【0056】
外観の評価は以下のようにして行った。Φ15×30cmのセメント組成物(供試体)を作製し、24時間後に脱形を行い、供試体側面乾燥後に側面360度の外観について、空気あばた、色むら、表層の剥離状況を目視で観察した。判定は良(二重丸)、可(○)、不可(×)とし、良は問題となる空気あばた、色むら、表層の剥離が見当たらないもの、可は供試体の一部分に問題となる空気あばた、色むら、表層の剥離が見受けられたもの、不可は供試体の全面に問題となる空気あばた、色むら、表層の剥離が見受けられたものとした。
【0057】
耐久性指数及び外観評価の結果を表8及び表9にあわせて示す。尚、比較例5〜6、比較例24〜25については、収縮低減効果がほとんどないため、耐久性指数及び外観評価を行わなかった。
【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
【表9】

【0061】
本実施例の結果から、本発明の一液型セメント用添加剤組成物は、収縮低減成分と減水成分を高濃度で一液化できることはもちろん、広い温度範囲において相溶性に優れることが明らかである。また、かかる組成物は、実際にコンクリートに添加した際に、少量の添加でも減水効果、及び乾燥収縮の顕著な低減効果を発揮させ、凍結融解抵抗性も付与し、優れたセメント組成物を提供できる。さらに、かかる組成物は、コンクリートに添加しても、空気あばた、色むら、表層の剥離が少なく、美観に優れる特徴を有し、優れたセメント組成物を提供することができることが明らかである。
【0062】
以上説明した本発明によれば、高濃度で種々の減水成分と収縮低減成分を一液化しても相溶性を保つ一液型セメント用添加剤が提供される。すなわち、使用領域に適応した減水性を発揮すると共に得られるセメント組成物の乾燥収縮を低減する一液型セメント用添加剤組成物及びセメント組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A成分及びB成分を含有することを特徴とする一液型セメント用添加剤組成物。
A成分:下記一般式(1)で示される化合物。
CH2=CH−CH2−O−(A1O)n1−H・・・(1)
(一般式(1)中、A1Oは炭素数2のオキシアルキレン基を示し、n1はオキシアルキレン基の平均付加モル数でn1=2〜10である。)
B成分:下記(I)、(II)、及び(III)から選ばれる1種以上の化合物。
(I)α,β−不飽和モノカルボン酸のX重量部、不飽和結合を有するポリオキシアルキレンモノエステル系単量体のY重量部及び(メタ)アリルビスフェノール類のZ重量部を、下記式(2)を満足する割合で共重合して得られる重合物。
X+Y+Z=100、15≦X≦35、62≦Y≦85、0≦Z≦10 ・・・(2)
(II)下記一般式(3)で示される単位と、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩、マレイン酸エステルから選ばれる単位とを必須単量体とする共重合体。
1O(A2O)n22 ・・・(3)
(一般式(3)中、R1は炭素数2〜5のアルケニル基、R2は水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基、A2Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、n2は炭素数2〜3のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、n2=1〜100を満たす。
(III)オキシカルボン酸系化合物。
【請求項2】
前記一般式(1)中、n1=6〜8であることを特徴とする請求項1に記載の一液型セメント用添加剤組成物。
【請求項3】
前記A成分とB成分の割合が、A成分が15〜65重量部、B成分が5〜35重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の一液型セメント用添加剤組成物。
【請求項4】
前記B成分の重量割合が、A成分の重量割合の2倍未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の一液型セメント用添加剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の一液型セメント用添加剤組成物を含有するセメント組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の一液型セメント用添加剤組成物を、0.5〜6.0重量%含有する請求項5に記載のセメント組成物。
【請求項7】
前記B成分を含有する水溶液に前記A成分を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の一液型セメント用添加剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−50255(P2008−50255A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188521(P2007−188521)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(502368059)日本製紙ケミカル株式会社 (86)
【出願人】(503044237)株式会社フローリック (9)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】