説明

取っ手返し具

【課題】搬送されるワークの取っ手の向きを選択的に変え得る取っ手返し具を提供する。
【解決手段】取っ手返し具130は、搬送されるワーク140に設けられた取っ手150であって、ワークの搬送方向側に倒れた第1の向きとワークの搬送方向と反対方向側に倒れた第2の向きとの間で、2つの向きの中間の起立状態を経由して回動自在な取っ手を吸着するための磁石132と、磁石をワークの搬送経路の上に揺動自在に吊り下げるための吊り下げ部材131と、を有し、搬送されてきたワークにおける取っ手が第1の向きに倒れているとき、取っ手を磁石によって吸着し、ワークの搬送によってワークとの相対位置を変えながら、吊り下げ部材によって取っ手を引っ張って第1の向きから第2の向きに取っ手を返し、取っ手が第2の向きに倒れているとき取っ手の向きを維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに設けられた取っ手を返して向きを変える取っ手返し具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤ等の搬送装置が搬送してきたワークを積み上げたり、搬送されたワークを他へ移し変えたりするために、ワークを吊り上げる装置がある。例えば特許文献1に記載の技術は、コンベヤが搬送してきたドラム缶を吸盤によって吸着して吊り上げており、取っ手等のない平滑な天面に吸盤を吸着させている。
【0003】
ワークは、前述のようなドラム缶の他、様々なものがあり、作業者自身の持ち運びを考慮して取っ手を設けた缶がある。取っ手は、積み重ねるとき等に邪魔にならないよう、通常は倒れており、作業者が持ち運ぶときに回動させて起立した状態にするのが一般的である。
【特許文献1】特開2000−128477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような取っ手がワークに設けられていると、倒れた取っ手の向きによっては、ワークと吸盤との間に取っ手が挟まって両者の間に空気が入り、吸盤の吸着力が低下してワークが脱落する虞がある。本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、搬送されるワークの取っ手の向きを選択的に変え得る取っ手返し具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の取っ手返し具は、搬送されるワークに設けられた取っ手であって、前記ワークの搬送方向側に倒れた第1の向きと前記ワークの搬送方向と反対方向側に倒れた第2の向きとの間で、2つの前記向きの中間の起立状態を経由して回動自在な前記取っ手を吸着するための磁石と、前記磁石を前記ワークの搬送経路の上に揺動自在に吊り下げるための吊り下げ部材と、を有し、搬送されてきた前記ワークにおける前記取っ手が前記第1の向きに倒れているとき、前記取っ手を前記磁石によって吸着し、前記ワークの搬送によって前記ワークとの相対位置を変えながら、前記吊り下げ部材によって前記取っ手を引っ張って前記第1の向きから前記第2の向きに前記取っ手を返し、前記取っ手が前記第2の向きに倒れているとき前記取っ手の向きを維持する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の取っ手返し具は、搬送されるワークにおける取っ手の向きを選択的に変えられる。このため、搬送されてきたワークを吸盤によって吸着する上述のような装置に適用することによって、吸盤とワークとの間に取っ手が挟まるのを防ぐことができ、取っ手の向きに起因するワークの脱落を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0008】
図1は搬送システムの概略図、図2(A)は図1の矢印2からの矢視図、図2(B)および図2(C)は吊り下げ部材と架台との接続の他の例を示す図である。図3は18リットル缶を示す斜視図、図4〜図10は取っ手返し具の動作を説明するための搬送システムの部分拡大図、図11は吸盤によって18リットル缶を吸着するときの搬送システムの概略図、図12は18リットル缶を吊り上げたときの搬送システムの概略図である。
【0009】
図1において概説すれば、製品等の内容液を充填した18リットル缶140(ワーク)を搬送する搬送システム100は、18リットル缶140を吊り上げて搬送する吊り上げ搬送機110と、吊り上げ搬送機110まで18リットル缶140を搬送するローラコンベヤ120と、を有する。搬送システム100はまた、18リットル缶140に設けられた取っ手150の向きを変えるための取っ手返し具130を有する。
【0010】
吊り上げ搬送機110は、18リットル缶140を真空吸着する吸盤114と、18リットル缶140を上昇させたり降下させたりするためのワイヤー112と、吸盤114やワイヤー112等を支持する架台116と、を有する。ワイヤー112は、不図示のモータによって18リットル缶140を上昇させたり降下させたりする。ローラコンベヤ120は、18リットル缶140を載せる複数のローラ122と、ローラ122を回転させる駆動部124と、を有する。
【0011】
取っ手返し具130は、取っ手150を吸着するための磁石132と、磁石132を18リットル缶140の搬送経路上に揺動自在に吊り下げるための吊り下げ部材131と、を有する。磁石132は吊り下げ部材131の先端に接続している。吊り下げ部材131と磁石132との接続は、接着剤の他、ボルトおよびナットを利用した接続等、適宜設計できる。
【0012】
吊り下げ部材131は18リットル缶140の搬送方向に向かって曲がっている。磁石132は直方体形状を有する。取っ手150に接触させる磁石132の面は、取っ手150を吸着できるのであればいずれの面であってもよいが、広い面の方がより確実に取っ手150を吸着できるため好ましい。
【0013】
図2(A)に示すように、吊り下げ部材131および架台116は、これらを接続させる接続部材160を介して互いに接続している。吊り下げ部材131は棒状の部材であり、略直角に曲がったL字形状を有する。これと異なり、吊り下げ部材131は略T字形状を有してもよい。さらに、図2(B)および図2(C)に示すように、吊り下げ部材131の上端が環状で、支持材135を用いて架台116へ固定する方法もある。
【0014】
接続部材160は、吊り下げ部材131において略直交する直交部133、134のうちの一方133を回動自在に支持している。直交部133を回転軸として、吊り下げ部材131は揺動する。接続部材160は、ネジ162によって架台116に接続している。
【0015】
図3に示すように、18リットル缶140は、内容液を出し入れするための口142を天面に有する。取っ手150は、天面に回動自在に取り付けられている。取っ手150は、磁石132に吸着する金属からなる環状部材152と、作業者が握る樹脂製または金属製の把持部154と、を有する。
【0016】
搬送システム100の動作を説明する。
【0017】
図4に示すように、まず作業者は18リットル缶140をローラコンベヤ120に載せる。このとき取っ手150は、18リットル缶140の搬送方向側に倒れた第1の向きと18リットル缶140の搬送方向と反対方向側に倒れた第2の向きとの間で、2つの向きの中間の起立状態を経由して回動自在である。作業者が取っ手150から手を離すと、取っ手150は自重によって第1の向きまたは第2の向きに倒れる。
【0018】
図5に示すように18リットル缶140は移動して取っ手返し具130に達し、磁石132に接触する。吊り下げ部材131は、18リットル缶140の移動にともなって揺動するため18リットル缶140の移動を妨げず、18リットル缶140は円滑に移動できる。18リットル缶140の移動にともない、磁石132は18リットル缶140の天面に接しつつ18リットル缶140との相対位置を変え、取っ手150に達する。磁石132は、18リットル缶140の搬送方向に対して斜めに傾いた面で取っ手150に当たる。
【0019】
取っ手150が第1の向きに倒れているとき、図6〜図8に示すように、取っ手返し具130は、取っ手150を磁石132によって吸着し、18リットル缶140の搬送によって18リットル缶140との相対位置を変えながら、吊り下げ部材131によって取っ手150を引っ張って第1の向きから第2の向きに取っ手150を返す。そして図9に示すように、18リットル缶140が取っ手返し具130から離隔するのにともなって、磁石132は取っ手150から外れる。
【0020】
一方、図10に示すように取っ手150が第2の向きに倒れているとき、取っ手返し具130は、18リットル缶140の搬送にともなって、第2の向きに倒れたままの取っ手150に接しながら18リットル缶140との相対位置を変える。すなわち、取っ手返し具130は、取っ手150が第2の向きに倒れているとき、取っ手150の向きを維持する。
【0021】
以上の動作によって、図11に示すように取っ手返し具130は搬送される複数の18リットル缶140における取っ手150の向きを第2の向きに揃え、吸盤114を吸着させるための吸着面144から取っ手150を退避させる。吸着面144は、取っ手150に対して口142と反対側に位置する。
【0022】
本実施形態では、吸盤114を吸着させるための、ローラコンベヤ120における吸着位置に5つの18リットル缶140が溜まると、吊り上げ搬送機110が、吸盤114を18リットル缶140に向かって下降させ、18リットル缶140に吸盤114を吸着させる。
【0023】
その後、図12に示すように吊り上げ搬送機110は吸盤114を上昇させて18リットル缶140を吊り上げ、搬出用のパレット(不図示)に18リットル缶140を移す。
【0024】
効果について述べる。
【0025】
取っ手返し具130は、搬送される18リットル缶140における、取っ手150の向きを選択的に変えることができる。このため取っ手返し具130は、吸着面144から取っ手150を退避させて吸盤114と18リットル缶140との間に取っ手150が挟まるのを防ぐことができ、取っ手150の向きに起因するワークの脱落を防止できる。
【0026】
なお、吸着面144が取っ手150に対して口142と反対側の位置にあり、前工程の充填作業において18リットル缶140の向きが揃うため、吸盤114が口142にかかって吸着が妨げられることは、事前に防止されている。
【0027】
吊り下げ部材131が18リットル缶140の搬送方向に向かって曲がっており、取っ手返し具130は搬送されてきた18リットル缶140に対して斜めに当たるため、吊り下げ部材131が真っ直ぐ垂れ下がっている場合に比べ、当たった際に18リットル缶140から加わる力が小さい。このため当たった際の取っ手返し具130の跳ねが抑制され、移動する取っ手150を吸着する上での確実性が増す。
【0028】
また、吊り下げ部材131が18リットル缶140の搬送方向に向かって曲がり、磁石132は18リットル缶140の搬送方向に対して斜めに傾いた面で取っ手150に当たるため、取っ手150を磁石132の面に沿って移動させることができ、この間に磁石132は取っ手150を吸着すればよいため、移動する取っ手150を吸着する上での確実性が増す。
【0029】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。例えば磁石132の形状は直方体形状に限らない。すなわち磁石132は、搬送されてきたワークの取っ手を吸着し、取っ手を返した後に取っ手から離隔できるものであればよく、例えば扁平形状等、他の形状であってもよい。また、吊り上げ搬送機110までワークを搬送する搬送機は、ローラコンベヤ120に限定されず、ベルトコンベヤ等の公知技術を用いることができる。取っ手返し具130の設置箇所は架台116への設置だけでなく、ローラコンベヤ120から吊り上げ搬送機110の間であれば単独で設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】搬送システムの概略図である。
【図2】(A)は図1の矢印2からの矢視図、(B)および(C)は吊り下げ部材と架台との接続の他の例を示す図である。
【図3】18リットル缶を示す斜視図である。
【図4】取っ手返し具の動作を説明するための搬送システムの部分拡大図である。
【図5】取っ手返し具の動作を説明するための搬送システムの部分拡大図である。
【図6】取っ手返し具の動作を説明するための搬送システムの部分拡大図である。
【図7】取っ手返し具の動作を説明するための搬送システムの部分拡大図である。
【図8】取っ手返し具の動作を説明するための搬送システムの部分拡大図である。
【図9】取っ手返し具の動作を説明するための搬送システムの部分拡大図である。
【図10】取っ手返し具の動作を説明するための搬送システムの部分拡大図である。
【図11】吸盤によって18リットル缶を吸着するときの搬送システムの概略図である。
【図12】18リットル缶を吊り上げたときの搬送システムの概略図である。
【符号の説明】
【0031】
100 搬送システム、
110 吊り上げ搬送機、
112 ワイヤー、
114 吸盤、
116 架台、
120 ローラコンベヤ、
122 ローラ、
124 駆動部、
130 取っ手返し具、
131 吊り下げ部材、
132 磁石、
140 18リットル缶(ワーク)、
150 取っ手。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるワークに設けられた取っ手であって、前記ワークの搬送方向側に倒れた第1の向きと前記ワークの搬送方向と反対方向側に倒れた第2の向きとの間で、2つの前記向きの中間の起立状態を経由して回動自在な前記取っ手を吸着するための磁石と、
前記磁石を前記ワークの搬送経路の上に揺動自在に吊り下げるための吊り下げ部材と、を有し、
搬送されてきた前記ワークにおける前記取っ手が前記第1の向きに倒れているとき、前記取っ手を前記磁石によって吸着し、前記ワークの搬送によって前記ワークとの相対位置を変えながら、前記吊り下げ部材によって前記取っ手を引っ張って前記第1の向きから前記第2の向きに前記取っ手を返し、前記取っ手が前記第2の向きに倒れているとき前記取っ手の向きを維持する取っ手返し具。
【請求項2】
前記吊り下げ部材は、前記ワークの搬送方向に向かって曲がっている請求項1に記載の取っ手返し具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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