説明

取り扱い易いシート状表示媒体

【課題】表裏に、硬質の樹脂シートを使用したシート状表示媒体であっても、平坦な机などに置いた場合に、手で容易に撓ませて取ることができる製品を提供する。
【解決手段】表示機能を有する表層シート、中間層及び外層シート1を積層してなるシート状表示媒体において、外層シートに、複数のカット線5を設け、かつそのカット線の深さを外層シートの厚さの50%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を増した、取り扱い易いシート状表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式ICカードやタグとしては、例えば特許文献1にあるように、ICチップを実装したインレットシートを含む中間層の両面に樹脂シートからなる外層を設けた、多層構造からなるものがよく知られている。しかし、一般的に、中間層も外層も硬い材料から構成されるため、机などの平坦な表面に置くと、カードやタグが曲がらないため、手で容易に取れないという問題があった。
【0003】
そこで、硬い材料の表面をカットすることを試みたが、カットの深さが浅いと、十分な柔軟性を得ることはできず、またカットの深さが深いと、柔軟性は得られるが、曲げの繰り返しにより、破断してしまう恐れがあった。
そこで、このようなカードやタグにおいて、中間層と外層に柔軟性ある材料を使用して柔軟性ある製品を製造することが考えられるが、この場合、材料の線膨張率の違いにより基材の収縮により反りが発生する場合がある。また、その反りを抑制するために、外層を、基材と同じ材質又は硬い材料で構成すると、カードやタグが硬くなってしまい、机などの平坦な表面に置くと、カードやタグが曲がらないため、手で容易に取れないという問題があった。
特に、表示機能を有するカードやタグ(例えば、ロイコ染料を使用したリライト可能な表示層を持つカードやタグ)に、非接触IC(RFID用インレイ)の機能を付加させなければならない場合など、カードやタグの厚さが必要になり、このような問題は、深刻となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−311225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表裏に、硬質の樹脂シートを使用したカードやタグなどのシート状表示媒体であっても、平坦な机などに置いた場合に、手で容易にとれるものとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、表示機能を有する(例えば、表面にリライト可能な表示層をもつ)表層シート、中間層(ICチップを実装したインレットシートを含んでもよい)及び外層シートを順次積層してなるカードやタグなどのシート状表示媒体において、外層シート表面にカット線を設けることにより、カードやタグなどの表示媒体の少なくとも一部を折り曲げ可能とすることにより、上記課題を解決した。
【0007】
即ち、本発明の表示媒体は、表示機能を有する表層シート、中間層及び外層シートを積層してなるカードやタグなどであって、前記外層シートに、複数のカット線を設けたものであり、前記カット線の深さが前記外層シートの厚さの50%以上であること特徴とする。なお、カット線は、シート全体に設けても良いが、表示媒体を取り上げる際に指が触れるシートの角や縁などに部分的に設けても良い。
【0008】
カット線は、一定間隔で、平行に設けられるのが好ましく、カードやタグなどの一辺に対して平行に、又は一定角度(25〜75°)をなすように平行に設けられるのがよく、格子状に設けられてもよい。
【0009】
なお、カット線の間隔は3〜30mm程度であればよく、3〜20mm程度、特に5〜15mm程度であるのが好ましい。カット線の間隔が狭すぎると、外層シートの強度及び安定性にも悪影響を及ぼすことがある。逆にカット線の間隔が広すぎると、カードやタグなどの表示媒体の柔軟性に欠け、また、カット線が存在する部分に応力が集中するので、中間層や表層シートの強度に害を与えることがある。
【0010】
カット線の深さは、外層シートの厚さの50%以上、特に70%以上であるのが好ましく、外層シートを越えて、外層シートを中間層に接着する接着剤層に及ぶ深さとしてもよい。ただし、カット線の深さが中間層に及ぶと、カードやタグなどの表示媒体の曲げの繰り返しにより、カードやタグなどの表示媒体が破断する危険性があり、またICチップを実装したインレットシートにカット線が及ぶと、回路の断線を起こす危険性があるので、カット線は中間層に及ばないようにするのが好ましい。
【0011】
本発明のカードやタグなどの表示媒体の表層シート、中間層及び外層シートに使用される樹脂の種類は限定されるものではないが、表層シート及び外層シートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)又はポリ塩化ビニル(PVC)などの硬質シートから構成され、中間層は柔軟性に富んだエラストマーから構成されるのが好ましく、例えば、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、スチレン系などのエラストマーがいずれも使用可能である。また、中間層を外側シートより厚く形成するのがよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカードやタグなどのシート状表示媒体は、その外層表面に、適度の深さと間隔で、カット線を有するため、カット線が存在する箇所で、カードやタグなどを曲げて持ち上げやすく、平滑な板上にそれらを置いても、手で容易に取り上げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一例の断面図である。
【図2】本発明の一例の断面図である。
【図3】本発明の一例における外層の平面図である。
【図4】本発明における外層の平面図である。
【図5】本発明の製品の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について、カードを例として図に示し、更に詳しく説明する。
本発明の製品は、例えば、図1又は図2に例示されるようなカードXの外層シート1の表面に、図3や図4のように、カット線5を設けたものである。カードXは、表示層4を有する表層シート3と中間層2と外側シート1を有するものであり、中間層2には、ICチップを実装したインレットシート6が含まれることがある。
【0015】
図3では、外層シート1の全面にカット線5が格子状に設けられているが、このカット線5は、図4のように、外層シート1の外周に面する箇所に部分的に設けられてもよい。
図3の例では、カードは、どの辺からも柔軟に曲げて取り扱うことができるが、図4のように部分的にカット線5を設けた場合には、該カット線5が存在する箇所(図4の矢印側)からカードXを取り上げることにより、取り扱いが容易になる。
なお、部分的にカット線5を設ける場合、外層シート1の一辺側に設ける際には、図4の(C)(D)のように、その辺に平行となるように、該辺の全長の長さに設けるのが好ましく、該カット線5は、格子状に形成されてもよい。また、角部のみに設ける場合には、図4の(A)(B)のように、格子状に設けるか、又は該角を頂点とする三角形を形成するように左右の辺に対して一定角度(25〜75°)をなすように斜めに設けるのが好ましい。
【0016】
かかる本発明では、カット線5の存在により、図5のようにカードXを折り曲げて取り扱うことができるものであるが、カット線5を、図5(A)(B)のように切り込み角度に変化をもたせることにより、カードXの撓みの程度を調節できる。即ち、切り込み角度を(B)のように大きくすることにより、カードXを大きく撓ませて取り扱うことができることとなる。切り込み角度は、カット線5を設けるカッターの刃先の角度により調整可能であるが、例えば、切り込み角度αは、15〜30°程度とするのが好ましい。
【0017】
[実施例1]
下記層構造(1)を有する85mm×200mmのカードX(図1参照)を準備し、その外層シート1に、図3に示すように、5mm×10mmの格子状にカット線5を施した。なお、カット線5の深さは、外層シート1を超え、その上の接着剤層7に収まるものとした。
層構造(1)
表面に表示層を設けた表層シート(PET)
接着剤層(エポキシ樹脂)
中間層(軟質ポリオレフィンシート)
接着剤層(エポキシ樹脂)
外層シート(PET)
カット線を設けていないカードは、表示層を上にして、平滑な机の上に置いた場合、机の上に吸い付いたようになり、取り上げるのが困難であったが、カット線5を設けた本実施例の製品は、同様に机の上に置いた場合、カット線5の存在によって、柔軟にカードを撓ませて容易に机から取り上げることができた。
【0018】
[実施例2]
実施例1の層構造(1)の中間層2と外層シート1の間にRFID用インレットシートを搭載した層構造(2)を有する85mm×200mmのカードX(図2参照)を準備し、その外層シートに、図1に示すように、5mm×10mmの格子状にカットを施した。なお、カットの深さは、外層を超え、その上の接着剤層に収まるものとした。
この場合、カットの深さがインレットシートに達してしまうと、回路の破断が生じる可能性があるので、注意を要する。
この例でも、実施例1同様、どの角度からも、容易に、柔軟に撓ませて机などからカードXを取り上げることができた。
【0019】
なお、実施例2のカードXで、カット線5を5mm間隔で、図4の(A)(B)(C)(D)のように外層シート1の端部に設けたものも製造した。いずれも、図4に示されるように矢印方向から、容易に撓ませて取り上げることができる、扱い易いカードとなった。
【0020】
別途、実施例2のカードXで、カット線5を長手方向及び短手方向ともに20mm間隔で行った場合には、カットをしなかった場合に比して柔軟性は増すが、図3のように、長手方向に10mm間隔、短手方向に5mm間隔でカット線を設けた場合に比べて、若干柔軟性に劣るものとなった。
【符号の説明】
【0021】
1 外層シート
2 中間層
3 表面シート
4 表示層
5 カット線
6 インレットシート
7 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示層を備えた表面シート、中間層及び外層シートを積層してなるものであり、前記外層シートに、複数のカット線を設けたものであり、該カット線の深さが前記外層シートの厚さの50%以上であることを特徴とするシート状表示媒体。
【請求項2】
前記表面シート、中間層及び外層シートがそれぞれ接着剤で接合されていることを特徴とする請求項1のシート状表示媒体。
【請求項3】
前記表面シート及び外層シートがポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル及びABSからなる群から選ばれる樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1又は2のシート状表示媒体。
【請求項4】
前記中間層がエラストマーからなることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項のシート状表示媒体。
【請求項5】
前記中間層が前記外層シートより厚く形成されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項のシート状表示媒体。
【請求項6】
前記カット線の深さが、前記外層シートと前記中間層の接着剤層で終わっていることを特徴とする請求項2〜5いずれ1項のシート状表示媒体。
【請求項7】
前記外層シートと前記中間層の間にICチップを実装したインレットシートが存在することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項のシート状表示媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−191350(P2010−191350A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37791(P2009−37791)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(593144736)和多田印刷株式会社 (2)
【Fターム(参考)】