説明

取付ブラケットおよびシリンダガード装置

【課題】外径の異なる複数の円筒部材の外周面に沿って共通のブラケット本体を装着できる取付ブラケットを提供する。
【解決手段】取付ブラケット31は、直径の異なる2種類のブームシリンダ21A,21Bの外周面に沿って装着し、被取付部材を取付けるブラケット本体36を備えている。このブラケット本体36は、ブームシリンダ21Aの外周面と嵌合する一の円弧状凹部37と、この一の円弧状凹部37の内側に、より小径に形成した他の円弧状凹部38とを備えている。この円弧状凹部38にブームシリンダ21Aより小径のブームシリンダ21Bの外周面を嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒部材の外周面に被取付部材を取付けるための取付ブラケットおよびシリンダガード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダの外周面に、油圧シリンダのロッド部を土砂などから保護するためのシリンダロッドカバーを、ロッド部の伸縮にともなって摺動できるように取付けたシリンダガード装置がある。このシリンダガード装置は、油圧シリンダの外周面に沿って、2つ割り構造のクランプにより取付ブラケットを装着し、この取付ブラケットを介して、シリンダロッドカバーを移動自在に支持するガイド体を取付けている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
油圧シリンダの外周面に沿って、ブロック状の取付ブラケットを溶接する場合は、密着させる必要があるので、図6に示されるように油圧シリンダの径に応じた別々の取付ブラケットを用いる必要がある。例えば、図6(a)に示されるように比較的大径の油圧シリンダ1の外周面に沿って装着される取付ブラケット2が有する円弧状凹部3より、図6(b)に示されるように比較的小径の油圧シリンダ4の外周面に沿って装着される取付ブラケット5が有する円弧状凹部6は、より小径に形成されている。
【特許文献1】特開2000−212994号公報(第2−3頁、図2−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの油圧シリンダ1,4のような円筒部材の外径が異なると、円筒部材の外周面に沿って取付ブラケット2,5を密着させるには、取付ブラケット2,5の円弧状凹部3,6の曲率を異ならせる必要があるので、取付ブラケットを共通化することができず、円筒部材の外径に応じて部品の種類が増加し、コストがかかる問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、外径の異なる複数の円筒部材の外周面に沿って共通のブラケット本体を装着できる取付ブラケットを提供するとともに、この取付ブラケットを用いて外径の異なる複数の流体圧シリンダに共通のシリンダロッドカバーを装着できるシリンダガード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、円筒部材の外周面に沿って装着されて被取付部材を取付けるブラケット本体と、このブラケット本体に設けられ、一の円筒部材の外周面と嵌合する一の円弧状凹部と、一の円弧状凹部の内側に設けられ、一の円筒部材より小径の他の円筒部材の外周面と嵌合する、一の円弧状凹部より小径に形成された他の円弧状凹部とを具備した取付ブラケットである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、流体圧シリンダの外周面に沿って装着された請求項1記載の取付ブラケットと、この取付ブラケットを介して取付けられたガイド体と、このガイド体により摺動自在に案内されて流体圧シリンダのロッド部の伸縮にともなって移動しながらロッド部を保護するシリンダロッドカバーとを具備したシリンダガード装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載された発明によれば、一の円筒部材の外周面と嵌合する一の円弧状凹部と、一の円筒部材より小径の他の円筒部材の外周面と嵌合する他の円弧状凹部とを、1つのブラケット本体に設けたので、外径の異なる複数の円筒部材の外周面に沿って共通のブラケット本体を装着できる取付ブラケットを提供できる。
【0009】
請求項2に記載された発明によれば、流体圧シリンダの外周面に沿って装着された請求項1記載の取付ブラケットを介して取付けられたガイド体により、流体圧シリンダのロッド部の伸縮にともなって移動しながらロッド部を保護するシリンダロッドカバーを摺動自在に案内するので、上記の取付ブラケットを用いて外径の異なる複数の流体圧シリンダに共通のシリンダロッドカバーを装着できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図3は、作業機械としての超小旋回型の油圧ショベル11すなわち超小旋回機を示し、下部走行体12に対し上部旋回体13が、下部走行体12の平面上で旋回できるようにコンパクトに設けられているとともに、上部旋回体13上に搭載されたフロント作業装置14を構成するブーム15と、このブーム15に連結されたアーム16と、このアーム16に連結されたバケット17が、下部走行体12上で小径旋回できるように、ブーム15の下部が後傾可能に軸支され、ブーム15の上部がオフセット可能に設けられている。
【0012】
ブーム15には、ブーム上下動用の流体圧シリンダとしてのブームシリンダ21に加えて、ブーム15の上部を左右方向にオフセット動作させるためのオフセットシリンダ22が設けられ、アーム16に対してはアームシリンダ23が、バケット17に対してはリンケージ24を介してバケットシリンダ25が、それぞれ接続されている。ブームシリンダ21には、このブームシリンダ21のロッド部21rを土砂などから保護するためのシリンダガード装置26が設けられている。
【0013】
図4および図5に示されるように、このシリンダガード装置26は、ブームシリンダ21のシリンダ本体厚肉部21aでは、このシリンダ本体厚肉部21aの外周面に沿って、ブロック状の取付ブラケット31が溶接またはボルトオンにより装着され、この取付ブラケット31を介して被取付部材としてのガイド体32がネジにより取付けられ、このガイド体32によりシリンダロッドカバー33が摺動自在に案内され、このシリンダロッドカバー33は、ブームシリンダ21のロッド部21rの伸縮にともなって移動しながらロッド部21rを保護する。
【0014】
ガイド体32は、図5に示されるように取付ブラケット31に固定された取付部32aより左右両端部が突出された案内板部32bを備え、また、シリンダロッドカバー33は、長尺平板状のカバー本体部33aの全長にわたって、ガイド体32の案内板部32bを左右から抱きかかえるようにU形断面に形成された嵌合部33bを左右部に備え、このシリンダロッドカバー33の先端部は、図4に示されるようにロッド部21rのピン嵌合部21pに取付けられた台座部34にボルト35により連結されている。
【0015】
図1および図2に示されるように、取付ブラケット31は、円筒部材である直径の異なる2種類のブームシリンダ21A,21Bの外周面に沿って装着されて被取付部材としてのガイド体32を取付けるブラケット本体36に、一の円筒部材としてのブームシリンダ21Aの外周面と嵌合する一の円弧状凹部37が設けられ、この一の円弧状凹部37の内側に、一の円筒部材としてのブームシリンダ21Aより小径の他の円筒部材としてのブームシリンダ21Bの外周面と嵌合する、一の円弧状凹部37より小径に形成された他の円弧状凹部38が設けられている。さらに、ブラケット本体36の一側部および他側部には、ガイド体取付用のネジ穴39がそれぞれ加工されている。
【0016】
図4に示されるように、ブームシリンダ21のシリンダ本体薄肉部21bでは、溶接による入熱によってシリンダ精度が損なわれるおそれがあるので、このシリンダ本体薄肉部21bの外周面に沿って、2つ割り構造のクランプ41が取付けられ、このクランプ41を介して溶接またはボルトオンされたガイド体42により、下降されたシリンダロッドカバー33を移動自在に案内するようにしている。なお、クランプ41に上記の取付ブラケット31を溶接して、この取付ブラケット31を介しガイド体42を取付けても良い。このガイド体42は、前記ガイド体32と同様のものである。
【0017】
次に、図示された実施の形態の作用を説明する。
【0018】
図1に示されるように、ブームシリンダ21Aの外周面に沿って取付ブラケット31を固定する場合は、一の円弧状凹部37を用いてブラケット本体36を溶接またはボルトオンし、また、より小型のブームシリンダ21Bの外周面に沿って共通の取付ブラケット31を固定する場合は、他の円弧状凹部38を用いてブラケット本体36を溶接またはボルトオンにより固定する。そして、この共通の取付ブラケット31のネジ穴39を用いて、ガイド体32の取付部32aをネジ(図示せず)により取付け、このガイド体32の案内板部32bに共通のシリンダロッドカバー33を装着する。
【0019】
ブーム15を上げるときは、図4に示されるようにブームシリンダ21のロッド部21rを伸ばすので、このロッド部21rの伸長動作にともなってシリンダロッドカバー33が、ガイド体32の案内板部32bに対し摺動しながら、ロッド部21rの前側を常に覆うようにシリンダ本体から繰出される。
【0020】
超小旋回機は、ブーム15の下部が垂直姿勢より後方へ傾斜される超小旋回姿勢をとることができるので、このような超小旋回姿勢では、バケット17がブームシリンダ21の上方に位置して、バケット17から土砂が落下するおそれもあるが、土砂がブームシリンダ21のロッド部21rに落ちることは、シリンダロッドカバー33により阻止される。
【0021】
次に、図示された実施の形態の効果を説明する。
【0022】
図1に示されるように、一のブームシリンダ21Aの外周面と嵌合する一の円弧状凹部37と、ブームシリンダ21Aより小径の他のブームシリンダ21Bの外周面と嵌合する他の円弧状凹部38とを、1つのブラケット本体36に設けたので、外径の異なる複数のブームシリンダ21A,21Bの外周面に沿って共通のブラケット本体36を装着できる取付ブラケット31を提供できる。
【0023】
図4に示されるように、ブームシリンダ21の外周面に沿って装着された取付ブラケット31を介して取付けられたガイド体32により、ブームシリンダ21のロッド部21rの伸縮にともなって移動しながらロッド部21rを保護するシリンダロッドカバー33を摺動自在に案内するので、上記の取付ブラケット31を用いて外径の異なる複数のブームシリンダ21A,21Bに共通のシリンダロッドカバー33を装着できる。
【0024】
本発明に係る取付ブラケット31は、ブームシリンダ21にシリンダガード装置26を取付ける場合に用途を限定されるものではなく、例えばブームシリンダ21に配管を取付ける場合、または、フロント作業装置14のブーム15やアーム16を丸パイプ材で構成する場合の油圧シリンダ取付ブラケットまたは配管取付ブラケットとして利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る取付ブラケットの一実施の形態を示す正面図である。
【図2】同上ブラケットの平面図である。
【図3】同上ブラケットを用いて取付けたシリンダガード装置を有する作業機械の側面図である。
【図4】同上ブラケットを用いて取付けたシリンダガード装置を備えたブームシリンダの側面図である。
【図5】同上ブラケットを用いて取付けたシリンダガード装置の断面図である。
【図6】(a)は比較的大径の油圧シリンダの外周面に沿って装着される取付ブラケットの正面図、(b)は比較的小径の油圧シリンダの外周面に沿って装着される取付ブラケットの正面図である。
【符号の説明】
【0026】
21 流体圧シリンダとしてのブームシリンダ
21r ロッド部
21A 一の円筒部材としてのブームシリンダ
21B 他の円筒部材としてのブームシリンダ
26 シリンダガード装置
31 取付ブラケット
32 被取付部材としてのガイド体
33 シリンダロッドカバー
36 ブラケット本体
37 一の円弧状凹部
38 他の円弧状凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部材の外周面に沿って装着されて被取付部材を取付けるブラケット本体と、
このブラケット本体に設けられ、一の円筒部材の外周面と嵌合する一の円弧状凹部と、
一の円弧状凹部の内側に設けられ、一の円筒部材より小径の他の円筒部材の外周面と嵌合する、一の円弧状凹部より小径に形成された他の円弧状凹部と
を具備したことを特徴とする取付ブラケット。
【請求項2】
流体圧シリンダの外周面に沿って装着された請求項1記載の取付ブラケットと、
この取付ブラケットを介して取付けられたガイド体と、
このガイド体により摺動自在に案内されて流体圧シリンダのロッド部の伸縮にともなって移動しながらロッド部を保護するシリンダロッドカバーと
を具備したことを特徴とするシリンダガード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−37775(P2010−37775A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200552(P2008−200552)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】