説明

受信装置、受信方法および受信プログラム

【課題】データの伝送効率の低下を抑止しつつ干渉波が存在する帯域を検出する。
【解決手段】マルチキャリア通信により送信装置から送信された無線信号を受信する受信装置200であって、受信した無線信号を復号し、各サブキャリア信号毎に復号の確からしさを示す尤度を算出する復調器207と、互いに異なるサブキャリアの組み合わせを複数抽出し、抽出した該サブキャリアの組み合わせ毎に、各サブキャリア信号の尤度を所定の範囲の値に変更する入力尤度設定器210と、入力尤度設定器210により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に基づいて、誤り訂正復号時に得られる復号の確からしさを示す確度情報を算出する尤度総和算出部230と、算出された確度情報を、異なるサブキャリアの組み合わせ間で、比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定する干渉サブキャリア判定器240と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチキャリア無線通信において干渉信号の存在する帯域を検出するための受信装置、受信方法および受信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信分野において、有限な周波数資源の枯渇問題が深刻になっており、周波数利用効率の向上が望まれている。周波数利用効率を向上させる技術として、周波数共用型の無線通信がある。図9は、周波数帯域を共用する無線通信システムの組み合わせの一例として、周波数チャネルが異なる2つの無線LAN(Local Area Network)システム全体を示す概念図である。
【0003】
同図における無線通信システムは、無線LAN基地局10a、無線LAN基地局10bと、受信装置20aとを備えている。無線LAN基地局10aは、中心周波数faであるチャネルCH1の周波数帯域を用いて通信する。無線LAN基地局10bは、中心周波数fb(fa<fb)であるチャネルCH5の周波数帯域を用いて通信する。
【0004】
受信装置20aは、無線LAN基地局10a、10bの双方の無線信号が到達する位置に配置され、中心周波数faの無線信号と中心周波数fbの無線信号とが互いに部分的に干渉した信号を受信する。
なお、周波数帯域を互いに共用する他の例として、無線LANシステムとBluetooth(登録商標)とWiMAX(登録商標)との組み合わせなどがあり、異なる通信方式のシステム同士が周波数を共用する場合もある。
【0005】
このように、例えば、無線LAN基地局10aを通信対象とする場合、中心周波数faである希望信号の送信周波数帯域と、中心周波数fbである無線LAN基地局10bからの干渉信号の送信周波数帯域とが、部分的に重なり合う(干渉する)。このような周波数共用型の無線通信において、受信装置20aは、誤り訂正などを効率的に行って周波数利用効率を向上させるために、希望信号の周波数帯域に重なり合う干渉信号の存在を正確に検出することが必要となる。
【0006】
干渉信号の存在を検出するための技術として、例えばトレーニング信号、サウンディング信号のような既知パターンの信号を用いて干渉信号の測定を行う技術が提案されている(特許文献1参照)。また、バースト伝送における非送信区間やデータ区間に意図的に設けられたヌル信号区間を用いて干渉信号の測定を行う技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−282120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような干渉信号を検出する技術では、送信装置はデータの送信期間の間にデータを送信しない期間を設けたり、周波数帯域でデータを送信しない周波数帯域を設けたりすることにより、干渉波が存在する帯域を測定する必要があった。そのため、データの伝送効率の低下、または間欠的な測定のため伝送路特性の変動に対する追従性の低さの問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、データの伝送効率の低下を抑止しつつ干渉波が存在する帯域を検出することを可能とする受信装置、受信方法および受信プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、マルチキャリア通信により送信装置から送信された無線信号を受信する受信装置であって、
受信した前記無線信号を復号し、各サブキャリア信号毎に復号の確からしさを示す尤度を算出する尤度算出手段と、単一または複数のサブキャリア信号から構成される互いに異なるサブキャリアの組み合わせを複数抽出し、抽出した該サブキャリアの組み合わせ毎に、該サブキャリアの組み合わせを構成する各サブキャリア信号の尤度を所定の範囲の値に変更する尤度変更手段と、前記尤度変更手段により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に基づいて、誤り訂正復号時に得られる復号の確からしさを示す確度情報を算出する確度算出手段と、前記算出された確度情報を、異なる前記サブキャリアの組み合わせ間で、比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定する干渉波存在帯域推定手段と、を備えることを特徴とする受信装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記確度算出手段は、前記尤度変更手段により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度を用いて誤り訂正した後の軟判定値の和を前記サブキャリアの組み合わせ毎に算出し、前記干渉波存在帯域推定手段は、前記算出された和を、異なる前記サブキャリアの組み合わせ間で比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定することを特徴とする受信装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記干渉波存在帯域判定手段は、前記尤度の総和が最大となる尤度のうち尤度変更手段により尤度の変更がされたサブキャリア信号に干渉波が存在すると判定することを特徴とする受信装置である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記尤度変更手段により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に対して、誤り訂正処理を行うことにより前記各サブキャリア信号の尤度に基づく値を算出する復号手段を更に備えることを特徴とする受信装置である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記無線信号が伝搬された伝搬路のチャネル情報を推定する伝搬路推定手段と、干渉波の存在するサブキャリア以外のサブキャリアの組合せによりデータを復号するデータ復号手段と、前記復号されたデータに基づき、他の前記無線通信装置が送信した希望波信号の複製であるレプリカ信号を生成するレプリカ信号生成手段と、前記レプリカ信号に前記チャネル情報を乗算することにより、擬似的に伝搬路を伝達された受信信号を再現する受信信号再現手段と、前記再現された受信信号から前記レプリカ信号を減算して干渉信号を算出する干渉信号算出手段と、前記レプリカ信号と前記干渉信号のそれぞれの平均電力を測定する平均電力測定手段と、前記レプリカ信号の平均電力を前記干渉信号の平均電力で除算することにより希望波対干渉波電力比を算出する電力比算出手段と、を更に備えることを特徴とする受信装置である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記尤度変更手段は、前記抽出した組み合わせ毎に、前記算出された各サブキャリア信号の尤度に所定の重みを乗算して前記尤度を変更することを特徴とする受信装置である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記所定の範囲の値は、尤度が取り得る値の中央値であることを特徴とする受信装置である。
【0017】
請求項8に記載の発明は、前記送信装置の送信する前記データに誤り検出符号が含まれており、前記確度算出手段が、受信した前記無線信号に対して、複数の前記検証対象サブキャリアに配置された前記誤り訂正ビットの複数の組み合わせ毎に誤り訂正復号を行い、誤り訂正復号によって得られた前記データと誤り検出符号とにより、誤り検出結果から誤り率を求め、当該誤り率を前記確度情報として出力し、前記干渉波存在帯域推定手段が、前記誤り率を、異なる前記誤り訂正ビットの組み合わせ間で比較することによって、前記検出対象サブキャリアのなかから干渉波の存在する干渉サブキャリアを推定することを特徴とする受信装置である。
【0018】
請求項9に記載の発明は、マルチキャリア通信により送信装置から送信された無線信号を受信する受信装置が実行する受信方法であって、受信した前記無線信号を復号し、各サブキャリア信号毎に復号の確からしさを示す尤度を算出する尤度算出手順と、単一または複数のサブキャリア信号から構成される互いに異なるサブキャリアの組み合わせを複数抽出し、抽出した該サブキャリアの組み合わせ毎に、該サブキャリアの組み合わせを構成する各サブキャリア信号の尤度を所定の範囲の値に変更する尤度変更手順と、前記尤度変更手順により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に基づいて、誤り訂正復号時に得られる復号の確からしさを示す確度情報を算出する確度算出手順と、前記算出された確度情報を、異なる前記サブキャリアの組み合わせ間で、比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定する干渉波存在帯域推定手順と、を有することを特徴とする受信方法である。
【0019】
請求項10に記載の発明は、マルチキャリア通信により送信装置から送信された無線信号を受信する受信装置であるコンピュータに、受信した前記無線信号を復号し、各サブキャリア信号毎に復号の確からしさを示す尤度を算出する尤度算出ステップと、単一または複数のサブキャリア信号から構成される互いに異なるサブキャリアの組み合わせを複数抽出し、抽出した該サブキャリアの組み合わせ毎に、該サブキャリアの組み合わせを構成する各サブキャリア信号の尤度を所定の範囲の値に変更する尤度変更ステップと、前記尤度変更ステップにより変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に基づいて、誤り訂正復号時に得られる復号の確からしさを示す確度情報を算出する確度算出ステップと、前記算出された確度情報を、異なる前記サブキャリアの組み合わせ間で、比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定する干渉波存在帯域推定ステップと、を実行させるための受信プログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、尤度の総和同士を比較することによって、干渉波の存在するサブキャリアを判定することができるので、データの伝送効率の低下を抑止しつつ干渉波が存在する帯域を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態における送信装置のブロック構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における受信装置のブロック構成図である。
【図3】入力尤度設定器の処理について説明するための図である。
【図4】入力尤度設定器の処理の1例を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における受信装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態における受信装置のブロック構成図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における受信装置のブロック構成図である。
【図8】本発明の第4の実施形態における受信装置のブロック構成図である。
【図9】周波数帯域を共用する無線通信システムの組み合わせの一例として、周波数チャネルが異なる2つの無線LAN(Local Area Network)システム全体を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態では、送信機と受信機による一対一のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重方式)伝送を想定する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態における送信装置のブロック構成図である。送信装置100は、誤り訂正符号化器101と、変調器102と、直並列変換器103と、OFDM変調器104と、送信処理器105と、送信アンテナ106とを備える。送信装置100の動作は一般的なOFDM方式の送信装置の動作に従う。
【0024】
誤り訂正符号化器101は、送信データが入力されると、誤り訂正符号化を行うことにより符号化ビット列を生成し、生成した符号化ビット列を変調器102に出力する。
変調器102は、誤り訂正符号化器101により入力された符号化ビット列について、BPSK(Binary Phase Shift Keying、二位相偏移変調)あるいはQPSK(Quadrature Phase Shift Keying、四位相偏移変調)等の変調方式により変調を行うことにより変調信号を生成し、生成した変調信号を直並列変換器103に出力する。
【0025】
直並列変換器103は、変調信号をN個ずつ直並列変換することによりN個の並列信号を生成し、生成したN個の並列信号をそれぞれNポートのOFDM変調器104のそれぞれのポートに出力する。
OFDM変調器104は、入力された並列信号に対してIFFT(Inverse Fast Fourier Transform、逆高速フーリエ変換)処理を行うことによりOFDM信号を生成し、生成したOFDM信号を送信処理器105に出力する。
【0026】
送信処理器105は、入力されたOFDM信号に対してフィルタを施すことによりフィルタ信号を生成し、生成したフィルタ信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。送信処理器105は、変換したアナログのフィルタ信号に対して周波数変換処理を施すことにより周波数変換後の信号を生成し、送信アンテナ106を介して生成した周波数変換後の信号を不図示の受信装置へ送信する。
【0027】
<第1の実施形態>
続いて、本発明の第1の実施形態における受信装置200について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態における受信装置200のブロック構成図である。受信装置200は、受信アンテナ201と、受信処理器202と、OFDM復調器203と、伝搬路推定器204と、等化器205と、並直列変換器206と、復調器(尤度算出手段)207と、入力尤度設定器(尤度変更手段)210と、復号部(復号手段)220と、尤度総和算出部(尤度総和算出手段)230と、干渉サブキャリア判定器(干渉波存在帯域推定手段)240と、選択器241と、硬判定器(データ復号手段)242とを備える。また、不図示の確度算出手段は、復号部(復号手段)220と尤度総和算出部(尤度総和算出手段)230とを備える。
【0028】
復号部220は、M個のSISO(Soft Input Soft Output)復号器220〜220を備える。
尤度総和算出部230は、M個の尤度絶対値総和演算器230〜230を備える。
【0029】
受信処理器202は、受信アンテナ201を介して入力された受信信号について、周波数変換を施して周波数変換後の信号を生成し、更に周波数変換後の信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。そして、受信処理器202は、デジタル化された周波数変換後の信号に対してフィルタ処理を施してベースバンドのOFDM信号を生成し、生成したベースバンドのOFDM信号をOFDM復調器203に出力する。
【0030】
OFDM復調器203は、入力されたOFDM信号に対してFFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)処理を施しFFT処理後の信号を生成する。OFDM復調器203は、生成したFFT処理後の信号をN個のサブキャリア信号(Nは正の整数)に分離し、N個のサブキャリア信号を伝搬路推定器204および等化器205に出力する。
【0031】
伝搬路推定器204は、入力されたサブキャリア信号に含まれる基準信号であって、送受信期間のプリアンブル信号に含まれる基準信号と基準信号とを比較することにより、各サブキャリアにおける振幅変動値および位相変動値の少なくともいずれか一方を含むチャネル情報を推定し、推定したチャネル情報を等化器205に出力する。
【0032】
等化器205は、OFDM復調器203から入力されたサブキャリア信号のそれぞれについて、伝搬路推定器204により入力されたチャネル情報を用いて等化処理を行う。具体的には、チャネル情報は、無線信号が伝搬路から受ける振幅や位相の変動を表すものであり、等化器205は、このチャネル情報を用いて、それぞれ対応するサブキャリア信号の振幅または位相を補償する。等化器205は、等化処理により生成した補償後の各サブキャリア信号を並直列変換器206に出力する。
【0033】
並直列変換器206は、等化器205から入力された補償後の各サブキャリア信号を並列信号から直列信号に変換(直列化)し、直列化した信号を復調器207に出力する。復調器207は、直列化された各サブキャリア信号について、誤りを訂正して復号(誤り訂正復号)する。復調器207は、誤り訂正復号として軟判定を行うことにより、サブキャリア毎に復号の確からしさを示す尤度を算出し、それぞれの尤度を示す情報を入力尤度設定器210に出力する。
【0034】
入力尤度設定器210は、サブキャリア信号または複数のサブキャリア信号から構成される互いに異なるサブキャリアグループを複数(本実施形態ではM個)抽出し、該抽出したサブキャリアグループ毎に、そのサブキャリアグループを構成する各サブキャリア信号の尤度を、復調器207により算出された値から所定の範囲の値に変更する。ここで、所定の範囲の値とは、例えば、尤度が取り得る値の中央値である。具体的には、例えば、図3に示すように、対数尤度比LLR(Log Likelihood Ratio)を用いる場合は、尤度が取り得る値の中央値は0となる。また、尤度が3ビットで量子化されて表され例えば0から7までの値を取り得るとすると、尤度が取り得る値の中央値とは、3または4である。
【0035】
本実施形態では、入力尤度設定器210は、対数尤度比LLRを用い、所定の範囲の値として中央値である0を用いる。
入力尤度設定器210は、上記処理により、M個のサブキャリアグループ毎に尤度を変更することにより、図3に示すような尤度列をM個設定し、M個の尤度列を示す情報を、それぞれM個のSISO(Soft Input Soft Output、軟入力軟出力)復号器220〜220に出力する。ここで、SISO復号器とは、単なる0または1といった硬判定結果を出力するのではなく、例えば0.4や0.9といった信頼度を示す情報を出力する復号器である。
入力尤度設定器210は、SISO復号器220と尤度が変更されたサブキャリアの組合せとが関連付けられた情報を、干渉サブキャリア判定器240に出力する。
【0036】
各SISO復号器220(iは1からMまでの整数)は、入力尤度設定器210から入力されたサブキャリア毎の尤度に対して、誤り訂正処理を行うことによりサブキャリア毎の軟判定値の集まりである軟判定値列を生成する。各SISO復号器220(iは1からMまでの整数)は、生成した各軟判定値列を示す情報を、添え字の番号が対応する各尤度絶対値総和演算器230(iは1からMまでの整数)および選択器241に出力する。
【0037】
各尤度絶対値総和演算器230(iは1からMまでの整数)は、それぞれに入力された軟判定値列中に含まれる各サブキャリアの軟判定値(尤度)の絶対値の総和である尤度絶対値総和を算出し、その尤度絶対値総和を示す情報を干渉サブキャリア判定器240に出力する。
【0038】
上述したように、干渉波の存在するサブキャリアは信号品質が劣化するため、誤り検出の機能が有効に働かず、尤度は小さくなる。したがって、一部のサブキャリアの尤度を0に変更して復号を行うと、干渉波の存在するサブキャリアの尤度を0に変更した場合はSISO復号器220の出力の総和が大きくなる。換言すると、SISO復号器220の出力の総和が最も大きくなる場合、干渉サブキャリア判定器240は、入力尤度設定器210により尤度を0に変更されたサブキャリアの帯域に干渉波が存在すると推定することができる。
【0039】
干渉サブキャリア判定器240は、各尤度絶対値総和演算器230により各ポートから入力された尤度絶対値総和と入力尤度設定器210から入力されたそれぞれのポートに対応するサブキャリアの組合せに基づいて、干渉波の存在するサブキャリアを推定する。
具体的には、干渉サブキャリア判定器240は、各ポートから入力された尤度絶対値総和を比較し、尤度絶対値総和の最大値を抽出する。干渉サブキャリア判定器240は、抽出した尤度絶対値総和の最大値をとる軟判定値列を出力したSISO復号器220を同定する。干渉サブキャリア判定器240は、同定されたSISO復号器220から、尤度が変更されたサブキャリアの組合せを抽出する。干渉サブキャリア判定器240は尤度が変更されたサブキャリアの帯域に干渉波が存在すると判定する。
【0040】
すなわち、干渉波が存在するサブキャリアに配置された誤り検出符号を含んで誤り訂正を行った場合には、干渉波が存在しないサブキャリアのみで誤り訂正を行った場合(すなわち、干渉波が存在するサブキャリアの尤度を所定の範囲の値に変更した後に、誤り訂正を行った場合)と比較して尤度の絶対値の総和が小さくなると期待される。
【0041】
このことから、干渉サブキャリア判定器240は、尤度の絶対値の総和が最も大きい場合、入力尤度設定器210により尤度を変更したサブキャリアに干渉波が存在していると判定する。干渉サブキャリア判定器240は、干渉波が存在すると判定したサブキャリアの組合せを、干渉サブキャリア判定結果を示す情報として外部へ出力するとともに、その尤度絶対値総和が最大であるポートの番号を示す情報を選択器241に出力する。
【0042】
選択器241は、各SISO復号器220から入力された各軟判定値列について、干渉サブキャリア判定器240から入力されたポート番号と添え字が同じ番号のSISO復号器220から出力された軟判定値列を選択し、選択した軟判定値列を示す情報を硬判定器242に出力する。これにより、選択器241は、干渉サブキャリア判定器240から干渉波が存在するサブキャリアの尤度が変更されたポート番号を示す情報を受け取ると、中央値0に変更された尤度を含む尤度を用いて誤り訂正処理が行われて復号された信号を選択することになる。
【0043】
硬判定器242は、選択器241から入力された軟判定値列に対して、硬判定を行うことにより受信データを復号し、復号した受信データを示す情報を外部へ出力する。
【0044】
図3は、入力尤度設定器210の処理について説明するための図である。同図において、OFDM帯域において、物理サブキャリア番号として1からNまでの番号が振られたサブキャリア毎の受信信号の信号強度が示されている。横軸は周波数で、縦軸は信号強度である。また、それぞれのサブキャリアに対応した入力尤度設定器210で設定された尤度の例が示されている。この例では、物理サブキャリア番号がK+1、K+2、Nの3つのサブキャリアの尤度が中央値0に設定されている。
【0045】
図4は、入力尤度設定器210の処理の1例を説明するための図である。図4(a)には、3つのサブキャリア番号の組み合わせがM個、示されている。図4(b)には、N個のサブキャリアのうち、図4(a)で示された3つのサブキャリア番号の尤度が0に変更された尤度列がM個、示されている。
【0046】
図4(a)に示すように、入力尤度設定器210は、例えば、N個のサブキャリアから互いに異なる3つのサブキャリアの組み合わせをM個抽出する。そして、図4(b)に示すように、入力尤度設定器210は、抽出したサブキャリアの組み合わせ毎に、その組み合わせの尤度を中央値0に設定する。これにより、入力尤度設定器210は、M個の尤度列を設定することができる。
【0047】
図5は、本発明の第1の実施形態における受信装置の処理の流れを示したフローチャートである。まず、受信処理器202は、受信アンテナ201を介して入力された受信信号からOFDM信号を生成する(ステップS101)。次に、OFDM復調器203は、OFDM信号からN個のサブキャリア信号を生成する(ステップS102)。次に、伝搬路推定器204は、サブキャリア信号に含まれるプリアンブル信号と基準信号とを比較することにより、各サブキャリアのチャネル情報を推定する(ステップS103)。
【0048】
次に、等化器205は、サブキャリア信号のそれぞれについて、チャネル情報を用いて等化処理を行い、補償後の各サブキャリア信号を生成する(ステップS104)。次に、並直列変換器206は、補償後の各サブキャリア信号を並列信号から直列信号に変換する(ステップS105)。次に、復調器207は、補償後の各サブキャリア信号について軟判定を行うことによりサブキャリア毎に尤度を算出する(ステップS106)。
【0049】
次に、入力尤度設定器210は、サブキャリアの複数の組合せであって、互いに異なる組み合わせを複数抽出し、該抽出した組み合わせ毎に、その組み合わせを構成する各サブキャリア信号の尤度を、中央値0に変更する(ステップS107)。次に、各SISO復号器220は、入力尤度設定器210から入力されたサブキャリア毎の尤度に対して、誤り訂正処理を行うことにより軟判定値列を生成する(ステップS108)。
【0050】
次に、各尤度絶対値総和演算器230は、それぞれに入力された軟判定値列中に含まれる各サブキャリアの軟判定値の絶対値の総和である尤度絶対値総和を算出する(ステップS109)。干渉サブキャリア判定器240は、各尤度絶対値総和を比較し、尤度絶対値総和の最大値を抽出する。干渉サブキャリア判定器240は、抽出した尤度絶対値総和の最大値をとる軟判定値列が誤り訂正処理される前のサブキャリア毎の尤度において、乳入力尤度設定器210により尤度が中央値0に変更されたサブキャリアの帯域に干渉波が存在すると判定する(ステップS110)。
【0051】
次に、選択器241は、尤度絶対値総和が最大となるポートの軟判定値列を選択する(ステップS111)。次に、硬判定器242は、選択器241から入力された軟判定値列に対して、硬判定を行うことにより受信データを復号する(ステップS112)。以上で、本フローチャートの処理を終了する。
【0052】
以上のように、受信装置200は、互いに異なるサブキャリアの組合せを複数抽出し、抽出したサブキャリアの尤度を所定の範囲の値に変更する。そして、受信装置200は、変更後の尤度を用いて誤り訂正した後の軟判定値の総和をそれぞれ算出し、算出した総和を比較する。受信装置200は、軟判定値の総和が最大となった場合において誤り訂正する前の尤度が所定の範囲の値に変更されたサブキャリアの帯域に干渉波が存在すると推定する。これにより、受信装置200は、データの伝送効率の低下を抑止しつつ、干渉信号を検出することができる。
【0053】
なお、入力尤度設定器210は、互いに異なるサブキャリアまたはサブキャリア群の組み合わせを抽出し、その組み合わせを構成するサブキャリアまたはサブキャリア群の尤度に重み付けすることにより各重み付けされた尤度列を生成し、それぞれの尤度列を各SISO復号器220に出力してもよい。
【0054】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態における受信装置300について説明する。本発明の第2の実施形態における受信装置300は、第1の実施の形態において、変更された尤度を用いて復号することにより軟判定値を算出し、そのサブキャリア毎の軟判定値の絶対値の総和を算出し、干渉サブキャリアの判定を行うという一連の処理が、直列(シリアル)に処理される点を特徴とする。
【0055】
図6は、本発明の第2の実施形態における受信装置300のブロック構成図である。なお、図2と共通する要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6の受信装置300の構成は、図2の受信装置200の構成に対して、入力尤度設定器210が入力尤度設定器210bに置き換わり、復号部220がSISO復号器220bに置き換わり、尤度総和算出部230が尤度絶対値総和演算器230bに置き換わり、干渉サブキャリア判定器240が干渉サブキャリア判定器240bに置き換わり、硬判定器242が硬判定器242bに置き換わったものになっている。
【0056】
図6に示すように、復調器207から出力された軟判定値を示す情報が、入力尤度設定器210bに入力される。その前段までの処理は、第1の実施形態と同様である。
入力尤度設定器210bは、復調器207から入力された軟判定値を示す情報を受け取る。入力尤度設定器210bは、試行毎に、互いに異なるサブキャリアまたはサブキャリア群の組み合わせを抽出し、その組み合わせを構成するサブキャリアまたはサブキャリア群の尤度を零に置換することにより各尤度列を生成する。
【0057】
入力尤度設定器210bは、生成した尤度列を示す情報と尤度が零に置換されたサブキャリアの組合せを示す情報とをSISO復号器220bに出力する。
また、入力尤度設定器210bは、尤度が零に置換されたサブキャリアの組合せを示す情報を干渉サブキャリア判定器に出力する。
【0058】
SISO復号器220bは、入力尤度設定器210bから入力された軟判定値と尤度が変更されたサブキャリアの組合せに基づいて、誤り訂正処理を行うことにより軟判定値列を算出し、算出した軟判定列を示す情報を尤度絶対値総和演算器230bに出力する。
尤度絶対値総和演算器230bは、入力された軟判定値列を構成する各サブキャリアの軟判定値(尤度)の絶対値の総和である尤度絶対値総和を算出し、干渉サブキャリア判定器240bに出力する。
【0059】
干渉サブキャリア判定器240bは、尤度絶対値総和演算器230bから入力された尤度絶対値総和と入力尤度設定器210bから入力された尤度が変更されたサブキャリアの組合せに基づいて、干渉波の存在するサブキャリアを推定する。
【0060】
具体的には、干渉サブキャリア判定器240bは、尤度絶対値総和演算器230bから入力された尤度絶対値総和と入力尤度設定器210bから入力された尤度が変更されたサブキャリアの組合せとを関連付けて記憶する。干渉サブキャリア判定器240bは、入力尤度設定器210bにより設定されていた全てのサブキャリアの組合せについての処理が終了すると、尤度絶対値総和の最も大きかった試行時に入力尤度設定器210bにより尤度が零に置換されたサブキャリアの帯域に干渉波が存在すると判定する。
【0061】
干渉サブキャリア判定器240bは、干渉波が存在すると判定したサブキャリアの組合せを、干渉サブキャリア判定結果を示す情報として外部へ出力するとともに、そのサブキャリアの組合せを示す情報を入力尤度設定器210bに出力する。
入力尤度設定器210bとSISO復号器220bは、当該サブキャリアの組合せを用いて、再度の処理を行い、SISO復号器220bは軟判定値列を示す情報を硬判定器242bに出力する。
【0062】
硬判定器242bは、SISO復号器220b入力された軟判定値列について、硬判定することにより受信データを復号し、復号した受信データを外部へ出力する。
【0063】
以上のように、以上のように、受信装置300は、試行毎に、互いに異なるサブキャリアの組合せを複数抽出し、抽出したサブキャリアの尤度を所定の範囲の値に変更する。そして、受信装置300は、変更後の尤度を用いて誤り訂正した後の軟判定値の総和をそれぞれ算出する。受信装置300は、軟判定値の総和が最大となる試行において、誤り訂正する前の尤度が所定の範囲の値に変更されたサブキャリアの帯域に干渉波が存在すると推定する。これにより、受信装置300は、データの伝送効率の低下を抑止しつつ、干渉信号を検出することができる。
【0064】
また、シリアル処理により干渉サブキャリア判定を行うことによって、SISO復号器220bおよび尤度絶対値総和演算器230bがそれぞれ1つあればよく、回路規模の削減を行うことができる。
【0065】
また、第1の実施形態の受信装置200は、SISO復号器の数および尤度絶対値総和演算器の数に限度があるため、尤度を変更するサブキャリアの組合せの数は有限である。それに対し、本実施形態の受信装置300は、尤度を変更するサブキャリアの組合せの数を無限に増やすことができるので、尤度を変更するサブキャリアの組合せを自由に増減させることが出来る。これにより、本実施形態の受信装置300は、あらゆるサブキャリアの組み合わせに対して、干渉波が存在するか否かを判定することができる。
【0066】
なお、入力尤度設定器210bは、試行毎に、互いに異なるサブキャリアまたはサブキャリア群の組み合わせを抽出し、その組み合わせを構成するサブキャリアまたはサブキャリア群の尤度に重み付けすることにより各重み付けされた尤度列を生成し、生成した尤度列をSISO復号器220bに出力してもよい。
【0067】
<第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態における受信装置400について説明する。本実施形態の受信装置400は、第1の実施形態における受信装置200が、硬判定することにより復号された受信データを用いて、希望波対干渉波電力比(Desired to Undesired Power Ratio、D/U比)を算出する点を特徴とする。
【0068】
図7は、本発明の第3の実施形態における受信装置400のブロック構成図である。なお、図2と共通する要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
受信装置400は、受信データ生成部200cと、レプリカ信号生成部(レプリカ信号生成手段)410と、伝搬路係数乗算器(受信信号再現手段)415と、バッファ417と、減算器(干渉信号算出手段)418と、平均電力測定部(平均電力測定手段)420と、除算器(電力比算出手段)430とを備える。
【0069】
また、レプリカ信号生成部410は、訂正符号化器411と、変調器412と、直並列変換器413と、OFDM変調器414とを備える。平均電力測定部420は、第1の平均電力測定器421と、第2の平均電力測定器421とを備える。
図7の受信データ生成部200cの構成は、図2の受信装置200の構成に対して、受信処理器202が受信処理器202cに置き換わり、伝搬路推定器204が伝搬路推定器204cに置き換わり、硬判定器242が硬判定器(データ復号手段)242cに置き換わったものになっている。
【0070】
受信処理器202cは、受信処理器202と同様に、受信アンテナ201を介して入力された受信信号について、周波数変換を施して周波数変換後の信号を生成し、更に周波数変換後の信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。そして、受信処理器202bは、デジタル化された周波数変換後の信号に対してフィルタ処理を施してベースバンドのOFDM信号を生成し、生成したベースバンドのOFDM信号をOFDM復調器203に出力し、バッファ417に記憶させる。
【0071】
伝搬路推定器204cは、伝搬路推定器204と同様に、入力されたサブキャリア信号に含まれる既知の信号であって、送受信期間のプリアンブル信号と基準信号とを比較することにより、各サブキャリアのチャネル情報を推定し、推定したチャネル情報を等化器205および伝搬路係数乗算器415に出力する。
【0072】
硬判定器242cは、硬判定器242と同様に、選択器241から入力された軟判定値列に対して、硬判定を行うことにより受信データ列を復号し、復号した受信データ列を示す情報を外部と誤り訂正符号化器411とへ出力する。
【0073】
図7において、硬判定器に接続された誤り訂正符号化器411、変調器412、直並列変換器413、OFDM変調器414のそれぞれの構成および動作は、送信装置100の訂正符号化器101、変調器102、直並列変換器103、OFDM変調器104のそれぞれと同様である。すなわち、これらの手段が、硬判定により受信データから他の無線通信装置が送信した希望波信号の複製であるレプリカ信号を生成する。
【0074】
OFDM変調器414は、生成したレプリカ信号を伝搬路係数乗算器415に出力する。
伝搬路係数乗算器415は、伝搬路推定器204cにより算出されたチャネル情報をレプリカ信号のOFDM信号に乗算する。これにより、伝搬路係数乗算器415は、擬似的に伝搬路を伝達された受信信号を再現し、再現した擬似的に伝搬路を伝達された受信信号を減算器418と第1の平均電力測定器411とへ出力する。
【0075】
減算器418は、バッファ417からバッファされた受信信号を読み出す。減算器418は、伝搬路係数乗算器415から入力された擬似的に伝搬路を伝達された受信信号とバッファ417から読み出した受信信号との減算を行うことにより、干渉波の信号を抽出する。減算器418は、抽出した干渉波の信号を第2の平均電力測定器422に出力する。
【0076】
第1の平均電力測定器421は、伝搬路係数乗算器415から入力された擬似的に伝搬路を伝達された受信信号の平均電力を測定し、測定した擬似的に伝搬路を伝達された受信信号の平均電力を示す情報を除算器430に出力する。
一方、第2の平均電力測定器422は、減算器418から入力された干渉波の信号の平均電力を測定し、測定した干渉波の信号の平均電力を示す情報を除算器430に出力する。
【0077】
除算器430は、擬似的に伝搬路を伝達された受信信号の平均電力を干渉波の信号の平均電力で除算することにより、D/U比を算出し、算出したD/U比を示す情報を外部へ出力する。
【0078】
以上により、本発明の第3の実施形態における受信装置400は、擬似的に伝搬路を伝達された受信信号を算出し、アンテナが受信した受信信号から擬似的に伝搬路を伝達された受信信号を減産することにより干渉信号を生成する。そして、受信装置400は、擬似的に伝搬路を伝達された受信信号の平均電力を干渉波の信号の平均電力で除算することにより、D/U比を示す情報を算出することができる。
【0079】
<第4の実施形態>
続いて、本発明の第4の実施形態における受信装置200bについて説明する。図8は、本発明の第4の実施形態における受信装置200bのブロック構成図である。同図において、図2に示された第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してある。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる構成、及び異なる動作のみを説明する。
【0080】
本実施形態における受信装置200bは、第1の実施形態における受信装置200の復号部220、尤度総和算出部230、干渉サブキャリア判定器240、選択部241の各々を、それぞれ復号部220b、誤り率算出部230b、干渉サブキャリア判定器(干渉波存在帯域推定手段)240bに置き換えられ、第1の実施形態における硬判定器242は用いられていない。また、不図示の確度算出手段は、復号部(復号手段)220bと誤り率算出部230bとを備える。
【0081】
また、本実施形態の送信装置100において、送信装置100における誤り訂正符号化器101(図1参照)に入力される送信データに、誤り検出符号、例えばCRC(Cyclic Redundancy Check、巡回冗長検査)符号が含まれている。
したがって、誤り訂正符号化器101は、送信データとCRC符号とからなるビットの配列に対し、上述したものと同様に組織符号化し、組織符号化し、組織ビットと誤り訂正符号のビットとを生成する。以降の処理については、上述したものと同様である。この組織ビットは、送信データとCRC符号とからなるビット配列である。
【0082】
次に、受信装置200bにおいて、入力尤度設定器210までの処理については、第1の実施形態の受信装置200と同様である。
復調器207までの処理については、第1の実施形態と同様である。復調器207は、軟判定復号された組織ビットの尤度と誤り訂正符号のビットの尤度とを、入力尤度設定器210へ出力する。
入力尤度設定器210は、サブキャリア信号または複数のサブキャリア信号から構成される互いに異なるサブキャリアグループを複数(本実施形態ではM個)抽出し、該抽出したサブキャリアグループ毎に、そのサブキャリアグループを構成する各サブキャリア信号の尤度を、復調器207により算出された値から所定の範囲の値に変更する。
入力尤度設定器210は、上記処理により、M個のサブキャリアグループ毎に尤度を変更することにより、図3に示すような尤度列をM個設定し、尤度列を示す情報を、それぞれ復号部220b、220b、220b、…、220bに出力する。
【0083】
復号部220bは、復号部220b、220b、220b、…、220bを備える。
復号部220b、220b、220b、…、220bの各々には、入力尤度設定器210から、尤度列を示す情報が供給される。
【0084】
次に、復号部220b、220b、220b、…、220bの各々は、それぞれ供給された尤度列を示す情報により、組織ビットの硬判定を行い、硬判定結果である硬判定値を選択器241bに記憶させる。
そして、復号部220b、220b、220b、…、220bの各々は、CRC復号の結果で得られたCRC成分とデータ成分とを、それぞれ接続された誤り率算出部230b、230b、230b、…、230bへ出力する。
【0085】
誤り率算出部230b、230b、230b、…、230bは、供給される硬判定された組織ビット(すなわち、送信データ及びCRC符号)による誤り検出の処理(すなわち、復号結果が誤っているか否かの判定)を行う。このとき、誤り率算出部230bは、複数のOFDMシンボルの誤り検出の結果を蓄積し、所定の数(例えば10個)のOFDMシンボルの誤り率(復号の確からしさを示す確度情報)を算出する。
【0086】
具体的には、誤り率算出部230bは、蓄積されたOFDMシンボルの誤り検出結果から、誤りと判定されたOFDMシンボル数を、誤り率を求めるのに用いる全OFDMシンボルの数で除算することにより、誤り率を算出する。例えば、誤り率算出部230bは、10個のOFDMシンボルにおいて、3個のOFDMシンボルが誤りである場合、3(誤りと判定されたOFDMシンボル数)/10(誤り率を求めるのに用いる全OFDMシンボルの数)から誤り率を0、3として出力する。
【0087】
また、他の誤り率算出部230b、230b、…、230bの各々も、誤り率算出部230bと同様に、自身に供給された送信データとCRC符号とにより誤り率の算出を行う。
そして、誤り率算出部230b、230b、230b、…、230bの各々は、それぞれ算出した誤り率を、それぞれの出力が接続された干渉サブキャリア判定器240bの端子に対して出力する。
【0088】
干渉サブキャリア判定器240bは、最も小さな誤り率が入力されたポート番号と同じ番号の復号器に入力された尤度列を示す情報のうち、入力尤度設定器210により尤度が変更されたサブキャリアに干渉波が存在していると判定する。
干渉サブキャリア判定器240bは、干渉波が存在すると判定したサブキャリアの組合せを、干渉サブキャリア判定結果を示す情報として外部へ出力するとともに、その最も小さな誤り率が入力されたポートの番号を示す情報(硬判定値選択信号)を選択器241bに出力する。
【0089】
選択器241bは、内部に復号部220b、220b、220b、…、220bの各々に対応するM個のバッファを有している。このバッファは、それぞれの誤り率算出部230b、230b、230b、…、230bの各々が誤り率を算出するために必要な数のOFDMシンボルを記憶する容量を有している。
【0090】
したがって、選択器241bは、誤り率算出部230b、230b、230b、…、230bの各々に蓄積されている誤り率を求めたOFDMシンボルと同一のOFDMシンボルの硬判定値を記憶している。
そして、選択器241bは、干渉サブキャリア判定器240bから供給されるポートの番号を示す情報(硬判定値選択信号)により、対応する復号部から供給されたOFDMシンボルの硬判定値を、復号結果として出力する。また、選択器241bは、復号された組織ビットからCRC符号を削除して、送信ビットのみを出力する。
【0091】
また、上述の説明においては、誤り検出符号としてCRC符号を用いたが、予め既知のビットデータを誤り検出符号として用いる構成としてもよい。
また、上述の説明においては、誤り検出符号としてCRC符号を用いたが、予め既知のビットデータを誤り検出符号として用いる構成としてもよい。
【0092】
例えば、誤り率算出部230b(iは1からMまでの整数)の各々に、予め送信装置100が送信データに付加する既知データが記憶されており、誤り率算出部230bは、復号部220bから供給される硬判定結果の誤り検出符号と、記憶されている既知データとを比較して一致しない場合に誤りと判定し、一致した場合に正常に復号されたと判定し、この誤り判定結果を用いて誤り率を算出してもよい。
【0093】
このため、本実施形態によれば、受信装置200bは、誤り検出符号により受信データの誤りの有無を検出し、この検出結果から求められる誤り率から、干渉波が重畳された干渉サブキャリアに乗せられた誤り訂正ビットを用いずに求められた誤り訂正ビットの組み合わせ、あるいは干渉波が重畳された干渉サブキャリアに乗せられた誤り訂正ビットが最も少ない組み合わせを検出する。
【0094】
したがって、本実施形態によれば、受信装置200bは、この検出された誤り訂正ビットの組み合わせから干渉波が重畳された干渉サブキャリアを検出するとともに、この誤り訂正ビットにより復号された組織ビットにおける送信データのビットの硬判定値を、復号された送信データとするため、最も誤りの少ない値として復号結果を得ることができる。
【0095】
以上、第1の実施形態から第4の実施形態までの処理についてまとめると、第1から第4の実施形態における尤度総和算出部230または誤り率算出部230bは、尤度変更手段により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に基づいて、誤り訂正復号時に得られる復号の確からしさを示す確度情報を算出する。
【0096】
そして、干渉サブキャリア判定器(干渉波存在帯域推定手段)240または干渉サブキャリア判定器(干渉波存在帯域推定手段)240bは、算出された確度情報を、異なる前記サブキャリアの組み合わせ間で、比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定する。
【0097】
以上により、本発明の第1から第4の実施形態における受信装置200、受信装置300、受信装置400または受信装置200bは、伝送速度や伝送効率を低下させることなく、干渉波の存在する周波数帯域を検出することができる。また、送信信号フォーマットを変更する必要がないので、既存の無線通信システムの送信装置を改変することなく干渉波の存在する周波数帯域を検出することができるので、既存の無線通信システムに導入することが容易である。
【0098】
なお、本発明の実施形態である受信装置200、受信装置300、受信装置400または受信装置200bは、干渉サブキャリア判定結果またはD/U比を送信装置100に送信することにより、受信装置の電波の受信環境を送信装置100に対してフィードバックするようにしてもよい。
【0099】
この結果、送信装置100は、フィードバックされる干渉サブキャリア判定結果またはD/U比を用いて、送信に用いるサブキャリアの帯域を有効に使用し、データの送信を行うことが可能となる。例えば、送信装置100は、干渉サブキャリア判定結果から干渉波が重畳しないサブキャリアにデータを送信する伝送帯域を変更することにより、伝送効率を向上させることができる。また、送信装置100は、干渉サブキャリア判定結果から干渉波が重畳しているサブキャリアの送信電力を下げることにより、無駄な電力の消費を削減することができる。
【0100】
また、本発明の第1から第4の実施形態における受信装置200、受信装置300、受信装置400または受信装置200bは、干渉波が重畳しているサブキャリアにより送信された誤り訂正符号の尤度に対して、その寄与を弱くする重み付けを行い、干渉波が重畳されていない検出対象サブキャリアにより送信された誤り訂正符号の尤度に対して、その寄与を強くする重み付けを行う。そして、受信装置200、受信装置300、受信装置400または受信装置200bは、再度、軟判定値列を算出し、再度算出した軟判定値列の尤度絶対値総和が、最初に算出された尤度絶対値総和の最大値と比較して大きい場合、再度算出した軟判定値列を用いて硬判定処理を行うことにより、より確からしさが大きい復号結果を得ることができる。
【0101】
また、本発明の第1から第4の実施形態における受信装置200、受信装置300、受信装置400または受信装置200bは、複数シンボルに渡って干渉波が存在する周波数帯域を判定し、判定した周波数帯域の平均である平均周波数帯域を干渉波が存在する周波数帯域として算出してもよい。これにより、無線信号が伝搬路を伝送される際に、無線信号に入り込むノイズの影響を抑えることができるので、干渉波が存在する周波数を推定する際の推定精度を向上させることができる。
【0102】
また、本発明の第1から第3の実施形態における受信装置200、受信装置300または受信装置400における干渉サブキャリア判定器は、尤度の絶対値の総和が最大となる尤度を抽出したが、これに限らず尤度の絶対値の総和が所定の閾値を超える尤度を抽出してもよい。
また、本発明の第1から第3の実施形態における受信装置200、受信装置300または受信装置400における干渉サブキャリア判定器は、尤度の取りうる値がマイナス無限大からプラス無限大であるLLRを使用したため尤度の絶対値の総和を比較したが、これに限らず、尤度の取りうる値が0以上の場合には、尤度の単純な総和を比較してもよい。
【0103】
また、本発明の第1から第3の実施形態における受信装置200、受信装置300または受信装置400は、各サブキャリア信号の尤度に基づく値である軟判定値の総和を算出し、算出する軟判定値の総和を比較したが、これに限らず、所定の値を超える軟判定値の和を算出し、算出した和を比較してもよい。
【0104】
また、本発明の実施形態である受信装置200、受信装置300、受信装置400または受信装置200bの機能またはその機能の一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定期間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のコンピュータプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0105】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0106】
200、200b、300、400 受信装置
204、204c 伝搬路推定器(伝搬路推定手段)
207 復調器(尤度算出手段)
210 入力尤度設定器(尤度変更手段)
220、220b 復号部(復号手段)
230 尤度総和算出部
230b 誤り率算出部
240、240b 干渉サブキャリア判定器(干渉波存在帯域推定手段)
241、241b 選択器
242、242c 硬判定器(データ復号手段)
410 レプリカ信号生成部(レプリカ信号生成手段)
415 伝搬路係数乗算器(受信信号再現手段)
418 減算器(干渉信号算出手段)
420 平均電力測定部(平均電力測定手段)
430 除算器(電力比算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャリア通信により送信装置から送信された無線信号を受信する受信装置であって、
受信した前記無線信号を復号し、各サブキャリア信号毎に復号の確からしさを示す尤度を算出する尤度算出手段と、
単一または複数のサブキャリア信号から構成される互いに異なるサブキャリアの組み合わせを複数抽出し、抽出した該サブキャリアの組み合わせ毎に、該サブキャリアの組み合わせを構成する各サブキャリア信号の尤度を所定の範囲の値に変更する尤度変更手段と、
前記尤度変更手段により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に基づいて、誤り訂正復号時に得られる復号の確からしさを示す確度情報を算出する確度算出手段と、
前記算出された確度情報を、異なる前記サブキャリアの組み合わせ間で、比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定する干渉波存在帯域推定手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記確度算出手段は、前記尤度変更手段により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度を用いて誤り訂正した後の軟判定値の和を前記サブキャリアの組み合わせ毎に算出し、
前記干渉波存在帯域推定手段は、前記算出された和を、異なる前記サブキャリアの組み合わせ間で比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記干渉波存在帯域判定手段は、前記尤度の総和が最大となる尤度のうち尤度変更手段により尤度の変更がされたサブキャリア信号に干渉波が存在すると判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記尤度変更手段により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に対して、誤り訂正処理を行うことにより前記各サブキャリア信号の尤度に基づく値を算出する復号手段を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記無線信号が伝搬された伝搬路のチャネル情報を推定する伝搬路推定手段と、
干渉波の存在するサブキャリア以外のサブキャリアの組合せによりデータを復号するデータ復号手段と、
前記復号されたデータに基づき、他の前記無線通信装置が送信した希望波信号の複製であるレプリカ信号を生成するレプリカ信号生成手段と、
前記レプリカ信号に前記チャネル情報を乗算することにより、擬似的に伝搬路を伝達された受信信号を再現する受信信号再現手段と、
前記再現された受信信号から前記レプリカ信号を減算して干渉信号を算出する干渉信号算出手段と、
前記レプリカ信号と前記干渉信号のそれぞれの平均電力を測定する平均電力測定手段と、
前記レプリカ信号の平均電力を前記干渉信号の平均電力で除算することにより希望波対干渉波電力比を算出する電力比算出手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記尤度変更手段は、前記抽出した組み合わせ毎に、前記算出された各サブキャリア信号の尤度に所定の重みを乗算して前記尤度を変更することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記所定の範囲の値は、尤度が取り得る値の中央値であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項8】
前記送信装置の送信する前記データに誤り検出符号が含まれており、
前記確度算出手段が、
受信した前記無線信号に対して、複数の前記検証対象サブキャリアに配置された前記誤り訂正ビットの複数の組み合わせ毎に誤り訂正復号を行い、誤り訂正復号によって得られた前記データと誤り検出符号とにより、誤り検出結果から誤り率を求め、当該誤り率を前記確度情報として出力し、
前記干渉波存在帯域推定手段が、前記誤り率を、異なる前記誤り訂正ビットの組み合わせ間で比較することによって、前記検出対象サブキャリアのなかから干渉波の存在する干渉サブキャリアを推定することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項9】
マルチキャリア通信により送信装置から送信された無線信号を受信する受信装置が実行する受信方法であって、
受信した前記無線信号を復号し、各サブキャリア信号毎に復号の確からしさを示す尤度を算出する尤度算出手順と、
単一または複数のサブキャリア信号から構成される互いに異なるサブキャリアの組み合わせを複数抽出し、抽出した該サブキャリアの組み合わせ毎に、該サブキャリアの組み合わせを構成する各サブキャリア信号の尤度を所定の範囲の値に変更する尤度変更手順と、
前記尤度変更手順により変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に基づいて、誤り訂正復号時に得られる復号の確からしさを示す確度情報を算出する確度算出手順と、
前記算出された確度情報を、異なる前記サブキャリアの組み合わせ間で、比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定する干渉波存在帯域推定手順と、
を有することを特徴とする受信方法。
【請求項10】
マルチキャリア通信により送信装置から送信された無線信号を受信する受信装置であるコンピュータに、
受信した前記無線信号を復号し、各サブキャリア信号毎に復号の確からしさを示す尤度を算出する尤度算出ステップと、
単一または複数のサブキャリア信号から構成される互いに異なるサブキャリアの組み合わせを複数抽出し、抽出した該サブキャリアの組み合わせ毎に、該サブキャリアの組み合わせを構成する各サブキャリア信号の尤度を所定の範囲の値に変更する尤度変更ステップと、
前記尤度変更ステップにより変更された尤度を含む各サブキャリア信号の尤度に基づいて、誤り訂正復号時に得られる復号の確からしさを示す確度情報を算出する確度算出ステップと、
前記算出された確度情報を、異なる前記サブキャリアの組み合わせ間で、比較することによって、干渉波の存在するサブキャリア信号を推定する干渉波存在帯域推定ステップと、
を実行させるための受信プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−142858(P2012−142858A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−759(P2011−759)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】