説明

受信装置およびカメラシステム

【課題】非同期伝送路の伝送遅延のジッタに対応可能で、かつ、同期信号入力に同期した
映像出力を得ることできる低遅延映像伝送を実現できる送信装置、受信装置、映像伝送装
置、およびカメラシステムを提供する。
【解決手段】送信装置30は、入力される映像信号を符号化データに変換し、この符号化
データを伝送路に送出する符号化部31と、伝送路50を伝送された位相情報を基に、入
力される映像信号の位相を調整する同期信号SYNCを発生する同期信号発生部33と、
を有し、位相情報PHSは、伝送に必要な時間だけ、同期信号発生部33で発生する同期
信号のタイミングを前にずらすことを示す情報を含み、同期信号発生部33は、入力され
る映像信号を伝送に必要な時間だけ前倒しするように同期信号SYNCを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を伝送する受信装置およびカメラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ライブ放送などでは低遅延の映像伝送が求められている。
また、伝送路としてはコストの面などからLANやインターネット、NGN等のIP網など非同期通信回線での伝送が求められている。
このような要求から低遅延コーデックとしてラインベースコーデックが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
マルチカメラが前提となるシステムカメラやVTRでは、各機器の出力位相を合わせるために、受信装置に同期信号入力が設けられており、出力映像信号が同期信号に同期する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-028541号公報
【特許文献2】特開2006-325020号公報
【特許文献3】特開平11-275461号公報
【特許文献4】特開平01−255382号公報
【特許文献5】特開2006−217384号公報
【特許文献6】特開平11−275461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、映像の供給元(カメラやVTRなど)となる機器Aと同期信号入力の入力先となる機器Bが一致せず、この2つの機器間で映像を伝送している場合は、伝送遅延を考慮しないと機器Bから出力する出力映像信号が正しく同期信号に同期しない。
【0006】
このような例としては、機器Aとしてカメラ、機器Bとしてカメラ・コントロール・ユニット(CCU)からなるシステムが挙げられる。出力映像と同期信号を正しく同期させるため、カメラ・コントロール・ユニットとカメラが接続されているときに、ケーブル等による遅延分だけカメラ内で同期信号の位相を進めることで、カメラ・コントロール・ユニットへ入力された同期信号と映像出力を同期させる技術がある(たとえば、特許文献4,5参照)。
【0007】
しかし、機器Aと機器Bを非同期伝送路でつなぐ場合においては、これらの技術を使うことができない。非同期伝送路においては、伝送遅延が一定ではなく、ばらつきを有しており、このばらつきを吸収する必要があるからである。伝送遅延のばらつきを考慮しない場合、遅延量が大きくなると映像を出力すべき時間になっても映像情報が機器Bに届かず、映像が乱れるという現象が発生する。
【0008】
IP網などの非同期通信回線を使ってコーデックデータを伝送する場合、コーデックでのジッタ、伝送路でのジッタなど多くの不安定な遅延要素が含まれる。
このため、安定してデコードするためにデータ領域にバッファを設け、同期をとる技術が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0009】
しかし、上記した特許文献2に開示された技術では、安定した映像の出力は得られるものの、基準同期信号入力に同期した映像を得ることはできない。
そのため、デコーダの出力映像を基準同期信号入力に同期した映像にするために映像をフレームバッファで同期をとる技術が必要となる(たとえば特許文献3参照)。
【0010】
このように位相信号入力の位相にデコーダの出力位相を合わせるためにフレームバッファを用いる場合、フレームバッファで1フレーム近くの遅延が発生してしまう。
特に、コーデックでの遅延量が数ラインの低遅延コーデックを用いた低遅延映像伝送装置ではフレームバッファでの遅延は無視できない大きな遅延であり、低遅延を最大の特徴とする低遅延伝送システムでは大きな問題である。
【0011】
また、機器Aと機器Bが非同期伝送路でつながれている場合に同期をとる場合、特許文献3に記載されている方法では、機器Aの映像出力から機器Bの映像出力までの遅延時間を意図した値に調整することができない問題がある。
【0012】
更に、映像信号をバッファに記憶しておく時間が短すぎると、今度は伝送遅延のばらつきに対応できず、バッファがアンダーフローした場合、若しくはオーバーフローした場合に、出力映像が乱れる原因となる。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、非同期伝送路の伝送遅延のジッタに対応可能で、かつ、同期信号入力に同期した映像出力を得ることのできる低遅延映像伝送を実現することが可能な、新規かつ改良された 受信装置およびカメラシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、伝送路を伝送された映像の符号化データを復号する復号部と、上記復号部で復号された映像データを基準同期信号に同期させて出力する同期出力部と、入力される上記符号化データおよび時刻情報により伝送路の遅延に係る情報を取得する伝送遅延情報取得部と、上記伝送遅延情報取得部で得られた前記情報に基づいて、入力される上記基準同期信号の位相を制御する位相情報を求め、当該位相情報を、上記伝送路を通して伝達する同期信号伝達部と、を有する受信装置が提供される。
【0015】
また、前記伝送遅延情報取得部は、伝送路の遅延時間を測定する伝送遅延測定部を含み、前記同期信号伝達部は、上記伝送遅延測定部で得られた遅延時間から伝送に必要な時間を求め、入力される上記基準信号から伝送に必要な時間分だけ前倒しした同期信号を発生するための前記位相情報を求めるものであってもよい。
【0016】
また、上記符号化データは、上記伝送路に送出された時刻情報が付加されており、上記伝送遅延測定部は、上記符号化データに付加された時刻情報および当該符号化データを受信したときの時刻情報に基づき上記伝送路における遅延時間を測定する処理を複数回行い、複数の測定された集合的な遅延時間に対して統計処理を行って伝送に必要な時間を伝送遅延許容時間として求め、上記同期信号伝達部は、上記伝送遅延許容時間を上記伝送に必要な時間として当該時間を同期信号の位相差とし、入力される上記基準同期信号を時刻に変換し、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を生成するための時刻の情報を上記位相情報として上記伝送路を通して伝達するものであってもよい。
【0017】
また、少なくとも上記伝送路および上記復号部によりコーデック部が形成され、当該コーデック部の遅延量が、コーデック遅延量としてあらかじめ設定され、上記同期信号伝達部は、上記伝送遅延測定部で得られた伝送遅延許容時間と上記コーデック遅延量の総和時間を上記伝送に必要な時間として求め、入力される上記基準同期信号から伝送に必要な時間分だけ前倒しした同期信号を発生するための位相情報を求め、当該位相情報を、上記伝送路を通して伝達するものであってもよい。
【0018】
また、上記符号化データは、上記伝送路に送出された時刻情報が付加されており、上記伝送遅延測定部は、上記符号化データに付加された時刻情報および当該符号化データを受信したときの時刻情報に基づき上記伝送路における遅延時間を測定する処理を複数回行い、複数の測定された集合的な遅延時間に対して統計処理を行って伝送に必要な時間として伝送遅延許容時間を求め、上記同期信号伝達部は、上記伝送遅延許容時間とあらかじめ設定された上記コーデック遅延量の総和の時間を伝送に必要な時間として当該時間を同期信号の位相差とし、入力される上記基準同期信号を時刻に変換し、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を作るための時刻の情報を上記位相情報として上記伝送路を通して伝達するものであってもよい。
【0019】
また、上記同期信号伝達部は、入力される上記基準同期信号を同期パルスごとに時刻を記録して上記伝送路に送出するものであってもよい。
【0020】
また、上記伝送遅延情報取得部で得られた前記情報に基づいて、入力される上記基準同期信号の位相を制御するための位相制御量を求める位相制御量計算部を備え、前記同期信号伝達部は、前記位相制御量に基づいて上記基準同期信号の位相を制御し、制御された位相情報を上記伝送路を通して伝達するものであってもよい。
【0021】
また、前記伝送路の遅延に係る情報の統計情報を計算する統計計算部を備え、前記位相制御量計算部は、前記統計情報に基づいて前記位相制御量を求めるものであってもよい。
【0022】
また、前記伝送路の遅延に係る情報の統計情報を計算する統計計算部と、前記統計情報を表示する表示部と、前記表示部の表示に基づいて入力される操作量を取得する操作部と、を備え、前記位相制御量計算部は、前記統計情報と前記操作量とに基づいて前記位相制御量を求めるものであってもよい。
【0023】
また、前記同期信号伝達部は、前記位相制御量に基づいて上記基準同期信号の位相を制御する位相制御部を含み、前記位相制御部は、上記基準同期信号の位相を目標となる位相制御量に瞬時に制御するものであってもよい。
【0024】
また、前記同期信号伝達部は、前記位相制御量に基づいて上記基準同期信号の位相を制御する位相制御部を含み、前記位相制御部は、上記基準同期信号の位相を目標となる位相制御量に段階的に制御するものであってもよい。
【0025】
また、前記伝送路の遅延に係る情報は、前記伝送路の遅延時間又は上記符号化データを蓄積するバッファの使用率であってもよい。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、撮像して映像信号を得る撮像部と、伝送路と、上記撮像部で撮像して得られた映像信号の符号化データを上記伝送路に送出する送信装置と、上記符号化データを受信する受信装置と、を有し、上記送信装置は、入力される映像信号を符号化データに変換し、当該符号化データを上記伝送路に送出する符号化部と、上記伝送路を伝送された位相情報を基に、上記撮像部により得られ、入力される映像信号の位相を調整する同期信号を発生する同期信号発生部と、を含み、上記位相情報は、伝送に必要な時間だけ、上記同期信号発生部で発生する同期信号のタイミングを前にずらすことを示す情報を含み、上記同期信号発生部は、入力される映像信号を伝送に必要な時間だけ前倒しするように上記同期信号を発生し、上記受信装置は、伝送路を伝送された映像の符号化データを復号する復号部と、上記復号部で復号された映像データを基準同期信号に同期させて出力する同期出力部と、入力される上記符号化データおよび時刻情報により伝送路の遅延に係る情報を取得する伝送遅延情報取得部と、上記伝送遅延情報取得部で得られた前記情報に基づいて、入力される上記基準同期信号の位相を制御する位相情報を求め、当該位相情報を、上記伝送路を通して伝達する同期信号伝達部と、と、を含む、カメラシステムが提供される。
【0027】
また、上記位相情報は、伝送に必要な時間だけ、上記同期信号発生部で発生する同期信号のタイミングを前にずらすことを示す情報を含み、上記同期信号発生部は、入力される映像信号を伝送に必要な時間だけ前倒しするように上記同期信号を発生し、前記伝送遅延情報取得部は、伝送路の遅延時間を測定する伝送遅延測定部を含み、前記同期信号伝達部は、上記伝送遅延測定部で得られた遅延時間から伝送に必要な時間を求め、入力される上記基準信号から伝送に必要な時間分だけ前倒しした同期信号を発生するための前記位相情報を求めるものであってもよい。
【0028】
また、上記送信装置は、上記符号化データに上記伝送路に送出される時刻情報を付加する時刻情報付加部を含み、上記受信装置の上記伝送遅延測定部は、上記符号化データに付加された時刻情報および当該符号化データを受信したときの時刻情報に基づき上記伝送路における遅延時間を測定する処理を複数回行い、複数の測定された集合的な遅延時間に対して統計処理を行って伝送に必要な時間を伝送遅延許容時間として求め、上記同期信号伝達部は、上記伝送遅延許容時間を上記伝送に必要な時間として当該時間を同期信号の位相差とし、入力される上記基準同期信号を時刻に変換し、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を生成するための時刻の情報を上記位相情報として上記伝送路を通して上記送信装置に伝達し、上記送信装置の同期信号発生部は、上記時刻の情報を基に、発生する上記同期信号の位相を前倒しした位相となるように設定するものであってもよい。
【0029】
また、上記符号化部、上記伝送路、および上記復号部によりコーデック部が形成され、当該コーデック部の遅延量が、コーデック遅延量としてあらかじめ設定され、上記同期信号伝達部は、上記伝送遅延測定部で得られた伝送遅延許容時間と上記コーデック遅延量の総和時間を上記伝送に必要な時間として求め、入力される上記基準同期信号から伝送に必要な時間分だけ前倒しした同期信号を発生するための位相情報を求め、当該位相情報を、上記伝送路を通して上記送信装置に伝達するものであってもよい。
【0030】
また、上記送信装置は、上記符号化データに上記伝送路に送出される時刻情報を付加する時刻情報付加部を含み、上記受信装置の伝送遅延測定部は、上記符号化データに付加された時刻情報および当該符号化データを受信したときの時刻情報に基づき上記伝送路における遅延時間を測定する処理を複数回行い、複数の測定された集合的な遅延時間に対して統計処理を行って伝送に必要な時間として伝送遅延許容時間を求め、上記同期信号伝達部は、上記伝送遅延許容時間とあらかじめ設定された上記コーデック遅延量の総和の時間を伝送に必要な時間として当該時間を同期信号の位相差とし、入力される上記基準同期信号を時刻に変換し、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を作るための時刻の情報を上記位相情報として上記伝送路を通して上記送信装置に伝達し、上記送信装置の同期信号発生部は、上記時刻の情報を基に、発生する上記同期信号の位相を前倒しした位相となるように設定するものであってもよい。
【0031】
また、上記受信装置は、上記伝送遅延情報取得部で得られた前記情報に基づいて、入力される上記基準同期信号の位相を制御するための位相制御量を求める位相制御量計算部を備え、前記同期信号伝達部は、前記位相制御量に基づいて上記基準同期信号の位相を制御し、制御された位相情報を上記伝送路を通して伝達するものであってもよい。
【0032】
また、上記受信装置は、前記伝送路の遅延に係る情報の統計情報を計算する統計計算部を備え、前記位相制御量計算部は、前記統計情報に基づいて前記位相制御量を求めるものであってもよい。
【0033】
また、上記受信装置は、前記伝送路の遅延に係る情報の統計情報を計算する統計計算部と、前記統計情報を表示する表示部と、前記表示部の表示に基づいて入力される操作量を取得する操作部と、を備え、前記位相制御量計算部は、前記統計情報と前記操作量とに基づいて前記位相制御量を求めるものであってもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、非同期伝送路の伝送遅延のジッタに対応可能で、かつ、同期信号入力に同期した映像出力を得ることできる低遅延映像伝送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る映像伝送装置を採用したカメラシステムの構成例を示す図である。
【図2】本実施形態において、伝送に必要な時間だけ送信装置側の同期信号の発生を早める基本原理を説明するための図である。
【図3】既存の映像伝送装置の課題を説明するための図である。
【図4】本実施形態の映像伝送装置の起動時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】第2の実施形態のシステム構成を示す模式図である。
【図6】第2の実施形態のシステム構成を示す模式図である。
【図7】統計処理の結果の一例を示す模式図である。
【図8】統計処理の結果の一例を示す模式図である。
【図9】統計処理の結果の一例を示す模式図である。
【図10】統計処理の結果の一例を示す模式図である。
【図11】位相進み量を瞬時に変える場合を示す模式図である。
【図12】位相進み量を徐々に変える場合を示す模式図である。
【図13】図6の受信装置40の各タイミングにおける信号を示すタイミングチャートである。
【図14】映像情報の受信から位相進み量を指令するまでの処理を示すフローチャートである。
【図15】同期信号入力から位相情報送信までの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0037】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
第1の実施形態
1.映像伝送装置を含むカメラシステムの全体構成の概要
2.送信装置の構成例
3.受信装置の構成例
4.起動時の動作例
第2の実施形態
1.カメラシステムの全体構成
2.統計情報の一例
3.統計情報に基づく位相進み量の調整
4.本実施形態のシステムの処理手順
【0038】
・第1の実施形態
<1.映像伝送装置を含むカメラシステムの全体構成の概要>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る映像伝送装置を採用したカメラシステムの構成例を示す図である。
【0039】
本カメラシステム10は、撮像部20、送信装置30、受信装置40、および伝送路50を含んで構成されている。
そして、送信装置30、受信装置40、および伝送路50により映像伝送装置が構成される。
【0040】
伝送路50は、送信装置30と受信装置40間の信号伝送に適用される。
本実施形態において伝送路50は、LANやインターネット、NGN等のIP網などの非同期伝送路を想定している。なお、非同期伝送路は伝送にかかる時間に揺らぎがあり、その時間を伝送ジッタと呼ぶ。
また、本実施形態においては、たとえば伝送路50を伝送される信号はパケット化される。
【0041】
本実施形態のカメラシステム10は、以下の特徴をもって構成されている。
カメラシステム10においては、基本的に図2に示すように、送信装置30から同期信号SYNCを出力し、その同期信号SYNCの位相を制御することにより、送信装置30に入力される撮像部20により得られた映像信号の位相を制御する。
受信装置40に入力される基準同期信号RSYNCから、伝送に必要な遅延量だけ、送信装置30で出力する同期信号SYNCのタイミングを前にずらすことで、入力映像を伝送に必要な遅延時間だけ前倒しする。
これにより、本カメラシステム10は、受信装置40に入力された基準同期信号RSYNCに同期したデコード映像を得ることができる。
そして、本カメラシステム10は、伝送路50で生じる遅延量を測定する機能と組み合わせ、最低の遅延量(伝送遅延許容時間)を算出することにより、低遅延映像伝送を実現する。なお、伝送遅延許容時間は、伝送遅延の許容最大値に相当し、非同期ネットワークによる伝送遅延時間(伝送遅延量)と、非同期ネットワークのジッタを吸収するバッファ400で待機する時間との和に相当する。
【0042】
このような構成を採用した理由は以下の通りである。
既存の映像伝送装置では入力映像はフリーの位相であり、その映像をエンコード(符号化)し、伝送し、デコード(復号)する時に生じる遅延時間だけ遅れた映像が受信機の映像出力から出力されるような構造となっている。
このような構造では低遅延の映像を伝送するために低遅延コーデックを使ってエンコードとデコードの遅延量を低く抑えたとしても、非同期伝送路での伝送ジッタを吸収するために、実際に必要なバッファ量よりも多くのバッファを必要としていた。
これはIP網などの非同期伝送路での伝送ジッタがどのくらいの量か不明であるため、余裕を持つ必要があるからである。
また、複数カメラの映像を切り替え器(スイッチャー)に入力する場合など、受信装置からの出力映像を基準同期信号RSYNCに同期させる必要がある場合、図3に示すように、デコーダDECの後段に映像を同期するためのフレームバッファFBFが必要となる。 このフレームバッファFBFでの遅延は低遅延伝送では無視できない大きなものとなる。
【0043】
そこで、本実施形態においては、受信装置40に入力される基準同期信号RSYNCから、伝送に必要な遅延量だけ、送信装置30で出力する同期信号SYNCのタイミングを前にずらすことで、入力映像を伝送に必要な遅延時間だけ前倒しする。
これにより、本カメラシステム10は、受信装置40に入力された基準同期信号RSYNCに同期したデコード映像を得ることができ、伝送路50で生じる遅延量を測定する機能と組み合わせ、最適な遅延量を求めて低遅延映像伝送を実現するように構成される。
【0044】
以下、以上の特徴を有する本カメラシステム10を形成する撮像部20、送信装置30、および受信装置40の構成および機能について具体的に説明する。
【0045】
[1.撮像部20の構成]
撮像部20は、CCDやCMOSイメージセンサ等の撮像素子と、撮像素子で光電変換された信号に対してカメラ信号処理を施す信号処理回路を含んで構成される。
撮像部20は、撮像して得られた映像信号VDSを送信装置30に出力する。
撮像部20は、同期信号入力を備えており、イメージセンサの撮像タイミングを調整することで、映像信号VDSの出力位相を同期信号入力に合わせる機能を有する。
なお、映像信号VDSにはビデオ信号および音声信号が含まれる。
【0046】
<2.送信装置30の構成例>
送信装置30は、符号化部としてのエンコーダ31、時刻情報付加部としてのタイムスタンプ付加部32、同期信号発生器33、および時刻情報保持部34を有する。
【0047】
エンコーダ31は、入力される映像信号VDSを符号化データに変換し、この符号化データをタイムスタンプ付加部32に出力する。
タイムスタンプ付加部32は、時刻情報保持部34の時刻情報を参照して、符号化データに伝送路50に送出される時刻情報をタイムスタンプとして付加し、タイムスタンプを付加した符号化データDENCを伝送路50に送出する。
【0048】
同期信号発生器33は、受信装置40から送出され、伝送路50を伝送された位相情報を基に、時刻情報保持部34の時刻情報を参照して、撮影部20に対して同期信号SYNCを発生する。撮像部20は撮像タイミングを調整することで、入力された同期信号SYNCに位相の合った映像信号VDSを送信装置30に対して出力する。これにより、送信装置30に入力される映像信号VDSの位相を調整する。
ここで、位相情報PHSは、伝送に必要な時間だけ、同期信号発生器33で発生する同期信号SYNCのタイミングを前にずらすことを示す情報を含む。
位相情報PHSは、受信装置40に入力される基準同期信号RSYNCを時刻に変換し、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号SYNCを生成するための時刻の情報として伝送路50を伝送される。
位相情報については、後でさらに詳述する。
【0049】
同期信号発生器33は、このような位相情報PHSを基に、入力される映像信号VDSを伝送に必要な時間だけ前倒しするように同期信号SYNCを発生する。
同期信号発生器33は、位相情報PHSに含まれる時刻の情報を基に時刻情報のパルスを作ることで同期信号SYNCを作り出し、発生する同期信号SYNCの位相を前倒しした位相となるように設定する。
【0050】
本実施形態においては、送信装置30の時刻情報保持部34は、受信装置40と独立し
た時刻情報を持つ。この時刻は世界で統一されている何日何時といった情報である。NTP(Network Time Protocol),GPS(Global Positioning
System),RTC(Real TimeClock)などの技術を用いて正しい時刻に合わせておくことが可能である。これにより、受信装置40の時刻情報47と時刻情報34の時刻が近くなるように調整される。
【0051】
<3.受信装置40の構成例>
受信装置40は、タイムスタンプ取得部41、復号部としてのデコーダ42、同期出力部としてバッファ43、遅延時間計算部44、同期信号時刻変換部45、制御部であるCPU46、および時刻情報保持部47を有する。
タイムスタンプ取得部41および遅延時間計算部44により伝送遅延情報取得部(伝送遅延測定部)が構成される。
また、同期信号時刻変換部45およびCPU46により同期信号伝達部が構成される。
【0052】
また、本実施形態においては、送信装置30のエンコーダ31、タイムスタンプ付加部32、伝送路50、タイムスタンプ取得部41、およびデコーダ42によりコーデック部が形成される。
なお、タイムスタンプ付加部32およびタイムスタンプ取得部41を含まない場合も基本的なコーデック部が形成される。
LLVCなどの低遅延コーデックを使うことで低遅延映像伝送を実現できる。コーデック部での遅延量を「コーデック遅延量」と呼び、コーデックの方法や設定によって変化し、伝送映像の絵柄によっても変化する。
本実施形態の受信装置40においては、コーデック遅延量の最大値をあらかじめ測定してあり、その最大値がコーデック遅延量として設定されている。
【0053】
タイムスタンプ取得部41は、送信装置30から送出され伝送路50を伝送された符号化データDENCを受信して、付加されている送出された時刻を示すタイムスタンプ情報を取得して遅延時間計算部44に出力する。また符号化データDENCをデコーダ42に出力する。
【0054】
デコーダ42は、受信した符号化データDENCをデコードし、デコードされた映像データDDECをバッファ43に出力する。
【0055】
同期信号出力部としてのバッファ43は、デコーダ42でデコードされた映像データDDECを、入力される基準同期信号RSYNCに同期させ出力する。
本実施形態では、このバッファ43の量を最低限に抑えることができる。
【0056】
遅延時間計算部44は、受信装置40の伝送遅延測定部として機能する。
遅延時間計算部44は、時刻情報保持部47の時刻情報を参照して、符号化データDENCに付加された時刻情報および符号化データを受信したときの時刻情報に基づき伝送路50における遅延時間を測定する。
遅延時間計算部44は、伝送路50を通る各パケットの遅延時間を取り込み、統計処理を行うことで伝送に必要な遅延時間を求める。この値を「伝送遅延許容時間」と呼ぶ。
このように、遅延時間計算部44は、実際の符号化データを用いて伝送路の遅延時間を測定する。遅延時間計算部44は、伝送遅延のジッタを把握するために一定時間測定を行い、パケットごとの遅延時間が集まったら、遅延時間の集合に対して統計処理を行い、伝送路50でかかる遅延時間を算出する。
【0057】
同期信号時刻変換部45は、時刻情報保持部47の時刻情報を参照して、入力される基準同期信号RSYNCを時刻情報に変換してCPU46に出力する。
CPU46は、同期信号時刻変換部45とともに同期信号伝達部として機能する。
この同期信号伝達部として機能するCPU46は、遅延時間計算部44で得られた伝送遅延許容時間とあらかじめ設定された上記コーデック遅延量の総和の時間を伝送に必要な時間を求める。
CPU46は、求めた伝送に必要な時間を同期信号の位相差とし、同期信号時刻変換部45で時刻に変換された基準同期信号RSYNCを、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を作るための時刻の情報を位相情報として生成する。
そして、CPU46は、生成した位相情報PHSを、伝送路50を通して送信装置30に伝達する。
これに応答して、送信装置30の同期信号発生器33は、時刻の情報を基に時刻情報のパルスを作ることで同期信号SYNCを作り出し、発生する同期信号SYNCの位相を前倒しした位相となるように設定する。
なお、同期信号時刻変換部45およびCPU46を含む同期信号伝達部は、入力される基準同期信号RSYNCを同期パルス、たとえば映像信号の垂直同期信号ごとに時刻を記録して位相情報として伝送路50を通して送信装置30に伝達する。
【0058】
本実施形態においては、受信装置40の時刻情報保持部47は、送信装置30と独立した時刻情報を持つ。この時刻は世界で統一されている何日何時といった情報である。NTP,GPS,RTCなどの技術を用いて正しい時刻に合わせておくことが可能である。これにより、送信装置30の時刻情報34と時刻情報47の時刻が近くなるように調整される。
【0059】
なお、本実施形態においては、遅延時間計算部44で得られた伝送遅延許容時間とあらかじめ設定された上記コーデック遅延量の総和の時間を伝送に必要な時間を求めているが、伝送遅延許容時間を伝送に必要な時間とすることも可能である。
【0060】
<4.起動時の動作例>
図4は、本実施形態の映像伝送装置の起動時の動作を説明するためのフローチャートである。
【0061】
[ステップST1]
まず、ステップST1において、送信装置30と受信装置40間の時刻情報を、時刻情報保持部34,47により合わせる。
【0062】
[ステップST2]
そして、ステップST2において、送信装置30と受信装置40で時刻があっているか否かを確認する。
【0063】
[ステップST3]
ステップST2において、送信装置30と受信装置40で時刻があっていることが確認されると、ステップST3で次に処理が行われる。
送信装置30のエンコーダ31において、入力される映像信号VDSを符号化データに変換し、この符号化データをタイムスタンプ付加部32に出力する。
タイムスタンプ付加部32は、時刻情報保持部34の時刻情報を参照して、符号化データに伝送路50に送出される時刻情報をタイムスタンプとして付加し、タイムスタンプを付加した符号化データDENCを伝送路50に送出する。
伝送路50を伝送された符号化データDENCは受信装置40で受信される。
【0064】
[ステップST4]
ステップST4において、タイムスタンプ取得部41が、伝送路50を伝送された符号化データDENCを受信して、付加されている送出された時刻を示すタイムスタンプ情報を取得して遅延時間計算部44およびデコーダ42に出力する。
そして、遅延時間計算部44は、時刻情報保持部47の時刻情報を参照して、符号化データDENCに付加された時刻情報および符号化データを受信したときの時刻情報に基づき伝送路50における遅延時間を測定する。
このように、遅延時間計算部44は、実際の符号化データを用いて伝送路の遅延時間を測定する。
【0065】
[ステップST5]
ステップST5において、遅延時間計算部44は、伝送遅延のジッタを把握するために一定時間測定を行う。
一定時間経過すると次のステップST6の処理に移行する。
【0066】
[ステップST6]
ステップST6において、遅延時間計算部44は、パケットごとの遅延時間が集まったら、遅延時間の集合に対して統計処理を行い、伝送路50でかかる遅延時間である伝送遅延許容時間を算出する。
この伝送遅延許容時間は、CPU46に供給される。
【0067】
[ステップST7]
ステップST7において、CPU46は、遅延時間計算部44で得られた伝送遅延許容時間とあらかじめ設定された上記コーデック遅延量の総和の時間を伝送に必要な時間を求める。
CPU46は、求めた伝送に必要な時間を同期信号の位相差とし、次のステップST8の処理に移行する。
【0068】
[ステップST8]
ステップST8において、同期信号時刻変換部45が、時刻情報保持部47の時刻情報を参照して、入力される基準同期信号RSYNCを時刻情報に変換してCPU46に出力する。
CPU46は、同期信号時刻変換部45で時刻に変換された基準同期信号RSYNCを、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を作るための時刻の情報を位相情報として生成する。
そして、CPU46は、生成した位相情報PHSを、伝送路50を通して送信装置30に伝達する。
これに応答して、送信装置30の同期信号発生器33は、時刻の情報を基に時刻情報のパルスを作ることで同期信号SYNCを作り出し、発生する同期信号SYNCの位相を前倒しした位相となるように設定する。
なお、同期信号時刻変換部45およびCPU46を含む同期信号伝達部は、入力される基準同期信号RSYNCを同期パルス、たとえば映像信号の垂直同期信号ごとに時刻を記録して位相情報として伝送路50を通して送信装置30に伝達する。
【0069】
[ステップST9]
ステップST9において、送信装置30の同期信号発生器33は、伝送路50を伝送された位相情報PHSを基に、入力される映像信号VDSを伝送に必要な時間だけ前倒しするように同期信号SYNCを発生する。
同期信号発生器33は、位相情報PHSに含まれる時刻の情報を基に時刻情報のパルスを作ることで同期信号SYNCを作り出し、発生する同期信号SYNCの位相を前倒しした位相となるように設定する。
同期信号発生器33から出力された同期信号SYNCを受け、撮像部20は撮像タイミングを調整する。これにより、撮像部30は、受信装置40に入力される基準同期信号RSYNCを、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした位相に同期した映像信号VDSをエンコーダ31に入力させる。
【0070】
上述したと同様に、送信装置30のエンコーダ31において、入力される映像信号VDSを符号化データに変換し、この符号化データをタイムスタンプ付加部32に出力する。
タイムスタンプ付加部32は、時刻情報保持部34の時刻情報を参照して、符号化データに伝送路50に送出される時刻情報をタイムスタンプとして付加し、タイムスタンプを付加した符号化データを伝送路50に送出する。
伝送路50を伝送された符号化データDENCは受信装置40で受信される。
受信装置40において、タイムスタンプ取得部41が、伝送路50を伝送された符号化データDENCを受信して、付加されている送出された時刻を示すタイムスタンプ情報を取得して遅延時間計算部44およびデコーダ42に出力する。
デコーダ42は、受信した符号化データDENCをデコードし、デコードされた映像データDDECをバッファ43に出力する。
そして、同期信号出力部としてのバッファ43は、デコーダ42でデコードされた映像データDDECを、入力される基準同期信号RSYNCに同期させ出力する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、送信装置30から同期信号SYNCを出力し、その同期信号SYNCの位相を制御することにより、送信装置30に入力される撮像部20により得られた映像信号VDSの位相を制御する。
受信装置40に入力される基準同期信号RSYNCから、伝送に必要な遅延量だけ、送信装置30で出力する同期信号SYNCのタイミングを前にずらすことで、入力映像を伝送に必要な遅延時間だけ前倒しする。
これにより、本実施形態によれば、受信装置40に入力された基準同期信号RSYNCに同期したデコード映像を得ることができる。
そして、伝送路50で生じる遅延量を測定する機能と組み合わせ、最低の遅延量を算出することにより、低遅延映像伝送を実現する。
すなわち、本実施形態によれば、非同期伝送路の伝送遅延のジッタに対応可能で、かつ、同期信号入力に同期した映像出力を得ることできる低遅延映像伝送を実現できる。
【0072】
・第2の実施形態
1.カメラシステムの全体構成
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5及び図6は、第2の実施形態のシステム構成を示す模式図である。図5及び図6に示すように、第2の実施形態に係るシステムは、撮像部(カメラ)20、送信装置30、受信装置40、および伝送路50を含んで構成されている。撮像部(カメラ)20、受信装置40、および伝送路50の基本的な構成は、第1の実施形態と同様である。
【0073】
図5に示すように、送信機と受信機とは、非同期ネットワークを介して接続されている。図5は、カメラと送信機の構成を示しており、図6は受信機の構成を示している。
【0074】
図5に示すように、撮像部(カメラ)20は、CCD(撮像素子)22、PLL24、および映像処理部26を有する。送信装置30は、第1の実施形態と同様に、エンコーダ31、タイムスタンプ付加部32、同期信号発生器33、時刻情報保持部34を有する。
【0075】
受信装置40は、タイムスタンプ取得部41、バッファ400、デコーダ42、バッファ43、伝送遅延量計算部410、伝送遅延量統計計算部420、伝送遅延量統計表示部430、位相進み量操作部440、位相進み量計算部450、位相制御器460、同期信号時刻変換部470、同期信号周期測定部480、時刻情報保持部47、を有して構成される。伝送遅延量計算部410、同期信号時刻変換部470は、第1の実施形態の遅延時間計算部44、同期信号時刻変換部45にそれぞれ対応するものである。また、バッファ400は、非同期伝送網において伝送する際に、伝送遅延時間のばらつきを吸収するための伝送遅延ジッター吸収バッファである。なお、第2の実施形態においては、タイムスタンプ取得部41と伝送遅延量計算部410とにより伝送遅延情報取得部が構成される。また、同期信号時刻変換部470と位相制御器460とにより同期信号伝達部が構成される。
【0076】
第2の実施形態では、使用者(ユーザ)が伝送遅延量に基づいて位相進み量を操作することができるようにしている。ここで、伝送遅延量は、上述したように、非同期ネットワークによる伝送遅延時間である。このため、伝送遅延量統計表示部430にて伝送遅延量が表示されると、伝送遅延量を視認したユーザは、位相進み量操作部440を入力することで、位相進み量を所望の値に調整することができる。
【0077】
ユーザによる所望の調整を実現するため、位相遅延量統計計算部430は、伝送遅延量の分布、伝送遅延量の推移、バッファ使用率の分布、バッファ使用率の推移などの各種統計情報を計算する。位相遅延量統計計算部430で計算した結果は、伝送遅延量統計表示部430に表示される。
【0078】
以下、図面に基づいて具体的に説明する。伝送遅延量計算部410は、時刻情報保持部47の時刻情報を参照して、符号化データDENCに付加された時刻情報(タイムスタンプ)および符号化データを受信したときの時刻情報に基づき伝送路50における遅延時間を測定する。伝送遅延統計計算部420は、遅延時間を取り込み、統計処理を行う。統計処理の結果は、伝送遅延量統計表示部430に表示される。また、統計処理の結果は、位相進み量計算部450にも送られる。
【0079】
2.統計情報の一例
図7〜図10は、統計処理の結果の一例を示す模式図である。ここで、図7は、ある時刻における伝送遅延量の平均値、標準偏差、最大値、最小値、ヒストグラムを示している。図7に示す例では、伝送遅延量の分布とともに、その平均値、最小値、最大値、標準偏差、限界遅延時間などの各種の値が示されている。また、図8は、伝送遅延量の推移を示す模式図である。図8に示す例では、伝送遅延量の平均値、標準偏差、最大値、最小値の時間的な推移を示している。
【0080】
また、図9は、ある時刻における伝送遅延ジッター吸収バッファの使用率の平均値、標準偏差、最大値、最小値、ヒストグラムを図示している。図9に示す例では、バッファ400の使用率がヒストグラムで示されており、バッファ使用率の平均値(=42%)、最小値、最大値、標準偏差などの値が示される。また、図10は、図9に示すバッファ使用率の推移を示す模式図である。図10に示す例では、伝送遅延ジッター吸収バッファ使用率の平均値、標準偏差、最大値、最小値の時間的な推移を示している。
【0081】
図7〜図10に示すような統計処理の結果が遅延量統計表示部430に表示されると、ユーザは、手動モードの場合、表示内容に基づいて位相進み量を操作することができる。この場合、ユーザは、位相進み量操作部440に操作を入力する。入力された操作量は、位相進み量計算部450に送られる。位相進み量計算部450は、入力された操作量と、操作入力された位相進み量調節パラメータから適切な位相進み量を計算し、目標となる位相進み量を位相制御器460へ送る。
【0082】
同期信号時刻変換部470には、同期信号VSYNCが入力される。同期信号時刻変換部470は、時刻情報保持部47の時刻情報を参照して、入力される基準同期信号VSYNCを時刻情報に変換して位相制御器460に入力する。位相制御器460は、同期信号時刻変換部470で時刻に変換された基準同期信号VSYNCを、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を作るための時刻の情報を位相情報として生成する。
【0083】
また、同期信号周期測定部480は、基準同期信号VSYNCの周期Tを測定する。周期Tは、位相制御器460の出力に加算される。これにより、カメラに与えるVSYNCの時刻が1周期Tだけ遅れることになる。これにより、過去の時刻の信号を制御することなく、次の時刻の信号の位相を制御することができる。そして、カメラに与えるVSYNCは、非同期ネットワークを介して送信機30へ送られる。
【0084】
送信装置30における基本的な処理は、第1の実施形態と同様である。送信装置30の同期信号発生器33は、時刻の情報を基に時刻情報のパルスを作ることで同期信号SYNC(60Hz)を作り出し、発生する同期信号SYNCの位相を前倒しした位相となるように設定する。PLL24は、同期信号発生器33から送られた同期信号SYNCに基づいて、撮像素子(CCD)22の駆動信号を出力する。撮像素子22で撮像して得られた映像信号VDSは、映像処理部26にて所定の映像処理(例えば、ホワイトバランス処理、エッジ強調処理など)がなされ、送信装置30に出力される。
【0085】
3.統計情報に基づく位相進み量の調整
手動モードの場合、使用者は表示された伝送遅延統計情報に基づいて、位相進み量の調節パラメータを操作することができる。例えば、ユーザは、図7及び図8の統計処理の結果を参照して、伝送遅延量の分布が0に近づいた場合は、位相進み量が小さくするための操作量を位相進み量操作部440に入力することができる。これにより、伝送遅延許容時間が小さくなることで総遅延時間が小さくなり、低遅延とすることができる。また、ユーザは、伝送遅延量の分布が限界遅延時間に近づいた場合は、位相進み量を大きくするための操作量を位相進み量操作部440に入力することができる。これにより、伝送遅延許容時間が大きくなることで大きな伝送遅延にも対応することができるようになり、バッファのアンダーフローによる映像の乱れが発生しにくくなる。
【0086】
また、ユーザは、図9及び図10の統計処理の結果を参照して、バッファ使用率の分布が大きい場合は、位相進み量を小さくするように操作することができる。これにより、伝送遅延許容時間が小さくなり、バッファで待機する時間も減るため、バッファ使用率を低下させると同時に低遅延とすることができる。また、ユーザは、バッファ使用率の分布が小さい場合は、位相進み量を大きくするように操作することができる。これにより、伝送遅延許容時間が大きくなり、バッファで待機する時間も増えるため、バッファ使用率を増加させることができる。好適には、バッファ400がアンダーフローにならない範囲で、バッファ使用率をできるだけ低下させるように調整する。
【0087】
位相進み量の調節パラメータとしては、位相進み量そのものの値に加え、トータル遅延時間、遅延パケット破棄率、位相進み量オフセット、最大遅延量マージン、平均バッファ使用率、最大/最小バッファ使用率などを用いることができる。
【0088】
また、自動モードの場合、位相進み量計算部450は、伝送遅延量統計計算部420の計算結果に基づいて位相進み量を計算することができる。この場合、位相進み量計算部450は、伝送遅延統計計算部420から送られた伝送遅延量統計情報に基づいて、位相進み量を計算する。
【0089】
自動モードの場合において、位相進み量を計算する方法の具体例としては、統計情報から伝送遅延時間の確率分布p(t)を推定し、この分布から、パケットロスがある目標値P_loss以下になる最小の伝送遅延時間t_delayを求める。この伝送遅延時間t_delayに、映像のエンコード・デコード時間やパケット化時間など伝送以外に必要な時間t_miscを加えた時間(t_delay+t_misc)を、位相進み量として設定する。
【0090】
以上のように、伝送遅延量またはバッファ使用率の分布に基づいて、伝送遅延許容時間を最適に制御することができる。従って、伝送遅延量が限界遅延時間を超えてしまうこと確実に抑止することが可能となる。また、バッファ使用率がオーバーフローまたはアンダーフローしてしまうことを確実に抑止することが可能となる。
【0091】
特に品質の要求される放送用機器において、映像の品質が確保できるかどうかをオペレータが確認できるということは非常に重要である。例えばVTRにおいては、テープの再生が正常に行われているかを示すモニタリング機能があり、製品に搭載されている。またカメラにおいては、システムカメラとカメラ・コントロール・ユニット間の光ケーブル伝送の安定度を知るために光レベルモニタリング機能が搭載されている。非同期ネットワークを利用する場合においても、ネットワークを共有する他の機器の通信状態によって伝送品質が左右されるため、本実施形態のようなモニタリング機能を搭載することで、最適な調整を行うことが可能となる。これにより、運用中に伝送路の状況(伝送遅延、そのばらつき等)が変化した場合には、状況に応じて伝送遅延許容時間、バッファ使用率を調整することで、映像の乱れを確実に抑えることが可能である。
【0092】
図11及び図12は、位相を制御する方法の例を示す模式図である。ここで、図11は、位相進み量を瞬時に変える場合を示している。この場合、図11に示すように、上段に示す位相から下段に示す位相へ瞬時に位相進み量を変更する。この方法は、素早く位相調整ができるが、カメラ側の同期信号による同期が外れ、映像が乱れることが想定される。図11の方法は、位相の変化が早い一方、映像が乱れる可能性があるために、同期信号の抜き差し、または映像フォーマットの変更、起動時初期化処理など、撮影前の準備などで主に用いることが好適である。
【0093】
また、図12は、位相進み量を徐々に変える場合を示している。この場合、図12に示すように、最上段に示す位相から再下段に示す位相へ徐々に位相進み量を変更する。この場合、与えられた位相進み量になるように、カメラの同期が外れない範囲内で位相進み量を少しずつ変化させる。この方法は、カメラ20の動作周波数を変化させることによって位相を動かすため、図10で説明したようにCCD22の駆動周波数が徐々に変化するため、カメラの同期が外れず映像が乱れない。一方、位相進み量の変化は図11の方法に比べて遅くなる。図12の方法は、映像の乱れが最小限に抑えられるため、主として撮影中の位相調整などに用いることが好適である。
【0094】
図12の場合において、位相進み量を徐々に変える場合の具体的な処理例を以下に示す。
if(t_goal-t_now > Δt_max) then t_next = t_now + Δt_max
else if(t_goal-t_now < -Δt_max) then t_next = t_now - Δt_max
else t_next = t_goal
なお、上式において、
t_goal
: 位相進み量の目標値
t_now
: 現在の位相進み量
t_next
: 次の位相進み量
Δt_max : 位相進み量の微小変化量の最大値
である。
上式により、以下の処理が実現される。
・位相進み量の目標値から現在の位相進み量の差が、微小変化量の最大値以上の場合は、次の位相進み量を現在の位相進み量と微小変化量の最大値の和とする。
・現在の位相進み量から位相進み量の目標値の差が、微小変化量の最大値以上の場合は、次の位相進み量を現在の位相進み量と微小変化量の最大値の差とする。
・それ以外の場合は、位相進み量の目標値を次の位相進み量とする。
【0095】
図13は、図6の受信装置40の各タイミングにおける信号を示すタイミングチャートである。タイミング1は、同期信号時刻変換部470にて同期信号SYNCが時刻に変換された状態を示している。また、タイミング2は、位相進み量計算部450から出力された、目標位相進み量だけ位相を進めた場合の信号(目標値)を示している。
【0096】
タイミング3は、位相制御器460からの出力信号を示しており、位相制御器460にて目標位相進み量だけ位相を進めた場合の実際の位相進み量を示している。時刻t0において位相進み量計算部450から目標位相進み量d1が与えられると、位相制御器460から出力される実際の位相進み量はd1だけ進んだ状態となる。この場合は、図11で説明した、瞬時に位相を切り換える場合に該当する。
【0097】
また、時刻t5で目標位相進み量がd2に変化すると、実際の位相進み量はすぐには変化せず、時刻t5からt9の間で時間をかけながら順次に目標に収束し、時刻t9で実際の位相進み量がd2に到達する。この場合は、図12で説明した、次第に位相を切り換える場合に該当する。
【0098】
図13に示すタイミング4は、同期信号周期測定部480で測定された周期を、位相制御器460からの出力(タイミング3の信号)に加算した状態を示している。このように、周期Tを加算したことにより、位相制御器460の出力が周期Tだけ遅くなる。図5に示すように、タイミング4の信号は、送信装置20に送られ、同期信号発生器33からカメラ10のPLL24へ送られる。
【0099】
タイミング5は、CCD駆動信号を示しており、PLL24にてタイミング4の信号から生成される。同期信号の間隔が、1フィールドの区間となる。時刻t6以降で実際の位相進み量が変化していくと、目標に収束するまでの間は同期信号の間隔が短くなるため、1フィールドの区間が僅かに短くなる。実際の位相進み量d2が目標値に達すると、同期信号の間隔(1フィールドの区間)は元の状態に戻る。
【0100】
タイミング6は、映像信号がネットワーク50から受信装置30に送られて、バッファ33から映像として出力された際の信号を示している。タイミング6の信号では、ネットワーク50による伝送遅延、コーデックによる遅延等が含まれている。
【0101】
以上のように、位相進み量計算部450から出力された目標位相進み量だけ位相を変化させることで、実際の位相進み量を最適に制御することが可能となる。なお、図13では、位相を進める場合を例示したが、位相を遅らせる場合も同様に行うことができる。
【0102】
4.本実施形態のシステムの処理手順
次に、本実施形態の処理について説明する。図14は、映像情報の受信から位相進み量を指令するまでの処理を示すフローチャートである。また、図15は、同期信号入力から位相情報送信までの処理を示すフローチャートである。
【0103】
先ず、図14のステップS101では、受信装置40で映像信号を受信すると、タイムスタンプ取得部41において映像信号に付加されていたタイムスタンプを取得し、伝送遅延量計算部410にて伝送遅延量を計算する。
【0104】
次のステップS102では、計算された伝送遅延量の集合から、統計量の計算を行う。ここでは、伝送遅延統計計算部420により伝送遅延量統計情報を計算する。統計情報には、伝送遅延量の平均・分散・最大値・最小値・ヒストグラムなどが含まれる。また、ステップS102では、伝送遅延ジッター吸収バッファの使用量の統計情報も伝送遅延量とともに計算する。上述したように、伝送遅延ジッター吸収バッファとは、非同期伝送網において伝送する際に、伝送遅延時間のばらつきを吸収するためのバッファであり、図5のバッファ400に相当する。上述したように、バッファ使用量の統計情報には、バッファの平均使用率・分散・最大値・最小値・ヒストグラムなどが含まれる。
【0105】
次のステップS103では、伝送遅延統計計算部420により統計のサンプル数が十分であるか、所定数以上であるかを判定し、サンプル数が十分である場合(所定数以上である場合)は、ステップS104に進む。ステップS104では、伝送遅延統計表示部430に伝送遅延統計情報を表示する。ここでは、図7〜図10に示したような統計情報を表示する。一方、ステップS103でサンプル数が十分でない場合(所定数未満である場合)は、処理を終了する。
【0106】
ステップS104の後はステップS105へ進み、遅延により映像乱れが発生する可能性が高いか否かを判断する。映像乱れが発生する可能性が高い場合は、ステップS106へ進み、警告を出す。警告は、伝送遅延統計情報に基づき、映像の乱れを起こす可能性が高いと判断される場合は出される。警告を出す基準としては、例えば受信装置40のジッター吸収バッファ400に存在するデータが少ない場合、パケットのロス率が設定値以上になったときなどが挙げられる。警告は、伝送遅延統計表示部430に表示しても良いし、音声等により発音しても良い。ステップS106の後は、ステップS107へ進む。また、ステップS105にて、映像乱れが発生する可能性が高くない場合は、ステップS106の警告を発することなく、ステップS107へ進む。
【0107】
ステップS107では、手動モードであるか否かを判定し、手動モードの場合はステップS108へ進む。ステップS108では、位相進み量操作部440に入力された操作量を取得する。次のステップS109では、手動操作量と、伝送遅延量の統計情報とに基づいて、位相進み量を計算する。
【0108】
一方、ステップS107で手動モードではない場合、すなわち自動モードの場合は、ステップS111へ進む。ステップS111では、統計情報に基づいて位相進み量を計算する。ステップS109,S111の後はステップS110へ進む。ステップS110では、位相制御器460へ位相進み量を指令する。ステップS110の後は処理を終了する。
【0109】
図15は、同期信号の位相を進める場合に、位相進み量の変換の手法を決める処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS201では、同期信号時刻変換部470において、同期信号時刻変換を行い、同期信号SYNCを時刻情報に変換する。次のステップS202では、位相進み量を徐々に変化させるモードか否かを判定し、位相進み量を徐々に変化させるモードの場合は、ステップS203へ進む。ステップS203では、上述した式1を用いて位相の進み量の微小変化量を計算する。ステップS203の後はステップS204へ進み、次の位相進み量を算出する。次の位相進み量は、現在の位相進み量に微小変化量を加算することによって算出される。
【0110】
一方、ステップS202において、位相進み量を徐々に変化させるモードではない場合、すなわち、位相進み量を瞬時に変化させるモードの場合は、ステップS207へ進む。ステップS207では、次の位相進み量として、位相進み量計算部で計算された位相進み量の最終値を指令値とする。
【0111】
ステップS204,S207の後は、ステップS205へ進む。ステップS205では、位相制御器460により、位相進み量に基づいて同期信号の位相を進ませる。次のステップS206では、位相に同期信号の周期を加え、送信装置20へ位相情報を送信する。ステップS206の後は、処理を終了する。
【0112】
送信装置40は、受け取った位相情報を元に送信機側で同期信号を生成し、カメラ20に入力する。カメラ20の内部では、入力された同期信号に位相を合わせて映像を出力するため、撮像素子(CCD22)等の駆動周波数が変化する。
【0113】
以上のステップS101〜S110、ステップS201〜S206が繰り返し行われることにより、位相進み量の調整を継続的に行うことができる。なお、上述した説明では、ステップS102〜S110の処理は受信機40の内部で行われるが、受信装置40の外部で行っても良い。
【0114】
以上説明したように第2の実施形態によれば、使用者が、統計情報の表示を視認することにより、映像の伝送遅延状況やバッファの使用状況を知ることができる。そして、この情報を元に使用者が位相進み量調整パラメータを操作することで、使用者が意図した遅延時間と伝送品質に調整することができる。また、自動で位相進み量を調整することで、伝送遅延量が変化した場合にもバッファがオーバーフロー、またはアンダーフローになることを抑止でき、映像出力を安定させることができる。
【0115】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0116】
10・・・カメラシステム、20・・・撮像部、30・・・送信装置、31・・・エンコーダ(符号化部)、32・・・タイムスタンプ付加部(時刻情報付加部)、33・・・同期信号発生器、34・・・時刻情報保持部、40・・・受信装置、41・・・タイムスアンプ取得部、42、デコーダ(復号部)、43・・・バッファ(同期出力部)、44・・・遅延時間計算部(伝送遅延測定部)、45・・・同期信号時刻変換部(同期信号伝達部)、46・・・CPU(同期信号伝達部、制御部)、47・・・時刻情報保持部、50・・・伝送路、400・・・バッファ、410・・・伝送遅延量計算部、420・・・伝送遅延量統計計算部、430・・・伝送遅延統計表示部、440・・・位相進み量操作部、450・・・位相進み量計算部、460・・・位相制御器、470・・・同期信号時刻変換部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路を伝送された映像の符号化データを復号する復号部と、
上記復号部で復号された映像データを基準同期信号に同期させて出力する同期出力部と、
入力される上記符号化データおよび時刻情報により伝送路の遅延に係る情報を取得する伝送遅延情報取得部と、
上記伝送遅延情報取得部で得られた前記情報に基づいて、入力される上記基準同期信号の位相を制御する位相情報を求め、当該位相情報を、上記伝送路を通して伝達する同期信号伝達部と、
を有する受信装置。
【請求項2】
前記伝送遅延情報取得部は、伝送路の遅延時間を測定する伝送遅延測定部を含み、
前記同期信号伝達部は、上記伝送遅延測定部で得られた遅延時間から伝送に必要な時間を求め、入力される上記基準信号から伝送に必要な時間分だけ前倒しした同期信号を発生するための前記位相情報を求める、請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
上記符号化データは、
上記伝送路に送出された時刻情報が付加されており、
上記伝送遅延測定部は、
上記符号化データに付加された時刻情報および当該符号化データを受信したときの時刻情報に基づき上記伝送路における遅延時間を測定する処理を複数回行い、複数の測定された集合的な遅延時間に対して統計処理を行って伝送に必要な時間を伝送遅延許容時間として求め、
上記同期信号伝達部は、
上記伝送遅延許容時間を上記伝送に必要な時間として当該時間を同期信号の位相差とし、入力される上記基準同期信号を時刻に変換し、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を生成するための時刻の情報を上記位相情報として上記伝送路を通して伝達する
請求項2記載の受信装置。
【請求項4】
少なくとも上記伝送路および上記復号部によりコーデック部が形成され、当該コーデック部の遅延量が、コーデック遅延量としてあらかじめ設定され、
上記同期信号伝達部は、
上記伝送遅延測定部で得られた伝送遅延許容時間と上記コーデック遅延量の総和時間を上記伝送に必要な時間として求め、入力される上記基準同期信号から伝送に必要な時間分だけ前倒しした同期信号を発生するための位相情報を求め、当該位相情報を、上記伝送路を通して伝達する
請求項2または3記載の受信装置。
【請求項5】
上記符号化データは、
上記伝送路に送出された時刻情報が付加されており、
上記伝送遅延測定部は、
上記符号化データに付加された時刻情報および当該符号化データを受信したときの時刻情報に基づき上記伝送路における遅延時間を測定する処理を複数回行い、複数の測定された集合的な遅延時間に対して統計処理を行って伝送に必要な時間として伝送遅延許容時間を求め、
上記同期信号伝達部は、
上記伝送遅延許容時間とあらかじめ設定された上記コーデック遅延量の総和の時間を伝送に必要な時間として当該時間を同期信号の位相差とし、入力される上記基準同期信号を時刻に変換し、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を作るための時刻の情報を上記位相情報として上記伝送路を通して伝達する
請求項4記載の受信装置。
【請求項6】
上記同期信号伝達部は、
入力される上記基準同期信号を同期パルスごとに時刻を記録して上記伝送路に送出する
請求項2から5のいずれか一に記載の受信装置。
【請求項7】
上記伝送遅延情報取得部で得られた前記情報に基づいて、入力される上記基準同期信号の位相を制御するための位相制御量を求める位相制御量計算部を備え、
前記同期信号伝達部は、前記位相制御量に基づいて上記基準同期信号の位相を制御し、制御された位相情報を上記伝送路を通して伝達する、請求項1に記載の受信装置。
【請求項8】
前記伝送路の遅延に係る情報の統計情報を計算する統計計算部を備え、
前記位相制御量計算部は、前記統計情報に基づいて前記位相制御量を求める、請求項7に記載の受信装置。
【請求項9】
前記伝送路の遅延に係る情報の統計情報を計算する統計計算部と、
前記統計情報を表示する表示部と、
前記表示部の表示に基づいて入力される操作量を取得する操作部と、を備え、
前記位相制御量計算部は、前記統計情報と前記操作量とに基づいて前記位相制御量を求める、請求項7に記載の受信装置。
【請求項10】
前記同期信号伝達部は、前記位相制御量に基づいて上記基準同期信号の位相を制御する位相制御部を含み、前記位相制御部は、上記基準同期信号の位相を目標となる位相制御量に瞬時に制御する、請求項7に記載の受信装置。
【請求項11】
前記同期信号伝達部は、前記位相制御量に基づいて上記基準同期信号の位相を制御する位相制御部を含み、前記位相制御部は、上記基準同期信号の位相を目標となる位相制御量に段階的に制御する、請求項7に記載の受信装置。
【請求項12】
前記伝送路の遅延に係る情報は、前記伝送路の遅延時間又は上記符号化データを蓄積するバッファの使用率である、請求項7記載の受信装置。
【請求項13】
撮像して映像信号を得る撮像部と、
伝送路と、
上記撮像部で撮像して得られた映像信号の符号化データを上記伝送路に送出する送信装置と、
上記符号化データを受信する受信装置と、を有し、
上記送信装置は、
入力される映像信号を符号化データに変換し、当該符号化データを上記伝送路に送出する符号化部と、
上記伝送路を伝送された位相情報を基に、上記撮像部により得られ、入力される映像信号の位相を調整する同期信号を発生する同期信号発生部と、を含み、
上記位相情報は、
伝送に必要な時間だけ、上記同期信号発生部で発生する同期信号のタイミングを前にずらすことを示す情報を含み、
上記同期信号発生部は、
入力される映像信号を伝送に必要な時間だけ前倒しするように上記同期信号を発生し、
上記受信装置は、
伝送路を伝送された映像の符号化データを復号する復号部と、
上記復号部で復号された映像データを基準同期信号に同期させて出力する同期出力部と、
入力される上記符号化データおよび時刻情報により伝送路の遅延に係る情報を取得する伝送遅延情報取得部と、
上記伝送遅延情報取得部で得られた前記情報に基づいて、入力される上記基準同期信号の位相を制御する位相情報を求め、当該位相情報を、上記伝送路を通して伝達する同期信号伝達部と、と、を含む
カメラシステム。
【請求項14】
上記位相情報は、
伝送に必要な時間だけ、上記同期信号発生部で発生する同期信号のタイミングを前にずらすことを示す情報を含み、
上記同期信号発生部は、
入力される映像信号を伝送に必要な時間だけ前倒しするように上記同期信号を発生し、
前記伝送遅延情報取得部は、伝送路の遅延時間を測定する伝送遅延測定部を含み、
前記同期信号伝達部は、上記伝送遅延測定部で得られた遅延時間から伝送に必要な時間を求め、入力される上記基準信号から伝送に必要な時間分だけ前倒しした同期信号を発生するための前記位相情報を求める、請求項13に記載のカメラシステム。
【請求項15】
上記送信装置は、
上記符号化データに上記伝送路に送出される時刻情報を付加する時刻情報付加部を含み、
上記受信装置の上記伝送遅延測定部は、
上記符号化データに付加された時刻情報および当該符号化データを受信したときの時刻情報に基づき上記伝送路における遅延時間を測定する処理を複数回行い、複数の測定された集合的な遅延時間に対して統計処理を行って伝送に必要な時間を伝送遅延許容時間として求め、
上記同期信号伝達部は、
上記伝送遅延許容時間を上記伝送に必要な時間として当該時間を同期信号の位相差とし、入力される上記基準同期信号を時刻に変換し、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を生成するための時刻の情報を上記位相情報として上記伝送路を通して上記送信装置に伝達し、
上記送信装置の同期信号発生部は、
上記時刻の情報を基に、発生する上記同期信号の位相を前倒しした位相となるように設定する
請求項14記載のカメラシステム。
【請求項16】
上記符号化部、上記伝送路、および上記復号部によりコーデック部が形成され、当該コーデック部の遅延量が、コーデック遅延量としてあらかじめ設定され、
上記同期信号伝達部は、
上記伝送遅延測定部で得られた伝送遅延許容時間と上記コーデック遅延量の総和時間を上記伝送に必要な時間として求め、入力される上記基準同期信号から伝送に必要な時間分だけ前倒しした同期信号を発生するための位相情報を求め、当該位相情報を、上記伝送路を通して上記送信装置に伝達する
請求項14または15記載のカメラシステム。
【請求項17】
上記送信装置は、
上記符号化データに上記伝送路に送出される時刻情報を付加する時刻情報付加部を含み、
上記受信装置の伝送遅延測定部は、
上記符号化データに付加された時刻情報および当該符号化データを受信したときの時刻情報に基づき上記伝送路における遅延時間を測定する処理を複数回行い、複数の測定された集合的な遅延時間に対して統計処理を行って伝送に必要な時間として伝送遅延許容時間を求め、
上記同期信号伝達部は、
上記伝送遅延許容時間とあらかじめ設定された上記コーデック遅延量の総和の時間を伝送に必要な時間として当該時間を同期信号の位相差とし、入力される上記基準同期信号を時刻に変換し、伝送に必要な位相差の時間だけ前倒しした同期信号を作るための時刻の情報を上記位相情報として上記伝送路を通して上記送信装置に伝達し、
上記送信装置の同期信号発生部は、
上記時刻の情報を基に、発生する上記同期信号の位相を前倒しした位相となるように設定する
請求項16記載のカメラシステム。
【請求項18】
上記受信装置は、
上記伝送遅延情報取得部で得られた前記情報に基づいて、入力される上記基準同期信号の位相を制御するための位相制御量を求める位相制御量計算部を備え、
前記同期信号伝達部は、前記位相制御量に基づいて上記基準同期信号の位相を制御し、制御された位相情報を上記伝送路を通して伝達する、請求項13に記載のカメラシステム。
【請求項19】
上記受信装置は、
前記伝送路の遅延に係る情報の統計情報を計算する統計計算部を備え、
前記位相制御量計算部は、前記統計情報に基づいて前記位相制御量を求める、請求項18に記載のカメラシステム。
【請求項20】
上記受信装置は、
前記伝送路の遅延に係る情報の統計情報を計算する統計計算部と、
前記統計情報を表示する表示部と、
前記表示部の表示に基づいて入力される操作量を取得する操作部と、を備え、
前記位相制御量計算部は、前記統計情報と前記操作量とに基づいて前記位相制御量を求める、請求項18に記載のカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−234341(P2011−234341A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251957(P2010−251957)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】