説明

受信装置および受信制御方法

【課題】使い勝手がよく、しかも小型化が可能な受信装置を提供する。
【解決手段】GPS衛星のアルマナック情報を衛星データROM6に記憶しておき、使用開始時点では、それをSRAM7へ転送することにより、アルマナックデータの取得作業を廃止する。また、衛星データROM6内のデータが無効となった場合には、それを示すフラグをEEPROM12のフラグ領域12bに書き込み、使用を中止する。同時に、GPS部3により新たなアルマナック情報を取得し、それをEEPROM12の衛星データ記憶領域12aに記憶するとともに、以後は、そのデータを使用する。アルマナック情報の保持に必要な二次電源が不要となる。また、GPS部3の受信動作終了後には、エフェメリスが有効な所定時間だけ主電源からSRAM7へ電力を供給し、その後は電源を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS衛星から送られてくる情報を受信する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPSを用いた位置計測を行うには、GPS衛星から送られてくる衛星メッセージと呼ばれる情報が必要となっている。このうち衛星自身の軌道情報や時計の補正情報などのデータがエフェメリス、全ての衛星の概略の軌道情報等のデータがアルマナックと呼ばれている。また、エフェメリス情報は2時間ほどで更新されるが、その取得は短時間で行うことができ、逆にアルマナック情報は、衛星の故障等がなければ長期に亙って有効であるが、それを取得するには12〜13分かかる。一方、車載用のナビゲーション装置等では、その使用開始時点でアルマナックデータを取得するとともに、一度取得したデータをSRAMに保存しておき、バックアップ用の二次電源でデータ保持を行い、長期に亙って使用するのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述したように使用開始時点でアルマナックデータを取得するには、12〜13分といった長い時間を要するため、ユーザーにとっては甚だ使い勝手が悪い。また、バックアップ用の二次電源には寿命が長いものが要求されることから、その外形寸法は必然的に大きくならざるを得ない。このため、GPS受信機を、携帯性を持たせた例えば腕時計型のものとする場合には、バックアップ用電池の搭載によって外形形状が大きくなるといった問題があった。
【0004】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、使い勝手がよく、しかも小型化が可能な受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために請求項1の受信装置にあっては、GPS衛星から送られてくる情報を受信する受信手段と、第1のアルマナック情報が記憶された第1の記憶手段と、前記受信手段により受信された第2のアルマナック情報を記憶する再書込み可能で不揮発性の第2の記憶手段と、前記受信手段に前記第1のアルマナック情報を供給するとともに、前記第1のアルマナック情報が無効になることに応じ、前記受信手段に前記第2のアルマナック情報を供給する供給手段とを備えたものとした。
【0006】
かかる構成において、受信手段は、使用開始時点では第1のアルマナック情報を使用して受信動作が行えるため、使用開始時点のアルマナック情報の取得が不要となる。また、第1のアルマナック情報が無効になると第2のアルマナック情報が使用されるため、GPS衛星の状態変化の影響を受けることなく受信動作を行い得る。しかも、第1のアルマナック情報および第2のアルマナック情報の保持にはバックアップ用の電力が不要であるため、バックアップ用の二次電源が廃止できる。
【0007】
また、請求項2の受信装置にあっては、前記第2の記憶手段に、前記第1の記憶手段に記憶されたアルマナック情報の有効、無効の別を示す状態情報を記憶する記憶領域が設けられ、この記憶領域に記憶された状態情報に基づき、前記供給手段が前記第1のアルマナック情報または前記第2のアルマナック情報を前記受信手段に供給するものとした。かかる構成においては、生産時点でGPS衛星の状態変化が生じても、第2の記憶手段に、第1のアルマナック情報の無効を示す状態情報を記憶させることにより、容易かつ直ちに対処できる。
【0008】
また、請求項3の受信装置にあっては、前記受信手段による受信結果に基づき、前記第1の記憶手段に記憶されたアルマナック情報の無効を示す状態情報を前記記憶領域に記憶させる書き込み手段を備えたものとした。かかる構成においては、使用開始時又は使用途中で第1のアルマナック情報が無効になると、書き込み手段によって自動的にそれを示す状態情報が第2の記憶手段に書き込まれるため、使用者によるアルマナック情報の切り替え作業が不要となる。
【0009】
また、請求項4の受信装置にあっては、前記第2のアルマナック情報を、決められた保存条件を満足する時点で前記第2の記憶手段に記憶させる制御手段を備えたものとした。かかる構成においては、第2のアルマナック情報の第2の記憶手段への無駄な書き込み動作による無駄な電力消費がなくなる。
【0010】
また、請求項5の受信装置にあっては、前記受信手段により受信されたエフェメリス情報を記憶する記憶手段の電源を、前記受信手段の動作が終了した後、エフェメリス情報の有効時間に対応して決められた一定時間後に遮断する電源制御手段を備えたものとした。かかる構成においては、エフェメリス情報の無駄な記憶保持による無駄な電力消費がなくなる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明においては、使用開始時点のアルマナック情報の取得が不要となり、かつ常にGPS衛星の状態変化の影響を受けることなく受信を行い得ることから、安定した受信動作を確保しつつ使い勝手を向上させることが可能となる。しかも、バックアップ用の二次電源が廃止できることから、装置の小型化も可能となる。また、生産時点でのGPS衛星の状態変化にも、容易かつ直ちに対処できるようにしたことから、装置としての柔軟性が向上する。また、使用者による、アルマナック情報の切り替えが不要となるようにしたことから、これによっても使い勝手を向上させることができる。また、無駄な電力消費がなくなるようにしたことから、乾電池等を電源とする場合の連続動作時間の長期化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態を図にしたがって説明する。図1は、本発明の受信装置である測位装置1を示すブロック図である。なお、本実施の形態において測位装置には、電池を電源として作動する腕時計型のものを想定している。
【0013】
すなわち、この測位装置1は、主として時計部2とGPS部3とから構成されている。GPS部3は、GPS衛星からのL1帯の電波を受信するGPSアンテナやRF、A/D等で構成された受信部4と、受信部4で受信した電波から衛星データの解読に必要なデータレジスタ、カウンター、デコーダー、及びそれらの制御を行うCPU、CPUの制御プログラムを格納するROM、演算用のRAM等で構成された信号処理部5を備えている。また、信号処理部5には、事前にアルマナックデータが格納された第1の記憶手段である衛星データROM6と、位置計測作業に伴い受信した衛星データを記憶する読み書き可能なSRAM7とが接続されている。
【0014】
また、前記時計部2は、測位装置1全体を制御するCPU、その制御プログラムが格納されたROM、主としてCPUのワーキグメモリとして用いられるRAM等からなる制御部8を備えている。制御部8には、測位装置の操作を行うための複数のスイッチが接続されたスイッチ入力部9と、小型のLCD等からなるとともに、通常は時計表示を、位置計測時には計測結果や電波の受信状況をそれぞれ表示する表示部10、地図データや測位系データを記憶するメモリ等からなるデータ記憶部11、第2の記憶手段であるEEPROM12が接続されている。また、EEPROM12の内部には、GPS部3によって受信されたアルマナックを必要に応じて記憶する衛星データ記憶領域12aと、前記衛星データROM6に格納されているアルマナックの有効/無効の別を示す状態フラグを記憶するフラグ領域12bとが確保されている。前記状態フラグは例えば”H”で無効、”L”で有効を示すフラグであって、工場出荷時においては「有効」がセットされている。
【0015】
一方、図2は、測位装置1の電源構成を示す概略回路図であって、前記時計部2は乾電池21を直接電源として動作する。また測位装置1は、乾電池21の電圧を昇圧するDC/DCコンバーター22と、乾電池21の電圧をある電圧に平滑するV/R(Voltage Regulator)23とを有している。DC/DCコンバーター22は端子Aにより動作が制御され、例えば”L”では非動作で出力がopen、”H”では動作で昇圧電圧を出力し、その昇圧電圧により前記GPS部3が動作する。またV/R23は端子Bにより動作が制御され、例えば”L”では非動作で出力がopen、”H”では動作で定電圧を出力し、前記GPS部3のうち前記SRAM7については、DC/DCコンバーター22の出力と、V/R23の出力の高い方の電圧を電源として動作(データを記憶保持)する。
【0016】
以下、上記構成からなる測位装置1の動作について説明する。まず時計部2の制御部8によって行われる電源制御処理を説明する。すなわち、制御部8は図3に示したように、後述する位置計測動作の開始に伴いDC/DCコンバーター22とV/R23とを動作させ、位置計測中にはGPS部3の全てに電源を供給した後、計測終了とともにSRAM7を除いたGPS部3の電源を遮断する。しかる後、予め設定されている一定の保持時間(本実施の形態では、エフェメリスデータが有効である2時間)が経過するまでSRAM7のみに電源を供給する。
【0017】
次に、測位装置1において、工場出荷後に初めて使用が開始された時点からの動作を図4に示したフローチャートに従って説明する。すなわち、測位装置1は使用者の操作に応じたスイッチ入力部16からの計測要求信号により動作を開始すると、GPS部3が電源を供給されることにより起動し(ステップS1)、まずSRAM7のエフェメリスの有効/無効の別を判断する(ステップS2)。使用開始当初のSRAM7には何も記憶されていないので、かかる判断の結果はNOとなり、引き続き、EEPROM12のフラグ領域12bの前述した状態フラグをチェックし、アルマナックの状態フラグに「無効」がセットされている否かを判別する(ステップS3)。このとき、状態フラグは初期状態で「有効」にセットされているため、かかる判別の結果はNOとなり、衛星データROM6内に格納されているアルマナックをSRAM7へ転送するとともに(ステップS4)、このアルマナックを使用して位置計測処理を行う(ステップS5)。このときGPS部3は、既にアルマナックを保有しておりエフェメリスのみを取得(受信)することにより衛星が捕捉できるため、45秒程度で自己位置を確定、つまり位置計測を終了する。したがって、ユーザーにおいては、使用開始当初であっても12〜13分を要するアルマナックの取得を待たずに、直ちに位置計測を行うことができるため、使い勝手がよい。
【0018】
引き続き、時計部2が計測ができたか否かを判別し(ステップS6)、計測ができたときには、さらに、予め決められている保存条件を満足するか否か、すなわち本実施の形態においては、その日最初に行われた計測であるか否か、または後述するアルマナックの新たな取得処理が行われたか否かを判別する(ステップS7)。ここで使用開始当初においては前記保存条件を満足するため、さらにSRAM7に記憶されているアルマナック(ここでは、衛星データROM6に格納されていたアルマナックと同一である。)をEEPROM12へ転送して記憶し(ステップS8)、1回目の計測処理を終了する。また、前述したように、かかる時点から2時間は電源が遮断されないことにより、この後、2時間はSRAM7内にエフェメリスが保存されることとなる。
【0019】
また、2回目以降の計測時においては、ステップS1でGPS部3が起動したとき、前回位置計測を終了してからの経過時間が2時間内であればSRAM7にエフェメリスデータが保存されているため、ステップS2の判断結果がYESとなり、そのまま計測処理を行う(ステップS5)。したがって、この場合は15秒程度で自己位置が確定できる。一方、経過時間が2時間を過ぎていると、ステップS2の判断結果がNOとなるため、引き続き、EEPROM12のフラグ領域12bの前述した状態フラグをチェックし、衛星データROM6のアルマナックの有効/無効の別を判別する(ステップS3)。この時点でも状態フラグには「有効」がセットされているため(ステップS3がYES)、衛星データROM6内に格納されているアルマナックをSRAM7へ転送し(ステップS4)、位置計測処理を行う(ステップS5)。そして、ステップS2の判別結果がいずれの場合であっても計測ができれば(ステップS6でYES)、前述したステップS7(及びステップS8)の処理を経て計測を終了する。
【0020】
一方、以上の処理によって計測ができなかった場合には(ステップS6でNO)、まず、EEPROM12の状態フラグに「無効」がセットされているか否かを判別する(ステップS9)。このとき、状態フラグには「有効」がセットされており、かかる判断の結果がNOとなるため、前記状態フラグに「無効」をセットし(ステップS10)、引き続き、EEPROM12内のアルマナックをSRAM7へ転送する(ステップS11)。つまり、衛星に変化が起き工場出荷時に用意されていたアルマナックが無効となったと判断し、EEPROM12内のアルマナックを使用する状態に切り替えた後、再び計測処理を行う。また、初めてステップS9〜S11の処理が行われた時点では計測ができないため、ステップS6からステップS9へ再び進むが、このとき前記状態フラグに「無効」がセットされており(ステップS9でYES)、既にEEPROM12内のアルマナックを使用する状態に切り替わっているため、GPS部2によって新たにアルマナックを取得した後(ステップS12)、再度計測処理を行う。これにより計測が可能となり、前述した保存条件が満足されるため(ステップS7でYES)、ステップS12で新たに取得されたアルマナックをEEPROM12へ転送して記憶し(ステップS8)、計測処理を終了する。つまり、計測時に使用されるアルマナックの新旧が自動的に切り替えられることとなり、計測開始時においてもGPS衛星の状態変化の影響を受けることなく計測が可能となる。また、ユーザーにとっては、前記切り替え作業を行う必要がなく、便利である。
【0021】
そして、これ以後の計測時にあっては、前記状態フラグに「無効」がセットされており、前述したステップS3の判別結果が常にYESとなるため、毎回EEPROM12内のアルマナックをSRAM7へ転送し(ステップS13)、前回の計測時に使用したアルマナックに基づき計測処理を行う。さらに、再び衛星の変更や故障等に起因してEEPROM12内のアルマナックが無効となった場合には、前述したステップS9,S12の処理が行われることとなる。したがって、使用開始時点だけでなく、使用途中においてもGPS衛星の状態変化の影響を受けることがなく、安定した計測が行える。
【0022】
ここで、以上説明した測位装置1においては、計測開始時には、衛星データROM6又はEEPROM12に記憶されているアルマナックを使用しており、そのバックアップ用の二次電源が不要である。したがって、測位装置1の小型化も可能である。また、新たに取得したアルマナックのEEPROM12への書き込みに無駄がなく、しかもSRAM7への電力供給にも無駄がないことから、長い連続動作時間を確保することができる。さらに、衛星データROM6内のアルマナックを無効とする状態フラグがEEPROM12に記憶されるため、これを工場出荷前に利用することによって、以下の利点がある。すなわち、生産時に衛星データROM6のアルマナックが無効となった場合には、衛星データROM6のマスク変更を待つことなく、その時点から状態フラグに「無効」をセットして出荷すれば、緊急避難的ではあるが、そのような事態に直ちにかつ容易に対応できる。また、継続して衛星データROM6のマスク変更を行う場合には、新規のアルマナックを書いた衛星データROM6を使用できる段階でEEPROM12への状態フラグの「無効」のセット作業を中断すればよく、製造段階での柔軟性に富む。
【0023】
なお、本実施の形態においては、前述したステップS6で計測ができなかったときには、直ちに新たにアルマナックを取得する場合についてのみ示したが、計測ができなかったときには、必要な数の衛星が捕捉できない等の受信状況が悪い場合もある。したがって、実際には、計測ができなかったときには、受信状況が悪い場合と、アルマナックが無効であると考えられる場合とを判別させて、後者の場合にのみ新たにアルマナックを取得させるようにすれば、無駄なアルマナックの取得の要する時間、及び電力を削減することができる。また、前述したステップS12で新たにアルマナックを取得する際には、自動的にそれを行うようにし、利便性を確保したものを示したが、場合によっては、アルマナックの取得には時間を要することから、事前にアルマナックの取得を行うか否かをユーザーに選択させるようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態を示す測位装置のブロック図である。
【図2】測位装置の電源構成を示す概略回路図である。
【図3】測位装置における電源制御方法を示すタイミングチャートである。
【図4】測位装置における位置計測時の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1 測位装置
3 GPS部
6 衛星データROM
7 SRAM
12 EEPROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星から送られてくる情報を受信する受信手段と、
第1のアルマナック情報が記憶された第1の記憶手段と、
前記受信手段により受信された第2のアルマナック情報を記憶する再書込み可能で不揮発性の第2の記憶手段と、
前記受信手段に前記第1のアルマナック情報を供給するとともに、前記第1のアルマナック情報が無効になることに応じ、前記受信手段に前記第2のアルマナック情報を供給する供給手段と
を備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記第2の記憶手段に、前記第1の記憶手段に記憶されたアルマナック情報の有効、無効の別を示す状態情報を記憶する記憶領域が設けられ、この記憶領域に記憶された状態情報に基づき、前記供給手段が前記第1のアルマナック情報または前記第2のアルマナック情報を前記受信手段に供給することを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記受信手段による受信結果に基づき、前記第1の記憶手段に記憶されたアルマナック情報の無効を示す状態情報を前記記憶領域に記憶させる書き込み手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の受信装置。
【請求項4】
前記第2のアルマナック情報を、決められた保存条件を満足する時点で前記第2の記憶手段に記憶させる制御手段を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の受信装置。
【請求項5】
前記受信手段により受信されたエフェメリス情報を記憶する記憶手段の電源を、前記受信手段の動作が終了した後、エフェメリス情報の有効時間に対応して決められた一定時間後に遮断する電源制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−89612(P2008−89612A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335441(P2007−335441)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【分割の表示】特願平10−377446の分割
【原出願日】平成10年12月28日(1998.12.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】