説明

受信装置および受信方法

【課題】マルチパス環境においても安定した同期の制御を行うことができる。
【解決手段】本技術の一側面の受信装置は、所定間隔で既知信号を含む受信信号に対して、前記既知信号との相関演算を行う相関演算部と、前記相関演算部によって検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれているかを判定する判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、特に、マルチパス環境においても安定した同期の制御を行うことができるようにした受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送のDTMB(Digital Terrestrial Multimedia Broadcast)規格(GB20600-2006)では、送信フレームに所定のPN(Pseudo-random Noise)系列が付加される。
【0003】
図1は、DTMB規格で規定されているフレーム構造を説明する図である。
【0004】
DTMBのフレーム構造は4階層からなり、上位階層から、Calendar Day Frame10, Minute Frame11, Super Frame12, Signal Frame13で構成される。
【0005】
最下位層のSignal Frame13は、Frame body15とFrame Header14から構成される。
【0006】
Frame Body15は、変調方式や符号化率などの情報を格納するSystem informationが36シンボルと、データが3744シンボルの合計3780シンボルから構成される。Frame Body15の時間長は、シンボルレートが7.56Mspsと規定されており、500usとなる。
【0007】
Frame Header14は420シンボル(約55.6us)、595シンボル(約78.7us)、945シンボル(125us)、のいずれかの長さの所定のPN系列である。
【0008】
Super Frame12は、合計で125msとなるような数のSignal Frame13から構成される。
【0009】
Minute Frame11は、480のSuper Frame12で構成され、時間長は1分である。
【0010】
Calendar Day Frame10は、1440のMinute Frame11で構成され、時間長は24時間である。
【0011】
本明細書では、以下、フレームをSignal Frame13の意味で用いる。
【0012】
DTMBの受信機においては、受信データと受信機で生成するPN系列との畳み込み演算を行った結果であるPN系列との相関値を生成し、1フレーム長の間で相関値電力がピークとなる位置を基準として所定の位置の相関値を用いて、キャリア同期やシンボルタイミング同期などの各種の同期の制御を行うことが知られている。
【0013】
図2は、DTMB信号を受信してPN系列との相関値を計算し、電力ピーク位置を基準として所定の位置の相関値を出力するPN相関演算部20の構成を示す図である。
【0014】
PN相関演算部20に入力された入力データD(n)は畳み込み演算部21に入力される。畳み込み演算部21は、入力信号D(n)と、DTMB規格で定められるPN系列の全部もしくはPN系列の一部分であるPN(k)との畳み込み演算を行う。相関値の計算に用いるPN系列の長さをLシンボルとすると、畳み込み演算部21の出力信号である相関値Corr(n)は下式(1)で表される。
【数1】

【0015】
畳み込み演算部21は、畳み込み演算の結果であるCorr(n)を電力計算部22および相関値出力部28に出力する。
【0016】
電力計算部22は、畳み込み演算部21からの入力であるCorr(n)の電力Pow(n)を計算し、Pow(n)をピーク位置サーチ部23に出力する。Pow(n)は、下式(2)で表される。
【数2】

【0017】
ピーク位置サーチ部23は、現在のシンボル位置を示すmを相関値出力部28に出力する。また、ピーク位置サーチ部23は、電力計算部22からの入力であるPow(n)が1フレーム長の間で最大となるピーク位置Pos_maxを相関値出力部28に出力する。ここで、シンボル位置mは、0からFLEN-1の値をとる。ただし、FLENはフレーム長である。
【0018】
ピーク位置サーチ部23は、制御部24、シンボルカウンタ25、電力保持部26、およびシンボル位置保持部27により構成される。
【0019】
制御部24は、電力計算部22により求められたPow(n)を受信した場合、シンボルカウンタ25に対して、シンボル位置mのインクリメントを指示する。続いて、制御部24は、入力されたPow(n)と、電力保持部26が保持する電力Pow_largerとを比較してPow(n)の方が大きい場合、Pow_largerをPow(n)に置き換えるように電力保持部26に指示し、また、シンボル位置保持部27が保持するシンボル位置Pos_largerをシンボル位置mに置き換えるように指示する。制御部24は、このようにして、より電力の大きくなるシンボル位置Pow_largerを更新していく。
【0020】
制御部24は、以上の処理をm=0からm=FLEN-1となる1フレーム長の間の入力データに対して行う毎に、Pos_maxをPos_largerとして出力する。
【0021】
シンボルカウンタ25は、制御部24の指示により、インクリメント、あるいは0に初期化するようなシンボル位置mを保持する。シンボルカウンタ25は、保持しているシンボル位置mを相関値出力部28に対して出力する。
【0022】
電力保持部26は、電力Pow_largerを保持する。電力保持部26は、制御部24からの指示を受け、Pow_larger = Pow(n)とするようにして、保持する電力の置き換えを行う。
【0023】
シンボル位置保持部27は、シンボル位置Pos_largerを保持する。シンボル位置保持部27は、制御部24からの指示を受け、Pos_larger=mとするようにして、保持するシンボル位置の置き換えを行うか、Pos_larger=0とするようにして、保持するシンボル位置の初期化を行う。
【0024】
図3は、ピーク位置サーチ部23の動作を説明するフローチャートである。
【0025】
ステップS11において、制御部24は、新たなPow(n)が電力計算部22から入力されたか否かを判定する。
【0026】
ステップS11において新たなPow(n)が入力されていないと判定した場合、制御部24は、新たなPow(n)が入力されるまで待機する。
【0027】
一方、ステップS11において新たなPow(n)が入力されたと判定した場合、ステップS12において、制御部24は、シンボルカウンタ25に対して、シンボル位置mを0に初期化するように指示する。
【0028】
ステップS13において、制御部24は、シンボル位置保持部27に対して、シンボル位置pos_largerを0に初期化するように指示する。
【0029】
ステップS14において、制御部24は、電力保持部26に対して、電力pow_largerをPow(n)に初期化するように指示する。
【0030】
ステップS15において、制御部24は、新たなPow(n)が入力されたか否かを判定する。
【0031】
ステップS15において新たなPow(n)が入力されていないと判定した場合、制御部24は、新たなPow(n)が入力されるまで待機する。
【0032】
一方、ステップS15において新たなPow(n)が入力されたと判定した場合、ステップS16において、制御部24は、シンボルカウンタ25に対してシンボル位置mを1だけインクリメントするように指示する。
【0033】
ステップS17において、制御部24は、Pow(n)が、電力保持部26が保持するpow_largerよりも大きいか否かを判定する。
【0034】
ステップS17において、Pow(n)がpow_largerよりも大きくないと判断した場合、処理はステップS20に進む。
【0035】
一方、ステップS17においてPow(n)がpow_largerよりも大きいと判断した場合、ステップS18において、制御部24は、シンボル位置保持部27に対して、シンボル位置pos_largerをmに置き換えるように指示する。
【0036】
ステップS19において、制御部24は、電力保持部26に対して、電力pow_largerをPow(n)に置き換えるように指示し、処理をステップS20に進める。
【0037】
ステップS20において、制御部24は、シンボルカウンタ25のシンボル位置mがFLEN-1であるか否かを判定する。
【0038】
ステップS20においてシンボルカウンタ25のシンボル位置mがFLEN-1ではないと判定した場合、制御部24は、処理をステップS15に戻し、ステップS15からステップS20の処理をmがFLEN-1となるまで繰り返す。
【0039】
一方、ステップS20においてシンボルカウンタ25のシンボル位置mがFLEN-1であると判定した場合、ステップS21において、制御部24は、出力値Pos_maxをシンボル位置Pos_largerとして更新する。
【0040】
以上の処理により、1フレーム長の間の入力電力が最大となるようなピーク位置Pow_maxが求まる。ステップS21の処理の後、ステップS11に戻り、次のフレーム長の間の入力電力に対してピーク位置をサーチする処理が行われる。
【0041】
図2の相関値出力部28は、畳み込み演算部21からの入力信号であるCorr(n)、ピーク位置サーチ部23からの入力信号であるシンボル位置mおよびピーク位置Pos_maxから、後段の同期回路が要求するピーク位置を基準として所定の位置dの相関値Corr_pを出力する。
【0042】
相関値出力部28は、制御部29と相関値バッファ30から構成される。
【0043】
相関値バッファ30は、フレーム長分のバッファCorr_buf(k)(k=0..FLEN-1)である。相関値バッファ30へのデータの書き込み、相関値バッファ30からのデータの読み出しが制御部29の指示により行われる。
【0044】
制御部29は、畳み込み演算部21からの入力信号であるCorr(n)を受信すると、シンボル位置mをアドレスとして、相関値バッファ30にCorr_buf(m) = Corr(n)を書き込む。
【0045】
また、制御部29は、ピーク位置サーチ部23からのPos_maxを受信すると、ピーク位置Pos_maxを基準として所定の位置dの相関値を、下式(3)のように相関値バッファ30から読み出し、後段の回路に出力する。
【数3】

【0046】
図4は、相関値出力部28の動作を説明するフローチャートである。
【0047】
ステップS31において、制御部29は、新たなCorr(n)が畳み込み演算部21から入力されたか否かを判定する。
【0048】
ステップS31において新たなCorr(n)が入力されていないと判定した場合、制御部29は、新たなCorr(n)が入力されるまで待機する。
【0049】
一方、ステップS31において新たなCorr(n)が入力されたと判定した場合、ステップS32において、制御部29は、新たなPos_maxがピーク位置サーチ部23から入力されたか否かを判定する。
【0050】
ステップS32において新たなPos_maxが入力されていないと判定した場合、制御部29は、処理をステップS34に進める。
【0051】
一方、ステップS32において新たなPos_maxが入力されたと判定した場合、ステップS33において、制御部29は、後段の回路が要求する、Pos_maxを基準として所定の位置dの相関値を相関値バッファ30から読み出して後段の回路に出力し、処理をステップS34に進める。
【0052】
ステップS34において、制御部29は、相関値バッファ30のアドレスmであるCorr_buf(m)に相関値Corr(n)を書き込む。ステップS34の後、ステップS31に戻り、以上の処理が繰り返される。
【0053】
以上の処理により、シンボル位置mおよびピーク位置Pos_maxから、後段の同期回路が要求する、ピーク位置Pos_maxを基準として所定の位置dシンボルずれた位置の相関値を出力することができる。
【0054】
図5は、マルチパスがない1波環境時のPN相関演算部20の動作を説明するタイミングチャートである。
【0055】
ピーク位置Pos_maxに応じた出力の例として、ピーク位置Pos_maxの相関値Corr_pを示している。1波環境では、パスが存在するシンボル位置Path1で常に電力Pow(n)が最大となり、相関値Corr_pとして、常に同じパスの相関値Corr_buf(Path1)が出力される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0056】
【非特許文献1】Dazhi He, Weiqiang Liang, Wenjun Zhang, Ge Huang, Yunfeng Guan, Feng Ju, "Error rotated decision feedback equalizer for Chinese DTTB Receiver", Broadband Multimedia Systems and Broadcasting, 2008 IEEE International Symposium on
【非特許文献2】Liu, M., Crussiere, M., Helard, J.-F., "A Combined Time and Frequency Algorithm for Improved Channel Estimation in TDS-OFDM", Communications (ICC), 2010 IEEE International Conference on
【非特許文献3】Zi-Wei Zheng, Zhi-Xing Yang, Chang-Yong Pan, and Yi-Sheng Zhu, Senior Member, IEEE, "Novel Synchronization for TDS-OFDM-Based Digital Television Terrestrial Broadcast Systems", IEEE TRANSACTIONS ON BROADCASTING, VOL. 50, NO. 2, JUNE 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0057】
反射波が存在するマルチパス環境では、チャネル時変動などにより、それぞれのパスの電力が変動することがある。これにより、電力Pow(n)が最大となるパス位置がフレーム毎に変化し、PN相関演算部20の出力である、ピーク位置を基準として所定の位置の相関値も、フレーム毎に異なったパスの相関値を出力してしまうことがある。
【0058】
異なったパスの相関値がPN相関演算部20から出力されると、後段の同期回路は、フレーム毎に異なったパスに同期させようと働いてしまうため、安定した同期の制御を行うことができなくなってしまう。
【0059】
本技術はこのような状況を鑑みてなされたものであり、マルチパス環境においても安定した同期の制御を行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0060】
本技術の一側面の受信装置は、所定間隔で既知信号を含む受信信号に対して、前記既知信号との相関演算を行う相関演算部と、前記相関演算部によって検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれているかを判定する判定部とを備える。
【0061】
前記受信信号は、GB20600-2006規格に規定された信号であり、前記既知信号は、GB20600-2006規格に規定されたPN(Pseudo Noise)信号であるようにすることができる。
【0062】
前記相関演算部によって検出される各相関ピーク間の位相差に基づいて周波数誤差を検出する周波数誤差検出部を設けることができる。
【0063】
前記判定部によって、前記相関演算部において検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれていると判定された場合に、前記周波数誤差に対して補正を行う周波数誤差補正部を設けることができる。
【0064】
前記相関演算部によって検出される相関ピークの位置に基づいてタイミング誤差を検出するタイミング誤差検出部を設けることができる。
【0065】
前記判定部によって、前記相関演算部において検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれていると判定された場合に、前記タイミング誤差に対して補正を行うタイミング誤差補正部を設けることができる。
【0066】
本技術の一側面においては、所定間隔で既知信号を含む受信信号に対して、前記既知信号との相関演算が行われ、相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれているかが判定される。
【発明の効果】
【0067】
本技術によれば、マルチパス環境においても安定した同期の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】DTMB規格におけるフレーム構造を説明する図である。
【図2】PN相関演算部のブロック図である。
【図3】ピーク位置サーチの動作を説明するフローチャートである。
【図4】ピーク位置の相関値の出力動作を説明するフローチャートである。
【図5】マルチパスがない環境での動作を説明するタイミングチャートである。
【図6】本技術を適用した受信装置の第1実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図7】ピーク位置のずれを検出する動作を説明するフローチャートである。
【図8】ピーク位置のずれを検出した時の相関値の出力動作を説明するフローチャートである。
【図9】マルチパスがある環境での受信装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】マルチパスがある環境での受信装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【図11】本技術を適用した受信装置の第2実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図12】本技術を適用した同期部の構成例を示すブロック図である。
【図13】本技術を適用した同期部の他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、本技術を実施するための形態について説明する。
【0070】
<第1実施の形態>
図6は、本技術を適用した受信装置の第1実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0071】
図6に示す構成のうち、図2の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
【0072】
図6のPN相関演算部40の構成は、ピーク位置ずれ検出部41が新たに設けられ、相関値出力部28の代わりに相関値出力部45が設けられている点で図2のPN相関演算部20の構成と異なる。
【0073】
図6のPN相関演算部40は、ピーク位置のずれを観測して、低頻度のずれに対しては保護段をかけて、ずれが発生する前のピーク位置を基準として所定の位置の相関値を出力する。
【0074】
ピーク位置ずれ検出部41は、ピーク位置サーチ部23からの入力であるピーク位置Pos_maxに保護段をかけてピーク位置Pos_lockを出力し、また、ピーク位置がずれたことを示すピーク位置ずれ検出フラグPos_diffを出力する。ピーク位置Pos_lockとピーク位置ずれ検出フラグPos_diffは相関値出力部45に供給される。
【0075】
詳細には、ピーク位置ずれ検出部41は、制御部42、ピークずれ回数カウンタ43、およびピーク位置保持部44から構成される。
【0076】
制御部42は、ピーク位置サーチ部23からのPos_maxと、ピーク位置保持部44が保持するピーク位置Pos_lockとを比較し、ピーク位置がずれているか否かを判定する。
【0077】
ピーク位置がずれていないと判定した場合、制御部42は、ピークずれ回数カウンタ43(ピークずれ回数カウンタ43のカウント値)を0とし、ピーク位置保持部44が保持するPos_lockをPos_maxによって置き換え、Pos_diff=0を出力する。
【0078】
一方、ピーク位置がずれていると判定した場合、制御部42は、ピークずれ回数カウンタ43を1だけインクリメントし、Pos_diff=1を出力する。ただし、ピークずれ回数カウンタが設定値以上である場合、制御部42は、ピーク位置保持部44が保持するPos_lockをPos_maxによって置き換え、ピークずれ回数カウンタ43を0としてPos_diff=0を出力する。
【0079】
ピークずれ回数カウンタ43は、制御部42の指示により、カウンタ値を0に初期化、もしくは1だけインクリメントする。
【0080】
ピーク位置保持部44は、ピーク位置Pos_lockを保持し、制御部42の指示により、Pos_lockをPos_maxに置き換える。
【0081】
図7は、ピーク位置ずれ検出部41の動作を説明するフローチャートである。
【0082】
ステップS41において、制御部42は、新たなPos_maxがピーク位置サーチ部23から入力されたかを判定する。
【0083】
ステップS41において新たなPos_maxが入力されていないと判定した場合、制御部42は、新たなPos_maxが入力されたと判定するまで待機する。
【0084】
一方、ステップS41において新たなPos_maxが入力されたと判定した場合、ステップS42において、制御部42は、ピーク位置保持部44に対してPos_lock=Pos_maxに初期化するように指示する。
【0085】
ステップS43において、制御部42は、ピークずれ回数カウンタ43を0に初期化し、ステップS44においてPos_diff=0を出力する。
【0086】
ステップS45において、制御部42は、新たなPos_maxが入力されたか否かを判定する。
【0087】
ステップS45において新たなPos_maxが入力されていないと判定した場合、制御部42は、Pos_maxが入力されたと判定するまで待機する。
【0088】
一方、ステップS45において新たなPos_maxが入力されたと判定した場合、ステップS46において、制御部42は、新たに入力されたPos_maxが、ピーク位置保持部44が保持するPos_lockと等しいか否かを判定する。
【0089】
ステップS46においてPos_maxがPos_lockと等しいと判定した場合、制御部42は、処理をステップS50に進める。
【0090】
一方、ステップS46においてPos_maxがPos_lockと等しくないと判定した場合、ステップS47において、制御部42は、ピークずれ回数カウンタ43が設定値より小さいか否かを判定する。
【0091】
ステップS47においてピークずれ回数カウンタ43が設定値より小さいと判定した場合、ステップS51において、制御部42は、ピークずれ回数カウンタ43を1だけインクリメントする。
【0092】
ステップS52において、制御部42は、Pos_diff=1を出力し、処理をステップS45に戻す。
【0093】
一方、ステップS47においてピークずれ回数カウンタ43が設定値より小さくないと判定した場合、ステップS48において、制御部42は、ピーク位置保持部44に対して、Pos_lockをPos_maxに置き換えるように指示する。
【0094】
ステップS49において、制御部42はピークずれ回数カウンタ43を0に初期化する。
【0095】
ステップS50において、制御部42は、Pos_diff=0を出力し、処理をステップS45に戻す。
【0096】
以上の処理により、入力されたPos_maxに保護段をかけた出力ピーク位置Pos_lockと、ピーク位置がずれたことを示すフラグであるピーク位置ずれ検出フラグPos_diffを出力することができる。
【0097】
図6の相関値出力部45の構成は、制御部29の代わりに制御部46が設けられている点で図2の相関値出力部28の構成と異なる。
【0098】
相関値出力部45は、畳み込み演算部21からの入力信号である相関値Corr(n)、ピーク位置サーチ部23からの入力信号であるシンボル位置mとピーク位置Pos_max、ピーク位置ずれ検出部41からの入力信号であるロックしたピーク位置Pos_lockとピーク位置ずれ検出フラグPos_diffから、後段の同期回路が要求する、ピーク位置から所定の位置dシンボルずれた位置の相関値Corr_pを出力する。
【0099】
制御部46は、Corr(n)を受信した場合、シンボル位置mをアドレスとして、相関値バッファ30にCorr_buf(m) = Corr(n)を書き込む。
【0100】
また、制御部46は、Pos_maxを受信した場合、Pos_diff==0であるときにはPos_maxを基準として所定の位置dの相関値を、Pos_diff==1であるときにはPos_lockを基準として所定の位置dの相関値を、相関値バッファ30から読み出して後段の回路に出力する。
【0101】
つまり、制御部46は、
Pos_diff==0の時、
Corr_p = Corr_buf( (Pos_max +d)%FLEN)
を出力し、
Pos_diff==1の時、
Corr_p = Corr_buf( (Pos_lock +d)%FLEN)
を出力する。
【0102】
図8は、相関値出力部45の動作を説明するフローチャートである。
【0103】
ステップS61において、制御部46は、新たなCorr(n)が入力されたか否かを判定する。
【0104】
ステップS61において新たなCorr(n)が入力されていないと判定した場合、制御部46は、新たなCorr(n)が入力されたと判定するまで待機する。
【0105】
一方、ステップS61において新たなCorr(n)が入力されたと判定した場合、ステップS62において、制御部46は、新たなPos_maxが入力されたか否かを判定する。
【0106】
ステップS62において新たなPos_maxが入力されていないと判定した場合、制御部46は、処理をステップS66に進める。
【0107】
一方、ステップS62において新たなPos_maxが入力されたと判定した場合、ステップS63において、制御部46は、Pos_diffが0と等しいか否かを判定する。
【0108】
ステップS63においてPos_diffが0と等しいと判定した場合、ステップS64において、制御部46は、Pos_maxを基準として所定の位置dの相関値を相関値バッファ30から読み出して後段の回路に出力する。制御部46は、その後、処理をステップS66に進める。
【0109】
一方、ステップS63においてPos_diffが0と等しくないと判定した場合、ステップS65において、制御部46は、Pos_lockを基準として所定の位置dの相関値を相関値バッファ30から読み出して後段の回路に出力する。制御部46は、その後、処理をステップS66に進める。
【0110】
ステップS66において、制御部46は、相関値バッファ30のアドレスmにCorr_buf(m) = Corr(n)を書き込む。ステップS66の後、ステップS61に戻り、以上の処理が繰り返される。
【0111】
以上の処理により、後段の同期回路が要求するピーク位置Pos_maxに応じた相関値、もしくはピーク位置がずれた場合にはピーク位置Pos_lockに応じた相関値を出力することができる。
【0112】
図9は、マルチパスがある時のPN相関演算部40の動作を説明するタイミングチャートである。図9のタイミングチャートは2波環境時の例を示している。
【0113】
例として、後段の回路はd=0、つまり、ピーク位置の相関値を用いる場合の例を示している。一方のパスが存在するシンボル位置がPath1、他方のパスが存在するシンボル位置がPath2である。また、ピーク位置ずれ検出部41の設定値は7としている。
【0114】
パスの電力変動により、ピーク位置が、1フレーム目から順に、Path1,Path2,Path1,Path2,Path1と変化している。
【0115】
1フレーム目では、Pos_lockにPath1が保持され、ピークずれ回数カウンタ43は0に初期化される。また、Corr_p=Corr_buf(Path1)のピーク位置の相関値が出力される。
【0116】
2フレーム目では、Path2がピーク位置となり、Pos_max == Pos_lockではない。この時、ピークずれ回数は0で設定値7より小さいため、Pos_diff=1となり、ピークずれ回数カウンタ43がインクリメントされ、1となる。Pos_diff=1であるため、Corr_pとしては、Corr_buf(Path2)の代わりに、Pos_lock位置の相関値であるCorr_buf(Path1)が出力される。
【0117】
3フレーム目では、Path1がピーク位置となり、Pos_max == Pos_lockであるため、ピークずれ回数カウンタ43が0に初期化される。また、Pos_diff=0となり、Corr_pとしては、Corr_buf(Path1)が出力される。
【0118】
4フレーム目では、Path2がピーク位置となり、Pos_max == Pos_lockではない。この時、ピークずれ回数は0で設定値7より小さいため、Pos_diff=1となり、ピークずれ回数カウンタ43がインクリメントされ、1となる。Pos_diff=1であるため、Corr_pとしては、Corr_buf(Path2)の代わりに、Pos_lock位置の相関値であるCorr_buf(Path1)が出力される。
【0119】
5フレーム目では、Path1がピーク位置となり、Pos_max == Pos_lockであるため、ピークずれ回数カウンタ43が0に初期化される。また、Pos_diff=0となり、Corr_pとしては、Corr_buf(Path1)が出力される。
【0120】
以上のように、ピーク位置のずれがあっても、同じパス位置の相関値を出力でき、後段の同期回路において安定した同期の制御を実現することができる。
【0121】
図10は、マルチパスがある時のPN相関演算部40のピーク位置Pos_lockが変化する動作を説明するタイミングチャートである。図10のタイミングチャートは、2波環境時の例を示している。
【0122】
例として、後段の回路はd=0、つまり、ピーク位置の相関値を用いる場合の例を示している。一方のパスが存在するシンボル位置がPath1、他方のパスが存在するシンボル位置がPath2である。
【0123】
1フレーム目ではPath1に存在するパスの電力の方が大きいが、2フレーム目以降では、Path2に存在するパスの電力の方が大きくなることを想定する。また、ピーク位置ずれ検出部41の設定値を7としている。
【0124】
1フレーム目では、Pos_lockにPath1が保持され、Corr_p=Corr_buf(Path1)が出力される。
【0125】
2フレーム目では、Path2がピーク位置となり、Pos_max == Pos_lockでない。この時、ピークずれ回数は0で設定値7より小さいため、Pos_diff=1となり、ピークずれ回数カウンタ43がインクリメントされ、1となる。Pos_diff=1のため、Corr_pとしては、Corr_buf(Path2)の代わりに、Pos_lock位置の相関値であるCorr_buf(Path1)が出力される。
【0126】
3フレーム目から8フレーム目までは、2フレーム目と同様に、Pos_max == Pos_lockではなく、ピークずれ回数は設定値7より小さいため、Pos_diff=1となり、ピークずれ回数カウンタ43が1ずつインクリメントされる。Corr_pとしては、Corr_buf(Path2)の代わりにCorr_buf(Path1)が出力される。
【0127】
9フレーム目では、ピークずれ回数が7であり、設定値7より小さくないため、Pos_diff=0が出力され、Pos_lock=Path2と置き換えられる。また、ピークずれ回数カウンタ43が0に初期化され、Corr_pとしては、Pos_maxであるPath2の相関値Corr_buf(Path2)が出力される。
【0128】
10フレーム目以降は、Pos_max == Pos_lockであり、Pos_diff=0であるため、Corr_pとしては、Pos_maxであるPath2の相関値Corr_buf(Path2)が出力される。
【0129】
このように、電力が最大となるパスが恒常的に変化している場合、そのパスの相関値を出力するようにして処理が行われる。後段の同期回路では、電力が最大となるパスに同期させることが可能になる。
【0130】
<第2実施の形態>
図11は、本技術を適用した受信装置の第2実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0131】
図11に示す構成のうち、図2もしくは図6の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
【0132】
図11の構成は、ピーク位置ずれ検出部41が新たに設けられ、ピーク位置ずれ検出部41の出力であるピーク位置ずれ検出フラグPos_diffが後段の回路への出力になっている点で図2の構成と異なる。
【0133】
図11のPN相関演算部50は、ピーク位置のずれを観測して、Pos_diffを後段の同期回路に出力する。後段の同期回路においては、Pos_diffが0であれば通常の動作が行われる。一方、Pos_diffが1であれば、後段の同期回路において、PN相関値を用いて計算された誤差結果を0に置き換える、誤差結果にリミッタをかける、あるいは、ループゲインを絞る、等の処理が行われる。
【0134】
なお、図11のPN相関演算部50では、ピーク位置ずれ検出部41が出力するPos_lockは不使用となる。
【0135】
図12は、図11のPN相関演算部50を、PN相関を用いたキャリア同期を含む同期回路である同期部60に適用した例を示す図である。
【0136】
同期部60に入力されたデータは、周波数誤差補正値生成部65の周波数誤差補正値を用いて回転器66で回転演算される。回転器66の出力は、PN相関演算部50に入力される。
【0137】
PN相関演算部50からは、ピーク位置の相関値Corr_p0とピーク位置ずれ検出フラグPos_diffが出力され、キャリア同期部61に入力される。
【0138】
キャリア同期部61の周波数誤差検出部62は、ピーク位置の相関値Corr_p0を用いて周波数誤差ferr(n)を算出する。周波数誤差ferr(n)の算出方法としては、例えば下式(4)により算出する方法が知られている。
【数4】

【0139】
周波数誤差補正部63は、Pos_diff=0である場合、周波数誤差検出部62の出力である周波数誤差ferr(n)をそのままループフィルタ64に出力する。一方、Pos_diff=1である場合、周波数誤差補正部63は、周波数誤差ferr(n)に対して補正をかけて出力する。
【0140】
周波数誤差ferr(n)の補正は、例えば、ferr(n)=0に置き換える、直前のPos_diff=0であった時のferr(n)に置き換える、ferr(n)にリミッタをかける、ferr(n)に補正係数をかけるなどによって行われる。
【0141】
周波数誤差検出部63から出力された周波数誤差ferr(n)は、ループフィルタ64によりフィルタリング処理が施された後、周波数誤差補正値生成部65に供給される。
【0142】
周波数誤差補正値生成部65は、周波数誤差ferr(n)に基づいて周波数誤差補正値を生成し、回転器66に供給する。
【0143】
これにより、マルチパス環境で別のパスが最大電力となった場合でもキャリア同期部61が破綻せず、安定した動作を実現することが可能となる。
【0144】
図13は、図11のPN相関演算部50を、PN相関を用いたシンボルタイミング同期を含む同期回路である同期部70に適用した例を示す図である。
【0145】
同期部70に入力されたデータは、タイミング誤差補正値生成部75のタイミング誤差補正値を用いて補間器76で時間補間される。補間器76の出力は、PN相関演算部50に入力される。
【0146】
PN相関演算部50からは、ピーク位置-1シンボル目の相関値Corr_pm1、ピーク位置+1シンボル目の相関値Corr_pp1、およびピーク位置ずれ検出フラグPos_diffが出力され、シンボルタイミング同期部71に入力される。
【0147】
シンボルタイミング同期部71のタイミング誤差検出部72は、Corr_pm1、Corr_pp1を用いてタイミング誤差terr(n)を算出する。タイミング誤差terr(n)の算出方法としては、例えば下式(5)により算出する方法が知られている。
【数5】

【0148】
タイミング誤差補正部73は、Pos_diff=0である場合、タイミング誤差検出部72の出力であるタイミング誤差terr(n)をそのままループフィルタ74に出力する。一方、Pos_diff=1である場合、タイミング誤差補正部73は、タイミング誤差terr(n)に対して補正をかけて出力する。
【0149】
タイミング誤差terr(n)の補正は、例えば、terr(n)=0に置き換える、直前のPos_diff=0であった時のterr(n)に置き換える、terr(n)にリミッタをかける、terr(n)に補正係数をかけるなどによって行われる。
【0150】
タイミング誤差補正部73から出力されたタイミング誤差terr(n)は、ループフィルタ74によりフィルタリング処理が施された後、タイミング誤差補正値生成部75に供給される。
【0151】
タイミング誤差補正値生成部75は、タイミング誤差terr(n)をタイミング誤差補正値に変換し、補間器76に出力する。
【0152】
これにより、マルチパス環境で別のパスが最大電力となった場合でもシンボルタイミング同期部71が破綻せず、安定した動作を実現することが可能となる。
【0153】
[構成の組み合わせ例]
本技術は、以下のような構成をとることもできる。
【0154】
(1)
所定間隔で既知信号を含む受信信号に対して、前記既知信号との相関演算を行う相関演算部と、
前記相関演算部によって検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれているかを判定する判定部と
を備える受信装置。
【0155】
(2)
前記受信信号は、GB20600-2006規格に規定された信号であり、
前記既知信号は、GB20600-2006規格に規定されたPN(Pseudo Noise)信号である
前記(1)に記載の受信装置。
【0156】
(3)
前記相関演算部によって検出される各相関ピーク間の位相差に基づいて周波数誤差を検出する周波数誤差検出部を有する
前記(1)または(2)に記載の受信装置。
【0157】
(4)
前記判定部によって、前記相関演算部において検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれていると判定された場合に、前記周波数誤差に対して補正を行う周波数誤差補正部を有する
前記(3)に記載の受信装置。
【0158】
(5)
前記相関演算部によって検出される相関ピークの位置に基づいてタイミング誤差を検出するタイミング誤差検出部を有する
前記(1)から(4)のいずれかに記載の受信装置。
【0159】
(6)
前記判定部によって、前記相関演算部において検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれていると判定された場合に、前記タイミング誤差に対して補正を行うタイミング誤差補正部を有する
前記(5)に記載の受信装置。
【符号の説明】
【0160】
21 畳み込み演算部, 22 電力計算部, 23 ピーク位置サーチ部, 30 相関値バッファ, 40 PN相関演算部, 41 ピーク位置ずれ検出部, 42 制御部, 43 ピークずれ回数カウンタ, 44 ピーク位置保持部, 45 相関値出力部, 46 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で既知信号を含む受信信号に対して、前記既知信号との相関演算を行う相関演算部と、
前記相関演算部によって検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれているかを判定する判定部と
を備える受信装置。
【請求項2】
前記受信信号は、GB20600-2006規格に規定された信号であり、
前記既知信号は、GB20600-2006規格に規定されたPN(Pseudo Noise)信号である
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記相関演算部によって検出される各相関ピーク間の位相差に基づいて周波数誤差を検出する周波数誤差検出部を有する
請求項1または請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記判定部によって、前記相関演算部において検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれていると判定された場合に、前記周波数誤差に対して補正を行う周波数誤差補正部を有する
請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
前記相関演算部によって検出される相関ピークの位置に基づいてタイミング誤差を検出するタイミング誤差検出部を有する
請求項1から請求項4のいずれかに記載の受信装置。
【請求項6】
前記判定部によって、前記相関演算部において検出される相関ピークの間隔が、前記所定間隔からずれていると判定された場合に、前記タイミング誤差に対して補正を行うタイミング誤差補正部を有する
請求項5に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−244550(P2012−244550A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115122(P2011−115122)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】