説明

受信装置と、これを用いた電子機器

【課題】受信装置の回路規模を小型化する。
【解決手段】本発明の受信装置は、基準信号を出力するMEMS振動子14と、このMEMS振動子14が出力した基準信号に基づいて発振信号を出力する発振器15と、この発振器15から出力された発振信号が入力される混合器13と、この混合器13の入力側若しくは出力側に接続された増幅器12と、この増幅器12の出力側に接続されて受信強度を検出する信号強度検出部18と、この混合器13の出力側に接続されて入力信号の周波数変動を検出する周波数変動検出部19と、信号強度検出部18の検出結果に基づいて増幅部12の増幅度を制御する制御部とを備える。
そして、この制御部は周波数変動検出部が検出した周波数変動によって周囲温度を検知し、この検知した温度と信号強度検出部の検出結果に基づいて受信信号の有無を判断する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号を受信する受信装置と、これを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の受信装置について、図3を用いて説明する。図3は、従来の受信装置を搭載した電子機器のブロック図である。
【0003】
図3において、従来の受信装置1は、基準信号を出力する水晶振動子2と、この水晶振動子2が出力した基準信号に基づいて発振信号を出力する発振器3と、この発振器3から出力された発振信号が入力される混合器4と、この混合器4の入力側に接続された増幅器5と、この増幅器5の出力側に接続されて受信強度を検出する信号強度検出部6と、この信号強度検出部6の検出結果に基づいて増幅部5の増幅度を制御する制御部7と、この受信装置1の温度を検出する温度センサ8とを備えていた。
【0004】
この制御部7は、温度センサ8が検出した受信装置1の温度と信号強度検出部6の検出結果に基づいて受信信号の有無を判断し、チャンネルサーチを行っていた。
【0005】
これにより、増幅部5の増幅度が周囲温度によって変動しても、制御部7は、温度センサ8の検出結果から導出した判断基準により受信信号の有無を判断するので、周囲温度の影響をあまり受けずに受信信号の有無を適切に判断しチャンネルサーチを行うことができる。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特許第3005475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の受信装置1は、温度センサ8を搭載していたので、回路規模が大きくなるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、周囲温度の影響を考慮して制御を行う受信装置において、回路規模を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の受信装置は、基準信号を出力するMEMS振動子と、このMEMS振動子が出力した基準信号に基づいて発振信号を出力する発振器と、この発振器から出力された発振信号が入力される混合器と、この混合器の入力側若しくは出力側に接続された増幅器と、この増幅器の出力側に接続されて受信強度を検出する信号強度検出部と、この混合器の出力側に接続されて入力信号の周波数変動を検出する周波数変動検出部と、信号強度検出部の検出結果に基づいて前記増幅部の増幅度を制御する制御部とを備える。
【0010】
そして、この制御部は周波数変動検出部が検出した周波数変動によって周囲温度を検知し、この検知した温度と信号強度検出部の検出結果に基づいて受信信号の有無を判断する制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明の受信装置は、温度センサを用いなくとも、周囲温度の影響を考慮して制御を行うので、回路規模を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1の受信装置について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1の受信装置9を搭載した電子機器のブロック図である。
【0013】
図1において、受信装置9は、例えば同一の半導体ICに形成され、アンテナ10の出力側に接続されて不要信号を除去し例えば帯域制限フィルタからなるフィルタ11と、このフィルタ11の出力側に接続された増幅器12と、この増幅器12の出力側に接続され受信信号と発振信号を混合する混合器13とを備える。また、受信装置9は、基準信号を出力するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子14と、このMEMS振動子14が出力した基準信号に基づいて発振信号を混合器13に出力する発振器15とを備える。さらに、受信装置9は、混合器13の出力側に接続されてアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部16と、このAD変換部16の出力側に接続された復調処理部17とを備える。さらに、受信装置9は、AD変換部16と復調処理部17との間に接続されて受信強度を検出する信号強度検出部18と、AD変換部16と復調処理部17との間に接続されて入力信号の周波数変動を検出する周波数変動検出部19と、信号強度検出部18の検出結果に基づいて増幅部12の増幅度を制御する制御部20とを備える。
【0014】
尚、この受信装置9を搭載した電子機器(図示せず)は、受信装置9の出力側に接続された復号処理部22と、この復号処理部22の出力側に接続された表示部23を有する。
【0015】
制御部20は周波数変動検出部19が検出した周波数変動によって周囲温度を検知し、この検知した温度と信号強度検出部18の検出結果に基づいて受信信号の有無を判断する制御を行う。
【0016】
次に、制御部20の制御について詳述する。
【0017】
増幅部12の増幅度は増幅部12の周囲温度によって変動する。従って、チャンネルサーチを行う際、制御部20は、周囲温度による増幅部12の増幅度変動を考慮して信号の有無を判断する必要がある。
【0018】
ここで、MEMS振動子14は、MEMS振動子14の周囲温度により、出力される基準信号の周波数変動が顕著に発生する。制御部20は、この基準信号の周波数変動に起因して発生する中間周波数の変動を用いて、温度検出を行う。即ち、制御部20は、制御部20に接続された記憶部21が記憶している(表1)に示すテーブルに基づき、周囲温度を検知するのである。
【0019】
【表1】

【0020】
この(表1)は、周波数変動検出部19が検出した周波数変動と、増幅部12の周囲温度と、信号有無を判断する閾値の補正値との関係を示している。
【0021】
例えば、受信装置9の周囲温度が室温(20℃)のときの、制御部20が信号有無を判断する際の受信強度閾値を−90dBmとする。
【0022】
まず、周波数変動検出部19は、設定した受信周波数、即ち、周囲温度が室温(20℃)の場合の周波数と、実際の入力信号の周波数とを比較し、これらの周波数差である周波数変動値が−0.311MHzであった場合、制御部20は、周囲温度が60℃と判断する。そして、制御部20は、記憶部21が記憶しているテーブル(表1)を参照し、増幅部12の周囲温度が60℃のときの補正値が−1.6dBであることを読み取り、制御部20は、上記の受信強度閾値を−91.6dBm(=−90dBm−1.6dB)として、受信信号の有無を判断する。このようにして、受信装置9は、チャンネルサーチを行うのである。
【0023】
これにより、増幅部12の増幅度が周囲温度によって変動しても、制御部20は、周波数変動検出部19の検出結果から導出した判断基準により受信信号の有無を判断するので、周囲温度の影響をあまり受けずに受信信号の有無を適切に判断しチャンネルサーチを行うことができる。即ち、従来の水晶振動子ではなく温度に対する周波数変動が直線的なシリコン材を用いたMEMS振動子14を用いて温度検出を行ったからこそ、制御部20は、受信信号の有無を正確に判断できる。このように、受信装置9は、温度センサを用いなくとも、周囲温度の影響を考慮して制御を行うので、回路規模を小型化することができる。
【0024】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2の受信装置について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態2の受信装置9を搭載した電子機器のブロック図である。尚、特に説明しない限り、実施の形態2における受信装置は、実施の形態1と同様の構成である。
【0025】
図1において、受信装置9は、例えば同一の半導体ICに形成され、アンテナ10の出力側に接続されて不要信号を除去し例えば帯域制限フィルタからなるフィルタ11と、このフィルタ11の出力側に接続された増幅器12と、この増幅器12の出力側に接続され受信信号と発振信号を混合する混合器13とを備える。また、受信装置9は、基準信号を出力するMEMS振動子14と、このMEMS振動子14が出力した基準信号に基づいて発振信号を混合器13に出力する発振器15とを備える。さらに、受信装置9は、混合器13の出力側に接続されてアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部16と、このAD変換部16の出力側に接続された復調処理部17とを備える。さらに、受信装置9は、AD変換部16と復調処理部17との間に接続されて受信強度を検出する信号強度検出部18と、AD変換部16と復調処理部17との間に接続されて入力信号の周波数変動を検出する周波数変動検出部19と、信号強度検出部18の検出結果に基づいて増幅部12の増幅度を制御する制御部20とを備える。
【0026】
この制御部は周波数変動検出部が検出した周波数変動によってMEMS振動子14の温度を検知し、検知した温度に基づいて増幅部12の増幅度を制御する。
【0027】
増幅部12の増幅度は増幅部12の周囲温度によって変動する。従って、制御部20は、周囲温度による増幅部12の増幅度変動を考慮して増幅部12の増幅度を制御する必要がある。
【0028】
これにより、増幅部12の増幅度が周囲温度によって変動しても、制御部20は、周波数変動検出部19の検出結果から導出した周囲温度に基づいて増幅部12の増幅度を制御するので、周囲温度の影響をあまり受けずに増幅度制御を行うことができる。即ち、従来の水晶振動子ではなく温度に対する周波数変動が直線的なシリコン材を用いたMEMS振動子14を用いて温度検出を行ったからこそ、制御部20は、増幅度制御を正確に実行することができる。このように、受信装置9は、温度センサを用いなくとも、周囲温度の影響を考慮して制御を行うので、回路規模を小型化することができる。
【0029】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3の受信装置について図2を用いて説明する。図2は、実施の形態3の受信装置9を搭載した電子機器のブロック図である。尚、特に説明しない限り、実施の形態3における受信装置は、実施の形態1又は実施の形態2と同様の構成である。
【0030】
図2において、受信装置9は、更に、制御部20に接続された時計部30を備える。
【0031】
制御部20は周波数変動検出部19が検出した周波数変動によって周囲温度を検知し、この検知した温度と信号強度検出部18の検出結果に基づいて受信信号の有無を判断する制御を行う。
【0032】
受信装置9の電源をオンした場合、電源をオンした直後の受信装置9の温度と、電源をオンして所定時間経過した場合の受信装置9の温度とは、異なる。尚、受信装置9の周囲温度が氷点下20度のようなコールド状態において、両者は特に異なる。
【0033】
これにより、受信装置9の電源をオンした直後の信号強度と、受信装置9の電源をオンして所定時間経過した後にほぼ一定になった信号強度とは、たとえアンテナ10で受信した信号強度が同一でも、異なることになる。これは、各々の場合において、増幅部12の増幅度が異なるからである。そこで、制御部20は、時計部30の時間計測結果に基づいて、受信装置9が電源オンしてから所定時間経過後に周波数変動検出部19が検出した周波数変動によってMEMS振動子の温度を検知し、信号強度検出部18の検出結果を補正する。
【0034】
次に、制御部20の制御について詳述する。
【0035】
電源オンと共に時計部30において時間の計測を開始する。次に、制御部20はチャンネルサーチや電界強度取得を行う時に、時計部30からの時間を取得する。次に制御部20は記憶部21にあらかじめ記録されている所定時間を取得し、この所定時間と時計部30から取得した時間との比較を行う。制御部20は、この比較の結果、時計部30から取得した時間が記憶部21から取得した所定時間以上経過している場合は、以下実施の形態1と同様の受信信号判断を行う。
【0036】
また、制御部20は、比較の結果、時計部30から取得した時間が記憶部21から取得した所定時間を経過していない場合は、信号強度検出部18が検出した検出値に、あらかじめ記憶部21に記録された補正値分を補正した値を検出値として使用する。
【0037】
以下実施の形態1と同様の動作で受信信号の有無を判断する。
【0038】
このように、制御部20は、受信装置9が電源オンした所定時間経過後に周波数変動検出部19が検出した周波数変動によってMEMS振動子14の温度を検知するので、温度変化中における周波数調整をしなくともよく、受信装置9の消費電力を低減することができる。
【0039】
尚、実施の形態3において、制御部20は、実施の形態2の如く、周波数変動検出部19が検出した周波数変動によってMEMS振動子14の温度を検知し、検知した温度に基づいて増幅部12の増幅度を制御しても良い。この場合も、制御部20は、受信装置9が電源オンした所定時間経過後に周波数変動検出部が検出した周波数変動によってMEMS振動子14の温度を検知するので、より正確に温度検出を行うことができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明にかかる受信装置は、回路規模を小型化することができ、携帯電話等の電子機器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1、2における受信装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態3における受信装置のブロック図
【図3】従来の受信装置のブロック図
【符号の説明】
【0042】
9 受信装置
10 アンテナ
11 フィルタ
12 増幅器
13 混合器
14 MEMS振動子
15 発振器
16 AD変換部
17 復調処理部
18 信号強度検出部
19 周波数変動検出部
20 制御部
21 記憶部
22 復号処理部
23 表示部
30 時計部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号を出力するMEMS振動子と、
前記MEMS振動子が出力した基準信号に基づいて発振信号を出力する発振器と、
前記発振器から出力された発振信号が入力される混合器と、
前記混合器の入力側若しくは出力側に接続された増幅器と、
前記増幅器の出力側に接続されて受信強度を検出する信号強度検出部と、
前記混合器の出力側に接続されて入力信号の周波数変動を検出する周波数変動検出部と、
前記信号強度検出部の検出結果に基づいて前記増幅部の増幅度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は前記周波数変動検出部が検出した周波数変動によって周囲温度を検知し、この検知した温度と前記信号強度検出部の検出結果に基づいて受信信号の有無を判断する受信装置。
【請求項2】
基準信号を出力するMEMS振動子と、
前記MEMS振動子が出力した基準信号に基づいて発振信号を出力する発振器と、
前記発振器から出力された発振信号が入力される混合器と、
前記混合器の入力側若しくは出力側に接続された増幅器と、
前記増幅器の出力側に接続されて受信強度を検出する信号強度検出部と、
前記混合器の出力側に接続されて入力信号の周波数変動を検出する周波数変動検出部と、
前記信号強度検出部の検出結果に基づいて前記増幅部の増幅度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は前記周波数変動検出部が検出した周波数変動によって前記MEMS振動子の温度を検知し、検知した温度に基づいて前記増幅部の増幅度を制御する受信装置。
【請求項3】
少なくとも前記MEMS振動子と、前記発振器と、前記混合器と、前記増幅器とが同一の半導体基板上に形成された請求項1又は請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記受信装置が電源オンした所定時間経過後に前記周波数変動検出部が検出した周波数変動によって前記MEMS振動子の温度を検知する請求項1又は請求項2に記載の受信装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の受信装置と、
前記受信装置の出力側に接続された表示部とを搭載した電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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