説明

受動光ネットワークのキャパシティ管理システム

本発明は、複数の異なるサービスタイプおよび複数のユーザを有するPONにおいて、各々の異なる優先度またはサービスレベルのパフォーマンスを正確に予測するツールである。遅延およびビットレートが、パケット、プロトコル、伝搬およびスケジューリングのオーバヘッドをすべて考慮に入れて、計算される。すべてのサービスのパフォーマンスおよび遅延は、実際のPONのオペレーションを全く同一に模擬するリアルタイムシミュレーションを実行することによって、さらに検証されるので、サービスが加入者によって実際に使用されるか、あるいはサービスの使用の有無がテストされる前に、様々なサービスのパフォーマンスの非常に厳密な予測が得られることになる。本発明によれば、サービスプロバイダは、可能な限り最大数のサービスを販売できるとともに、サービスのすべてが満足に機能することが確実になる。本ツールを使用して、様々なPONの挙動をモデル化して、予測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、光ファイバベースの通信ネットワークに関し、より詳細には、ブロードバンドアクセスの目的のために、セントラルオフィス(CO:Central Office)を複数の加入者敷地内端末(customer premises terminal)に接続するFTTPネットワークにおいて利用されているような受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願との相互参照)
本出願は、「Capacity Management System for Passive Optical Network (PON)」という名称で2005年1月26日に出願された米国仮特許出願番号第60/647314号の優先権の利益を主張している。
【0003】
通信産業は、多年にわたって、FTTP(Fiber To The Premises)テクノロジを実現する作業を行なってきた。最近では、HFC(Hybrid Fiber Coax)ネットワークを介して家庭および企業へのブロードバンドアクセスを提供するケーブル産業との競争が加わったために、従来の有線通信キャリアは、急速にFTTPテクノロジの展開を増加させつつある。有線通信キャリアによるFTTP展開の一部は受動光ネットワーク(PON)になろうとしている。PONは、アクティブエレクトロニクスによらずに、パッシブスプリッタ(passive splitter)を使用して複数の端末デバイスに信号を配信する光ファイバネットワークである。PONを使用して、FTTPネットワークにおいて、ローカルループを加入者敷地内に接続することが多い。
【0004】
図1に示すような受動光ネットワーク(PON)における伝送は、OLT(Optical Line Terminal)112とONT(Optical Network Terminal)130との間で行なわれている。OLT112は、セントラルオフィス(CO)110または同様の類似の場所に配置されていて、光アクセスネットワークをバックボーン(図示せず)に接続している。ONT130は、加入者の場所(本明細書では、加入者敷地内ともいう)またはその付近に配置されており、ONTは、時には、ONU(Optical Network Unit)と呼ばれることもある。PONはポイントツーマルチポイント(P2MP:point-to-multipoint)ネットワークとも呼ばれる。図1に示すように、(OLTからONTへの)ダウンストリーム方向では、PONはブロードキャストネットワークであり、アップストリーム方向では、PONはマルチポイントツーポイント(multipoint-to-point)ネットワークである。
【0005】
ダウンストリーム方向では、OLT112によって送信される信号は、1:Nのパッシブスプリッタ120または一連のパッシブスプリッタを通過し、その結果、信号はN個のONTすべてに到達する。PONは通常、20km未満にわたって最大約32のスプリット(split)を有するシングルモードファイバを使用している。低速(155Mbps)のPONは通常、高速(1Gbpsより大)のPONよりも多くのスプリットを許容することができる。
【0006】
PONは通常、ある波長(1490nm)ではダウンストリーム信号を変調し、別の波長(1310nm)ではアップストリーム信号を変調するが、どのような特定のシステムにおいても他の波長を使用することも可能である。ブロードキャストビデオ信号は、オーバーレイされた第3の波長(1550nm)では、ダウンストリームとして搬送することができる。アップストリーム方向では、パッシブスプリッタ120には指向特性(directional property)があるために、あるONT130からのデータフレームは、OLT112にだけ到達し、他のONTには到達しない。異なるOLTから同時に送信された信号は、適切にスケジューリングされていないと衝突することになる。そのような理由から、PONプロトコルでは、アップストリーム送信は、OLTから発せられた命令に従ってスケジューリングされている。各々のONTからの伝搬遅延(propagation delay)は、レンジングプロシージャ(ranging procedure)により記録され、その伝搬遅延は、TDMがスモールガードスペース(small guard space)とともにアップストリーム送信をスケジューリングすることによって、補償される。
【0007】
現行のPONは通常、動的帯域幅割当(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)メカニズムを利用している。このDBAは、アップストリームトラフィックボリュームを、リアルタイムでOLTにレポートするので、OLTは、アップストリームタイムスロットを割り当てることができる。特にPONベンダによる作業の多くは、トラフィックをリアルタイムで処理するための、効率的なDBAアルゴリズムを作成することに集中している。PONは共有媒体(shared medium)であるので、余りに多くの加入者が余りに多くのサービスに契約していると、問題が発生することになる。このことは最終的に、リアルタイムDBAスケジューリングにおける問題として生じることになるが、DBAスケジューリングは、それ自身では、ユーザが任意の個別のサービスに加入することを許可すべきか否かを判断することができない。
【0008】
従来技術によるシステムは、送信要求に対してタイムスロットを割り当てるためのリアルタイムスケジューリングメカニズムを定義することに集中していた(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0009】
図1に示すようなPONベースのFTTPネットワークは、現在では、豊富な帯域幅キャパシティを提供する、将来のブロードバンドアクセスネットワークであると考えられている。しかし、ある時点で豊富なキャパシティであるように見えても、その後の時点では乏しいリソースになることはすでに実証されている。PON帯域幅は、現在要求される可能性が高いサービスの数の現実的な状況では豊富であるので、サービスプロバイダは(当然のことながら)、現在では、過剰加入(over-subscription)には関心をもっていない。例えば、32ユーザが622Mbps PONを共有しているとき、各ユーザにはおよそ20Mbpsが割り当てられることになるが、これは、現在のブロードバンド要求に対しては十分なものである。しかし、オンデマンドオールデジタルHDTV(all-digital HDTV on demand)やアドバンスドインターネットサービス(advanced Internet service)、およびインターネットプロトコルベースTV(IPTV:Internet Protocol based TV)のような将来のサービスは、その均等性(equation)を容易に変更してしまうおそれがある。
【0010】
【非特許文献1】H. Miyoshi, T. Inoue and K. Yamashita, 「QoS-aware Dynamic Bandwidth Allocation Scheme in Gigabit-Ethernet Passive Optical Network」, 2004 IEEE International Conference on Communications, 2004
【非特許文献2】G. Kramer, B Mukherjee, S. Dixit, Y. Ye and R. Hirth, 「Supporting Differentiated Classes of Service in Ethernet Passive Optical Networks」, Journal of Optical Networking, vol. 1, no. 8/9, pp. 280-298, August 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、最大32の加入者敷地内の加入者の信号を、セントラルオフィスでシングルガラスファイバ上の単一の信号に効率的に集約する、PONネットワークのキャパシティの正確な認識および管理を可能にする方法およびシステムが望まれている。
【0012】
さらに、共有PONタイムスロット、特に、アップストリームのタイムスロットをスケジューリングすることに伴うオーバヘッドを記録することによって、PON使用量を最大限にするとともに、サービス品質(QoS:Quality of Service)を維持するための、サービス加入を管理する方法およびシステムが望まれている。
【0013】
さらに、すべてのパフォーマンス目標が達成可能であるか否か、あるいは一部のサービスに低い優先度を割り当てるべきか、一部のサービスを完全にブロックすべきか否かを正確に判定することによって、PONに関連するサービスの問題が実際に発生する前に、その問題を識別するためのプランニングプロセス(planning process)が望まれている。
【0014】
最後に、レポートされた問題が、PONにおいて単にトラフィックが過負荷(overload)になったことに起因するのか否かを判断するためのシステムおよび方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のシステムおよび方法によれば、FTTPブロードバンドアクセスネットワークを展開するために使用される受動光ネットワーク(PON)のキャパシティを管理することが可能となる。本発明のPONキャパシティ管理方法およびPONキャパシティ管理システムによれば、ユーザは、PON共有媒体ブロードバンドアクセスネットワークにおいて、帯域幅割当、許可制御(admission control)、およびサービスレベルの管理を統御することができる。本発明は、PONにおいて送信される加入者のサービスのセットのオペレーションおよびパフォーマンスをモデル化した後に、それらサービスが実際に展開されるようにする。このようにすると、オペレータは、問題が実際に発生する前に問題を識別し、すべてのパフォーマンス目標が達成可能であるか否か、あるいは一部のサービスに低い優先度や低い帯域幅を割り当てるべきか、一部のサービスを完全にブロックグすべきか否かを正確に判定することができる。また、このようにすると、比較的未熟なサービス発注担当者(service order personnel)でも、少しでも多くのサービス要求をPONにおいて無理に送信しようとしたときのQoSに及ぼす影響を予め正確に判断することができる。
【0016】
本発明は、複数の異なるサービスタイプおよび複数のユーザを伴うPONにおける、各々の異なる優先度またはサービスレベルのパフォーマンスを正確に予測するツールである。遅延およびビットレートは、パケット、プロトコル、伝搬およびスケジューリングのオーバヘッドをすべて考慮に入れて計算される。すべてのサービスのパフォーマンスおよび遅延は、実際のPONのオペレーションを全く同一に模擬するリアルタイムシミュレーションを実行することによって、さらに検証されるので、サービスが実際に加入者によって使用されるか、あるいは加入者による使用の有無がテストされる前に、様々なサービスのパフォーマンスについて非常に厳密な予測が得られることになる。本発明によれば、サービスプロバイダは、可能な限り最大数のサービスを販売できるとともに、サービスのすべてが満足に機能することが確実になる。
【0017】
PONモデル化ツールは、ブロードバンドサービスを提供する目的で、加入者敷地内端末を使用する加入者をセントラルオフィスに接続するための受動光ネットワークのキャパシティをモデル化して、予測する。PONモデル化ツールのユーザは、PONの複数の特性に関するデータを入力する。次いで、PONモデル化ツールは、入力された特性に基づいてPONのパフォーマンスをシミュレートし、入力された数の加入者にサービスを配信する能力をPONが有しているか否かを判定する。PONモデル化ツールは、その判定をユーザに出力する。
【0018】
PONモデル化ツールのユーザは、PONの複数の特性に関するデータを入力する。それらPONの複数の特性には、PONタイプ、加入者の数、サービスの帯域幅、サービスの優先度、動的帯域幅割当パラメータ、合格/失敗(pass/fail)許容度、フレーミングパラメータ(framing parameter)、パケット化パラメータ(packetization parameter)、およびスケジューリングパラメータが含まれる。加入者の数、サービスの帯域幅、およびサービスの優先度に関するデータは、加入使用量および売上げレート(take rate)に基づいて、統計的に生成することができる。代替として、加入者の数、サービスの帯域幅、およびサービスの優先度に関するデータは、PONにおいて利用可能なサービスに対する特定の要求のセットに基づくこともできる。PONモデル化ツールは、PONの特性に関する入力データに基づいて、各サービスタイプごとの平均遅延および最大遅延を判定する。この情報はユーザに提示されるので、ユーザは、PONを反復的に(iteratively)、かつ対話方式(interactively)でモデル化し、その使用量を最大限にするために、出力に基づいてPONの特性の一部を変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図2を参照すると、図2は、本発明のPONキャパシティ管理システムを示す機能図である。中央のPONモデラ(modeler)200は、PONキャパシティを判定するために、計算とシミュレーションとを実行する。PONモデラ200は、所定の物理的パラメータを入力210〜224として使用する。入力として可能なパラメータの一部が図2に示されている。PONタイプ(B,G,E)から、使用されるPONタイプがPONモデラ200に提供される。ここで、BはブロードバンドPONを表し、GはギガPONを表し、Eはイーサネット(登録商標;以降同じ)PONを表している。入力212からは、各サービスタイプごとの加入者の数がPONモデラ200に提供される。入力214からは、サービスの帯域幅がPONモデラ200に提供される。すなわち、例えば、HDTVは、9Mbpsダウンストリームを使用し、デジタル電話(digital telephony)は、64kbpsアップストリームおよび64kbpsダウンストリームの両方を使用し、平均加入者用インターネット帯域幅(average subscribed Internet bandwidth)は、1Mbpsアップストリーム、かつ3Mbpsダウンストリームである。入力216からは、サービスの優先度がPONモデラ200に提供される。入力218からは、各加入者が使用する予め割り当てられた帯域幅と優先度とを有する各サービスの数であるPONフィル(fill)が、各ユーザのインターネットアクセスといった可変帯域幅サービスの加入者用帯域幅とともに、PONモデラ200に提供される。入力220からは、PONのフレーム長がPONモデラ200に提供される。このフレーム長は、アップストリーム送信のための一連のタイムスロットがユーザに与えられるサイクルタイムである。入力222からは、PONにおけるタイムスロット割当および動的帯域幅割当(DBA)のスケジューリングパラメータがPONモデラ200に提供される。これらについては、遅延の影響を受けるトラフィックと優先トラフィックとが考慮されている。入力224からは、ビットレートや伝搬遅延などの他の入力変数が提供される。PONモデラ200は、すべてのサービスおよびユーザのパケットストリームをPON共有媒体に多重化する、媒体アクセス制御(MAC)レイヤ2のパケット多重化の挙動をモデル化する。ダウンストリームPON MACオペレーションは、すべてのユーザのデータがOLTからブロードキャストされ、かつONTトランシーバは自身のIDに対応するデータのみを保持しているとの認識に基づいている。
【0020】
アップストリームPON MACスケジューリングは非常に複雑である。アップストリームMACは、現行の標準と典型的な慣行とに従って、モデル内でシミュレートされる。現行の標準としては、ブロードバンドPON(BPON)を規定しているITU−T G.983系標準、ギガビットPON(GPON)を規定しているITU−T G.984系標準、およびイーサネットPON(EPON)を規定しているIEEE 802.3ah標準がある。これらの異なるタイプのPON(BPON,EPON,GPON)は、動作が若干異なるので、それらの各々は、異なるモデルを有している。しかし、これらのPONは、現在では、いずれも時分割を使用して同じように稼動している。各ONTは、他のONTとは別のタイムスロットで送信し、アップストリーム送信は、オーバラップしない形でOLTに到達するようにスケジューリングされる。OLTは、ONTからの要求に応じて、可変長のアップストリームタイムスロットを各ONTに割り当てる。アクティブなONTの各々が、各フレーム(ほぼ1ミリ秒)で1回、アップストリームに送信することを許可されている場合には、フレーミング方法を利用することができる。各ユーザのあるアップストリーム送信と次のアップストリーム送信との間のガードスペース、タイムスロットを要求して割り当てる0AMパケット、セグメンテーション、パケットヘッダなどのような、PONの稼動に伴う多くのオーバヘッドはすべて、ツールのモデル内に組み込まれている。
【0021】
ツールへの入力としては、個々のPONに特有のパラメータまたは特定のPONサービスシナリオがあり、それら入力には、ユーザの数、各加入サービスタイプの数、および優先度が含まれている。さらに、入力としては、PONタイプの全体的な背景定義(background definition)、およびPON MACレイヤと物理レイヤとのオペレーションにおいて変更できるパラメータがある。入力パラメータはまた、各個別のサービスタイプごとに定義されており、それら入力パラメータには、トラフィック特性、上位層パケット化、およびビットレートが含まれている。
【0022】
ツールからの出力としては、すべてのサービスデータおよびオーバヘッドから消費される帯域幅の総和、様々なクラスのサービスの個々の和(これらの和はパーセンテージとして表される)、および要求されたサービスが満たされた後に残っている利用可能な帯域幅の表示がある。さらに、出力としては、各サービスまたは各優先度クラスのパケット遅延の最大値、平均値および標準偏差がある。
【0023】
本発明の全機能プロトタイプは、ソフトウェアツールに組み込まれている。図5は、本発明のPONモデル化ツールにおける情報のフローを示すフロー図である。ステップ510において、システムのユーザは「オフライン」パラメータを入力する。「オフライン」パラメータとしては、PONタイプ;提供されるサービスの帯域幅および優先度;動的帯域幅割当(DBA)パラメータ;フレーミングパラメータ、パケット化パラメータ、およびスケジューリングパラメータ;および合格/失敗許容度などがある。ステップ520において、ユーザはランタイムパラメータを入力する。ランタイムパラメータとしては、ユーザの数/ONTの数;要求された加入者用サービスの数;および要求された可変レートデータサービスの帯域幅などがある。ステップ522、524および526は、PONモデラのユーザが実行できる3つの異なる方法を示している。ステップ522では、ユーザは、加入使用量および売上げレートの確率(probability)を入力することによって、使用量データを統計的に生成する。ステップ524では、ユーザはPON(OLTポート)におけるすべてのサービスを入力する。ステップ526では、ユーザは、サービスの数と、個々のユーザによって加入されている各サービスについての帯域幅とを入力する。
【0024】
ユーザがオプションのクイック帯域幅チェックを実行することを選択したときは、これはステップ530で実行され、選択したサービスと帯域幅とがサポート可能であれば、処理はステップ550に続く。サポート可能でなければ、ステップ540において、ユーザは、要求したサービスの数を少なくするか、かつ/または、要求したサービスの帯域幅を下げるかした後に、クイック帯域幅チェックをステップ530で再実行することを要求される。ステップ550において、フルリアルタイムシミュレーション(full, real-time simulation)が実行される。ステップ560において、遅延が、PONの優先度レベル、サービスおよびユーザにとって許容し得るか否かが判定される。その判定がYesであれば、PONシミュレーションは完了する。PONモデラのユーザが、遅延が許容し得ないと判定した場合は、ユーザは、ステップ570において、要求したサービスの数を少なくするか、かつ/または、要求したサービスの帯域幅を下げるかすると、フルリアルタイムシミュレーションがステップ550で再実行される。
【0025】
ツールは、サーバ側のJava(登録商標;以降同じ)を使用して、Javaプログラミング言語で書かれ、Microsoft(登録商標;以降同じ) ExplorerまたはNetscape(登録商標;以降同じ) Navigatorなどの、汎用ウェブブラウザがクライアントGUIとなり、他方、計算はサーバ側で実行されるようにしている。このソフトウェアは、サーバとして使用できる汎用コンピュータならば、どのコンピュータ上でも実行することができる。本システムは、入力画面をHTMLによりクライアント側に提示し、その後、この入力画面はサーバに返され、サーバ上で、ユーザ入力データがJavaサーブレットに入力される。次に、サーブレットはコアアルゴリズム(core algorithm)を呼び出す。結果は、サーブレットによって、HTMLウェブページ内に返され、コアアルゴリズムの計算が完了すると、HTMLウェブページがクライアントに送信される。プロトタイプサーバはJavaサーブレットをサポートしており、現在では、Apache Tomcatサーバがこのために使用されている。クライアントはどのウェブブラウザにすることもできる。AU計算はサーバ側で実行される。システムは、面倒な作業を必要としないで、PONシステムを厳密に模擬しているので、実際のPON機器を構成して、実行テストをしないで済むようになっている。
【0026】
このツールは、現在では、ユーザが3通りの方法でツールを実行することを可能にし、各実行ごとに3通りの方法で入力データを指定することを可能にしている。各PON加入者のための第1のオプション(オプション1)では、各サービスの数および可変ビットレート(VBR:Variable Bit Rate)サービスのビットレートが指定される。第2のオプション(オプション2)では、1つのPONにおける全ユーザのための各サービスの総数および可変ビットレートサービスの総ビットレートが指定される。第3のオプション(オプション3)では、各ユーザが各サービスに加入する統計的な平均確率(サービス売上げレート)が、可変ビットレートサービスの最大ビットレート、最小ビットレートおよび平均ビットレートとともに指定される。オプション1およびオプション2を使用すると、個々のサービス加入要求をテストして、それらが許容し得るパフォーマンスを提供しているか否かを確認した後に、サービスを実際に展開することができる。パフォーマンスが不十分であれば、割り当てるサービスの数を減らすと、パフォーマンスが向上するので、販売されるサービスの数を連続的に少なくするか、あるいは一部のサービスレベルの帯域幅を下げることにより、パフォーマンスが許容し得るまで、反復的なプロセスを実行することができる。オプション3を使用すると、様々なサービスのターゲット層(demographics)全体に対して、サービス使用量の予測とパフォーマンスの予測とが可能となるので、収入を最適化するサービスの評価などの、ビジネス意思決定を定式化することができる。
【0027】
図3は、PONに関する情報を収集するために、PONモデラのユーザに表示されるグラフィカルユーザインターフェース(GUI:Graphical User Interface)を示す図である。フィールド310には、PONにおける加入場所の数、すなわち、ONTの数をユーザが入力することが要求される。フィールド312〜324には、COにおけるOLTから、様々なタイプの一定ビットレート(CBR:Constant Bit Rate)サービスを受信する加入者の総数をユーザが入力することが要求される。フィールド312は標準精細TV(SDTV)に対するものである。フィールド314は高精細TV(HDTV)に対するものである。フィールド316は標準精細ビデオ会議サービスに対するものである。フィールド320はDS1サービスに対するものである。フィールド322はDS3サービスに対するものであり、フィールド324はPOTSサービスに対するものである。フィールド330および332は、アップストリーム方向(フィールド330)およびダウンストリーム方向(フィールド332)においてOLTから全加入者に提供される総和データ(VBR,UBR)ビットレートに関するデータをユーザが入力するための場所である。これはネットレート(net rate)であり、パケットのオーバヘッドを含んではいない。図3の下部のボタン350を使用すると、ユーザは入力フィールドを同時に消去することができる。このソフトウェアは、他のどのようなサービスでも定義して、入力できるとともに、様々な帯域幅および優先度レベルを割り当てることができるように、柔軟に設計されている。
【0028】
最初の2つのタイプの入力に関して、図3に示すように、ユーザは、「クイック」計算を実行するか、またはフルシミュレーションを実行するかを選択することできる。図3に示すGUIでボタン360を選択すると、クイック計算は、PONのオーバヘッドとともに各サービスのパケットおよびプロトコルのオーバヘッドを考慮に入れ、すべてのサービス使用量を総和して、要求されたCBRサービスを搬送できるか否か(合格/失敗)を迅速に判定する。このクイック計算は、データサービスを含む他のサービスのために使用できる正味の帯域幅の量が残っていれば、その量も出力する。
【0029】
ボタン340を使用してユーザによって選択されたフルシミュレーションは、複数のサービスタイプおよび加入者からの複数のトラフィックストリームを擬似ランダムに生成するリアルタイムシミュレーションを実行し、アップストリーム方向およびダウンストリーム方向の両方のPONにおけるトラフィックストリームを総計して、実際のPONのオペレーションを模擬する。PONにおける様々なトラフィックソース(traffic source)をシミュレートして、送出することができる。そのようなトラフィックソースには、一定ビットレート(CBR)サービスおよび可変ビットレート(VBR)サービスが含まれる。VBRデータサービスソースは、まったく同じようなパケットベースのソースジェネレータ(self-similar packet-based source generator)を使用して生成される。各ユーザは、各サービスまたは優先度レベルごとにアップストリームおよびダウンストリームの両方のキューを有しており、これらのキューは、PONオペレーションがシミュレートされるとき、先入れ先出し(FIFO:First-In First-Out)方式で連続的に投入され、空にされる。高優先度サービスのパケットは、低優先度サービスのパケットよりも先にPONにおいて送信される。パケットがPONに到達する時間と、パケットがPONの他端から発せられる時間とが追跡され、これらの時間の統計が、各サービスレベルおよびユーザのキューごとに判定される。本システムは、各サービスタイプごとに、このPONスケジューリングおよびパケット化プロセスにおいて生じた遅延に関する統計を判定し、表示する。汎用的かつ合理的なハイパフォーマンスの動的帯域幅割当(DBA)アルゴリズムは、現在では、リアルタイムスケジューリングのために使用され、DBAにより、あるアップストリーム帯域幅は、現行のキューサイズに基づいて割り当てられるとともに、ある帯域幅は、予め設定されたレベルに従って全ユーザの間で割り当てられる。物理的遅延およびプロトコル遅延はすべてシミュレーションに含まれている。これにより、各サービスタイプごとに、パケット遅延統計が得られる。この統計を使用して、これらの遅延が特定のサービスに許容し得るか否かを判定する。このことから、帯域幅が十分であるか否かが基本的に分かるようにしている。
【0030】
このツールは未加工の結果(raw result)を取得し、その結果を、ユーザが入力したサービス品質(QoS)の閾値と比較して、要求されたサービスすべてをサポートする能力の有無の判定を、単純にyesかnoで出力する。ツールは、対話方式で使用することもできるし、QoSの閾値が満たされるまで低優先度または不要なサービス要求を個別的にブロックまたは削除するように予め設定することもできる。将来のサービス要求をサポートする能力を正確にモデル化することができるので、これらのサービス要求が将来確実に展開できるような余地を残しておくことできる。
【0031】
第3のオプションでは、プランニングのために使用することができる、統計的な入力値を使用する。ここで、サービス加入の実際の数およびデータレートは、入力された統計値に従って複数回ランダムに生成され、その後、リアルタイムシミュレーションが、これらの回数の各々について、再実行される。総パフォーマンス結果が、これらの実行すべてにわたって総和され、その総和が出力されて、ユーザに提示される。
【0032】
ATMベースのブロードバンドPON(BPON)、イーサネットPON(EPON)またはギガPON(GPON)のいずれも、現在では、分析が可能になっている。回線ビットレート(line bit rate)、ガードスペース、パケットサイズ、CBRサービスのビットレート、シミュレートされる時間の長さなどの内部変数、およびその他の多くの内部変数は、特定の環境またはPONの実装に合わせて容易に変更することができる。2つのサービス優先度(CBRの方がVBRよりも優先度が高い)が、現在では、GUIに実装されているが、コアアルゴリズムソフトウェアは柔軟に書かれているので、PONにおいて、サービス優先度がいくつあっても対応することが可能である。
【0033】
可変ビットレート(VBR)データトラフィックまたは不特定ビットレート(URB:Unspecified Bit Rate)データトラフィックと呼ばれるデータトラフィックは、まったく同じようなトラフィックジェネレータを使用して擬似ランダムに生成され、平均ビットレートまたはピークビットレートなどの統計は、ユーザによって変更可能である。一定ビットレート(CBR)トラフィックは、TDMサービス、ビデオおよびPOTSに要求されるタイミング要件で生成される。各サービスタイプに関連する様々なプロトコルオーバヘッドが考慮されて、シミュレートされる。データトラフィックは、TCP/IPおよびイーサネットでカプセル化され、ビデオは、MPEG2トランスポートストリームにカプセル化され、RTPでは、ビデオはMPEG4によりカプセル化される。EPONでは、POTSは、UDP/IP上にカプセル化され、BPONでは、POTSは、ATMセルに直接カプセル化される。TDM(DS1およびDS3)サービスも、ビデオ会議と同様にシミュレートされる。BPONでは、ATMセルとATM AALとのオーバヘッドがシミュレートされる。GPONは、GEM(GPON Encapsulation Method)を使用してシミュレートされる。
【0034】
図4は、本発明によるPONモデラの出力画面のグラフィカルユーザインターフェースを示す図である。出力フィールド430および440からは、要求されたすべてのCBRサービスおよびVBRサービスをそれぞれサポートする能力をPONが有しているか否かの表示が提供される。出力フィールド402〜416からは、モデル化されたPONにおける様々なサービスタイプについて予想可能な遅延に関する、ミリ秒を単位とする情報が提供される。出力フィールド402からは、平均CBRアップストリーム遅延が提供される。出力フィールド404からは、アップストリーム方向の最大CBR遅延が提供される。出力フィールド406からは、平均CBRダウンストリーム遅延が提供されるのに対し、出力フィールド408からは、最大CBRダウンストリーム遅延が提供される。出力フィールド410からは、平均VBRアップストリーム遅延が提供される。出力フィールド412からは、最大VBRアップストリーム遅延が提供される。最後に、出力フィールド414および416からは、それぞれダウンストリーム方向の平均VBR遅延および最大VBR遅延が提供される。
【0035】
以上の説明は、本発明を例示的に説明することだけを目的に提示したものである。以上の説明は、網羅的であることを意図するものでも、本発明を、開示したどの具体的形態にも限定することを意図するものでもない。上述した教示内容に照らせば、多くの変更および変形が可能である。上述したアプリケーションは、本発明の原理とその実際の用途とを分かりやすく解説するために、選択および説明したが、当業者であれば、様々なアプリケーションに対して、本発明を最良の形で利用できるであろう。また、当業者であれば、意図する特定の用途に適するように様々な変更を加えることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】セントラルオフィスから加入者敷地内へのFTTPネットワークのアーキテクチャを示す図である。
【図2】本発明によるPONモデラの機能特性を示す図である。
【図3】本発明によるPONモデラの一実施形態におけるデータ入力用のグラフィカルユーザインターフェースを示す図である。
【図4】本発明によるPONモデラの一実施形態におけるデータ出力用のグラフィカルユーザインターフェースを示す図である。
【図5】本発明によるPONをモデル化するためのコンピュータ実装方法を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロードバンドサービスを提供する目的で、複数の加入者をセントラルオフィスに接続するための受動光ネットワーク(PON)のキャパシティ管理をモデル化して、予測する方法であって、
前記PONの複数の特性と、前記PONを使用して提供されるサービスとに関するデータを入力するステップと、
前記入力された特性に基づいて前記PONのパフォーマンスをシミュレートするステップと、
前記提供されるサービスを配信する能力を前記PONが有しているか否かを判定するステップと、
前記判定をユーザに出力するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記PONの前記複数の特性は、PONタイプ、加入者の数、サービスの帯域幅、サービスの優先度、動的帯域幅割当パラメータ、合格/失敗許容度、フレーミングパラメータ、パケット化パラメータ、およびスケジューリングパラメータを含むセットから選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記加入者の数、前記サービスの帯域幅、および前記サービスの優先度に関するデータは、加入使用量および売上げレートの確率に基づいて統計的に生成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記加入者の数、前記サービスの帯域幅、および前記サービスの優先度に関するデータは、1つのPONにおける選択されたサービスセットに基づいていることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、前記加入者の数、前記サービスの帯域幅、および前記サービスの優先度に関するデータは、加入者の選択に基づいていることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記PONの前記複数の特性に関する前記入力されたデータに基づいて、各サービスタイプごとの平均遅延を判定するステップと、
各サービスタイプごとの前記判定された平均遅延をユーザに提示するステップと
をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記PONの前記複数の特性に関する前記入力されたデータに基づいて、各サービスタイプごとの最大遅延を判定するステップと、
前記PONの前記複数の特性に関する前記入力されたデータに基づいて、各サービスタイプごとの前記判定した最大遅延を提示するステップと
をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記提供されるサービスをサポートする能力を前記PONが有していないと判定された場合、前記PONの前記特性に関するデータに対する変更を繰り返し入力するステップと、
前記サービスをサポートする能力を前記PONが有していると判定されるまで、前記判定するステップを繰り返すステップと
をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法において、
前記平均遅延が許容し得ないと判定された場合、前記PONの前記特性に関するデータに対する変更を繰り返し入力するステップと、
前記平均遅延が許容し得ると判定されるまで、前記平均遅延を前記判定するステップを繰り返すステップと
をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、
前記最大遅延が許容し得ないと判定された場合、前記PONの前記特性に関するデータに対する変更を繰り返し入力するステップと、
前記最大遅延が許容し得ると判定されるまで、前記最大遅延を前記判定するステップを繰り返すステップと
をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
ブロードバンドサービスを提供する目的で、加入者敷地内端末を使用する複数の加入者をセントラルオフィスに接続するための受動光ネットワーク(PON)のキャパシティ管理をモデル化して、予測するシステムであって、
前記PONの複数の特性に関するデータを入力するためのユーザインターフェースと、
前記入力された特性に基づいて前記PONのパフォーマンスをシミュレートするためのPONモデラと
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、前記PONの前記複数の特性は、PONタイプ、加入者の数、サービスの帯域幅、サービスの優先度、動的帯域幅割当パラメータ、合格/失敗許容度、フレーミングパラメータ、パケット化パラメータ、およびスケジューリングパラメータを含むセットから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記加入者の数、前記サービスの帯域幅、および前記サービスの優先度に関するデータは、加入使用量および売上げレートの確率に基づいて統計的に生成されることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記加入者の数、前記サービスの帯域幅、および前記サービスの優先度に関するデータは、前記PONにおいて利用可能なサービスに基づいていることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記サービスの数、前記サービスの帯域幅、および前記サービスの優先度に関するデータは、加入者の選択に基づいていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項11に記載のシステムにおいて、前記PONモデラは、前記PONの前記複数の特性に関する前記入力されたデータに基づいて、各サービスタイプごとの平均遅延を判定することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記PONの前記複数の特性に関する前記入力されたデータに基づいて、各サービスタイプごとの最大遅延を判定するステップと、
前記PONの前記複数の特性に関する前記入力されたデータに基づいて、各サービスタイプごとの前記判定した最大遅延を提示するステップと
をさらに備えたことを特徴とするシステム。
【請求項18】
ブロードバンドサービスを提供する目的で、複数の加入者をセントラルオフィスに接続するための受動光ネットワーク(PON)のキャパシティ管理をモデル化して、予測する方法であって、
前記PONの複数の特性と、前記PONを使用して提供されるサービスとに関するデータを入力するステップと、
前記入力された特性に基づいて前記PONのリアルタイムパフォーマンスをシミュレートするステップと、
前記提供されるサービスを配信する能力を前記PONが有しているか否かを判定するステップと、
前記判定をユーザに出力するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記PONの前記複数の特性は、PONタイプ、加入者の数、サービスの帯域幅、サービスの優先度、動的帯域幅割当パラメータ、合格/失敗許容度、フレーミングパラメータ、パケット化パラメータ、およびスケジューリングパラメータを含むセットから選択されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記提供されるサービスをサポートする能力を前記PONが有していないと判定された場合、前記PONの前記特性に関するデータに対する変更を繰り返し入力するステップと、
前記サービスをサポートする能力を前記PONが有していると判定されるまで、前記判定するステップを繰り返すステップと
をさらに備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−529418(P2008−529418A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553236(P2007−553236)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/002811
【国際公開番号】WO2006/081365
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(399047921)テルコーディア テクノロジーズ インコーポレイテッド (61)
【Fターム(参考)】