説明

受動光網システムおよびその運用方法

【課題】
伝送速度の異なるPONを混在させて運用するシステムにおいて、伝送する信号の量にに基づいて消費電力を減らすことが可能な受動光網システムを提供する。
【解決手段】
複数の子局の要求に基づき親局が複数の子局の夫々から親局に送信する信号の量とタイミングとを決めて複数の子局からの信号を光ファイバ網を介して受信する受動光網システムの親局に、複数の子局の夫々が送信を要求する信号の量に基づき、子局の夫々に該親局への信号送信を許可する信号の量と送信タイミングと伝送速度を一定周期毎に決めて子局の夫々に通知する制御部を備え、さらに複数の子局の夫々は、第1の伝送速度、もしくは、第1の伝送速度より高速な第2の伝送速度で親局へ信号を送信する制御部を備え、親局からの通知に基づき第1の伝送速度もしくは第2の伝送速度のいずれかで信号を送信する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動光網システム、光多重終端装置及び光網終端装置に係り、特に、複数の加入者接続装置が光伝送回線を共有する受動光網システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信網の高速・広帯域化が加入者を接続するアクセス網でも進められ、国際電気通信連合(以下ITU−Tと称す)の勧告G984.3等で規定された受動網光システム(Passive Optical Network system:以下PONと称する)の導入が図られている。PONは、上位の通信網と接続される光多重終端装置(Optical Line Terminator:以下OLTと称する)と、複数の加入者の端末(PCや電話)を収容する光網終端装置(Optical Network Unit:以下ONUと称する)とを、基幹光ファイバと光スプリッタと複数の支線光ファイバとを含む光受動網で接続したシステムである。具体的には、各ONUに接続された端末(PC他)からの信号を光信号で支線光ファイバから光スプリッタを介して基幹光ファイバで光学(時分割)多重してOLTに送り、OLTが各ONUからの信号を通信処理して上位の通信網に送信する、あるいは、OLTに接続される他のONUに送信するという形態で通信を行うものである。
【0003】
PONの導入は64kbit/秒のような低速信号を扱うシステムから始まり、固定長のATMセルを最大約600Mbit/秒で送受信するBPON(Broadband PON)あるいはイーサネット(登録商標。以下では登録商標の表記を省略)の可変長パケットを最大約1Gbit/秒で送受信するイーサネットPON(EPON)や、より高速な2.4Gbit/秒程度の信号を扱うGPON(Gigabit capable PON)の導入が進められている。更に、今後は10Gbit/秒から40Gbit/秒の信号を扱うことが可能な高速PONの実現が求められている。そして、これらの高速PONを実現する手段としては、現状のPONと同様な複数の信号を時分割多重するTDM(Time Division Multiplexing)を利用することが検討されている。尚、現状のTDMを用いたPONは、上り(ONUからOLT)の信号と下り(OLTからONU)の信号とで異なる波長を用い、OLTと各ONU間の通信は、各ONUに対して通信時間を割当てる構成である。具体的には、多様な信号(音声、画像、データ等)を扱い易いバースト状の可変長信号(バースト信号)を割当てる構成である。
【0004】
上記各PONでは、様々な場所に点在する加入者宅にONUを設置するため、OLTから各ONUまでの距離が異なる。即ち、OLTから各ONU迄の基幹光ファイバと支線光ファイバからなる光ファイバの長さ(伝送距離)がばらつくため、各ONUとOLT間の伝送遅延(遅延量)がばらつき、各ONUが異なるタイミングで信号を送信しても基幹光ファイバ上で各ONUからの光信号同士が衝突・干渉する可能性がある。このため、各PONでは、例えばITU−Tの勧告G984.3で規定したレンジング技術を用いて、OLTとONUとの間の距離測定を実施後に各ONUからの信号出力が衝突しないように各ONUの出力信号の遅延を調整する。また、OLTは、動的帯域割当て(Dynamic Bandwidth Assignment:以下DBAと称する)技術を用いて各ONUからの送信要求に基づき該ONUに送信を許可する信号の帯域を決めると、レンジングで測定した遅延量も考慮した上で、各ONUからの光信号が基幹光ファイバ上で衝突・干渉しないように各ONUへ送信タイミングを指定する。すなわち、PONは、OLTと各ONU間で送受信される信号のタイミングがシステム内で管理された状態で通信の運用がなされるように構成されている。
【0005】
上記GPONでは、OLTで基幹光ファイバ上に多重された各ONUからの信号を識別して処理できるように、各ONUからの送信信号は、最大12バイトからなる干渉防止用のガードタイムと、OLT内受信器の信号識別閾値の決定およびクロック抽出に利用するプリアンブルならびに受信信号の区切りを識別するデリミタと呼ばれるバーストオーバヘッドバイトと、PONの制御信号(オーバヘッドあるいはヘッダと称することもある)とがデータ(ペイロードと称することもある)の先頭に付加される構成である。尚、各データは、可変長のバーストデータであり、各データの先頭に可変長データを処理するためのGEM(G−PON Encapsulation Method)ヘッダと呼ばれるヘッダが付加される。
【0006】
一方、各ONUがOLTからの信号を識別して処理できるように、OLTから各ONUに向けて送信される信号の先頭に、先頭を識別するためのフレーム同期パタンと、監視・保守・制御情報を送信するPLOAM領域と、各ONUの信号送信タイミングを指示するグラント指示領域と呼ばれるオーバヘッド(ヘッダと称されることもある)とが各ONU宛に時分割多重化されたデータに付加される構成である。なお、多重化される各ONU宛のデータには、ONUからの信号と同様に、可変長データを処理するためのGEMヘッダが付加されている。OLTは、グラント指示領域を用いて各ONUの上り送信許可タイミング(送信開始(Start)と終了(Stop))を各ONUにバイト単位で指定する。この送信許可タイミングをグラントと称している。そして、各ONUが該許可タイミングでOLT宛のデータを送信すると、これらが光ファイバー上で光学(時分割)多重されOLTで受信される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ITU−T勧告G.984.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PONは、BPONからGPONへの移行のように、より高速信号を処理するものへと開発・導入が進んできている。PONの信号伝送機能を実現する光モジュールやLSIは、伝送速度が速いほど大量の電力を消費することが知られている。例えば、光モジュールはより高い伝送速度を達成するために、伝送速度が高いほど大量の電流を流すことで必要な帯域を確保している。また、CMOS技術を用いたディジタル信号処理LSIは、動作クロックの速度の2乗にほぼ比例した電力を消費する。すなわち、今後も伝送速度が速くなるほど大量の消費電力が消費される傾向にある。
【0009】
一方、PONの加入者は、より高速なPONを求める傾向があるが常時速い伝送速度を欲しているわけではない。通信を行っていない時間帯には当然速い伝送速度を要求しないことはもちろん、通信中でも特にインターネットアクセスにおけるデータ伝送においては、大量の画像データや大容量ファイルをダウンロードやアップロードする期間に速い伝送速度を要求するが、内容の閲覧中や作業中は速い伝送速度を必要としない。また、データ伝送に用いられるTCPプロトコルでは、一定数のパケットを受信すると確認信号パケットを返送することが必要で、データの送信側は確認信号パケットを受信する迄後続のデータを送信しない。すなわち、データ伝送中であってもデータトラヒックは極めてバースト性の高い伝送形態となることが多くなるのが運用の実態である。しかし、現実のPONを構成する光モジュールやLSIは実質的にデータを伝送しない時間帯も動作して電力を消費しており、著しい電力の無駄を生じる原因となっている。このため、エンドユーザトラヒックが小さい時は低速の伝送速度で伝送を行い、エンドユーザトラヒックが大きい時は高速の伝送速度で伝送を行うことの可能なPONシステムが求められることになる。
【0010】
本発明は以上の点に鑑み、伝送速度の異なる複数の仕様(規格)のPONを混在させて運用出来る構成のPONにおいて、エンドユーザトラヒックに基づいて消費電力の無駄を極力減らすことの可能な受動光網システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の受動光網システムは、親局と複数の子局とが光スプリッタおよび複数の光ファイバから成る光ファイバ網で接続され、複数の子局の要求に基づき親局が複数の子局の夫々から親局に送信する信号の量とタイミングとを決めて複数の子局からの信号を光ファイバ網を介して受信する受動光網システムの親局に、複数の子局の夫々が送信を要求する信号の量に基づき、子局の夫々に該親局への信号送信を許可する信号の量と送信タイミングと伝送速度を一定周期毎に決めて子局の夫々に通知する制御部を備え、さらに複数の子局の夫々は、第1の伝送速度、もしくは、第1の伝送速度より高速な第2の伝送速度で親局へ信号を送信する制御部を備え、親局からの通知に基づき第1の伝送速度もしくは第2の伝送速度のいずれかで信号を送信する構成とした。
【0012】
そして、親局の制御部は、複数の子局の夫々が要求した信号の量に基づき任意の子局への送信許可する信号の量を決定すると、この送信許可した信号の量が第1の伝送速度で伝送可能な最大伝送量を下回る場合、子局の信号の伝送速度を第1の伝送速度とし、送信許可した信号の量が第1の伝送速度で伝送可能な最大伝送量を上回る場合は、子局の信号の伝送速度を第2の伝送速度と決定するように構成した。
【0013】
尚、伝送速度の決定を親局で行わず、複数の子局の夫々が、送信を要求する信号の量と送信許可された信号の量を比較して実行する構成も取れるようにした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、伝送速度の異なる複数の仕様(規格)のPONを混在させて運用出来る構成のPONにおいて、エンドユーザトラヒックに基づいて消費電力の無駄を極力減らすことの可能な受動光網システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】PONを用いた光アクセス網の構成例を示す網構成図である。
【図2】OLTからONUへの下り信号の構成例を示すフレーム構成図である。
【図3】ONUからOLTへの上り信号の構成例を示す信号構成図である。
【図4】PONの動作例を示すシーケンス図である。
【図5】ONUの構成例を示すブロック構成図である。
【図6】OLTの構成例を示すブロック構成図である。
【図7】OLTの制御部の構成と動作例を説明する説明図である。
【図8】OLTの制御部の動作例(その1)を示す動作フロー図である。
【図9】OLTの制御部の動作例(その2)を示す動作フロー図である。
【図10】割当バイト長テーブルの構成例を示すメモリ構成図である。
【図11】送信タイミングテーブルの構成例を示すメモリ構成図である。
【図12】OLTでの上り信号受信動作の例を示す動作説明図である。
【図13】OLTの制御部の別の動作例を示す動作フロー図である。
【図14】割当バイト長テーブルの別の構成例を示すメモリ構成図である。
【図15】送信タイミングテーブルの別の構成例を示すメモリ構成図である。
【図16】OLTでの上り信号受信動作の別の例を示す動作説明図である。
【図17】ONUの他の構成例を示すブロック構成図である。
【図18】OLTの他の構成例を示すブロック構成図である。
【図19】ONUの伝送速度判定部の動作例を示す動作フロー図である。
【図20】ONUで上り信号送信を制御する情報を格納するメモリの構成例を示すメモリ構成図である。
【図21】OLTでの上り信号受信動作の他の例を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本実施の形態によるPONの構成と動作を、ITU−T勧告G984.3で規定したGPONと、今後導入が予想されている次世代GPONで伝送速度を上昇させた10GPONとが混在するPONの構成と動作を例に挙げて、詳細に説明する。
以下の説明は、GPONと同様に、可変長のデータをTDMで処理する構成のPONを想定したもので、OLTから各ONUへの下りデータの伝送速度は、10Gbit/秒(9.95328Gbit/秒だが、以下10Gbit/秒と称する)1種類であり、またONUからOLTへの上りデータの伝送速度は、GPONが1Gbit/秒(1.24416Gbit/秒だが、以下同様に1Gbit/秒と称する)で10GPONが10Gbit/秒(9.95328Gbit/秒だが、以下同様に10Gbit/秒と称する)の混在構成である例をとり説明する。なお、これらの伝送速度等の数値は一例であり、他の伝送速度であってもよく、本実施の形態がこの数値に限定されるものではない。また、上り伝送速度は3つ以上あってもよい。
【0017】
図1は、本発明のPONを用いた光アクセス網の構成例を示す網構成図である。
アクセス網1は、例えば、PON10を介して上位の通信網である公衆通信網(PSTN)/インターネット20(以下、上位網と称することがある)と、加入者の端末(Tel:400、PC:410等)とを接続して通信を行う網である。PON10は、上位網20と接続されるOLT(以下、親局と称することがある)200と、加入者の端末(電話(Tel)400、PC410等)を収容する複数のONU(以下、子局と称することがある)300を備える。基幹光ファイバ110と光スプリッタ100と複数の支線光ファイバ120を有する光受動網でOLT200と各ONU300を接続して、上位網20と加入者端末400、410との通信、または、加入者端末400、410同士の通信を行う。ONU300は、例えば10GPONまたはGPONの双方で使用できるONU(例えば、上りについては10Gbit/秒、1Gbit/秒の双方を送信可能なONU。以下1G/10GONUと称することもある)である。同図では、5台のONU300がOLT200に接続されている。尚、OLT200に接続可能なONUの数は、ITU−T勧告G984.3に従えば最大で254台である。
【0018】
OLT200から各ONU300への下り信号130は、各ONU300宛の信号が時分割多重されて同報される。そして、各ONU300が、到達したフレームが自身の伝送速度であるか、もしくは、自宛の信号であるか否かを判定して信号を受信する。ONU300は、信号の宛先に基づき受信信号を電話400やPC410に送る。また、各ONU300からOLT200への上り信号140は、ONU300−1から伝送される上り信号150−1と、ONU310−2から伝送される上り信号150−2と、ONU300−3から伝送される上り信号150−3と、ONU300−4から伝送される上り信号150−4と、ONU300−nから伝送される信号150−nが、光スプリッタ100を介して光学的に時分割多重された光多重化信号140になりOLT200へ伝送される。各ONU300とOLT200間のファイバ長が異なるため、信号140は振幅が異なる信号が多重化された形となる。なお、下り信号130は、例えば波長帯1.5μmの光信号、上り信号140、150は、例えば波長帯1.3μmの光信号が用いられ、両方の光信号が同じ光ファイバ110、120を波長多重(WDM)されて送受信される。
【0019】
図2は、下り信号の構成例を示すフレーム構成図である。
下り信号(以下、下りフレーム、もしくは、単にフレームと称することがある)は、ITU−T勧告G984.3に規定された125μ秒周期の構造で、フレーム同期パタン20、PLOAM(Physical Layer Operation,Admiistration and Maintenence)21、グラント指示22、フレームペイロード23から構成される。フレーム同期パタン20は、各ONU300が125μ秒周期のフレームの先頭を識別するための固定パタンである。PLOAM21は、OLT200が各ONU300の物理レイヤの管理に使用する情報を格納する。フレームペイロード23には、OLT200から各ONU300へ向かうユーザ信号が格納される。グラント指示22は、各ONU300の上り信号送信タイミング(グラント)を指示するもので、より詳細には、各ONU300の内部でのユーザ信号制御単位であるTCONT毎にグラントを指示するものである。
【0020】
同図は、図1で示した構成に対応した一構成例を示したもので、ONU300−1を制御するためのTCONT#1用信号24、ONU−2を制御するためのTCONT#2用信号25を示している。尚、各TCONT用信号は、TCONTを識別するためのTCONT ID27、信号の送信開始タイミングを示すStrat28と送信終了タイミングを示すEnd29と、伝送速度指定領域30とで構成した。伝送速度指定領域30は、本発明のPONで導入した信号で、上り信号に1Gbit/秒の信号または10Gbit/秒の信号のどちらを用いるかを指示するものである。尚、Start28とEnd29は上記2つの速度の信号について送信開始タイミングと送信終了タイミングを示すことになるが、本実施例では、1Gbit/秒の信号速度におけるバイト数で時間単位を指定し、10Gbit/秒信号の時間単位は8バイト単位で示す構成とした。これは、10Gbit/秒の信号の速度が1Gbit/秒の信号の8倍であり、このように規定すれば1つの表記で1Gbit/秒の信号と10Gbit/秒の信号の両方が運用できるようになるためである。OLT200は、各ONU300に周期的にグラント指示22を含む上りデータの送信を許可するメッセージを送信し、各TCONTにどれだけの上り通信帯域を使用すれば良いかを指示する。このStart28とEnd29は、OLT200がグラント指示を送信する各周期の中で、どのタイミングでデータの送信を開始して終了すれば良いかを示す情報である。この指定された区間内で、ONU300は伝送速度指定領域30で指定された伝送速度で上り信号を送信する。尚、End29の代わりに、送信すべきデータのデータ長を指定し、Start28のタイミングから指定されたデータ長だけデータを送信するように指示しても良い。
【0021】
図3は、上り信号の構成例を示す信号構成図である。
上り信号(以下、GEMパケット、もしくは、単にパケットと称することがある)は、プリアンブル30とデリミタ31からなる固定長のバーストオーバヘッド36、ならびに、PLOAM31とキュー長33からなる制御信号および5バイトのGEMヘッダ34と可変長のGEMペイロード35からなるバーストデータ37とで構成される可変長のパケットである。上述したStart28は、PLOAM32の開始位置、すなわちバーストデータ37の開始位置を指示しており、End値29はGEMペイロード35(バーストデータ27)の終了位置を示している。ガードタイム38は、GEMペイロード34の終了位置から次のパケットのプリアンブル30の開始位置までの無信号区間で、各ONU300から送信されるパケットの基幹光ファイバ17−1上での衝突や干渉を防ぐために、ITU−T勧告G984.3で規定された長さの無信号区間がとられる。したがって、各ONU300(あるいはTCONT)から送信されるバーストデータ37の間には、ガードタイム38やプリアンブル領域30とデリミタ領域31が介在するため、前のバーストデータ37のEnd29と次のバーストデータ37のStrat28との間には数バイトの間隔が生じる。
【0022】
図4は、PONの動作例を示すシーケンス図で、DBA動作および周期と、該DBAの結果に基づくグラント動作および周期の関係を示すものである 。
【0023】
OLT200は、125μ秒のグラント周期44〜48毎にグラント指示22を含む送信許可メッセージ40を各ONU300−1〜10−3に向けて送信する。この送信許可メッセージ40には、各ONUのTCONTが備えた送信キューに溜まっている送信待ちデータ量の報告を要求する情報(Request report)も含まれている。各ONU300は、グラント指示22のStart28とEnd29によって指定されたタイムスロットで送信キューに溜まったデータを送信するとともに、上りメッセージ41(図3で示したパケット)に含まれるキュー長33を用いて送信待ちのデータ量をOLT200に報告する(Report)。
【0024】
OLT200は、予め定めたDBA周期49で各ONU300から受けた報告(送信待ちデータ量)に基づき、各ONU(TCONT)にどれだけのデータ量の送信を許可するかを決定するDBA42,43を行う。具体的には、送信待ちデータ量と各ユーザとの契約に基づき、各TCONTに次回の送信で送信許可するデータ量を決定する。このDBAは、125μ秒のグラント周期45〜48毎に実施する必要はないので、複数のグラント周期を纏めてDBAを行う構成とした。本実施例では、4グラント周期(0.5m秒)に1回DBAを行う構成とした。1回のDBA42で全TCONTに送信許可するデータ量が決まるので、OLT200は、複数のグラント周期45〜48のいずれかのグラント周期において、全TCONTに決定したデータ量を送信させるように、各グラント周期でデータを送信させるTCONTとそのデータ送信Start28とEnd29を決める。このStart28とEnd29とが、グラント指示22を含む送信許可メッセージ40により各ONU300−1〜10−3に向けて送信され(Grant)、各ONU300−1〜10−3は、このグラントに従ったタイミングでデータをOLT200に送信する。尚、以降もDBA周期が0.5m秒でグラント周期が125μ秒のPONで説明を行うが、DBA周期とグラント周期をこれ以外の値に設定しても構わない。
【0025】
図5は、本発明のPONで使用するONUの構成例を示すブロック構成図である。
ONU300は、WDMフィルタ501、受信部540、送信部541、ユーザインタフェース(IF)508から構成される。受信部540は、O/E変換部502、AGC503、クロック抽出部504、PONフレーム分離部505、フレーム振り分け部506、パケットバッファ507、グラント終端部520、PLOAM終端部521、等価遅延値記憶部522から構成される。また、送信部541は、パケットバッファ509、送信制御部510、PONフレーム生成部511、ドライバー512、E/O部513、キュー長監視部530より構成される。受信部540の動作クロックは、下り10Gクロック生成部542により供給される。送信部541の動作クロックは、上り10Gクロック生成部543および上り1Gクロック生成部544のいずれかの出力がセレクタ545によって選択されて供給される。このセレクタ制御は、グラント終端部520で読み取られたOLT200からの伝送速度指示(図2の30)によって決定される。
【0026】
支線光ファイバ120から受信した光信号は、WDMフィルタ501で波長分離された後、O/E変換部502で電気信号に変換される。AGC503で電気信号の振幅値が一定となるように制御した後、クロック抽出部504でリタイミングを行い、PONフレーム分離部505で、図2で説明した信号の分離を行う。具体的には、PLOAM領域1902の信号がPLOAM終端部521に送られ、グラント指示領域1903の信号がグラント終端部520に送られ、フレームペイロード領域1904の信号がフレーム振り分け部506に送られる。フレーム振り分け部505から出力されたユーザ信号は、パケットバッファ507−1およびパケットバッファ507−2に一時的に格納された後、それぞれユーザIF508−1およびユーザIF508−2を経て出力される。
【0027】
また、ユーザIF508−1およびユーザIF508−2から入力された信号は、それぞれパケットバッファ509−1およびパケットバッファ509−2に一時的に格納された後、送信制御部510の制御のもとに読み出され、PONフレーム生成部511でパケット(図3のフォーマット参照)に組立てられる。キュー長監視部530は、パケットバッファ509の使用量を監視する。バッファ使用量情報は、パケットのキュー長33に格納されてOLTに伝えられ、OLT200はこの情報に基づいてDBAを行い発行するグラント量を制御する。PONフレーム生成部511で組み立てられた信号は、ドライバー512で電流に変換後、E/O部513で光信号に変換され、WDMフィルタ501を経て支線光ファイバ120に向けて送信される。送信制御部510は、グラント終端部520から抽出されたグラント値に基づいてOLTに向けて信号を送信する制御を行う。
【0028】
なお、OLT200と各ONU300との距離がそれぞれ異なるため、ITU−T勧告G984.3で規定したレンジングにより距離の違いを補正している。このレンジングにより、等化遅延値と呼ばれる送信タイミングの補正値が図2に示すPLOAM21に格納され、各ONU300に伝えられている。ONU300は、PLOAM終端部321を介して受信した等化遅延値を等化遅延値記憶部522に蓄積し、送信制御部510が等化遅延値に基づき信号の送信タイミングを調整することで距離の補正を行い、各ONU300−1〜ONU300−nからの信号が基幹光ファイバ110上で衝突しないようする。
【0029】
尚、上述したONU300の各機能ブロックは、CPUやメモリに蓄積したファームウェアで実現したり、電気/光変換回路・メモリ・増幅器といった電気部品等で実現するものである。また、これらの機能を各処理に特化した専用のハードウェア(LSI等)により実現しても良い。さらに、ONU300の構成を、上記説明に限ることなく、適宜必要に応じたて様々な機能の実装が行われても良い。
【0030】
図6は、本発明のPONで用いるOLTの構成例を示すブロック構成図である。
OLT200は、網IF部607、制御部700、送信部710、受信部711、光信号IF部606から構成される。送信部710は、下りデータバッファ701、下り信号処理部702、E/O変換部703から構成される。また、受信部711は、O/E変換部704、上り信号処理部705、上りデータバッファ706から構成される。送信部710の動作クロックは、下り10Gクロック生成部712により供給される。受信部711の動作クロックは、上り10Gクロック生成部713および上り1Gクロック生成部714のいずれかの出力がセレクタ715によって選択されて供給される。このセレクタ制御は、データ送信許可部709によって行われる。具体的な伝送速度の決定方法は、後で図面を用いて詳細に説明する。
【0031】
下りデータバッファ701は、上位網20から網IF部607を介して受信したデータを一時的に蓄える。下り信号処理部702は、上位網20からの光信号をONU300に中継するために必要な処理を行う。E/O変換部703は、電気信号を光信号に変換して、光信号IF部606を介してONUに光信号(下り信号)を送信する。O/E変換部704は、ONU300から光信号IF部606を介して受信した光信号を電気信号に変換する。上り信号処理部705は、ONU300からの信号を上位網20に中継するために必要な処理を行う。上りデータバッファ706は、上位網20へ網IF部607を介して送信するデータを一時的に蓄える。制御部700は、上述した各機能ブロックと接続され、複数のONU300と通信(監視・制御等)を行うための必要な各種処理を実行し、また上位網20とONU300との間の信号を中継する機能を有する。
【0032】
DBA処理部707は、あらかじめ定められたDBA周期毎(本実施例では0.5m秒周期)に、該周期内でOLT200が収容したONU300(TCONT)の夫々にどれだけの通信帯域を割当てるかを決定する動的帯域割当処理を行うもので、1つのDBA周期中に送信可能な総バイト数内で、どれだけのバイト数を各ONU300(TCONT)に割り当てるかを決める。レンジング処理部708は、OLT200がONU300とのデータ送受信に先立って、各ONUに距離測定に関するレンジング信号を送信し、当該信号に対する返答を受信するまでの時間を測定することでOLT200と各ONU300との間の距離を測定し、各ONU300からOLT200への信号が衝突・干渉しないよう送信する信号の遅延時間を調整する。具体的には、レンジング処理部708は、ITU−T勧告G984.3で規定されたレンジング手順に基づいて、上り信号処理部705を経由して受信したレンジング信号への応答信号を受信し、図5で説明した等化遅延値を生成し、下り信号処理部702を経由して各ONU300に対して送信する。OLT200が送信遅延時間を各ONU300に通知すると、各ONU300は、OLT200からDBAで指定されたデータの送信を許可されたタイミング(グラント)に通知された送信遅延時間を加えてデータを送信する。データ送信許可部709は、DBA処理部707が決定した各ONU300へ許可する送信データのバイト長に基づき、各ONU300があるグラント周期においてデータ送信を開始すべきタイミングStart(図2:28)と送信を終了すべきタイミングEnd(図2:29)とをそれぞれバイト単位で決定する。また、ONU300に送信を許可する信号の速度(本実施例では、1Gbit/秒か10Gbit/秒)も決定する。すなわち、グラントを指示する。記憶部710は、制御部700の処理に必要な情報を記憶するメモリである。尚、制御部700は、PONに備えた制御ボード(例えば、PCで構成した保守端末)と通信を行い、予め制御に必要な制御パラメータ(例えば、ONUの加入条件、契約トラヒック等)を制御部に設定しておいたり、保守者の要求に基づいて監視情報(例えば、障害発生状況や各ONUへの送信許可データ量等)を受信したりする構成とした。
【0033】
尚、上述したOLT200の各機能ブロックは、CPUやメモリに蓄積したファームウェアで実現したり、電気/光変換回路・メモリ・増幅器といった電気部品等で実現するものである。また、これらの機能を各処理に特化した専用のハードウェア(LSI等)により実現しても良い。さらに、ONU300の構成を、上記説明に限ることなく、適宜必要に応じたて様々な機能の実装が行われても良い。
【0034】
図7は、OLTに備えた制御部の構成と動作例を説明する説明図である。また、図8および図9は、それぞれOLTの制御部の動作例を示す動作フロー図である。そして、図10は、制御部が生成するONU毎に割り当てた帯域(バイト数)を記憶する割当バイト長テーブルの構成例を示すメモリ構成図で、図11は、制御部が生成するONU毎の信号送信タイミングと使用伝送速度を記憶する送信タイミングテーブルの構成例を示すメモリ構成図である。更に、図12は、制御部の動作によって指示を受けた各ONUが送信する上り信号をOLTが受信する様子を示した動作説明図である。
以下、これらの図面を用いて、本発明のPONの動作と構成を、具体的にはOLTが実施する各ONUへの帯域割当と使用伝送速度決定動作と構成を、詳細に説明する。
(1)DBA処理部707は、DBA周期内で各ONU300の送信待ちのデータ量であるキュー長を上り信号(図3:33)から受信(図8:1101)する。
尚、DBA処理部707には、ONUに許可可能なデータ量に関するパラメータが契約に基づき、保守者により制御ボード(図7参照)から設定(固定帯域設定他)されているので、上記受信したキュー長と予め設定された契約パラメータの値に基づいて、次のDBA周期において各ONU300に割り当てるバイト数(送信を許可するデータ量(通信帯域))を決定し、各ONUの識別子であるONU−IDと割り当てたバイト長を対応付けた割当バイト長テーブル802を作成して記憶部710に格納する(図7:(1)、図8:1102)。
図10は、割当バイト長テーブル802の構成例で、ONUの識別子であるONU−ID901と、DBAでONUに割り当てたバイト長902を有する構成とした。同図では、各ONUからのキュー長に基づき各ONUへの割当バイト長を(a)〜(e)の5通りに変化させて割り当てた例を示している。具体的には、各ONUからのキュー長が(a)〜(e)に対応して増えていき、各ONUへの割当バイト数とDBA周期での総割当バイト数が増えている状況を例として示している。尚、先の説明では帯域の割当等をTCONT単位で実施すうように説明したが、本実施例では各ONUに備えたTCONTが1つである場合を想定しているのでTCONT−IDとONU−IDが同じになる為ONU−IDと表示をしてある。もちろん、ONUに複数のTCONTが割り当てられる場合は、このテーブルをTCONT単位で構成することになる(以下の説明でも同様である)。
(2)データ送信許可部709に備えた送信タイミング決定部801は、割当バイト長テーブル802の内容を読み出して(図7:(2))、各ONUに割り当てたバイト長902に対応するタイムスロットをグラント周期毎に割り当て、ONU−IDと各グラント周期内に割り当てたバイト長を対応付けた送信タイミングテーブル803を作成して記憶部710に格納する(図7:(3))。具体的には、以下のような制御を実施してONUの送信タイミングと伝送速度を決定していく。
【0035】
本実施例では4つのグラント周期(各125μ秒)で1つのDBA周期を構成しているため、伝送速度が1Gbit/秒の場合に1つのDBA周期で送信可能なバイト数は、1.24416Gbit/秒×125μ秒×4周期/8=77760バイトとなる。このうち、例えば32台のONUからの信号の直前に12バイトのバーストオーバヘッドがそれぞれ必要なことを考慮すると、実質的に使用可能なバイト長は、77760−12×32=77216バイトとなる。すなわち、全てのONUからの送信待ちデータ量であるキュー長の総和が77216バイト以内であれば、1Gbit/秒の伝送速度で全ての割り当てデータを送信可能である。キュー長の総和が77216バイトより大きければ、1Gbit/秒の伝送速度では全ての要求データを伝送することはできないため、伝送速度を10Gbit/秒に上げる必要がある。
【0036】
ここで、1つのDBA周期を構成する4つのグラント周期のうち、3つを伝送速度1Gbit/秒で、残りの1つを伝送速度10Gbit/秒で伝送する場合、DBA周期において送信可能なバイト数は、1.24416Gbit/秒×125μ秒×3周期/8+9.95328Gbit/秒×125μ秒×1周期/8=213840バイトまで上げることが出来る。上述のように32台のONUのバーストオーバヘッドを差し引くと、実質的に使用可能なバイト長は、213840−12×32=213456バイトとなる。同様に、4つのグラント周期のうち、2つを伝送速度1Gbit/秒で、残りの2つを伝送速度10Gbit/秒で伝送する場合、DBA周期において送信可能なバイト数は、1.24416Gbit/秒×125μ秒×2周期/8+9.95328Gbit/秒×125μ秒×2周期/8=349920バイトまで上げることが出来、32台のONUのバーストオーバヘッドを差し引くと実質的に使用可能なバイト長は、349920−12×32=349536バイトとなる。さらに、4つのグラント周期のうち、1つを伝送速度1Gbit/秒で、残りの3つを伝送速度10Gbit/秒で伝送する場合、DBA周期において送信可能なバイト数は、1.24416Gbit/秒×125μ秒×1周期/8+9.95328Gbit/秒×125μ秒×3周期/8=486000バイトまで上げることが出来、32台のONUのバーストオーバヘッドを差し引くと、実質的に使用可能なバイト長は、486000−12×32=485616バイトとなる。最後に4つのグラント周期の全てを伝送速度10Gbit/秒で伝送する場合、DBA周期において送信可能なバイト数は、9.95328Gbit/秒×125μ秒×4周期/8=622080バイトまで上げることが出来、32台のONUのバーストオーバヘッドを差し引くと、実質的に使用可能なバイト長は、622080−12×32=621696バイトとなる。
【0037】
したがって、データ送信許可部709は、割当バイト長テーブル802から得た割当バイト長の総和に基づいて、以下のように伝送速度を決定し、送信タイミングテーブル803のそれぞれのグラント周期に伝送速度の値を入力する。
(A)割当バイト長の総和≦77216か否かを判定し(図8:1103)、Yesの場合は全グラント周期を1Gbit/秒の速度に決定する(図8:1104)。
(B)77216<割当バイト長の総和≦213456か否かを判定し(図8:1105)、Yesの場合は第1から第3グラント周期を1Gbit/秒の速度に決定し、第4グラント周期を10Gbit/秒の速度に決定する(図8:1106)。
(C)213456<割当バイト長の総和≦349536か否かを判定し(図8:1107)、Yesの場合は第1から第2グラント周期を1Gbit/秒の速度に決定し、第3から第4グラント周期を10Gbit/秒の速度に決定する(図8:1108)。
(D)349536<割当バイト長の総和≦485616か否かを判定し(図8:1109)、Yesの場合は第1グラント周期を1Gbit/秒の速度に決定し、第2から第4グラント周期を10Gbit/秒の速度に決定する(図8:1110)。また、Noの場合は全グラント周期を10Gbit/秒の速度に決定する(図8:1111)。
(E)各グラント周期の伝送速度が決まると、データ送信許可部709は、割当バイト長テーブル802に格納されたバイト長(図10:902)を参照し、各ONUに対してグラント周期内でデータを送信させるタイムスロットの決定を行い、送信タイミングテーブル803の値を生成する(図8:1112(詳細動作例は後述する))。この時、10Gbit/秒の伝送速度を使用するグラント周期においては、割当バイト長テーブルでの割り当てバイト数を8で割った値となるようにする。これは、図2で説明したように、本実施例においては、Start28とEnd29の時間の単位は1Gbit/秒の信号速度におけるバイト単位で指定されるものであり、10Gbitの信号においては、時間の単位は8バイト単位で示されるものと定義したためである。
【0038】
図9もOLTの制御部の動作例を示す動作フロー図で、上記送信タイミングの決定ステップ(図8:1112)の詳細な動作例を示す動作フロー図である。各ONUの上り信号の送信タイミングは、以下のようにして決められていく。
(E1)最初のONU−IDの割当バイト長を割当バイト長テーブル802から読込む(1301)。尚、最初のONU−IDとして毎回最も若番のONU−ID(通常は1)をとっても帯域割当は可能だが、本実施例ではDBA周期毎に1つずつシフトした値(1→2→3→…)を用いている。この理由は、図8で説明した実施例では後のグラント周期ほど高い伝送速度が指定される傾向が高いため、特定の番号のONU(老番のONU)に高い伝送速度が割り当てられることが続き、特定のONUのみ消費電力が増えることを避けるためである。最初のONU−IDを1つずつシフトする以外の方法として、全てのONU−IDからDBA周期毎にランダムに選んだONU−IDから割当てを始めることも有効である。
(E2)最初のグラント周期の送信タイミングテーブル行から演算を開始(1302)。該グラント周期で速度が1Gであるか否かを判定し(1303)、Noであれば伝送速度は10Gであるので、以後の演算でバイト長を8で除算し、1Gと同じ時間幅となるバイト値に換算して演算を続ける(1304)。尚、8で除算する際に小数点以下の端数は切り上げる。続いて、Startに12を代入し、その値を演算対象ONU−IDの行に書き込む(1305)。
(E3)Start−1+バイト長≦ 19439であるか否かを判定し(1306)、YesであればEndにStart−1+バイト長を代入し、Endを演算対象ONU−IDの行に書き込み、演算対象ONU−IDを+1加算し、さらにStartにEnd+12+1を代入し、Startを新演算対象ONU−IDの行に書き込む(1307)。
(E4)上記判定(1306)がNoであれば、Endに19439を代入し、Endを演算対象ONU−IDの行に書き込み、バイト長←にStart−1+バイト長−19439を代入し(1308)、処理1303に再帰することにより次のグラント周期のテーブル計算に進む。
(E5)上記処理を再帰的に繰り返した後、全ONU−IDの演算完了を判定し(1309)、Yesであれば次のDBA周期での演算のために、最初のONU−IDに設定する値を1つシフトして記憶して、この処理を終了する。上記判定(1309)がNoであれば処理1306に戻る。
【0039】
以上説明した図8と図9の動作フロー図に従った制御で、図10で示した割当バイト長テーブルから図11で示した送信タイミングテーブルがそれぞれ生成される。
【0040】
図11は、送信タイミングテーブル803の構成例で、ONUの識別子であるONUT−ID901と、あるグラント周期内でのデータ送信開始タイミングStart28を格納するStartエリア1002とデータ送信終了タイミングEnd29を格納するEndエリア1003と、信号の送信速度を格納する速度エリア1004とを有する構成とした。同図の(a)から(e)は、図10で示した割当バイトテーブル(a)から(e)にそれぞれ対応しているもので、図8および図9のフロー図を用いて説明した制御により、割当バイトの総数に応じて各グラント周期での信号送信速度が変更され、それに応じた信号の送信タイミング(帯域)の割当が変更される様子を示している。
(3)送信タイミング決定部801は、送信タイミングテーブル803の内容に従ってグラント指示22(US Bandwidth MAP)を含む送信許可メッセージを各ONU300に送信してデータの送信タイミングを通知する(図8:1113)。
グラント指示を受けた各ONU300は、先に図5で説明した構成と動作により、OLT200から指示された送信タイミングと伝送速度で上り信号を送信する。
【0041】
図12は、各ONUからの上り信号をOLTで受信する様子を示した動作説明図で、送信タイミングテーブル803の順に従って各ONUからの信号が基幹光ファイバ110上で光学的に時分割多重されOLTに到着している様子を示したもので、同図の(a)〜(e)は、図10と図11の(a)〜(e)に対応して、割当バイトの総数に応じて各グラント周期での信号送信速度が変更され、それに応じた信号の送信タイミング(帯域)の割当が変更される様子を示している。また、同図は、割当バイト長の総計に基づいて第1グラント周期から第4グラント周期のそれぞれの伝送速度を上述した手順により設定することで、割当バイト長総計の異なる(a)〜(e)の場合の全てで第1グラント周期から第4グラント周期までの時間スロットを極力使いきって低消費電力化と伝送効率向上を実現していることを示している。また、最初のONU−IDとしてDBA周期毎に1つずつシフトした値(1→2→3→…)を用いているので、図8の(a)〜(e)のバイト長割り当てが順番に発生した場合も、図12の(a)〜(e)に示されるように、より消費電力の少ない1Gbit/sの速度は全ONUに順番に割り当てられ、特定のONUのみ消費電力が増えることを避けることが出来る。
【0042】
以下では、送信要求の少ないONUになるべく低い伝送速度を割り当てることで、送信要求の少ないONUの消費電力を低減させる別のOLT制御部の動作と構成を説明する。
図13は、OLTに備えた制御部の別の動作例を示す動作フロー図で、送信タイミングの決定ステップ(図8:1112、図9)の別の実現例を示す動作フロー図である。図9で示したフロー図との違いは、最初に割当バイト長テーブル802の行をバイト長の小さい順に並べ替える操作を(1311)追加した点である。この操作後は、先の実施例と同様に割当バイト長テーブルの最初のONU−IDから演算を開始する(1312)ことにより、送信要求の少ないONU300にはなるべく低い伝送速度を割り当てることができる。すなわち、この操作により割当帯域の少ないONUに消費電力の少ない1Gbit/秒の速度が割り当てられ、割当帯域が少ない加入者ほど消費電力を節約し易いというメリットが生ずる。
【0043】
図14は、ステップ1311で並べ替えられた割当バイト長テーブルの構成例を示したメモリ構成図であり、割当バイト数の少ない順に並んでいる。先の実施例(図10)のようなONU−IDが若番順に並んでいる割当バイト長テーブル802を使用して図13で示したような制御動作を実現しようとすると、最も割当帯域が少ないONU−IDを割当バイト長テーブルから検索して選択して送信タイミングを割り当てる演算を行い、次に割当帯域が少ないONU−IDを割当バイト長テーブルから検索して選択して送信タイミングを割り当てる演算を繰り返さなければならない。それに対して、図14に示す割当バイト数の少ない順の割当バイト長テーブル802‘を最初に作成しておけば、以後はテーブルの上位に位置するONU−IDから順番に送信タイミングを割り当てていけば良いので、検索の手順がまとめられ送信タイミング割り当て動作が効率化されるメリットがある。以下、この割当バイト長テーブル802を参照して図13のフロー図で示した制御を行うと、図15で示す送信タイミングテーブル803’が生成されるので、この内容を各ONU300に指示することで、OLT200は、図16に示すような状態で信号を受信することになる。
【0044】
上記実施例では、1つのDBA周期を4つのグラント周期で構成して、グラント周期毎に伝送速度を切り替える例を説明しているが、1つのDBA周期をさらに多くのグラント周期で構成して伝送速度をより細かく切り替えることで、全ONUに割り当てたバイト数の総和に最も近い伝送速度の組み合わせを選び、かつ、極力伝送速度を下げて全体の消費電力を最小化することが可能である。また、ONU毎に伝送速度を切り替えることにより同様の効果を得ることも可能である。
【0045】
本発明のPONでは、ONUが上り方向の通信に使用する伝送速度を自ら判定する構成をとることも可能である。具体的には、ONUに上り方向の通信内容を一時格納するためのバッファメモリを複数の優先度に対応して備え、優先度の高いバッファメモリのデータ量が送信タイミング制御部の指示するタイミングに基づき1Gbit/秒の速度で伝送可能な量を下回れば1Gbit/秒の速度を用い、1Gbit/秒の速度で伝送可能な量を上回れば10Gbit/秒の速度を用いるというように、上り信号の伝送速度を判定して動作する構成である。以下、図面を用いて更にこの詳細な構成と動作を説明する。
【0046】
図17は、本発明のPONに用いるONUの他の構成例を示すブロック構成図であり、図18もOLTの他の構成例を示すブロック構成図で、それぞれONUが上り信号の伝送速度を判定する動作に対応した構成例を示したブロック構成図である。
ONU300‘は、伝送速度判定部546を備え、グラント終端部520、キュー長監視部530の出力に基づき上り伝送速度を決定してセレクタ545を制御する点が先に説明したONU300と異なる。また、上り信号を一時蓄積するバッファ509も、信号の優先度に分けた高優先と低優先のバッファに分けて信号を蓄積する構成とした。尚、具体的な伝送速度判定の動作例は、後述する。
OLT200‘は、上り信号処理部705が上り信号を受信した結果から伝送速度を選択するセレクタ715を制御する点が先に説明したOLT200と異なる。すなわち、ONU300’で決定された上り伝送速度の信号が受信されるので、上り信号処理部705でその波形を解析することで上り伝送速度を判定する。具体的には、上り信号の最初の情報はプリアンブル(図3の30)で、このプリアンブルは事前に決定された値が使用され、特に高速のクロック抽出に都合が良い10交番ビット列が使用されることが多い。上り信号の伝送速度が1Gbit/秒である場合の1パルス幅は約803ピコ秒である。また、上り信号の伝送速度が10Gbit/秒である場合の1パルス幅は約100ピコ秒である。したがって、上り信号処理部705は、受信した上り信号のプリアンブルパルスの幅を測定することで容易に伝送速度を知ることが可能である。
【0047】
図19は、ONUの伝送速度判定部546の動作例を示す動作フロー図であり、以下のように動作して上り信号の伝送速度を決定する。
(1)DBA周期内でOLT200‘よりグラント指示(図2:22)を受信すると(1401)、キュー長監視部530が上りバッファ509のうち高優先度バッファ509−1および509−3のキュー長を取得して伝送速度判定部546に伝える(1402)。
(2)高優先度バッファ509−1および509−3に残っているデータ量が送信制御部510の指示するタイミング(グランド指示長)と比較して1Gbit/秒の速度で伝送可能な量を下回れば(1403でNoの場合であれば)1Gbit/秒の速度を用い(1405)、1Gbit/秒の速度で伝送可能な量を上回れば(1403でYesの場合であれば)10Gbit/秒の速度を用いる(1404)ように判定し、送信制御部510とセレクタ545を判定結果で制御する。
【0048】
図20は、ONUの動作例を説明するための図で、伝送速度判定部546が動作した結果、ONU300‘内の送信制御部510内のメモリ(図示せず)に備えた上り信号送信制御テーブルの構成例を示したメモリ構成図である。なお、このメモリは送信制御部510以外の機能ブロックにあっても構わない。また、同図は、各ONUに備えたメモリを説明の都合上、全ONU分纏めて表示したもので、各ONUでは自ONUのデータを持っていれば構わないものである。
【0049】
同図のONU−IDに対応する行の情報が、伝送速度判定部546の判定動作に使用される。一例を挙げれば、Start1002とEnd1003の差で示されるONU−ID=5の1Gbit/秒の速度における許可されたバイト値1005は、12500バイトである。そして、ONU−ID=5のONU内部における高優先度キューに保持されているデータ量1006は10000バイト、低優先度キューに保持されているデータ量1007は90000バイトである。したがってONU5では、上述した判定動作に従い、高優先度キュー内のデータ10000バイトは1Gbit/秒で送れるので1Gbit/秒で送信し、また、低優先度キューに保持されているデータのうち2500バイトを1Gbit/秒で送信する。同様に、ONU2でも、許可されたバイト値1005が375バイトであるが、高優先度キューに保持されているデータ量1006は200バイトであるので高優先度キュー内のデータ200バイトを1Gbit/秒で送信し、かつ低優先度キューに保持されているデータのうち175バイトを1Gbit/秒で送信する。
【0050】
図21は、OLTでの上り信号受信動作の他の例を示す動作説明図で、各ONUが図20で示した情報を備えた場合に、基幹光ファイバ110上で時分割多重された各ONUからの上り信号をOLTが受信する様子を示している。
【0051】
上述したONUで伝送速度を決定する構成と動作であれば、各ONUが送信を待っている全てのデータを送信するのではなく、低い伝送速度を使用して優先度の高いデータだけを送信するというような、上り信号送信の選択を行うことが出来るようになる。ITU−T勧告G984.3で規定される現行のPON伝送規格では、優先度の高いデータのキュー長を分離してOLTに伝えるメカニズムが規定されていないので、OLTはそれぞれのONUの送信待ちデータの優先度を考慮した伝送速度の判定を行うことができないが、本実施例により可能となる。また、電力消費節約の要求を重視することを個々のONUが固有の判断として選択できるようになる。
【符号の説明】
【0052】
10・・・PON、
100・・・スプリッタ、
110、120・・・光ファイバ、
130・・・下り信号、
140、150・・・上り信号、
200・・・OLT、
300・・・ONU、
400、410・・・端末、
700・・・制御部、
707・・・DBA処理部、
709・・・データ送信許可部、
801・・・送信タイミング決定部、
802・・・割当バイト長テーブル、
803・・・送信タイミングテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局と複数の子局とが光スプリッタおよび複数の光ファイバから成る光ファイバ網で接続され、前記複数の子局の要求に基づき前記親局が前記複数の子局の夫々から前記親局に送信する信号の量とタイミングとを決め、前記複数の子局からの信号を前記光ファイバ網を介して前記親局が受信する受動光網システムであって、
前記親局は、前記複数の子局の夫々が送信を要求する信号の量に基づき、該子局の夫々に該親局への信号送信を許可する信号の量と送信タイミングと伝送速度を一定周期毎に決めて該子局の夫々に通知する制御部を備え、
前記複数の子局の夫々は、第1の伝送速度、もしくは、該第1の伝送速度より高速な第2の伝送速度で前記親局へ信号を送信する制御部を備え、前記親局からの通知に基づき前記第の伝送速度もしくは第2の伝送速度のいずれかで前記信号を送信する
ことを特徴とする受動光網システム。
【請求項2】
上記親局の制御部は、上記複数の子局の夫々が要求した信号の量に基づき任意の子局への送信許可する信号の量を決定すると、
前記送信許可した信号の量が上記第1の伝送速度で伝送可能な最大伝送量を下回る場合は、該任意の子局の信号の伝送速度を前記第1の伝送速度とし、該送信許可した信号の量が前記第1の伝送速度で伝送可能な最大伝送量を上回る場合は、該任意の子局の信号の伝送速度を上記第2の伝送速度と決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の受動光網システム。
【請求項3】
上記親局の制御部が決定を行う上記一定周期は、複数の部分周期から構成されており、
該制御部は、上記複数の子局の夫々に送信許可する信号の量の総和に基づいて、前記部分周期のそれぞれについて任意の子局が使用する伝送速度を上記第1の伝送速度もしくは第2の伝送速度に決定することを特徴とする請求項1もしくは2いずれかにに記載の受動光網システム。
【請求項4】
上記親局の制御部は、上記複数の子局の夫々が送信を要求する信号の量に基づき、該子局の夫々に該親局への送信を許可する信号の量を一定の周期毎に決める帯域制御部と、
前記決定された信号の量に基づき、前記信号を送信する子局の送信タイミングと伝送速度を決める送信タイミング制御部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の受動光網システム。
【請求項5】
上記親局で決定した伝送速度の情報は、該親局から上記複数の子局へ送信されるフレーム信号内において、前記親局が決定した送信タイミングの情報を通知する制御信号領域内に挿入されて該複数の子局の夫々に通知されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の受動光網システム。
【請求項6】
親局と複数の子局とが光スプリッタおよび複数の光ファイバから成る光ファイバ網で接続され、前記複数の子局の要求に基づき前記親局が前記複数の子局の夫々から前記親局に送信する信号の量とタイミングとを決め、前記複数の子局からの信号を前記光ファイバ網を介して前記親局が受信する受動光網システムであって、
前記親局は、前記複数の子局の夫々が送信を要求する信号の量に基づき、該子局の夫々に該親局への信号送信を許可する信号の量と送信タイミングとを一定周期毎に決めて該子局の夫々に通知する制御部を備え、
前記複数の子局の夫々は、第1の伝送速度、もしくは、該第1の伝送速度より高速な第2の伝送速度で前記親局へ信号を送信する制御部を備え、該制御部が前記親局から通知された送信許可された信号の量に基づき前記第の伝送速度もしくは第2の伝送速度のいずれかを選択して前記信号を送信する
ことを特徴とする受動光網システム。
【請求項7】
上記親局の制御部は、上記複数の子局の夫々が要求した信号の量に基づき任意の子局への送信許可する信号の量を決定して該子局に通知すると、
上記子局の制御部は、前記通知された送信許可された信号の量が上記第1の伝送速度で伝送可能な最大伝送量を下回る場合は、信号の伝送速度を前記第1の伝送速度とし、該送信許可された信号の量が前記第1の伝送速度で伝送可能な最大伝送量を上回る場合は、信号の伝送速度を上記第2の伝送速度と決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の受動光網システム。
【請求項8】
親局と複数の子局とが光スプリッタおよび複数の光ファイバから成る光ファイバ網で接続され、前記複数の子局の要求に基づき前記親局が前記複数の子局の夫々から前記親局に送信する信号の量とタイミングとを決め、前記複数の子局からの信号を前記光ファイバ網を介して前記親局が受信する受動光網システムの運用方法であって、
前記複数の子局が前記親局へ送信する信号の量を要求すると、
前記親局が前記前記複数の子局の夫々からの送信信号の要求量に基づき、該子局の夫々に信号送信を許可する信号の量と送信タイミングと伝送速度を一定周期毎に決めて該子局の夫々に通知し、
前記複数の子局の夫々は、前記親局からの通知に基づき前記第1の伝送速度もしくは該第1の信号より高速な第2の伝送速度のいずれかで前記親局へ信号を送信することを特徴とする受動光網システムの運用方法。
【請求項9】
上記伝送速度の決定は、上記送信許可した信号の量が上記第1の伝送速度で伝送可能な最大伝送量を下回る場合は、上記信号の伝送速度を前記第1の伝送速度とし、該送信許可した信号の量が前記第1の伝送速度で伝送可能な最大伝送量を上回る場合は、該信号の伝送速度を上記第2の伝送速度と決定することを特徴とする請求項8に記載の受動光網システムの運用方法。
【請求項10】
上記伝送速度の決定を上記複数の子局の夫々が行うことを特徴とする請求項8もしくは9いずれかに記載の受動光網システムの運用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−59127(P2013−59127A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−283907(P2012−283907)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2009−80861(P2009−80861)の分割
【原出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】