口腔および歯ケア剤
本発明は、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤に関する。本発明の抗菌性口腔および歯ケア製剤は、クロルヘキシジンに伴う変色を引き起こさず、ヒト歯の変色を軽減または予防する。これは、クロルヘキシジンを含有する口腔および歯ケア製剤としては異例である。本発明の口腔および歯ケア製剤はまた、歯石予防および歯垢軽減効果も有する。
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤に関する。本発明の抗菌性口腔および歯ケア製剤は、クロルヘキシジンに伴う変色を引き起こさず、ヒト歯の変色を軽減または予防する。これは、クロルヘキシジンを含有する口腔および歯ケア製剤としては異例である。本発明の口腔および歯ケア製剤はまた、歯石予防および歯垢軽減効果も有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ヒト歯の変色の軽減および抑制ならびに歯石および歯垢の抑制に寄与することができる活性成分組合せに基づく口腔および歯ケア製剤に関する。
【背景技術】
【０００２】
現在の口腔および歯ケア製剤は、とりわけ、食べ物の残り糟、変色および固着した歯垢を、歯表面から洗浄し取り除くために用いられている。特に歯垢は歯石形成の元であり、そして歯石は、歯肉の炎症、出血（歯肉炎）および齲蝕の発生および蔓延をもたらす。
【０００３】
したがって歯および歯肉を健康に保つには、細菌被覆物を適当な歯ケアによって絶えず定量的に除去しておく必要がある。理想的には、口腔および歯ケア製剤は、特殊な添加剤により、歯垢および歯石の形成を完全に抑制するべきである。
【０００４】
上述の課題を解決するために、これまで、様々な努力がなされてきた。例えば、ある種の抗菌成分は、練り歯磨きおよび洗口剤の添加剤として、歯肉の炎症を和らげる能力を持つことが、文献から知られている。これに関して、クロルヘキシジンは、古くから、非常に有効な抗菌剤として知られてきた。クロルヘキシジンの作用は、これが口腔において、ある種の徐放作用または長期作用に匹敵する高い保持レベルを示すことに基づいている。
【０００５】
しかし従来、クロルヘキシジンを長期間使用した場合の問題は、とりわけ茶、珈琲および赤ワインなどの様々な食品に含まれるポリフェノール類のクロルヘキシジン誘発性沈着を原因とする変色が、口内に生じることだった。これらの変色は特に歯では美観を損ね、通例、消費者には受け入れられない。したがってクロルヘキシジンは、口腔および歯ケア製剤ではかなり有効であるにもかかわらず、長期間は通常使用されない。
【０００６】
EP304627B1では、クロルヘキシジンとアルキルポリグリコシドとの相乗的組合せによって、変色の問題に取り組む試みがなされた。これら2成分の作用の相乗的増加により、変色の問題が明らかに軽減される程度にクロルヘキシジン含量を低下させることができた。しかし、より有効な歯垢の除去または抑制に、画期的進歩があったわけではない。
【０００７】
EP480811A1では、陽イオン性抗菌剤を抗歯石剤（好ましくはアザシクロアルカンジホスホン酸塩）と組み合わせることによって、歯石および歯垢を減少させる試みがなされた。しかし、クロルヘキシジン濃度が高いため、この製剤の常用による変色の問題を解決することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
したがって、例えば変色などの先行技術の欠点を許容しなくても歯垢および歯石の形成を抑制および／または軽減することができる口腔および歯ケア製剤は、今なお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
全く驚くべきことに、活性成分の特殊な組合せにより、変色軽減および抑制作用だけでなく、強力な歯石抑制作用および抗歯垢作用も得られることを、ここに見いだした。
【００１０】
本発明は、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤に関する。
【００１１】
本発明に関して、陽イオン性抗菌成分とは、ビスビグアニド誘導体であると解される。化合物クロルヘキシジンおよびアレキシジンは特に好ましい。これら2つの化合物は、好ましくは、生理的に適合するそれらの水溶性塩の形態で、本口腔および歯ケア製剤に使用される。そのような塩は、例えば、クロルヘキシジンまたはアレキシジンの酢酸塩、グルコン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩、亜硫酸水素塩、フッ化物、ソルビン酸塩、サリチル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、エチレンジアミノ四酢酸塩、イミノ二酢酸塩、ケイ皮酸塩、チオシアン酸塩、アルギン酸塩、安息香酸塩およびグルタル酸塩である。
【００１２】
本発明での使用に適した他の抗菌性ビグアニド化合物は、例えば、Vantocil（登録商標）IBタイプ（ICI）のポリヘキサメチレンビグアニド化合物、DE-A-1964196によって知られる1,6-ビス-（4-クロロベンジルビグアニド）-ヘキサン（フルオルヘキシジン）、US-A-2,684,924、US-A-2,990,425、US-A-3,468,898、US-A-4,022,834、US-A-4,053,636および US-A-4,198,392によって知られる抗菌性ビグアニド化合物である。
【００１３】
本発明のとりわけ好ましい一実施形態では、ジグルコン酸クロルヘキシジンを抗菌成分として口腔および歯ケア製剤に使用する。
【００１４】
抗菌成分（A）は、製剤の総重量に基づいて、0.001〜3wt％の量で、好ましくは0.01〜1wt％の量で、より具体的には0.01〜0.2wt％の量で、本発明の口腔および歯ケア製剤に使用される。
【００１５】
本発明によれば、抗歯石成分（B）は、式（I）：
【化１】
［式中、n は3〜5の整数であり、R は水素または C1-4アルキル基であり、X は水素、アンモニウム、置換アンモニウム塩、例えばモノ-、ジ-もしくはトリ-エタノールアンモニウム塩、またはアルカリ金属イオン、例えばナトリウムイオンもしくはカリウムイオンであって、同時に水素を表す X 基は多くて3個である］
に相当する化合物から選択される。
【００１６】
2,2-ジホスホノ-1-アザシクロアルカンは、多価金属イオン、より具体的には二価および三価金属イオンの優れた金属イオン封鎖剤である。これらはアルカリ土類金属イオンの錯化剤として特に適している。
【００１７】
本発明のとりわけ好ましい一実施形態では、アザシクロヘプタン-2,2-ジホスホン酸またはアザシクロヘプタン-2,2-ジホスホン酸の生理的に適合する塩、例えばナトリウム塩を、本発明の口腔および歯ケア製剤に抗歯石成分として使用する。
【００１８】
抗歯石成分（B）は、製剤の総重量に基づいて、0.001〜5wt％の量で、好ましくは0.01〜3wt％の量で、より具体的には0.05〜2wt％の量で、本発明の口腔および歯ケア製剤に使用される。
【００１９】
本発明による活性成分組合せの第3必須成分（C）は結合剤である。
本発明の目的に使用することができる結合剤は、キサンタンガムおよびカルボキシメチルセルロースである。これらは通常、製剤の総重量に基づいて、少なくとも0.01wt％の量で、より具体的には0.05〜2wt％の量で使用される。
【００２０】
本発明の好ましい一実施形態では、稠度調節作用を持つと共に液体成分と固体成分との分離を防止する他の結合剤または増粘剤を、本発明の口腔および歯ケア製剤に加えることができる。
それらは、0.1〜5wt％、好ましくは0.1〜3wt％、より具体的には0.5〜2wt％の量で、本発明の製剤に使用される。
【００２１】
アルギネート、カラギーナン、寒天、グアーガム、アラビアガム、スクシノグリカンガム、グアー粉末、ローカストビーンガム、トラガカント、カラヤガム、ペクチン、ヒドロキシエチルセルロースまたはメチルヒドロキシプロピルセルロース、疎水化セルロース、デンプンおよびデンプンエーテルなどの天然および／または合成水溶性ポリマーが、本発明に従って使用される。
【００２２】
水溶性カルボキシビニルポリマー（例えばCarbopol（登録商標）タイプ）、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよび比較的高分子量のポリエチレングリコール（より具体的には102〜106Dの分子量を持つもの）も、好適な結合剤または増粘剤である。層状ケイ酸塩および微粒子シリカ（エアロゲルシリカおよび発熱性シリカ）もこの機能を果たすことができる。
【００２３】
好ましい他の結合剤または増粘剤は、例えば J. Rettenmaier & Soehneにより、Arbocel（登録商標）およびVitacel（登録商標）という名称で販売されている水不溶性非誘導体化セルロースである。本発明に関して、水不溶性とは、20℃の水で1wt％未満の溶解度、すなわち20℃の飽和溶液100g に溶解しているセルロースが1wt％未満であることを意味する。
【００２４】
揺変性を持つセルロース粉末の高粘度ペーストであるArbocel（登録商標）CGP5000は、低濃度で使用した場合でも強い稠度付与性を持ち、イオン性成分に対して不活性であり、他の増粘剤と容易に併用することができる、とりわけ有効な増粘剤である。
【００２５】
本発明の好ましい一実施形態では、口腔および歯ケア製剤が、その洗浄性能および起泡挙動を改善するために、界面活性剤または界面活性剤混合物をさらに含有する。これらの界面活性剤または界面活性剤混合物は、口内における口腔および歯ケア製剤の迅速かつ完全な溶解および分布を促進すると同時に、歯垢（特に歯ブラシが届きにくい場所にある歯垢）の機械的除去を支援する。これらはまた、着香油などの水不溶性成分の混和を促進し、研磨剤の分散を安定化し、フッ化物の抗齲蝕作用を支援する。
【００２６】
原則として、陰イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤および両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤またはこれらの化合物の混合物を、界面活性剤として練り歯磨き製剤に使用することができる。本発明によれば、練り歯磨きは、好ましくは、陰イオン界面活性剤の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含有し、一方、洗口剤は、好ましくは、非イオン界面活性剤の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含有する。
【００２７】
界面活性剤または界面活性剤混合物は、通常、製剤の総重量に基づいて、0.1〜10wt％の量で、好ましくは0.3〜7wt％の量で、より具体的には1〜5wt％の量で、本発明の製剤に使用される。
【００２８】
陰イオン界面活性剤
良好な起泡作用を持つ好適な界面活性剤は、歯垢の細菌代謝に対してある種の酵素阻害作用も持つ陰イオン界面活性剤である。そのような陰イオン界面活性剤には、例えば、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、より具体的にはナトリウム塩の形態の、C8-18アルカンカルボン酸、直鎖アルキル基中に12〜16個の炭素原子を含有しかつ分子中に2〜6個のグリコールエーテル基を含有するアルキルポリグリコールエーテルスルフェート、直鎖アルカン-（C12-18）-スルホネート、スルホコハク酸モノアルキル-（C12-18）-エステル、硫酸化脂肪酸モノグリセリド、硫酸化脂肪酸アルカノールアミド、スルホ酢酸アルキル-（C12-16）-エステル、アシル基中に8〜18個の炭素原子を含有するアシルサルコシン、アシルタウリドおよびアシルイセチオネートが含まれる。
【００２９】
少なくとも1つの陰イオン界面活性剤、より具体的にはアルキル基中に12〜18個の炭素原子を含有するラウリルアルキル硫酸ナトリウムを使用することが好ましい。そのような界面活性剤の1つは、例えばTexapon（登録商標）K1296という名称で市販されているラウリル硫酸ナトリウムである。
【００３０】
両性イオンおよび両性界面活性剤
本発明の好ましい一実施形態では、両性イオン界面活性剤および／または両性界面活性剤を、好ましくは陰イオン界面活性剤と組み合わせて、使用することができる。両性イオン界面活性剤は、分子中に少なくとも1つの4級アンモニウム基と少なくとも1つのカルボキシレート基またはスルホネート基とを含有する表面活性化合物である。特に好適な両性イオン界面活性剤はいわゆるベタイン、例えば N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばトリメチルアンモニウムグリシネート、ココアルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばココアシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、および2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン（アルキル基またはアシル基中に8〜18個の炭素原子を含有する）、ならびにココアシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートである。Cocamidopropyl Betaine（コカミドプロピルベタイン）というCTFA 名で知られる脂肪酸アミド誘導体は特に好ましい。そのような生成物は例えばTego-Betain（登録商標）BL215および ZF50ならびにGenagen（登録商標）CABの名称で市販されている。
【００３１】
両性界面活性剤は、C8-18アルキル基またはアシル基に加えて分子中に少なくとも1つの遊離アミノ基と少なくとも1つの-COOH基または-SO3H基とを含有し、分子内塩を形成することができる、表面活性化合物である。好適な両性界面活性剤の例は、アルキル基中に8〜18個程度の炭素原子を含有するN-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸およびアルキルアミノ酢酸である。特に好ましい両性界面活性剤はN-ココアルキルアミノプロピオネート、ココアシルアミノエチルアミノプロピオネートおよび C12／18アシルサルコシンである。両性界面活性剤の他に4級乳化剤も好適であり、エステルクワト（esterquat）型のもの、好ましくはメチル4級化ジ脂肪酸トリエタノールアミンエステル塩は、特に好ましい。
【００３２】
非イオン界面活性剤
本発明によれば、非イオン界面活性剤は洗浄作用の支援に特に適している。特に好ましい非イオン界面活性剤は、以下の群の少なくとも1つから選択されるものである：
・8〜22個の炭素原子を含有する直鎖脂肪アルコール、12〜22個の炭素原子を含有する脂肪酸およびアルキル基中に8〜15個の炭素原子を含有するアルキルフェノールに、2〜30モルのエチレンオキシドおよび／または0〜5モルのプロピレンオキシドが付加した生成物。
・グリセロールに1〜30モルのエチレンオキシドが付加した生成物のC12／18脂肪酸モノエステルおよびジエステル。
・6〜22個の炭素原子を含有する飽和および不飽和脂肪酸のグリセロールモノエステルおよびジエステルならびにソルビタンモノエステルおよびジエステルならびにそのエチレンオキシド付加物。
・アルキル基中に8〜22個の炭素原子を含有するアルキルモノ-およびオリゴ-グリコシドならびにそのエトキシル化類似体。
・ヒマシ油および／または水添ヒマシ油に15〜60モルのエチレンオキシドが付加した生成物。
・ポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、例えばポリリシノール酸ポリグリセロール、ポリ-12-ヒドロキシステアリン酸ポリグリセロールおよびダイマー酸ポリグリセロール。
これらの群のいくつかから選択される化合物の混合物も好適である。
【００３３】
・ヒマシ油および／または水添ヒマシ油に2〜15モルのエチレンオキシドが付加した生成物。
・直鎖、分枝鎖、不飽和または飽和C6-22脂肪酸、リシノール酸および12-ヒドロキシステアリン酸と、グリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、糖アルコール（例えばソルビトール）、スクロース、アルキルグルコシド（例えばメチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド）およびポリグルコシド（例えばセルロース）とに基づく部分エステル。
・リン酸モノ-、ジ-およびトリ-アルキルならびにリン酸モノ-、ジ-および／またはトリ-PEG-アルキル、ならびにそれらの塩。
・羊毛ワックスアルコール。
・ポリシロキサン／ポリアルキルポリエーテルコポリマーおよび対応する誘導体。
・DE1165574PSに記載のペンタエリスリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪アルコールの混合エステル、および／またはC6-22脂肪酸、メチルグルコースおよびポリオール（好ましくはグリセロールおよびポリグリセロール）の混合エステル。ならびに
・ポリアルキレングリコール。
【００３４】
脂肪アルコール、脂肪酸、アルキルフェノール、脂肪酸のグリセロールモノエステルおよびジエステルならびにソルビタンモノエステルおよびジエステルまたはヒマシ油へのエチレンオキシドおよび／またはプロピレンオキシドの付加生成物は既知の市販品であり、本発明の目的に好ましい。これらは同族体混合物であり、その平均アルコキシル化度は付加反応を行なう際に使用するエチレンオキシドおよび／またはプロピレンオキシドの量と基質の量との比に相当する。エチレンオキシドとグリセロールとの付加物のC12-18脂肪酸モノエステルおよびジエステルは、DE2024051PSから化粧品用の脂質層強化剤として知られている。
【００３５】
C8-18アルキルモノ-およびオリゴ-グリコシド、その製造および使用は、例えばUS-A-3,839,318、DE-A-2036472、EP-A-77167またはWO-A-93／10132などの先行技術によって知られている。これらは特に、グルコースまたはオリゴ糖を、8〜18個の炭素原子を含有する1級アルコールと反応させることによって製造される。グリコシド単位に関する限り、環状糖単位がグリコシド結合によって脂肪アルコールに結合しているモノグリコシドと、好ましくは約8までのオリゴマー化度を持つグリコシドオリゴマーは、どちらも好適である。オリゴマー化度は、このような工業品に特有の同族体分布の統計学的平均値である。特に好適なアルキル（オリゴ）グリコシドは、式RO（C6H10O）x-H［式中、RはC12-14アルキル基であり、xは平均して1〜4の値である］に相当するものである。
【００３６】
本発明の口腔および歯ケア製剤に使用される特に好ましい界面活性剤は、CognisがPlantacare 1200 UP の名称で販売しているアルキルグリコシド（C12-16脂肪アルコール-1,4-グルコシド）である。
【００３７】
本発明の口腔および歯ケア製剤は、それらが乾燥するのを防ぎ、それらの稠度および低温安定性を調節するために、さらに湿潤剤を含有する。湿潤剤は、懸濁目的ならびに味および光沢に影響を与える目的でも使用することができる。
【００３８】
典型的に使用される湿潤剤は、毒物学的に安全なポリオール、例えばソルビトール、キシリトール、グリセロール、マンニトール、1,2-プロピレングリコールまたはそれらの混合物などである。200〜2000の分子量、より具体的には200〜1500の分子量を持つポリエチレングリコールも、湿潤剤成分として練り歯磨きに使用することができる。
【００３９】
いくつかの湿潤剤成分の組合せが好ましく使用される。グリセロールおよび／またはソルビトールと1,2-プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとの組合せは特に好ましいとみなすことができる。
【００４０】
キシリトールと湿潤剤グリセロールおよびソルビトールの一方または両方との組合せはもう1つの好ましい組合せであり、これには、湿潤剤としてのその機能の他に、キシリトールの抗齲蝕性からくる利点もある。
【００４１】
本発明の口腔および歯ケア製剤を洗口剤として製剤化する場合、それらは製剤の総重量に基づいて、0〜10wt％の量、好ましくは1〜5wt％の量のエタノールを、さらに含有することができる。
【００４２】
製剤のタイプに依存して、製剤全体には、10〜85wt％の量、好ましくは20〜70wt％の量、より具体的には30〜50wt％の量の湿潤剤または湿潤剤混合物が存在する。
【００４３】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明の製剤は、油／脂肪および／またはワックス成分を、さらに含有する。これらの成分は、それらを界面活性剤と併用した場合は特に、本発明の製剤に光沢および柔軟性を付与する。本発明の目的には、天然、化学修飾および合成ワックス、脂肪および油を、個別にまたは組み合わせて使用することができる。
【００４４】
油／脂肪およびワックス成分は、製剤全体に基づいて0.1〜10wt％の量、好ましくは0.5〜5wt％の量、より具体的には0.8〜3wt％の量で使用される。
【００４５】
油／脂肪
本発明に関して、油／脂肪は、天然物でも合成物でもよい液状または固形のモノ-、ジ-およびトリ-グリセリドならびに炭化水素およびシリコーン油であると解される。本発明によれば、油成分は、好ましくは、植物性でも動物性でも合成物由来でもよいトリグリセリドおよび／またはパラフィン油の群から選択される。
【００４６】
モノ-、ジ-およびトリ-グリセリドは、脂肪酸とグリセロールとのモノ-、ジ-およびトリ-エステル、すなわちアシルグリセロールである。グリセロールは同じまたは異なる脂肪酸または脂肪酸誘導体（例えばレシチン）でエステル化することができる。脂肪酸は好ましくはC6-30脂肪酸であり、これは飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸および分枝脂肪酸または非分枝脂肪酸のどれであってもよい。これには、とりわけ、グリセロールを、天然脂肪酸、例えばカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、2-エチルヘキサン酸、イソトリデカン酸、イソステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、エレオステアリン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ドコサヘキサン酸およびガドレイン酸ならびにそれらの工業用混合物（例えば天然油脂の加圧加水分解または不飽和脂肪酸の二量化などで得られる）でエステル化した生成物が含まれる。牛脂、ラッカセイ油、ナタネ油、綿実油、ダイズ油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、アーモンド油、ヒマシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、コルザ油、ゴマ油、カカオ脂およびヤシ脂などの天然油脂の使用は特に好適でありうる。例えば水添したダイズ油、ヒマシ油およびラッカセイ油などの水添油または硬化油も使用することができる。
【００４７】
低粘性および高粘性液状シリコーン油または天然および合成炭化水素、例えば低粘性もしくは高粘性液状パラフィン油、イソヘキサデカン、イソエイコサンまたはポリデセン、例えばEmery（登録商標）3004、3006、3010、Ethylflo（登録商標）またはNexbase（登録商標）2004Gなどの名称で入手することができるものも、本発明に従って使用することができる。
【００４８】
いわゆる逆脂肪（例えばビシナルトリカルボン酸とC6-30脂肪アルコールとのエステル）またはグリセロールトリアルキルエーテルも使用することができる。
【００４９】
ワックス
ワックスは、以下の性質を持つ天然または合成物質であると解される：ワックスは堅固または脆弱であり、稠度は硬く、粗結晶性ないし微結晶性で、透明または不透明であり、35℃を超える温度で分解せずに融解する。ワックスは、その融点をわずかに上回るだけで、低粘度かつ糸を引かない状態になり、温度依存性の高い稠度および溶解度を示す。
【００５０】
化学的には、ワックス群の最も一般的な代表例は、動物性および植物性の、脂肪酸と高級脂肪アルコールとのエステルである。本発明での使用に適したワックスは、天然植物性ワックス、例えばホホバ油、カンデリラワックス、カルナウバワックス、木ロウ、エスパルトグラスワックス、コルクワックス、グアルマワックス、米ぬかワックス、サトウキビワックス、オウリカリワックス、モンタンワックス、ヒマワリワックス、果実ワックス、例えばオレンジワックス、レモンワックス、グレープフルーツワックス、ヤマモモワックス、ならびに動物性ワックス、例えばミツロウ、シェラックワックス、鯨ロウ、羊毛ワックスおよび尾脂である。水添ワックスを使用することが有益な場合もある。
【００５１】
本発明で使用することができる天然ワックスには、例えばセレシンおよびオゾケライトなどの鉱ロウ、またはパラフィンワックス（例えばワセリン）およびマイクロワックスなどの石油化学ワックスも含まれる。他の好適なワックス成分は、例えばモンタンエステルワックス、サソールワックスおよび水添ホホバワックスなどの化学修飾ワックスである。本発明で使用することができる合成ワックスには、例えばワックス様ポリアルキレンワックスおよびシリコーンワックスが含まれる。
【００５２】
合成ワックス、より具体的には天然物由来でも合成物由来でもよいC6-30脂肪酸とC6-30脂肪アルコールとのエステルも、本発明に従って使用することができる。脂肪酸成分と脂肪アルコール成分はどちらも直鎖また分枝鎖および飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和であることができる。
【００５３】
ワックス成分は、好ましくは、植物性もしくは動物性ワックスおよび／またはパラフィンワックスあるいはこれらのワックスの混合物からなる群より選択される。
ミツロウおよびホホバ油は特に好ましいワックス成分である。
【００５４】
もう1つの好ましい実施形態として、本発明の口腔および歯ケア製剤は、さらなる活性成分、例えば抗齲蝕成分、再石灰化成分、香味成分ならびに他の抗微生物剤および／または歯石抑制剤またはこれら活性成分の組合せなども含有することができる。
【００５５】
抗齲蝕成分
齲蝕の抑制および予防に適した成分は、とりわけ、フッ素量にして0.1〜0.5wt％の量のフッ素化合物、好ましくはフッ化物またはモノフルオロホスフェートの群から選択されるものである。好適なフッ素化合物は、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸二ナトリウム（Na2PO3F）、モノフルオロリン酸二カリウムまたは有機アミノ化合物のフッ化物などである。本発明に関して、有機アミンフッ化物とは、例えばフッ化アンモニウム、セチルアミンフッ化水素酸塩およびビス（ヒドロキシエチル）-アミノプロピル-N-ヒドロキシエチルオクタデシルアミン二フッ化水素酸塩などである。
【００５６】
本発明の特に好ましい一実施形態では、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムまたは有機アミンフッ化物が、口腔および歯ケア製剤に添加される。
【００５７】
抗微生物成分
好適な抗微生物成分は、例えばフェノール類、レゾルシノール類、ビスフェノール類、サリチルアニリド類およびサリチルアミド類ならびにそのハロゲン化誘導体、ハロゲン化カルバニリド類、およびp-ヒドロキシ安息香酸エステル類などである。
【００５８】
抗微生物成分のうち、歯垢細菌の成長を抑制するものは特に好適である。例えば、2,4--ジクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、2,4,4’-トリブロモ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル（トリクロサン）などのハロゲン化ジフェニルエーテルは好適な抗微生物剤である。ブロモクロロフェン、フェニルサリチル酸エステルおよび5-アミノ-1,3-ビス-（2-エチルヘキシル）-ヘキサヒドロ-5-メチルピリミジン（ヘキセチジン）の他に、亜鉛イオンおよび銅イオンも抗微生物活性を持ち、特にヘキセチジンおよびトリクロサンとの組合せでは相乗作用が生じる。例えば塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ドミフェンおよび塩化デカリニウムなどの4級アンモニウム化合物も使用することができる。オクタピノール、オクテニジンおよびサンギナリンも抗微生物活性を持つことがわかっている。抗微生物成分は、好ましくは、0.01〜1wt％の量で本発明の製剤に使用される。特に好ましい一実施形態では、Irgacare（登録商標）MP を0.01〜0.3wt％の量で使用する。
【００５９】
歯石抑制剤
歯石は天然エナメル質によく似た無機沈着物によって形成される。歯石の形成を抑制するために、結晶核の形成に選択的に関与し、既に存在する核がさらに成長するのを妨げる物質を、本発明の口腔および歯ケア製剤に添加する。そのような物質は、例えば、好ましくはトリポリホスフェート、ピロホスフェート、トリメタホスフェートまたはそれらの混合物からなる群より選択される縮合ホスフェートである。これらは、そのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形態で使用され、好ましくはそのナトリウム塩またはカリウム塩の形態で使用される。これらのリン酸塩の水溶液は、通例、アルカリ性反応を示すので、本発明の口腔および歯ケア製剤のpHは、要すれば、酸の添加により7.5〜9の値に調節される。この酸は、例えばクエン酸、リン酸またはNaH2PO4などの酸性塩から選択することができる。しかし、口腔および歯ケア製剤に要求されるpHは、縮合ホスフェートの酸性塩、すなわち例えばK2H2P2O7などを添加することによって調節することもできる。
【００６０】
様々な縮合ホスフェートおよび／または縮合ホスフェートの水和塩の混合物も、本発明に従って使用することができる。歯石抑制剤は、通常、0.1〜5wt％の量で、好ましくは0.1〜3wt％の量で、より具体的には0.1〜2wt％の量で、本発明の製剤中に使用される。
【００６１】
他の好適な歯石抑制剤は、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸（Na塩）などの有機ホスホネートおよびクエン酸亜鉛である。
【００６２】
再石灰化成分
本発明の製剤は、好ましくは、エナメル質の再石灰化を促進して歯損傷部を閉じることができる成分も含有する。これらの成分は通常、0.1〜10wt％、好ましくは0.1〜5wt％、より具体的には0.1〜3wt％の総量で存在する。再石灰化成分には、例えばフッ化物、カルシウムのリン酸塩、例えばグリセロリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ヒドロキシルアパタイト、フルオロアパタイト、Fドープ・ヒドロキシルアパタイト、リン酸二カルシウム二水和物およびフッ化カルシウムなどが含まれる。しかし、マグネシウム塩、例えば硫酸マグネシウム、フッ化マグネシウムまたはモノフルオロリン酸マグネシウムなども、再石灰化作用を持つ。
【００６３】
香味成分
本発明の製剤は、好ましくは、例えば甘味剤および／または着香油を含む香味成分を含有する。好適な甘味剤は、例えばサッカリネート（より具体的にはサッカリン酸ナトリウム）、シクラメート（より具体的にはシクラミン酸ナトリウム）およびスクロース、ラクトース、マルトースまたはフルクトースである。好適な着香油は、口腔および歯ケア製剤に典型的に用いられる任意の天然および合成香料である。天然香料は、薬物から分離された精油の形態でも、そこから単離された個々の成分の形態でも、使用することができる。歯磨剤は、好ましくは、ハッカ油、スペアミント油、アニス油、シキミ油、カラウェー油、ユーカリ油、ウイキョウ油、ケイ皮油、チョウジ油、ゲラニウム油、セージ油、ピメント油、タイム油、マヨラナ油、メボウキ油、柑橘油、ゴールテリア油、またはそれらから単離されるまたは合成的に製造されるこれら油の1以上の成分からなる群より選択される少なくとも1つの着香油を含有すべきである。上述した油の最も重要な成分は、例えばメントール、カルボン、アネトール、シネオール、オイゲノール、シンナムアルデヒド、カリオフィレン、ゲラニオール、シトロネロール、リナロール、サルビア、チモール、テルピネン、テルピネオール、メチルカビコールおよびサリチル酸メチルである。他の好適な香料は、例えば酢酸メンチル、バニリン、イオノン、酢酸リナリル、ロジノールおよびピペリトンである。
【００６４】
本発明の口腔および歯ケア製剤を、練り歯磨き、ゲル歯磨きまたは液体透明歯清浄製剤として製剤化する場合、それらはもう1つの成分として少なくとも1つの研磨剤を含有する。
【００６５】
研磨剤は未石灰化歯垢の機械的除去に使用され、理想的には、エナメル質および象牙質にはごくわずかな摩耗（摩耗作用）および損傷しか与えずに、歯表面の磨き（磨き作用）をもたらすべきである。研磨剤の研磨挙動は、主として、その硬さ、粒径分布および表面構造によって決まる。したがって、適切な研磨剤を選択する際には、高い清浄能力と最小の摩耗性とを併せ持つものが、特に好ましいだろう。現在主に使用されている研磨剤は、鋭い角および縁をほとんど持たない粒径の小さい物質である。
【００６６】
通常、水溶性無機材料が研磨剤または磨き剤として使用される。1〜200μm、好ましくは1〜50μm、より具体的には1〜10μmの平均粒径を持つ極細粒子磨き剤を使用することは、特に有益である。
【００６７】
原則として、本発明の磨き剤は、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリケート、有機ポリマーまたはそれらの混合物から選択することができる。しかし、いわゆるメタホスフェートおよびカルシウム含有磨き成分も、5wt％までの量で本発明の製剤に存在してよい。
【００６８】
本発明の好ましい一実施形態では、磨き剤としてシリカを練り歯磨きまたは液体歯清浄製剤に使用する。基本的にシリカ磨き剤は、シリカゲル、シリカヒドロゲルおよび沈降シリカに分類される。沈降シリカおよびシリカゲルは、本発明の目的には特に好ましい。なぜなら、それらはその製造時に広く変更を加えることができ、フッ化物成分とは特に適合性が高いからである。また、これらはゲル状または液状の歯磨きクリームの製造にも、特に適している。
【００６９】
シリカゲルは、ケイ酸ナトリウム溶液を強い鉱酸水溶液と反応させてヒドロゾルを形成させ、熟成してヒドロゲルを形成させ、洗浄し、乾燥することによって得られる。乾燥を穏やかな条件下で含水量15〜35wt％まで行うと、例えばUS4,153,680などに記載のいわゆるシリカヒドロゲルが得られる。これらのシリカヒドロゲルを含水量15wt％未満に乾燥すると、緩かったヒドロゲルの構造がいわゆるキセロゲルの密な構造へと不可逆的な収縮を起こす。シリカキセロゲルは例えばUS3,538,230に記載されている。
【００７０】
もう1つの特に好適なシリカ磨き剤群はは沈降シリカである。沈降シリカは、ゾルおよびゲルへの凝集を妨げるような条件下で強酸を添加して、シリカを希ケイ酸アルカリ金属溶液から沈降させることによって得られる。沈降シリカの好適な製造方法は、例えばDE-OS2522586およびDE-OS3114493に記載されている。本発明の目的にとって特に好適な沈降シリカは、DE-OS3114493に従って製造されるものであり、これは15〜110m2／gの BET 表面積、0.5〜20μmの粒径（一次粒子の少なくとも80wt％は5μm未満のサイズを持つべきである）および30％グリセロール／水（1：1）分散液の形態で30〜60Pa・s（20℃）の粘度を持ち、練り歯磨きを基準にして10〜20wt％の量で使用される。また、特に好適なこのタイプの沈降シリカは、丸まった角および縁を持ち、Sident（登録商標）12DS（Degussa）の名称で市販されている。
【００７１】
このタイプの他の沈降シリカは、Sident 8（Degussa）およびSorbosil AC39（Crosfield Chemicals）である。これらのシリカは増粘作用が弱く、BET 比表面積が40〜75m2／gで平均粒径が8〜14μmとわずかに大きい点が特徴であり、液状歯磨きクリームには特に適している。これらは10〜100Pa・sの粘度（25℃、剪断速度 D＝10s-1）を持つべきである。
【００７２】
また、Zeodent（登録商標）タイプ（Huber Corp.）、Tixosil（登録商標）タイプ（Rhodia）および他のSorbosilタイプのシリカを、本発明の製剤に使用することもできる。Zeodent（登録商標）113、Tixosil（登録商標）123および73ならびにSorbosil（登録商標）AC33は、特に好ましい。
【００７３】
これに対して、100Pa・s（25℃、D＝10s-1）を超える明らかに高い粘度を持つ練り歯磨きには、十分に高いパーセンテージの粒径5μm 未満のシリカ、好ましくは少なくとも3wt％の粒径1〜3μmのシリカが必要である。したがって、そのような練り歯磨きには、上述の沈降シリカの他に、150〜250ｍ2／g のBET表面積を持つ、さらに細かい、いわゆる増粘性シリカを加える。上記の要件を満たす市販品の例は、特にSipernat（登録商標）22LSまたはSipernat（登録商標）320DS（Degussaの製品）である。
【００７４】
好ましい酸化アルミニウム磨き剤は、種々のいわゆるγ-酸化アルミニウム変態含量がα-酸化アルミニウムの少なくとも10wt％である弱焼成アルミナである。
【００７５】
好適な弱焼成アルミナは、水酸化アルミニウムから焼成によって製造される。水酸化アルミニウムは、焼成により、約1200℃を超える温度で、熱力学的に安定なα-Al2O3に変換される。400〜1000℃の温度で生じる熱力学的に不安定なAl2O3変態はガンマ型として知られている（Ullmann, Enzyclopaedie der technischen Chemie, 4th Edition （1974）, Vol. 7, p. 298参照）。適当な焼成温度および焼成時間を選択することにより、焼成度、すなわち熱力学的に安定なα-Al2O3への変換を、要求に応じて調節することができる。弱い焼成は、あるγ-Al2O3含量を持つアルミナを与えるが、そのγ-Al2O3含量は、焼成温度が高いほど、そして焼成時間が長いほど、低くなる。弱焼成アルミナは、集塊の硬さが低い点、比表面積が大きい点、および細孔容積が大きい点で、純粋なα-Al2O3とは異なる。
【００７６】
本発明で使用される、10〜50wt％のγ-Al2O3含量を持つ比較的弱く焼成されたアルミナの象牙質摩耗（RDA）は、高度に焼成された純粋なα-Al2O3の象牙質摩耗の30〜60％でしかない（唯一の磨き成分として20wt％のアルミナを含有する標準的練り歯磨きで測定した場合）。
【００７７】
α-Al2O3とは対照的に、γ-Al2O3はアリザリンS（1,2-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノン-4-スルホン酸）の水／アンモニア性溶液で赤く着色することができる。「可染性」の度合いは、焼成度の尺度または焼成アルミナ中のδ-Al2O3含有率の尺度として選択することができる。Al2O3約1g、2g／l アリザリン S 水溶液10mlおよび10wt％ NH3水溶液3滴を試験管に投入し、短時間煮沸する。次に、そのAl2O3を濾別し、洗浄し、乾燥し、顕微鏡で調べるか、比色計で評価する。
【００７８】
10〜50wt％のγ-Al2O3含量を持つ好適な弱焼成アルミナは、この方法により、淡〜深ピンク色に着色することができる。
【００７９】
例えば Giulin-ChemieまたはALCOAの「Poliertonerde」など、様々な焼成度、粒度および嵩密度を持つ酸化アルミニウム粒子が市販されている。
特に好適な等級「Poliertonerde P10 feinst」は20μm未満の集塊サイズ、0.5〜1.5μmの平均一次結晶サイズおよび500〜600g／lの嵩密度を持つ。
【００８０】
本発明によれば、シリケートも磨き成分として好ましく使用することができる。特に現在の実情では、シリケートが研磨剤として用いられている。本発明での使用に適したシリケートの例は、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸ジルコニウムである。ある特定実施形態では、Na12（AlO2）12（SiO2）12・7H2Oという実験式を持つケイ酸アルミニウムナトリウム、例えば合成ゼオライトAが、磨き剤として好適でありうる。
【００８１】
本発明における水不溶性メタホスフェートの例は、とりわけメタリン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物およびピロリン酸カルシウムである。
【００８２】
また、本発明では、炭酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウムまたは炭酸水素ナトリウムも、磨き成分として、特に他の磨き剤との混合物の形態で使用することができる。
【００８３】
本発明の口腔および歯ケア製剤は、好ましくは、とりわけ以下に挙げるものを含めて、いくつかの他の成分を含有することができる。
・ビタミン類、例えばレチノール、ビオチン、トコフェロール、アスコルビン酸およびそれらの誘導体（例えばエステル類、塩類）。
・顔料、例えば二酸化チタンまたは酸化亜鉛。
・有色顔料粒子、例えば、Sorbosil（登録商標）BFG51、BFG52およびBFG53またはSorbosil（登録商標）2352などの名称で市販されている有色シリカ粒子。異なる色の顔料粒子の混合物も使用することができる。例えば明るい橙色、赤色または青色などの、このようなシリカゲル粒子は、0.1〜1.0wt％の量で、本発明の製剤中に存在しうる。
・漂白剤。
・着色料。
・pH 調節剤および緩衝剤、例えばクエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムまたはリン酸カリウムおよびリン酸ナトリウム。
・安息香酸ナトリウム。
・創傷治癒および炎症抑制成分、例えばアラントイン、尿素、パンテノール、アズレンまたはカミツレ抽出物、アセチルサリチル酸誘導体、チオシアネート、過酸化水素など。
・硫酸亜鉛および硫酸マンガン。
【００８４】
他の随意成分およびそれらの使用量に関する詳細は、専門家に知られる便覧、例えばK. Schrader「Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika」第2版、1989、Dr. Alfred Huethig Verlag、ハイデルベルク、およびW.Umbach「Kosmetik: Entwicklung, Herstellung und Anwendung kosmetischer Mittel」第2版、Thieme Verlag、シュトゥットガルト 1995などに見いだすことができる。
【００８５】
本発明の口腔および歯ケア製剤は、日常の非治療的美容的処置剤と見なされることが意図される。歯を清浄し、変色および食べ物の残り糟を除去し、それにより歯の美容的外観をより美しく快いものにする。
【００８６】
第2の実施形態として、本発明は、ヒト歯の変色を軽減および予防するための非治療的方法であって、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤を日常の口腔および歯ケアに使用する方法に関する。
【００８７】
第3の実施形態として、本発明は、歯石および歯垢を抑制するための非治療的方法であって、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤を日常の口腔および歯ケアに使用する方法に関する。
【００８８】
第4の実施形態として、本発明は、ヒト歯の変色を軽減および予防することを目的とする、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せの非治療的使用に関する。
【００８９】
第5の実施形態として、本発明は、歯石および歯垢の抑制を目的とする、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せの非治療的使用に関する。
【００９０】
以下の実施例は本発明を例示するものである。
実施例
1）歯の増白作用または変色の軽減
特定の染色および測定方法を使って、ウシ歯に対してインビトロで、変色軽減作用または増白作用を実証した。
【００９１】
試薬類
ティーバッグ／オストフリーゼンブレンド
材料および装置
グレイワックス（Kerr）
サンプルホルダ
着色用のプラスチック盤（直径22cm）
着色用盤用のプラスチック製トレイ（18×5×3.5）
最大5個の盤を動かすためのモーターを備えた器具
Dr. Lange「Microcolor」比色測定装置
【００９２】
試験の説明
ウシ門歯を切断して、7×7mmの面積を持つ唇側の平坦なスラブにする。そのスラブを、エナメル質表面だけが露出されるように、サンプルホルダの中央にワックスで固定する。エナメル質表面を研磨紙（600番）で均等にこすって、凹凸および不純物を除去する。
全ての実験に Dr. Lange Microcolor比色測定装置を使用する。
【００９３】
サンプルに Standard Light Type D65（＝昼光）の光を当てた。スラブ表面全体を測定した。迷光が測定中に侵入するのをスクリーンによって防いだ。
DIN6174に従う明度値 L*を、サンプルの変色または変色抑制作用を評価するための試験指標として使用した。
【００９４】
各群4枚のスラブをプラスチック製トレイに、エナメル質面を上にして置き、40gの洗口剤で覆うか、蒸留水40gに懸濁した歯磨きクリーム10gの遠心分離物で覆った。活性成分溶液による処理は毎日朝夕2回ずつ行った。
【００９５】
室温で5分間の接触時間後に蒸留水の流水でスラブをよく濯ぎ、次に着色用盤に載せ、着色槽の中で2r.p.mで動かした。着色槽は、3gのティーバッグを300mlの水中で煮出すことによって毎日2回新たに調製した。その後、茶を10分間浸出させた。各回のティーバッグ交換の前に、スラブを蒸留水で濯ぎ、その後、さらにセルロースで拭いて乾燥させることにより、緩く付着している被覆物を除去した。この処理を10日間実行した。
【００９６】
10日目に茶による最後の着色を行った後、サンプルの明度値 L*を測定し、出発値との相違を測定し、平均値を計算した。
【００９７】
2）歯石および歯垢抑制作用
ヒドロキシルアパタイトの結晶成長を測定することによって歯石および歯垢抑制作用を試験した。
過飽和したリン酸Ca溶液にヒドロキシルアパタイトを添加することにより、次式に従って結晶化を開始させた。
活性成分によって影響されうる結晶成長速度を、アルカリによる滴定で測定した。
装置
サーモスタット
磁気撹拌機および磁気撹拌子
自動ビュレット25ml（ABU 80 Radiometer）
pH 計（82 Radiometer）
pH 電極（N61 Schott）
滴定装置（TTT80 Radiometer）
サーボグラフ（Rec 80 Radiometer）
遠心機、ガラス製遠心管
ガラス製ビーカー：
800ml二重壁
200ml
ピペット：10ml
メスシリンダー：500ml
ビュレット：50ml
【００９８】
概要
0.0008M KH2PO4溶液400mlおよび0.012M CaCl2溶液45mlを、サーモスタットで37℃に調温した反応槽に投入した。次に、その混合溶液を、0.05M KOHでpH7.4まで滴定した。pHが安定状態を15分間保ったら、アパタイト100mgを添加し、全体を撹拌しながらpH7.4で2時間滴定した。KOHの消費量をサーボグラフにより、時間の関数として記録した。
【００９９】
製剤の調製
練り歯磨き20gおよび脱イオン水80gからなる練り歯磨きスラリーを15分間よく撹拌した後、遠心分離した。この透明溶液10mlをリン酸Ca溶液に添加し、pHを7.4に調節してから、アパタイト100mgを添加した。
洗口剤の試験では、洗口剤10gをリン酸Ca溶液に添加した。
【０１００】
試験評価
練り歯磨きなしの曲線を、抑制率0％のゼロ曲線として評価した。ゼロ曲線のKOH消費量を2時間後に読取り、練り歯磨き溶液の消費量と比較した。
【数１】
％I＝抑制百分率
AN＝ゼロ曲線の消費量
AZ＝練り歯磨き溶液の消費量
【０１０１】
以下の試験混合物を調製した（量はいずれも、別段の表示がない限り、wt％である）：
【表１】
【０１０２】
結果
サンプルDだけ、すなわちAHP、キサンタンガム（Keltrol F）およびジグルコン酸クロルヘキシジンの三成分組合せを持つ製剤だけが、増白作用を持つ。
【０１０３】
【表２】
【０１０４】
結果
製剤安定性は、0.1％以上のKeltrol（キサンタンガム）濃度でのみ保証され、それより低いKeltrol濃度では沈殿が生じる。
【０１０５】
【表３】
【０１０６】
結果
この組成でも、変色抑制作用は、ポリマー成分カルボキシメチルセルロースを添加することによってのみ得られる。
【０１０７】
実施例では以下の原材料および市販品を使用した。
1 Degussaが20％溶液として市販しているもの。
2 INCI名：Lauryl Glucoside（ラウリルグルコシド）；AS：50〜53％、Cognisが市販しているもの。
3 INCI名：Xanthan Gum（キサンタンガム）、CP Kelcoが市販しているもの。
4 INCI名：Disodium Azacycloheptane Diphosphonate（アザシクロヘプタンジホスホン酸二ナトリウム）、Albright & Wilson が市販しているもの
5 INCI名：PEG-60 Hydrogenated Castor Oil（PEG-60硬化ヒマシ油）、Goldschmidtが市販しているもの。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ヒト歯の変色の軽減および抑制ならびに歯石および歯垢の抑制に寄与することができる活性成分組合せに基づく口腔および歯ケア製剤に関する。
【背景技術】
【０００２】
現在の口腔および歯ケア製剤は、とりわけ、食べ物の残り糟、変色および固着した歯垢を、歯表面から洗浄し取り除くために用いられている。特に歯垢は歯石形成の元であり、そして歯石は、歯肉の炎症、出血（歯肉炎）および齲蝕の発生および蔓延をもたらす。
【０００３】
したがって歯および歯肉を健康に保つには、細菌被覆物を適当な歯ケアによって絶えず定量的に除去しておく必要がある。理想的には、口腔および歯ケア製剤は、特殊な添加剤により、歯垢および歯石の形成を完全に抑制するべきである。
【０００４】
上述の課題を解決するために、これまで、様々な努力がなされてきた。例えば、ある種の抗菌成分は、練り歯磨きおよび洗口剤の添加剤として、歯肉の炎症を和らげる能力を持つことが、文献から知られている。これに関して、クロルヘキシジンは、古くから、非常に有効な抗菌剤として知られてきた。クロルヘキシジンの作用は、これが口腔において、ある種の徐放作用または長期作用に匹敵する高い保持レベルを示すことに基づいている。
【０００５】
しかし従来、クロルヘキシジンを長期間使用した場合の問題は、とりわけ茶、珈琲および赤ワインなどの様々な食品に含まれるポリフェノール類のクロルヘキシジン誘発性沈着を原因とする変色が、口内に生じることだった。これらの変色は特に歯では美観を損ね、通例、消費者には受け入れられない。したがってクロルヘキシジンは、口腔および歯ケア製剤ではかなり有効であるにもかかわらず、長期間は通常使用されない。
【０００６】
EP304627B1では、クロルヘキシジンとアルキルポリグリコシドとの相乗的組合せによって、変色の問題に取り組む試みがなされた。これら2成分の作用の相乗的増加により、変色の問題が明らかに軽減される程度にクロルヘキシジン含量を低下させることができた。しかし、より有効な歯垢の除去または抑制に、画期的進歩があったわけではない。
【０００７】
EP480811A1では、陽イオン性抗菌剤を抗歯石剤（好ましくはアザシクロアルカンジホスホン酸塩）と組み合わせることによって、歯石および歯垢を減少させる試みがなされた。しかし、クロルヘキシジン濃度が高いため、この製剤の常用による変色の問題を解決することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
したがって、例えば変色などの先行技術の欠点を許容しなくても歯垢および歯石の形成を抑制および／または軽減することができる口腔および歯ケア製剤は、今なお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
全く驚くべきことに、活性成分の特殊な組合せにより、変色軽減および抑制作用だけでなく、強力な歯石抑制作用および抗歯垢作用も得られることを、ここに見いだした。
【００１０】
本発明は、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤に関する。
【００１１】
本発明に関して、陽イオン性抗菌成分とは、ビスビグアニド誘導体であると解される。化合物クロルヘキシジンおよびアレキシジンは特に好ましい。これら2つの化合物は、好ましくは、生理的に適合するそれらの水溶性塩の形態で、本口腔および歯ケア製剤に使用される。そのような塩は、例えば、クロルヘキシジンまたはアレキシジンの酢酸塩、グルコン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩、亜硫酸水素塩、フッ化物、ソルビン酸塩、サリチル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、エチレンジアミノ四酢酸塩、イミノ二酢酸塩、ケイ皮酸塩、チオシアン酸塩、アルギン酸塩、安息香酸塩およびグルタル酸塩である。
【００１２】
本発明での使用に適した他の抗菌性ビグアニド化合物は、例えば、Vantocil（登録商標）IBタイプ（ICI）のポリヘキサメチレンビグアニド化合物、DE-A-1964196によって知られる1,6-ビス-（4-クロロベンジルビグアニド）-ヘキサン（フルオルヘキシジン）、US-A-2,684,924、US-A-2,990,425、US-A-3,468,898、US-A-4,022,834、US-A-4,053,636および US-A-4,198,392によって知られる抗菌性ビグアニド化合物である。
【００１３】
本発明のとりわけ好ましい一実施形態では、ジグルコン酸クロルヘキシジンを抗菌成分として口腔および歯ケア製剤に使用する。
【００１４】
抗菌成分（A）は、製剤の総重量に基づいて、0.001〜3wt％の量で、好ましくは0.01〜1wt％の量で、より具体的には0.01〜0.2wt％の量で、本発明の口腔および歯ケア製剤に使用される。
【００１５】
本発明によれば、抗歯石成分（B）は、式（I）：
【化１】
［式中、n は3〜5の整数であり、R は水素または C1-4アルキル基であり、X は水素、アンモニウム、置換アンモニウム塩、例えばモノ-、ジ-もしくはトリ-エタノールアンモニウム塩、またはアルカリ金属イオン、例えばナトリウムイオンもしくはカリウムイオンであって、同時に水素を表す X 基は多くて3個である］
に相当する化合物から選択される。
【００１６】
2,2-ジホスホノ-1-アザシクロアルカンは、多価金属イオン、より具体的には二価および三価金属イオンの優れた金属イオン封鎖剤である。これらはアルカリ土類金属イオンの錯化剤として特に適している。
【００１７】
本発明のとりわけ好ましい一実施形態では、アザシクロヘプタン-2,2-ジホスホン酸またはアザシクロヘプタン-2,2-ジホスホン酸の生理的に適合する塩、例えばナトリウム塩を、本発明の口腔および歯ケア製剤に抗歯石成分として使用する。
【００１８】
抗歯石成分（B）は、製剤の総重量に基づいて、0.001〜5wt％の量で、好ましくは0.01〜3wt％の量で、より具体的には0.05〜2wt％の量で、本発明の口腔および歯ケア製剤に使用される。
【００１９】
本発明による活性成分組合せの第3必須成分（C）は結合剤である。
本発明の目的に使用することができる結合剤は、キサンタンガムおよびカルボキシメチルセルロースである。これらは通常、製剤の総重量に基づいて、少なくとも0.01wt％の量で、より具体的には0.05〜2wt％の量で使用される。
【００２０】
本発明の好ましい一実施形態では、稠度調節作用を持つと共に液体成分と固体成分との分離を防止する他の結合剤または増粘剤を、本発明の口腔および歯ケア製剤に加えることができる。
それらは、0.1〜5wt％、好ましくは0.1〜3wt％、より具体的には0.5〜2wt％の量で、本発明の製剤に使用される。
【００２１】
アルギネート、カラギーナン、寒天、グアーガム、アラビアガム、スクシノグリカンガム、グアー粉末、ローカストビーンガム、トラガカント、カラヤガム、ペクチン、ヒドロキシエチルセルロースまたはメチルヒドロキシプロピルセルロース、疎水化セルロース、デンプンおよびデンプンエーテルなどの天然および／または合成水溶性ポリマーが、本発明に従って使用される。
【００２２】
水溶性カルボキシビニルポリマー（例えばCarbopol（登録商標）タイプ）、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよび比較的高分子量のポリエチレングリコール（より具体的には102〜106Dの分子量を持つもの）も、好適な結合剤または増粘剤である。層状ケイ酸塩および微粒子シリカ（エアロゲルシリカおよび発熱性シリカ）もこの機能を果たすことができる。
【００２３】
好ましい他の結合剤または増粘剤は、例えば J. Rettenmaier & Soehneにより、Arbocel（登録商標）およびVitacel（登録商標）という名称で販売されている水不溶性非誘導体化セルロースである。本発明に関して、水不溶性とは、20℃の水で1wt％未満の溶解度、すなわち20℃の飽和溶液100g に溶解しているセルロースが1wt％未満であることを意味する。
【００２４】
揺変性を持つセルロース粉末の高粘度ペーストであるArbocel（登録商標）CGP5000は、低濃度で使用した場合でも強い稠度付与性を持ち、イオン性成分に対して不活性であり、他の増粘剤と容易に併用することができる、とりわけ有効な増粘剤である。
【００２５】
本発明の好ましい一実施形態では、口腔および歯ケア製剤が、その洗浄性能および起泡挙動を改善するために、界面活性剤または界面活性剤混合物をさらに含有する。これらの界面活性剤または界面活性剤混合物は、口内における口腔および歯ケア製剤の迅速かつ完全な溶解および分布を促進すると同時に、歯垢（特に歯ブラシが届きにくい場所にある歯垢）の機械的除去を支援する。これらはまた、着香油などの水不溶性成分の混和を促進し、研磨剤の分散を安定化し、フッ化物の抗齲蝕作用を支援する。
【００２６】
原則として、陰イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤および両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤またはこれらの化合物の混合物を、界面活性剤として練り歯磨き製剤に使用することができる。本発明によれば、練り歯磨きは、好ましくは、陰イオン界面活性剤の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含有し、一方、洗口剤は、好ましくは、非イオン界面活性剤の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含有する。
【００２７】
界面活性剤または界面活性剤混合物は、通常、製剤の総重量に基づいて、0.1〜10wt％の量で、好ましくは0.3〜7wt％の量で、より具体的には1〜5wt％の量で、本発明の製剤に使用される。
【００２８】
陰イオン界面活性剤
良好な起泡作用を持つ好適な界面活性剤は、歯垢の細菌代謝に対してある種の酵素阻害作用も持つ陰イオン界面活性剤である。そのような陰イオン界面活性剤には、例えば、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、より具体的にはナトリウム塩の形態の、C8-18アルカンカルボン酸、直鎖アルキル基中に12〜16個の炭素原子を含有しかつ分子中に2〜6個のグリコールエーテル基を含有するアルキルポリグリコールエーテルスルフェート、直鎖アルカン-（C12-18）-スルホネート、スルホコハク酸モノアルキル-（C12-18）-エステル、硫酸化脂肪酸モノグリセリド、硫酸化脂肪酸アルカノールアミド、スルホ酢酸アルキル-（C12-16）-エステル、アシル基中に8〜18個の炭素原子を含有するアシルサルコシン、アシルタウリドおよびアシルイセチオネートが含まれる。
【００２９】
少なくとも1つの陰イオン界面活性剤、より具体的にはアルキル基中に12〜18個の炭素原子を含有するラウリルアルキル硫酸ナトリウムを使用することが好ましい。そのような界面活性剤の1つは、例えばTexapon（登録商標）K1296という名称で市販されているラウリル硫酸ナトリウムである。
【００３０】
両性イオンおよび両性界面活性剤
本発明の好ましい一実施形態では、両性イオン界面活性剤および／または両性界面活性剤を、好ましくは陰イオン界面活性剤と組み合わせて、使用することができる。両性イオン界面活性剤は、分子中に少なくとも1つの4級アンモニウム基と少なくとも1つのカルボキシレート基またはスルホネート基とを含有する表面活性化合物である。特に好適な両性イオン界面活性剤はいわゆるベタイン、例えば N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばトリメチルアンモニウムグリシネート、ココアルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばココアシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、および2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン（アルキル基またはアシル基中に8〜18個の炭素原子を含有する）、ならびにココアシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートである。Cocamidopropyl Betaine（コカミドプロピルベタイン）というCTFA 名で知られる脂肪酸アミド誘導体は特に好ましい。そのような生成物は例えばTego-Betain（登録商標）BL215および ZF50ならびにGenagen（登録商標）CABの名称で市販されている。
【００３１】
両性界面活性剤は、C8-18アルキル基またはアシル基に加えて分子中に少なくとも1つの遊離アミノ基と少なくとも1つの-COOH基または-SO3H基とを含有し、分子内塩を形成することができる、表面活性化合物である。好適な両性界面活性剤の例は、アルキル基中に8〜18個程度の炭素原子を含有するN-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸およびアルキルアミノ酢酸である。特に好ましい両性界面活性剤はN-ココアルキルアミノプロピオネート、ココアシルアミノエチルアミノプロピオネートおよび C12／18アシルサルコシンである。両性界面活性剤の他に4級乳化剤も好適であり、エステルクワト（esterquat）型のもの、好ましくはメチル4級化ジ脂肪酸トリエタノールアミンエステル塩は、特に好ましい。
【００３２】
非イオン界面活性剤
本発明によれば、非イオン界面活性剤は洗浄作用の支援に特に適している。特に好ましい非イオン界面活性剤は、以下の群の少なくとも1つから選択されるものである：
・8〜22個の炭素原子を含有する直鎖脂肪アルコール、12〜22個の炭素原子を含有する脂肪酸およびアルキル基中に8〜15個の炭素原子を含有するアルキルフェノールに、2〜30モルのエチレンオキシドおよび／または0〜5モルのプロピレンオキシドが付加した生成物。
・グリセロールに1〜30モルのエチレンオキシドが付加した生成物のC12／18脂肪酸モノエステルおよびジエステル。
・6〜22個の炭素原子を含有する飽和および不飽和脂肪酸のグリセロールモノエステルおよびジエステルならびにソルビタンモノエステルおよびジエステルならびにそのエチレンオキシド付加物。
・アルキル基中に8〜22個の炭素原子を含有するアルキルモノ-およびオリゴ-グリコシドならびにそのエトキシル化類似体。
・ヒマシ油および／または水添ヒマシ油に15〜60モルのエチレンオキシドが付加した生成物。
・ポリオールエステル、特にポリグリセロールエステル、例えばポリリシノール酸ポリグリセロール、ポリ-12-ヒドロキシステアリン酸ポリグリセロールおよびダイマー酸ポリグリセロール。
これらの群のいくつかから選択される化合物の混合物も好適である。
【００３３】
・ヒマシ油および／または水添ヒマシ油に2〜15モルのエチレンオキシドが付加した生成物。
・直鎖、分枝鎖、不飽和または飽和C6-22脂肪酸、リシノール酸および12-ヒドロキシステアリン酸と、グリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、糖アルコール（例えばソルビトール）、スクロース、アルキルグルコシド（例えばメチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド）およびポリグルコシド（例えばセルロース）とに基づく部分エステル。
・リン酸モノ-、ジ-およびトリ-アルキルならびにリン酸モノ-、ジ-および／またはトリ-PEG-アルキル、ならびにそれらの塩。
・羊毛ワックスアルコール。
・ポリシロキサン／ポリアルキルポリエーテルコポリマーおよび対応する誘導体。
・DE1165574PSに記載のペンタエリスリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪アルコールの混合エステル、および／またはC6-22脂肪酸、メチルグルコースおよびポリオール（好ましくはグリセロールおよびポリグリセロール）の混合エステル。ならびに
・ポリアルキレングリコール。
【００３４】
脂肪アルコール、脂肪酸、アルキルフェノール、脂肪酸のグリセロールモノエステルおよびジエステルならびにソルビタンモノエステルおよびジエステルまたはヒマシ油へのエチレンオキシドおよび／またはプロピレンオキシドの付加生成物は既知の市販品であり、本発明の目的に好ましい。これらは同族体混合物であり、その平均アルコキシル化度は付加反応を行なう際に使用するエチレンオキシドおよび／またはプロピレンオキシドの量と基質の量との比に相当する。エチレンオキシドとグリセロールとの付加物のC12-18脂肪酸モノエステルおよびジエステルは、DE2024051PSから化粧品用の脂質層強化剤として知られている。
【００３５】
C8-18アルキルモノ-およびオリゴ-グリコシド、その製造および使用は、例えばUS-A-3,839,318、DE-A-2036472、EP-A-77167またはWO-A-93／10132などの先行技術によって知られている。これらは特に、グルコースまたはオリゴ糖を、8〜18個の炭素原子を含有する1級アルコールと反応させることによって製造される。グリコシド単位に関する限り、環状糖単位がグリコシド結合によって脂肪アルコールに結合しているモノグリコシドと、好ましくは約8までのオリゴマー化度を持つグリコシドオリゴマーは、どちらも好適である。オリゴマー化度は、このような工業品に特有の同族体分布の統計学的平均値である。特に好適なアルキル（オリゴ）グリコシドは、式RO（C6H10O）x-H［式中、RはC12-14アルキル基であり、xは平均して1〜4の値である］に相当するものである。
【００３６】
本発明の口腔および歯ケア製剤に使用される特に好ましい界面活性剤は、CognisがPlantacare 1200 UP の名称で販売しているアルキルグリコシド（C12-16脂肪アルコール-1,4-グルコシド）である。
【００３７】
本発明の口腔および歯ケア製剤は、それらが乾燥するのを防ぎ、それらの稠度および低温安定性を調節するために、さらに湿潤剤を含有する。湿潤剤は、懸濁目的ならびに味および光沢に影響を与える目的でも使用することができる。
【００３８】
典型的に使用される湿潤剤は、毒物学的に安全なポリオール、例えばソルビトール、キシリトール、グリセロール、マンニトール、1,2-プロピレングリコールまたはそれらの混合物などである。200〜2000の分子量、より具体的には200〜1500の分子量を持つポリエチレングリコールも、湿潤剤成分として練り歯磨きに使用することができる。
【００３９】
いくつかの湿潤剤成分の組合せが好ましく使用される。グリセロールおよび／またはソルビトールと1,2-プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとの組合せは特に好ましいとみなすことができる。
【００４０】
キシリトールと湿潤剤グリセロールおよびソルビトールの一方または両方との組合せはもう1つの好ましい組合せであり、これには、湿潤剤としてのその機能の他に、キシリトールの抗齲蝕性からくる利点もある。
【００４１】
本発明の口腔および歯ケア製剤を洗口剤として製剤化する場合、それらは製剤の総重量に基づいて、0〜10wt％の量、好ましくは1〜5wt％の量のエタノールを、さらに含有することができる。
【００４２】
製剤のタイプに依存して、製剤全体には、10〜85wt％の量、好ましくは20〜70wt％の量、より具体的には30〜50wt％の量の湿潤剤または湿潤剤混合物が存在する。
【００４３】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明の製剤は、油／脂肪および／またはワックス成分を、さらに含有する。これらの成分は、それらを界面活性剤と併用した場合は特に、本発明の製剤に光沢および柔軟性を付与する。本発明の目的には、天然、化学修飾および合成ワックス、脂肪および油を、個別にまたは組み合わせて使用することができる。
【００４４】
油／脂肪およびワックス成分は、製剤全体に基づいて0.1〜10wt％の量、好ましくは0.5〜5wt％の量、より具体的には0.8〜3wt％の量で使用される。
【００４５】
油／脂肪
本発明に関して、油／脂肪は、天然物でも合成物でもよい液状または固形のモノ-、ジ-およびトリ-グリセリドならびに炭化水素およびシリコーン油であると解される。本発明によれば、油成分は、好ましくは、植物性でも動物性でも合成物由来でもよいトリグリセリドおよび／またはパラフィン油の群から選択される。
【００４６】
モノ-、ジ-およびトリ-グリセリドは、脂肪酸とグリセロールとのモノ-、ジ-およびトリ-エステル、すなわちアシルグリセロールである。グリセロールは同じまたは異なる脂肪酸または脂肪酸誘導体（例えばレシチン）でエステル化することができる。脂肪酸は好ましくはC6-30脂肪酸であり、これは飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸および分枝脂肪酸または非分枝脂肪酸のどれであってもよい。これには、とりわけ、グリセロールを、天然脂肪酸、例えばカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、2-エチルヘキサン酸、イソトリデカン酸、イソステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、エレオステアリン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ドコサヘキサン酸およびガドレイン酸ならびにそれらの工業用混合物（例えば天然油脂の加圧加水分解または不飽和脂肪酸の二量化などで得られる）でエステル化した生成物が含まれる。牛脂、ラッカセイ油、ナタネ油、綿実油、ダイズ油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、アーモンド油、ヒマシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、コルザ油、ゴマ油、カカオ脂およびヤシ脂などの天然油脂の使用は特に好適でありうる。例えば水添したダイズ油、ヒマシ油およびラッカセイ油などの水添油または硬化油も使用することができる。
【００４７】
低粘性および高粘性液状シリコーン油または天然および合成炭化水素、例えば低粘性もしくは高粘性液状パラフィン油、イソヘキサデカン、イソエイコサンまたはポリデセン、例えばEmery（登録商標）3004、3006、3010、Ethylflo（登録商標）またはNexbase（登録商標）2004Gなどの名称で入手することができるものも、本発明に従って使用することができる。
【００４８】
いわゆる逆脂肪（例えばビシナルトリカルボン酸とC6-30脂肪アルコールとのエステル）またはグリセロールトリアルキルエーテルも使用することができる。
【００４９】
ワックス
ワックスは、以下の性質を持つ天然または合成物質であると解される：ワックスは堅固または脆弱であり、稠度は硬く、粗結晶性ないし微結晶性で、透明または不透明であり、35℃を超える温度で分解せずに融解する。ワックスは、その融点をわずかに上回るだけで、低粘度かつ糸を引かない状態になり、温度依存性の高い稠度および溶解度を示す。
【００５０】
化学的には、ワックス群の最も一般的な代表例は、動物性および植物性の、脂肪酸と高級脂肪アルコールとのエステルである。本発明での使用に適したワックスは、天然植物性ワックス、例えばホホバ油、カンデリラワックス、カルナウバワックス、木ロウ、エスパルトグラスワックス、コルクワックス、グアルマワックス、米ぬかワックス、サトウキビワックス、オウリカリワックス、モンタンワックス、ヒマワリワックス、果実ワックス、例えばオレンジワックス、レモンワックス、グレープフルーツワックス、ヤマモモワックス、ならびに動物性ワックス、例えばミツロウ、シェラックワックス、鯨ロウ、羊毛ワックスおよび尾脂である。水添ワックスを使用することが有益な場合もある。
【００５１】
本発明で使用することができる天然ワックスには、例えばセレシンおよびオゾケライトなどの鉱ロウ、またはパラフィンワックス（例えばワセリン）およびマイクロワックスなどの石油化学ワックスも含まれる。他の好適なワックス成分は、例えばモンタンエステルワックス、サソールワックスおよび水添ホホバワックスなどの化学修飾ワックスである。本発明で使用することができる合成ワックスには、例えばワックス様ポリアルキレンワックスおよびシリコーンワックスが含まれる。
【００５２】
合成ワックス、より具体的には天然物由来でも合成物由来でもよいC6-30脂肪酸とC6-30脂肪アルコールとのエステルも、本発明に従って使用することができる。脂肪酸成分と脂肪アルコール成分はどちらも直鎖また分枝鎖および飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和であることができる。
【００５３】
ワックス成分は、好ましくは、植物性もしくは動物性ワックスおよび／またはパラフィンワックスあるいはこれらのワックスの混合物からなる群より選択される。
ミツロウおよびホホバ油は特に好ましいワックス成分である。
【００５４】
もう1つの好ましい実施形態として、本発明の口腔および歯ケア製剤は、さらなる活性成分、例えば抗齲蝕成分、再石灰化成分、香味成分ならびに他の抗微生物剤および／または歯石抑制剤またはこれら活性成分の組合せなども含有することができる。
【００５５】
抗齲蝕成分
齲蝕の抑制および予防に適した成分は、とりわけ、フッ素量にして0.1〜0.5wt％の量のフッ素化合物、好ましくはフッ化物またはモノフルオロホスフェートの群から選択されるものである。好適なフッ素化合物は、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸二ナトリウム（Na2PO3F）、モノフルオロリン酸二カリウムまたは有機アミノ化合物のフッ化物などである。本発明に関して、有機アミンフッ化物とは、例えばフッ化アンモニウム、セチルアミンフッ化水素酸塩およびビス（ヒドロキシエチル）-アミノプロピル-N-ヒドロキシエチルオクタデシルアミン二フッ化水素酸塩などである。
【００５６】
本発明の特に好ましい一実施形態では、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムまたは有機アミンフッ化物が、口腔および歯ケア製剤に添加される。
【００５７】
抗微生物成分
好適な抗微生物成分は、例えばフェノール類、レゾルシノール類、ビスフェノール類、サリチルアニリド類およびサリチルアミド類ならびにそのハロゲン化誘導体、ハロゲン化カルバニリド類、およびp-ヒドロキシ安息香酸エステル類などである。
【００５８】
抗微生物成分のうち、歯垢細菌の成長を抑制するものは特に好適である。例えば、2,4--ジクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、2,4,4’-トリブロモ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル（トリクロサン）などのハロゲン化ジフェニルエーテルは好適な抗微生物剤である。ブロモクロロフェン、フェニルサリチル酸エステルおよび5-アミノ-1,3-ビス-（2-エチルヘキシル）-ヘキサヒドロ-5-メチルピリミジン（ヘキセチジン）の他に、亜鉛イオンおよび銅イオンも抗微生物活性を持ち、特にヘキセチジンおよびトリクロサンとの組合せでは相乗作用が生じる。例えば塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ドミフェンおよび塩化デカリニウムなどの4級アンモニウム化合物も使用することができる。オクタピノール、オクテニジンおよびサンギナリンも抗微生物活性を持つことがわかっている。抗微生物成分は、好ましくは、0.01〜1wt％の量で本発明の製剤に使用される。特に好ましい一実施形態では、Irgacare（登録商標）MP を0.01〜0.3wt％の量で使用する。
【００５９】
歯石抑制剤
歯石は天然エナメル質によく似た無機沈着物によって形成される。歯石の形成を抑制するために、結晶核の形成に選択的に関与し、既に存在する核がさらに成長するのを妨げる物質を、本発明の口腔および歯ケア製剤に添加する。そのような物質は、例えば、好ましくはトリポリホスフェート、ピロホスフェート、トリメタホスフェートまたはそれらの混合物からなる群より選択される縮合ホスフェートである。これらは、そのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形態で使用され、好ましくはそのナトリウム塩またはカリウム塩の形態で使用される。これらのリン酸塩の水溶液は、通例、アルカリ性反応を示すので、本発明の口腔および歯ケア製剤のpHは、要すれば、酸の添加により7.5〜9の値に調節される。この酸は、例えばクエン酸、リン酸またはNaH2PO4などの酸性塩から選択することができる。しかし、口腔および歯ケア製剤に要求されるpHは、縮合ホスフェートの酸性塩、すなわち例えばK2H2P2O7などを添加することによって調節することもできる。
【００６０】
様々な縮合ホスフェートおよび／または縮合ホスフェートの水和塩の混合物も、本発明に従って使用することができる。歯石抑制剤は、通常、0.1〜5wt％の量で、好ましくは0.1〜3wt％の量で、より具体的には0.1〜2wt％の量で、本発明の製剤中に使用される。
【００６１】
他の好適な歯石抑制剤は、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸（Na塩）などの有機ホスホネートおよびクエン酸亜鉛である。
【００６２】
再石灰化成分
本発明の製剤は、好ましくは、エナメル質の再石灰化を促進して歯損傷部を閉じることができる成分も含有する。これらの成分は通常、0.1〜10wt％、好ましくは0.1〜5wt％、より具体的には0.1〜3wt％の総量で存在する。再石灰化成分には、例えばフッ化物、カルシウムのリン酸塩、例えばグリセロリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ヒドロキシルアパタイト、フルオロアパタイト、Fドープ・ヒドロキシルアパタイト、リン酸二カルシウム二水和物およびフッ化カルシウムなどが含まれる。しかし、マグネシウム塩、例えば硫酸マグネシウム、フッ化マグネシウムまたはモノフルオロリン酸マグネシウムなども、再石灰化作用を持つ。
【００６３】
香味成分
本発明の製剤は、好ましくは、例えば甘味剤および／または着香油を含む香味成分を含有する。好適な甘味剤は、例えばサッカリネート（より具体的にはサッカリン酸ナトリウム）、シクラメート（より具体的にはシクラミン酸ナトリウム）およびスクロース、ラクトース、マルトースまたはフルクトースである。好適な着香油は、口腔および歯ケア製剤に典型的に用いられる任意の天然および合成香料である。天然香料は、薬物から分離された精油の形態でも、そこから単離された個々の成分の形態でも、使用することができる。歯磨剤は、好ましくは、ハッカ油、スペアミント油、アニス油、シキミ油、カラウェー油、ユーカリ油、ウイキョウ油、ケイ皮油、チョウジ油、ゲラニウム油、セージ油、ピメント油、タイム油、マヨラナ油、メボウキ油、柑橘油、ゴールテリア油、またはそれらから単離されるまたは合成的に製造されるこれら油の1以上の成分からなる群より選択される少なくとも1つの着香油を含有すべきである。上述した油の最も重要な成分は、例えばメントール、カルボン、アネトール、シネオール、オイゲノール、シンナムアルデヒド、カリオフィレン、ゲラニオール、シトロネロール、リナロール、サルビア、チモール、テルピネン、テルピネオール、メチルカビコールおよびサリチル酸メチルである。他の好適な香料は、例えば酢酸メンチル、バニリン、イオノン、酢酸リナリル、ロジノールおよびピペリトンである。
【００６４】
本発明の口腔および歯ケア製剤を、練り歯磨き、ゲル歯磨きまたは液体透明歯清浄製剤として製剤化する場合、それらはもう1つの成分として少なくとも1つの研磨剤を含有する。
【００６５】
研磨剤は未石灰化歯垢の機械的除去に使用され、理想的には、エナメル質および象牙質にはごくわずかな摩耗（摩耗作用）および損傷しか与えずに、歯表面の磨き（磨き作用）をもたらすべきである。研磨剤の研磨挙動は、主として、その硬さ、粒径分布および表面構造によって決まる。したがって、適切な研磨剤を選択する際には、高い清浄能力と最小の摩耗性とを併せ持つものが、特に好ましいだろう。現在主に使用されている研磨剤は、鋭い角および縁をほとんど持たない粒径の小さい物質である。
【００６６】
通常、水溶性無機材料が研磨剤または磨き剤として使用される。1〜200μm、好ましくは1〜50μm、より具体的には1〜10μmの平均粒径を持つ極細粒子磨き剤を使用することは、特に有益である。
【００６７】
原則として、本発明の磨き剤は、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリケート、有機ポリマーまたはそれらの混合物から選択することができる。しかし、いわゆるメタホスフェートおよびカルシウム含有磨き成分も、5wt％までの量で本発明の製剤に存在してよい。
【００６８】
本発明の好ましい一実施形態では、磨き剤としてシリカを練り歯磨きまたは液体歯清浄製剤に使用する。基本的にシリカ磨き剤は、シリカゲル、シリカヒドロゲルおよび沈降シリカに分類される。沈降シリカおよびシリカゲルは、本発明の目的には特に好ましい。なぜなら、それらはその製造時に広く変更を加えることができ、フッ化物成分とは特に適合性が高いからである。また、これらはゲル状または液状の歯磨きクリームの製造にも、特に適している。
【００６９】
シリカゲルは、ケイ酸ナトリウム溶液を強い鉱酸水溶液と反応させてヒドロゾルを形成させ、熟成してヒドロゲルを形成させ、洗浄し、乾燥することによって得られる。乾燥を穏やかな条件下で含水量15〜35wt％まで行うと、例えばUS4,153,680などに記載のいわゆるシリカヒドロゲルが得られる。これらのシリカヒドロゲルを含水量15wt％未満に乾燥すると、緩かったヒドロゲルの構造がいわゆるキセロゲルの密な構造へと不可逆的な収縮を起こす。シリカキセロゲルは例えばUS3,538,230に記載されている。
【００７０】
もう1つの特に好適なシリカ磨き剤群はは沈降シリカである。沈降シリカは、ゾルおよびゲルへの凝集を妨げるような条件下で強酸を添加して、シリカを希ケイ酸アルカリ金属溶液から沈降させることによって得られる。沈降シリカの好適な製造方法は、例えばDE-OS2522586およびDE-OS3114493に記載されている。本発明の目的にとって特に好適な沈降シリカは、DE-OS3114493に従って製造されるものであり、これは15〜110m2／gの BET 表面積、0.5〜20μmの粒径（一次粒子の少なくとも80wt％は5μm未満のサイズを持つべきである）および30％グリセロール／水（1：1）分散液の形態で30〜60Pa・s（20℃）の粘度を持ち、練り歯磨きを基準にして10〜20wt％の量で使用される。また、特に好適なこのタイプの沈降シリカは、丸まった角および縁を持ち、Sident（登録商標）12DS（Degussa）の名称で市販されている。
【００７１】
このタイプの他の沈降シリカは、Sident 8（Degussa）およびSorbosil AC39（Crosfield Chemicals）である。これらのシリカは増粘作用が弱く、BET 比表面積が40〜75m2／gで平均粒径が8〜14μmとわずかに大きい点が特徴であり、液状歯磨きクリームには特に適している。これらは10〜100Pa・sの粘度（25℃、剪断速度 D＝10s-1）を持つべきである。
【００７２】
また、Zeodent（登録商標）タイプ（Huber Corp.）、Tixosil（登録商標）タイプ（Rhodia）および他のSorbosilタイプのシリカを、本発明の製剤に使用することもできる。Zeodent（登録商標）113、Tixosil（登録商標）123および73ならびにSorbosil（登録商標）AC33は、特に好ましい。
【００７３】
これに対して、100Pa・s（25℃、D＝10s-1）を超える明らかに高い粘度を持つ練り歯磨きには、十分に高いパーセンテージの粒径5μm 未満のシリカ、好ましくは少なくとも3wt％の粒径1〜3μmのシリカが必要である。したがって、そのような練り歯磨きには、上述の沈降シリカの他に、150〜250ｍ2／g のBET表面積を持つ、さらに細かい、いわゆる増粘性シリカを加える。上記の要件を満たす市販品の例は、特にSipernat（登録商標）22LSまたはSipernat（登録商標）320DS（Degussaの製品）である。
【００７４】
好ましい酸化アルミニウム磨き剤は、種々のいわゆるγ-酸化アルミニウム変態含量がα-酸化アルミニウムの少なくとも10wt％である弱焼成アルミナである。
【００７５】
好適な弱焼成アルミナは、水酸化アルミニウムから焼成によって製造される。水酸化アルミニウムは、焼成により、約1200℃を超える温度で、熱力学的に安定なα-Al2O3に変換される。400〜1000℃の温度で生じる熱力学的に不安定なAl2O3変態はガンマ型として知られている（Ullmann, Enzyclopaedie der technischen Chemie, 4th Edition （1974）, Vol. 7, p. 298参照）。適当な焼成温度および焼成時間を選択することにより、焼成度、すなわち熱力学的に安定なα-Al2O3への変換を、要求に応じて調節することができる。弱い焼成は、あるγ-Al2O3含量を持つアルミナを与えるが、そのγ-Al2O3含量は、焼成温度が高いほど、そして焼成時間が長いほど、低くなる。弱焼成アルミナは、集塊の硬さが低い点、比表面積が大きい点、および細孔容積が大きい点で、純粋なα-Al2O3とは異なる。
【００７６】
本発明で使用される、10〜50wt％のγ-Al2O3含量を持つ比較的弱く焼成されたアルミナの象牙質摩耗（RDA）は、高度に焼成された純粋なα-Al2O3の象牙質摩耗の30〜60％でしかない（唯一の磨き成分として20wt％のアルミナを含有する標準的練り歯磨きで測定した場合）。
【００７７】
α-Al2O3とは対照的に、γ-Al2O3はアリザリンS（1,2-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノン-4-スルホン酸）の水／アンモニア性溶液で赤く着色することができる。「可染性」の度合いは、焼成度の尺度または焼成アルミナ中のδ-Al2O3含有率の尺度として選択することができる。Al2O3約1g、2g／l アリザリン S 水溶液10mlおよび10wt％ NH3水溶液3滴を試験管に投入し、短時間煮沸する。次に、そのAl2O3を濾別し、洗浄し、乾燥し、顕微鏡で調べるか、比色計で評価する。
【００７８】
10〜50wt％のγ-Al2O3含量を持つ好適な弱焼成アルミナは、この方法により、淡〜深ピンク色に着色することができる。
【００７９】
例えば Giulin-ChemieまたはALCOAの「Poliertonerde」など、様々な焼成度、粒度および嵩密度を持つ酸化アルミニウム粒子が市販されている。
特に好適な等級「Poliertonerde P10 feinst」は20μm未満の集塊サイズ、0.5〜1.5μmの平均一次結晶サイズおよび500〜600g／lの嵩密度を持つ。
【００８０】
本発明によれば、シリケートも磨き成分として好ましく使用することができる。特に現在の実情では、シリケートが研磨剤として用いられている。本発明での使用に適したシリケートの例は、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸ジルコニウムである。ある特定実施形態では、Na12（AlO2）12（SiO2）12・7H2Oという実験式を持つケイ酸アルミニウムナトリウム、例えば合成ゼオライトAが、磨き剤として好適でありうる。
【００８１】
本発明における水不溶性メタホスフェートの例は、とりわけメタリン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物およびピロリン酸カルシウムである。
【００８２】
また、本発明では、炭酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウムまたは炭酸水素ナトリウムも、磨き成分として、特に他の磨き剤との混合物の形態で使用することができる。
【００８３】
本発明の口腔および歯ケア製剤は、好ましくは、とりわけ以下に挙げるものを含めて、いくつかの他の成分を含有することができる。
・ビタミン類、例えばレチノール、ビオチン、トコフェロール、アスコルビン酸およびそれらの誘導体（例えばエステル類、塩類）。
・顔料、例えば二酸化チタンまたは酸化亜鉛。
・有色顔料粒子、例えば、Sorbosil（登録商標）BFG51、BFG52およびBFG53またはSorbosil（登録商標）2352などの名称で市販されている有色シリカ粒子。異なる色の顔料粒子の混合物も使用することができる。例えば明るい橙色、赤色または青色などの、このようなシリカゲル粒子は、0.1〜1.0wt％の量で、本発明の製剤中に存在しうる。
・漂白剤。
・着色料。
・pH 調節剤および緩衝剤、例えばクエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムまたはリン酸カリウムおよびリン酸ナトリウム。
・安息香酸ナトリウム。
・創傷治癒および炎症抑制成分、例えばアラントイン、尿素、パンテノール、アズレンまたはカミツレ抽出物、アセチルサリチル酸誘導体、チオシアネート、過酸化水素など。
・硫酸亜鉛および硫酸マンガン。
【００８４】
他の随意成分およびそれらの使用量に関する詳細は、専門家に知られる便覧、例えばK. Schrader「Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika」第2版、1989、Dr. Alfred Huethig Verlag、ハイデルベルク、およびW.Umbach「Kosmetik: Entwicklung, Herstellung und Anwendung kosmetischer Mittel」第2版、Thieme Verlag、シュトゥットガルト 1995などに見いだすことができる。
【００８５】
本発明の口腔および歯ケア製剤は、日常の非治療的美容的処置剤と見なされることが意図される。歯を清浄し、変色および食べ物の残り糟を除去し、それにより歯の美容的外観をより美しく快いものにする。
【００８６】
第2の実施形態として、本発明は、ヒト歯の変色を軽減および予防するための非治療的方法であって、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤を日常の口腔および歯ケアに使用する方法に関する。
【００８７】
第3の実施形態として、本発明は、歯石および歯垢を抑制するための非治療的方法であって、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤を日常の口腔および歯ケアに使用する方法に関する。
【００８８】
第4の実施形態として、本発明は、ヒト歯の変色を軽減および予防することを目的とする、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せの非治療的使用に関する。
【００８９】
第5の実施形態として、本発明は、歯石および歯垢の抑制を目的とする、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せの非治療的使用に関する。
【００９０】
以下の実施例は本発明を例示するものである。
実施例
1）歯の増白作用または変色の軽減
特定の染色および測定方法を使って、ウシ歯に対してインビトロで、変色軽減作用または増白作用を実証した。
【００９１】
試薬類
ティーバッグ／オストフリーゼンブレンド
材料および装置
グレイワックス（Kerr）
サンプルホルダ
着色用のプラスチック盤（直径22cm）
着色用盤用のプラスチック製トレイ（18×5×3.5）
最大5個の盤を動かすためのモーターを備えた器具
Dr. Lange「Microcolor」比色測定装置
【００９２】
試験の説明
ウシ門歯を切断して、7×7mmの面積を持つ唇側の平坦なスラブにする。そのスラブを、エナメル質表面だけが露出されるように、サンプルホルダの中央にワックスで固定する。エナメル質表面を研磨紙（600番）で均等にこすって、凹凸および不純物を除去する。
全ての実験に Dr. Lange Microcolor比色測定装置を使用する。
【００９３】
サンプルに Standard Light Type D65（＝昼光）の光を当てた。スラブ表面全体を測定した。迷光が測定中に侵入するのをスクリーンによって防いだ。
DIN6174に従う明度値 L*を、サンプルの変色または変色抑制作用を評価するための試験指標として使用した。
【００９４】
各群4枚のスラブをプラスチック製トレイに、エナメル質面を上にして置き、40gの洗口剤で覆うか、蒸留水40gに懸濁した歯磨きクリーム10gの遠心分離物で覆った。活性成分溶液による処理は毎日朝夕2回ずつ行った。
【００９５】
室温で5分間の接触時間後に蒸留水の流水でスラブをよく濯ぎ、次に着色用盤に載せ、着色槽の中で2r.p.mで動かした。着色槽は、3gのティーバッグを300mlの水中で煮出すことによって毎日2回新たに調製した。その後、茶を10分間浸出させた。各回のティーバッグ交換の前に、スラブを蒸留水で濯ぎ、その後、さらにセルロースで拭いて乾燥させることにより、緩く付着している被覆物を除去した。この処理を10日間実行した。
【００９６】
10日目に茶による最後の着色を行った後、サンプルの明度値 L*を測定し、出発値との相違を測定し、平均値を計算した。
【００９７】
2）歯石および歯垢抑制作用
ヒドロキシルアパタイトの結晶成長を測定することによって歯石および歯垢抑制作用を試験した。
過飽和したリン酸Ca溶液にヒドロキシルアパタイトを添加することにより、次式に従って結晶化を開始させた。
活性成分によって影響されうる結晶成長速度を、アルカリによる滴定で測定した。
装置
サーモスタット
磁気撹拌機および磁気撹拌子
自動ビュレット25ml（ABU 80 Radiometer）
pH 計（82 Radiometer）
pH 電極（N61 Schott）
滴定装置（TTT80 Radiometer）
サーボグラフ（Rec 80 Radiometer）
遠心機、ガラス製遠心管
ガラス製ビーカー：
800ml二重壁
200ml
ピペット：10ml
メスシリンダー：500ml
ビュレット：50ml
【００９８】
概要
0.0008M KH2PO4溶液400mlおよび0.012M CaCl2溶液45mlを、サーモスタットで37℃に調温した反応槽に投入した。次に、その混合溶液を、0.05M KOHでpH7.4まで滴定した。pHが安定状態を15分間保ったら、アパタイト100mgを添加し、全体を撹拌しながらpH7.4で2時間滴定した。KOHの消費量をサーボグラフにより、時間の関数として記録した。
【００９９】
製剤の調製
練り歯磨き20gおよび脱イオン水80gからなる練り歯磨きスラリーを15分間よく撹拌した後、遠心分離した。この透明溶液10mlをリン酸Ca溶液に添加し、pHを7.4に調節してから、アパタイト100mgを添加した。
洗口剤の試験では、洗口剤10gをリン酸Ca溶液に添加した。
【０１００】
試験評価
練り歯磨きなしの曲線を、抑制率0％のゼロ曲線として評価した。ゼロ曲線のKOH消費量を2時間後に読取り、練り歯磨き溶液の消費量と比較した。
【数１】
％I＝抑制百分率
AN＝ゼロ曲線の消費量
AZ＝練り歯磨き溶液の消費量
【０１０１】
以下の試験混合物を調製した（量はいずれも、別段の表示がない限り、wt％である）：
【表１】
【０１０２】
結果
サンプルDだけ、すなわちAHP、キサンタンガム（Keltrol F）およびジグルコン酸クロルヘキシジンの三成分組合せを持つ製剤だけが、増白作用を持つ。
【０１０３】
【表２】
【０１０４】
結果
製剤安定性は、0.1％以上のKeltrol（キサンタンガム）濃度でのみ保証され、それより低いKeltrol濃度では沈殿が生じる。
【０１０５】
【表３】
【０１０６】
結果
この組成でも、変色抑制作用は、ポリマー成分カルボキシメチルセルロースを添加することによってのみ得られる。
【０１０７】
実施例では以下の原材料および市販品を使用した。
1 Degussaが20％溶液として市販しているもの。
2 INCI名：Lauryl Glucoside（ラウリルグルコシド）；AS：50〜53％、Cognisが市販しているもの。
3 INCI名：Xanthan Gum（キサンタンガム）、CP Kelcoが市販しているもの。
4 INCI名：Disodium Azacycloheptane Diphosphonate（アザシクロヘプタンジホスホン酸二ナトリウム）、Albright & Wilson が市販しているもの
5 INCI名：PEG-60 Hydrogenated Castor Oil（PEG-60硬化ヒマシ油）、Goldschmidtが市販しているもの。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤。
【請求項２】
成分（B）がアザシクロヘプタン-2,2-ジホスホン酸またはこの化合物の生理的に適合する塩である請求項1に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項３】
抗菌成分（A）が陽イオン性誘導体化されたビスビグアニドから選択される請求項1または2に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項４】
抗菌成分（A）がクロルヘキシジンまたはアレキシジンの生理的に適合する塩である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項５】
抗菌成分（A）がジグルコン酸クロルヘキシジンである請求項4に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項６】
抗菌成分（A）を製剤の総重量に基づいて0.001〜3wt％の量で含有する請求項1〜5のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項７】
抗歯石成分（B）を製剤の総重量に基づいて0.001〜5wt％の量で含有する請求項1〜6のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項８】
結合剤（C）または結合剤混合物を製剤の総重量に基づいて少なくとも0.01wt％の量で含有する請求項1〜7のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項９】
非イオン界面活性剤の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤をも含有する請求項1〜8のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項１０】
非イオン界面活性剤がアルキルポリグリコシドの群から選択される請求項9に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項１１】
少なくとも1つのフッ化物源をさらに含有する請求項1〜10のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項１２】
フッ化物源がフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムまたは有機アミンフッ化物である請求項11に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項１３】
ヒト歯の変色を軽減および予防するための非治療的方法であって、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤を日常の口腔および歯ケアに使用することを特徴とする方法。
【請求項１４】
歯石および歯垢を抑制するための非治療的方法であって、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤を日常の口腔および歯ケアに使用することを特徴とする方法。
【請求項１５】
ヒト歯の変色を軽減および予防することを目的とする、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せの非治療的使用。
【請求項１６】
歯石および歯垢を抑制するための口腔および歯ケア製剤における、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せの非治療的使用。
【請求項１】
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤。
【請求項２】
成分（B）がアザシクロヘプタン-2,2-ジホスホン酸またはこの化合物の生理的に適合する塩である請求項1に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項３】
抗菌成分（A）が陽イオン性誘導体化されたビスビグアニドから選択される請求項1または2に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項４】
抗菌成分（A）がクロルヘキシジンまたはアレキシジンの生理的に適合する塩である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項５】
抗菌成分（A）がジグルコン酸クロルヘキシジンである請求項4に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項６】
抗菌成分（A）を製剤の総重量に基づいて0.001〜3wt％の量で含有する請求項1〜5のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項７】
抗歯石成分（B）を製剤の総重量に基づいて0.001〜5wt％の量で含有する請求項1〜6のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項８】
結合剤（C）または結合剤混合物を製剤の総重量に基づいて少なくとも0.01wt％の量で含有する請求項1〜7のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項９】
非イオン界面活性剤の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤をも含有する請求項1〜8のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項１０】
非イオン界面活性剤がアルキルポリグリコシドの群から選択される請求項9に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項１１】
少なくとも1つのフッ化物源をさらに含有する請求項1〜10のいずれかに記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項１２】
フッ化物源がフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムまたは有機アミンフッ化物である請求項11に記載の口腔および歯ケア製剤。
【請求項１３】
ヒト歯の変色を軽減および予防するための非治療的方法であって、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤を日常の口腔および歯ケアに使用することを特徴とする方法。
【請求項１４】
歯石および歯垢を抑制するための非治療的方法であって、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せを含有する口腔および歯ケア製剤を日常の口腔および歯ケアに使用することを特徴とする方法。
【請求項１５】
ヒト歯の変色を軽減および予防することを目的とする、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せの非治療的使用。
【請求項１６】
歯石および歯垢を抑制するための口腔および歯ケア製剤における、
（A）少なくとも1つの陽イオン性抗菌成分と、
（B）アザシクロアルカンジホスホン酸または生理的に適合するその塩の群から選択される少なくとも1つの抗歯石成分と、
（C）キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースまたはこれら2成分の混合物から選択される少なくとも1つの結合剤と
の活性成分組合せの非治療的使用。
【公表番号】特表２００６−５１９８０９（Ｐ２００６−５１９８０９Ａ）
【公表日】平成１８年８月３１日（２００６．８．３１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−５０４６４０（Ｐ２００６−５０４６４０）
【出願日】平成１６年３月１１日（２００４．３．１１）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＥＰ２００４／００２５０３
【国際公開番号】ＷＯ２００４／０８０４３４
【国際公開日】平成１６年９月２３日（２００４．９．２３）
【出願人】（３９１００８８２５）ヘンケル・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチエン (309)
【氏名又は名称原語表記】ＨＥＮＫＥＬ ＫＯＭＭＡＮＤＩＴＧＥＳＥＬＬＳＣＨＡＦＴ ＡＵＦ ＡＫＴＩＥＮ
【住所又は居所原語表記】４０１９１ Ｄｕｓｓｅｌｄｏｒｆ，Ｈｅｎｋｅｌｓｔｒａｓｓｅ ６７，Ｇｅｒｍａｎｙ
【Ｆターム（参考）】
【公表日】平成１８年８月３１日（２００６．８．３１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年３月１１日（２００４．３．１１）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＥＰ２００４／００２５０３
【国際公開番号】ＷＯ２００４／０８０４３４
【国際公開日】平成１６年９月２３日（２００４．９．２３）
【出願人】（３９１００８８２５）ヘンケル・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチエン (309)
【氏名又は名称原語表記】ＨＥＮＫＥＬ ＫＯＭＭＡＮＤＩＴＧＥＳＥＬＬＳＣＨＡＦＴ ＡＵＦ ＡＫＴＩＥＮ
【住所又は居所原語表記】４０１９１ Ｄｕｓｓｅｌｄｏｒｆ，Ｈｅｎｋｅｌｓｔｒａｓｓｅ ６７，Ｇｅｒｍａｎｙ
【Ｆターム（参考）】
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