説明

口腔内、耳腔内、およびアクセスが困難な体の他の部位に用いる薬物送達装置

【課題】体の敏感な部分に薬物を送達するのに適した、針を用いないで薬物を送達するための新規で有用な装置を提供すること。
【解決手段】薬物を送達するための装置であって、内部に圧力チャンバを有する送達チューブと、この圧力チャンバに連通した、送達チューブの遠位端部における少なくとも1つのノズルを含む。薬物の供給源が、少なくとも1つのノズルに近接しており、ハンドルが、送達チューブの近位端部に配置されている。少なくとも1つのノズルを介して送達チューブから薬物を放出するために、送達チューブ内に最大約13.8Mpa(2,000psi)の駆動圧力を供給するエネルギー源がハンドル内に配置されている。送達装置は、口、耳、およびアクセスするのが困難な体の他の部分にマイクロジェット推進力によって薬物を送達するのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野と背景〕
本発明は、概して、薬物送達に関し、詳細には、組織に対する外傷が最小限で、眼、鼻腔、口、および他の体の部分などの体の敏感な部分に薬物を送達するのに適した、針を用いないで薬物を送達するための新規で有用な装置および方法に関する。
【0002】
医療技術、特に、心疾患、血管疾患、眼病、癌、痛み、アレルギー、整形外科修復、および他の多くの疾患や症状などの様々な疾患の治療の絶え間ない進展にもかかわらず、従来の外科的治療およびインターベンショナル治療が疾患または症状の治療に不十分または実施できない患者が相当数存在する。多くの患者にとって、薬物および類似物を用いた治療のみが、現在利用できる実施可能な治療法である。
【0003】
近年、薬物治療、特に「局所」薬物送達としても知られる細胞または部位特異的治療が進歩している。局所薬物送達すなわち細胞または部位特異的治療の殆どの有効性は、通常は経口または静脈を介して行われる薬物の全身投与とは異なり、治療薬をいかに正確かつ的確に体内の標的部位に送達できるかによって決まる。
【0004】
薬剤または薬液の局所送達すなわち部位特異的投与では、針注射器が最も一般的な手段である。針を用いた薬物送達/注入システムには様々な利点があるが、このようなシステムには大きな欠点や不利な点がある。1つの不利な点は、標的組織部位に注入するために針または他の刺入手段を用いる場合、不可避的に組織標的部位に孔を開けなければならないため、局所標的部位での外傷および組織傷害が起こることである。
【0005】
このような針刺入および注入方法のもう1つの不利な点は、針または刺入部材によって作られた孔から相当量の注入物が漏れる、または浸出する場合が多いことである。しばしば、このような漏れ出た注入物が、全身に回ったり、患者に処方された薬物の治療量または投与量が不足して無駄になったりすることがある。このため、所望の効果を得るには、治療コストが増大し、より多くの注入、時間、および薬剤が必要となる。
【0006】
さらに、組織内へ針で注入または刺入することにより、組織の細胞が損傷または破壊されるため、結果として、局所部位およびその周囲部分における治療後の患者の外傷、痛み、および不快感のリスクが増大することが知られている。これは、特に、注入の際に針の刺入を正確に制御することが困難なためである。注入や刺入の回数が増えれば増えるほど、より多くの細胞の破壊や組織の外傷を受けやすい。針を用いた注入、特に複数回の注入が必要な場合のさらに別の不利な点は、非病変組織に誤って薬物を送達するのを防止するため、または同じ注入孔に薬物を繰返し送達するために、各注入部位の位置を慎重に探知することができないことである。
【0007】
他の既知の薬物送達装置および方法では、針を用いないで薬物を送達する。代わりに、留置カテーテルなどの装置を用いて、放出を確実に制御して治療薬を放出する。このようなタイプの装置では、全身に治療薬が放出される大きなリスクが伴う。加えて、このようなタイプの装置では、標的部位の実際の投与を評価するのがより困難である。したがって、このようなタイプの装置は、一般に知られている針注入法および技術よりも有効性が低く、場合によっては安全でなく、そして確実に高コストである。
【0008】
末梢血管疾患(深在静脈血栓症および塞栓症など)の治療にも、部位特異的すなわち局所薬物送達が一般的に用いられている。このような1つの治療法は、末梢血管(例えば、大腿および腸骨の動脈および静脈)における血餅(血栓)を溶解する静脈溶解療法である。溶解療法では、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、レテプラーゼ(reteplase)、およびtPAなどの血栓溶解剤を全身投与する。他の最近開発された方法では、留置注入カテーテル(indwelling infusion catheter)を用いて血栓部位に血栓溶解剤を直接送達する。効果的に血栓を溶解するために、通常は血栓溶解剤が長時間、場合によっては1日かそれ以上に亘って注入が行われる。このため、入院の日数が延び、全体として処置にかかるコストが増大してしまう。
【0009】
局所薬物送達に針を用いない一般的なある方法では、従来の針を用いないジェット式注射を利用している。針を用いないジェット式注射技術は、集団予防接種キャンペーンで使用するために40年近く前に導入された。今日、16社以上の会社が、薬物の皮内および経皮(皮下および筋内)送達用のジェット式注射器を開発・製造している。このような最新デザインは、従来品に比べて、大きさ、コスト、および便利さの点で大幅に改善されているが、基本的な機能は変わっていない。主として、圧縮ガスを用いて、適度に高い速度で1つのオリフィスを介して薬物(流体かまたは乾燥粉末)を放出させ、これにより皮膚を通過して皮膚内または皮膚の下側に薬物を導入することができる。既知の針を用いないジェット式注射器の一例が、国際公開第00/35520号およびウイリス(Willis)らによる米国特許第6,406,455号B1(バイオバルブ・テクノロジーズ社(BioValve Technologies, Inc.)に譲渡)に開示されている。
【0010】
さらに、針を用いないジェット式注射器は、長い間、無痛法として喧伝されてきたが、従来の針およびシリンジとジェット式注射器を比較する臨床検査により、痛みの評点が25ゲージの針に等しいことが示された。これは主に、注入ストリームの大きさ、したがって、ノズルオリフィスの大きさによるものである。既存の装置は全て、直径が約0.15mm(0.006インチ)〜0.20mm(0.008インチ)のノズルオリフィスを用いている。このような従来の、針を用いないジェット式注射器は、唯1つの注入チャンバを含み、通常はオリフィスの直径が0.15mm(0.006インチ)〜0.2mm(0.008インチ)または150〜200ミクロン(0.15mm〜0.20mm)の1つのプラスチックノズルから全ての薬物が注入されることが知られている。このようなジェット式注射器は通常、100μL(0.100cc)〜500μL(0.500cc)の範囲の量、そして1,000μL(1cc)もの量さえも送達する。現在のジェット式注射器技術にはいくつかの大きな制限がある。第1に、このような従来の、針を用いないジェット式注射器に伴う注入時間は通常、数秒の長さであるため、患者が動いたり(例えば、怯んで)、注入の際に注射器が注入部位からずれたりした場合に、患者が裂傷を受けるリスクがある。第2に、受ける痛みが、従来の針およびシリンジに等しい。これが、なぜジェット式注射が広く受け入れられなかったかの最も大きな理由であろう。第3に、ジェット式注射器は、薬物が注入部位から逆流して漏れる、いわゆる「湿注入(wet injections)」が起こりがちである。この結果、送達された投与量の正確さに関係した問題が生じる。
【0011】
最初の2つの痛みと湿注入は、ノズルオリフィスの大きさ(現在のジェット式注射器では、約0.15mm(0.006インチ))によるものである。この大きさになっているのは、使用者の快適さのため、および注入される薬物の全ての「漏れ」を最小限または排除するために大きさを最適にするあらゆる努力による以上に、大量の工業生産用のプラスチック射出成形に実用上の制限があるからである。この次善の性能と生産性とのトレードオフにより、結果として市場に受け入れられない取り残された製品になってしまった。
【0012】
従来の、針を用いないジェットの1つの具体的なタイプが、米国特許第6,716,190号B1(グラインズ(Glines)らによる)に開示されている。この特許文献には、体内の標的部位に治療薬や診断薬を送達および注入するための装置および方法が開示されている。この装置および方法は、アンプル本体およびこのアンプル本体の遠位面にミリングまたは機械加工で形成された複数の通路を有するノズル組立体を含む複雑なシステムを用いている。これらの通路は、マニホールドとして機能し、貯蔵部のオリフィスに直角に配置されている。この貯蔵部のオリフィスが、アンプル本体内に受容されている内容物を直角に配置された通路に排出または吐出する。これらの通路により、これらの通路に直角に配置された複数の分散オリフィスに内容物が送られる。これらの分散オリフィスは、通路に対して直交して、概ね平面の遠位側の標的に面した表面内に配置されている。複雑なのはこの構成だけではなく、アンプル内の内容物に対して、約12.4MPa(1800psi)〜34.5Mpa(5000psi)、適用例によっては約12.4MPa(1800psi)〜15.9Mpa(2300psi)の高い送達圧力が必要である。加えて、分散オリフィスは、約0.1mm(100ミクロン)〜約0.3mm(300ミクロン)の直径を有する。このような装置は針を用いていないが、このような装置および構成を用いることで、送達部位の組織に過剰な外傷が生じたり、必要とする高い送達圧力や比較的大きな分散オリフィスによってエンドユーザーまたは患者が、不所望および不必要な痛みおよび/または不快感を受けるという不都合が生じるたりすることがある。したがって、グラインズ(Glines)らによる装置および方法は、特に眼、鼻腔、口、または体の他の敏感な部分(特に、外傷、痛み、および不快感を受けやすい部分)などに薬物をマイクロジェット送達するのに適していない。
【0013】
したがって、局所薬物送達を用いて治療するのが極めて困難な多数の体の敏感な部分および症状が存在する。例えば、治療が困難な眼病が無数に存在し、患部すなわち眼への薬物送達は、患者に痛みや精神的な苦痛を与える場合が多い。治療が極めて困難なこのような疾患の適当な例として、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、黄斑浮腫、およびブドウ膜炎などを挙げることができる。
【0014】
このような種類の疾患の場合は、薬物の全身投与により、眼における薬物濃度が必要量以下になり、著しい悪影響が出ることもある。結果として、現在の眼病の治療では、患者にとって痛みを伴う不所望の送達手段である従来の針およびシリンジを用いて眼に直接薬物を注入する場合が多い。さらに、長期治療では、繰り返し注入する必要があるため、眼にプラークや瘢痕が生じたり、網膜剥離や眼内炎が起こったりすることがある。
【0015】
このような合併症を受けて、眼に薬物を送達する代替手段が開発されている。薬物送達の研究分野は、イオン導入、薬物溶出眼用インプラント、光力学療法、および「粘着性」点眼液などに及んでいる。これらの方法には、それぞれ制限があることが周知である。
【0016】
例えば、イオン導入では、送達する薬物の分子の大きさに実用上の制限がある。例えば、3.321×10-20g(20,000ダルトン)を超える分子量の分子を送達することを想定していない。しかしながら、多くの新規な組成物、特に有望なタンパク質は、この範囲をはるかに超え、分子量が2.491×10-19g(150,000ダルトン)までに及ぶ。
【0017】
加えて、眼用インプラントは、移植および外植を外科手術で行わなければならないが、手術はコストがかかり、苦痛を伴い、そして眼に瘢痕が残ることがある。眼用インプラントには、物理的な大きさと、このインプラントに注入または導入できる薬物の量に制限がある。
【0018】
光力学療法は、長期の影響が未知であって、網膜に悪影響を及ぼしうる未確認技術であることも知られている。別法である点眼液は、眼に薬物を送達する最も便利な手段(したがって、受け入れやすいと認められている)であると長く考えられてきた。しかしながら、点眼液は、すぐに眼から流れ出てしまうし、含有されている薬物を僅かな量しか送達することができない。
【0019】
このため、眼から流れ出るのを防止するべく、粘膜に付着する「粘着性」点眼液が開発された。しかしながら、眼の表面における細胞の代謝が速いため、この送達方法の有効性が限定されると考えられる。さらに、点眼液からの送達の仕組みは、強膜全体にわたる受動分散である。そして、受動分散では、分子量が8.303×10-22g(500ダルトン)を超える分子を含む薬物を送達することができない。さらに、この送達は、眼自体を標的にするというよりも全身投与である。
【0020】
結果として、眼や他の体の敏感な部分に活性のある治療物質、特に様々な眼病および体の他の敏感な部分に関連した疾患の治療に有望とされる新生の高分子を送達するための、実際に容認された手段が現在も存在しない。
【0021】
これまで、薬物の分子量の大きさに関係なく、実際に針を用いないで薬物を送達する既知の方法および装置、ならびに組織に対する外傷が最小限で、眼、鼻腔、または口などの体の敏感な部分に薬物を送達するのに適した実際に針を用いないで薬物を送達する既知の方法および装置が存在しない。
【0022】
これまで、デザインおよび構造が、単純かつ効率的、しかも製造が低コストで容易な、実際に針を用いないで薬物を送達するための既知のマイクロジェット送達装置が存在しない。
【0023】
〔発明の概要〕
本発明は、組織に与える外傷が最小限で、眼、鼻腔、口、および体の他の部分などの体の敏感な部分に薬物を送達するのに適した針を用いないで薬物を送達するための新規で有用な装置および方法に関する。
【0024】
したがって、本発明は、薬物を送達するための装置に関する。この装置は、
ハウジングと、
ハウジングの一部分における少なくとも1つのノズルと、
ハウジング内の薬物の供給源と、
薬物を少なくとも1つのノズルを介してハウジングの外部に放出するために約5.5Mpa(800psi)〜約13.8Mpa(2,000psi)の駆動圧力を供給するためのエネルギー源と、
を含む。
【0025】
さらに、薬物は、エネルギー源が作動すると、約10ミリ秒〜約200ミリ秒の範囲の時間内で少なくとも1つのノズルを介して放出される。さらに、少なくとも1つの注入ノズルは、約10μm〜約50μmの範囲の直径を有する。
【0026】
さらに、本発明は、薬物を送達するための別の装置にも関する。この装置は、
内部に圧力チャンバを有する送達チューブと、
送達チューブの遠位端部にあり、圧力チャンバに流体連通した少なくとも1つのノズルと、
少なくとも1つのノズルに近接した薬物の供給源と、
送達チューブの近位端部におけるハンドルと、
薬物を少なくとも1つのノズルを介して送達チューブの外部に放出するために約5.5Mpa(800psi)〜約13.8Mpa(2,000psi)の駆動圧力を供給するためのハンドル内のエネルギー源と、
を含む。
【0027】
加えて、本発明は、少なくとも1つの薬物貯蔵部(reservoir)および少なくとも1つの注入ノズルを有するジェット注入薬物送達装置を作製するための方法にも関する。この方法は、
送達するのが望ましい薬物を特定するステップと、
送達するのが望ましい薬物の量を特定するステップと、
少なくとも1つの薬物貯蔵部の貯蔵部直径を決定するステップと、
少なくとも1つの注入ノズルのノズル直径を決定するステップと、
注入薬物送達のために組織モデルを特定するステップと、
薬物送達のために組織モデルの注入深さを特定するステップと、
所望の注入深さに達するまで、可変圧力で組織モデル内に薬物を注入するステップと、
を含む。
【0028】
さらに、この方法は、所望の注入深さを達成する薬物送達装置の最適な圧力範囲を特定するステップをさらに含む。本発明に従った薬物送達装置の最適な圧力範囲は、約5.5Mpa(800psi)〜約13.8Mpa(2,000psi)であり、本発明の装置の少なくとも1つの注入ノズルの先端部における最適な圧力範囲は、約27.6Mpa(4,000psi)〜約172.4Mpa(25,000psi)である。
【0029】
本発明は、組織内に薬物を送達するための方法にも関する。この方法は、
一部分の中に薬物を受容し、少なくとも1つのノズルを備えた薬物送達装置を用意するステップと、
薬物を組織内または組織上に送達するための部位を特定するステップと、
装置の一部をその部位上またはその近傍に配置するステップと、
約5.5Mpa(800psi)〜約13.8Mpa(2,000psi)の駆動圧力で、マイクロジェット推進力により装置の少なくとも1つのノズルを介して薬物をその部位の組織内に送達するステップと、
を含む。
【0030】
この方法は、少なくとも1つのノズルの先端部において、最大約27.6Mpa(4,000psi)〜約172.4Mpa(25,000psi)の範囲の圧力で、その部位の組織内に薬物を送達するステップをさらに含む。
【0031】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載してある。しかしながら、本発明は、その機構および動作方法、ならびに本発明の別の目的および利点について、添付の図面を参照しながら以下の説明を読めば理解できるであろう。
【0032】
〔好ましい実施の態様の詳細な説明〕
本発明は、新規な薬物送達装置、その製造方法、および使用方法に関する。図1〜図10に最もよく示されているように、本発明は、詳細を後述する、針を用いない(無針)マイクロジェット薬物送達装置20、20a、および20b、その製造方法、および使用方法である。本発明に従った薬物送達装置20、20a、および20bは、液体薬物製剤の極細ストリームを高速で注入して液体薬物製剤などの薬物を患者に送達する針を用いないジェット式注射器である。薬物送達装置20、20a、および20bは、既知の針を用いない注射器はもちろん、従来の針およびシリンジ装置に比べて痛みの少ない薬物投与手段である。本発明に従った薬物送達装置20、20a、および20bは、経皮薬物送達、皮膚薬物送達、眼内薬物送達、鼻腔内薬物送達、口腔内薬物送達、および経粘膜薬物送達を含め、様々な医療用途に用いることができる。
【0033】
用語「薬物送達装置」、「送達装置」、「針を用いない薬物送達装置」、「針を用いないマイクロジェット薬物送達装置」、「マイクロジェット薬物送達装置」、「無針薬物送達装置」、「無針マイクロジェット薬物送達装置」、「針を用いないジェット式注射器」、「無針ジェット式注射器」、「ジェット式注射器」、「マイクロジェット装置」、および「マイクロジェット」は、これらの語のあらゆる部分的な組合せを含め、全て同じ意味であり、本明細書では交換可能に用いている。
【0034】
用語「活性物質製剤」、「薬物製剤」、および「製剤」は、薬物または活性物質を指し、オプションとして薬学的に許容される担体および追加の不活性成分と組み合わせた薬物または活性物質を指す。製剤は、固体、液体、半固体、半液体、またはこれらの組合せのいずれかとすることができる。
【0035】
用語「薬物」、「物質」、「活性物質」、および「医薬組成物」は、本明細書では交換可能に用いており、多くの場合有用な、何らかの治療効果を付与する場合が多い物質、薬物、化合物、組成物、これらの組合せ、またはその製剤を指す。この例として、農薬、除草剤、殺菌剤、殺生剤、殺藻薬、殺鼠薬、殺真菌薬、殺虫剤、酸化防止剤、植物成長促進剤、植物成長抑制剤、保存薬、抗保存薬(antipreservatives)、消毒薬、滅菌剤、触媒、化学反応物、発酵剤、食物、食物サプリメント、栄養物、化粧品、薬物、ビタミン類、避妊薬(sex sterilants)、避妊剤(fertility inhibitors)、妊娠促進剤、微生物減少剤(microorganism attenuators)、および使用環境を有利にする他の物質を挙げることができる。本明細書で用いているように、これらの用語は、動物に局所効果または全身効果のあるあらゆる生理学的または薬学的に活性な物質をさらに含む。このような動物には、温血哺乳類、ヒト、霊長類;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、およびブタなどのペットまたは家畜;マウス、ラット、およびモルモットなどの実験動物;サカナ;爬虫類;動物園の動物および野生動物などが含まれる。送達できる活性薬物の例として、限定するものではないが、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血管系、シナプス部位、神経効果器接合部部位、内分泌系およびホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、オータコイド系(autacoid systems)、消化器系および排出系、ヒスタミン系、および中枢神経系に作用する薬剤を含む、無機化合物および有機化合物を含む。適当な物質は、例えば、タンパク質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖類、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、ステロイド、催眠薬および鎮静薬、精神賦活薬、精神安定薬、抗痙攣薬、筋弛緩剤、抗パーキンソン病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、局所麻酔薬、筋収縮剤(muscle contractants)、抗菌物質、抗マラリア薬、避妊薬を含むホルモン剤、交感神経興奮薬、生理学的効果を惹起できるポリペプチドおよびタンパク質、利尿薬、脂質調節剤、抗アンドロゲン剤、駆虫薬、腫瘍薬(neoplastics)、抗腫瘍薬(antineoplastics)、血糖降下剤、栄養剤およびサプリメント、成長サプリメント、脂肪、眼薬、抗腸炎剤(antienteritis agents)、電解質、および診断薬から選択することができる。
【0036】
本発明に有用な薬物または物質の例として、プロクロルペラジンエジシラート(prochlorperazine edisylate)、硫酸第1鉄、アミノカプロン酸、塩酸メカキシルアミン(mecaxylamine hydrochloride)、塩酸プロカインアミド、硫酸アンフェタミン、塩酸メタンフェタミン(methamphetamine hydrochloride)、塩酸ベンズフェタミン、硫酸イソプロテレノール、塩酸フェンメトラジン、塩化ベタネコール、塩化メタコリン、塩酸ピロカルピン、硫酸アトロピン、臭化スコポラミン(scopolamine bromide)、ヨウ化イソプロパミド、塩化トリジヘキセチル、塩酸フェンホルミン、塩酸メチルフェニデート、テオフィリンコリネート(theophylline cholinate)、塩酸セファレキシン(cephalexin hydrochloride)、ジフェニドール、塩酸メクリジン、マレイン酸プロクロルペラジン(prochlorperazine maleate)、フェノキシベンザミン(phenoxybenzamine)、マレイン酸チエチルペラジン(thiethylperazine maleate)、アニシンジオン、ジフェナジオン、四硝酸エリトリチル、ジゴキシン、イソフルロフェート、アセタゾラミド、メタゾラミド、ベンドロフルメチアジド(bendroflumethiazide)、クロルプロパミド、トラザミド、酢酸クロルマジノン、フェナグリコドール、アロプリノール、アスピリンアルミニウム、メトトレキサート、アセチルスルフィソキサゾール(acetyl sulfisoxazole)、ヒドロコルチゾン、酢酸ハイドロコルチコステロン(hydrocorticosterone acetate)、酢酸コルチゾン、デキサメタゾンおよびベタメタゾンなどのその誘導体、トリアムシノロン、メチルテストステロン(methyltestosterone)、17‐β‐エストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール‐3‐メチルエーテル(ethinyl estradiol 3-methyl ether)、プレドニゾロン、17‐β‐酢酸ヒドロキシプロゲステロン(17-beta-hydroxyprogesterone acetate)、19‐ノルプロゲステロン、ノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチエデロン(norethiederone)、プロゲステロン、ノルゲステロン(norgesterone)、ノルエチノドレル、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダク、インドプロフェン、ニトログリセリン、イソソルビドジニトレート、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロルプロマジン、メチルドパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック(zomepirac)、乳酸鉄、ビンカミン(vincamine)、フェノキシベンザミン(phenoxybenzamine)、ジルチアゼム、ミルリノン(milrinone)、カプトロプリル(captropril)、マンドール(mandol)、クアベンズ(quanbenz)、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)、ラニチジン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、フルプロフェン(fluprofen)、トルメチン、アルクロフェナック、メフェナミック(mefenamic)、フルフェナミック(flufenamic)、ジフュニナル(difuninal)、ニモジピン(nimodipine)、ニトレンジピン(nitrendipine)、ニソルジピン(nisoldipine)、ニカルジピン、フェロジピン(felodipine)、リドフラジン(lidoflazine)、ティアパミル(tiapamil)、ガロパミル(gallopamil)、アムロジピン(amlodipine)、ミオフラジン(mioflazine)、リシノプリル(lisinopril)、エナラプリル、カプトプリル、ラミプリル(ramipril)、エナラプリラット(enalaprilat)、ファモチジン、ニザチジン(nizatidine)、スクラルフェート、エチンチジン(etintidine)、テトラトロール(tetratolol)、ミノキシジル、クロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、ジアゼパム、アミトリプチリン、およびイミプラミンを挙げることができる。さらなる例として、タンパク質およびペプチドを挙げることができる。このような例として、限定するものではないが、インスリン、コルヒチン、グルカゴン、甲状腺刺激ホルモン、副甲状腺および下垂体ホルモン、カルシトニン、レニン、プロラクチン、コルチコトロピン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性性腺刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタのソマトロピン、オキシトシン、バソプレシン、プロラクチン、ソマトスタチン、リプレシン、パンクレオザイミン、黄体形成ホルモン、LHRH、インターフェロン、インターロイキン、ヒト成長ホルモン、ウシの成長ホルモンおよびブタの成長ホルモンなどの成長ホルモン、プロスタグランジンなどの受精阻害剤(fertility inhibitors)、受精促進剤(fertility promoters)、成長因子、ヒト膵臓ホルモン放出因子(human pancreas hormone releasing factor);ビンカアルカロイド(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン(vinorelbine))、パクリタキセル、精巣ポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxins)(すなわち、エトポシド、テニポシド(teniposide))、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン、およびイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシンなどの天然産物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤;酵素(L‐アスパラギンを全身代謝させ、自身でアスパラギンを合成できない細胞を除去するL‐アスパラギナーゼ);G(GP)IIbIIIa抑制剤およびビトロネクチン受容体拮抗薬などの抗血小板物質;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル(chlorambucil))、エチレンイミン(ethylenimines)およびメチルメラミン(methylmelamine)(ヘキサメチルメラミン(hexamethylmelamine)およびチオテパ)、アルキルスルホン酸ブスルファン(alkyl sulfonates-busulfan)、ニトロソウレア(nirtosoureas)(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン(trazenes)‐ダカルバジニン(dacarbazinine)(DTIC)などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン、およびシタラビン)、プリン類似体および関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、および2‐クロロデオキシアデノシン(クラドリビン(cladribine)))などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗物質;プラチナ錯体複合体(platinum coordination complexes)(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン(すなわち、エストロゲン);抗凝固物質(ヘパリン、合成ヘパリン塩、および他のトロンビンの阻害剤);線維素溶解素物質(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル(clopidogrel)、アブシキシマブ(abciximab);抗転移物質(antimigratory);抗分泌物質(antisecretory)(ブレベルディン(breveldin));副腎皮質ステロイド(コルチゾル、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α‐メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾン)、非ステロイド物質(サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン)などの抗炎症物質;パラアミノフェノール誘導体、すなわちアセトアミノフェン;インドールおよびインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク、およびエトダラク(etodalac))、ヘテロアリル酢酸(heteroaryl acetic acids)(トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラック(ketorolac))、アリールプロピオン酸(arylpropionic acids)(イブプロフェンおよび誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸、およびメクロフェナム酸(meclofenamic acid))、エノール酸(enolic acids)(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、金チオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム);免疫抑制物質:(シクロスポリン、タクロリムス(FK‐506)、シロリムス(sirolimus)(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil));血管形成物質:血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン(erythropoetin);アンジオテンシン受容体拮抗薬(angiotensin receptor blocker);酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその組合せ;細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤、成長因子信号変換キナーゼ阻害剤、化学物質、生物分子、DNAやRNAなどの核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、またはこれらの組合せを挙げることができる。
【0037】
2種類以上の薬物または物質を組み合わせるかまたは混合して、本発明の一部にするかまたは本発明に使用することができ、用語「薬物」、「物質」、「活性物質」、または「医薬品組成物」は、2種類以上のこのような薬物、物質、活性物質、および/または医薬品組成物の使用も含むことを理解できよう。
【0038】
本発明に従った薬物送達装置20の一実施形態が図1〜図4に例示されている。この薬物送達装置20は、マイクロジェット推進力によって極細ストリームの形態で高速で、器官を含む様々な種類の体組織内に薬物を注入するのに特に有用な、針を用いないジェット式注射器である。一例では、本発明に従った薬物送達装置20は、患者に薬物を皮送達または経皮送達するのに特に有用である、すなわち、針を皮膚の様々な層に刺入または皮膚の各層に挿入しないで患者の血流および循環系に薬物を送達するための皮膚または経皮薬物送達装置として得に有用である。本発明に従った薬物送達装置20は、皮膚送達および経皮送達に限定されるものではなく、むしろ、他の種類の組織、他の医学的な用途、治療上の用途、および診断用途に用いることも意図している。
【0039】
薬物送達装置20は、ハウジング24、そのハウジング24の近位端部のキャップ28、およびハウジング24の遠位端部のノズルプレート30を有する。ジェット式注射ノズルである(「マイクロノズル」とも呼ぶ)1または複数のノズル34または複数のノズル34が、ノズルプレート30に配置されている。図1〜図4に示されているように、注入ノズル34は、ノズルプレート30の外面から外側に延びた小さな突起となって終端しているため、使用者が、注入ノズル34が使用者の体組織の表面に適切に配置されて整合したかを感触で確認することができる。図2〜図4に最もよく例示されているように、ハウジング24は、1または複数のノズル34に整合して連通する1または複数の貯蔵部38をさらに含む。各貯蔵部38は、ハウジング24内に長手方向に配置され、薬物40の薬物貯蔵部すなわち保管スペースとしての機能を果たす。
【0040】
各貯蔵部は、押棒48、および各押棒48の遠位端部に取り付けられるかまたは固定される貯蔵部シール54を受容するように形成されている。押棒48および貯蔵部シール54は、各貯蔵部38に長手方向に直接整合し、押棒48および貯蔵部シール54は、各薬物貯蔵部38内に移動可能(長手方向)に配置されている。各貯蔵部シール54は、薬物貯蔵部38から薬物40が浸出または漏れないようにデザインされている。したがって、貯蔵部シール54は、薬物貯蔵部38の内壁に接触して移動可能にシールすることができる。
【0041】
押棒48および貯蔵部シール54は、各貯蔵部38内を長手方向にスライド可能に移動できる。ピストン44が、各押棒48の近位端部に一体形成または固定されており、駆動力を蓄積して押棒48を駆動する駆動プラットフォームとして機能する。ピストン44は、各押棒48を各貯蔵部38内で同時に操作して移動させるために、全ての押棒48の近位端部に単一体として固定することができる。または、ピストン44は、各押棒48を貯蔵部38内で選択的に個々に操作して移動させるために、各押棒48の近位端部に別々に固定することができる。
【0042】
この例では、ピストン44は、円筒状であるハウジング24の内壁に移動可能に係合し、そのハウジング24内にしっかりと適合するように形成された円筒型の形状である。ピストン44は、Oリングシール52を受容するように形成された周辺空間を有する。このOリングシール52も、ピストン44と共にハウジング24の内壁に移動可能に係合して、そのハウジング24内にしっかりと適合するように形成されている。シール52は、ガス、排出物、または他の物質がピストン44を介して浸出または通過するのを防止できるあらゆる種類のシールとすることができる。
【0043】
図3(薬物送達装置20が、薬物40が導入されて発射前の構造である)に最もよく示されているように、ピストン44に駆動力を付与するためのエネルギー源が、ハウジング24内のピストン44の近位側または上側に配置されている。例えば、本発明に従った一実施形態では、爆薬ハウジング(charge housing)60が、ハウジング24の近位部分または上側部分に配置されている。爆薬ハウジング60内に爆薬(pyrotechnic charge)64が受容されている。プライマー68が、その作動時に爆薬64を点火するための、爆薬64に点火エネルギーすなわち着火エネルギーを付与する少量の爆薬を保持するべく、爆薬64に近接して配置されている。
【0044】
打撃ピン(striker pin)70が、キャップ28内に配置されている。打撃ピン70は、プライマー68を作動させてそのプライマー68に受容されている爆薬を発火させるために、プライマー68と移動可能に係合または接触している。打撃ピン70はまた、バネ72によって移動可能に付勢されている作動ボタン74などの作動要素に移動可能に連結されている。したがって、作動ボタンは、例えば、使用者または患者が親指で作動ボタン74を十分な力で下方に押すと、打撃ピン70がプライマー68内に移動するように、打撃ピン70がキャップ28内に移動可能に付勢されている。
【0045】
図4(薬物送達装置20が、マイクロジェット推進力によって薬物40が注入された後の発射した構造にある)に最もよく示されているように、作動ボタン74が押されると、打撃ピン70がプライマー68に衝当し、これによりプライマー68が作動し、爆薬(pyrotechnic charge)64が極端に高速で燃焼する。この制御された爆発により、ピストン44およびこのピストンに固定された押棒48が貯蔵部48内を前方にスライドし、押棒48がマイクロジェット推進力によって薬物40を注入ノズル34から排出するのに必要な駆動力が生成される。
【0046】
爆薬64または圧縮ガス36(図8および図10)などのエネルギー源が、主駆動ピストン44および関連した押棒48に約5.5Mpa(800psi)〜約13.8Mpa(2,000psi)の範囲の十分なエネルギーおよび駆動圧力を供給する。マイクロノズル34の先端部におけるエネルギーおよび圧力は、各マイクロノズル先端部で約27.6Mpa(4,000psi)〜約172.4Mpa(25,000psi)の範囲であり、好ましくは各マイクロノズル先端部で約55.2Mpa(8,000psi)〜約82.7Mpa(12,000psi)の範囲であり、さらに好ましくは各マイクロノズル先端部で約69.0Mpa(10,000psi)である。
【0047】
本発明の全ての実施形態では、同じ参照符号を用いて同じまたは類似の構造および部品を示している。したがって、図5〜図7Bは、薬物40を患者の眼100に送達するなどの眼の用途に特に有用である本発明の別の実施形態を例示している。したがって、ハウジング24の遠位端部におけるノズルプレート30aは、中心部分に開口を有する凹状リングである成形遠位端部31を有する。この例では、成形遠位端部31は、この成形遠位端部31によって画定された輪郭(凹状部分)内に周方向に配置され、成形遠位端部31の外周部の外面の縁(周辺すなわち外縁)から近位側に所定距離離間している複数の注入ノズル34を有する。したがって、この例では、成形遠位端部31を有するノズルプレート30aは、患者の眼100を受容して、眼100の瞳孔を成形遠位端部31の外周リングの中心部分(開口)内に配置できるように形成されている。したがって、所望に応じて、図5に最もよく示されているように、硝子体や強膜などの瞳孔の外側の眼100の部分にマイクロジェット推進力で薬物40を送達することができる。
【0048】
図7Bは、発光ダイオード(LED)キャビティ76が、ノズルプレート30aの成形遠位端部31の外周リングの中心部分(開口)に設けられている薬物送達装置20aの代替の実施形態を示している。LED80が、ハウジング24の外側部分に移動可能に配置されたスイッチ86(この例では、ハウジング24の近位端部の近傍)によって動作制御下で集束光(集束LED光)88を放射できるように、LEDキャビティ76内に配置されている。スイッチ86は、LED80を作動させて集束光88を放射させる電源スイッチとして機能する。すなわちスイッチ86は、LED80および集束光88をオン/オフするスイッチとして機能する。簡潔にするために、LED80をスイッチ86に動作可能に接続する接点、リード線、および配線は示していないが、当業者であれば、容易に理解し、認識するであろう。
【0049】
集束光88は、患者の注意を直接引き付けて、眼100の瞳孔を調節して焦点を合わせるために用い、マイクロジェット推進力によって薬物40が眼100に送達される際に患者が精神的にリラックスできるように(要するに患者の気をそらす)患者が注意を向ける焦点として役立つ。したがって、LED80および集束光88は、特にこのような眼100のような敏感部分への薬物注入に通常関連した患者のストレスレベルおよび不安を小さくする手段として役立つ。
【0050】
別法では、LED80の代わりに、発光性(自己発光を含む)の要素または構造、または自己発光コーティングを有するドットなどの発光コーティングを有する要素または構造とすることができる。このような要素または構造は、焦点として用い、患者がマイクロジェット推進力によって薬物40を注入される前または最中に精神的にリラックスできるように、患者の注意を引くため焦点となって、患者の直接の注意を引き付け、眼100の瞳孔を集中させことができる。このような適当な代替例の1つとして、トリチウムコーティングドットを挙げることができる。
【0051】
図8〜図10は、薬物送達装置20bが、内部に圧力チャンバ27を有する送達チューブ25として細長い円筒状チューブを用いている本発明の別の実施形態を例示している。ハンドル23が、送達チューブ25の近位部分に連結されている。弁33が、送達チューブ25および圧力チャンバ27の近位端部に連結されており、カートリッジ36内に受容された圧縮CO2ガスなどの圧縮ガス36の供給源が、弁33の他端に接続され、ハンドル23内に受容されている。カートリッジ36は、13.8Mpa(2,000psi)もの高い圧力を供給できるCO2などの圧縮ガスを受容する小型圧縮ガスシリンダーである。弁33は、ハンドル23の便利な位置、例えば、患者または使用者の手の人差し指の腹が容易に接触できる位置にある作動ボタン74aにより、カートリッジ36から送達チューブ25の圧力チャンバ27内への圧縮ガスの放出を制御する。
【0052】
所望に応じて、カートリッジ36の内容物が消費されたら(空になったら)、そのカートリッジ36を新しく充填された(いっぱいになった)ガスカートリッジ36に交換するためにガスカートリッジ36へ直接アクセスできるように取り外し可能に連結されたカバー(不図示)をハンドル23と共に用いて、薬物送達装置20bを複数回使用できる装置すなわち再使用可能な装置にすることができる。
【0053】
図9に示されているように、ノズルプレート30およびノズル34が、送達チューブ25および圧力チャンバ27の遠位端部に配置され、ノズルプレート30の外面から外側に延びた突起として配置されている。これらの突起により、使用者90の体組織の表面、例えば、鼻110(図10を参照)の鼻腔内の組織、口の歯茎または口蓋などの患者の口腔内の組織(頬側の場合)、または患者の耳腔内の組織などに対して注入ノズル34を適切に配置して整合する際に使用者90が感触で確認することができる。したがって、薬物送達装置20bは、その細長くて薄型のデザインによって、患者の体内のアクセスしにくい部位に薬物40を送達するのに適している。
【0054】
薬物貯蔵部38、薬物40、貯蔵部シール54、押棒48、ピストン44、およびOリング52が、図1〜図7Bの実施形態の説明と同じ要領または類似の方式で配置され、同様に機能するが、これらの構造が送達チューブ25および圧力チャンバ27内で遠位端部に配置されている点が異なっている。
【0055】
圧力チャンバ27により、圧縮ガスがカートリッジ36から放出され、この圧縮ガスがハンドル23から送達チューブ25の全長に沿ってピストン44まで送られ、これにより、ピストン44およびこのピストンに固定された押棒48が貯蔵部38内を前方にスライドして、押棒48がマイクロジェット推進力によって注入ノズル34から薬物40を放出するのに必要な十分な駆動力が得られる。
【0056】
薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)は、例えば、長さが約50.80mm(2.00インチ)、直径が15.24mm(0.600インチ)(図1〜図4、図5〜図7Bのそれぞれの実施形態)である外面寸法を有する小型のデザインであり、例えば、わずか数オンス(1オンスは約28.34g)の軽量にすることを目的としている。人間工学的には、サイズを大きくしたり、形状を著しく変更したりするのが望ましい場合もあろうが、基本的な機能はこれらの図面に示したものと同一とする。
【0057】
別法では、ピストン44に駆動力を付与するエネルギー源は、一例では、ガスカートリッジ36(図8)内に放出可能に受容されたCO2などの圧縮ガスである。さらに、ピストン44に駆動力を付与するエネルギー源は、本明細書で後述する要件を満たすマイクロジェット推進力によって薬物を送達できるあらゆる種類のエネルギーの力とすることができる。例えば、このようなエネルギー源は、約5.5Mpa(800psi)〜約13.8Mpa(2,000psi)の範囲の駆動圧力で主駆動ピストン44および付随の押棒48を駆動するのに十分なエネルギーを放出しなければならない。マイクロノズル34の先端部におけるエネルギーおよび力は、各マイクロノズル先端部で約27.6Mpa(4,000psi)〜約172.4Mpa(25,000psi)の範囲であり、好ましくは各マイクロノズル先端部で約55.2Mpa(8,000psi)〜約82.7Mpa(12,000psi)の範囲であり、より好ましくは、各マイクロノズル先端部で約69.0Mpa(10,000psi)である。
【0058】
本発明に従った薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)によってマイクロジェット推進力で送達される薬物40の量は、あらゆるタイプの薬物の送達、あらゆるタイプの組織、およびあらゆるタイプの医療用途に対応できるように、カスタマイズ、調節、および変更が可能である。送達する薬物の総量は、薬物送達装置20、20a、および20bの構造またはデザインによって、約10μL前後〜約1mL前後の範囲で調節することができる。
【0059】
さらに、注入ノズル34の直径は、約10μm〜約50μm前後の範囲で変更でき、薬物40の極細注入ストリームを生成し、この注入によって衝突される神経受容体の数を減らし、患者の外傷、痛み、および不快感を軽減することができる。本発明に従った薬物送達装置20(図1〜図4)、20A(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)の新規な固有の特徴は、図3(薬物送達装置20が、薬物40を送達する前の発射前の構造で示されている)に最もよく示されているように、薬物40の総投与量の一部として各貯蔵部が薬物40を受容する注入チャンバとして機能する1または複数の別個の薬物貯蔵部38を用いていることである。そして、各貯蔵部38は、極端に直径が小さい専用の注入ノズル34を有する。例えば、各ノズル34の直径は、約10μm〜約50μmすなわち約0.0102mm(0.0004インチ)〜約0.0508mm(0.002インチ)の範囲である。したがって、本発明に従った薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)は、薬物40の全送達量を、複数の別個の貯蔵部38(本発明に従った実施形態では、2個以上の注入貯蔵部38)に分割し、図4(薬物送達装置20が、マイクロジェット推進力によって薬物40が送達された後の発射された構造で示されている)に最もよく示されているように、上記したジェット式注射器などの従来のジェット式注射器でなしうる注入速度よりも速い速度で、各貯蔵部38内に受容された各薬物を患者の組織内に送達する。
【0060】
したがって、本発明に従った薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)に関連した1つの利点は、薬物40を注入するのに必要な時間を約40ミリ秒と大幅に短縮できる点である。0.5cc(すなわち0.5ml)の薬物40を注入により送達しなければならない場合でも、薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)による注入時間は、約10ミリ秒〜約200ミリ秒の範囲である(一例では、ある種の薬物を約0.5ml送達する場合の注入時間は、約40ミリ秒〜約100ミリ秒の範囲である)。本発明の別の特徴は、ジェットストリームの面積が、直径の二乗で小さくなるため、既知の最も細い従来の皮下注射針(直径が0.254mm(0.010インチ)の31ゲージのカニューレを有する超微小インスリン針)と比べて、薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)での注入によって影響を受ける皮膚または組織の面積がほぼ100分の1に減少する。
【0061】
本発明に従った一実施形態では、薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)は、看護者または患者が事前に準備または調節する必要がない使い捨ての事前充填薬物送達装置(使い捨てユニットすなわち1人の患者が1回だけ使用できる1回用としてデザインされている)である。したがって、薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)は、いつでも使用できるように製造され供給される。
【0062】
別法では、薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)は、1回用使い捨て内側組立体を有する再使用可能なユニットにすることも意図している(例えば、主ハウジング24、作動ボタン74を備えたキャップ28、送達チューブ25、および作動ボタン74aを備えたハンドル23が、再使用され、必要に応じて再滅菌される)。この1回用使い捨て内側組立体は、投与前に患者または看護者が事前充填または再装填してから、ハウジング24またはハンドル23および送達チューブ25(薬物送達装置20b用)内に挿入され、使用後に取り外され廃棄される。この場合、使い捨て内側組立体は、プライマー68、爆薬64(または圧縮ガスシリンダー36)、薬物貯蔵部押棒48、薬物貯蔵部38、注入ノズル34を含む。再使用可能なハウジング24、送達チューブ25、ハンドル23、およびキャップ28や作動ボタン74および74aなどの他の構成要素は、再使用および必要に応じた再滅菌に耐えうる金属や金属合金などの適当な材料から作られている。
【0063】
加えて、本発明の全ての実施形態では、注入ノズル34は、ノズルプレート30および30a上の任意の所望のパターンでアレイ状の注入ノズル34の形態にすることができる。このアレイ状の注入ノズル34は、例えば、組織の特定の標的点すなわち注入される薬物40の全量を受け取る組織の1つの標的点または組織における複数の所望の標的点に薬物40を集中させるために、面外または進路に対して様々な角度に構成されている。
【0064】
マイクロジェット推進力による薬物送達の最適化および製造方法
本発明に従った薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)の性能を特徴付けて評価するために用いる2つの機構が存在する。第1の機構は、いわゆるハーゲン・ポアズイユの式に基づいた予測モデルである。この式を用いて、薬物送達装置20(図1〜図4)、20a(図5〜図7B)、および20b(図8〜図10)の主要な要素および構成要素の様々なデザイン、これらの使用方法、および本発明の性能基準に従って薬物送達装置を作動させるのに必要な得られる駆動力の影響を推定した。加えて、マイクロジェット推進力によって必要量の薬物40を送達するために必要な実際の力を、生体外試験および生体内試験の両方によって経験的に決定した。例えば、図11は、本発明に従った、100μLの送達薬物を有し、ノズル直径が50μmのマイクロジェット薬物送達装置(20、20a、および20b)における圧力に対する注入深さを決定するために用いられた、これらの適当な生体外試験の1つの結果を表すグラフである。
【0065】
本発明に従った薬物送達装置20、20a、および20bの開発および製造には、個々の薬物貯蔵部38の直径、注入ノズル34の直径、および所望の注入速度すなわち放出される薬物40または薬物製剤40の質量流量に基づいた、力/量/長さのトレードオフの関係が存在する。さらに、このような構成要素のデザインは、注入時間、使用する薬物貯蔵部38および注入ノズル34の数、主ピストン44の大きさ、そして薬物送達装置20、20a、および20bの多くの主要な要素の製造材料に必要な物理特性と密接な関係がある。
【0066】
この関係は、以下に示すようにハーゲン・ポアズイユの式によってモデル化されている。
F=8QμL(R2/r4
この式において、F=注入の力
Q=薬物製剤すなわち注入物の流速
μ=薬物製剤または注入物の粘度
L=注入ノズルの長さ
R=薬物貯蔵部の半径
r=注入ノズルの半径
【0067】
この式の有用性を実証するために、組織の皮下層に水溶性薬物製剤40(粘度μ=1cpsの薬液40)を5cc/秒(5mL/秒)の流速Qで500μL(1/2cc)送達するのが望ましいと仮定する。さらに、ノズルの直径が50μm(0.050mm(0.002インチ))すなわち半径r=25μm(0.025mm(0.001インチ))の注入マイクロジェットを用いていると仮定する。薬物貯蔵部の長さを最小限にしたいが、注入の力も最小限にしたい。したがって、薬物貯蔵部の長さを短くするのが良いが、直径を小さくすると、注入の力は小さくなるが薬物貯蔵部の長さが増大する。したがって、注入の力が最小限になるようにし、かつハンドヘルド型マイクロジェット薬物送達装置(20、20a、および20b)に適した貯蔵部の長さに対して便利な大きさを選択する。したがって、直径が1.829mm(0.072インチ)すなわち半径Rが0.914mm(0.036インチ)の薬物貯蔵部を選択した。注入ノズル34の長さLは、製造上の制限(限られた長さでは、所定の材料に極めて小さな孔しか作ることができない)によって決まる。したがって、適当な長さLは1.27mm(0.050インチ)と考えられる。したがって、ハーゲン・ポアズイユの式から、以下に示すように、所定の注入ノズルに必要な注入の力を推定することができる。
Q=5cc/s(5mL/秒)
μ=1cps
L=0.050インチ=0.127cm
R=0.036インチ=0.091cm
r=25μm=0.0025cm
F=8QμL(R2/r4)=10,218,121ダインすなわち約10.42重量kg(23重量ポンド)
【0068】
薬物貯蔵部38の数は、主駆動ピストン44が出力する全ての力を、この例では、個々のピストンとして動作する各薬物貯蔵部押棒48を同時に推進するのに必要な力で除して求める(整数として表す)。爆薬64または圧縮ガスシリンダー36によって得られる実際の圧力は、約13.8Mpa(2,000psi)までに制限されている。したがって、主ピストン44の直径が12.7mm(0.500インチ)で、得られる面積(0.25インチ(6.35mm))2×π=0.196平方インチ(126.45mm2)である場合、利用できる最大駆動力は、2,000psi(13.8Mpa)×0.196平方インチ(126.45mm2)すなわち392重量ポンド(177.8重量kg)である。各薬物貯蔵部の押棒48を駆動するために必要な力が23重量ポンド(10.4重量kg)であり、利用できる力が392重量ポンド(177.8重量kg)の場合、設けることができる薬物貯蔵部38の最大数(整数)は、392÷23すなわち合計17個となる。
【0069】
各薬物貯蔵部38の長さは、それぞれに必要な容積から求めることができる。例として、5個の貯蔵部を用いるとする。したがって、合計500μLの薬物を5つの貯蔵部38を介して送達する必要がある場合、各貯蔵部38が100μLの薬物40を送達することになる。貯蔵部の直径が1.83mm(0.072インチ)の場合、各貯蔵部の長さは、100μL÷貯蔵部の面積(π×(0.914mm)2)すなわち38.1mm(1.50インチ)の長さである。
【0070】
そして、注入の流速Qは、上記したように既に5cc/s(5mL/秒)と定義している。したがって、注入の合計時間は、それぞれの貯蔵部38内に受容されている薬物40の量(100μLすなわち0.1ccと分かっている)を注入するのに必要な時間によって決まる。したがって、注入時間は、0.10cc×流速Qの逆数すなわち20ミリ秒である。
【0071】
予測モデルとして、ハーゲン・ポアズイユの式は、薬物送達装置20、20a、および20bの要素に必要なデザインのパラメータの事前の分析および予測に有用なツールであるが、経験的な結果と予測される分析値が異なると予測される。飽和プルロニック(Pluronic(F127))溶液に対して2mmの厚みのバリスティックゼラチンを用いることを含む生体外試験と、本発明に従った薬物送達装置を検査することを含む生体内試験を無毛モルモットモデルに対して行った。これらの試験から、治療薬の投与(この場合は、皮下投与)に必要な皮膚などの組織内の注入深さまで、薬物製剤40を注入ノズル34を介して送達するのに必要なマイクロジェット推進力すなわち速度を得るためには、薬物製剤40を約55.2Mpa(8,000psi)まで加圧する必要があることが実証された。
【0072】
例えば、薬物貯蔵部38の直径が0.072インチ(1.83mm)の場合、各薬物貯蔵部38の断面積は、(0.036インチ(0.91mm))2×πすなわち0.004平方インチ(2.58mm2)である。力Fが圧力P×面積Aに等しい場合、薬物製剤40が8,000psi(55.2Mpa)の圧力になるように押棒48を駆動するために必要な力は、8,000×0.004すなわち32重量ポンド(14.5重量kg)である。この32重量ポンド(14.5重量kg)の力は、ハーゲン・ポアズイユの式によって推定される23重量ポンド(10.4重量kg)の力よりも僅かに大きいが、明らかに同じく大規模である。この増大のほとんどは、貯蔵部シール54とOリング52がスライドすることによる摩擦によって説明される。
【0073】
ハーゲン・ポアズイユの式を用いて、この例に用いられる値を続けて求める。全投与量に500μlの薬物製剤40が必要であり、デザインのために5個の薬物貯蔵部38を用いるとすると、各貯蔵部38は、500÷5すなわち100μlの薬物製剤40を受容することになる。合計5個の各薬物貯蔵部38に32重量ポンド(14.5重量kg)の力が必要な場合、32×5すなわち160重量ポンド(72.6重量kg)の合計の力が、全ての薬物貯蔵部の押棒48を駆動するために必要であると算出された。したがって、主駆動ピストン44は、160重量ポンド(72.6重量kg)の力を付与しなければならない。
【0074】
主駆動ピストン44の直径が0.500インチ(12.7mm)(この寸法は、適用例および物理的な大きさの実用上の人間工学的な制限によって増減しうることに留意)の場合、ピストン44の面積は、(0.250インチ(6.35mm))2×πすなわち0.196平方インチ(126.45mm2)である。したがって、エネルギー源は、主駆動ピストン44にF/A(160/0.196)すなわち816psi(5.6MPa)の圧力をかけなければならない。この圧力の要件は、爆薬64または小型圧縮ガス源36の十分に性能の仕様範囲内である。薬物貯蔵部38の長さおよび注入の時間は、ハーゲン・ポアズイユの例で示されたものと同じである。
【0075】
主駆動ピストン組立体44は、図2、図3、図7A、および図7Bに示されている爆薬64(または、別法として、図8および図10に示されている圧縮ガス源36)によって生成される圧力の蓄積装置として機能し、この圧力を駆動力として個々の押棒48に伝達する。押棒48は、主駆動ピストン44と一体であるため、ピストン44にかかる全ての荷重が、各押棒48に均一に伝達される。主ピストンの直径を大きくする必要がある場合、全ての所与のエンジン圧力に対してより大きな力に変換する。例えば、主ピストンの直径が、前記した例の0.500インチ(12.7mm)から0.600インチ(15.24mm)に増大すると、2,000psi(13.8Mpa)の最大エンジン圧力から得られる力は、2,000psi(13.8Mpa)×0.196平方インチ(126.45mm2)=392重量ポンド(177.8重量kg)の力から2,000psi×0.283平方インチ(182.58mm2)=565重量ポンド(256.28重量kg)の力に増大する。このように有効駆動力が増大したことにより、追加の注入ノズル34を用いることができ、各ノズル34の容積が小さくなって注入時間等が短くなる。
【0076】
最後に、ノズルの形状は、薬物ストリームの所望の直径、製造材料の引張り強さ/降伏強さ、コスト効率のよい経済規模で極めて小さいオリフィスを製造する際の実用上の制限によって決まる。ノズルの形状に関して、小型軽量のハンドヘルド薬物送達装置20、20a、および20bを達成する1つの目標は、「小さければ小さい程良い」であるが、このようなノズル34を製造する際には実用上の制限がある。
【0077】
既知の従来の針を用いない薬物注射器では、適当な熱可塑性プラスチックの大量の射出成形において実用上の制限(すなわち、オリフィスの直径よりも小さい中心ピンは、大量生産の射出成形に必要な高圧および高剪断で実用的でない)があるため、このような既知の装置は、比較的大きいオリフィス(約0.152mm(0.006インチ)〜0.203mm(0.008インチ))を有する。
【0078】
本発明に従った薬物送達装置20、20a、および20bの説明で記載したように、薬物送達装置20、20a、および20bは、10μm〜50μmの大きさのノズル34を用い、上記したような既知の従来の針を用いないジェット式注射器よりも著しく高い動作圧力で動作する。
【0079】
このため、本発明に従った薬物送達装置20、20a、および20bは、構成要素が高い引張り強さおよび破裂強さ特性を有する材料を利用している。このような材料の例として、セラミック、様々な金属および金属合金、高強度エンジニアリング熱可塑性プラスチック(PEEK(登録商標)、Torlon(登録商標)、およびUltem(登録商標)など)、および他の物質を挙げることができる。したがって、本発明は、このような材料の最もコスト効率のよい組合せを用いること、ならびに部品数、すなわち必要な構成要素および部品の数を最小限にすることにも関する。
【0080】
使用する材料は、ノズル先端部の直近で55.2Mpa(8,000psi)を超える所定の注入圧力に耐える必要があるため、個々のノズル34を金属、金属合金、またはセラミック(例えば、アルミナまたはジルコニア)で製造し、例えば接着または超音波溶接でハウジング24(図1〜図7B)または送達チューブ25(図8)に取り付けるのが望ましい。このような材料は全て、射出成形で形成することができるが、最終的なノズルオリフィスは、レーザードリル、超音波ドリル、ワイヤEDM機械加工などで二次形成する。現在は実用的でないと考えられているが、マイクロ射出成形の進展により、一体成形の最終仕上げ注入ノズルが完全に実施可能となり、二次仕上げ加工を伴う現在の方法よりもコスト効率が良いであろう。これにもかかわらず、高強度材料の射出成形とレーザードリルを組み合わせた正確で再現可能な注入ノズル34の製造は、本発明に関連したエンジニアリングとコストの要求を満たすはずである。
【0081】
本発明に従った別の例では、図1〜図4に、薬物送達装置20の様々な図が示されている。この薬物送達装置20は、例えば、経皮薬物送達法の一部として皮膚を介して組織内に送達するべく、多数の少量の薬物40を適当な速度に加速するために用いることができる。薬物送達装置20のデザインが、それぞれの直径が40μmである合計30個の注入ノズル34を要求し、1つの薬物貯蔵部38に対して3.3μLの薬物量として合計30×3.3=100μLと仮定して、この例を用いて薬物送達装置20の機能を例示する。さらに、薬物40の送達に200m/秒の速度が必要とすると、各注入ノズル34に必要な力は、ハーゲン・ポアズイユの式から、1つの注入ノズル34に対して約10ポンド(4.5kg)の値が算出された。注入ノズル34が30個とすると、全ての注入に必要な力は、30×10=300重量ポンド(136重量kg)である。主ピストン44の表面積が1平方インチ(645.2mm2)とすると、必要な性能パラメータを得るために300psi(2.1MPa)の圧力が必要となる。また、この性能基準は、小型圧縮ガスシリンダー36(図8および図10)または爆薬64(図2、図3、図7A、および図7B)を用いて達成可能である。爆薬の利点は、圧力プロフィールが全注入サイクルに亘って制御でき、圧力が時間で変化するため薬物注入が最適になることである。さらに、誰でも容易に理解できるように、本発明に従ったマイクロジェット推進基準を達成するために必要な速度に薬物40を加速するために用いることができる様々な適当なエネルギー源が存在し、ここに記載する例が、本発明に用いることができるエネルギー源の種類を限定するものではない。
【0082】
図11のグラフに最もよく例示されているように、最適な範囲の圧力(psi)に対して最適な範囲の注入深さ(cm)を決定するために、本発明に従ったマイクロジェット薬物送達装置(20、20a、および20b)についての生体外検査を行った。ノズル34の直径は、約50μmであり、送達する薬物40の量は、約100μlとした。図11に明確に例示されているように、マイクロジェット薬物送達装置(20、20a、および20b)の送達圧力は、容易に調製することができ、任意の選択された組織を標的にすることができる。したがって、マイクロジェット薬物送達装置(20、20a、および20b)は、図11のグラフによると、特定の送達圧力に基づいて任意の特定の薬物を特定の組織に特定の注入深さまで確実に送達できるようにカスタマイズすることができる。したがって、このカスタマイズにより、薬物送達のために特定の層の組織を標的にすることも可能となる。例えば、組織の粘膜下層を、図11に示されているアルゴリズムにしたがって正確に標的にすることができる。
【0083】
加えて、任意の数の薬物貯蔵部38および注入ノズル34を、本発明に用いることができる(実用上の制限の範囲内で)。上記したように、これは、1つの貯蔵部38と1つのノズル34から50以上の貯蔵部38とノズル34までの任意の数が可能である。
【0084】
標準的な半導体プロセスを用いて、インクジェット印刷に用いられるノズルの製造と同様に、注入ノズル34を容易に製造することができる。したがって、注入ノズル34は、一例として、オリフィスの直径が3μm〜10μmの大量生産シリコン装置とすることができる。注入ノズル34は、シリコンウエハ状の高密度アレイとして製造し、所望の形状に切断することができる。したがって、ウエハパターンは、アレイ形状であり、任意の所望のデザインに形成することができる。結果として、マイクロノズルアレイは、円形、楕円形、または半円形パターンなどの任意の所望のパターンに製造することができ、必要とされる任意の実用的な密度の注入ノズル34とすることができる。一般に、様々な努力を払って、注入ノズル34の大きさを減少させ、このようなウエハが産出できる注入ノズル34の数を最大にする。
【0085】
熱可塑性プラスチックのマイクロ成形は、本発明に従ったマイクロジェット薬物送達装置20、20a、および20bの製造にも有用な新しい技術である。この利点は、相当なものである。シリコンウエハは、平面構造であるが、注入成形プラスチックは異なる。したがって、注入ノズル34のアレイは、例えば、面外に形成することができるため、目標の収束で配置されるようにアレイを形成するのにかなり有利であろう。別の大きな利点はコストである。熱可塑性プラスチックのマイクロノズルアレイの成形は、容易にドルの単位になるシリコン装置に比べてセントの単位と低コストである。
【0086】
マイクロノズル34を製造するために用いることができる他の方法の例として、成形遠位端部31(環状カップ)を有するノズルプレート30、30aの一部として所定の位置にオリフィスを微細加工すること、硝子、金属、セラミック、プラスチック、または他の適当な材料でオリフィスを機械加工または形成して成形遠位端部31(環状カップ)内に取り付けること(例えば、プレス嵌め)などを挙げることができる。本発明に従ったマイクロジェット薬物送達装置20、20a、および20bの他の主な構成要素と同様に、マイクロノズル34のデザインまたは製造は、特定の実施形態に限定されるものではない。
【0087】
したがって、一般に、本発明は、本発明に従った薬物送達装置20、20a、および20bを形成または製造するための方法に関する。したがって、この方法は、送達するのに望ましい薬物を特定する(あらゆる所望の治療、治療の対象となる病態または症状に基づいて行うことができる)などのいくつかの重要なステップを含む。加えて、送達するのが望ましい薬物の量も特定する。さらに、装置20、20a、および20bの構造の主なパラメータも決定する。これには、事前に決める1または複数の注入ノズル34の直径および1または複数の薬物貯蔵部38の直径などのパラメータが含まれる。さらに、治療する組織の種類または疾患に対する組織モデルを特定する。例えば、このような組織モデルは、この目的のために許容されるあらゆる適当な生体外モデルまたは生体内モデルである。したがって、組織モデルは、例えば、合成、天然、哺乳類(あらゆる動物またはヒト組織を含む)、生組織、および保存組織などの材料に基づくことができる。
【0088】
加えて、他の重要なステップには、薬物送達のために組織モデルの注入深さを特定するステップを含む。これには、薬物40のマイクロジェット注入に適当と考えられる組織の任意の所望の層または特定の層を標的にすることが含まれる。本発明に従った薬物送達装置20、20a、および20bを用いて、可変圧力で、所望の注入深さまたは所望の組織層に達するまで薬物40を組織モデル内に注入して、薬物40を組織モデルで試験する。
【0089】
本発明に従った方法を用いる際は、所望の注入深さまたは所望の組織層に達する、薬物送達装置20、20a、および20bの最適な圧力範囲を特定する。既に概要を説明したように、最適な圧力範囲は、主ピストン44で13.8Mpa(2,000psi)以下であり、注入ノズル34の先端部では最適な圧力範囲が55.2Mpa(8,000psi)以下であることが分かっている。
【0090】
本発明に従った方法は、必要な注入の力(F)を決定することによって必要な最適な圧力範囲を予測するための予測モデリングを用いることも含む。注入の力(F)は、以下の式で求めることができる。
式F=8QμL(R2/r4
この式において、Q=薬物の流速
μ=薬物の粘度
L=注入ノズルの長さ
R=薬物貯蔵部の半径
r=注入ノズルの半径
【0091】
〔使用方法〕
経皮送達または皮下送達の場合、薬物送達装置20(図1〜図4)は、送達する薬物40の全量が導入され、発射前の構造である。薬物送達装置20は、皮膚が従来の方法でつままれた状態で、任意の所望の注入部位(通常は、上腕後部、胃、または腿)に対して直角にしっかりと配置される。注入ノズル34が、ノズルプレート30の外面から外側に延びた小さな突起として終端しているため、使用者は、自身の所望の注入部位の体組織の表面に注入ノズル34を適切に配置および整合する際にすぐに感触で確認することができる。
【0092】
図4に最もよく示されているように、作動ボタン74を押すと、打撃ピン70がプライマー68に衝当し、これによりプライマー68が作動して、爆薬64が超高速で燃焼する。この制御された爆発により、ピストン44および取り付けられた押棒48が貯蔵部38内を前方にスライドして、押棒48が注入ノズル34からマイクロジェット推進力によって薬物40を排出するために必要な駆動力が得られる。
【0093】
段落92のこの例は、経皮送達または皮膚送達についてのものであるが、眼内(薬物送達装置20a)、口腔内(薬物送達装置20b)、鼻腔内(薬物送達装置20b)、耳腔内(薬物送達装置20b)、および広義の粘膜内送達全般(薬物送達装置20、20a、および20b)などの用途に用いられる薬物送達装置20aおよび20bの他の例もある。「経皮」送達は、皮内、皮下、および粘膜内などのあらゆる形態の送達を意味することに留意されたい。
【0094】
本発明に従った別の実施形態では、薬物送達装置20a(図5〜図7B)は、眼に用いるのに特に適しており、眼内マイクロ注入(特に、強膜内または硝子体内への注入)に必要なあらゆる薬物40を送達することができる。このような特定の用途に用いられる既知の薬物の例として、一般的に、VEGF拮抗薬、コルチコステロイド、および抗血管形成薬を挙げることができる。本発明に従った薬物送達装置20a(図5〜図7B)によって治療される疾患には、例えば、糖尿病性網膜症、黄班変性、および眼の血管新生を伴う他の疾患が含まれる。
【0095】
この実施形態では、成形遠位端部すなわちカップ31は、眼100の表面に配置され、カップ31の開口した中心部分が角膜の上に延在する。マイクロノズルすなわち注入ノズル34が、強膜に接触するように、成形遠位端部31の同軸リングの周りに離間して配置されている。本発明に従った一実施形態では、注入ノズル34は、円形または楕円形のパターンに構成されている。しかしながら、注入ノズル34をあらゆる所望の構造またはパターンに配置または構成することも本発明に含まれる。
【0096】
作動ボタン74を押すと、図5に示されているように、薬物40の注入ストリームが、強膜を介して眼100の深くに進入し、眼100の房水、硝子体、またはあらゆる他の所望の組織層の部分に至る。好ましくは、マイクロジェット推進力によって注入される薬物40は、ここに示すように、眼100の裏側に向かうことを目標とする。既に説明し、ここでも説明するように、多くの目的の薬物は、従来の針およびシリンジを用いて、眼の中に直接注入して投与される。明らかに、これは、ある程度のリスクを伴う方法であり、この注入は訓練を受けた眼科医によって投与されなければならない。このような従来の技術では、患者に大きなリスクが伴い、網膜剥離、度重なる注入による瘢痕、失明のリスクさえもある。さらに、注入自体が、患者にとって不快であり、注入の数秒間は、患者がじっとしなければならない。
【0097】
本発明では、眼100内への薬物40の注入は極めて迅速である。例えば、容量が20μlの薬物貯蔵部38に対して、マイクロジェット推進力によって注入される薬物40のストリームの速度が100m/sの場合、本発明に従った薬物送達装置20aを用いると、全注入時間は僅か約10ミリ秒である。患者が、注入の際に一側から他側に眼100を意図的に移動させようとし、眼の運動速度が約1cm/sとすると、この時間に眼が移動できる距離は僅か約1/10ミリであり、本発明に従った薬物送達装置20aを用いると、影響のない距離である。この結果、本発明は、医師と患者の両方にとって薬物を眼100に投与する、安全でより快適な手段を提供する。
【0098】
本発明に従った薬物送達装置20a(図5〜図7B)が従来の技術および手法に比べて多数の利点を提供することも本発明に含まれる。例えば、注入ノズル34は、眼100の特定の領域(例えば、眼100の裏側)に注入ストリームを到達させるようにデザインすることができる。加えて、薬物40の注入深さは、介護者の技術に頼ることなく、制御することができる。さらに、本発明に従った薬物送達装置20a(図5〜図7B)を用いると、眼100の組織内への薬物のマイクロジェット推進力が極めて迅速なため(少量の薬物40の注入の場合、約10ミリ秒の速さと推定される)、眼100が受けるエネルギーおよび裂傷(外傷)が最小になり、これにより眼100の外傷リスクが最小限になる。
【0099】
さらに、薬物送達装置20aは、眼の中への薬物の送達深さを制御する手段として、ジェット注入エネルギーおよび注入ストリーム形状を調節することができる。また、マイクロノズルの形状のデザインにより、ストリームの直径、軌道、凝集、および焦点を制御することができる。加えて、マイクロノズルアレイのデザインの柔軟性により、あらゆる種類の薬物、疾患、または眼内の病変部位に対して薬物送達のプロフィールを最適にすることができる。さらに、薬物送達装置20aは、眼の動きがリスクの要素とならないように極端に短い時間で眼100に薬物40を投与する手段を提供する。
【0100】
加えて、臨床前検査および/または臨床検査で現在用いられている多くの薬物40は、有望な薬物であり、眼100に少量を定期的に投与するだけでよい。本発明に従った薬物送達装置20a(図5〜図7B)は、現在利用できるあらゆる既知の装置および技術に比べて、より制御され、繰り返すことができ、安全かつ快適にこのような薬物40を眼100に送達する手段を提供する。
【0101】
本発明に従った別の実施形態は、図10に示されている鼻腔内用途である。したがって、薬物送達装置20b(図8〜図10)は、CNS(中枢神経系)薬物40をマイクロジェット注入により患者90の鼻110の嗅球に投与する際に特に有用である。
【0102】
この実施形態では、薬物送達装置20b(図8〜図10)を用いて、マイクロジェット推進力により薬物40を鼻110の粘膜下空間内に直接注入して、嗅葉のCSFに送達することができる。この目的のために、20mgまたはそれ以上の薬物40を、粘膜下空間内に極めて迅速(50ミリ秒未満)に注入し、注入の深さを正確に制御することができるため、不所望の位置への注入による外傷を全く与えずに、この領域に薬物40を正確に送達することができる。
【0103】
本発明に従った別の実施形態では、薬物送達装置20bは薬物40の口腔内投与にも用いられ、腫瘍を治療する口腔内投与、すなわち腫瘍を治療することを目的にしたマイクロジェット推進力による薬物40の標的送達のために粘膜内などの口腔内のあらゆる所望の部分に薬物をマイクロ注入することができる。
【0104】
本発明に従ったさらに別の実施形態では、薬物送達装置20bは、薬物40の耳腔内送達に用いられ、例えば、耳の様々な疾患や症状または聴覚に影響を与える様々な症状を治療するために、耳または耳道の任意の所望の部分に薬物40をマイクロ注入することができる。
【0105】
加えて、本発明に従った別の実施形態では、薬物送達装置20bは、様々な管、通路、腔、または到達が困難な表面などのアクセスが困難な体の部位にも有用である。送達チューブ25を延長することにより、マイクロジェット推進力により薬物40をこのような困難な部位に注入するために、このような困難な部位に容易にアクセスすることができる。
【0106】
したがって、上記したように、本発明に従った薬物送達装置20、20a、および20bは、様々な新規な特徴および利点を有する。このようないくつかの新規な特徴および利点は、分かりやすく要約すると以下の通りである。
・極端に小さい注入ノズル(0.051mm(0.002インチ)またはそれ以下)
・それぞれの注入量および注入時間を最小にして痛みを軽減する複数の注入貯蔵部および注入ノズル
・深い組織に到達する高圧注入および浅い組織を標的とする低圧注入を含むカスタマイズ可能な可変圧力注入
・限定された領域に薬物を集中させるまたは大きな表面に分散させることができる
・多量の薬物を少量に分割する別個の注入装置(より短い送達時間で従来のジェット注入装置と同じかそれ以上の量を注入することができる)
・多数の医療用途(すなわち、皮下、眼内、鼻腔内、口腔内など)
・必要な全エネルギー量は、利用できる従来の装置に等しいが、本発明は、薬物の投与時間が短く、患者にとって注入の痛みが少ないことを含む効率的な動作
・複数の薬物を送達できる(すなわち、現在利用できる既知の従来の薬物送達装置では不可能であった、異なる薬物を別々の薬物貯蔵部に入れることができる)
・注入の時まで賦形剤を別々に保管することができ、薬物40の長期安定性を改善できる
【0107】
安全性、使いやすさ、注入の量および深さの両方の正確さ、患者の快適性、および受け入れやすさを含め、本発明によって得られる様々な利点は、既知の技術や既存の技術では提供できない。本発明に関連した他の利点は、巨大タンパク質などの高分子、細胞、または他の生物分子および薬物を含め、小さな分子および大きな分子を正確に標的送達することができることである。そして、別の利点は、本発明に従ったマイクロジェット薬物送達装置は、薬物の送達時間が約10ミリ秒以下と極めて短く、殆ど無痛注入であることである。
【0108】
本発明は、ノズルオリフィスの極小化による患者の痛みの軽減も企図する。さらに、本発明は、粘膜内送達などのジェット注入技術の実用的な新しい使用法も可能とする。
【0109】
複数のノズルを互いに離間させてアレイ状に配置し、皮膚に対して平坦に配置して垂直にできる二次平面構造を画定するように複数のノズルを用いることも本発明の利点である。
【0110】
さらに、本発明は、薬物の分子の大きさに関係ない本当の、針を用いない薬物送達、および組織に対する外傷が最小限で、眼、鼻腔、および口などの体の敏感な部分に薬物を送達するのに適した本当の、針を用いない薬物送達を提供する。
【0111】
また、薬物送達装置20、20a、および20bは、デザインおよび構造が単純かつ能率的であり、低コストで製造が容易である。したがって、本発明に従ったマイクロジェット薬物送達装置は、所望に応じて、患者が1回使用する使い捨て装置に最も適した適切なデザインを有する。
【0112】
本明細書が本発明の好適な実施形態を含むため、本発明の範囲から逸脱することなく、ここに開示した本発明の原理にしたがって様々な変更形態および改良形態が可能であることを理解されたい。
【0113】
本発明の好適な実施形態を図示および説明してきたが、当業者であれば、このような実施形態が単なる例であることを理解できよう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変更形態、変形形態、および置換形態に想到するであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲および概念によってのみ制限されるものである。
【0114】
〔実施の態様〕
(1)薬物を送達するための装置において、
内部に圧力チャンバを有する送達チューブと、
前記圧力チャンバに流体連通した、前記送達チューブの遠位端部における少なくとも1つのノズルと、
前記少なくとも1つのノズルに近接した薬物の供給源と、
前記送達チューブの近位端部におけるハンドルと、
前記少なくとも1つのノズルを介して前記送達チューブから前記薬物を放出するために、5.5Mpa(800psi)〜13.8Mpa(2,000psi)の駆動圧力を供給するための前記ハンドル内のエネルギー源と、
を含む、装置。
(2)実施態様(1)に記載の装置において、
前記エネルギー源が作動すると、10ミリ秒〜200ミリ秒の範囲の時間内で前記少なくとも1つのノズルを介して前記薬物が放出される、装置。
(3)実施態様(2)に記載の装置において、
前記少なくとも1つの注入ノズルが、10μm〜50μmの範囲の直径を有する、装置。
(4)実施態様(3)に記載の装置において、
前記ハンドルに設けられた、前記エネルギー源を作動させるための作動要素をさらに含む、装置。
(5)実施態様(4)に記載の装置において、
前記薬物が前記送達チューブ内に受容されるように前記送達チューブの前記遠位端部に少なくとも1つの貯蔵部をさらに含み、前記少なくとも1つの貯蔵部が、前記少なくとも1つのノズルに流体連通している、装置。
【0115】
(6)実施態様(5)に記載の装置において、
前記少なくとも1つの貯蔵部が、10μL〜1mLの範囲の量の薬物を受容する、装置。
(7)実施態様(6)に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルを介して前記薬物を放出するために前記圧力チャンバ内にピストンをさらに含む、装置。
(8)実施態様(7)に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルを介して前記薬物を放出するために前記少なくとも1つの貯蔵部内に移動可能に配置され、前記ピストンに連結された少なくとも1つの押棒をさらに含む、装置。
(9)実施態様(8)に記載の装置において、
27.6Mpa(4,000psi)〜172.4Mpa(25,000psi)の範囲の圧力で前記少なくとも1つのノズルの先端部から前記薬物が放出される、装置。
(10)実施態様(9)に記載の装置において、
前記ピストンの一部分に配置された前記送達チューブ内のシールをさらに含む、装置。
【0116】
(11)実施態様(10)に記載の装置において、
前記シールがOリングシールを含む、装置。
(12)実施態様(10)に記載の装置において、
前記少なくとも1つの押棒の遠位端部に貯蔵部シールをさらに含む、装置。
(13)実施態様(4)に記載の装置において、
前記送達チューブの前記圧力チャンバ内の圧力を制御するために、前記エネルギー源と前記送達チューブとの間に弁をさらに含む、装置。
(14)実施態様(13)に記載の装置において、
前記エネルギー源が圧縮ガスである、装置。
(15)実施態様(14)に記載の装置において、
前記圧縮ガスが、カートリッジ内に受容されている、装置。
【0117】
(16)実施態様(4)に記載の装置において、
前記エネルギー源にアクセスするために前記ハンドルに取外し可能に連結されたカバーをさらに含む、装置。
(17)実施態様(4)に記載の装置において、
前記送達チューブの遠位端部にノズルプレートをさらに含み、このノズルプレート内に前記少なくとも1つのノズルが配置されている、装置。
(18)実施態様(4)に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルが、前記少なくとも1つのノズルの前記遠位先端部において外側突出部として前記ノズルプレートから延びている、装置。
(19)実施態様(4)に記載の装置において、
前記エネルギー源が爆薬を含む、装置。
(20)実施態様(19)に記載の装置において、
前記爆薬を発火させるために前記ハンドル内にプライマーをさらに含む、装置。
【0118】
(21)実施態様(20)に記載の装置において、
前記プライマーを作動させるために前記作動要素に動作可能に連結された打撃ピンをさらに含む、装置。
(22)実施態様(17)に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルが、前記薬物を標的点に送達するように配置されている、装置。
(23)実施態様(22)に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルが、前記ハウジングの遠位端部に配置された複数のノズルを含む、装置。
(24)実施態様(23)に記載の装置において、
前記複数のノズルが、前記薬物を標的点に送達するように配置されている、装置。
(25)実施態様(4)に記載の装置において、
前記装置が、1人の患者のみが使用する使い捨て装置である、装置。
【0119】
(26)実施態様(4)に記載の装置において、
前記装置が、再使用可能な装置である、装置。
(27)実施態様(9)に記載の装置において、
55.2Mpa(8,000psi)〜82.7Mpa(12,000psi)の範囲の圧力で前記少なくとも1つのノズルの先端部から前記薬物が放出される、装置。
(28)実施態様(27)に記載の装置において、
ほぼ69.0Mpa(10,000psi)の範囲の圧力で前記少なくとも1つのノズルの先端部から前記薬物が放出される、装置。
(29)組織内に薬物を送達するための方法において、
一部分の中に薬物を受容し、少なくとも1つのノズルを備えた薬物送達装置を用意するステップと、
薬物を送達するための組織内または組織上の部位を特定するステップと、
前記装置の一部を前記部位またはその近傍に配置するステップと、
5.5Mpa(800psi)〜13.8Mpa(2,000psi)の駆動圧力で、マイクロジェット推進力により前記装置の少なくとも1つのノズルを介して前記薬物を前記部位の前記組織内に送達するステップと、
を含む、方法。
(30)実施態様(29)に記載の方法において、
前記少なくとも1つのノズルの先端部において、最大27.6Mpa(4,000psi)〜172.4Mpa(25,000psi)の範囲の圧力で、前記部位の前記組織内に前記薬物を送達するステップをさらに含む、方法。
【0120】
(31)実施態様(30)に記載の方法において、
前記少なくとも1つのノズルの先端部において、55.2Mpa(8,000psi)〜82.7Mpa(12,000psi)の範囲の圧力で、前記部位の前記組織内に前記薬物を送達するステップをさらに含む、方法。
(32)実施態様(29)に記載の方法において、
10ミリ秒〜200ミリ秒の範囲の時間内で、前記少なくとも1つのノズルを介して前記部位の前記組織内に前記薬物を送達するステップをさらに含む、方法。
(33)実施態様(32)に記載の方法において、
10μL〜1mLの範囲の量の薬物を前記部位の前記組織内に送達するステップをさらに含む、方法。
(34)実施態様(33)に記載の方法において、
直径が10μm〜50μmの範囲の前記少なくとも1つのノズルを用いるステップをさらに含む、方法。
(35)実施態様(34)に記載の方法において、
標的点における前記部位の前記組織内に前記薬物を送達するステップをさらに含む、方法。
【0121】
(36)実施態様(29)に記載の方法において、
前記装置の一部分を眼または眼の近傍に配置して、前記眼に前記薬物を送達するステップをさらに含む、方法。
(37)実施態様(36)に記載の方法において、
前記装置を用いて糖尿病性網膜症を治療するステップをさらに含む、方法。
(38)実施態様(36)に記載の方法において、
前記装置を用いて黄班変性を治療するステップをさらに含む、方法。
(39)実施態様(36)に記載の方法において、
前記装置を用いて前記眼の血管新生を治療するステップをさらに含む、方法。
(40)実施態様(29)に記載の方法において、
前記装置の一部分を皮膚または皮膚の近傍に配置するステップをさらに含む、方法。
【0122】
(41)実施態様(40)に記載の方法において、
前記装置を用いて、前記皮膚内または前記皮膚内の層に前記薬物を送達するステップをさらに含む、方法。
(42)実施態様(29)に記載の方法において、
前記装置の一部分を鼻の一部分または鼻の一部分の近傍に配置するステップをさらに含む、方法。
(43)実施態様(42)に記載の方法において、
前記装置の一部分を、鼻の嗅葉または鼻の嗅葉の近傍に配置するステップをさらに含む、方法。
(44)実施態様(43)に記載の方法において、
中枢神経系(CNS)に関連した疾患を治療するために鼻の嗅葉に前記薬物を送達するステップをさらに含む、方法。
(45)実施態様(29)に記載の方法において、
前記装置の一部分を口の一部分または口の一部分の近傍に配置して、前記薬物を前記口の前記部分に送達するステップをさらに含む、方法。
【0123】
(46)実施態様(29)に記載の方法において、
前記装置の一部分を耳の一部分または耳の一部分の近傍に配置して、前記薬物を前記耳の前記部分に送達するステップをさらに含む、方法。
(47)実施態様(29)に記載の方法において、
前記装置の一部分を管または管の近傍に配置して、前記薬物を前記管に送達するステップをさらに含む、方法。
(48)実施態様(29)に記載の方法において、
前記装置の一部分を通路または通路の近傍に配置して、前記薬物を前記通路に供給するステップをさらに含む、方法。
(49)実施態様(29)に記載の方法において、
前記装置の一部を腔または腔の近傍に配置して、前記薬物を前記腔に送達するステップをさらに含む、方法。
(50)実施態様(31)に記載の方法において、
ほぼ69.0Mpa(10,000psi)の範囲の圧力で前記少なくとも1つのノズルの先端部から前記薬物を放出するステップをさらに含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明に従ったマイクロジェット薬物注入装置の一実施形態の斜視図である。
【図2】本発明に従った図1の装置の組立分解図である。
【図3】本発明に従った発射前の構造にある図1の装置の断面図である。
【図4】本発明に従った発射した構造にある図1の装置の断面図である。
【図5】本発明に従った、眼への使用などに特に有用なマイクロジェット薬物送達装置の別の実施形態の近位側斜視図である。
【図6】本発明に従った図5の装置の遠位側斜視図である。
【図7A】本発明に従った図5の装置の断面図である。
【図7B】本発明に従ったLED集束光を有する図7Aの装置の代替の実施形態の断面図である。
【図8】本発明に従った、鼻への使用などに特に有用なマイクロジェット薬物注入装置の別の実施形態の部分断面側面図である。
【図9】本発明に従った図8の装置の遠位端部の部分拡大側面図である。
【図10】本発明に従った鼻に用いられる図8の装置の絵画図である。
【図11】ノズル直径が50μm、薬物送達量が100μlの本発明に従ったマイクロジェット薬物送達装置における圧力に対する注入深さの検査を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を送達するための装置において、
内部に圧力チャンバを有する送達チューブと、
前記圧力チャンバに流体連通した、前記送達チューブの遠位端部における少なくとも1つのノズルと、
前記少なくとも1つのノズルに近接した薬物の供給源と、
前記送達チューブの近位端部におけるハンドルと、
前記少なくとも1つのノズルを介して前記送達チューブから前記薬物を放出するために、5.5Mpa(800psi)〜13.8Mpa(2,000psi)の駆動圧力を供給するための前記ハンドル内のエネルギー源と、
を含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記エネルギー源が作動すると、10ミリ秒〜200ミリ秒の範囲の時間内で前記少なくとも1つのノズルを介して前記薬物が放出される、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
前記少なくとも1つの注入ノズルが、10μm〜50μmの範囲の直径を有する、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記ハンドルに設けられた、前記エネルギー源を作動させるための作動要素をさらに含む、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
前記薬物が前記送達チューブ内に受容されるように前記送達チューブの前記遠位端部に少なくとも1つの貯蔵部をさらに含み、前記少なくとも1つの貯蔵部が、前記少なくとも1つのノズルに流体連通している、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記少なくとも1つの貯蔵部が、10μL〜1mLの範囲の量の薬物を受容する、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルを介して前記薬物を放出するために前記圧力チャンバ内にピストンをさらに含む、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルを介して前記薬物を放出するために前記少なくとも1つの貯蔵部内に移動可能に配置され、前記ピストンに連結された少なくとも1つの押棒をさらに含む、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、
27.6Mpa(4,000psi)〜172.4Mpa(25,000psi)の範囲の圧力で前記少なくとも1つのノズルの先端部から前記薬物が放出される、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、
前記ピストンの一部分に配置された前記送達チューブ内のシールをさらに含む、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、
前記シールがOリングシールを含む、装置。
【請求項12】
請求項10に記載の装置において、
前記少なくとも1つの押棒の遠位端部に貯蔵部シールをさらに含む、装置。
【請求項13】
請求項4に記載の装置において、
前記送達チューブの前記圧力チャンバ内の圧力を制御するために、前記エネルギー源と前記送達チューブとの間に弁をさらに含む、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、
前記エネルギー源が圧縮ガスである、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置において、
前記圧縮ガスが、カートリッジ内に受容されている、装置。
【請求項16】
請求項4に記載の装置において、
前記エネルギー源にアクセスするために前記ハンドルに取外し可能に連結されたカバーをさらに含む、装置。
【請求項17】
請求項4に記載の装置において、
前記送達チューブの遠位端部にノズルプレートをさらに含み、このノズルプレート内に前記少なくとも1つのノズルが配置されている、装置。
【請求項18】
請求項4に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルが、前記少なくとも1つのノズルの前記遠位先端部において外側突出部として前記ノズルプレートから延びている、装置。
【請求項19】
請求項4に記載の装置において、
前記エネルギー源が爆薬を含む、装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置において、
前記爆薬を発火させるために前記ハンドル内にプライマーをさらに含む、装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置において、
前記プライマーを作動させるために前記作動要素に動作可能に連結された打撃ピンをさらに含む、装置。
【請求項22】
請求項17に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルが、前記薬物を標的点に送達するように配置されている、装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置において、
前記少なくとも1つのノズルが、前記ハウジングの遠位端部に配置された複数のノズルを含む、装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置において、
前記複数のノズルが、前記薬物を標的点に送達するように配置されている、装置。
【請求項25】
請求項4に記載の装置において、
前記装置が、1人の患者のみが使用する使い捨て装置である、装置。
【請求項26】
請求項4に記載の装置において、
前記装置が、再使用可能な装置である、装置。
【請求項27】
請求項9に記載の装置において、
55.2Mpa(8,000psi)〜82.7Mpa(12,000psi)の範囲の圧力で前記少なくとも1つのノズルの先端部から前記薬物が放出される、装置。
【請求項28】
請求項27に記載の装置において、
ほぼ69.0Mpa(10,000psi)の範囲の圧力で前記少なくとも1つのノズルの先端部から前記薬物が放出される、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−44530(P2007−44530A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−217133(P2006−217133)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(506272699)アルザ・コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】ALZA Corporation
【住所又は居所原語表記】1900 Charleston Road, Mountain Lakes, CA 94043, U.S.A.
【Fターム(参考)】