説明

口腔洗浄器

【課題】歯周ポケットや歯茎等の口腔内の軟組織を傷つけることなく、洗浄液や抗菌剤、抗炎症剤等を含む薬液等を歯間部や歯周ポケット等に確実に噴出して、洗浄液の無駄な噴出や飛散を防止して当該部位を効率よく洗浄し、薬液を供給し、マッサージすることが可能な口腔洗浄器を提供する。
【解決手段】先端部を頂角35°〜70°、好ましくは40°〜50°の円錐状に先細り形成し、円錐状先端部43の突端に吐出口41を開口し、突端周縁に丸みをつけた弾性体ノズル4を洗浄液吐出管3の先端に備えた口腔洗浄器1は、隣接する歯と歯茎との間の三角部分の開口部を塞いだ状態でノズル4の突端が確実にフィットし、洗浄液等の飛散も少なく歯間部の食べかす等を洗浄液等により確実に除去でき、歯周ポケットの洗浄では、弾性体ノズル4の突端が歯周ポケット内に突き刺さることなく歯周ポケットの入口に確実に押し当てた状態で歯周ポケット内に洗浄等を噴出して洗浄等ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔洗浄器に関し、更に詳しくは、洗浄液吐出管先端の吐出口から、歯間部、例えば隣接する歯と歯茎との間の三角部分、歯と歯肉の境目の歯肉辺縁部、歯と歯茎との間の歯周ポケットなどに対して洗浄液を吐出して、当該部分に残留している食物の残滓などを除去したり、抗菌剤や抗炎症剤などを含む薬液などをそれらの部位へ供給することにより、プラークの除去や抑制、組織の炎症の抑制などを行い、また歯茎部の歯肉のマッサージなどをするための口腔洗浄器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯間部、歯肉辺縁部、歯周ポケットなどの洗浄や歯茎部の歯肉のマッサージなどを行うため、各種の口腔洗浄器(オーラルイリゲータ)が提案されている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。これらの口腔洗浄器は、弾力性のあるコンテナ容器に洗浄液を収納し、該コンテナ容器を押圧することで、コンテナ容器に連通連結したノズル(洗浄液吐出管)先端の吐出口から歯間部や歯周ポケット内へ高速のジェット水流を間歇的に吐出して歯間部や歯周ポケットの洗浄や歯茎部の洗浄、殺菌、歯茎部の歯肉のマッサージなどを行うように構成されている。また、洗浄液吐出管をシリンジの先端開口部に連結する構造のものや(例えば、特許文献4参照。)、ポンプ機能を備えた容器に洗浄液吐出管を装着したもの(例えば、特許文献5、6等参照。)、更には、洗浄液に空気を混入させて洗浄液とともに吐出させるもの(例えば特許文献7参照。)も提案されている。更に、洗浄液吐出管を電動脈動ポンプや手動ポンプに装着したものや、パイプやホースを介して水道の蛇口に接続する構造のものなど、各種構造の口腔洗浄器が提案されている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第1961489号明細書
【特許文献2】米国特許第3199510号明細書
【特許文献3】米国特許第3391696号明細書
【特許文献4】米国特許第4787845号明細書
【特許文献5】特開平3−261469号公報
【特許文献6】特開平9−285477号公報
【特許文献7】実用新案登録第2594664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の口腔洗浄器における洗浄液吐出手段としては、洗浄液吐出管またはその先端に装着されるノズルがガラス、金属、合成樹脂により成形されたもの(成形品ノズル、例えば、特許文献1、6参照。)、洗浄液吐出管の先端に、先の尖った弾性体チップを取り付けて突端を歯周ポケット内に差し込んで洗浄液を吐出するのも(例えば、特許文献2〜4参照。)などがある。しかし、前者の、成形品ノズルの場合には、目的とする歯間部や歯周ポケット部分にノズル先端をあてがったときに、洗浄液吐出時の振動や手ぶれによって目的とする部位から滑ったり、外れたりし易く、洗浄液が無駄に噴出したり、周辺部に飛散したりし易いうえに、誤操作によりノズル先端にて口腔内の軟組織を痛めたりするおそれがあった。また、後者の、先端が尖った弾性体チップを備えたものでは、前記と同様の洗浄液の無駄な噴出や飛散の問題に加えて、尖った先端が歯周ポケット内に深く侵入しすぎて歯周ポケット底部を傷付けたりするおそれがあった。
【0005】
本発明は上記のような従来の口腔洗浄器における問題点に鑑み、歯肉辺縁部、歯周ポケット、歯茎などの口腔内の軟組織を傷つけることなく、洗浄液や、抗菌剤、抗炎症剤などを含む薬液などを、歯間部、歯肉辺縁部、歯周ポケットなどの洗浄対象部位に確実に噴出して、洗浄液や薬液などの無駄な噴出や飛散を防止して当該部位を効率よく洗浄したり、マッサージすることが可能な口腔洗浄器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る口腔洗浄器は、洗浄液供給手段と、該洗浄液供給手段に装着される洗浄液吐出管と、該洗浄液吐出管の先端に設けられ、前記洗浄液吐出管の吐出流路に連通する洗浄液吐出口を有する弾性体ノズルとを備えた口腔洗浄器であって、前記弾性体ノズルの先端部が、頂角が35°〜70°の円錐状に先細り形成されており、かつ前記円錐状先端部の突端に洗浄液吐出口が開口し、該突端の周縁には丸みがつけられていることを特徴とする。
【0007】
前記弾性体ノズルは、洗浄液吐出口の直径は0.4〜0.9mmの範囲、突端周縁の丸みは半径0.5〜1.0mmの範囲、太さは直径3〜6mmの範囲であることが好ましい。
【0008】
さらに、前記弾性体ノズルは、JIS A硬度で40°〜75°の範囲の硬度を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明の口腔洗浄器は、前記洗浄液供給手段が、ポンプ機能を有する携帯可能な容器からなるものが好ましい。
【0010】
また、前記洗浄液吐出口からの洗浄液の吐出が妨げられた場合に生ずる内圧を逃がすための分岐流路を、前記洗浄液吐出管の吐出流路とは別に設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の口腔洗浄器は、洗浄液吐出管の先端に装着された弾性体ノズルの先端を、頂角が35°〜70°の円錐状に先細り形成してなるので、隣接する歯と歯茎との間の三角部分に弾性体ノズルの突端部分が、該三角部分の開口部を塞いだ状態で確実にフィットし、当該歯間部めがけて確実に洗浄液を噴出させることができ、洗浄液の周辺への飛散も少なく、歯間部の食べかすなどを洗浄液により確実に除去して洗浄することができる。また洗浄液に抗菌剤や抗炎症剤などを含んだ薬液を歯間部へ供給することにより、プラークを除去したり抑制したり、またその部位の炎症作用を抑制したり、沈静化したりすることができる。また前記弾性体ノズルは、先端部が前記のように適度な角度で尖っているともに突端周縁は丸みを帯びており、さらに特定の規定された大きさにより形成されている場合は、歯周ポケットの洗浄に際しても、弾性体ノズルの突端が歯周ポケット内に突き刺さる危険もなく歯周ポケットの入口に確実に押し当てられた状態で歯周ポケット内に確実に洗浄液を噴出して歯周ポケット内の洗浄や、炎症を抑制するための薬剤などの供給を行うことができる。更に、洗浄液吐出管の先端に装着した弾性体ノズルは、その弾性により歯茎の歯肉などに当てても傷付けることなく安全であるうえに、滑り止め効果により、位置ズレが防止され、洗浄液や薬液などの無駄な噴出や飛散を防止できる効果もある。
【0012】
また、前記洗浄液吐出口からの洗浄液の吐出が妨げられた場合に生ずる内圧を逃がすための分岐流路を、前記洗浄液吐出管の吐出流路とは別に設けた場合には、弾性体ノズルの先端部が、洗浄部位又は患部に適切に押し当てられない場合や、洗浄部位又は患部に腫れや腫脹がある場合などに、洗浄液吐出口が少なくとも部分的にふさがれ、洗浄液の吐出が少なくとも部分的に阻害され、口腔洗浄器全体、洗浄液吐出管、弾性体ノズルの内圧が高まった場合にも、洗浄液が分岐流路から外部に放出され、弾性体ノズル内部に蓄積されないので、前記のような内圧上昇が抑制され、洗浄液の飛散や弾性体ノズルの飛び出しなどを防止でき、また使用者は、口腔内で分岐流路からの放出を感知することによって、異常操作であることを知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明に係る口腔洗浄器の一実施の形態を示すものである。口腔洗浄器1は、洗浄液供給手段2と、それに装着される洗浄液吐出管3とを備え、洗浄液吐出管3の先端には、弾性体ノズル4が設けられている。弾性体ノズル4は、洗浄液吐出管3と一体に形成されていてもよいし、それとは別体で洗浄液吐出管3に着脱自在に装着されていてもよい。
【0014】
図例の口腔洗浄器1は、洗浄液供給手段2が、ポンプ機能を有する洗浄液容器21からなり、洗浄液容器21に設けられた押圧部(ボタン)22を押圧するたびに、洗浄液吐出管3内の吐出流路31を通じて、先端に設けた弾性体ノズル4の突端に開口した吐出口41から洗浄液が噴出されるように構成されている。
【0015】
洗浄液供給手段2の構造は特に限定されるものではなく、従来公知の洗浄液容器を用いることができる。例えば特開平3−261469号公報(特許文献5)、特開平9−2854477号公報(特許文献6)などに開示されているポンプ機能を有する容器や、米国特許第1961489号明細書、米国特許第3199510号明細書、米国特許第3391696号明細書(特許文献1〜3)に開示された、弾力性を有する容器からなるものであってもよい。また、洗浄液供給手段2は、電気的、機械的な駆動機構を有する装置を用いてもよく、特開平7−59801号公報に開示されたような別体の貯水槽をもつものでもよく、特開平8−117254号公報に開示されたような本体に付属したタンクをもつものでもよく、更には特開平10−314189号公報に開示されたように電動歯ブラシの駆動部分を洗浄液の供給駆動としたものでもよい。また、電気駆動による洗浄液供給機能を有する装置を用いてもよい。更に、洗浄液供給手段2としては、米国特許第4787845号明細書(特許文献4)に開示されたようなシリンジを用いてもよいし、登録実用新案第2594664号公報(特許文献7)に開示された、空気混合機能を有するものを使用することもできる。また、洗浄液吐出管3を、ホースやパイプを介して水道の蛇口などに接続するようにしてもよい。
【0016】
洗浄液供給手段2から供給される洗浄液には特に限定はなく、歯周病の予防、治療などに有効な抗菌剤や抗炎症剤などを含む薬液であってもよいし、単なる水であってもよい。
抗菌剤としては、例えば、塩酸塩やグルコン酸塩のクロルヘキシジン塩類等のビスビグアニド系抗菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム等の4級アンモニウム塩抗菌剤、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシル−アルギニンエチル塩等のアミノ酸系抗菌剤、トリクロサン等のハロゲン化ジフェニルエーテル、チモール、イソプロピルメチルフェノール(1−ヒドロキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、パラオキシ安息香酸塩及びそのエステル類、カルバクロール、レゾルシノール等のフェノール化合物、メトロニタゾール、ヘキセチジン等の窒素原子を含む複素環化合物抗菌剤、1,8−シネオール、油溶性甘草エキス等の天然抽出物抗菌剤、ヨード、ヨードグリセリン等のハロゲン化合物等が挙げられる。
また、抗炎症剤としては、例えば、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトロラック、インドメタシン等の非ステロイド系消炎剤、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン等のステロイド系消炎剤、アズレン、アズレンスルホン酸塩、グリチルリチン酸及びその塩類、グリチルレチン酸、トウキ軟エキス、塩化ナトリウム、酢酸やニコチン酸のトコフェロールエステル類、塩酸ピリドキシン、塩化リゾチーム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン類、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン等が挙げられる。
【0017】
洗浄液供給手段2に装着された洗浄液吐出管3は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂及びそれらのブレンド樹脂などの合成樹脂、ガラス、ステンレスなどの金属からなる。洗浄液吐出管3は、基端部の外周面に洗浄液供給手段2へ装着するためのフランジ32を周設するととも、フランジ32から下方へ洗浄液導入部34が突設され、洗浄液導入部34を洗浄液容器21に挿入した状態で洗浄液供給手段2に装着されている。洗浄液吐出管3の長さは特に限定されるものではないが、図例のものは、洗浄液容器21から突出しているフランジ32下面から先端までの長さが約60mmであり、先端から約1/5の位置で屈曲形成されている。洗浄液吐出管3先端の屈曲角度θ1は特に限定されるものではないが、通常、洗浄液吐出管3の軸芯Oに対して30°〜100°程度、好ましくは30°〜60°程度、または90°前後の角度で屈曲形成されており、図例のものは軸芯Oに対して45°に屈曲されている。上記のように、洗浄液吐出管3を、洗浄液供給手段2に装着し、またその先端部を屈曲形成することで、口腔内で様々な角度に洗浄液を噴出することができ、操作性に優れたものとなる。また、洗浄液吐出管3の内部を貫通して形成された吐出流路31は、洗浄液容器21側の基端部から弾性体ノズル4を装着した先端部側に向かってその内径が次第に狭くなるように先細状に形成されている。これにより、洗浄液容器21から吐出流路31を通って先端から吐出される洗浄液の速度を高め、歯間部や歯周ポケット内に対して洗浄液をより高速で噴出可能となっている。
【0018】
洗浄液吐出管3の屈曲した先端部には、図2に示すような弾性体ノズル4が設けられている。図例の弾性体ノズル4は、洗浄液吐出管3とは別体で形成され、洗浄液吐出管3先端を被覆するように、該先端に形成されたフランジ部35に外嵌状態に装着されるとともに、洗浄液吐出管3の吐出流路31に連通する吐出孔42が、突端の洗浄液吐出口41で外部に開口している。弾性体ノズル4は、例えば天然ゴム、合成ゴム、軟質合成樹脂、熱可塑性エラストマーなどの弾性を有する材料にて作製されている。前記合成ゴムとしては、好ましくは、スチレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレインゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンイソプレンゴムなどが用いられる。前記軟質合成樹脂としては、好ましくは、軟質ポリアミド樹脂、軟質ポリエチレン樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、軟質ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、EEA樹脂(エチレン・アクリル酸エチル共重合体)、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂などが用いられる。更に、前記熱可塑性エラストマーとしては、好ましくは、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ニトリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどが用いられる。弾性体ノズル4の先端部43は、頂角θ2が35°〜70°、好ましくは40°〜50°であり、図例のものでは40°の円錐状に先細り形成されており、該円錐状先端部43の突端に洗浄液吐出口41が開口している。洗浄液吐出口41の直径(開口径)dは0.4〜0.9mmの範囲であることが好ましく、図例のものでは直径dは0.6mmである。洗浄液吐出口41の直径dを前記の範囲とすることで、高速の洗浄液を歯間部や歯周ポケットに対して噴出することができる。また、弾性体ノズル4の円錐状先端部43の長さL1は4〜6mm、図例のものでは5mmであり、弾性体ノズル4の全長L2は10〜15mm、図例のものでは約12mmであり、太さDは直径3〜6mm、図例のものでは5mmである。弾性体ノズル4の大きさを前記のような範囲とすることで、口腔内で嵩張らず、操作性がよい。また、弾性体ノズル4の円錐状先端部43の突端周縁には、半径Rが0.5〜1.0mm、図例のものでは半径Rが0.7mmの丸みがつけられている。
【0019】
また、図3に示すものは弾性体ノズルの他の実施形態を示すものであり、この弾性体ノズル4Bは、洗浄液吐出口41からの洗浄液の吐出が妨げられた場合に生ずる内圧を逃がすための分岐流路を、洗浄液吐出管3の吐出流路31とは別に設けている以外は、図2に示す弾性体ノズル4と同一の形状、構造を有し、弾性体ノズル4Bの側部に、側方分岐流路44および側方吐出口45を備えている。この側方分岐流路44を備えた弾性体ノズル4Bの場合、先端部43が適切に洗浄部位または患部に押し当てられている場合には、洗浄液は洗浄液吐出管3の吐出流路31から弾性体ノズル4Bの吐出孔42を通って洗浄液吐出口41より吐出される。側方分岐流路44及び側方吐出口45は、弾性体ノズル4Bの先端部分の洗浄液吐出口41からの洗浄液の吐出が妨げられない限り、側方分岐流路44の内部口46が洗浄液吐出管3のフランジ部35側面に隙間なく密着しており、側方分岐流路44から洗浄液が漏れることはない。しかし、弾性体ノズル4Bの先端部43が、洗浄部位又は患部に適切に押し当てられない場合や、洗浄部位又は患部に腫れや腫脹がある場合などに、洗浄液吐出口41が少なくとも部分的にふさがれ、洗浄液の吐出が少なくとも部分的に阻害された場合、口腔洗浄器1全体及び洗浄液吐出管3や弾性体ノズル4の内圧が高まり、口腔洗浄器1の内部機構への負荷及び洗浄液の飛散が生じ、または必要以上の圧力で洗浄液が口腔内の組織に吐出されたり、あるいは弾性体ノズル4を洗浄液吐出管3と別体で設けた場合には、弾性体ノズル4が洗浄液吐出管3から飛び出したりすることが起こりうる。そのような場合にも、弾性体ノズル4Bのように、吐出口42の側方分岐流路44があることにより、洗浄液吐出口41がふさがれるようなことが起きても、洗浄液が洗浄液吐出管3と弾性体ノズル4Bとの界面から漏れだして、側方分岐流路44から外部に放出され、弾性体ノズル4B内部に蓄積されない。そのため、口腔洗浄器1全体及び弾性体ノズル4Bの内圧の上昇が抑制され、洗浄液の飛散や弾性体ノズル4Bの飛び出しなどを防止することができる。また使用者は、口腔内で側方分岐流路44からの放出を感知することによって、異常操作であることを知ることができる。側方分岐流路44は、1〜2カ所とし、その穴の大きさは、各側方分岐流路44の断面積の合計が、洗浄吐出口41の面積と同等か、それ以上に設定されていればよい。側方分岐流路44の設置位置は、フランジ部35の外周のうち先端よりが望ましい。また側方分岐流路44の方向は、フランジ部35の外周方向へ向いている場合の他、吐出流路31と同方向でもよい。
【0020】
上記のような本発明の口腔洗浄器1によれば、弾性体ノズル4の先端を前記のような適度な角度に尖らせるとともに突端周縁に丸みをつけたことで、弾性体ノズル4が歯周ポケット内部に突き刺さったり、歯茎を傷付けたりすることを防止しつつ、図4(a)、(b)に示すように、隣接する歯Tと歯Tとの歯間と歯茎5との間の三角部分6に弾性体ノズル4の突端部を確実にフィットさせ、当該三角部分6の開口部に確実にフィットして開口部を塞いだ状態で、洗浄液の漏れや飛散を防止しつつ高速の洗浄液を三角部分6の隙間内へ噴出して食べかすなどを除去して洗浄することができ、また抗菌剤や抗炎症剤などを含む薬液によりプラークの除去や抑制、組織の炎症の抑制などを行うことができる。また、図4(c)に示すように、弾性体ノズル4を歯周ポケット7の入口付近にフィットさせた状態で歯周ポケット7内に洗浄液を噴出して、歯周ポケット7内を洗浄、殺菌することができるとともに、弾性体ノズル4が歯周ポケット7内に突き刺さり、傷付けるようなこともない。
【0021】
このように、本発明の口腔洗浄器1は、歯周ポケットなど口腔内の軟組織を傷付けるおそれもなく、歯間と歯茎との間の三角部分や、歯肉辺縁部、歯周ポケットなどに対して洗浄液を噴出し、効果的に洗浄することができ、また抗菌剤や抗炎症剤などを含有させた薬液などを供給することにより、薬効成分を効果的に作用させ、虫歯や歯周病などの予防に大いに寄与することができる。また、洗浄液や薬液が繰り返し吐出され、歯肉や歯間乳頭部にあたることにより適宜刺激を受けマッサージ効果を生み出すことができる。
【0022】
試験例1:ノズル先端部の頂角の大きさの違いによる、歯間乳頭部へのノズル先端部のフィット性、洗浄液供給時の操作性、供給安定性についての評価
(試験方法)
先端部43が下記表1に示した頂角θ2の角度を有し、JIS A硬度 60°のシリコーンゴムで成形した弾性体ノズル4を作成した。それら弾性体ノズル4を、図1に示す口腔洗浄器1の先端に取り付けた。口腔洗浄器1の洗浄液容器21には、あらかじめ水道水を充填しておいた。ノズル装着後、顎模型を用いて、下顎第1大臼歯と第2大臼歯の歯間乳頭部を用いて、先端部43の角度θ2が異なる各弾性体ノズル4について、歯間乳頭部へのノズル先端部のフィット性、歯間部への洗浄液供給時の操作性、歯間部への洗浄液の供給安定性について評価した。評価は以下の基準に基づいて行った。総合評価は、各評価項目のうち1項目でも「×」があるものは、本発明が目的とする製品としての機能を満たしていないと判断して、総合評価も不合格で「×」とした。また、各評価項目が「△」以上のものは、目的とする製品の最低限度の機能は満たしているものと判断して、総合評価は「△」とした。更に、各評価項目の全てが「○」のものを総合評価でも「○」とした。そして、前記の総合評価が「△」以上であるものを合格とした。
【0023】
(歯間乳頭部へのノズル先端部のフィット性についての評価基準)
○:フィットしてノズル先端部と歯間乳頭部との間に空隙がない。
△:歯間乳頭部との間に少しの空隙ができる。
×:歯間乳頭部との間にかなり大きな空隙ができる。
【0024】
(歯間部への洗浄液供給時の操作性についての評価基準)
○:ノズル先端のぶれがなく、簡単に供給できる。
△:ノズル先端に少しのぶれがあるが、供給できる。
×:ノズル先端のぶれが大きく、供給にかなりの注意を要する。
【0025】
(歯間部への洗浄液の供給安定性)
○:操作時の手振れによる負荷があっても安定して洗浄液を供給できる。
△:捜査時の手振れによる負荷がノズルにかかると、ノズルがやや変形するが、洗浄液の供給はできる。
×:操作時の手振れによる負荷によりノズルが変形し安定して洗浄液を供給できない。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示すとおり、ノズル先端部の頂角θ2を、35°〜70°、更には40°〜50°とすることで、歯間乳頭部へのノズル先端部のフィット性、洗浄液供給時の操作性および供給安定性に優れた口腔洗浄器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る口腔洗浄器の一実施形態を示す要部断面図である。
【図2】口腔洗浄器の洗浄液吐出管先端部の拡大部分断面図である。
【図3】口腔洗浄器の他の実施形態を示す洗浄液吐出管先端部の拡大部分断面図である。
【図4】(a)は口腔内の模式図、(b)は口腔洗浄器により歯間部と歯茎との間の三角部分を洗浄する様子を示す模式図、(c)は口腔洗浄器により歯周ポケットを洗浄する様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 口腔洗浄器
2 洗浄液供給手段
3 洗浄液吐出管
4、4B 弾性体ノズル
5 歯茎
6 三角部分
7 歯周ポケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液供給手段と、該洗浄液供給手段に装着される洗浄液吐出管と、該洗浄液吐出管の先端に設けられ、前記洗浄液吐出管の吐出流路に連通する洗浄液吐出口を有する弾性体ノズルとを備えた口腔洗浄器であって、
前記弾性体ノズルの先端部が、頂角が35°〜70°の円錐状に先細り形成されており、かつ前記円錐状先端部の突端に洗浄液吐出口が開口し、該突端の周縁には丸みがつけられていることを特徴とする口腔洗浄器。
【請求項2】
前記洗浄液吐出口の直径が、0.4〜0.9mmの範囲である請求項1記載の口腔洗浄器。
【請求項3】
前記弾性体ノズルの突端の丸みが、半径0.5〜1.0mmの範囲である請求項1又は2に記載の口腔洗浄器。
【請求項4】
前記弾性体ノズルの太さが、直径3〜6mmの範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔洗浄器。
【請求項5】
前記弾性体ノズルの硬度が、JIS A硬度で40°〜75°の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の口腔洗浄器。
【請求項6】
前記洗浄液供給手段が、ポンプ機能を有する携帯可能な容器からなる請求項1〜5のいずれかに記載の口腔洗浄器。
【請求項7】
前記洗浄液吐出口からの洗浄液の吐出が妨げられた場合に生ずる内圧を逃がすための分岐流路を、前記洗浄液吐出管の吐出流路とは別に設けた請求項1〜6のいずれかに記載の口腔洗浄器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−167088(P2007−167088A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364277(P2005−364277)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】